説明

汚泥処理システム

【課題】消化槽内の汚泥を効率的に撹拌できると共に、維持管理が容易な汚泥処理システムを得る。
【解決手段】汚泥処理システムは撹拌装置2を備えた消化槽1からなり、撹拌装置2は循環管21と循環ポンプ22を備えている。循環管21は、消化槽1の水面下に位置して槽内の汚泥を流入または流出させる上部開口23cを有する上側循環配管23、消化槽1の水面下に位置して槽内の汚泥を流出または流入させる下側開口25aを有する下側循環配管25、消化槽1の外部において上側循環配管23および下側循環配管25に連結した循環ポンプ22のケーシング24、ケーシング24からの汚泥を消化槽1内に吐出して水平方向の流動を発生させる吐出口26bを有する吐出配管26を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化槽内の汚泥を撹拌装置によって撹拌して嫌気性消化処理する汚泥処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水処理場などの水処理系には、汚泥の減量化や安定化を図るため、有機性汚泥を嫌気性消化処理する消化槽が設置されている。この消化槽には汚泥を撹拌するための撹拌装置が備えられている。この撹拌装置には、ガス撹拌方式または機械撹拌方式が採用され、機械撹拌方式には2段パドル低速撹拌機、低速撹拌機、水中撹拌機などが採用されている。ガス撹拌方式は、ドラフトチューブ内に消化槽内の消化ガスを吸い込み、エアリフト効果によって消化槽内に上向流を発生させる方式である。2段パドル低速撹拌機は、ドラフトチューブを設けずに大型の2段パドルによって汚泥を低速度で撹拌し、基本的には汚泥に下向流を発生させるものである。低速型撹拌機は、大きなスカート付ドラフトチューブ、スクリュー羽根、軸、駆動装置などによって構成され、汚泥を低速度で撹拌して上向流または下向流を発生させるものである。そして、水中型撹拌機は、ドラフトチューブ、回転羽根、および水封筒から構成され、回転羽根が比較的高速度(300〜600rpm)で回転することによりドラフトチューブ内に下向流のみを発生させるものである。
【0003】
従来の汚泥処理システムの消化槽は大型である場合が多く、その縦断面形状は算盤(亀甲)形または卵形となっている場合が多い。消化槽内には消化(嫌気性菌であるメタン生成菌を用いたメタン発酵)によってメタンすなわち消化ガスが発生するので、その漏洩を防止するために消化槽の上部開口は所謂コンクリートスラブによって閉じられている。このような消化槽内の汚泥を効率的に処理するため、すなわち消化率を向上させるためには、汚泥を一定温度に保つとともに、砂を含む汚泥を消化槽内の底部に堆積させないように撹拌する撹拌装置が必要とされている。通常、算盤形の消化槽の撹拌装置にはガス撹拌方式が採用され、卵形の消化槽の撹拌装置には機械撹拌方式が採用されている。
【0004】
ガス撹拌方式が採用されている消化槽には、消化槽内の消化ガスを消化槽外に抜き出すためのガス抜出し管、このガス抜出し管からの消化ガスを昇圧させるためのブロワ、このブロワで昇圧させた消化ガスを汚泥中に吹き込むためのガス吹込み管などが備えられ、ガス吹込み管の下端は消化槽内の底部に位置付けられている。そして、ガス吹込み管から消化ガスが汚泥中に吹き込まれると、消化槽内に上下方向の循環流が形成され、汚泥が撹拌される。このようなガス撹拌方式が採用されている消化槽のコンクリートスラブには、汚泥を例えば水処理系の濃縮槽から導くための汚泥導入管や、上記ガス抜出し管およびガス吹込み管が貫通されている。
【0005】
他方、機械撹拌方式が採用されている比較的新しい消化槽としては、例えば特開2003−71498号公報に開示された汚泥処理システムの汚泥消化槽が知られている。この汚泥消化槽の断面形状は亀甲形とされ、汚泥消化槽の内部にはドラフトチューブが設けられている。このドラフトチューブは、汚泥消化槽の内壁下部から支持脚を介して鉛直状態に支持されている。汚泥消化槽の頂部スラブには、汚泥消化槽の内部と外部とを連通する点検口が設けられている。ドラフトチューブは、下方に配置され比較的細い内外径の小径管部と、上方に配置され小径管部よりも内外径の大きい大径管部と、これらの小径管部と大径管部とを接続する中間管部とで構成されている。上方に配置されている大径管部の上端部は、点検口の上面にある蓋体の貫通孔に至るまで延設されている。
【0006】
この貫通孔の内径は大径管部の上端部の外径よりも大きく設定され、大径管部の上端部の外周面と蓋体の内周面との間にはシール材としてのゴムブッシュが設けられ、大径管部の上端部は蓋体に対して上下動可能に保持されている。また、蓋体の上には、貫通孔を覆うカバープレートが取り付けられている。中間管部は、大径管部と小径管部との間に配置され、大径管部の内径から小径管部の内径に至るまでその内径を漸次減少させる傾斜面を有している。中間管部の側面には、汚泥流入出用開口が形成されている。この中間管部の上部の内側には、下方に向けて縮径された凹テーパリングが取り付けられている。
【0007】
前記ドラフトチューブの内部には、汚泥消化槽内の汚泥を撹拌するための撹拌機が挿抜可能に設置されている。この撹拌機は、モータと、このモータの回転軸に取り付けられた回転自在のスクリューによって構成されている。また、撹拌機の上部ケーシングの上部外側には、中間管部に取り付けられた凹テーパリングに嵌合する凸テーパリングが取り付けられている。さらに、撹拌機の上部ケーシングの上に管状のガイドサポートが立設され、このガイドサポートの上部にはドラフトチューブの大径管部を固定するための固定具が設けられている。この固定具は、周方向に所定間隔で配置され、半径方向に張り出されている。その先端部には、大径管部の内面に当接するクランプと、このクランプの張出し量を調整するウェッジと、このウェッジを上下に移動させるジャッキボルトが備えられている。
【0008】
このような撹拌機を汚泥消化槽に設置する際には、先ず蓋体上のカバープレートを取り外し、クレーン等の揚重装置を用いて撹拌機をドラフトチューブの上端開口からその内部に挿入する。撹拌機はドラフトチューブ内を下降し、撹拌機の凸テーパリングが中間管部の凹テーパリングに嵌合するので、撹拌機はドラフトチューブの軸心に合わせて位置決めされる。次に、ガイドサポートの上部固定具のクランプを張り出して先端部を大径管部の内面に当接させ、ジャッキボルトでウェッジを上下に移動させてクランプの張出し量を調整することにより、ガイドサポートをドラフトチューブの軸心に一致させて固定する。
【0009】
【特許文献1】特開2003−71498号公報(第3頁左欄第9行〜同右欄第16行、ならびに図1および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、従来の算盤形の消化槽はガス撹拌方式を採用している場合が多い。すなわち、従来の消化槽ではブロワによって昇圧させた消化ガスを汚泥中に吹き込んで汚泥を撹拌する。このため、従来の撹拌装置の撹拌力は弱く、汚泥を消化槽の底部に堆積させてしまうことがある。また、最近では下水汚泥の機械濃縮による高濃度化が進み、ガス撹拌方式の撹拌装置は汚泥を消化処理するために力不足となっている。このため、ガス撹拌方式を採用している消化槽にも機械撹拌方式を採用することが望まれている。
【0011】
しかし、ガス撹拌方式を採用している消化槽頂部のコンクリートスラブの強度は、機械撹拌方式に必要な撹拌機を設置し得る強度に設計されていないので、ガス撹拌方式を採用している消化槽では水中型以外の機械撹拌方式に変更することが不可能となっている。また、撹拌効率、デッドスペース等の点からも、ガス撹拌方式の消化槽の形をそのままにして機械撹拌方式を採用することは不可能となっている。そして、水中型の機械撹拌方式に変更した場合には、汚泥に主に垂直流を与えることになるが、垂直方向の流れは常に撹拌していないと汚泥の流動が停止してしまい、そのため動力費など運転コストがかかり、メンテナンス費が嵩む。また、スカムの除去が容易でなく、現場での煩雑且つ危険を伴う作業を強いられる。さらに、卵形の消化槽は機械撹拌方式を採用できるが、保守点検を行う場合や故障が発生した場合には、撹拌機を消化槽から取り出す作業や故障の状況によっては消化槽を空にする作業が必要となっている。
【0012】
他方、特開2003−71498号公報に開示されている汚泥処理システムでは、撹拌機を汚泥消化槽に設置する際にクレーン等の揚重装置を用いて撹拌機をドラフトチューブの上端開口からその内部に挿入した後に、ガイドサポートの上部固定具のクランプを張り出して先端部を大径管部の内面に当接させ、ジャッキボルトでウェッジを上下に移動させてクランプの張出し量を調整する必要があるので、ガイドサポートをドラフトチューブの軸心に一致させて固定する作業が極めて煩雑になっている。また、撹拌機のスクリューは中間管部に位置しているので、大径管部と中間管部が正確に位置決めされていない場合には、撹拌機が大径管部の軸心に位置決めされても、スクリューの外端と中間管部の内周面との隙間は必ずしも一定にならないことがある。また、撹拌機は消化ガスが存在している場所に設置されているので、電動機などを防爆仕様にする必要があり、消化槽上部での点検・修理作業を行うことは、可燃性の消化ガスの引火・爆発の可能性があり、また高所であることから危険を伴う。
【0013】
そして、現在は下水道事業の大幅な伸びを示した時期から30年以上が経過しており、とくに中大都市の汚泥処理システムには改増築や更新すべき多数の消化槽が存在し、そのためには多大なコストを要するばかりでなく、建替えにより多量の建築系廃棄物が発生してしまうなど課題がある。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、撹拌装置の設置、保守点検および維持管理を容易に行うことができると共に、消化槽内の汚泥を効率的に撹拌でき、既存の施設でも大掛かりな改造を必要とせず処理機能を向上させて効率的な処理を可能とする汚泥処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る汚泥処理システムは、原汚泥を嫌気性消化する消化槽に循環管およびポンプを設け、循環管が消化槽内の上部と下部で開口している汚泥処理システムにおいて、循環管は消化槽内に汚泥の流動を発生させる吐出口を有し、ポンプは消化槽外に配設されているものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、循環管が消化槽内に汚泥の流動を発生させる吐出口を有しているので、循環する汚泥を吐出口から吐出することにより、消化槽内の汚泥を水平方向に流動させると共に、消化槽内の撹拌流動を促進させることができる。つまり、上部と下部で開口している循環管が発生させた垂直方向の流動に、吐出口から吐出した汚泥による水平方向の流動が加わることにより、消化槽内の大部分において、垂直方向の流動だけの場合に比べて速い撹拌流動を発生させることができる。さらに、水平方向の流動は、垂直方向の流動に比べ慣性(惰性)により長い時間維持されるため、運転動力を大幅に削減できる。したがって、消化槽内の汚泥を効率的に撹拌できることとなり、嫌気性消化処理が促進され、また汚泥の底部沈積やスカムの浮上肥厚を防止でき、省エネルギー化による経費節減に大いに寄与できる。
【0017】
この発明は、ポンプやその駆動手段など汚泥の流動に必須である機械装置を消化槽頂部ではなく且つ消化槽外に設けたので、可燃性ガスに直接接触することはなく、電動機などを防爆仕様にすることが必須ではなくなる。また、ポンプやその駆動手段などの設置作業や点検・修理作業を容易にすることができる。さらに、ポンプのケーシングと羽根を確実に固定することができ、ポンプの吐出能力を向上させることができ、ポンプの小型化を可能とし、省エネルギーも可能とする。そして、ポンプやその駆動手段が故障した場合にも、従来必要とされた消化槽からのガス抜き取り、汚泥の排除、清掃などの煩雑で費用も人手もかかり危険を伴う作業を必要とせず、容易に修理交換が可能である。また、爆発の危険がある可燃性の消化ガスが存在し、高所である消化槽上部での工作や作業を必要としないため、作業員等の安全を確保できる。さらに、撹拌装置の構成要素の定期的な交換、置換、保守点検および維持管理が日常作業の中で容易に実施できるため、故障等を未然に防止でき、機械装置の寿命を延ばし、もって運転停止のない安定して効率のよい処理で行うことができる。
【0018】
この発明は、ポンプやその駆動手段など汚泥の流動に必須である機械装置を従来のように消化槽の天壁に設けないので、これらの機械装置を設置するために消化槽の天壁を補強する必要がなく、大掛かりな設置準備も不要となり設置コストを大幅に低減できる。また、従来はドラフトチューブを固定するための架台を精密に設置する必要があり、これに要する作業、日数、費用が大きな負担となっていたが、この発明にかかるシステムでは、そのような架台を必要とせず、簡便に設置でき、設置のための作業、日数、費用を低減することができる。また、消化槽天壁にポンプを設置して汚泥をくみ上げる撹拌方式に比べ、消費動力を削減できることは言うまでもない。
【0019】
この発明は、ポンプに槽外型のスクリューポンプを用いることにより、保守点検・維持管理・修理交換が容易になるばかりでなく、高粘性で流動性が悪く詰まり易い高濃度汚泥を確実に循環(移送)させることができ、消化槽内の良好な撹拌流動を保持することができる。また、消化槽内の撹拌流動の状況、スカムの肥厚度、排出される消化汚泥の状態(砂等の沈積状況)に応じて、槽外型のスクリューポンプの出力や稼働台数、また槽外に設置されている開閉弁や自動弁の開閉を容易に且つ適切に操作できるため、常に良好で効率のよい嫌気性処理が行える。
【0020】
この発明は、消化槽に投入する原汚泥に高分子凝集剤を注入することにより、消化槽内の効率的な撹拌流動により、原汚泥と高分子凝集剤とが速やかに効率よく混合される結果、凝集反応および固液分離作用が促進させ、これにより生じた分離液(脱離液)を滞りなく系外に排除することで、引き抜かれる処理後の消化汚泥の減量化ができ、その後の消化汚泥の処理処分も容易になる。したがって、別途汚泥濃縮設備を設ける必要もなく、原汚泥の嫌気性消化処理と減量化を一挙に達成させることができ、これにより、運転コストや建設コストの低減がはかれると共に、処理施設を簡素化でき、維持管理や保守点検作業が省力化できる。
【0021】
この発明は、ポンプ(とくにスクリューポンプ)の近傍において、循環する汚泥に無機凝集剤を注入することにより、ポンプ近傍での撹乱作用と消化槽内の効率的な撹拌流動により、循環する汚泥と無機凝集剤とが速やかに効率よく混合される結果、汚泥処理施設において管を閉塞させたり、機械装置類の故障を誘発したりするスケール物質(主にMAP:リン酸マグネシウムアンモニウム)の生成を抑制できる。つまり、汚泥中に含まれるMAPの構成成分であるリン酸を無機凝集剤と速やかに反応させて、汚泥中のリン酸の含有率を低下させることにより、MAP(スケール)の生成を抑制させることができる。これにより、閉塞した管の交換や機械装置類の故障を大幅に減らすことができ、修理交換作業などの維持管理頻度が低下するばかりか、これに要する人手、日数、費用を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
実施の形態1.
図1および図2は、この発明を実施するための実施の形態1における汚泥処理システムを示すものである。この汚泥処理システムは、水処理系列からの原汚泥を嫌気性消化処理するものとしてあり、原汚泥を収容する例えば算盤形の消化槽1と、この消化槽1内に導入した原汚泥を撹拌する撹拌装置2を備えている。以降、消化槽1内に存在する原汚泥と消化汚泥の混合体を単に汚泥という。
【0023】
消化槽1の平面形状は円形または多角形でその深さは10m以上である場合が多く、消化槽1の内部を日常点検することは容易でない状態になっている。この実施の形態1における消化槽1の平面形状は、限定するわけではないが円形としてある。この消化槽1は、上方に向かって外側に傾斜する底壁11、この底壁11の上端から鉛直上方に延びる垂直壁12、この垂直壁12の上端から上方に向かって内側に傾斜する傾斜壁13、および傾斜壁13の上端から内側に水平に延在する天壁14を有している。通常、このような消化槽1の略下半分は、保温等を目的にコンクリートを含むグラウンドの中に埋設してある。
【0024】
底壁11は消化汚泥をその中央に集めるような形状とし、底壁11の中央には消化汚泥を外部に引き抜くための汚泥引抜管15を接続してある。天壁14には、図示しない水処理系の汚泥濃縮槽から原汚泥を導入する汚泥導入管16を接続してある。汚泥導入管16の垂直部16aは天壁14に貫通させ、垂直部16aの下端の開口16bは汚泥面から離して位置させてある。そして、消化槽1の上部には、汚泥から消化汚泥を脱離させて生じた脱離液を外部に流出させる脱離液流出管17を設けてある。
【0025】
撹拌装置2は、消化槽1内の汚泥の混合を促進し、汚泥の温度を均一化し、汚泥中から消化ガスを放散させ、汚泥面のスカムを破砕し、汚泥中の土砂、し渣などが堆積することを防止するものとしてある。撹拌装置2は、消化槽1の内部および外部に延在する循環管21と、消化槽1の外部において循環管21に配設した循環ポンプ22によって構成してある。循環管21は、消化槽1内の上部に位置して汚泥に垂直流を発生させる上側循環配管23、消化槽1の外部に位置させて上側循環配管23に連結してあるケーシング24、このケーシング24から消化槽1内の下部中央まで延びて汚泥に垂直流を発生させる下側循環配管25、およびケーシング24から消化槽1内に延びて汚泥に水平流を発生させる吐出配管26によって構成してある。
【0026】
ここに、「垂直流」とは、汚泥が主に消化槽1の概略の中心線に平行した垂直(鉛直)方向の下から上に流れる上昇流、または上から下に流れる下降流(消化槽1の内面に沿う縦旋回流も含む)とし、垂直方向から傾斜する方向の流れも包含する。また、「水平流」とは、汚泥が主に消化槽1の概略の中心線を周回する流れ(消化槽1の内面に沿う横旋回流も含む)とし、水平方向から傾斜する方向の流れも包含する。そして、「撹拌流動」とは、垂直流に水平流が加わることによって発生する立体的な多方向の消化槽内の流れとする。
【0027】
上側循環配管23はL字状としてあり、消化槽1の中心線上に位置する垂直部23aと、この垂直部23aの下端からほぼ水平に延びて消化槽1を貫通した水平部23bとを有している。垂直部23aの上部は上方に向かって拡径する形状とし、その上端は上側開口23cとし、垂直部23aの下端は消化槽1の上下のほぼ中間に位置させてある。下側循環配管25は消化槽1の中心線に向かって下方に傾斜するように設け、その下部は消化槽1の中心線上で垂直下方に向け、その下端を下側開口25aとしてある。吐出配管26は、消化槽1内において汚泥の吐出方向を決める吐出管部26aを有し、その先端は吐出口26bとしてある。なお、吐出配管26の角度は、水平方向に対して約0°(水平)、消化槽1の半径に対して約60°としてある。
【0028】
消化槽1の外側において、下側循環配管25には第1の開閉弁27を設け、吐出配管26には第2の開閉弁28を配設してある。これらの第1、第2の開閉弁27、28は、汚泥を下側循環配管25または吐出配管26の一方に流すために設けてあり、手動開閉または自動開閉とすることができる。以上のような構成の循環管21は、基本的に耐食性に優れたSUS製とし、汚泥を約1.0〜2.0m/秒の速度で流すような管径で抵抗損失の少ない構造に形成するのが好ましい。そして、循環管21には消化槽1内に汚泥が存在していないときに自重を支える強度を持たせる必要があり、耐震性を持たせるのも好ましい。
【0029】
図3に示すように、循環ポンプ22は、循環管21のケーシング24の一部を貫通するように設けた回転軸31、この回転軸31の両端部をケーシング24の外側においてそれぞれ支持した1対の軸受32、33、およびケーシング24の内部において回転軸31の外周に設けたインペラまたはスクリュー羽根34によって構成してある。回転軸31は減速機35を介して駆動モータ36によって回転駆動するようにしてあり、駆動モータ36は図示しない制御装置によって回転速度と回転方向を制御するようにしてある。
【0030】
なお、循環ポンプ22のケーシング24、軸受32、33、減速機35、駆動モータ36などをグラウンド上の支持架台に固定すれば、回転軸31の振れを防止でき、ケーシング24とスクリュー羽根34を精度良く施工でき、循環ポンプ22の効率が向上する。また、ケーシング24に図示しない清掃口を設け、ケーシング24を分割点検容易な構造とするのが好ましい。循環ポンプ22は、スクリュー型かつ大容量・低揚程の高効率型とするのが好ましく、その回転数を300〜1000rpm(回転/分)程度として小型化するのが好ましい。スクリュー羽根34は、耐摩耗性・耐腐食性・耐久性に優れた材料から汚泥を詰まらせることのない形状、かつ正逆の両回転において同じ流量と揚程を発揮するような左右対称に形成し、2枚以上用いるのが好ましい。
【0031】
また、回転軸31がケーシング24を貫通する部分は汚泥が流出しないようにシールを設ける必要があるが、これらのシールはシール水の不要な無給油タイプを基本とするのが好ましい。また、循環ポンプ22の加温熱損失を防止するため、循環ポンプ22の周囲を図示しないカバーによって覆うのが好ましい。この種のカバーは、風雨に対しても役立つので、SUS製またはFRP製とするのが好ましい。そして、そのカバーは、コンパクト化と点検容易な構造とするために周壁と蓋とに分割し、その蓋は手動油圧シリンダー等を使用して開閉するように構成するのが好ましい。
【0032】
次に、この実施の形態1における汚泥処理システムの作用を説明する。通常、第1の開閉弁27を開くとともに第2の開閉弁28を閉じて、循環ポンプ22を正回転させる。駆動モータ36が作動すると、回転軸31すなわちスクリュー羽根34が正回転し、汚泥が循環管21を循環する。すなわち、汚泥が上側開口23cから上側循環配管23に流入し、ケーシング24と下側循環配管25を通り、下側開口25aから消化槽1内に勢いよく噴出する。このとき、上側開口23cおよび下側開口25aが消化槽1の中心線上に位置しているので、消化槽1の中心線の外側に汚泥の上昇流が発生し、汚泥は消化槽1の底壁11、垂直壁12、および傾斜壁13に沿って上昇し、上側開口23cに再び流れ込む。
【0033】
そして、所定時間(1サイクルを24時間とした場合に例えば4時間)が経過したときに、第2の開閉弁28を開くとともに第1の開閉弁27を閉じる。これにより、循環管21のケーシング24を通過した汚泥が吐出配管26を流れ、その吐出口26bから消化槽1内に勢いよく吐出する。これにより、汚泥が消化槽1内においてほぼ水平な方向で消化槽1の内面に沿って勢いよく流れ、汚泥に水平流が加わる。ここで、第2の開閉弁28を開いて第1の開閉弁27を閉じた際には、汚泥が下側循環配管25の下側開口25aから流出しなくなる。しかし、消化槽1の内部には惰性による上昇流が存在し続けるので、その上昇流に吐出配管26からの水平流が加わり、消化槽1内の大部分に高速度の撹拌流動が発生する。そして、所定時間(1サイクルを24時間とした場合に例えば20時間)が経過したときに、第1の開閉弁27を開くとともに第2の開閉弁28を閉じ、元のサイクルに戻す。なお、汚泥から分離した砂、梓さなどの堆積が少ない場合には、1サイクルを12時間とし、タイマー制御による省エネルギー運転も可能となる。
【0034】
一方、汚泥に逆方向の循環流を発生させる場合には、回転軸31を逆回転させる。これにより、汚泥が下側開口25aから下側循環配管25に流入し、ケーシング24と上側循環配管23を通り、上側開口23cから勢いよく噴出する。これにより、汚泥の表面を波立たせるとともに、上側循環配管23の周囲に強力な下向きの循環流を発生させ、上側循環配管23から離れた位置のスカムを循環流に巻き込む。なお、この場合にも、循環ポンプ22は正回転のときと同じ流量と揚程を確保する。
【0035】
上記汚泥処理システムにおける撹拌流動の速度分布のコンピュータによるシミュレーションは次のようであった。この場合に、消化槽1の容量は2,050m3、上側循環配管23および下側循環配管25の口径は0.5m、消化槽1の最下部と下側循環配管25の開口25aとの距離は2.5m、吐出配管26の吐出口26bと消化槽1の最下部との距離は5m、吐出配管26の吐出管部26aの長さは約1.35m、水平に対する吐出管部26aの角度は0°、消化槽1の半径に対する吐出管部26aの角度は60°、吐出口26bの口径は0.5m、撹拌時間は毎回2時間とした。結果として、上側循環配管23に流入する汚泥の量は1,080m3/h、吐出配管26の吐出口26bから吐出する汚泥の流速は1.53m/sとなり、消化槽1内の汚泥の撹拌流動の平均流速は0.241m/sとなった。
【0036】
これに対し、吐出配管26を持たない従来の汚泥処理システムにおける上昇流の速度分布のコンピュータによるシミュレーションは次のようであった。従来の汚泥処理システムでは、ドラフトチューブを用いており、その口径は0.5mとし、その長さは8mとした。そして、汚泥面とドラフトチューブの上端との距離は0.1mとし、その他は上記と同様とした。結果として、汚泥の撹拌流動の平均流速は0.148m/sとなった。
【0037】
実施の形態1の汚泥処理システムにおける汚泥の撹拌流動の速度分布を図4に示し、従来の汚泥処理システムにおける汚泥の撹拌流動の速度分布を図5に示す。これらの図4および図5において、最も高い速度の領域から最も低い速度の領域を高い速度の方から順に領域A〜Dに区分して示してあり、A領域は概ね0.2m/s以上、B領域は概ね0.1〜0.2m/s、C領域は概ね0.05〜0.1m/s、D領域は概ね0.05m/s以下である。なお、領域A〜Dは便宜的に区分したものであって、実際には多様な速度の領域が存在することはいうまでもない。そこで、多様な速度の領域を色分けした図4および図5にそれぞれ対応する2枚のカラー図面を物件提出の形で添付する。
【0038】
図4および図5からわかるように、実施の形態1の汚泥処理システムにおける汚泥の撹拌流動の速度分布は、消化槽1内において底部および水面部を含む広い範囲でA領域が分布している。これに対して、従来の汚泥処理システムにおける汚泥の速度分布は、局所的に速度の速いA領域が分布(偏在)するものの、全般的に速度の遅いC領域およびD領域が広がっている。実施の形態1の汚泥処理システムのように消化槽1内で広い範囲で速い速度が維持できることにより、汚泥濃度が均等になり、また温度も一定にすることができ、効率的に安定して嫌気性消化処理が行える。とくに、水平流と垂直流を交互に発生させることにより、消化槽1内の低流速域がほとんどなくなり、汚泥の沈積やスカムの肥厚を効果的に防止することができる。
【実施例1】
【0039】
撹拌装置2を上記実施の形態1の消化槽1に設置するとともに、分離槽を改築した消化槽に設置した。それぞれの場合において、消化槽1と分離槽の容積は4,181m3と2,043m3、上側循環配管23および下側循環配管25の口径は0.6mと0.4m、設置荷重は2,850kgと1,900kg、運転荷重は3,650kgと2,450kg、流量(2h/回)は34.9m3/分と17.1m3/分、補修時荷重は2,000kgと1,500kg、SUS製支持体を含むSUS製上側循環配管23およびSUS製下側循環配管25の重量は10,500kgと7,000kgであった。開閉弁27、28を自動的に開閉することにより、下降流を4時間発生させ、撹拌流動を20時間発生させた。結果として、撹拌装置2を消化槽1に設置した場合の撹拌装置2の消費電力は11(実動9.2)kWとなり、撹拌装置2を分離槽に設置した場合の撹拌装置2の消費電力は7.5(実動6.3)kWとなった。また、撹拌流動を発生させている際に底壁11の上を流れる汚泥の平均速度は、垂直流のみの場合よりも10〜20%大きかった。
【0040】
以上のように、この実施の形態1における汚泥処理システムでは、消化槽1内の汚泥に消化槽1の概略の中心線の外側を上昇または下降する垂直流を発生させるとともに、消化槽1の概略の中心線の周りに水平流を与えるので、消化槽1内の大部分に高速度の撹拌流動を発生させることができる。したがって、効率的な撹拌が可能となり、省エネルギーが可能となり、汚泥の沈積がなくなる。そして、上側循環配管23の位置は従来のように高精度に合わせる必要がなく、その振れに対する注意も減らすことができるので、設置コストが低減する。
【0041】
また、循環ポンプ22を消化槽1の外部に設置したので、メンテナンスに安全に対応でき、維持管理が容易になり、維持管理費が低減する。さらに、循環ポンプ22にスクリューポンプを用いて回転軸31とスクリュー羽根34を一体成形できる構造とし、その回転軸31の両端を1対の軸受32、33によって支持したことにより、回転軸31の振れを防止できるうえに、ケーシング24とスクリュー羽根34との間のクリアランスを高い精度で設定できるので、回転軸31を高速度で回転させることができ、高粘性で高濃度の汚泥をも確実に撹拌流動させることができる。そして、循環ポンプ22は消化槽1の外部に設ける故にその容量に制限がなくなり、回転数を高くすることができる故に小型化することができる。また、ケーシング24とスクリュー羽根34とのクリアランスからリークする汚泥の量を低減でき、大きな固形物通過粒径を確保でき、ケーシング24に汚泥が詰まることを防止できる。
【0042】
さらに、従来は算盤形の消化槽1を用いた場合に水面にスカムが溜り易い状態となり、上側循環配管23の上側開口23cまたは下側循環配管25の下側開口25aを流出入する汚泥の速度は必ずしも十分ではなく、スカムを除去することが容易でなかったが、この実施の形態1における汚泥処理システムでは、吐出配管26から汚泥を吐出できるので、垂直方向に流動していた汚泥に水平方向に流動する水平流を加えて高速度の撹拌流動を発生させることができ、しかも循環ポンプ22を正逆運転することによって垂直流を逆転させることができるので、スカムを容易に破砕することができる。また、消化槽1の底壁11上に滞留しようとする汚泥や表面に生じようとするスカムを循環流に確実に巻き込むことができ、消化槽1内の清掃の必要性をなくして連続操業を可能とする。
【0043】
そして、循環ポンプ22のスクリュー羽根34を左右対称としたので、汚泥の流れ方向を変えるために従来は必要とされた弁を配設する必要がなく、回転軸31を正回転または逆回転するだけで汚泥の流れの方向を変えることができる。この際に、同じ流量と揚程を確保することができ、スカムを良好に破砕して排除することができる。因みに、従来のように撹拌装置に斜流ポンプを用いた場合には、その羽根は流れ方向で切られ、流れの方向は弁によって変えられるので、正回転と逆回転において同じ流量と揚程を確保することは不可能であった。
【0044】
この実施の形態1における撹拌装置2は、消化槽1の天壁14に荷重を加えることがないので、従来の卵形の消化槽の改築・更新にも容易に対応できる。また、循環ポンプ22を消化槽1の外部に設置したので、循環ポンプ22の保守点検の際に天壁14を取り外す必要がなく、消化槽1内のメタンガスを爆発させることはない。さらに、循環管21の一部を消化槽1の外部に位置させたので、汚泥を加温するための熱交換器を消化槽1の外部において撹拌装置2と組み合せることが可能となるので、設置動力やランニングコストを低減できる。例えば、消化槽1の容量が3,500m3程度である場合に、従来は汚泥を撹拌するためのポンプに13kWの駆動モータを使用し、汚泥を加熱するための熱交換器のポンプに15kWの駆動モータを使用することがあったが、この実施の形態1では汚泥を撹拌するための循環ポンプ22に15kWの駆動モータ36を使用するだけであるので、設置動力やランニングコストを低減できる。そして、撹拌装置2は上記のような十分な撹拌能力を有するうえに、汚泥の消化状況に応じてオン・オフ運転できるので、省エネルギーが可能となる。
【0045】
また、上側循環配管23は簡素な構造として消化槽1に固定したので、上側循環配管23が振れることはない。したがって、従来では必要であった天壁14に循環ポンプ22を支持するための特別な架台や、撹拌機を芯合せするための微妙な位置調整が不要となるので、撹拌装置2の材料コストや設置コストを低減できる。また、従来のドラフトチューブを架設するための架台等を必要としないので、消化槽1内に汚泥の流れを妨げる部分が従来よりも減少し、汚泥の撹拌効率が向上する。
【0046】
さらに、循環管21の一部を消化槽1の外部に位置させ、その部分に循環ポンプ22や開閉弁27、28を配設したので、循環ポンプ22のメンテナンスを含む撹拌装置2全体の維持管理を容易化できる。また、汚泥の流量を測定するための流量計を配設することが容易となり、この流量計を配設すれば、消化槽1に流入する汚泥の種類が変化した場合に、流量計からの信号に基づいて駆動モータ36の回転数を制御することによって汚泥の性状の変化(流動性)に対応できる。そして、減速機35を制御可能とすれば、高濃度の汚泥に対しても撹拌能力を自由に対応できる。なお、この実施の形態1における撹拌装置2は、例えば嫌気消化槽、無酸素消化槽、貯留消化槽、水素発酵消化槽、メタン発酵消化槽などにも利用可能である。
【0047】
実施の形態2.
図6および図7は、この発明を実施するための実施の形態2における汚泥処理システムを示し、図1および図2と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この汚泥処理システムでは、撹拌装置2Aの循環管21Aの構成が実施の形態1における撹拌装置2の循環管21と異なっている。すなわち、この実施の形態2では、実施の形態1における上側循環配管23の代りに、汚泥を流入または流出させる直管状の流入/流出管41を傾斜させて配設してある。また、実施の形態1における吐出配管26の代りに、吐出管部42aの長さが実施の形態1の吐出管部26aよりも若干長い吐出配管42を配設してある。さらに、この汚泥処理システムでは、汚泥導入管16Aの垂直部16aの下端の開口16bを汚泥の内部に位置させてある。
【0048】
ここで、流入/流出管41は消化槽1の中心線に向かって上方に60°程度傾斜させ、その上側開口41aは消化槽1の中心線と消化槽1の内面とのほぼ中間に位置させてある。その流入/流出管41は消化槽1を貫通させ、その外端をケーシング24に連結してある。吐出配管42は実施の形態1の場合と同様にケーシング24に連結してあるが、上記のように吐出管部42aの長さを実施の形態1の吐出配管26の吐出管部26aの長さよりも長くし、その吐出口42bを下側循環配管25の内側から外側に位置させてある。そして、この実施の形態2における汚泥処理システムでは、消化槽1の外部において、流入/流出管41に第3の開閉弁43を配設してある。その他は実施の形態1と同様としてある。
【0049】
この実施の形態2における汚泥処理システムでは、最初に、第3の開閉弁43および第1の開閉弁27を開き、第2の開閉弁28を閉じて、循環ポンプ22を正回転で作動させる。これにより、汚泥が上側開口41aから流入/流出管41に流入し、ケーシング24と下側循環配管25を通り、下側開口25aから消化槽1内に勢いよく噴出する。このとき、流入/流出管41の上側開口41aが消化槽1の中心線から偏心しているので、上側開口41aから遠い側に大きな上昇流が発生し、上側開口41aに近い側に小さな上昇流が発生し、上昇した汚泥は流入/流出管41の上側開口41aに再び流れ込む。
【0050】
そして、実施の形態1における場合と同様に、所定時間が経過したときに、第2の開閉弁28を開くとともに第1の開閉弁27を閉じる。これにより、循環管21Aのケーシング24を通過した汚泥が吐出配管42に向かい、その吐出口42bから消化槽1内に勢いよく吐出する。この結果として、汚泥がほぼ水平な方向で消化槽1の内面に沿って勢いよく流れ、既に存在している上昇流に水平流が加わることによって汚泥に撹拌流動が発生し、汚泥の消化処理が促進する。そして、所定時間が経過したとき、第1の開閉弁27を開くとともに第2の開閉弁28を閉じ、元のサイクルに戻す。
【0051】
このように、この実施の形態2における汚泥処理システムでは、流入/流出管41の上側開口41aを消化槽1の中心線から偏心させたので、消化槽1の内部の全体に大きな汚泥の撹拌流動が発生する。また、吐出配管42の吐出管部42aを長くし、その吐出口42bを下側循環配管25の外側に位置させたので、吐出口42bから吐出した水平流が下側循環配管25に干渉することがない。その他には、実施の形態1と同様な効果が得られる。
【0052】
実施の形態3.
図8および図9は、この発明を実施するための実施の形態3における汚泥処理システムを示し、図6および図7と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この汚泥処理システムでは、撹拌装置2Bの循環管21Bの構成が実施の形態2における撹拌装置2Aの循環管21Aと異なっている。すなわち、実施の形態2における流入/流出管41は、水平面に関して下側循環配管25と対称な形状および配置の上側循環配管44と代替し、実施の形態2における吐出配管42を第1の吐出配管42とし、この第1の吐出配管42とともに新たな第2の吐出配管45を配設してある。
【0053】
上側循環配管44は、消化槽1の中心線上に位置する垂直管部44aと、この垂直管部44aの下端から外側に向かって下方に傾斜して消化槽1を貫通した傾斜管部44bを有し、垂直管部44aの上端を上側開口44cとしてある。第1の吐出配管42と第2の吐出配管45とは、垂直面に関して対称な形状かつ配置としてある。第1の吐出配管42は、汚泥を吐出または吸入する吐出/吸入管部42aおよび吐出/吸入口42aを有している。同様に、第2の吐出配管45も、汚泥を吐出または吸入する吐出/吸入管部45aおよび吐出/吸入口45aを有している。そして、第2の吐出配管45には第4の開閉弁46を配設してある。
【0054】
この実施の形態3における汚泥処理システムでは、先ず、第2の開閉弁28および第4の開閉弁46を閉じ、第2の開閉弁27および第3の開閉弁43を開き、循環ポンプ22を正回転で作動させる。これにより、汚泥が上側開口44cから上側循環配管44に流入し、ケーシング24と下側循環配管25を通り、下側開口25aから消化槽1内に勢いよく噴出する。この結果として、上側開口44cおよび下側開口25aが消化槽1の中心線上に位置しているので、消化槽1の中心線の外側に汚泥の上昇流が発生し、上昇した汚泥は上側循環配管44の上側開口44cに再び流れ込む。
【0055】
そして、所定時間が経過したときに、第2の開閉弁28および第4の開閉弁46を開くとともに、第1の開閉弁27および第3の開閉弁43を閉じる。これにより、汚泥は第2の吐出配管45の吐出/吸入口45bに流入し、循環管21Bのケーシング24を通って第1の吐出配管42に向かい、その吸入/吐出口42bから消化槽1内に勢いよく吐出する。この結果として、汚泥がほぼ水平な方向で消化槽1の内面に沿って勢いよく流れ、既に存在している上昇流に水平流が加わることによって汚泥に撹拌流動が発生する。このとき、第2の吐出配管45は汚泥を吸い込むので、汚泥の水平流の速度を実施の形態2における場合よりも大きくする。そして、所定時間が経過したとき、第1の開閉弁27および第3の開閉弁43を開くとともに、第2の開閉弁28および第4の開閉弁46を閉じ、元のサイクルに戻す。
【0056】
以上のように、この実施の形態3における汚泥処理システムでは、第1の吐出配管42が汚泥を吐出している間に第2の吐出配管45が汚泥を吸入するので、汚泥の水平流の速度が実施の形態1および実施の形態2における場合よりも大きくなる。したがって、汚泥の水平流の速度が実施の形態2における場合よりも大きくなり、汚泥の底部沈積やスカムの上部肥厚を確実に防止して消化処理を更に向上・促進させる。
【0057】
実施の形態4.
図10および図11は、この発明を実施するための実施の形態4における汚泥処理システムを示し、図8および図9と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この汚泥処理システムでは、凝集汚泥と脱離液を分離させる越流堰18を消化槽1に設けてある点、高分子凝集剤を汚泥導入管16Aに注入する高分子凝集剤注入装置47を設けてある点、汚泥導入管16Aの垂直部16aの下端の開口16bを脱離液面下に位置させてある点、および撹拌装置2Cの循環管21Cの第1の吐出配管42と第2の吐出配管45を上側循環配管44と下側循環配管25の外側にそれぞれ位置させてある点で実施の形態3における汚泥処理システムと異なっている。
【0058】
この実施の形態4における汚泥処理システムでは、循環ポンプ22が逆転していて下降流と水平流とによる撹拌流動が消化槽1内で発生している。この実施の形態4では、高分子凝集剤注入装置47で汚泥(とくに投入される原汚泥)に高分子凝集剤を注入するので、撹拌流動により汚泥と高分子凝集剤が効率的に混合すると共に、凝集汚泥が形成・成長する。そして、撹拌流動(水平流と下向流)に伴って凝集汚泥が沈降し、上部に脱離液が分離され、この脱離液は消化槽1上部に設けられた越流堰18より速やかに排除される。これにより、消化槽1では消化処理が行われると共に汚泥を濃縮でき、消化汚泥を減量化させ、また汚泥の滞留(消化)時間を延長させることができる。なお、高分子凝集剤は、原汚泥に直接注入(ライン注入、注入槽)してもよく、また消化槽1内へ注入滴下してもよく、さらに循環ポンプ22前後で注入してもよい。
【実施例2】
【0059】
この実施の形態4における汚泥処理システムにおける原汚泥の濃度が約2.7%、原汚泥の投入量が約70m3/日、および高分子凝集剤注入装置47による薬注率が0.3%であった場合に、この実施の形態4における汚泥処理システムの処理能力の3ヶ月間の平均値は次の表1に示すようになった。なお、高分子凝集剤を注入しない場合の平均値も同時に示す。この表1から分かるように、高分子凝集剤を注入した場合には、脱離液量が著しく増加する。
【表1】

【0060】
この消化汚泥量の減少は、後段の脱水機運転時間や脱水ケーキ量を減少することができる。後段の脱水で遠心脱水機(10m3/h)を使用した実施の形態4での脱水コストは、表2からもわかるように、脱水機運転時間と脱水ケーキ量が大幅に減少し、後段汚泥処理の維持管理コストを低減することが出来る。
【表2】

【0061】
実施の形態5.
図12および図13は、この発明を実施するための実施の形態5における汚泥処理システムを示し、図6および図7と同じ部分に同じ符号を付して重複説明を省略する。この汚泥処理システムは、ケーシング24の一端側と他端側に第1の無機凝集剤注入装置48と第2の無機凝集剤注入装置49をそれぞれ設けてある点、第1の開閉弁27と第2の開閉弁28に対して第1の自動弁50と第2の自動弁51をケーシング24側にそれぞれ配設してある点、流入/流出管41Aの上側開口41aを消化槽1の中心線側に近づけてある点、および吐出配管42Aを下方に傾斜させてある点で実施の形態2における汚泥処理システムと異なっている。なお、自動弁50、51には、電動弁、空圧弁、油圧弁などを用いることができる。
【0062】
この実施の形態5における汚泥処理システムは、基本的に実施の形態2における汚泥処理システムと同様に作用する。しかし、循環ポンプ22が正回転する場合に第1の無機凝集剤注入装置48から無機凝集剤を注入し、循環ポンプ22が逆回転する場合に第2の無機凝集剤注入装置49から無機凝集剤を注入する。この間に、制御装置が第1、第2の自動弁50、51を自動的に切り替え、消化槽1の内部に汚泥の上昇流、下降流、水平流を適宜に発生させ、汚泥に多様な撹拌流動を発生させる。
【0063】
図12および図13においては、循環ポンプ22近傍で無機凝集剤を注入しているが、これはMAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)などのスケール物質が発生し易い機器配管の近傍で注入する方が、効果が大きく、また汚泥と無機凝集剤との混合を効率的にするためである。なお、高分子凝集剤同様、無機凝集剤も原汚泥に直接注入(ライン注入、注入槽)してもよく、また消化槽1内へ注入滴下してもよい。
【0064】
無機凝集剤の一例として、ポリ鉄(ポリ硫酸第二鉄)を消化槽1内に注入すると、汚泥中のリンがリン酸鉄として固定化されると共に、汚泥のpHが若干酸性側へ変化し、更にスケールの発生が抑制できる。消化槽容積2000m3でのポリ鉄注入による実施例である表3からもわかるように、スケールの発生は抑制されて数年に1回のスケール除去作業の実施で済み、維持管理コストを大幅に低減できる。
【表3】

【0065】
したがって、この実施の形態5における汚泥処理システムでは、汚泥に無機凝集剤注入装置48、49から無機凝集剤を注入するとともに、消化槽1内の汚泥を撹拌流動によって効率的に撹拌流動させるので、汚泥と無機凝集剤を効率的に混合でき、MAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)などのスケール物質が生成することを抑制でき、スケールが消化槽1、循環管21D、その他の関連装置などに付着することを防止できる。したがって、維持管理が容易となり、汚泥処理が安定し、その他には実施の形態2における汚泥処理システムと同様な効果が得られる。
【0066】
なお、上述の実施の形態1〜5では消化槽1の内面から離して位置させた吐出配管26、42、45の吐出/吸入口26b、42b、45bから汚泥を吐出または吸入させたが、これらの吐出配管26、42、45を設ける代りに、図14に示すように消化槽1の垂直壁12にその内外を貫通する通路12aを形成し、この通路12aの内端開口12bから汚泥を吐出または吸入させることができる。この場合に、水平および半径に対する通路12aの角度を上記実施の形態1〜5に適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の実施の形態1における汚泥処理システムの構成を模式的に示す側面図である。
【図2】この発明の実施の形態1における汚泥処理システムの構成を模式的に示す平面図である。
【図3】この発明の実施の形態1における汚泥処理システムの循環ポンプの構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1における汚泥処理システムの消化槽内を流動する汚泥の速度分布を模式的に示す図である。
【図5】従来の汚泥処理システムの消化槽内を流動する汚泥の速度分布を模式的に示す図である。
【図6】この発明の実施の形態2における汚泥処理システムの構成を模式的に示す側面図である。
【図7】この発明の実施の形態2における汚泥処理システムの構成を模式的に示す平面図である。
【図8】この発明の実施の形態3における汚泥処理システムの構成を模式的に示す側面図である。
【図9】この発明の実施の形態3における汚泥処理システムの構成を模式的に示す平面図である。
【図10】この発明の実施の形態4における汚泥処理システムの構成を模式的に示す側面図である。
【図11】この発明の実施の形態4における汚泥処理システムの構成を模式的に示す平面図である。
【図12】この発明の実施の形態5における汚泥処理システムの構成を模式的に示す側面図である。
【図13】この発明の実施の形態5における汚泥処理システムの構成を模式的に示す平面図である。
【図14】この発明の実施の形態1〜5における汚泥処理システムの吐出配管を消化槽の壁に設けた通路とする場合を示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 消化槽
2、2A〜2D 撹拌装置
16、16A 汚泥導入管
18 越流堰
21、21A〜21D 循環管
22 循環ポンプ
23、44 上側循環配管
24 ケーシング
25 下側循環配管
26、42、42A、45 吐出配管
27、28、43、46 開閉弁
41、41A 流入/流出管
47 高分子凝集剤注入装置
48、49 無機凝集剤注入装置
50、51 自動弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原汚泥を嫌気性消化する消化槽に循環管とポンプを設け、前記循環管が前記消化槽内の上部と下部で開口している汚泥処理システムにおいて、前記循環管は前記消化槽内に汚泥の流動を発生させる吐出口を有し、前記ポンプは前記消化槽外に配設されていることを特徴とする汚泥処理システム。
【請求項2】
前記ポンプは逆送可能なスクリューポンプであることを特徴とする請求項1に記載の汚泥処理システム。
【請求項3】
前記消化槽内に越流堰が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の汚泥処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−229600(P2007−229600A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53394(P2006−53394)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000147408)株式会社西原環境テクノロジー (44)
【Fターム(参考)】