説明

汚泥処理システム

【課題】汚泥成分の伝熱面への付着による熱交換効率の低下が生じることなく、また、汚泥による流路の目詰まりも生じることなく汚泥を効果的に熱処理することができる汚泥処理システムを提供する。
【解決手段】汚泥を反応器14により所定の圧力下で加熱して熱処理する。この反応器14による熱処理前の汚泥に対し予熱装置13で予熱を行う。この予熱装置13は、反応器14への汚泥の供給路上に連結された直接熱交換器部15と、反応器14からの熱処理後の汚泥の排出路上に連結された蒸発器部16とを一体化したもので、これらの内部は反応器14内より低い圧力に保持される。直接熱交換器部15に導入された熱処理前の汚泥は、排出路により蒸発器部16に導入された熱処理後の汚泥から生じる蒸気と直接的に接触することにより予熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物を多く含む汚泥を熱処理して、減容化を図った汚泥処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機物を多く含む汚泥をメタン生成菌等の嫌気性微生物の働きにより嫌気性発酵させ、消化ガスを回収する処理方法が多く用いられている。この場合、嫌気性微生物の処理対象となるのは主として比較的低分子の有機物であるため、下水処理などによって生じる余剰汚泥などの難分解の有機性汚泥を嫌気性処理により処理しようとすると、汚泥が溶解するのに時間がかかり、装置の大型化や処理効率の悪化を招いていた。
【0003】
そこで、余剰汚泥などの難分解性の有機性汚泥を処理する際に、予め可溶化処理を施し、嫌気性微生物による消化処理を短時間で効率的に行なわせる方法が提案されている。可溶化処理には、高温高圧水の持つ非常に高い反応性を利用した水熱処理法が注目され、そのための手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記提案における水熱可溶化処理装置は、第1熱交換器と第2熱交換器とを有しており、これらの熱交換器は、液滞留部と、熱交換部を夫々有している。熱交換部は複数のチューブと放熱用フィンが積層された構造であり、液滞留部は有機性汚泥が水熱反応処理に要する時間だけ滞留可能な容量を有する。有機性汚泥は、第1熱交換器の熱交換部に送られ、予備加熱される。予備加熱により中温高圧となった汚泥は第2熱交換器の熱交換部に導入され、この熱交換部にて加熱ガスにより加熱される。加熱された汚泥は高温高圧の水熱可溶化汚泥として排出され、前記第1の熱交換器の水熱反応空間(熱交換部及び液滞留部からなる)に導入される。この水熱反応空間で水熱可溶化反応した汚泥は、熱交換部にて冷却され、低温高圧の水熱可溶化汚泥として排出される。すなわち、第2の熱交換器の水熱反応空間、及び第1の熱交換器の水熱反応空間では有機性汚泥は高温高圧条件下に晒され、水熱可溶化反応がおこる。
【0005】
このような装置において、第1の熱交換器では、熱処理前の汚泥と熱処理後の汚泥を、熱交換部において高圧のままで伝熱面(複数のチューブや放熱用フィンなど)を介して熱交換する。この第1の熱交換器で予熱された汚泥は第2の熱交換器において、その熱交換部において加熱ガスにより加熱され、この熱交換部を含む水熱反応部で汚泥の可溶化処理をされるというものであった。
【特許文献1】特開2005−254165号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来技術では、加温前汚泥と加温後汚泥の熱交換を、熱交換部における複数のチューブと積層された放熱用フィンによる伝熱面を介して行っている。このため、例えば、汚泥によるたんぱく質の凝固物や炭酸カルシウムなどの水和物が伝熱面に付着すると熱交換効率が下がってしまう。また、汚泥による流路の目詰まりが懸念される。
【0007】
本発明の目的は、汚泥成分の伝熱面への付着による熱交換効率の低下が生じることなく、また、汚泥による流路の目詰まりも生じることなく汚泥を効果的に熱処理することができる汚泥処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による汚泥処理システムは、汚泥を所定の圧力下で加熱して熱処理する反応器と、前記反応器への汚泥の供給路上に連結された直接熱交換器部と、前記反応器からの熱処理後の汚泥の排出路上に連結された蒸発器部とを一体化し、これらの内部は前記反応器内より低い圧力に保持され、前記直接熱交換器部に導入された熱処理前の汚泥を、前記排出路により前記蒸発器部に導入された熱処理後の汚泥から生じる蒸気を直接的に接触させて加熱する予熱装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明では、予熱装置は、前記汚泥の供給路上及び熱処理後汚泥の排出路上に複数段直列に連結され、これら複数の予熱装置の内部圧力を、前記反応器から見て下流方向になるに従って順次低く設定した構成としてもよい。
【0010】
本発明は、予熱装置が複数段直列に連結された熱処理後汚泥の排出路上の、任意の2つの予熱装置間に設置され、内部圧力が、前記反応器から見て上流側の予熱装置から自己を含め下流側の予熱装置に向かって順次低くなるように設定され、前記上流側予熱装置から導入された熱処理後汚泥から、上流側との圧力差によって蒸気を生じさせ、かつ、この蒸気を前記上流側予熱装置の直接熱交換器部に供給するための配管を有する蒸発器を備えた構成でもよい。
【0011】
本発明は、反応器により熱処理され、前記予熱装置の蒸発器部を経て排出される熱処理後汚泥を嫌気性処理する嫌気性処理装置を備えた構成でもよい。
【0012】
本発明では、嫌気性処理装置から発生する消化ガスを、反応槽に対する加熱源設備の燃料に用いるとよい。
【0013】
本発明は、前記予熱装置の蒸発器部を経て排出される熱処理後汚泥を嫌気性処理に適した温度に調整する温度調整装置を備えた構成でもよい。
【0014】
本発明では、温度調整装置は、予熱装置より低い内部圧力に設定され、この予熱装置の蒸発器部を経て排出された熱処理後の汚泥を導入し、予熱装置との内部圧力差により蒸気を発生させて汚泥温度を低下させる蒸発器で構成するとよい。
【0015】
本発明では、温度調整装置は、予熱装置の熱処理後汚泥排出部から嫌気性処理装置への管路に連結されて、この管路に流れる排出汚泥に対し熱処理されていない汚泥を混合させる装置でもよい。
【0016】
本発明では、反応器は、熱処理された汚泥から、固形分が分離された液分を、予熱装置の蒸発器部に前記排出路を通して供給するように構成してもよい。
【0017】
本発明は、液分と分離された熱処理後の汚泥の固形分を、嫌気性処理装置に供給する配管を有する構成でもよい。
【0018】
本発明は、液分と分離された熱処理後の汚泥の固形分を濃縮する濃縮機を有し、かつ濃縮により生じた液分を温度調節用の蒸発器を経て嫌気性処理装置に供給する配管を有するように構成してもよい。
【0019】
本発明では、反応器における熱処理は、60℃〜374℃の間の加熱処理または加熱加圧処理であればよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、構造が簡素で、汚泥の付着による熱交換効率の低下や流路の目詰まり、さらには故障が生じ難く、汚泥を効果的に熱処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明による汚泥処理システムの一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1はこの実施の形態の構成を示すブロック図である。図1に示す汚泥処理システムは、処理対象の有機物を多く含む汚泥11を濃縮する濃縮機12、濃縮された汚泥の予熱装置13、予熱された汚泥を所定の圧力下で加熱して熱処理する反応器14を有する。
【0023】
予熱装置13は、例えば、特開2007−21300号公報で示すように、共通の容器内の上部に直接熱交換器部15を配置し、下部に蒸発器部16配置してこれらを一体化し、下部の蒸発器部16で発生した高温蒸気を、上部の直接熱交換器部15に導入された汚泥に直接接触させ加温して予熱するものである。
【0024】
この直接熱交換器部15の入口部は、濃縮機12と移送ポンプ18を介して連結し、出口部は移送ポンプ19を介して反応器14と連結している。すなわち、直接熱交換器部15は、反応器14への汚泥の供給路上に連結されている。また、蒸発器部16の入口部は、移送弁20を介して反応器14の熱処理後汚泥排出部と連結し、出口部は後続の嫌気性処理装置22に到る配管と連結している。すなわち、蒸発器部16は、反応器14からの熱処理後の汚泥の排出路上に連結されている。
【0025】
予熱装置13に対しては加圧用のコンプレッサ24及びレリーフ弁25(設定圧以上になると開く機構の圧力調整弁)が設けられており、予熱装置13の内部圧力(直接熱交換器部15及び蒸発器部16に共通の内部圧力)は、反応器14内より低い圧力に保持されている。したがって、予熱装置13の直接熱交換器部15に導入された熱処理前の汚泥は、前記排出路から蒸発器部16に導入された熱処理後の汚泥から生じる蒸気により直接的に加熱される。
【0026】
反応器14は、予熱装置13から導入された予熱後の汚泥を所定の圧力下で加熱して熱処理し、液状化させるものである。そのために、この反応器14には、加熱源設備であるボイラ27から生じた高温蒸気が昇圧設備28により所定圧力に昇圧されて供給され、汚泥を加熱加圧する。この他、加熱用としてヒータ23が設けられている。ボイラ27の燃料には、嫌気性処理装置(以下、消化槽として説明する)22から、その消化反応により生じるメタンを含むバイオガス(消化ガス)を用いるとよい。この場合、バイオガスは脱硫装置29により脱硫してボイラ27に供給し燃焼させる。
【0027】
消化槽22は、投入された汚泥を嫌気性菌の働きによりバイオガスに転換するもので、予熱装置13を経て排出される排出汚泥を導入すべく、その入口部は、蒸発器部16の出口部と移送弁30、温度調整装置としての蒸発器31、移送ポンプ32を介して連結している。上記温度調整装置としての蒸発器31は、予熱装置13を経て排出される排出汚泥を嫌気性処理に適した温度に調整するもので、予熱装置13より低い内部圧力に設定され、この予熱装置13を経て排出された高温の汚泥を導入し、予熱装置13との内部圧力差により蒸気を発生させて汚泥温度を適正温度まで低下させる。発生した蒸気は圧力調整弁33を介して真空ポンプ34により導出し、所内熱源などに利用すればよい。
【0028】
なお、消化槽22に投入された汚泥の、バイオガスに転換された残りの固形分は、脱水機35により脱水された後に、焼却または埋立処理される。
【0029】
上記構成において、汚泥11は予熱装置13の直接熱交換器部15を通って、熱処理用の反応器14に導入される。熱処理後の汚泥は、予熱装置13の蒸発器部16に導入され、この蒸発器部16を通った汚泥は後続の消化槽22に導入される。消化槽22で発生したメタンガスを多く含むガス成分はガス配管により脱硫設備29を通った後にボイラ27に供給され、燃焼される。消化槽22で処理された汚泥の残りの固形分は脱水処理後廃棄される。
【0030】
以下、詳細に説明する。汚泥11(温度20℃とする)は、先ず、濃縮機12により含水率97%以下に濃縮される。この濃縮汚泥は、移送ポンプ18により、予熱装置13の上部に構成された直接熱交換器部15に導入される。一方、この直接熱交換器部15と下部に一体構成された蒸発器部16には、反応器14から、後述する熱処理により高温高圧となった熱処理後の汚泥が導入される。
【0031】
ここで、予熱装置13の一体型容器の内部圧力は、コンプレッサ24及びレリーフ弁25により202kPaに設定されている。すなわち、レリーフ弁25は設定圧以上になると開く機構の弁であるので、その設定圧を202kPaとすることにより、容易に内部圧力を調整できる。この内部圧力は、反応器14の内部圧力より低く設定されている。周知のように、飽和蒸気圧と水温との間には図8で示すような関係がある。このため、蒸発器部16に導入された高温(220℃とする)で、蒸発器部16の内部圧力より高圧の熱処理後の汚泥は、周囲圧力の低下により120℃になるまで蒸気を発生させながら減温する。この蒸発熱を、上部の直接熱交換器部15において熱処理前の汚泥に直接接触させる。このことにより、熱処理前の汚泥は20℃から(120−α)℃(αは、熱損失分で1〜5℃程度)まで加温され、予熱される。
【0032】
予熱装置13で予熱された汚泥は、移送ポンプ19により、反応器14に導入される。反応器14にはボイラ27より得られる高温蒸気が昇圧器28により昇圧され、供給されている。また、その他の熱源としてヒータ29で加温することにより、反応器14内は220℃,2.3MPaまで昇温昇圧される。このような高温高圧環境下での加圧熱水処理(以下、水熱処理と呼ぶ)により、高分子の固形性有機物は低分子化され、液状化する。例えば、下水処理場の生物反応槽からの引抜汚泥である余剰汚泥を対象とした場合、水熱処理により汚泥の固形分の70〜80%が液分へと変換する。
【0033】
このように熱処理後の液状化した220℃の高温汚泥は、反応器14と予熱装置13との内部圧力差により、移送弁20を開操作することにより移送され、蒸発器部16に導入される。蒸発器部16に導入された汚泥は、2.3MPaから202kPaまで減圧されることにより気化し、熱を奪われて、前述のように220℃から120℃まで減温される。この減温分は高温蒸気となり、前述のように、直接熱交換器部15において熱処理前の汚泥と直接接触して汚泥を(120−α)℃まで加温し、予熱する。
【0034】
蒸発器部16で120℃まで減温された汚泥は、蒸発器部16と、その排出側に連結された別の蒸発器31との圧力差により、移送弁30を開操作することにより蒸発器31に導入される。蒸発器31は、真空ポンプ34と圧力調整弁33により74kPaまで減圧しておく。このため、蒸発器31に導入された120℃の汚泥は、上記圧力差により、後続する消化槽22での嫌気性処理に好適な温度40℃まで減温される。
【0035】
この40℃に減温された汚泥は、移送ポンプ32により蒸発器31から移送され、消化槽32に投入される。そして、消化槽32において嫌気性菌の働きによりバイオガスに転換される。このようにして消化槽32で発生したメタンを60%以上含むバイオガスは脱硫設備29で硫化水素が除去された後、ボイラ27で燃やされる。ボイラ27で発生した蒸気の少なくとも一部は、前述のように汚泥の熱処理の加温に利用される。もちろん、他の熱源として利用することもできる。なお、バイオガスに転換された後の残りの固形分は脱水機35により脱水された後に、焼却または埋立処理される。
【0036】
このように、熱処理後の汚泥が気化する際の蒸気と熱処理前の汚泥とを、伝熱面を介さず直接接触させるため、従来の熱処理前の汚泥と熱処理後の汚泥を伝熱面を介して熱交換する熱交換器に比べ、高い熱交換効率を得られろ。この場合、外部から供給する熱量としては、反応器14において汚泥を、(120−α)℃から220℃までの100℃上昇させるのに必要な熱量のみでよく、200℃分の加温が可能である。また、構造が簡単で故障の生じにくい熱交換装置とすることが可能である。
【0037】
また、熱処理により、汚泥が低分子化され微生物に利用されやすい成分になっているため、熱処理しない場合に比べ、メタンガスの発生量を増加させることができる。また、低分子化されていることから、分解速度が速くなるため、消化日数(消化槽の滞留時間)も従来の1/3程度まで削減できる。すなわち、従来の消化槽の約1/3の容積で処理が可能となる。また、220℃の熱処理により、汚泥が脱水されやすくなっており、かつ固形分が液分に分解されていることにより、発生汚泥量は熱処理しない場合に比べ70〜80%削減され、廃棄汚泥の発生量を大幅に削減することができる。
【0038】
なお、各部の汚泥温度は上記実施の形態に限定されるものではなく、熱処理後の汚泥から発生する気化熱によって、熱処理前の汚泥が加温されるものであればよい。すなわち、亜臨界状態である374℃以下の温度範囲であれば、どのような温度を対象としたものであってもよい。
【0039】
また、反応器14に対し水熱処理用の蒸気を昇圧器28から直接吹き込むのではなく、直接熱交換器部15から反応器14への配管中(移送ポンプ19の下流側)に蒸気を吹き込んで、移送途中の汚泥を加温する構成であってもよい。
【0040】
さらに、反応器14に対する熱源としては、消化ガスをボイラ27により燃焼した際の蒸気に限らず、バイオガスにより発電機を稼動した場合に生じる排熱、例えば、ガスタービンの排気などであってもよく、また、脱水後の汚泥を焼却処理する場合にはその焼却炉のガスを使うものであっても良い。
【0041】
次に、図2で示す実施の形態を説明する。
【0042】
この実施の形態では、図1の実施の形態に比べ、予熱装置13における内部圧力調整部分が異なっている。すなわち、図1のように予熱装置13における内部圧力の調整をコンプレッサ24及びレリーフ弁25によって調節するのではなく、図2で示すように、圧力調整弁37を設け、これを開放することにより、予熱装置13における内部圧力を大気圧とした。このため、蒸発器部16では、反応器14から導入される熱処理後の汚泥を、大気圧に基く100℃まで減温し、その際に生じる蒸気を直接熱交換器部15において熱処理前の汚泥に直接接触させ、(100−α)℃に加温し予熱する。
【0043】
予熱装置13で予熱された汚泥は、移送ポンプ19により、反応器14に導入される。反応器14に導入された汚泥は、高温高圧環境下で水熱処理され、高分子の固形性有機物は低分子化され、180℃の液状化した汚泥となる。このように熱処理により液状化した180℃の高温汚泥は、反応器14と予熱装置13との内部圧力差により、蒸発器部16に導入されて気化し、熱を奪われて、前述のように大気圧に基く100℃まで減温される。この減温分は高温蒸気となり、前述のように、直接熱交換器部15において熱処理前の汚泥と直接接触して(100−α)℃まで加温し、予熱する。
【0044】
この100℃まで減温された汚泥は、蒸発器部16の排出側に連結された蒸発器31に導入され、圧力差により、後続する消化槽22での嫌気性処理に好適な温度40℃まで減温される。これ以後の動作は、図1で示した実施の形態と同じであり説明は省略する。
【0045】
このように、図2で示した構成とすることにより、余分の機器が不要となり、より故障の少ないシステムとすることができる。
【0046】
なお、消化槽22での嫌気性処理に好適な温度40℃への減温は、真空ポンプ34を使って減圧することにより、減温するものとしているが、別途冷却器を設けて、減温するものであってもよいし、より低温の水との熱交換によってもよい。
【0047】
次に、図3で示す実施の形態を説明する。
【0048】
この実施の形態では、図1の実施の形態に比べ、反応器14から、熱処理された汚泥の固形分を取り出すようにした構成が異なる。すなわち、反応器14の底部には熱処理された汚泥の固形分がたまるので、その底部に引き抜き弁38を有する固形分引き抜き装置39を連結し、反応器14に固液分離機能を持たせている。固液分離され、固形分引き抜き装置39により反応器14から引き抜かれた熱処理後汚泥の固形分は、移送ポンプ40を有する配管により消化槽22に供給される。また、固液分離された熱処理後汚泥の液分は、予熱装置13の蒸発器部16に排出管路を通して供給される。すなわち、図3の構成は、反応器14の下方から固形分を引き抜く機構38,39を備え、液分は予熱装置13の蒸発器部16に導入する構成である。
【0049】
ここで、熱処理後の汚泥の固液分離は、反応器14の底部に連結した引き抜き弁38により間欠的に固体分を引抜くことにより行われる。熱処理汚泥の沈降性は良好であり、固体分は下方に沈降する。反応器14の上澄み部分である液分は予熱装置13の蒸発器部16に導入される。この蒸発器部16を含む予熱装置13の容器内の圧力は202kPaに調整しておく。このことにより、熱処理後汚泥の液分は120℃まで減温される。
【0050】
予熱装置13の蒸発器部16に導入された熱処理後汚泥の液分は、固液分離により減少した固形分の体積分(減った体積をβ:0.2〜0.3とする)だけ、蒸発器部16で減圧する際の温度上昇分の蒸気量が少なくなり、熱処理前汚泥に対する直接熱交換器部15での予熱量は低下する。このため、その分、図1の実施の形態の場合と比べて直接熱交換器部15から流出する汚泥の温度上昇は小さくなる。すなわち、直接熱交換器部15から流出する汚泥の温度は(120−α)×(1−β)℃となる。このため、反応器14に外部から供給する必要熱量は大きくなる。しかし、反応器14から予熱装置13の蒸発器部16を含む排出流路の目詰まりは少なくなり、安定したシステムとすることが可能となる。
【0051】
予熱装置13の蒸発器部16から流出する液分は蒸発器31に導入され、40℃付近に減温された後、消化槽22に投入される。固液分離により反応器14から引き抜かれた固体分は、40℃付近に減温された液分とともに、前述のように消化槽22に投入される。その他の作用は図1の実施の形態と同様であり説明は省略する。
【0052】
この実施の形態によれば、熱処理後の溶液が気化する際の蒸気を、熱処理前の汚泥に、伝熱面を介さずに直接接触させるため、従来型の熱交換器より高い熱交換効率を得られ、約100℃上昇させるのに必要な熱量のみで200℃分の加温が可能である。また、予熱のために蒸発器部16を通して排出される熱処理後汚泥の液分は、固形分があらかじめ除去されているため移送管や移送弁等の流路のつまりが少ないシステム構成とすることができる。
【0053】
なお、固液分離は重力沈降のみで可能であり、新たな装置(膜、遠心濃縮)、高分子凝集剤などの薬品を投入しないため、安価なコストで実現可能である。もちろん、固液分離は遠心分離、膜分離により行うものであってもよい。ただし、膜分離に利用する膜は金属膜のような高温耐性のある膜でなくてはならない。また、固液分離した固形分は、消化槽22に投入することに限らず、その一部を再度熱処理するために、前段に設置した濃縮機12の後段に返送してもよい。また、消化槽22で処理せずそのまま脱水処理してもよい。
【0054】
次に、図4に示す実施の形態を説明する。
【0055】
この実施の形態では、直接熱交換器部15と蒸発器部16とを一体構成した予熱装置13を多段(図の例では3段)に設置したものである。すなわち、複数の予熱装置(3台の予熱装置13A,13B,13Cとする)は、それらの直接熱交換器部15A,15B,15Cが、濃縮機12の出口部から反応器14の入口部に到る汚泥の供給路上に直列に連結され、また、それらの蒸発器部16A,16B,16Cが、反応器14の出口部から蒸発器31の入口部に到る熱処理後汚泥の排出路上に複数段直列に連結されている。
【0056】
また、これら複数の予熱装置13A,13B,13Cの内部圧力は、反応器14から見て下流方向になるに従って(図示右側から左側に行くにしたがって)順次低く設定した。すなわち、反応器14から見て最も下流側の予熱装置13A(以下、第1の予熱装置とし、右側に向って順次第2、第3の予熱装置とする)が最も内部圧力が低くなるように圧力調整する。例えば、第1の予熱装置13Aの内部圧力は、圧力調整弁42及び蒸発機31と共通の真空ポンプ34により19.9kPaに制御する。第2の予熱装置13Bの内部圧力は、圧力調整弁37による大気開放により100kPaに制御する。第3の予熱装置13Cの内部圧力は、コンプレッサ24及びレリーフ弁25により360kPaに制御する。これらの圧力制御により、反応器14から供給され、各予熱装置13A,13B、13Cから流出する蒸発後の汚泥温度をそれぞれ、60℃、100℃、140℃にコントロールできる。
【0057】
上記構成において、汚泥11(温度20℃とする)は、濃縮機12により含水率97%以下に濃縮され、大気圧以下に減圧されている第1の予熱装置13Aとの圧力差により移送弁41を介して直接熱交換器部15Aに導入される。この直接熱交換器部15Aに導入された熱処理前の汚泥は、後述するように下部の蒸発器部16Aで発生した蒸気により加熱され、20℃から(60−α1)℃(α1は、第1の予熱装置13Aの熱損失分)まで予熱される。
【0058】
第1の予熱装置13Aで予熱された熱処理前の汚泥は第1の移送ポンプ19Aにより、第2の予熱装置13Bの直接熱交換器部15Bに導入され、後述するように下部の蒸発器部16Bで発生した蒸気により加熱され、(100−α1−α2)℃(α2は、第2の予熱装置13Bの熱損失分)まで予熱される。
【0059】
同様に、第2の予熱装置13Bで予熱された熱処理前の汚泥は第2の移送ポンプ19Bにより、第3の予熱装置13Cの直接熱交換器部15Cに導入され、後述するように下部の蒸発器部16Cで発生した蒸気により加熱され、(140−α1−α2−α3≒136)℃(α3は、第3の予熱装置13Cの熱損失分)まで予熱される。
【0060】
さらに、第3の予熱装置13Cで予熱された熱処理前の汚泥は第3の移送ポンプ19Cにより反応器14内に導入される。反応器14には、後続の消化槽22から発生したバイオガスを、脱硫装置29及びシロキサン除去装置42を介して燃料とする発電設備43からの高温排熱が、昇圧器28により1MPa付近まで昇圧され、加えられている。また、その他の熱源としてヒータ29で加熱する。反応器14は、これらにより、導入された汚泥を180℃に昇温させ水熱処理することができる。この水熱処理により、高分子の固形性有機物は低分子化され、液状化する。例えば、下水処理場の余剰汚泥を対象とした場合、水熱処理により汚泥の固形分の40〜50%が液分へと変換する。
【0061】
このように熱処理後の液状化した180℃の高温汚泥は、反応器14と第3の予熱装置13Cとの内部圧力差により、移送弁20Cを開操作することにより移送され、蒸発器部16Cに導入される。蒸発器部16Cに導入された汚泥は、1MPaから360kPaまで減圧されることにより気化し、熱を奪われて、前述のように140℃まで減温される。この減温分は高温蒸気となり、前述のように、直接熱交換器部15Cにおいて熱処理前の汚泥と直接接触して(140−α1−α2−α3≒136)℃まで加温し、予熱する。
【0062】
140℃まで減温された汚泥は、第3の予熱装置13Cと第2の予熱装置13Bとの内部圧力差により、移送弁20Bを開操作することにより移送され、蒸発器部16Bに導入される。蒸発器部16Bに導入された汚泥は、360kPaから100kPaまで減圧されることにより気化し、熱を奪われて、前述のように100℃まで減温される。この減温分は高温蒸気となり、前述のように、直接熱交換器部15Bにおいて熱処理前の汚泥と直接接触して(100−α1−α2)℃まで加温し、予熱する。
【0063】
100℃まで減温された汚泥は、第2の予熱装置13Bと第1の予熱装置13Aとの内部圧力差により、移送弁20Aを開操作することにより移送され、蒸発器部16Aに導入される。蒸発器部16Aに導入された汚泥は、100kPaから19.9kPaまで減圧されることにより気化し、前述のように60℃まで減温される。この減温分は高温蒸気となり、前述のように、直接熱交換器部15Bにおいて熱処理前の汚泥と直接接触して(60−α1)℃まで加温し、予熱する。
【0064】
60℃まで減温された汚泥は、蒸発器部16Aと、その排出側に連結された別の蒸発器31との圧力差により、移送弁30を開操作することにより蒸発器31に導入され、後続する消化槽22での嫌気性処理に好適な温度40℃まで減温される。以後の動作は、前述の各実施の形態と同様であり、説明は省略する。
【0065】
この実施の形態では、複数の予熱装置13A,13B,13Cの直接熱交換器部15A,15B,15Cを直列につなぐ構成とすることにより、熱処理前の汚泥を約136℃まで予熱できるので、反応器14では、180℃に昇温させる44℃分の熱を外部から投入するのみでよい。このような180℃までの昇温した熱処理による可溶化率は、220℃まで温度を上げる場合よりも低いが、後段の消化槽22での処理による最終的な可溶化率(汚泥の減容化率)は、80%以上の減容化が期待できる。また、温度をあげた際に問題となる色度に関しても、220℃まで昇温する場合に比べると良好となる。
【0066】
また、各予熱装置13A,13B,13Cの圧力調整は、100℃以下の温度を得る第1の予熱装置13Aに関しては、蒸発器1と共用の1台の真空ポンプ34で減圧すればよく、100℃の温度を得る第2の予熱装置13Bに関しては大気圧に解放することで圧力調整するので、圧力調整用ポンプの初期投資が安い。
【0067】
なお、予熱装置13の連結台数は3段に限らず、2段以上であれば、何段としてもよい。ある程度の段数までは多段にすればするほど、外部からの投入エネルギーは小さくてすみ、システム全体としての熱回収率は向上する。しかし、容器やポンプ、バルブなどが複数必要となり、より複雑な構成となってしまうので、両者がバランスした台数を選択することが望ましい。
【0068】
また、熱処理後汚泥を、60℃から消化槽22での処理に適する40℃へ減温する手段については、蒸発器31を真空ポンプ34により減圧するものに限らず、別途冷却器により冷却するものであってもよい。また、熱処理前の20℃の汚泥と熱処理後汚泥とを、伝熱面を介した通常の熱交換方法により、熱交換するものであってもよい。
【0069】
次に、図5に示す実施の形態を説明する。
【0070】
この実施の形態は、図4の実施の形態と同様に、複数(この場合も3台とする)の予熱装置13A,13B,13Cが直列に連結された構成であるが、ある特定の予熱装置(図の例では2段目の予熱装置13B)において、熱処理前の汚泥を一気に昇温するように構成している。そのために、任意の2つの予熱装置間(この場合は13A,13B間)の熱処理後汚泥の排出路上に蒸発器45を設置し、この蒸発器45で生成される蒸気と発電設備43から生じる排熱が、2段目の予熱装置13Bの直接熱交換器部15Bに吹き込まれるように配管を接続した構成となっている。
【0071】
ここで、蒸発器45の内部圧力は、反応器14から見て上流側となる予熱装置13Bから、自己を含め下流側の予熱装置13Aに向かって順次低くなるように設定されている。そして、上流側蒸発器部16Bから導入された熱処理後汚泥から、上流側との圧力差によって生じる蒸気を、上述のように予熱装置13Bの直接熱交換器部15Bに供給するための配管を設けている。
【0072】
ここで、第1、第2、第3の予熱装置13A、13B、13C、及び予熱装置13A、13B間に設置された蒸発器45との内部圧力は次のように設定されている。例えば、第1の予熱装置13Aは、真空ポンプ34と圧力調整弁42により内部圧力を19.9kPaに、蒸発器45の内部圧力は大気開放により100kPaに、第2、第3の予熱装置13B、13Cの内部圧力は、共通のコンプレッサ24と、異なる圧力に設定されたレリーフ弁25、46により、圧力を360kPa、1MPa付近にそれぞれ制御している。このことにより、熱処理後の汚泥の温度を、それぞれ、60℃、100℃、140℃、180℃にコントロールできる。
【0073】
反応器14では、発電設備43からの高温排熱を昇圧器28により22MPa付近まで昇圧することにより、220℃まで昇温し、導入された汚泥を水熱処理する。
【0074】
上記構成において、濃縮機12により含水率97%以下に濃縮された20℃の汚泥11は、第1の予熱装置13Aの直接熱交換器部15Aに導入され、下部の蒸発器部16Aで発生した蒸気により加熱され、20℃から(60−α1)℃(α1は、第1の予熱装置13Aの熱損失分)まで予熱される。
【0075】
第1の予熱装置13Aで予熱された熱処理前の汚泥は第2の予熱装置13Bの直接熱交換器部15Bに導入される。この直接熱交換器部15Bには、前述のように発電設備43から生じる排熱、蒸発器45で生じる蒸気が注入され、かつ下部の蒸発器部16Bで発生した蒸気が、それぞれ汚泥と直接接触することにより、(60−α1)℃から140℃まで一気に昇温される。
【0076】
このように第2の予熱装置13Bで140℃に予熱された熱処理前の汚泥は第3の予熱装置13Cの直接熱交換器部15Cに導入され、下部の蒸発器部16Cで発生した蒸気により加熱され、(180−α3)℃(α3は、第3の予熱装置13Cの熱損失分)まで予熱される。
【0077】
さらに、第3の予熱装置13Cで(180−α3)℃まで予熱された熱処理前の汚泥は反応器14内に導入される。反応器14内は前述のように22MPa付近まで昇圧されているので、導入された汚泥を220℃に昇温させ水熱処理する。この水熱処理により、高分子の固形性有機物は低分子化され、液状化する。
【0078】
このように熱処理後の液状化した220℃の高温汚泥は、反応器14と第3の予熱装置13Cとの内部圧力差により、蒸発器部16Cに導入され、22MPaから1MPaまで減圧されることにより気化し、180℃まで減温される。この減温分は高温蒸気となり、直接熱交換器部15Cにおいて熱処理前の汚泥と直接接触して、前述のように(180−α3)℃まで加温し、予熱する。
【0079】
180℃まで減温された汚泥は、第3の予熱装置13Cと第2の予熱装置13Bとの内部圧力差により、蒸発器部16Bに導入され、1MPaから360kPaまで減圧されることにより気化し、140℃まで減温される。この減温分は高温蒸気となり、直接熱交換器部15Bにおいて、蒸発器45からの蒸気や発電設備43からの排熱と共に熱処理前の汚泥と直接接触して予熱する。
【0080】
140℃まで減温された汚泥は、第2の予熱装置13Bと蒸発器45の内部圧力差により、蒸発器45に導入され、360kPaから100kPaまで減圧されることにより気化し、100℃まで減温される。この減温分は高温蒸気となり、反応器14から見て上流側となる第2の直接熱交換器部15Bに吹き込まれ、上述のように、下部蒸発器部16Bからの蒸気、及び発電設備43からの排熱と共に熱処理前の汚泥と直接接触して140℃まで一気に昇温して予熱する。
【0081】
100℃まで減温された汚泥は、蒸発器45と第1の予熱装置13Aとの内部圧力差により、蒸発器部16Aに導入され、100kPaから19.9kPaまで減圧されることにより気化し、60℃まで減温される。この減温分は高温蒸気となり、直接熱交換器部15Bにおいて熱処理前の汚泥と直接接触して(60−α1)℃まで加温し、予熱する。
【0082】
60℃まで減温された汚泥は、高温消化槽(60℃の高温菌による消化)に導入され、更に減容化される。以後の動作は、前述の各実施の形態と同様であり、説明は省略する。
【0083】
この実施の形態によれば、熱処理前の汚泥は第2の予熱装置13Bの直接熱交換器部15Bにおいて、60℃から一気に140℃まで昇温されるので、タンパク凝固の生じやすい60℃〜100℃の領域を一気に昇温することになり、タンパク凝固物による配管の閉塞、容器への付着が少ないシステムとすることができる。
【0084】
また、蒸発器45で発生する蒸気を第2の直接熱交換器部15Bに吹き込む構成としたことにより、蒸発器45の減圧時に生じた熱を有効利用することができる。
【0085】
さらに、後段の消化槽22を高温消化槽とすることにより、60℃の汚泥を40℃まで減温する必要がないため、40℃まで温度を減温するための設備が不要となり構成を簡素化できる。
【0086】
なお、後段の消化槽22に高温消化槽を用いない場合は、60℃の汚泥を40℃まで減温する必要があるが、その場合は、図6に示すように比較的低温(20℃)の生汚泥111を、消化槽22へ供給される熱処理後の汚泥に混合させればよい。すなわち、熱処理後汚泥の温度調整装置として、予熱装置13Aの熱処理後汚泥排出部から消化槽22への管路に連結されて、この管路に流れる排出汚泥に対し熱処理されていない汚泥を混合させる装置を用いればよい。
【0087】
ここで、熱処理対象の汚泥11を下水処理場の生物反応槽から生じる汚泥(余剰汚泥と呼ぶ)とした場合、下水処理場の生物処理前の沈殿池から生じる汚泥111を生汚泥と呼ぶ。生汚泥と余剰汚泥の発生量はほぼ1対1であり、予熱装置13Aの熱処理後汚泥排出部から流出する余剰汚泥の熱処理汚泥と濃縮後の生汚泥が配管中で混合する構成とする。
【0088】
図6の実施の形態において、余剰汚泥の熱処理部分に関しては、図5の実施形態と同様である。図6の実施の形態では、予熱装置13Aの熱処理後汚泥排出部から流出する60℃の熱処理後の汚泥を、熱処理を施さない20℃の生汚泥111と1対1の割合で混合することにより、消化槽22での処理に適した40℃まで減温する。すなわち、生汚泥と余剰汚泥の混合汚泥(40℃)が消化槽22に導入される。
【0089】
効果は以下のとおりである。
【0090】
図6の実施の形態によれば、消化槽22での生物分解性が比較的低い余剰汚泥を熱処理し、生物分解性が比較的高い生汚泥は熱処理しないで投入することにより、生汚泥を昇温するための設備・エネルギーを必要としないので、両方の汚泥を昇温する場合に比べ経済的である。また、生物分解性の低い余剰汚泥が熱処理されていることで、消化槽22でのガス発生量の増大、消化槽容量の削減、廃棄汚泥量の減容化を達成することができる。
【0091】
また、生汚泥と余剰汚泥の混合により60℃から40℃に減温するので、余剰汚泥を60℃から40℃に減温するための特別の設備を必要とせず、下水処理場の既設設備である消化槽(40℃の中温菌による消化)を利用できる。
【0092】
なお、対象汚泥は上記のように生汚泥と余剰汚泥の混合でなくともよく、例えば、汚泥の半分は熱処理し、半分は熱処理しないという方法をとり、熱処理した汚泥と熱処理しない汚泥の混合により、汚泥の減温を行うものであってもよい。また、混合比も1:1に限らず、どのような比で混合するものであってもよい。また、上記実施の形態では、混合を配管中で行うものとしたが、撹拌器が設置された混合槽を設け、その混合槽内で混合するものであってもよい。
【0093】
図1乃至図4で示した蒸発器31から生じる蒸気は、単に外部に放出するのではなく、例えば、給湯設備の熱源として用いるよう構成するとよい。このように構成すれば、余剰の熱源を有効利用することとなり、プラント全体の省エネルギーにつながる。もちろん、給湯設備に限らず、蒸発器31から生じる蒸気や加温された汚泥が減圧される際に乗じる蒸気を冷暖房設備など、その汚泥処理プラントの付帯設備の加温・減温に利用するものであればどのようなものであってもよい。
【0094】
次に、図7の実施形態を説明する。
【0095】
この実施の形態では、図3で示した固液分離を含む熱処理において、液分を高速嫌気リアクタ46により、例えば、UASB(Upflow Anearobic Sludge Blanket:上向流式嫌気性汚泥ブランケット)法による処理を行い、固体分は脱水処理を行うプロセスフローとする。
【0096】
上記構成において、反応器14は220℃で水熱処理を行うことによって、下水処理場の余剰汚泥であれば固形分の70〜80%は可溶化するため、固形分量は熱処理をしない場合の20〜30%となる。この水熱処理後汚泥の固形分を引抜き弁38で引き抜いて固液分離し、この固形分は、さらに濃縮機48で無薬注の濃縮後、脱水器35により脱水処理を行い、廃棄する。
【0097】
熱処理汚泥は沈降性が高いので、無薬注の遠心濃縮で高い濃縮性を得ることができ、固形分の含水率を低くすることができるので、更に固形分の容量を削減することができる。また、濃縮機48で生じる濃縮後の液分は蒸発器31に導入され、この蒸発器31で減温された後、リアクタ46にてUASB処理される。一方、反応器14から予熱装置13に流出する液分は、その蒸発器部16で及び蒸発器31で減温した後、汚泥の発生がほとんどないUASBプロセスで処理する。UASBプロセスではメタン生成菌が集積した粒状のグラニュールにより処理するため、一般の消化槽に比べ、短い滞留時間(容積)の処理槽で可溶化液を処理することができる。UASBの処理水は、水処理プロセス(例えば、下水処理場であれば、生物処理槽(曝気槽)の前に返送される)にて処理され、最終的には河川に放流される。
【0098】
図7の実施の形態によれば、溶液分をUASB法により処理するため、通常の消化槽(滞留時間30日)に比べ、容積を1/30程度まで小さくすることができ、省スペースの汚泥処理プロセスを実現できる。また、汚泥の熱処理により、熱処理しない場合に比べ、熱処理による可溶化、沈降性向上により、廃棄汚泥の発生量を容積ベースで80〜90%削減することができる。さらに、反応器14からの汚泥を無薬注で濃縮処理することにより、薬品の使用量が少なくランニングコストが安く、無機汚泥の発生量の少ないプロセスとすることができる。
【0099】
なお、リアクタ46によるUASB処理プロセスの後段に活性炭による色度処理プロセスを設けてもよい。また、色度処理プロセスはUASB処理の前段でもよく、さらに、活性炭処理に限らず、活性炭または凝集剤(鉄系の凝集剤)またはOHラジカルまたは電気分解処理などの単独もしくは組合せによる色度処理プロセスであってもよい。また、汚泥脱水後の脱離液も合わせて、色度処理するプロセスであってもよい。これにより、熱処理をした際に問題となる色度を改善できる。
【0100】
また高速の嫌気性処理プロセスのリアクタ46は、UASBプロセスに限らず、EGSB(Expanded Granular Sludge Bed)リアクタ、IC(Internal Circulation)リアクタなど、高負荷の有機物を処理できる高速リアクタであればどのような嫌気性処理プロセスであってもよい。また、反応器14からの固形分の処理は、図7のように濃縮後、脱水するのではなく、濃縮後、消化槽による嫌気性処理を実施した後に脱水処理を行うものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明による汚泥処理システムの一実施の形態を示すシステム構成図である。
【図2】本発明における予熱装置の圧力調整機構を変更した実施の形態を示すシステム構成図である。
【図3】本発明における反応器に固液分離機能を持たせた実施の形態を示すシステム構成図である。
【図4】本発明における予熱装置を多段に構成した実施の形態を示すシステム構成図である。
【図5】本発明における予熱装置を多段に構成し、かつ特定の予熱装置で一気に昇温させるための構成を採用した実施の形態を示すシステム構成図である。
【図6】本発明における温度調節装置の他の例を示す実施の形態のシステム構成図である。
【図7】本発明における反応器に固液分離機能を持たせ、その液分を高速嫌気リアクタで処理する実施の形態を示すシステム構成図である。
【図8】飽和蒸気圧と水温との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0102】
11 処理対象の汚泥
13 予熱装置
14 反応器
15 直接熱交換器部
16 蒸発器部
22 嫌気性処理装置(消化槽)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を所定の圧力下で加熱して熱処理する反応器と、
前記反応器への汚泥の供給路上に連結された直接熱交換器部と、前記反応器からの熱処理後の汚泥の排出路上に連結された蒸発器部とを一体化し、これらの内部は前記反応器内より低い圧力に保持され、前記直接熱交換器部に導入された熱処理前の汚泥を、前記排出路により前記蒸発器部に導入された熱処理後の汚泥から生じる蒸気を直接的に接触させて加熱する予熱装置と
を備えたことを特徴とする汚泥処理システム。
【請求項2】
前記予熱装置は、前記汚泥の供給路上及び熱処理後汚泥の排出路上に複数段直列に連結され、これら複数の予熱装置の内部圧力を、前記反応器から見て下流方向になるに従って順次低く設定したことを特徴とする請求項1に記載の汚泥処理システム。
【請求項3】
前記予熱装置が複数段直列に連結された熱処理後汚泥の排出路上の、任意の2つの予熱装置間に設置され、内部圧力が、前記反応器から見て上流側の予熱装置から自己を含め下流側の予熱装置に向かって順次低くなるように設定され、前記上流側予熱装置から導入された熱処理後汚泥から、上流側との圧力差によって蒸気を生じさせ、かつ、この蒸気を前記上流側予熱装置の直接熱交換器部に供給するための配管を有する蒸発器を備えたことを特徴とする請求項2に記載の汚泥処理システム。
【請求項4】
前記反応器により熱処理され、前記予熱装置の蒸発器部を経て排出される熱処理後汚泥を嫌気性処理する嫌気性処理装置を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の汚泥処理システム。
【請求項5】
前記嫌気性処理装置から発生する消化ガスを、前記反応槽に対する加熱源設備の燃料に用いることを特徴とする請求項4に記載の汚泥処理システム
【請求項6】
前記予熱装置の蒸発器部を経て排出される熱処理後汚泥を嫌気性処理に適した温度に調整する温度調整装置を備えたことを特徴とする請求項4に記載の汚泥処理システム。
【請求項7】
前記温度調整装置は、前記予熱装置より低い内部圧力に設定され、この予熱装置の蒸発器部を経て排出された熱処理後の汚泥を導入し、前記予熱装置との内部圧力差により蒸気を発生させて汚泥温度を低下させる蒸発器を用いたことを特徴とする請求項6に記載の汚泥処理システム。
【請求項8】
前記温度調整装置は、前記予熱装置の熱処理後汚泥排出部から嫌気性処理装置への管路に連結されて、この管路に流れる排出汚泥に対し熱処理されていない汚泥を混合させる装置であることを特徴とする請求項6に記載の汚泥処理システム。
【請求項9】
前記反応器は、熱処理された汚泥から、固形分が分離された液分を、前記予熱装置の蒸発器部に前記排出路を通して供給することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の汚泥処理システム。
【請求項10】
液分と分離された熱処理後の汚泥の固形分を、嫌気性処理装置に供給する配管を有することを特徴とする請求項9に記載の汚泥処理システム。
【請求項11】
液分と分離された熱処理後の汚泥の固形分を濃縮する濃縮機を有し、かつ濃縮により生じた液分を温度調節用の蒸発器を経て嫌気性処理装置に供給する配管を有することを特徴とする請求項9に記載の汚泥処理システム。
【請求項12】
前記反応器における熱処理は、60℃〜374℃の間の加熱処理または加熱加圧処理であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の汚泥処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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