説明

汚泥処理剤、再利用水、および汚泥の処理方法。

【課題】汚泥を簡単、且つより効率的に分解することのできる汚泥処理剤、該汚泥処理剤を用いる汚泥の処理方法、該処理方法により得られる再利用水、および該再利用水を用いる汚泥の処理方法の提供。
【解決手段】スフィンゴバクテリウム属菌、ペドバクター属菌、ウレイバチルス属菌、およびリソバクター属菌を含む微生物群を含有することを特徴とする汚泥処理剤、該汚泥処理剤と汚泥とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解することを特徴とする汚泥の処理方法、該汚泥処理方法により、前記汚泥中の有機物から生成した液状成分を採取することにより得られる再利用水、および該再利用水と汚泥とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解することを特徴とする汚泥の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を用いた汚泥処理剤、前記汚泥処理剤により汚泥中の有機物を分解する汚泥の処理方法、前記処理方法により得られる再利用水、および前記再利用水により汚泥中の有機物を分解する汚泥の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公共下水処理場、し尿処理場、農業集落排水処理施設等では、汚水が活性汚泥処理法等の生物的処理法によって処理されているが、このような処理システムから発生する大量の汚泥の処理が困難であるという問題点がある。また、汚泥は、従来から沈殿物槽等で沈殿した汚泥を引き抜き、脱水装置にて脱水を行い、焼却するか、あるいは埋め立て処分等されていた。しかし、このような処分では、多大な労力と手間を要し、運送や焼却等のコストは高く、そればかりでなく、環境問題を考慮すると、次々と排出され大量化する汚泥の廃棄場所はおのずから限定され、近い将来、各地方自治体でも汚泥の廃棄場所を確保できなくなる恐れがある。
従来報告されている汚泥の減量化方法は、大量処理には適しておらず、実際にはほとんどの汚泥は埋めたて処分されていることから廃棄場所を必要としないまでには至らない。その上処理には大型の処理設備の投資が必要であり、処理費用もかさむ問題がある。
特許文献1には、サーモアクチノマイセス、緑膿菌、コマモナス、スフィンゴモナス、アシネトバクター、ニトロソモナス、およびニトロバクターを含む微生物群を有効成分として汚泥または有機物を有効に分解する方法が記載されており、高い汚泥の減量率を示しているが、残存する汚泥の処理についての解決策を見出すまでには至っていない。
また、近年では、汚泥の再利用処理方法についても検討がされている。特許文献2には、ストレプトマイセス属に属する放線菌を含む微生物群を有効成分として含む汚泥分解剤を用いて汚泥を処理し、処理された液体分から再利用水を生成する工程を含む、汚泥の再利用処理方法が記載されており、高い汚泥減量率が示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3488853号公報
【特許文献2】特許第3753429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生活環境の向上、都市化、公共用水域の水質改善等により下水道から発生する汚泥量は増加しており、さらなる汚泥の減量化、および、汚泥の再利用処理技術の向上が求められている。
本発明は、汚泥を簡単、且つより効率的に処理することができる汚泥処理剤、該汚泥処理剤を用いる汚泥の処理方法、該処理方法により得られる再利用水、および、該再利用水を用いる汚泥の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有する汚泥処理剤、汚泥の処理方法、および再利用水を提供するものである。
(1)スフィンゴバクテリウム(Sphingobacterium)属菌、ペドバクター(Pedobacter)属菌、ウレイバチルス(Ureibacillus)属菌、およびリソバクター(Lysobacter)属菌を含む微生物群を含有することを特徴とする汚泥処理剤。
(2)前記微生物群が、スフィンゴバクテリウム・スピーシーズKL2C2(Sphingobacterium sp.KL2C2)、スフィンゴバクテリウム・スピーシーズKFC−77(Sphingobacterium sp.KFC−77)、ペドバクター・ドゥラクエ(Pedobacter duraquae)、ペドバクター・クリュオコニティス(Pedobacter cryoconitis)、ウレイバチルス・サーモファエリクス(Ureibacillus thermophaericus)、リゾバクター・スピーシーズGH41−7(Lysobacter sp.GH41−7)、およびリゾバクター・スピーシーズ2−O−7(Lysobacter sp.2−O−7)を含む、前記(1)記載の汚泥処理剤。
(3)前記(1)または(2)記載の汚泥処理剤と汚泥とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解することを特徴とする汚泥の処理方法。
(4)前記(3)記載の処理方法により、前記汚泥中の有機物から生成した液状成分を採取することにより得られる再利用水。
(5)前記(4)記載の再利用水と汚泥とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解することを特徴とする汚泥の処理方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の汚泥処理剤、および該汚泥処理剤を用いる汚泥の処理方法によれば、汚泥を簡単、且つより効率的に分解することができるため、短時間で汚泥を分解することができる。また、前記汚泥の処理方法は既存の施設を利用できるため、新規に施設を構築する必要がなく、手間およびコストを削減できる。
また、前記処理方法により得られる再利用水、および該再利用水を用いる汚泥の処理方法によれば、汚泥を簡単、且つより効率的に分解することができ、副産物である再利用水を活用することでコストが削減できる。さらに、該再利用水を用いた汚泥の処理方法は、公共下水処理場等の施設内における汚泥の処理に用いることができるのみならず、河川、湖沼、海洋等の自然環境下での汚泥の処理に用いることもできるため、汎用性が高い。また、該再利用水を用いた汚泥の処理方法は、前記汚泥処理剤を用いる汚泥の処理方法を行う施設から他の施設に再利用水を運搬し、該再利用水を投入するのみで処理を行うことができるため、新規に施設を構築する必要がなく、手間およびコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明を採用した、汚泥処理システムの概略図である。
【図2】本発明を採用した、河川等の汚泥処理を行うシステムの概略図である。
【図3】本発明を採用した、複数施設において汚泥処理を行うシステムの概略図である。
【図4】実施例1の処理システムの概略図である。
【図5】実施例1および比較例1における汚泥濃度の測定値を示すグラフである。
【図6】実施例2、比較例2、および比較例3における溶存酸素濃度の測定値を示すグラフである。
【図7】実施例4の処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、汚泥を簡単、且つより効率的に分解することのできる汚泥処理剤、該汚泥処理剤と汚泥とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解することを特徴とする汚泥の処理方法、該処理方法により、前記汚泥中の有機物から生成した液状成分を採取することにより得られる再利用水、および、該再利用水と汚泥とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解することを特徴とする汚泥の処理方法を提供する。
本明細書中、汚泥処理剤と汚泥とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解する汚泥の処理方法を、「汚泥処理方法1」という。また、再利用水と汚泥とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解する汚泥の処理方法を、「汚泥処理方法2」という。
【0009】
《汚泥処理剤》
本発明の汚泥処理剤を適用する汚泥は、有機物を含有する汚泥であれば特に限定はされず、公共下水処理場、し尿処理場、農業集落排水処理施設等から排出される汚泥、河川、湖沼、海洋等の汚泥等が挙げられる。
【0010】
本発明の汚泥処理剤は、スフィンゴバクテリウム属菌、ペドバクター属菌、ウレイバチルス属菌、およびリソバクター属菌を含む微生物群を含有する。
該微生物群は、スフィンゴバクテリウム・スピーシーズKL2C2、スフィンゴバクテリウム・スピーシーズKFC−77、ペドバクター・ドゥラクエ、ペドバクター・クリュオコニティス、ウレイバチルス・サーモファエリクス、リゾバクター・スピーシーズGH41−7、およびリゾバクター・スピーシーズ2−O−7を含むことが好ましい。
また、本発明の汚泥処理剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記微生物群以外の微生物を含有してもよい。上記以外の微生物としては、汚泥分解能を有する公知の微生物であることが好ましく、サーモアクチノマイセス(Thermoactinocyces)属菌、ストレプトマイセス(Streptomyces)属菌等が挙げられる。
本発明の汚泥処理剤における、微生物群の含有割合、および含有量は、特に限定されず、処理を行う汚泥量等に応じて、任意に調整できる。
【0011】
本発明の汚泥処理剤は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記微生物群以外の成分を含有してもよい。上記微生物群以外の成分としては、微生物群を分散させる水性溶媒、微生物群を吸着させる担持体等が挙げられる。
また、本発明の汚泥処理剤の形態は、特に限定はされず、微生物群を水性媒体(たとえば、水等)に分散させたもの、微生物群と担持体とを接触させて微生物群−担持体複合体としたもの、該複合体を水性溶媒に分散させたもの等が挙げられる。
なかでも、本発明の汚泥処理剤は、微生物群を吸着させる担持体として、ゼオライトを含有することが好ましく、汚泥処理剤の形態としては、微生物群−ゼオライト複合体を用いることが好ましい。該複合体は、ゼオライトの多孔質内に微生物群が吸着し、汚泥と微生物群との接触面積が増大するため、汚泥処理効果が向上する。
本発明で使用するゼオライトは、特に限定はされず、モルデナイト系ゼオライト等が挙げられる。モルデナイト系ゼオライトの好ましい例としては、株式会社ロッシュ社製「モルデナイトタイプゼオライト」(商品名)等が挙げられる。
本発明で使用するゼオライトの形状は特に限定されず、シート状、マット状、スティック状、袋状、多面体立体構造状等が挙げられる。また、本発明における、微生物群とゼオライトとの複合化の方法は、特に限定されず、好適な方法を用いることができる。
【0012】
本発明の汚泥処理剤における、微生物群以外の成分(たとえば、上記水性媒体、ゼオライト等)の含有割合、および含有量は、特に限定されず、任意に調整できる。
また、本発明の汚泥処理剤は、微生物群に悪影響を及ぼさない範囲内で、各種添加物等を適宜含有することができる。
【0013】
《汚泥処理方法1》
本発明の汚泥処理方法1は、汚泥と、前記汚泥処理剤とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解する汚泥の処理方法である。
【0014】
本発明の汚泥処理方法1において、処理を行う汚泥は、上述した汚泥処理剤を適用する汚泥と同様である。
【0015】
本発明の汚泥処理方法1において、汚泥と前記汚泥処理剤との接触方法としては、特に限定されないが、汚泥の貯蔵タンクの内部に該汚泥処理剤を設置した後に、汚泥を導入する方法、汚泥に対し該汚泥処理剤を直接散布する方法等が挙げられる。
【0016】
上記方法により、汚泥と前記汚泥処理剤との接触を行った後、汚泥中の有機物の分解は、嫌気的条件下で行ってもよいし、好気的条件下で行ってもよく、分解工程の途中で条件を変えてもよい。本発明の汚泥処理剤に含有される微生物群は好気性菌が主体となっているため、好気的条件下で行うことが好ましい。
汚泥の分解工程においては、適宜汚泥を攪拌し、汚泥に酸素を含む気体を導入して曝気を行うことが好ましい。
汚泥の分解は、10〜40℃の範囲で行うことが好ましく、汚泥の分解の期間は、汚泥の濃度や、微生物群の菌数等に応じて適宜調整できる。
【0017】
汚泥と汚泥処理剤とを接触させた後は、汚泥の分解効率を向上させるため、該汚泥中における微生物群の菌体数は、1×10〜1×10/ml程度であることが好ましい。
【0018】
本発明の汚泥の処理方法1を用いた場合、汚泥は、分解後も多くの有用な微生物を含み、該微生物は汚泥の分解能に優れる。そのため、上記手法により分解された汚泥に、さらに未分解の汚泥を投入し、繰り返し汚泥分解工程を行ってもよい。その際、汚泥中の微生物数を測定し、微生物群の菌体数が1×10〜1×10/mlであれば、汚泥の分解を好適に繰り返し行うことができる。
【0019】
《再利用水》
本発明における再利用水は、前記汚泥処理方法1により処理を施された汚泥中の有機物から生成した液状成分を採取し、該液状成分中に残存している汚泥の分解を行うことにより得られる。
【0020】
本発明において、前記汚泥処理方法1により処理を施された汚泥を固形成分と液状成分とに分離する方法は、好適な方法であれば特に限定されないが、汚泥を静置し、固形成分を沈殿させた後に、上澄みとして液状成分を分離する方法が簡便であり好ましい。また、凝集剤等を添加することにより、固形成分と液状成分との分離を行ってもよい。
【0021】
上記により分離された液状成分に対し、該液状成分中に残存している汚泥の分解が行われる。
残存汚泥の分解を行う方法は、特に限定はされず、特許第3753429号公報に記載の汚泥分解促進層を利用する方法を好適に用いることができる。
【0022】
また、上記の方法により採取された再利用水は、無機塩類および有益な微生物を豊富に含み、且つ、雌マウスにおける単回経口投与によるLD50値は2000mg/kg以上であり、急性経口毒性が低いことが確認されている。また、該再利用水は発酵処理を行っているため、肥料取締法に基づく肥料として用いることができる。したがって該再利用水は有益に利用することが可能である。
【0023】
《汚泥処理方法2》
本発明の汚泥処理方法2は、汚泥と、上記により得られた再利用水とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解する汚泥の処理方法である。
【0024】
本発明の汚泥処理方法2において、処理を行う汚泥は、有機物を含有する汚泥であれば特に限定はされず、公共下水処理場、し尿処理場、農業集落排水処理施設等から排出される汚泥、河川、湖沼、海洋等の汚泥等が挙げられる。
また、本発明の汚泥の処理方法2を適用する汚泥は、該再利用水の採取を行った処理施設、河川、湖沼、海洋等の汚泥であってもよく、異なる処理施設、河川、湖沼、海洋等の汚泥であってもよい。上述の方法により採取された再利用水を用いて、異なる処理施設、河川、湖沼、海洋等の汚泥の処理を行う場合、再利用水は適宜運搬できる。
【0025】
本発明の汚泥処理方法2において、汚泥と前記再利用水との接触方法としては、特に限定されないが、汚泥に対し該再利用水を直接投入する方法、汚泥処理施設の流入側より再利用水を投入する方法等が挙げられる。
汚泥処理施設の流入側としては、該施設の上流管路(マンホール等)、最初沈殿池、原水槽、流量調整槽、汚泥分解槽、汚泥貯留槽等が挙げられ、上流管路、原水槽が好ましい。上流管路より再利用水を投入した場合、管路内において汚泥の分解が促進されるため、管路内におけるスカムの付着や、硫化水素等のガスの発生を抑制できるという利点がある。
再利用水の添加量は特に限定されないが、処理を行う汚泥流入量に対して0.005〜10容量%であることが好ましい。
【0026】
図1は、本発明にかかる汚泥処理方法1および汚泥処理方法2を用いて、汚泥処理を行うシステムの概略図であり、該システムについて図中の符号を用いて説明する。最初沈殿池に流入した汚泥は、反応槽またはエアレーションタンクを通過した後、最終沈殿池に送り込まれる。次いで、最終沈殿池の汚泥は、希釈水(放流水)と併せて、汚泥濃度5000〜6000ppmに調整され、汚泥受槽11に送り込まれる。その後、汚泥は、汚泥受槽11から好気性汚泥消化タンク(12、13、14、15、16)を順次経て、再利用水貯留槽17へ投入される。該汚泥受槽11、好気性汚泥消化タンク12〜16、再利用水貯留槽17の内部には、本発明に係る汚泥処理剤が設置されており、汚泥の処理は各槽内で徐々に行われる。また、好気性汚泥消化タンク12〜16はそれぞれ2基ずつ設置されており、第1処理系列と第2処理系列として、同時に処理を行うことが可能である。再利用水貯留タンク17の内部には、濃縮汚泥引抜ポンプが設置されており、再利用水は引抜ポンプにより送り出される。採取された再利用水は、最初沈殿池に投入され、最初沈殿池において本発明に係る汚泥処理方法2が行われる。また、採取された再利用水は、肥料として利用することも可能である。
【0027】
上記方法により、汚泥と前記再利用水との接触を行った後、汚泥中の有機物の分解は、嫌気的条件下で行ってもよく、好気的条件下で行ってもよく、分解工程の途中で条件を変えてもよい。
汚泥の分解工程においては、適宜汚泥を攪拌し、汚泥に酸素を含む気体を導入して曝気を行うことが好ましい。
汚泥の分解は、15〜40℃の範囲で行うことが好ましく、汚泥の分解の期間は、汚泥の濃度等に応じて適宜調整できる。
また、再利用水を汚泥処理施設等以外において利用する場合;たとえば、湖沼底部の汚泥に対して直接再利用水を投入する場合、汚泥処理施設の上流管路上のマンホールより再利用水を投入する場合等;は、上述した分解条件の限りではない。
【0028】
本発明の汚泥処理方法1および汚泥処理方法2は、別々に用いてもよく、併用してもよい。
【0029】
本発明の汚泥処理方法1および汚泥処理方法2は、既存の汚泥施設内で行ってもよい。河川、湖沼、海洋等の汚泥を分解する際は、該処理を行う装置を対象汚泥近隣の屋外に設置することが好ましい。
【0030】
図2は、本発明に係る汚泥処理方法1および汚泥処理方法2を用いて、河川、湖沼、海洋等の底の汚泥処理を行うシステムの概略図である。
図2の汚泥処理システムでは、河川等の底の汚泥をエアリフトにより汲み上げ、河川等の近隣に設置した汚泥処理装置内に運搬する。該処理装置内では、上記汚泥処理方法1により汚泥が分解され、再利用水が得られる。その後、該再利用水を、自然流下もしくはポンプによる圧送により河川等の底の汚泥に還流することにより、本発明の汚泥の処理方法2が行われる。
【0031】
本発明の再利用水を得る工程は、上記汚泥処理方法2と同一の敷地内で行ってもよく、異なる敷地内で行ってもよい。異なる敷地内で行う場合について図を用いて説明する。
図3は、本発明に係る汚泥処理方法1および汚泥処理方法2を用いて、複数施設において汚泥処理を行うシステムの概略図である。
図3では、ある1つの農業集落排水処理施設をメイン施設とし、該メイン処理施設に本発明にかかる汚泥処理方法1を行うことが可能な設備を設置する。該メイン施設において汚泥処理方法1を行うことにより得られた再利用水を、メイン処理施設の流入側より投入して、メイン施設において汚泥処理方法2を行う。また、該メイン処理施設で得られた再利用水は、他の処理施設である他施設A、他施設B、および他施設Cに運搬され、該他施設A、該他施設B、および該他施設Cにおいても、汚泥処理方法2が行われる。
これにより、再利用水を得るために必要な汚泥処理方法1を行う設備を備えた処理施設はメイン処理施設のみでよく、他の処理施設では、該メイン処理施設から再利用水を運搬するのみで汚泥処理を行うことができ、コストを削減できるという利点がある。
【実施例】
【0032】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
[実施例1・比較例1]
長野県田沢処理場において、本発明に係る汚泥処理剤および汚泥処理方法1を用いて、以下のように汚泥処理を行った。図4は、実施例1の処理場のシステム概略図であり、該システムについて図中の符号を用いて説明する。
曝気沈砂槽10に流入した汚泥は、沈殿分解槽11〜12または13〜14を経て、接触曝気槽15、16、17へ順次移送される。次いで、汚泥は沈殿槽18へ流入し、液状成分は濾過ポンプ槽34、急速濾過装置36、逆洗ポンプ槽35、消毒槽27を経て放流される。また、沈殿槽18中の固形成分は引き抜かれ、引抜汚泥として、汚泥濃縮貯留槽29を経て搬出される。また、該システムでは、沈殿分解槽11〜12、および13〜14から採取された液状成分に対し、再利用水槽30〜33のいずれかの内部で残存汚泥の分解を行うことにより、再利用水を得ることができる。
実施例1における本発明の汚泥処理剤は、オールダッシュモルト(商品名;株式会社ロッシュ社製;以下、「旧汚泥処理剤」という。)に、スフィンゴバクテリウム・スピーシーズKL2C2、スフィンゴバクテリウム・スピーシーズKFC−77、ペドバクター・ドゥラクエ、ペドバクター・クリュオコニティス、ウレイバチルス・サーモファエリクス、リゾバクター・スピーシーズGH41−7、およびリゾバクター・スピーシーズ2−O−7を添加することにより調製した。
汚泥濃度(MLSS;mg/L)を測定した結果を図5に示す。
曝気沈砂槽内に本発明の汚泥処理剤(微生物菌体数:1×10/ml)を施用後、汚泥を導入し、処理を行った。
汚泥処理条件として、汚泥量は1槽あたり47m、汚泥濃度は6000mg/Lとした。空気はブロアーを用いて、1.5kg/cmの割合で導入した。ブロアーは、月曜〜木曜の8:00〜21:00は1時間毎に運転と運転停止とを繰り返し、月曜〜木曜の0:00〜1:00、および3:00〜4:00については運転を行った。上記以外の時間帯においては、ブロアーは運転停止とした。また、水中ポンプは常時稼動とし、これを8℃〜20℃で45日間行った。
また、比較例1として、長野県片桐北部クリーンセンター汚泥貯留槽第2室において、旧汚泥処理剤を用いて汚泥処理を行い、MLSSを測定した結果を併せて図5に示す。長野県片桐北部クリーンセンターのシステム、および汚泥処理条件は、長野県田沢処理場とほぼ同等である。
【0034】
図5の結果から、実施例1の汚泥処理剤を用いた場合は、比較例1の旧汚泥処理剤を用いた場合と比較して、より迅速に汚泥の分解が行われていることが判明した。
【0035】
[実施例2・比較例2〜3]
実施例2として、茨城県鹿嶋市浄化センターの返送汚泥2000mL(濃度4300mg/L)を2L容器に収容し、上記実施例1と同様にして調製した汚泥処理剤10ccを添加し、20分間曝気した後に、100ccのフラン瓶に移し、DOメーター(飯島電子工業社製)を用いて該瓶中の溶存酸素濃度(mg/L)を1分毎に61分間測定した。
比較例2として、汚泥処理剤に旧汚泥処理剤を用いた以外は実施例2と同様にして溶存酸素濃度の測定を行った。また、比較例3として、汚泥処理剤を無添加とした以外は実施例2と同様にして溶存酸素濃度の測定を行った。結果を図6に示す。
【0036】
図6の結果から、実施例2の汚泥処理剤を添加したものは、比較例2の汚泥処理剤を添加したもの、または比較例3の汚泥処理剤無添加のものと比較して、酸素消費速度が速く、微生物がより迅速に好気分解を行っていることが確認できた。
【0037】
[実施例3]
茨城県鹿嶋市浄化センター汚泥減量実機プラントにおいて、該センターの返送汚泥から再利用水を得た。
該汚泥減量実機プラントの壁面に、上記実施例1と同様にして調製した汚泥分解剤を噴霧し、施設本体の汚泥返送ピットから汚泥を移送して汚泥減量実機プラントに導入し、ブロアーから空気を1.5kg/cmの割合で導入して、2時間毎に曝気を繰り返し、これを9〜34℃で1.5か月間行い、汚泥を分解した。分解された汚泥を静置し、固形成分と液状成分とに分離し、液状成分を採取することにより再利用水を得た。
【0038】
[実施例4]
茨城県鹿嶋市中村地区の農業集落排水処理施設において、上記実施例3で得られた再利用水を用いて、汚泥の処理を行った。図7は、実施例4の農業集落排水処理施設のシステム概略図であり、該システムについて図中の符号を用いて説明する。
曝気沈砂槽10に流入した汚泥は、原水ポンプ槽22を経て、流量調整槽23へ移送される。次いで、汚水計量槽24を経て、汚泥は回分槽25へ流入し、曝気攪拌および好気性処理を施された後、液状成分は散水ポンプ槽26、消毒槽27を経て放流される。また、回分槽25中の固形成分は引き抜かれ、引抜汚泥として、汚泥濃縮槽28、汚泥貯留槽29を経て搬出される。
該システムにおいて、下記日程で、流量調整槽23へ該再利用水8mを投入し、500Lを同槽へ点滴注入した。再利用水の投入は、平成19年6月30日、同年9月19日、同年12月26日、平成20年3月21日、同年5月16日、同年7月29日に、毎回同量で行った。
回分槽25ならびに汚泥貯留槽29の一月あたりのMLSS平均値を測定した結果を表1に示す。MLSSは週に2回測定を行い、一月の平均値を算出した。
また、月の合計の推定汚泥量は、MLSSと引抜汚泥量から算出した。
活性汚泥沈殿率(sludge volume;SV)は、曝気槽中の混合液を1Lのメスシリンダーに1L入れ、30分静置後の沈殿汚泥の容積値(mL)を示し、たとえばSV値が70であれば該槽中の70%が汚泥であることを示す。SVの値が大きいほど、沈降性が悪く、汚泥が分解できていないことを意味する。月に8回SV値を測定し、一月のSV平均値を算出した結果を表1に示す。
また、一月の合計の推定汚泥量を用い、3ヶ月単位で、1日あたりの推定汚泥量の平均を算出した。該推定汚泥量平均を、平成19年4月〜6月の該推定汚泥量平均と比較して、削減割合を算出した。結果を表1に併せて示す。
なお、平成20年1月〜3月においては、期間中における汚泥処理方法の変更により、データが欠損しているため、表1からは省略してある。
【0039】
【表1】

【0040】
上記の結果から、本発明に係る再利用水および汚泥処理方法2を用いた場合、汚泥の減量が達成されることが確認できた。また、平成20年7月29日以降再利用水の投入を行わなかったところ、平成20年10月〜12月の1日あたり推定汚泥量は、同年4月〜6月、および同年7月〜9月と比較して増加したことから、再利用水の投入を継続的に行うことが、汚泥の減量に重要であることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフィンゴバクテリウム(Sphingobacterium)属菌、ペドバクター(Pedobacter)属菌、ウレイバチルス(Ureibacillus)属菌、およびリソバクター(Lysobacter)属菌を含む微生物群を含有することを特徴とする汚泥処理剤。
【請求項2】
前記微生物群が、スフィンゴバクテリウム・スピーシーズKL2C2(Sphingobacterium sp.KL2C2)、スフィンゴバクテリウム・スピーシーズKFC−77(Sphingobacterium sp.KFC−77)、ペドバクター・ドゥラクエ(Pedobacter duraquae)、ペドバクター・クリュオコニティス(Pedobacter cryoconitis)、ウレイバチルス・サーモファエリクス(Ureibacillus thermophaericus)、リゾバクター・スピーシーズGH41−7(Lysobacter sp.GH41−7)、およびリゾバクター・スピーシーズ2−O−7(Lysobacter sp.2−O−7)を含む、請求項1記載の汚泥処理剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の汚泥処理剤と汚泥とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解することを特徴とする汚泥の処理方法。
【請求項4】
請求項3記載の処理方法により、前記汚泥中の有機物から生成した液状成分を採取することにより得られる再利用水。
【請求項5】
請求項4記載の再利用水と汚泥とを接触させ、該汚泥中の有機物を分解することを特徴とする汚泥の処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−247084(P2010−247084A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99856(P2009−99856)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(502411942)株式会社ロッシュ (2)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(509110286)
【Fターム(参考)】