説明

汚泥処理装置

【課題】 十分な汚泥の分散を図り、オゾン処理反応効率が高く、かつ汚泥の改質効果の大きい汚泥処理装置を提供する。
【解決手段】 本発明の汚泥処理装置は、最終沈殿池2から引き抜かれた有機性の被処理汚泥中にオゾン発生器8から導入したオゾンを注入・溶解するオゾン溶解手段と、溶解したオゾンと処理対象有機物を一定時間反応させ、かつ未溶解オゾンガスを処理汚泥と分離するオゾン反応槽7とを有し、被処理汚泥を改質するもので、オゾン反応槽7の前段に、汚泥を滞留させる滞留槽11と、滞留槽中の汚泥を加圧ポンプにより加圧し、キャビテーション発生器14によりキャビテーションを発生させ、滞留槽に循環させる第1循環ライン12と、オゾン反応槽の後段から分岐された処理汚泥を滞留槽の前段へ循環させる第2循環ライン19とを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理工程において発生した汚泥をキャビテーション処理とオゾン反応を用いて改質し、廃棄汚泥量の減量を図る汚泥処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水の処理法として、活性汚泥法は処理能力が高いため下水処理等の各分野で広く利用されている。この浄化原理は、微生物が排水中の有機物を餌として分解・除去する作用によるため、処理の結果として余剰汚泥が発生する。発生した汚泥は、全産業廃棄物の中で占める割合が高く、また最終処分場の残余容量が極めて少ないこともあり、多大なコスト負担となっている。このような状況から余剰汚泥をできるだけ少なくすることが望まれており、各種手段を用いた汚泥減量法の導入が検討されつつある。
従来の技術では、余剰汚泥の一部を加圧噴射処理した後、オゾンを利用して改質することにより生物分解性を高め、それを再び生物反応槽へ戻すことで生物酸化し、余剰汚泥量を減量させている。(例えば、特許文献1参照)
この時の汚泥改質処理の装置は、図3のようになっている。図3は従来の汚泥処理を示す説明図である。図において、1は生物反応槽、2は最終沈殿池、3は汚泥処理装置、4は加圧噴射装置、7オゾン反応槽、8はオゾン発生器、9は散気管、10は循環ポンプである。加圧噴射装置4は、高圧ポンプ5とリアクタ6からなる。
最終沈殿池2から引き抜かれた一部の汚泥は、加圧噴射装置4の高圧ポンプ5によって加圧され、リアクタ6に噴射されて加圧噴射処理される。加圧噴射処理により、活性汚泥フロックが分散するので、オゾン反応効率を上昇させることができ、オゾンの発生量を低減させることができる。加圧噴射処理された汚泥は、オゾン反応槽7に供給される。オゾン発生器8により生成したオゾン化ガスは、オゾン反応槽7の底部に設置された散気管9により槽内に供給され、汚泥と気液混合される。オゾン処理された改質汚泥は、この後、生物反応槽1に戻されるといったものである。この時、活性汚泥中のMLSS成分は大部分が生物由来の有機物であることから、加圧噴射による物理的作用により、活性汚泥フロックを分散させる。その後、酸化力の強いオゾンの化学的作用により、生物体を構成する細胞壁や細胞膜が破壊され、細胞中から有機酸や糖などが放出される。こうした作用により汚泥は生物分解性が高くなり、生物反応槽に戻ると無機物にまで分解され汚泥が無くなる。
またこのような装置は余剰汚泥の嫌気性消化プロセスを経てメタンガスを生成し、これをバイオマス資源として有効に利用することを目的とした設備において、メタンガスの生成を促進するための手段としても検討されている。
【特許文献1】特開2004−275996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の汚水処理は、加圧噴射装置を通過した後、オゾン反応槽へ流入する構造となっているため、物理的可溶化性能が不十分であるという問題があった。すなわち、流入した余剰汚泥が物理的に可溶化されるのは、加圧噴射装置を通過する時のみであり、活性汚泥フロックの分散が不十分なままでオゾン処理が行われていると考えられるためである。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、キャビテーション循環処理滞留槽をオゾン反応槽の前段に設置することにより、十分な汚泥の分散を図り、オゾン処理反応効率が高く、かつ汚泥の改質効果の大きい汚泥処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するため、本発明は、次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、最終沈殿池から引き抜かれた有機性の被処理汚泥中にオゾン発生器から導入したオゾンを注入・溶解するオゾン溶解手段と、溶解したオゾンと処理対象有機物を一定時間反応させ、かつ未溶解オゾンガスを処理汚泥と分離するオゾン反応槽とを有し、前記被処理汚泥を改質する汚泥処理装置において、前記オゾン反応槽の前段に汚泥を滞留させる滞留槽と、前記滞留槽中の汚泥を導入し加圧ポンプとキャビテーション発生器によりキャビテーションを発生させ前記滞留槽に循環させる第1循環ラインと、前記オゾン反応槽の後段から、分岐された処理汚泥を前記滞留槽の前段へ循環させる第2循環ラインとを設けたものである。
請求項2に記載の発明は、オゾン溶解手段をエジェクター方式としたものである。
請求項3に記載の発明は、前記オゾン反応槽と前記滞留槽とを同一構造物とし、内部仕切りにより区分したものである。
請求項4に記載の発明は、前記オゾン反応槽に、前記オゾン反応槽からの汚泥を加圧する加圧ポンプとオゾンの溶解を行う前記オゾン溶解手段とによる第3循環ラインを設けたものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明によると、滞留槽に第1循環ラインを設けたので、キャビテーション発生器の内部において高い真空度が得られ、汚泥を含む液体中に強力な物理的強度を持つキャビテーションが発生する。この時、キャビテーションによって発生する泡の崩壊時の衝撃力によって、その空間を通過する汚泥細胞が破砕されて細かく分解されるとともに、粘性が低下する。キャビテーション処理は、滞留槽を介して循環的に行われ、十分に汚泥細胞が細かく分解される。また、第2循環ラインを設けることで、オゾン処理後の汚泥を再度キャビテーション処理することができ、相乗効果が得られる。
請求項2記載の発明によると、エジェクターを設けることによりオゾンが注入・混合されて、汚泥とオゾンの接触・反応が起こり、オゾンの強力な化学的酸化作用により汚泥が改質される。この時、前段のキャビテーション処理により汚泥が細かく分解されているため、オゾンの接触効率が上昇し、汚泥改質効果が改善される。
請求項3記載の発明によると、オゾン反応槽と滞留槽とを同一構造物とし、内部仕切りにより区分したので、同一槽内で各処理が行われることになり、その相乗効果を得ることができる。
請求項4記載の発明によると、オゾン溶解手段を配置した第3循環ラインを設けたので、
キャビテーション処理、オゾン処理の循環回数を個別に設定することができるので、対象とする汚泥に適した処理条件をきめ細かく設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明の実施例を示す汚泥処理装置の概略図である。図において、11はキャビテーションが注入された汚泥を循環させ滞留させる滞留槽、12は循環ポンプ13とキャビテーション発生器14からなり発生させたキャビテーションを滞留槽11に供給する第1循環ラインである。16はエジェクター、7はオゾン反応槽、19はオゾン反応槽7から分岐された汚泥を滞留槽1に還流する第2循環ラインである。20は循環ポンプ、15は加圧ポンプ、18は排オゾン分解装置である。なお、同じ機能のものは、同じ符号を付しているため、前出のものは説明を省略する。
本発明が特許文献1と異なる部分は、汚泥を滞留させる滞留槽と、加圧ポンプとキャビテーション発生器とからなるキャビテーションの循環処理ラインと、オゾン反応槽の後段から滞留槽の前段へのオゾン・キャビテーション循環ラインとを設けた点である。
【0008】
次に、本実施例の動作について説明する。
(1)まず、被処理汚泥が滞留槽11へ引き込まれる。そこで循環ポンプ13により、加圧された被処理汚泥はキャビテーション発生器14に導入される。キャビテーション発生器14の内部は、オリフィス構造となっており、被処理汚泥がその小口径部分を通過する際に真空状態となるためにキャビテーションが発生する。この時、フロック状に結合された汚泥や繊維状構造の成分は、キャビテーションによって発生する泡の崩壊時の衝撃力により細分化され均等化される。同時に汚泥の細胞壁や細胞膜も破壊されて細胞内の酵素が外部に溶出し可溶化され、液の粘度も低下する。この操作を第1循環ライン12と滞留槽11とで繰返し行うことにより、後段におけるオゾン注入の被処理汚泥の接触面積が増加し、反応効率が上昇する。ここで、キャビテーション発生器14の前後の最適な差圧は、被処理汚泥の性状や粘度により異なるため対象とする条件に応じて0.1〜1.5MPaの範囲内とする。
(2)次に、被処理汚泥はエジェクター16に導入されて、オゾン発生器8から供給されるオゾン化ガスと混合される。ここで、強力な酸化力を持つオゾンと接触し化学的な作用を受けて易生物分解性物質に分解される。エジェクター16の前後の最適な差圧は、0.05〜0.2MPaの範囲内に設定することで効率の良い運転ができる。
(3)その後、汚泥はオゾン反応槽7に導入される。ここで、排オゾンガスとの気液分離が行われ、排オゾンガスは排オゾン分解装置18によって無害化される。
また、加圧ポンプの運転出力を制御することによりキャビテーションの強度を変化させることができる。
【実施例2】
【0009】
図2は本発明の実施例2を示す汚泥改質装置の説明図である。
図において、17は複合槽、21は第3循環ライン、22は循環ポンプである。
複合槽17は滞留槽17aとオゾン反応槽17bとを同一構造物とし、内部仕切りにより区分したものである。そして、エジェクター16と循環ポンプ22により第3循環ライン21を構成している。複合槽17の滞留槽17aとオゾン反応槽17bの機能は、実施例1の滞留槽11、オゾン反応槽7と同じであり、その他の構成も実施例1(図1)と同じである。
複合槽17内の仕切り板の前段の滞留槽17aにおいて、キャビテーション循環処理が行われ、押出し流れ構造によって押出された後段のオゾン反応槽17bでエジェクター16によるオゾン注入処理、排オゾンガスと汚泥の気液分離処理が行われ、排オゾンガスは排オゾン分解装置18によって無害化される。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明の汚泥処理装置は効率的に有機汚泥を改質し、生物分解性が高まるため、公共下水や、化学工場や食品工場など産業排水等の有機物除去のための微生物を利用した汚水処理全般において、汚泥の嫌気性消化プロセスを経てメタンガスを生成し、これをバイオマス資源として有効に利用することやそれに伴う汚泥の減量化を目的とした設備への導入も適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1を示す汚泥処理装置を用いた汚水処理システムの構成図
【図2】本発明の実施例2を示す汚泥処理装置を用いた汚水処理システムの構成図
【図3】従来の汚泥処理装置を用いた汚水処理システムを示す構成図
【符号の説明】
【0012】
1 生物反応槽
2 最終沈殿池
3 汚泥処理装置
4 加圧噴射装置
5 高圧ポンプ
6 リアクタ
7 オゾン反応槽
8 オゾン発生器
9 散気管
10、13、20、22循環ポンプ
11 滞留槽
12 第1循環ライン
14 キャビテーション発生器
15 加圧ポンプ
16 エジェクター
17 複合槽
17a 滞留槽
17b オゾン反応槽
18 排オゾン分解装置
19 第2循環ライン
21 第3循環ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終沈殿池から引き抜かれた有機性の被処理汚泥中にオゾン発生器から導入したオゾンを注入・溶解するオゾン溶解手段と、溶解したオゾンと処理対象有機物を一定時間反応させ、かつ未溶解オゾンガスを処理汚泥と分離するオゾン反応槽とを有し、前記被処理汚泥を改質する汚泥処理装置において、
前記オゾン反応槽の前段に汚泥を滞留させる滞留槽と、前記滞留槽中の汚泥を導入し加圧ポンプとキャビテーション発生器によりキャビテーションを発生させ前記滞留槽に循環させる第1循環ラインと、前記オゾン反応槽の後段から、分岐された処理汚泥を前記滞留槽の前段へ循環させる第2循環ラインとを設けたことを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項2】
前記オゾン溶解手段がエジェクター方式であることを特徴とする請求項1記載の汚泥処理装置。
【請求項3】
前記オゾン反応槽と前記滞留槽とを同一構造物とし、内部仕切りにより区分することを特徴とする請求項1に記載の汚泥処理装置。
【請求項4】
前記オゾン反応槽に、前記オゾン反応槽からの汚泥を加圧する加圧ポンプとオゾンの溶解を行う前記オゾン溶解手段とによる第3循環ラインを設けたことを特徴とする請求項1または3記載の汚泥処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−18309(P2008−18309A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190321(P2006−190321)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】