説明

汚泥掻き寄せ機

【課題】汚泥掻き寄せ機の運転を継続しつつ、無端回動体が駆動回転体や従動回転体から離脱することを防止することができる汚泥掻き寄せ機を提供する。
【解決手段】汚泥掻き寄せ具1を回動方向に間隔を隔てて取り付けてある無端回動体2が、横軸芯周りで回転する駆動回転体と従動回転体とに亘って回動自在に巻き掛けられ、沈殿池の底部6の汚泥を汚泥掻き寄せ具1で汚泥ピット15側に掻き寄せる汚泥掻き寄せ機であって、沈殿池の底部6の長手方向に沿って一対のレール部材20が略平行に設けられ、汚泥掻き寄せ具1は夫々のレール部材20の側部に沿って移動するようにレール部材20との摺動部1aを有し、レール部材20のうち汚泥ピット側の端部から所定の領域の側部が他の領域の側部よりも摺動部1aの側に突出するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥掻き寄せ具を回動方向に間隔を隔てて取り付けてある無端回動体が、横軸芯周りで回転する駆動回転体と従動回転体とに亘って回動自在に巻き掛けられた汚泥掻き寄せ機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記汚泥掻き寄せ機は、例えば汚水処理設備における沈澱池に設置され、横軸芯周りで回転する駆動回転体と従動回転体とに亘って巻き掛けられた無端チェーンなどの無端回動体を駆動回動させることにより、その無端回動体に取り付けてある汚泥掻き寄せ具で、沈澱池に沈澱している汚泥を沈澱池底部に設けてある排出溝に掻き寄せることができるものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−80402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような汚泥掻き寄せ機では、長期に亘る運転のうちに、無端回動体や駆動回転体若しくは従動回転体に汚泥が蓄積することにより、無端回動体が駆動回転体や従動回転体から離脱する原因となる場合があった。この場合、汚泥掻き寄せ機の運転を停止して汚泥を除去することにより無端回動体が駆動回転体や従動回転体から離脱することを防止する必要があり、効率的に汚泥を搬送できない状況が生じる可能性があった。
なお、比較的小型の汚水処理設備においては、あまり上記問題は発生しなかったが、比較的処理量の多い汚水処理設備においては、複数系統の沈殿池の汚泥を最終的にまとめて搬送する場合がある。この場合、搬送する汚泥の量が多くなることから、特に汚泥による影響が大きくなり、特に上記の問題が生じやすいという課題を今回新たに発見するに至った。
本発明は、上記の新たに発見された課題に鑑みてなされたものであり、汚泥掻き寄せ機の運転を継続しつつ、無端回動体が駆動回転体や従動回転体から離脱することを防止することができる汚泥掻き寄せ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る汚泥掻き寄せ機は、汚泥掻き寄せ具を回動方向に間隔を隔てて取り付けてある無端回動体が、横軸芯周りで回転する駆動回転体と従動回転体とに亘って回動自在に巻き掛けられ、沈殿池の底部の汚泥を前記汚泥掻き寄せ具で汚泥ピット側に掻き寄せる汚泥掻き寄せ機であって、前記汚泥掻き寄せ機が設けられる沈殿池の底部の長手方向に沿って一対のレール部材が略平行に設けられ、前記汚泥掻き寄せ具は夫々のレール部材の側部に沿って移動するように前記レール部材との摺動部を有し、前記レール部材のうち前記汚泥ピット側の端部から所定の領域の前記側部が他の領域の前記側部よりも前記摺動部の側に突出するように構成されている。
【0006】
本構成のように、比較的汚泥が少ない汚泥掻き寄せ具の移動方向上手側においては、レール部材の側部を摺動部の側に突出させず、レール部材と摺動部との間にある程度隙間を設けて汚泥掻き寄せ具の導入をスムーズに行い、レール部材や汚泥掻き寄せ具側の部材の磨耗を防止することができる。一方、汚泥が多くなる汚泥掻き寄せ具の移動方向下手側つまり、汚泥ピットの近傍では、レール部材の側部を摺動部の側に突出させることにより、レール部材と摺動部との間の隙間をなくして或いは小さくして、汚泥掻き寄せ具の幅方向の移動を規制することができる。このように、汚泥掻き寄せ具の移動を規制することにより、無端回動体の移動を規制して、従動回転体の鍔部間に確実に無端回動体が誘導される。このため、無端回動体の脱輪を防止することができる。
【0007】
上記構成において、前記従動回転体の周方向に沿って一対の鍔部が形成され、前記一対の鍔部間に入り込む従動回転体規制部材が設けられていると好適である。
【0008】
本構成によれば、従動回転体の一対の鍔部に入り込む従動回転体規制部材を備えるので、従動回転体規制部材が従動回転体に当接することにより上下方向の移動を規制し、従動回転体規制部材が一対の鍔部に当接することにより横方向の移動を規制する。このため、移動規制部材が従動回転体に当接することにより、従動回転体や無端回動体に汚泥が蓄積した場合であっても、汚泥の影響により、従動回転体が例えば回動軸心に対してねじれ方向等の回動方向以外の方向に移動するのを防止することができる。この結果、無端回動体が従動回転体から脱離することを防止することができる。従って、汚泥掻き寄せ機の運転を継続しつつ、無端回動体がはずれることを防止することができる汚泥掻き寄せ機を提供することができる。
【0009】
上記構成において、前記従動回転体規制部材が前記従動回転体に溜まった汚泥を除去する汚泥除去手段として機能すると好適である。
【0010】
本構成によれば、従動回転体規制部材が脱輪の原因となる従動回転体に溜まった汚泥を除去することが可能となる。この結果、無端回動体が溜まった汚泥に乗り上げて従動回転体からはずれることを効果的に防止することができる。
【0011】
上記構成において、汚泥掻き寄せ機が設けられた沈殿池の底部の長手方向における一方側の端部の近傍に汚泥掻き寄せ具により掻き寄せた汚泥が落下する汚泥ピットが設けられ、前記従動回転体が少なくとも前記一方側と他方側とに設けられ、前記鍔部及び前記従動回転体規制部材が前記一方側の前記従動回転体に設けられていると好適である。
【0012】
本構成によれば、汚泥ピットと反対側の沈殿池の底部から汚泥ピット側の底部に向けて汚泥が搬送されることとなるので、汚泥ピット側に向かうほど汚泥の量が多くなり、汚泥ピット側の従動回転体の近傍が最も汚泥の量が多くなり、汚泥ピット側の従動輪への汚泥の堆積量が多くなる。汚泥ピット側の従動回転体に移動規制部を設けることにより、最も汚泥が蓄積し易く脱輪の可能性が高い従動回転体に移動規制部を設けることとなるので、無端回動体が従動回転体からはずれることを確実に防止することができる。
【0013】
上記構成において、前記無端回動体に溜まった汚泥を除去する汚泥除去部材が設けられていると好適である。
【0014】
本構成によれば、汚泥除去部材により、脱輪の原因となる無端回動体に溜まった汚泥を除去することが可能となる。この結果、無端回動体が従動回転体からはずれることを防止することを効果的に防止することができる。
【0015】
上記構成において、前記無端回動体の上方向の移動を規制する上方向移動規制部材が設けられていると好適である。
【0016】
本構成によれば、上方向移動規制部材により、無端回動体の上方向の移動を規制することにより、従動回転体と無端回動体の鉛直方向の間隔が制限されるので、従動回転体の鍔部間に確実に無端回動体が誘導される。このため、無端回動体が従動回転体からはずれることを防止することを効果的に防止することができる。
【0017】
上記構成において、前記無端回動体の横方向の移動を規制する横方向移動規制部材が設けられていると好適である。
【0018】
本構成によれば、横方向移動規制部材により、無端回動体の横方向の移動を規制することにより、従動回転体の鍔部間に確実に無端回動体が誘導される。このため、無端回動体が従動回転体からはずれることを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】汚水貯留槽の全体縦断面図である。
【図2】ノッチチェーン及び駆動回転体を示す図である。
【図3】汚水貯留槽の汚泥ピット近傍の部分を示す上面図である。
【図4】汚水貯留槽の汚泥ピット近傍の部分を示す側面図である。
【図5】取付台近傍を示す斜視図である。
【図6】汚水貯留槽の横断面図であり、(a)は汚泥掻き寄せ具の移動方向上手側における横断面図であり、(b)は汚泥掻き寄せ具の移動方向下手側(汚泥ピットの近傍)における横断面図である。
【図7】レール部材の別形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、汚水処理設備における沈澱池Aの縦断面を示し、本発明による汚泥掻き寄せ機BとスカムスキマCとが設置されている。
【0021】
前記汚泥掻き寄せ機Bは、汚泥掻き寄せ具1を回動方向に間隔を隔てて取り付けてある無端回動体としての左右一対の無端チェーン2の夫々が、横軸芯X周りで回転する駆動回転体としての駆動スプロケット3と、従動回転体としての第1〜第3従動スプロケット4(4a,4b,4c)とに亘って回動自在に巻き掛けられ、駆動スプロケット3を駆動回転させる駆動装置5を設けてある。
【0022】
前記駆動スプロケット3は、沈澱池Aの長手方向端部における水面WL近くに支持され、第1従動スプロケット4aは、沈澱池Aの長手方向略中央における水面WL近くに支持され、第2,第3従動スプロケット4b,4cは、沈澱池Aの長手方向両端側における底面6近くに支持されている。
【0023】
前記駆動スプロケット3は、図2に示すように、回転軸部材7を挿通するボス8の外周側に、二枚の円板部材9を互いに平行に同芯状に設けて、その二枚の円板部材9に亘って、複数の円柱状軸部材である係合ピン10を周方向に等間隔を隔てて回転軸芯Xに沿う姿勢で固定してあり、第1〜第3従動スプロケット4a,4b,4cの夫々は、図3に示すように、無端チェーン2を入り込ませる周溝11をその外周部に設けてある。
図1に示すように、第1従動スプロケット4aは押圧部材17の近傍に設けられ、第2従動スプロケット4bは汚泥ピット15とは反対の側の端部に設けられ、第3従動スプロケット4cは、汚泥ピット15側の端部に設けられる。
【0024】
前記無端チェーン2は、図2に示すように、回動方向で隣り合うリンクプレート12どうしの夫々を、板面が駆動スプロケット3の周方向に沿う姿勢で、連結ピン41で相対揺動自在に連結してある合成樹脂製ノッチチェーンで構成され、リンクプレート12の夫々の駆動スプロケット3側の側縁部13に、係合ピン10を係合させるノッチ14が形成されている。また、図1に示すように、ノッチチェーンの外周側(つまり、ノッチチェーン2が沈澱池Aの底面6の側に位置する場合の下方側)には、例えばアタッチメント等を介して汚泥掻き寄せ具1が取り付けられている。
【0025】
そして、図1、図2に示すように、ノッチチェーン2を駆動スプロケット3及び第1〜第3従動スプロケット4a,4b,4cにおける二枚の円板部材9の間に入り込ませてノッチ14に係合ピン10を係合させた状態で、駆動装置5による駆動スプロケット3の駆動回転で、左右一対のノッチチェーン2を駆動回動させて、各汚泥掻き寄せ具1を、駆動スプロケット3,第1従動スプロケット4a,第2従動スプロケット4b,第3従動スプロケット4cの順に経由するように循環移動させ、駆動スプロケット3側から第1従動スプロケット4a側に向けた移動で、沈澱池Aの水面WL近くに浮いているスカムをスカムスキマC側に掻き寄せ、第2従動スプロケット4b側から第3従動スプロケット4c側に向けた移動で、沈澱池Aの底面6近くに沈澱している汚泥を沈澱池Aの底部に設けてある汚泥ピット15に掻き寄せることができるように構成してある。
【0026】
無端チェーン2に張力を付与する押圧部材17が、下方に自重移動自在に設けてある。 前記押圧部材17は、図1に示すように、ノッチチェーン2の回動移動に従動して回転自在な回転部材としての例えば樹脂製の輪体で構成してある。
【0027】
この押圧部材17は、第1従動スプロケット4aの横軸心Xと略平行な回転軸心Y周りで回転自在に揺動部材19に支持してあり、揺動部材19は、第1従動スプロケット4aを回転自在に支持している支軸部材23に、その第1従動スプロケット4aの横軸心Xと略平行な揺動軸心周りで自重揺動自在に支持されている。なお、押圧部材17は必ずしも設けなくてもよい。
【0028】
前記ノッチチェーン2を構成しているリンクプレート12は、図2に示すように、汚泥掻き寄せ用回動方向(正転方向)上手側に隣り合うリンクプレート12に対して、その両側面を挟み込むように連結するための連結ピンを挿通するボス31を形成してある一対の外側プレート部30と、汚泥掻き寄せ用回動方向(正転方向)下手側に隣り合うリンクプレート12に対して、その一対の外側プレート部30に挟み込まれるように連結するための連結ピン41を挿通するボス31を形成してある内側プレート部32とを備えた平面視で略Y字状に形成され、外側プレート部30の夫々の駆動スプロケット3側に向ける側縁部13にノッチ14が形成されている。
【0029】
図3及び図4に示すように、沈澱池Aの底部6にはその長手方向に沿って左右一対のレール部材20が設けられている。このレール部材20は、特に限定はされないが、例えば左右一対の例えば樹脂製の帯板部材を沈澱池Aの底部に固定することにより構成されている。図3及び図6に示すように、このレール部材20上にシュー1aを介して汚泥掻き寄せ具1が載置される。シューはレール部材20の内側側面と対向するフランジ部1b(摺動部の一例)を有する。なお、本実施形態では、シュー1aを設けシュー1aのフランジ部1bを摺動部としているが、摺動部は上記の形態に限るものではなく、例えば汚泥掻き寄せ具1に一体的に摺動部を設けるなど上記以外の構成であってもよい。汚泥掻き寄せ具1はノッチチェーン2の回転に伴ってレール部材20上を汚泥ピット15側に移動することにより、沈澱池Aの底部6の汚泥を汚泥ピット15に掻き寄せる。図6(b)に示すように、このレール部材20のうち汚泥ピット側の端部から所定の領域20bの側部が他の領域20aの側部よりもフランジ部1bの側(つまり、沈殿池Aの幅方向における内側)に突出している。つまり、図6(a)に示すように、比較的汚泥が少ない汚泥掻き寄せ具1の移動方向上手側においては、レール部材20の側部を突出させないことにより、レール部材20とシュー1aのフランジ部1bの間にある程度隙間を設けて、汚泥掻き寄せ具1の導入をスムーズに行い、レール部材20やシュー1aの磨耗を防止している(図6(a)を参照)。一方、汚泥が多くなる汚泥掻き寄せ具1の移動方向下手側つまり、汚泥ピット15の近傍では、レール部材20の側部を突出させることにより、レール部材20とシュー1aの間の隙間をなくして或いは小さくして、汚泥掻き寄せ具1の幅方向の移動を規制する(図6(b)を参照)。このように、汚泥掻き寄せ具1の移動を規制することにより、ノッチチェーン2の移動を規制して、ノッチチェーン2の離脱を防止することができる。ここで、レール部材20とシュー1aのフランジ部1bは横方向の移動を規制する。
なお、本実施形態ではレール部材20のうち汚泥ピット側の端部から所定の領域20bの幅を他の領域20aの幅よりも大きく設定することにより、汚泥ピット側の端部から所定の領域20bの側部をフランジ部1bの側へ突出させている。
【0030】
なお、本実施形態では、上記のとおり、レール部材20として、中途部で幅の変化する一対の帯板部材を略平行に配置することにより、レール部材20間の間隔を変化させている。レール部材20間の間隔を変化させるための上記以外の構成としては、例えば幅の均一なレール部材をハの字状に配置することも考えられる。しかしながら、一般的に沈殿池Aの底部6は汚泥ピットに向かって下り勾配を有しており、レール部材をハの字状に配置する場合、単に帯板状のレール部材を底部6に設けただけではレール部材を底部6に隙間なく配置することが困難である。従って、例えば断面エの字のレール部材の下方を底部6に埋め込むなど複雑な工程が必要となる。一方、上記構成のように、レール部材20として、中途部で幅の変化する一対の帯板部材を略平行に配置することにより、簡単な構成で汚泥掻き寄せ具の移動を規制することにより、ノレール部材20を底部6に配置するのを容易にし、ノッチチェーン2の移動を規制して、ノッチチェーン2が従動回転体からはずれることを防止することができる。
【0031】
図3、4及び5に示すように、従動スプロケット4cには、従動スプロケット4cの回転方向以外の移動を規制する従動回転体規制部材110が設けられている。従動回転体規制部材110は支持部材112に支持され、従動スプロケット4cの一対の鍔部11の間に入り込むことにより、従動スプロケット4cの回転方向以外の移動、特に従動スプロケット4cが回動軸心Xに対してねじれる方向の移動を規制する。つまり、従動回転体規制部材110が従動回転体に当接することにより上下方向の移動を規制し、従動回転体規制部材110が一対の鍔部11に当接することにより横方向の移動を規制する。本実施形態においては、従動回転体規制部材110の先端部分は樹脂製のスクレーパ111で構成され、従動スプロケット4cの溝部11に溜まった汚泥を掻き出して除去することができる。つまり、この従動回転体規制部材110のスクレーパ111は汚泥除去手段としても機能する。なお、スクレーパ111の先端部は従動スプロケット4c鍔部間に入り込んでいるが、スクレーパ111が従動スプロケット4cに直接当接しないように若干離間されて配置されている。これにより、通常時はスクレーパ111が従動スプロケット4cに当接しないが従動スプロケット4cに汚泥が溜まった場合には、スクレーパ111により汚泥が掻き出される。ここでスクレーパ111を樹脂製にすることにより、汚泥の滑りがよくなり汚泥の除去効率を上げることができる。
なお、汚泥除去手段としてはスクレーパ111に限らず、従動スプロケット4cに設けた汚泥除去用の孔部であっても良い。また、これらを併用してもよい。
【0032】
また、図3、4及び5に示すように、汚泥ピット15の近傍で従動回転体規制部材110よりもノッチチェーン2の移動方向における上流側の部分には、ローラ120,121及びガイド部材130が設けられている。詳細は後述するが、これらは、ノッチチェーン2の移動を規制する移動規制部材として機能する。移動規制部材としては、詳細は後述するが、ノッチチェーン2の横方向(沈殿池Aの幅方向)の移動を規制する横方向移動規制部材と上方向の移動を規制する上方向移動規制部材とが設けられている。
【0033】
図3、4及び5に示すように、ガイド部材130は、ノッチチェーン2の外側側方に当該ノッチチェーン2の移動方向に沿って延びる金属性の板状の部材で構成されるガイド部131とガイド部を支持するための支持部132とを備える。支持部132はガイド部131から略垂直に延びガイド部材130の取り付け状態で沈殿池Aの底部と略平行になる水平延在部132cと水平延在部132cから略垂直に延びて後述する取付台150に沿った姿勢となり当該取付台150に取り付けられる取付部132dとを備える。
本実施形態ではガイド部材130は、金属製の板状部材を屈曲して一体的に形成され、ガイド部131、水平延在部132c及び取付部132dにより、沈殿池Aの長手方向に垂直な方向の断面視で、断面略コの字形状を有する。
本実施形態では、沈殿池Aの長手方向において、ガイド部131は取付部132dよりやや長い長さに設定され、水平延在部132cのうちガイド部131近傍の部分はガイド部131と略同じ長さに設定され、水平延在部132cのうち取付部132d近傍の部分は取付部132dと略同じ長さに設定され、水平延在部132cのうち中途部はガイド部131近傍の部分及び取付部132d近傍の部分よりも短く設定されている。つまり、水平延在部分132cは、上面視で略エの字状を呈する。
【0034】
ガイド部材130のガイド部131の下流側にはローラ121が設けられ、ガイド部材130のガイド部131の上流側にはローラ120が設けられている。夫々のローラ120,121はノッチチェーン2の上方に位置する周側面120a,121aと沈殿地Aの幅方向におけるノッチチェーン2の外側に位置する鍔部120b,121bとを備える。
【0035】
図3、4及び5に示すように、ガイド部材130のガイド部131の上流側のローラ120は、周側面120aがノッチチェーン2の上方でノッチチェーン2に当接しない位置に配置されている。また、ガイド部材130のガイド部131のノッチチェーン2側の面(案内面)は、前記鍔部120aのノッチチェーン2の側の面(案内面)よりも沈殿地Aの幅方向における内側(ノッチチェーン2の側)にやや突出した位置に配置されている。このように、前記鍔部120a及びガイド部131を上流側から下流側に向けてノッチチェーン2側に徐々に突出させることにより、ローラ120の鍔部120aによりノッチチェーン2をガイド部材130のガイド部131にスムーズに導入することができる。ガイド部材130のガイド部131は上記のとおりノッチチェーン2の移動方向に沿って延びているので、当該ガイド部131により特にノッチチェーン2の蛇行が防止される。ここで、ガイド部材130、ローラ120,121の鍔部120b,121bは横方向移動規制部材に相当する。
【0036】
ローラ121はローラ120と略同一の高さに設けられている。ローラ121の周側面121aはノッチチェーン2の上方に位置する。これにより、ノッチチェーン2の上下方向の移動に対しては、ローラ121の周側面121aがノッチチェーン2に当接することにより規制する。つまり、ローラ121の周側面121aがノッチチェーン2に当接することにより、ノッチチェーン2が持ち上がることを防止し、シュー1aがレール部材20に対して確実に摺動する。また、また、ローラ121の鍔部121aの内側(ノッチチェーン2)の面は、ガイド部131よりもやや沈殿池Aの幅方向における内側に突出している。このため、ローラ121の鍔部121aによりノッチチェーン2が沈殿池Aの幅方向における内側に案内されることで確実に従動回転体の溝部11に案内される。ゆえに、ローラ120、ガイド部131、ローラ121と順次幅方向内側に向けて案内されて周溝11スムーズに案内される。
ここで、ローラ120,121の周側面120a,121aはノッチチェーン2の上下方向の移動を規制する上下向移動規制部材として機能する。また、ローラ120,121の鍔部120b,121bはノッチチェーン2の横方向の移動を規制する横向移動規制部材として機能する。
上記のように、ローラ120,121によりノッチチェーン2の浮き上がりを防止しつつ、ガイド部材130と相俟って、ノッチチェーン2をスムーズに従動スプロケット4Cに導くことができる。
【0037】
また、図3、4及び5に示すように、従動回転体規制部材110、ローラ120,121、及び、ガイド部材130のノッチチェーン移動方向における上手側には、ノッチチェーン2に溜まった汚泥を除去する汚泥除去部材140が設けられている。この汚泥除去部材140は支持部材142が金属製の部材であり、先端部のスクレーパ部材141が樹脂製の板部材である。支持部材142は、後述する取付台150に沿った姿勢となり当該取付台150に取り付けられる取付部142eと取付部142eから沈殿池Aの幅方向における内側に延びる水平延在部142pと水平延在部142pのうち取付部142eとは反対側の端部から下方に延びるスクレーパ取付部142gとを備える。スクレーパ部材141がボルト142bにより支持部材142のスクレーパ取付部142gに固定されている。なお、上記スクレーパ部材141を例えば樹脂製のブラシにするなど、ノッチチェーン2に溜まった汚泥を除去するものであれば、上記以外の構成であってもよい。
【0038】
本実施形態では、図3、4及び5に示すように、上記の従動回転体規制部材110、ローラ120,121、ガイド部材130、及び、汚泥除去部材140が、ボルト112b、122b、132b等により、沈殿池Aの側壁に設けられた単一の取付台150に取り付けられている。本実施形態では、図3に示すように、従動回転体規制部材110の支持部材112に設けた長孔112aと取付台150とに亘って、ボルト112bを挿通することにより、従動回転体規制部材110を取付台150に取り付けている。この取付台150は例えば金属製の筐体であり、例えばボルトにより沈殿地の側壁に固定されている。このように、移動規制部材110を長孔112aを介して取付台150取り付けることにより、位置調整が可能となり例えば沈殿地の設計誤差や取付台の取り付け誤差等を吸収して従動回転体規制部材110を適切な位置に配置することができる。
【0039】
また、図4及び5に示すように、ローラ120,121についても、同様に、支持部材122に形成した長孔122aと取付台150とに亘って、ボルト122bを挿通することにより、取付台150に取り付けられている。また、ガイド部材130についても、図3、4及び5に示すように、取付部132dに長孔132aが形成され、長孔132aと取付台150とに亘って、ボルト132bを挿通することにより、取付台150に取り付けられている。汚泥除去部材140についても取付部142eに長孔142dが形成され、ボルト142cを挿通することにより、取付台150に取り付けられている。なお、本実施形態では、ローラ120側の長孔142dが、ローラ120の長孔122aと重合され、長孔122a及び長孔142dに亘って単一のボルト122bが挿通されている、
【0040】
なお、上記では、従動回転体規制部材110、ローラ120,121、ガイド部材130、及び、汚泥除去部材140を、単一の取付台150に取り付ける場合を例に説明したが、上記構成に限られるものではなく、夫々の部材を個別に固定しても良い。また、これらの部材は、必ずしも全てを用いる必要はなく、これらの部材のうちの幾つかを用いてもよく、単独で用いてもよい。また、これらの部材の配置順(位置)は上記に限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0041】
上記の実施形態では、汚泥ピット15側の端部に設けられた従動スプロケット4cに従動回転体規制部材110を設け、その近傍にローラ120,121、ガイド部材130、及び、汚泥除去部材140を設ける場合を例に説明したが、他の従動スプロケット4に対してこれらの部材を設けてもよい。
【0042】
また、従動回転体規制部材110、ローラ120,121、ガイド部材130、及び、汚泥除去部材140は、比較的処理量の多い汚水処理設備において、複数系統の沈殿池の汚泥を最終的にまとめて搬送する沈殿池において適用すると特に効果的であるが、これに限られることなく、種々の汚泥掻き寄せ機に適用することができる。
【0043】
また、上記の実施形態ではレール部材として、汚泥ピット15の近傍でレール部材の一側方側(沈殿池Aの幅方向における内側)の部分を突出させることによりレール部材20の幅を大きくする例(図3を参照)を示したがこれに限られるものではない。例えば、図7に示すように、レール部材20の両側方を均等に突出させることによりレール部材20の幅を大きくしてもよい。このようにすることにより、レール部材20を表裏の区別なく設置することができる。また、レール部材20の設置面に傾斜等がある場合であっても容易に設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、沈殿池等の汚泥処理装置における汚泥掻き寄せ機に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 汚泥掻き寄せ具
2 ノッチチェーン(無端回動体)
3 駆動回転体
4 従動回転体
15 汚泥ピット
20 レール部材
110 移動規制部材
111 スクレーパ部材
120 ローラ
121 ローラ
130 ガイド部材
140 汚泥除去部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥掻き寄せ具を回動方向に間隔を隔てて取り付けてある無端回動体が、横軸芯周りで回転する駆動回転体と従動回転体とに亘って回動自在に巻き掛けられ、沈殿池の底部の汚泥を前記汚泥掻き寄せ具で汚泥ピット側に掻き寄せる汚泥掻き寄せ機であって、
前記汚泥掻き寄せ機が設けられる沈殿池の底部の長手方向に沿って一対のレール部材が略平行に設けられ、前記汚泥掻き寄せ具は夫々のレール部材の側部に沿って移動するように前記レール部材との摺動部を有し、
前記レール部材のうち前記汚泥ピット側の端部から所定の領域の前記側部が他の領域の前記側部よりも前記摺動部の側に突出するように構成されている汚泥掻き寄せ機。
【請求項2】
前記従動回転体の周方向に沿って一対の鍔部が形成され、前記一対の鍔部間に入り込む従動回転体規制部材が設けられている請求項1に記載の汚泥掻き寄せ機。
【請求項3】
前記従動回転体規制部材が前記従動回転体に溜まった汚泥を除去する汚泥除去手段として機能する請求項2に記載の汚泥掻き寄せ機。
【請求項4】
汚泥掻き寄せ機が設けられた沈殿池の底部の長手方向における一方側の端部の近傍に汚泥掻き寄せ具により掻き寄せた汚泥が落下する汚泥ピットが設けられ、前記従動回転体が少なくとも前記一方側と他方側とに設けられ、前記鍔部及び前記従動回転体規制部材が前記一方側の前記従動回転体に設けられている請求項2又は3に記載の汚泥掻き寄せ機。
【請求項5】
前記無端回動体に溜まった汚泥を除去する汚泥除去部材が設けられている請求項1〜4の何れか一項に記載の汚泥掻き寄せ機。
【請求項6】
前記無端回動体の上方向の移動を規制する上方向移動規制部材が設けられている請求項1〜5の何れか一項に記載の汚泥掻き寄せ機。
【請求項7】
前記無端回動体の横方向の移動を規制する横方向移動規制部材が設けられている請求項1〜6の何れか一項に記載の汚泥掻き寄せ機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−81909(P2013−81909A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224262(P2011−224262)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)