説明

汚泥消化装置

【課題】従来品と比較して設備コストが低い間接加熱式の汚泥消化装置を提供する。
【解決手段】この発明の汚泥消化装置は、汚泥を入れる槽1と、槽1の内部と外部に渡って配置された汚泥の循環経路2と、スクリューポンプ3と、熱交換器4を備えている。循環経路2は、槽1の内部から外部に渡って槽壁を貫通して延びる第1の横管および第2の横管26を有する。これらの横管の槽1の外部に配置された部分に、循環経路2内の汚泥を加熱するための熱交換器4を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水処理等の過程で発生する汚泥の消化(有機物の嫌気性分解)工程で使用される汚泥消化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥消化槽で汚泥を消化する工程を行う際には、槽内の汚泥を底部に堆積させないように撹拌するとともに、槽内の汚泥を適温に加熱する必要がある。
消化槽内の汚泥の撹拌方法に関しては、下記の特許文献1に、消化槽内の汚泥を、槽外に配置したポンプで循環経路内に導いて、消化槽内に戻すことが記載されている。前記循環経路は、槽内に配置された上下に延びる一対の縦管と、各縦管と接続されて、槽内から槽外まで槽壁を貫通して延びる一対の横管と、両横管を槽外で接続するU字状管とで構成され、U字状管にポンプが設置されている。
【0003】
消化槽内の汚泥の加熱方法としては、例えば、特許文献2に記載されているように、槽内に熱源を入れて加熱する直接法と、槽内の汚泥を外部に出して槽内に戻す循環管を設けて、この循環管内の汚泥を熱交換器で加熱する間接法がある。
直接法は、例えば図5に示すように、汚泥5を入れた槽1の上部に吹き込み管6を設けて、ボイラ設備等から発生した蒸気を槽1内の汚泥5に吹き込む方法である。この方法には、蒸気を入れることで消化槽内の汚泥が水で薄められて、汚泥濃度が低下するという問題点がある。
【0004】
なお、図5において、符号2は、撹拌のために設けた循環経路を示す。この循環経路2は、槽1の内部と外部に渡って配置され、上方に開口する第1の縦管21と下方に開口する第2の縦管24を有している。また、循環経路2の槽1の外部に配置された部分にスクリューポンプ3が設けてある。
間接法では、例えば図6に示すように、撹拌のために設けた循環経路2とは別に、加熱のための循環経路7を設けている。この例では、槽壁11を貫通して槽内から槽外まで配置された一対の横管71,72と、両横管を槽外で接続する縦管73とを配置し、出側の横管72と縦管73との間にポンプ74を設け、縦管73のポンプ74と入側の横管71との間の部分に熱交換器4を設けている。
【0005】
図6の方法では、槽外に配置された配管内の汚泥を熱交換器で加熱しているため、熱交換器の熱源としてボイラ設備等から発生した蒸気を利用した場合でも、蒸気そのものは汚泥に入らないことから、消化槽内の汚泥濃度は低下しない。しかし、この方法には、直接法と比較して設備コストが高くなるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−173992号公報
【特許文献2】特開平5−269496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の課題は、消化槽内の汚泥を、槽内と槽外に渡って配置された循環経路内に導いて循環させることで撹拌が行われ、消化槽内の汚泥の加熱が間接法で行われる汚泥消化装置であって、従来の間接加熱式汚泥消化装置と比較して設備コストが低いものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明の汚泥消化装置は、汚泥を入れる槽と、槽内に配置されて上側が開口する第1の縦管と、槽内に配置されて下側が開口する第2の縦管と、第1および第2の縦管にそれぞれ接続されて、槽内から槽外まで槽壁を貫通して延びる第1および第2の横管と、槽外で、第1および第2の横管を接続するU字状管と、前記U字状管に設置されたポンプと、を備え、前記第1および第2の縦管と、前記第1および第2の横管と、前記U字状管とを含み、前記第1および第2の縦管の一方を入口、他方を出口とした循環経路内に、槽内の汚泥を導いて循環させることで、槽内の汚泥を撹拌する汚泥消化装置であって、前記第1および第2の横管の槽外に配置された部分に、前記循環経路内の汚泥を加熱する熱交換器を設けたことを特徴とする。
【0009】
この発明の汚泥消化装置では、汚泥を撹拌するために設けた循環経路を構成する第1および第2の横管に、汚泥を加熱するための熱交換器を設けているため、撹拌のための循環経路とは別に加熱のための循環経路を設けている従来の間接加熱式汚泥消化装置と比較して、設備コストが低く抑えられる。また、加熱された汚泥が槽内に戻されて撹拌流を形成するため、槽内全体の加熱が効率よく行われる。
【発明の効果】
【0010】
この発明の汚泥消化装置は、消化槽内の汚泥を、槽内と槽外に渡って配置された循環経路内に導いて循環させることで撹拌が行われ、消化槽内の汚泥の加熱が間接法で行われる汚泥消化装置であって、従来の間接加熱式汚泥消化装置と比較して設備コストが低く、槽内全体の加熱効率が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1実施形態に相当する汚泥消化装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】この発明の第2実施形態に相当する汚泥消化装置の一部を示す図であって、図1の部分拡大図に対応する図である。
【図4】この発明の第3実施形態に相当する汚泥消化装置の一部を示す図であって、図1の部分拡大図に対応する図である。
【図5】従来の直接加熱式の汚泥消化装置を示す概略構成図である。
【図6】従来の間接加熱式の汚泥消化装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について説明する。
図1は第1実施形態の汚泥消化装置を示す概略構成図であって、汚泥を入れる槽が奥行き方向中心での断面図となっている。図2は図1の部分拡大図であって、槽外の部分と、横管が槽壁を貫通している部分を示している。
これらの図に示すように、第1実施形態の汚泥消化装置は、汚泥を入れる槽1と、槽1の内部と外部に渡って配置された汚泥の循環経路2と、スクリューポンプ3と、熱交換器4と、を備えている。
【0013】
循環経路2は、槽1の内部に配置されて上側が開口する第1の縦管21と、槽1の内部に配置されて第1の縦管21から斜め下方に延びる第1の斜め管22と、槽1の内部で斜め管22から水平方向に延びて、槽1の槽壁11を貫通して槽1の外部に達する第1の横管23を有する。
循環経路2は、また、槽1の内部に配置されて下側が開口する第2の縦管24と、槽1の内部に配置されて第2の縦管24から斜め上方に延びる第2の斜め管25と、槽1の内部で斜め管25から水平方向に延びて、槽1の槽壁11を貫通して槽1の外部に達する第2の横管26を有する。第2の横管26は第1の横管23と同じ高さに配置されている。
【0014】
循環経路2は、さらに、槽1の外部で、第1の横管23と第2の横管26を接続するU字状管27を有する。第1の横管23、第2の横管26、U字状管27は、同じ水平面内に配置されている。
U字状管27内に、スクリューポンプ3を構成するスクリュー羽根付きの回転軸31が配置されている。このスクリューポンプ3は可逆転式であり、回転軸31の回転方向に応じて流れの方向が矢印A方向とその反対方向に変わるが、性能は変わらない。
【0015】
熱交換器4は、第1の横管23および第2の横管26の、槽1の外部に配置されている部分に設置されている。
この熱交換器4は、熱源の循環管は一つで、汚泥を入れる伝熱管は第1の横管23用の第1の部分41と、第2の横管26用の第2の部分42とに分けてある。そして、熱源である蒸気が熱交換器4の導入管43から導入され導出管44から導出される間に、第1の部分41で第1の横管23内の汚泥が入る伝熱管と蒸気が接触し、第2の部分42で第2の横管26内の汚泥が入る伝熱管と蒸気が接触して熱交換が行われるように構成されている。また、この熱交換器4は、第1および第2の横管23,26内の汚泥の流れの向きが変わっても、同等の性能を有するものである。
【0016】
この実施形態の汚泥消化装置では、流れの方向が図2の矢印A方向になるようにスクリューポンプ3を作動させることで、槽1内の汚泥5は、第1の縦管21から循環経路2内に導かれ、第1の斜め管22、第1の横管23、U字状管27、第2の横管26、第2の斜め管22の順に移動し、第2の縦管24から槽1内に戻される。これにより、槽1内の汚泥5が撹拌される。また、循環経路2内に導かれた汚泥は、第1の横管23を通る際に熱交換器4の第1の部分41で加熱され、U字状管27を通った後に第2の横管26を通る際に、熱交換器4の第2の部分42で加熱される。
【0017】
なお、流れの方向が図2の矢印Aとは反対方向になるようにスクリューポンプ3を作動させた場合、槽1内の汚泥5は、第2の縦管24から循環経路2内に導かれて、上記とは反対の順に循環系路2内を移動して、第1の縦管21から槽1内に戻される。
この実施形態の汚泥消化装置によれば、汚泥を撹拌するために設けた循環経路2を構成する第1および第2の横管23,26に、汚泥を加熱するための熱交換器4を設けているため、図6に示すような、撹拌のための循環経路2とは別に加熱のための循環経路7を設けている、従来の間接加熱式汚泥消化装置と比較して、設備コストを低く抑えることができる。また、循環経路2で加熱された汚泥が槽1内に戻されて撹拌流を形成するため、槽1内全体の汚泥5が効率よく加熱される。
【0018】
第2実施形態の汚泥消化装置は、熱交換器4の設け方を除き、第1実施形態の汚泥消化装置と同じ構成である。この実施形態では、図3に示すように、第1の横管23および第2の横管26の槽1の外部に配置されている部分に、それぞれ独立の熱交換器4を設けている。これにより、第2実施形態では、各熱交換器4において、熱源である蒸気が導入管43から導入され導出管44から導出される間に、各横管23,26内の汚泥が入る伝熱管と蒸気が接触して熱交換が行われる。
【0019】
第3実施形態の汚泥消化装置は、熱交換器4の設け方を除き、第1実施形態の汚泥消化装置と同じ構成である。この実施形態では、熱交換器4を第1の横管23および第2の横管26に直接設けずに、図4に示すように、第1の横管23および第2の横管26と熱交換器4とを、枝管81,82で接続している。熱交換器4は、槽1の外部に配置されている第1の横管23および第2の横管26の間に配置されている。
【0020】
流れの方向が図4の矢印Aとなるようにスクリューポンプ3を作動させる(回転軸31を回転させる)と、第1の横管23と第2の横管26との間に差圧が生じて、U字状管27を出て第2の横管26に入った直後の汚泥が、枝管82から熱交換器4の伝熱管に導入され、熱源である蒸気が導入管43から導入され導出管44から導出される間に、伝熱管と蒸気が接触して熱交換が行われる。熱交換された汚泥は第2の横管26側の枝管81に入り、第2の横管26からU字状管27に戻る。
【符号の説明】
【0021】
1 槽
2 循環経路
21 第1の縦管
22 第1の斜め管
23 第1の横管
24 第2の縦管
25 第2の斜め管
26 第2の横管
27 U字状管
3 スクリューポンプ
31 回転軸
4 熱交換器
41 第1の部分
42 第2の部分
43 蒸気の導入管
44 蒸気の導出管
5 汚泥
6 吹き込み管
7 加熱のための循環経路
71 横管
72 横管
73 縦管
74 ポンプ
81 枝管
82 枝管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を入れる槽と、
槽内に配置されて上側が開口する第1の縦管と、
槽内に配置されて下側が開口する第2の縦管と、
第1および第2の縦管にそれぞれ接続されて、槽内から槽外まで槽壁を貫通して延びる第1および第2の横管と、
槽外で、第1および第2の横管を接続するU字状管と、
前記U字状管に設置されたポンプと、
を備え、
前記第1および第2の縦管と、前記第1および第2の横管と、前記U字状管とを含み、前記第1および第2の縦管の一方を入口、他方を出口とした循環経路内に、槽内の汚泥を導いて循環させることで、槽内の汚泥を撹拌する汚泥消化装置であって、
前記第1および第2の横管の槽外に配置された部分に、前記循環経路内の汚泥を加熱する熱交換器を設けたことを特徴とする汚泥消化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−31166(P2011−31166A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179407(P2009−179407)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(505328085)古河産機システムズ株式会社 (66)
【Fターム(参考)】