説明

汚泥濃縮装置および汚泥濃縮車

【課題】凝集反応処理された汚泥を汚泥分離機に圧送する際に、作業者にバルブ操作の負担を掛けることなく、概ね適正な流量を維持して汚泥を汚泥分離機に圧送することを可能とした汚泥濃縮装置を提供する。
【解決手段】凝集反応処理が施される反応槽7と、凝集反応処理が施された汚泥から凝集汚泥と汚水とに分離するドラムスクリーン11と、反応槽7を加減圧する真空ポンプ52と、真空ポンプ52により反応槽7が加圧されることにより、反応槽7内に収容されている凝集反応処理が施された汚泥がドラムスクリーン11へ圧送される汚泥圧送路70、70b、72と、ドラムスクリーン11により分離された凝集汚泥が蓄積される汚泥槽8と、を備え、真空ポンプ52により反応槽7が加圧されるときに真空ポンプ52の吸込側の流路を調整可能に絞る一方向可変絞り弁61をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄化槽から汚泥を吸引して濃縮する汚泥濃縮装置およびこの汚泥濃縮装置を備える汚泥濃縮車に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭等の浄化槽から汚泥を収集して汚泥処理場へ運搬するために汚泥濃縮車が使用されている。汚泥濃縮車によれば、汚泥を濃縮して運搬することができるので、汚泥処理場への汚泥の運搬量を低減することができる。
【0003】
汚泥濃縮車が汚泥を収集して濃縮する場合、汚泥濃縮車のタンクに通じる吸引ホースが浄化槽に挿入され、汚泥濃縮車のタンク内が真空ポンプにより減圧されて、汚泥が浄化槽から同タンク内に吸引される。
【0004】
次いで、タンク内に吸引された汚泥に凝集剤を混入し、汚泥と凝集剤とを攪拌する凝集反応処理によって、汚泥からゲル状に凝集した凝集汚泥が生成される。凝集反応処理が行われるタンクの底部には、エアー混じりの凝集液を供給するための配管が配置されており、上記タンク内が真空ポンプにより負圧状態にされることで、凝集液タンク側から上記配管を通じてエアーおよび凝集液がタンク内の底部に混入される。これによりタンク内でバブリングが発生し、上記凝集反応処理が促進される(例えば特許文献1参照)。
【0005】
凝集反応処理の後、真空ポンプにより上記タンク内が加圧され、凝集反応処理後の汚泥がタンク内から汚泥分離機(ろ過装置)へ圧送され、汚泥分離機にて汚泥は凝集汚泥と凝集せずに残った汚水とに分離される。分離された汚水は排出ホースから浄化槽へ排出され張り水として還元される一方、凝集汚泥は汚泥濃縮車に収容されて処理場まで運搬される。
【0006】
ところで、上記一連の工程において、汚泥分離機への汚泥の圧送は、汚泥分離機の処理能力を超えないように、圧送流量を制限して行う必要がある。しかし、一般的な汚泥濃縮車では、圧送の際に使用する真空ポンプとして、各種工程に共用できるような、吸込み・吐出能力の高いものが採用されている。また、上記真空ポンプは、PTOを介してエンジンの駆動力により回転駆動されるように搭載されており、その吸込み・吐出能力を繊細にコントロールする手段は一般的な汚泥濃縮車では装備されていない。したがって、上記圧送流量を抑制するために、タンクに連通したバルブ(特許文献2の符号12番のバルブなど;以下「タンク連通バルブ」ともいう。)を汚泥圧送時に適度に開放して、真空ポンプからタンク内に送給される空気の一部を大気へ逃がすことで、タンク内の過度の圧力上昇を抑制して、汚泥の圧送流量が汚泥分離機の処理能力の範囲内に収まるようになされていた。
【0007】
本件出願人は、汚泥分離機へ汚泥圧送時にタンク内の圧力を一定に維持する汚泥濃縮装置を試作した。図9はその汚泥濃縮装置150の概略配管図である。この汚泥濃縮装置150では、タンク151内が隔壁152によって反応槽153と汚泥槽154の2槽に隔離されている。汚泥の凝集反応処理は反応槽153内において行われ、凝集反応処理後の汚泥は、汚泥槽154内の上部に設置された汚泥分離機155へ圧送される。
【0008】
凝集反応処理後の汚泥を反応槽153から汚泥分離機155へ圧送するために、切換弁156、159が図示する位置に切り換えられ、バルブ165が開放される。そして、PTO157により真空ポンプ158が駆動されることによって、反応槽153が加圧される。反応槽153が加圧されると、反応槽153内の凝集反応処理後の汚泥は、汚泥圧送路となる配管160、161を通じて汚泥槽154内の汚泥分離機155へ圧送される。
【0009】
汚泥分離機155においては、汚泥は凝集汚泥と凝集せずに残った汚水とに分離される。凝集汚泥は汚泥槽154内に蓄積される一方、汚水は配管162、163、および吸引・排出ホース164を通過して浄化槽Sに張り水として還元される。
【0010】
上記汚泥濃縮装置150においては、反応槽153の加圧配管166の途中位置に、チェック弁167、バルブ168(以下「タンク連通バルブ」ともいう。)がタンク151側から順に介装された分岐管169が接続されている。凝集反応処理後の汚泥が反応槽153から汚泥分離機155へ圧送される際に、分岐管169に設けられたバルブ168が全開放されると、反応槽153内の圧力は、チェック弁167のクラッキング圧(例えば0.02MPa)にほぼ等しくなり、汚泥圧送時の反応槽153内の圧力は、真空ポンプ158の吐出能力に左右されることなく、一定に維持される。
【0011】
したがって、真空ポンプ158の吐出能力に応じて適切なクラッキング圧を決定し、そのクラッキング圧を有するチェック弁167を図示するように設けることで、反応槽153から汚泥分離機155へ圧送される汚泥の流量を汚泥分離機155の処理能力以下に抑制することができ、なおかつ、反応槽153内の圧力を一定に維持することができる。
【特許文献1】特開2004−100221号公報
【特許文献2】特開昭58−150489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、特許文献2に開示されている汚泥濃縮車および上記汚泥濃縮装置150を搭載した汚泥濃縮車では、圧送される汚泥の流量は、タンク(反応槽)内の圧力のほか、タンク内の汚泥の液面高さと汚泥分離機の設置高さとの差によって発生する水頭圧差が影響する。つまり、タンク内の圧力が一定に維持されていても、汚泥の液面高さの低下に伴って上記水頭圧差が大きくなることにより、汚泥分離機へ圧送される汚泥の流量が急低下する。このため、適正な圧送流量を維持することができなかった。
【0013】
従来、このような問題に対処すべく、タンク内の汚泥の液面の低下に応じて、上記タンク連通バルブの開度を徐々に絞り、水頭圧差が増加した分だけタンク内の圧力を上昇させることで、汚泥分離機への適正な圧送流量を維持していた。
【0014】
しかし、上記タンク連通バルブの絞り操作は、汚泥の圧送中に一人の作業者が付き切りで行う必要があり、作業者にとって負担となる。
【0015】
また、タンク(反応槽)にエアー混じりの凝集剤を吸引し、これと汚泥とを攪拌する凝集反応処理において、タンク内の汚泥の水位が高い場合にその水頭圧によってバブリングが十分に行われないという問題もあった。
【0016】
本発明は、上記問題に鑑みて創案されたものであり、凝集反応処理された汚泥を汚泥分離機に圧送する際に、作業者にバルブ操作の負担を掛けることなく、概ね適正な流量を維持して汚泥を汚泥分離機に圧送することを可能とした汚泥濃縮装置および汚泥濃縮車を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明は、タンク(反応槽)にエアー混じりの凝集剤を吸引し、これと汚泥とを攪拌する凝集反応処理において、タンク内の汚泥の水位が高い場合であってもバブリングを十分に行うことを可能とした汚泥濃縮装置および汚泥濃縮車を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明の汚泥濃縮装置は、汚泥が吸引されて凝集反応処理が施される反応槽と、前記凝集反応処理が施された汚泥から凝集汚泥と汚水とに分離する汚泥分離機と、前記反応槽を加減圧するポンプと、前記ポンプにより前記反応槽が加圧されることにより、前記反応槽内に収容されている凝集反応処理が施された汚泥が前記汚泥分離機へ圧送される汚泥圧送路と、前記汚泥分離機により分離された凝集汚泥が蓄積される汚泥槽と、を備える汚泥濃縮装置において、前記ポンプにより前記反応槽が加圧されるときに前記ポンプの吸込側の流路を調整可能に絞る可変絞り弁を備えることを特徴としている。
【0019】
かかる汚泥濃縮装置によれば、上記可変絞り弁を調整することにより、反応槽から汚泥分離機へ圧送する汚泥の流量を汚泥分離機の処理能力以下にして、汚泥分離機での汚泥のオーバーフローの発生を防止することができる。
【0020】
また、凝集反応処理が施された汚泥が反応槽から汚泥分離機に圧送されているとき、汚泥の液面の低下に伴って、汚泥の液面高さと汚泥分離機の設置高さとの差によって生じる水頭圧差が増加し、汚泥の圧送流量が低下する現象が発生するが、ポンプから反応槽内には、ほぼ一定量の空気が継続的に送給されるため、汚泥の圧送流量の低下に伴って、反応槽内の圧力は徐々に上昇する。反応槽内の圧力の上昇は、汚泥の圧送流量を増加させる側へ作用するので、水頭圧差の増加による圧送流量の低下は大幅に抑制され、適正な圧送流量が概ね維持される。
【0021】
さらに、上記可変絞り弁の調整操作は、最初の汚泥圧送開始時に一度だけ行えばよく、従来例に係る汚泥濃縮車のように汚泥の圧送中に終始一人の作業者が付き切りでバルブ操作を行うことを要しない。
【0022】
また、本発明の汚泥濃縮装置は、上記汚泥濃縮装置の構成において、前記可変絞り弁は、大気側から前記ポンプ側への流れを調整可能に絞るように配置された一方向可変絞り弁であってもよい。
【0023】
かかる汚泥濃縮装置によれば、ポンプが反応槽を加圧しているときに限り当該ポンプの吸込側の流路を絞ることができ、ポンプが反応槽を減圧するときは、当該ポンプの吐出側の流路が殆ど絞られないので、ポンプを効率よく作動させて反応槽の減圧を迅速に行うことができる。
【0024】
また、本発明の汚泥濃縮装置は、上記何れかの汚泥濃縮装置の構成において、前記ポンプが前記反応槽を加圧するときに、前記ポンプの吸込側に前記可変絞り弁と並列に連通される大気開放弁が設けられたものであってもよい。
【0025】
かかる汚泥濃縮装置によれば、ポンプの吸込側の流路を絞る必要がない場合に、大気開放弁を開放することにより、可変絞り弁が設けられていない場合と同程度にポンプを効率よく作動させることができる。
【0026】
また、本発明の汚泥濃縮装置は、上記何れかの汚泥濃縮装置の構成において、前記汚泥圧送路を形成する部材の少なくとも一部が透明部材で構成されているものであってもよい。
【0027】
かかる汚泥濃縮装置によれば、汚泥圧送路を流れる汚泥のおよその流量を目視で把握することができ、上記可変絞り弁の調整量の目安とすることができる。
【0028】
また、本発明の汚泥濃縮車は、上記何れかの汚泥濃縮装置を備えるものであるので、同様に上記の優れた作用効果を奏する。
【0029】
また、本発明の汚泥濃縮装置は、汚泥が吸引されて凝集反応処理が施される反応槽と、前記凝集反応処理が施された汚泥から凝集汚泥と汚水とに分離する汚泥分離機と、前記反応槽を加減圧するポンプと、前記汚泥分離機により分離された凝集汚泥が蓄積される汚泥槽と、を備える汚泥濃縮装置において、一端側が前記ポンプの吐出側に連通可能に設けられ、他端側が前記反応槽の底部に通じる凝集反応処理用吐出配管と、前記凝集反応処理用吐出配管の途中位置に介設されたエジェクタと、前記エジェクタの吸込口に連通可能に設けられた凝集剤収容部と、を備えることを特徴としている。
【0030】
かかる汚泥濃縮装置によれば、凝集反応処理用吐出配管の一端側をポンプに連通すると、凝集反応処理用吐出配管内にポンプの吐出空気が流れ、これにエジェクタを介して凝集剤収容部内の凝集剤が混入されて反応槽の底部に吐出される。この場合、反応槽の底部の圧力と空気および凝集液を供給する凝集反応処理用吐出配管内の圧力との差を大気圧以上とすることができるため、反応槽の減圧のみによって凝集反応処理を行う場合と比較して、凝集反応処理効率を高めることが可能である。
【0031】
また、本発明の汚泥濃縮装置は、上記の汚泥濃縮装置の構成において、一端側が前記ポンプの吸込側に連通可能に設けられ、他端側が前記反応槽の上部に通じる凝集反応処理用吸引配管と、前記凝集反応処理用吐出配管の一端側を前記ポンプの吐出側に連通するとともに、前記凝集反応処理用吸引配管の一端側を前記ポンプの吸込側に連通する切換連通手段と、を更に備えるものであってもよい。
【0032】
かかる汚泥濃縮装置によれば、上記切換弁を切換えてポンプの吐出側を反応槽の底部に連通するとともに、ポンプの吸込側を反応槽の上部に連通することができる。これにより、反応槽の底部の圧力と空気および凝集液を供給する凝集反応処理用吐出配管内の圧力との差を容易に大気圧以上とすることができ、凝集反応処理効率を高めることが容易に可能となる。
【0033】
また、本発明の汚泥濃縮車は、上記何れかの汚泥濃縮装置を備えるものであるので、同様に上記の優れた作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の汚泥濃縮装置および汚泥濃縮車によれば、凝集反応処理された汚泥を汚泥分離機に圧送する際に、作業者にバルブ操作の負担を掛けることなく、概ね適正な流量を維持して汚泥の圧送を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
−第1の実施の形態−
[汚泥濃縮車の外観説明]
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して説明する。最初に、本発明の第1の実施の形態に係る汚泥濃縮装置を備える汚泥濃縮車の外観構成を簡単に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る汚泥濃縮車1を示す左側面図、図2は汚泥濃縮車1を示す平面図、図3は汚泥濃縮車1を示す背面図である。
【0036】
汚泥濃縮車1においては、車両2のシャーシフレーム3上にサブフレーム4が設置されており、そのサブフレーム4上にタンク5が搭載されている。タンク5内は隔壁6によって2槽に隔離されており、隔壁6の前方が反応槽7、隔壁6の後方が汚泥槽8になっている。
【0037】
タンク5の上部にはホースリール9が設置されている。このホースリール9は長尺(例えば60m)のホースである吸引・排出ホース50を巻出し巻取り可能に収容している。ホースリール9の前方のタンク5上部には、反応槽7内の水位のオーバフローに反応して管路を閉鎖するフロート弁10(図2参照、図1では図示省略。)が設けられている。
【0038】
汚泥槽8内の上部には、ドラムスクリーン11が設置されている。ドラムスクリーン11は、凝集反応処理が施された汚泥を凝集汚泥と汚水とに分離する汚泥分離機の一つである。ドラムスクリーン11は凝集反応処理が施される前の原汚泥を固形分の汚泥と汚水とに分離する場合にも使用される。
【0039】
シャーシフレーム3の前寄り両側部には、液体の凝集剤を収容した凝集液タンク12が設置されている。左側の凝集液タンク12の後方には、エアーセパレータ15、オイルセパレータ13、オーバーフローセフティ弁14などが設置されている。なお、オーバーフローセフティ弁14は、反応槽7内の水位のオーバフローに反応して管路を閉鎖するものであり、前述のフロート弁10とともに、反応槽7内のオーバフローを二重に防止する機能を果たす。
【0040】
タンク5の側面には、反応槽7内の様子を確認するため、透明材からなる反応槽のぞき窓16が設けられている。同じくタンク5の側面には、反応槽7の水位(汚泥の液面高さ)を確認するためのレベル計18が設置されている。タンク5の後面には、汚泥槽8の水位(汚泥の液面高さ)を確認するためのレベル計19が設置されている。また、タンク5の後部にはホースハンガ21が設置されている。このホースハンガ21には、近距離での作業で使用する短尺(例えば10m)の吸引・排出ホース22等が巻き掛けて格納される。前記長尺の吸引・排出ホース50と短尺の吸引・排出ホース22とは、汚泥濃縮車1の駐車位置から浄化槽までの距離に応じて使い分けられる。
【0041】
[配管図の説明]
つぎに、汚泥濃縮車1に搭載された汚泥濃縮装置20の配管構成について図4の配管図に基づいて説明する。
【0042】
51は走行用エンジンEの動力を取り出す動力取出装置(PTO)、52は動力取出装置(PTO)51によって駆動される真空ポンプである。
【0043】
真空ポンプ52の吐出側には、吐出側配管53が接続されており、真空ポンプ52の吸込側には、吸込側配管54が接続されている。吸込側配管54の途中位置には、上流側から順にエアセパレータ15、逆流防止用のチェック弁55が設けられている。さらに吸込側配管54のエアセパレータ15より上流側には、分岐管を介してメンテナンス用の排出弁56が設けられている。
【0044】
PTO51は、真空ポンプ52のほかに、油圧ポンプ57を駆動している。油圧ポンプ57は、その吐出側に接続されたオイルモータ58を回転駆動する。このオイルモータ58の出力軸には、ドラムスクリーン11の回転軸が連結されており、ドラムスクリーン11にオイルモータ58の回転駆動力が伝達されるようになっている。59は油タンクであり、その内部の油は、油圧ポンプ57に吸込まれ、オイルモータ58を経た後、油タンク59へ還流される。
【0045】
タンク5の反応槽7には、反応槽吸引加圧管60が接続されている。反応槽吸引加圧管60の途中位置には、タンク5側から順に、タンク5内の水位のオーバーフローを防止するためのフロート弁10、オーバーフローセフティ弁14、連成計67、大気63に通じるリリーフ管68が設けられている。また、リリーフ管68の途中位置には、リリーフ弁69が設けられており、そのリリーフ圧(例えば0.05MPa)により、タンク5内の最大圧力が設定される。反応槽吸引加圧管60の反タンク5側の端部は、後述する吸引加圧切換弁66の所定ポートに接続されている。なお、反応槽吸引加圧管60は、反応槽7の上部に連通しており、反応槽7に汚泥があっても、空気だけを吸引することができるようになっている。
【0046】
64は大気吸排気管であり、後述する吸引加圧切換弁66の所定ポートに接続されている。大気吸排気管64の途中位置には、大気63側から吸引加圧切換弁66側(真空ポンプ52の吸込側)への流路を調整可能に絞る、一方向可変絞り弁61が設けられている。一方向可変絞り弁61は、例えば図示するように、可変絞り弁61aと逆止弁61bとが並列配置されてなるものである。なお、一方向可変絞り弁61は、一体物であっても、可変絞り弁61aと逆止弁61bとが別体になった物であってもよい。また、一方向可変絞り弁61は、大気吸排気管64の端部に設けられていてもよい。
【0047】
大気吸排気管64においては、さらに、一方向可変絞り弁61と吸引加圧切換弁66の間にバイパス管65が分岐して設けられており、このバイパス管65に大気開放弁62が設けられている。したがって、一方向可変絞り弁61と大気開放弁62とは、吸引加圧切換弁66の同一ポートに並列に接続されていることとなる。
【0048】
上述した、吐出側配管53、吸込側配管54、反応槽吸引加圧管60、および大気吸排気管64は、互いに吸引加圧切換弁66の切換操作によって、連通可能に配管されている。すなわち、吸引加圧切換弁66は、図示するように4ポート3位置切換弁からなり、吸引加圧切換弁66が左位置aに切換えられているときには、吐出側配管53と大気吸排気管64とが連通され、更に、吸込側配管54と反応槽吸引加圧管60とが連通される。その結果、真空ポンプ52の吐出側は、大気63と通じ、真空ポンプ52の吸込側は、タンク5内の反応槽7と連通する。
【0049】
吸引加圧切換弁66が中立位置bに切換えられているときには、吐出側配管53と吸込側配管54とが連通され、更に、大気吸排気管64とタンク反応槽吸引加圧管60とが連通される。その結果、真空ポンプ52の吐出側は、真空ポンプ52の吸込側と連通し、更に、タンク5内の反応槽7と大気63とが通じる。
【0050】
吸引加圧切換弁66が右位置cに切換えられているときには、吐出側配管53と反応槽吸引加圧管60とが連通され、更に、大気吸排気管64と吸込側配管54とが連通される。その結果、真空ポンプ52の吐出側は、タンク5内の反応槽7と連通し、真空ポンプ52の吸込側は、大気63と通じる。
【0051】
タンク5の反応槽7には、反応槽7内の底部まで延びた第3配管72が接続されている。また、タンク5の汚泥槽8には、汚泥槽側配管70a、ドラムスクリーン側配管70b、および第2配管71が接続されている。
【0052】
汚泥槽側配管70aおよびドラムスクリーン側配管70bの汚泥槽8側は、後述する汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85を介して第1配管70の汚泥槽8側に連通遮断可能に接続されている。第1配管70の途中位置には、配管内を流れる汚泥を目視することができるように、サイトグラス87が設けられている。なお、サイトグラス87は、第1配管70の途中位置に設けられているが、サイトグラス87が設けられる場所はこれに限定されず、凝集反応処理が施された汚泥が反応槽7からドラムスクリーン11へ圧送される汚泥圧送路上であってタンク5の外であれば何処であってもよい。例えば、第3配管72の反応槽7外側部にサイトグラス87が設けられていてもよい。また、汚泥圧送路内を流れる汚泥を目視することができるように、汚泥圧送路を形成する部材の少なくとも一部が透明部材で構成されていればよく、必ずしも当該透明部材がサイトグラス87である必要はない。
【0053】
第2配管71の汚泥槽8側端部は、ドラムスクリーン11によって分離された汚水の汚水排出路の入り口として配置されている。
【0054】
ホースリール9に収容されている吸引・排出ホース50の基端部には第4配管73の一端部が接続されている。この第4配管73の途中位置には、第4配管73と吸引・排出ホース50への管路を開閉する第1ホース開閉弁74が設けられている。第4配管73の途中位置の第1ホース開閉弁74よりタンク5側には、分岐管86の一端部が接続されており、その他端部には第2ホース開閉弁75が設けられている。この第2ホース開閉弁75には短尺の吸引・排出ホース22が接続される。
【0055】
第1配管70〜第4配管73は互いに槽切換弁76の切換操作によって、連通可能に配管されている。すなわち、槽切換弁76は、図示するように4ポート4位置切換弁からなり、槽切換弁76が第1位置dに切換えられているときには、第1配管70、第2配管71および第3配管72が互いに連通され、第4配管73は何れにも連通されずに閉塞される。
【0056】
槽切換弁76が第2位置eに切換えられているときには、第1配管70と第3配管72とが連通され、更に、第2配管71と第4配管73とが連通される。その結果、第1ホース開閉弁74を開放することにより、吸引・排出ホース50の先端部と汚泥槽8内のドラムスクリーン11の下流側とが連通され、さらに、汚泥槽8の上部と反応槽7の底部とが連通される(汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85が第3位置jに切換えられている場合を除く。)。なお、上記において、第1ホース開閉弁74の代わりに第2ホース開閉弁75が開放される場合は、短尺の吸引・排出ホース22の先端部と汚泥槽8内のドラムスクリーン11の下流側とが連通され、さらに、汚泥槽8の上部と反応槽7の底部とが連通される(汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85が第3位置jに切換えられている場合を除く。)。
【0057】
槽切換弁76が第3位置fに切換えられているときには、第1配管70と第4配管73とが連通され、更に、第2配管71と第3配管72とが連通される。その結果、第1ホース開閉弁74を開放することにより、吸引・排出ホース50の先端部と汚泥槽8内の上部とが連通され(汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85が第3位置jに切換えられている場合を除く。)、さらに、汚泥槽8内のドラムスクリーン11の下流側(分離された汚水の排出口)と反応槽7の底部とが連通される。なお、上記において、第1ホース開閉弁74の代わりに第2ホース開閉弁75が開放される場合は、短尺の吸引・排出ホース22の先端部と汚泥槽8内の上部とが連通され(汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85が第3位置jに切換えられている場合を除く。)、さらに、汚泥槽8内のドラムスクリーン11の下流側と反応槽7の底部とが連通される。
【0058】
槽切換弁76が第4位置gに切換えられているときには、第1配管70と第2配管71とが連通され、更に、第3配管72と第4配管73とが連通される。その結果、第1ホース開閉弁74を開放することにより、汚泥槽8内の上部とドラムスクリーン11の下流側が連通され(汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85が第3位置jに切換えられている場合を除く。)、さらに、吸引・排出ホース50の先端部と反応槽7の底部とが連通される。なお、上記において、第1ホース開閉弁74の代わりに第2ホース開閉弁75が開放される場合は、汚泥槽8内の上部とドラムスクリーン11の下流側が連通され(汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85が第3位置jに切換えられている場合を除く。)、さらに、短尺の吸引・排出ホース22の先端部と反応槽7の底部とが連通される。
【0059】
第1配管70、汚泥槽側配管70aおよびドラムスクリーン側配管70bは互いに汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85の切換操作によって、連通可能に配管されている。すなわち、汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85は、図示するように3ポート4位置切換弁からなり、汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85が第1位置hに切換えられているときには、第1配管70とドラムスクリーン側配管70bとが連通される。その結果、第1配管70から送給される汚泥は、ドラムスクリーン11側へ供給される。
【0060】
汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85が第2位置iに切換えられているときには、第1配管70と汚泥槽側配管70aとが連通される。その結果、第1配管70から送給される汚泥は、ドラムスクリーン11へ供給されることなく、汚泥槽8内の底部に供給され蓄積される。
【0061】
汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85が第3位置jに切換えられているときには、第1配管70は、その下流端で閉塞され、汚泥槽側配管70aおよびドラムスクリーン側配管70bの何れにも連通されない。その結果、汚泥はドラムスクリーン11および汚泥槽8の底部の何れにも供給されない。
【0062】
汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85が第4位置kに切換えられているときには、第1配管70、汚泥槽側配管70aおよびドラムスクリーン側配管70bが相互に連通される。その結果、第1配管70から送給される汚泥は、ドラムスクリーン11および汚泥槽8内の底部の双方に供給される。
【0063】
凝集液タンク12は、タンク5を貫通した凝集液注入管77により、反応槽7の底部に通じている。凝集液注入管77の途中位置には、凝集液注入管77の管路を開閉するための凝集液供給弁78が設けられている。さらに、凝集液注入管77の凝集液供給弁78より反応室7側に、大気63に通じる大気吸引管79が接続されている。この大気吸引管79の途中位置には、大気吸引管79の管路を開閉するための大気吸引弁80が設けられている。
【0064】
タンク5の後底部には、汚泥槽8から凝集汚泥物を排出するための排出管81が設けられている。この排出管81には、その管路を開閉するための排出弁82が設けられている。さらに、タンク5の後方上部には汚泥槽8内の空気を大気に開放するための汚泥槽排気弁84が設けられており、この汚泥槽排気弁84とタンク5との間に汚泥槽8内の圧力を表示する連成計83が設けられている。
【0065】
つぎに、ドラムスクリーン11について簡単に説明する。図5に示すように、ドラムスクリーン11は、凝集反応処理が施された汚泥90(又は凝集反応処理が施されていない原汚泥90’)から凝集汚泥91(又は原汚泥に含まれる固形分の汚泥91’)と汚水92に分離する回転ドラム部11aと、分離された汚水92を受ける汚水収容部11bと、回転ドラム部11aの表面に残った凝集汚泥91(又は汚泥91’)を擦り取るためのスクレーパ11cとを備えている。
【0066】
回転ドラム部11aの主要部は、多数のワイヤが円筒状にわずかな隙間を設けて周方向へ巻き付けられて形成されている。この回転ドラム部11aの回転軸は、汚泥槽8内部において水平に支持されて、オイルモータ58によって回転駆動される。回転ドラム部11aへ汚泥90(又は原汚泥90’)を送給するドラムスクリーン側配管70bの下流端は、回転ドラム部11aの上方回転側に配されており、送給される汚泥90(又は原汚泥90’)が回転ドラム部11a上に乗り上がるようになっている。汚泥90(又は原汚泥90’)が回転ドラム部11a上に乗り上がると、汚泥90(又は原汚泥90’)に含まれる汚水が多数のワイヤー間に形成された隙間を通り抜けて分離され、回転ドラム部11aの下方に流れ落ちて汚水収容部11bに収容される。
【0067】
一方、回転ドラム部11a上には、水分が分離された汚泥、すなわち、凝集汚泥91(又は汚泥91’)が残存する。残存した凝集汚泥91(又は汚泥91’)は、回転ドラム部11aの下方回転側に設置されている傾斜板からなるスクレーパ11cによって擦り取られ、スクレーパ11cの傾斜に沿って斜め下方へ排出されて汚泥槽8内に蓄積される。
【0068】
汚水収容部11bは、連通管93(図5では連通管93は紙面に対して垂直方向に延在している。)を介して、水中ポンプ95が設置されている図示しない水中ポンプ設置室と連通している。水中ポンプ設置室は、連通管93を通して供給される汚水92を収容して水中ポンプ95の吸込口へ汚水92を供給する。
【0069】
[作業手順の説明]
以下、上記構成を備える汚泥濃縮車1により浄化槽Sの清掃処理を行う際の操作および汚泥濃縮処理について、主に図4の配管図と図6の作業手順表に基づいて説明する。なお、汚泥濃縮車1における操作は、各種操作レバーおよび計器類が集約されている操作部100(図2および図3参照)において行われる。
【0070】
<原汚泥吸引>
まず、清掃対象となる浄化槽Sの近所まで汚泥濃縮車1を移動して駐車し、ホースリール9から吸引・排出ホース50を巻き出し、吸引・排出ホース50の先端を浄化槽Sの嫌気槽S’の底へ挿入する。このとき、大気開放弁62、第1ホース開閉弁74、第2ホース開閉弁75、凝集液供給弁78、大気吸引弁80、排出弁82、汚泥槽排気弁84は閉鎖されている。なお、汚泥濃縮車1の駐車場所と浄化槽Sとの距離が短い場合は、長尺の吸引・排出ホース50に代えて短尺の吸引・排出ホース22を使用することができるが、本作業手順の説明では、長尺の吸引・排出ホース50を使用する場合を例に挙げる。
【0071】
作業手順(1)として、PTO51により真空ポンプ52を駆動し、吸引加圧切換弁66を左位置aに切換え、槽切換弁76を第3位置fに切換え、汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85を第1位置hに切換え、第1ホース開閉弁74を開放する。すると、真空ポンプ52の吸込側と反応槽7とが連通され、真空ポンプ52の吐出側が大気63へ通じるため、真空ポンプ52の吸引力によって反応槽7が減圧される。反応槽7は、第3配管72および第2配管71を介して汚泥槽8に連通され、さらに、汚泥槽8は、ドラムスクリーン側配管70b、第1配管70、第4配管73、および吸引・排出ホース50を介して浄化槽Sと通じるので、汚泥槽8も減圧されて、浄化槽S内の原汚泥が汚泥槽8に吸引され、汚泥槽8内のドラムスクリーン11へ送給される。
【0072】
このとき、真空ポンプ52の吐出側から吐出側配管53、大気吸排気管64を通じて大気63へ反応槽7内の空気が排気される。
【0073】
ドラムスクリーン11に送給された原汚泥は、ドラムスクリーン11によって、固形分の汚泥(以下「一次汚泥」ともいう。)と原汚泥に含まれる汚水(以下「一次汚水」ともいう。)とに分離(以下「一次ろ過」ともいう。)される。一次ろ過により分離された一次汚泥は、ドラムスクリーン11のから汚泥槽8の底方へ排出される。一方、一次ろ過により分離された一次汚水は、ドラムスクリーン11の汚水収容部11bに一旦収容され、さらに、連通管93(図5参照)、水中ポンプ設置室(不図示)、水中ポンプ95、第2配管71、および第3配管72を通じて、反応槽7へ吸引送給される。このとき、水中ポンプ95も一次汚水を反応槽7へ送給するように駆動する。
【0074】
なお、浄化槽Sから原汚泥を直接反応槽7へ吸引して、一次ろ過することなく、凝集反応処理を行う場合には、作業手順(1)において、槽切換弁76を第3位置fではなく、第4位置gに切換える(図6の作業手順表においては、その旨を括弧書きで示している。)。すると、反応槽7は、第3配管72、第4配管73、および吸引・排出ホース50を通じて浄化槽Sと連通されるので、浄化槽S内の原汚泥が反応槽7に吸引される。このとき汚泥槽8は加圧も減圧もされない(図6の作業手順表においては、その旨を(−)で示している。)。また、汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85の切換位置は何れでもよい(図6の作業手順表においては、その旨を(−)で示している。)。
【0075】
原汚泥の反応槽7への吸引完了後は、一次ろ過をした場合と同様に、以下に説明する作業手順を行う。
【0076】
<凝集反応>
作業手順(2)として、原汚泥の吸引および一次ろ過が完了した後、槽切換弁76を第4位置gに切換え、開放している第1ホース開閉弁74を閉鎖し、凝集液供給弁78および大気吸引弁80を開放する。すると、真空ポンプ52によって引き続き減圧されている反応槽7へ凝集液注入管77を通じて凝集液および空気が反応槽7の底部へ吸引され、凝集液と一次汚水とが攪拌される。なお、一次ろ過が省略された場合は、ここで凝集液と原汚泥とが攪拌される。この攪拌作用により凝集反応が均一に促進され、ゲル状の凝集汚泥が生成される。凝集反応処理は、約15分程度行われる。
【0077】
<タンク内圧復帰>
凝集反応処理が完了した後は、汚泥濃縮処理に先立って、タンク5内の負圧状態を大気圧状態に復帰させるための操作が行われる。
【0078】
すなわち、作業手順(3)として、凝集反応処理が完了した後、開放している凝集液供給弁78および大気吸引弁80を閉鎖し、吸引加圧切換弁66を中立位置bに切換え、槽切換弁76を第2位置eに切換え、汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85を第1位置hに切換え、大気開放弁62を開放する。すると、反応槽7が大気吸排気管64、反応槽吸引加圧管60を介して大気63に通じるとともに、汚泥槽8が第3配管72、第1配管70およびドラムスクリーン側配管70bを介して反応槽7と連通されるため、タンク5内の圧力が負圧から大気圧へと戻される。このとき、大気吸排気管64を通じて大気63から反応槽7側へ空気が吸込まれるが、この空気の吸込みは、流路が絞られた一方向可変絞り弁61のほか、大気開放弁62(バイパス管65)を通じて行われるので、負圧状態のタンク5内の圧力を短時間で大気圧に戻すことができる。
【0079】
<汚泥濃縮>
作業手順(4)として、吸引加圧切換弁66を右位置cに切換え、第1ホース開閉弁74を開放する。すると、真空ポンプ52の吐出側と反応槽7とが連通され、真空ポンプ52の吸込側が一方向可変絞り弁61を介して大気63に通じるため、反応槽7が加圧される。このとき、一方向可変絞り弁61の可変絞り弁61aは、真空ポンプ52の吸込側の流路を調整可能に絞っている。
【0080】
さらに、反応槽7は、第3配管72、第1配管70およびドラムスクリーン側配管70bを介して汚泥槽8内のドラムスクリーン11に連通しているため、反応槽7内で凝集反応処理が施された一次汚水は、上記配管72、70、70bを通じてドラムスクリーン11へ圧送される。なお、一次ろ過が省略された場合は凝集反応処理が施された原汚泥が反応槽7内からドラムスクリーンへ圧送される。
【0081】
凝集反応処理が施された一次汚水又は凝集反応処理が施された原汚泥(以下これらを「処理後汚泥」という。)が反応槽7からドラムスクリーン11へ圧送されるとき、圧送される処理後汚泥の流量をドラムスクリーン11の処理能力の範囲内の適正流量(例えば、ドラムスクリーン11の最大処理流量)となるように、一方向可変絞り弁61の可変絞りを調整する。
【0082】
具体的には、作業者がサイトグラス87内を流れる処理後汚泥を目視しつつ、その流量が概ね適正流量となるように一方向可変絞り弁61の可変絞りの調整を行う。なお、一方向可変絞り弁61の可変絞りの調整作業は、初期設定として一度だけ行えばよく、処理後汚泥の性質(粘度など)が変わらない限り、次回から作業手順(3)において、可変絞りの調整作業は省略することができる。
【0083】
このようにして、反応槽7内の処理後汚泥が適正流量にてドラムスクリーン11へ圧送されると、次第に反応槽7内の処理後汚泥の液面高さが低下し、処理後汚泥の液面高さとドラムスクリーン11の高さの差から生じる水頭圧差が増加する。
【0084】
「技術背景」の欄で説明した本件出願人が試作した汚泥濃縮装置のように、反応槽7内の圧力が一定に維持されるだけでは、上記水頭圧差の増加によって、圧送される処理後汚泥の流量は急低下してしまう。しかし、本発明の実施形態に係る汚泥濃縮装置20では、真空ポンプ52から反応槽7内に送給される空気は、反応槽7内の圧力がリリーフ弁69のリリーフ圧以下である限り、反応槽7の外へ逃げないようになっており、なお且つ、真空ポンプ52から反応層7内に送給される空気量は、反応槽7の内圧に左右されることなく、ほぼ一定していることから、処理後汚泥の圧送流量の低下に伴って、反応槽7内の圧力(換言すると、反応槽7の汚泥槽8に対する内圧差)は徐々に上昇する。そして、反応槽7内の圧力の上昇は、処理後汚泥の圧送流量を増加させる方向に作用することから、上記水頭圧差が増加することによる圧送流量の低下は大幅に抑制される。
【0085】
この結果、本発明の実施形態に係る汚泥処理装置20によれば、適正流量に近い流量を維持しつつ処理後汚泥を反応槽7からドラムスクリーン11へ圧送することができる。しかも、可変絞りの調整作業は最初の汚泥の圧送開始時に一度だけ行えばよく、従来例に係る汚泥処理装置のように汚泥の圧送中終始バルブ操作を行う必要はない。
【0086】
汚泥槽8内のドラムスクリーン11へ送給された処理後汚泥は、ドラムスクリーン11によって凝集汚泥(以下「二次汚泥」ともいう。)と凝集汚泥に含まれる汚水(以下「二次汚水」ともいう。)とに分離(以下「二次ろ過」ともいう。)される。二次ろ過により分離された二次汚泥は、ドラムスクリーン11から汚泥槽8の底方へ排出される。一方、二次ろ過により分離された二次汚水は、ドラムスクリーン11の汚水収容部11bに一旦収容され、連通管93通じて、水中ポンプ設置室(不図示)に収容され、さらに、水中ポンプ95の送給力および汚泥槽8内の圧力によって、第2配管71、第4配管73および吸引・排出ホース50を通じて浄化槽Sへ排出される。
【0087】
二次汚水の排出完了後は、PTO51による真空ポンプ52およびドラムスクリーン11の駆動を停止し、開放した第1ホース開閉弁74を閉鎖して、汚泥濃縮車1を処分場110まで移動させる。
【0088】
<濃縮汚泥排出>
処分場110では、排出弁82に短尺の吸引・排出ホース22の基端を接続し、そのホース22の先端を処分場110の所定場所へ配置する。
【0089】
作業手順(5)として、PTO51により真空ポンプ52を駆動し、吸引加圧切換弁66を右位置cに切換え、槽切換弁76を第2位置eに切換え、汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85を第1位置h、第2位置iまたは第4位置kに切換え、排出弁82および大気開放弁62を開放する。すると、真空ポンプ52の吐出側と反応槽7とが連通され、真空ポンプ5の吐出空気が反応槽7内へ送給されて反応槽7が加圧される。反応槽7は、第3配管72、第1配管70等を介して、汚泥槽8に連通しているため、反応槽7内の空気は汚泥槽8に送給され、汚泥槽8内が加圧されて、汚泥槽8内に蓄積されている二次汚泥(濃縮汚泥)が排出管81、短尺の吸引・排出ホース22を通じて処分場110へ圧送排出される。
【0090】
このとき、大気吸排気管64、吸込側配管54を通じて真空ポンプ52の吸込側から空気が吸込まれるが、この空気の吸込みは、流路が絞られた一方向可変絞り弁61のほか、大気開放弁62(バイパス管65)を通じて行われるので、真空ポンプ52の吸込み抵抗が低減され、効率的に汚泥槽8内の圧力を上昇させて濃縮汚泥の短時間での圧送排出を行うことができる。なお、濃縮汚泥の排出が勢いよく行われることにより、吸引・排出ホース22が暴れて困るような場合は、大気開放弁62を閉鎖することで、濃縮汚泥の排出流量を低減することができ、その結果、吸引・排出ホース22の暴れを抑制することができる。
【0091】
凝集汚泥の排出が完了した後は、例えば、吸引加圧切換弁66を中立位置bに切換え、汚泥槽排気弁84を開放する(図6において図示せず。)などして、加圧状態にあるタンク内の圧力が大気圧に戻される。
【0092】
既述した実施の形態においては、汚泥濃縮装置20が車両2に搭載されている場合を例に挙げて説明したが、汚泥濃縮装置20を車両2に搭載せずに、汚泥濃縮装置20だけで既述の各種処理動作を行うことも可能である。この場合、汚泥濃縮装置20のエンジンとして、車両2のエンジンEではなく、例えば、車両2から独立したエンジンを使用すればよい。
【0093】
また、既述した実施形態のように、大気開放弁62およびバイパス管65は設けることが望ましいが、これらを省略することも可能である。但し、この場合は、処分場110での濃縮汚泥の圧送排出時間や負圧のタンク5内を大気圧に戻すために必要な時間が比較的長くなってしまう。
【0094】
また、既述した実施形態において、一方向可変絞り弁61の代わりに双方向可変絞り弁(例えば、上記一方向可変絞り弁61において逆止弁61bを省略したもの)を設けてもよい。但し、この場合は、大気開放弁62およびバイパス管65を省略せずに設け、上記作業手順(1)および(2)において大気開放弁62を開放することが望ましい。
【0095】
−第2の実施の形態−
以下、図7に基づいて本発明の第2の実施の形態に係る汚泥濃縮装置20Aおよびこれを備える汚泥濃縮車について説明する。第1の実施の形態と同様の構成については、同一符号を付してその説明を省略し、主な相違点についてのみ図7の配管図に基づいて説明する。なお、第2の実施形態に係る汚泥濃縮装置20Aを搭載した汚泥濃縮車の外観構成図は省略する。
【0096】
[配管図の説明]
大気吸排気管64には、図4の一方向可変絞り弁61の代わりに、大気63側から吸引加圧切換弁66側(真空ポンプ52の吸込側)への流路を調整可能に絞る、可変絞り弁201が設けられ、更に、吸引加圧切換弁66側に、この吸引加圧切換弁66側から大気63側への流れを止める逆止弁202が設けられている。なお、図4の大気開放弁62およびバイパス管65は設けられていない。
【0097】
大気吸排気管64においては、さらに、逆止弁202と吸引加圧切換弁66との間に第1凝集反応処理用分岐管203が分岐して設けられている。この第1凝集反応処理用分岐管203は、後述する凝集反応処理切換弁204の所定ポートに接続されておりこの凝集反応処理切換弁204を介して第2凝集反応処理用分岐管205に連通可能となっている。第2凝集反応処理用分岐管205は、一端側が凝集反応処理切換弁204の所定ポートに接続されており、他端側が反応槽7の底部に通じている。この第2凝集反応処理用分岐管205の他端側は、反応槽7の底部において水平方向に延在され、多数の孔が形成された散気管205aを有している。
【0098】
また、第2凝集反応処理用分岐管205の途中位置には、エジェクタ207が介設され、このエジェクタ207の吸込口に凝集剤収容部である凝集液タンク12が吸込配管208を介して接続されている。この吸込配管208の途中位置には、その流路を開閉するための凝集液供給弁209が介設されており、この凝集液供給弁209を開放することにより、凝集液タンク12はエジェクタ207の吸込口と連通される。なお、吸込配管208において、凝集液供給弁209よりエジェクタ207側の途中位置には、大気や汚泥中和剤を吸引するための配管210が接続されている。この配管210には、その流路を開閉するための大気吸引弁211が介設されている。
【0099】
また、第2凝集反応処理用分岐管205において、エジェクタ207と反応槽7との間に反応槽7側からエジェクタ207側への逆流を防止するための逆止弁212が介設されている。
【0100】
なお、本実施の形態においては、上記のように凝集液タンク12と反応槽7との間の配管が設けられているため、図4に示した配管構成部材77〜80は省略されている。
【0101】
第1凝集反応処理用分岐管203および第2凝集反応処理用分岐管205は、互いに凝集反応処理切換弁204の切換操作によって、連通可能に配管されている。すなわち、凝集反応処理切換弁204は、図示するように3ポート2位置切換弁からなり、凝集反応処理切換弁204が左位置mに切換えられているときには、第1凝集反応処理用分岐管203と第2凝集反応処理用分岐管205とが連通される。その結果、吸引加圧切換弁66が左位置aに切換えられているときは、真空ポンプ52の吐出側は、吐出側配管53、大気吸排気管64、第1凝集反応処理用分岐管203および第2凝集反応処理用分岐管205を介して反応槽7の底部に連通される。これらの吸引加圧切換弁66、凝集反応処理切換弁204および配管53,64,203,205によって、一端側が真空ポンプ52の吐出側に連通可能に設けられ、他端側が反応槽7の底部に通じる凝集反応処理用吐出配管が構成されている。
【0102】
一方、凝集反応処理切換弁204が右位置nに切換えられているときには、第1凝集反応処理用分岐管203は大気63に通じる。その結果、吸引加圧切換弁66が左位置aに切換えられているときは、真空ポンプ52の吐出側は、大気吸排気管64および第1凝集反応処理用分岐管203を介して大気63と通じ、真空ポンプ52の吸込側は、タンク5内の反応槽7と連通する。
【0103】
また、凝集反応処理切換弁204が右位置nに切換えられており、吸引加圧切換弁66が中立位置bに切換えられているときは、真空ポンプ52の吐出側は、真空ポンプ52の吸込側と連通し、更に、タンク5内の反応槽7と大気63とが通じる。
【0104】
また、凝集反応処理切換弁204が右位置nに切換えられており、吸引加圧切換弁66が右位置cに切換えられているときは、真空ポンプ52の吐出側は、タンク5内の反応槽7と連通し、真空ポンプ52の吸込側は、大気吸排気管64および第1凝集反応処理用分岐管203を介して大気63と通じる。
【0105】
以下、その他の第1の実施の形態との相違点について説明する。まず、第2の実施の形態に係る汚泥濃縮装置20Aにおいては、図4に示した第1の実施の形態における、槽切換弁76、汚泥槽・ドラムスクリーン切換弁85、汚泥槽側配管70a、ドラムスクリーン側配管70bおよびサイトグラス87が省略されている。また、図4に示した第1配管70が汚泥槽8内のドラムスクリーン11に直接的に連通されたもの(以下「第1配管70A」という。)となっている。
【0106】
上記槽切換弁76が省略された代わりに、第1槽切換弁76Aおよび第2槽切換弁76Bが設けられている。そして、第1配管70A、第2配管71、第4配管73、および連結配管231(第1槽切換弁76Aと第2槽切換弁76Bとを連結する配管)は、互いに第1槽切換弁76Aの切換操作によって、連通可能に配管されている。すなわち、第1槽切換弁76Aは、図示するように4ポート2位置切換弁からなり、第1槽切換弁76Aが左位置oに切換えられているときには、第1配管70Aと第2配管71とが連通され、第4配管73と連結配管231とが連通される。
【0107】
第2槽切換弁76Bは、図示するように3ポート3位置切換弁からなり、第2槽切換弁76Bが上位置qに切換えられているときには、連結配管231は何れにも連通されずに閉塞され、第3配管72と汚泥槽8に連通した第5配管232とが連通される。また、第2槽切換弁76Bが中立位置rに切換えられているときには、連結配管231と第3配管72とが連通され、第5配管232は、何れにも連通されずに閉塞される。また、第2槽切換弁76Bが下位置sに切換えられているときには、連結配管231と第5配管232とが連通され、第3配管72は、何れにも連通されずに閉塞される。
【0108】
また、反応槽吸引加圧管60の途中位置から分岐した分岐管234と、大気吸排気管64の途中位置(第1凝集反応処理用分岐管203と吸引加圧切換弁66との間の位置)から分岐し、その途中位置に加圧バイパス開閉弁242が設けられたバイパス管235と、一端側が汚泥槽8に連通した汚泥槽吸引加圧管236と、バイパス管235の途中位置(加圧バイパス開閉弁242より汚泥槽8側)から大気63に通じるバイパス分岐管235Aとが設けられている。これら分岐管234、バイパス管235および汚泥槽吸引加圧管236は、互いにエア切換弁237の切換操作によって、連通可能に配管されている。すなわち、エア切換弁237は、図示するように3ポート3位置切換弁からなり、エア切換弁237が左位置tに切換えられているときには、バイパス管235と汚泥槽吸引加圧管236とが連通され、分岐管234は、何れにも連通されずに閉塞される。また、エア切換弁237が中立位置uに切換えられているときには、分岐管234、バイパス管235および汚泥槽吸引加圧管236は互いに連通される。また、エア切換弁237が右位置wに切換えられているときには、分岐管234と汚泥槽吸引加圧管236とが連通され、バイパス管235は、何れにも連通されずに閉塞される。
【0109】
なお、反応槽吸引加圧管60において、分岐管234とリリーフ管68との間にエアセパレータ241が介設され、図4に示したエアセパレータ15は省略されている。
【0110】
[作業手順の説明]
以下、上記構成を備える第2の実施の形態に係る汚泥濃縮車により浄化槽Sの清掃処理を行う際の操作および汚泥濃縮処理について、主に図7の配管図と図8の作業手順表に基づいて説明する。
【0111】
<原汚泥吸引>
まず、清掃対象となる浄化槽Sの近所まで汚泥濃縮車1を移動して駐車し、ホースリール9から吸引・排出ホース50を巻き出し、吸引・排出ホース50の先端を浄化槽Sの嫌気槽S’へ挿入する。このとき、第1ホース開閉弁74、第2ホース開閉弁75、排出弁82、汚泥槽排気弁84、凝集液供給弁209、大気吸引弁211および加圧バイパス開閉弁242は閉鎖されている。なお、汚泥濃縮車1の駐車場所と浄化槽Sとの距離が短い場合は、長尺の吸引・排出ホース50に代えて短尺の吸引・排出ホース22を使用することができるが、本作業手順の説明でも、長尺の吸引・排出ホース50を使用する場合を例に挙げる。なお、嫌気槽S’内では、下から順に沈殿汚泥250、中間水251およびスカム252が3層を形成しており、これらのタンク5内への吸引作業は、上層のスカム252、中間層の中間水251、下層の沈殿汚泥250の順に行われる。
【0112】
作業手順(1−1)として、吸引・排出ホース50の先端を嫌気槽S’内のスカム252に挿入する。そして、PTO51により真空ポンプ52を駆動し、吸引加圧切換弁66を左位置aに切換え、第1槽切換弁76Aを左位置oに切換え、第2槽切換弁76Bを下位置sに切換え、凝集反応処理切換弁204を右位置nに切換え、エア切換弁237を右位置wに切換え、第1ホース開閉弁74を開放する。すると、真空ポンプ52の吸込側と反応槽7および汚泥槽8とが連通され、真空ポンプ52の吐出側が大気63へ通じ、吸引・排出ホース50と汚泥槽8とが通じるため、真空ポンプ52の吸引力によって反応槽7および汚泥槽8が減圧されて、浄化槽S内の原汚泥(スカム252)がドラムスクリーン11を介さずに、第5配管232を通じて汚泥槽8へ吸引される。この吸引はバキューム機能であり、スカム252を汚泥槽8へ効率良く吸引することができる。一方、真空ポンプ52の吐出側から、反応槽7および汚泥槽8内の空気が吐出側配管53、大気吸排気管64および凝集反応処理用分岐管203を通じて大気63へ排気される。
【0113】
スカム252の吸引が完了した後、作業手順(1−2)として、第2槽切換弁76Bを中立位置rに切換え、吸引・排出ホース50の先端をさらに浄化槽Sの底側に移動させて、中間水251に挿入する。すると、吸引・排出ホース50は反応槽7に通じるため、浄化槽S内の原汚泥(中間水251)が反応槽7へ吸引される。この吸引もバキューム機能であり、中間水251を反応槽7へ効率良く吸引することができる。
【0114】
中間水251の吸引が完了した後、作業手順(1−3)として、第2槽切換弁76Bを下位置sに切換えて、吸引・排出ホース50の先端をさらに浄化槽Sの底側に移動させて、沈殿汚泥250に挿入する。すると、吸引・排出ホース50は汚泥槽8に通じるため、浄化槽S内の原汚泥(沈殿汚泥250)がドラムスクリーン11を介さずに、第5配管232を通じて汚泥槽8へ吸引される。この吸引もバキューム機能であり、沈殿汚泥250を汚泥槽8へ効率良く吸引することができる。
【0115】
<凝集反応>
作業手順(2)として、上記沈殿汚泥250、中間水251、スカム252の吸引が完了した後、凝集反応処理切換弁204を左位置mに切換え、エア切換弁237を左位置tに切換え、開放している第1ホース開閉弁74を閉鎖し、凝集液供給弁209および大気吸引弁211を開放する。すると、真空ポンプ52の吸込側と反応槽7の上部(反応槽7内の原汚泥(中間水)レベルより高い位置にある空気部)とが吸込側配管54および反応槽吸引加圧管60(これら配管54,60は、一端側が真空ポンプ52の吸込側に連通可能に設けられ、他端側が反応槽7の上部に通じるものであって、凝集反応処理時に反応槽7内の原汚泥(中間水)の上に存在する空気を吸引する凝集反応処理用吸引配管を構成する。)を介して連通され、真空ポンプ52の吐出側が凝集反応用処理用吐出配管(配管53,64,205で構成される配管)を介して反応槽7の底部(反応槽7内の原汚泥(中間水)レベルより低い位置)に通じる。このため、真空ポンプ52の吐出側から吐出された空気は、順に吐出側配管53、大気吸排気管64、第1凝集反応処理用分岐管203および第2凝集反応処理用分岐管205内を流れ、第2凝集反応処理用分岐管205に介設されたエジェクタ207を通過する際に、当該エジェクタ207の吸込口に連通した凝集液タンク12から凝集液(凝集剤)を吸込み、散気管205aから空気混じりの凝集液が吐出される。これにより、凝集液と原汚泥(中間水)とが攪拌され、ゲル状の凝集汚泥が生成される。一方、真空ポンプ52の吸込側は、反応槽7内の原汚泥(中間水)の上に存在する空気を吸引する。つまり、真空ポンプ52は、上記配管60,54,53,64,203,205、および反応槽7内で空気を循環する。なお、上記において、吸引・加圧切換弁66および凝集反応処理切換弁204は、凝集反応処理用吐出配管53,64,205の一端側を真空ポンプ52の吐出側に連通するとともに、凝集反応処理用吸引配管60,54の一端側を真空ポンプ52の吸込側に連通する切換連通手段として機能している。
【0116】
ところで、第1の実施の形態では、反応槽7の上部(反応槽7の原汚泥(中間水)レベルより高い位置にある空気部)を真空ポンプ52の吸込側に連通し、反応槽7を減圧することのみをもって凝集反応処理を行っていた。そうすると、上記空気部が仮に0MPa(絶対圧;以下同様)であるとしても、凝集液注入管77の吐出口が配置されている反応槽7の底部の圧力は、
[空気部の圧力(0MPa)]+[反応槽7内の原汚泥(中間水)の水頭圧]
となる。また、反応槽7の底部の圧力と凝集液を供給する凝集液注入管77の内の圧力との差(以下「吐出差圧」ともいう。)によって、反応槽7に供給されるバブリング用空気および凝集液の勢い(流量)が決まるが、この吐出差圧は、凝集液注入管77内の圧力が概ね大気圧(0.1MPa)であると考えることができるので、
[大気圧(0.1MPa)]−[反応槽7の空気部の圧力(0MPa)]−[原汚泥(中間水)の水頭圧]
となり、上記吐出差圧は、高く見積もっても大気圧(0.1MPa)未満である。
【0117】
一方、本実施の形態における汚泥濃縮装置20Aでは、真空ポンプ52の吐出空気に凝集液を混入して反応槽7の底部の原汚泥(中間水)内に吐出し、さらに反応槽7の上部の空気を上記真空ポンプ52によって吸引しているので、上記吐出差圧に相当する反応槽7の底部の圧力と凝集液を供給する第2凝集反応処理用分岐管205(特に散気管205a)内の圧力との差は、大気圧(0.1MPa)以上とすることが可能である。したがって、この汚泥濃縮装置20Aによれば、バブリング用空気および凝集液の勢い(流量)を増加してバブリングによる攪拌効率をより一層向上し、ひいては、原汚泥(中間水)と凝集液を十分に攪拌するために必要な攪拌時間を短縮することができる。
【0118】
なお、この第2の実施の形態においては、上記凝集反応処理において、真空ポンプ52の吸込側と反応槽7の上部とを配管60,54を介して連通し、反応槽7の上部の空気を吸い込んで反応槽7内の昇圧を抑えているが、真空ポンプ52の吸込側および反応槽7の上部を大気63に通じる配管構成(不図示)を設け、上記吐出差圧に相当する圧力差を、大気圧(0.1MPa)以上とすることも可能である。
【0119】
作業手順(3)として、吸引加圧切換弁66を右位置cに切換え、第1槽切換弁76Aを右位置pに切換え、第2槽切換弁76Bを中立位置rに切換え、凝集反応処理切換弁204を右位置nに切換え、第1ホース開閉弁74を開放し、凝集液供給弁209および大気吸引弁211を閉鎖する。すると、真空ポンプ52の吐出側と反応槽7とが連通され、真空ポンプ52の吸込側が可変絞り弁201を介して大気63に通じるため、反応槽7が加圧される。このとき、可変絞り弁201は、真空ポンプ52の吸込側の流路を調整可能に絞っている。
【0120】
さらに、反応槽7は、第3配管72、連結配管231および第1配管70Aを介して汚泥槽8内のドラムスクリーン11に連通しているため、反応槽7内で凝集反応処理が施された原汚泥(中間水)は、上記配管72、231、70Aを通じてドラムスクリーン11へ圧送される。
【0121】
凝集反応処理が施された上記原汚泥(中間水)(以下「処理後汚泥」という。)が反応槽7からドラムスクリーン11へ圧送されるとき、圧送される処理後汚泥の流量をドラムスクリーン11の処理能力の範囲内の適正流量(例えば、ドラムスクリーン11の最大処理流量)となるように、可変絞り弁201の可変絞りを調整する。
【0122】
具体的には、作業者が図示しない汚泥槽用のぞき窓や第1配管70Aに設けられた図示しないサイトグラス内を流れる処理後汚泥を目視しつつ、その流量が概ね適正流量となるように可変絞り弁201の調整を行う。具体的な調整およびその調整による作用効果は第1の実施の形態で説明したものと同様である。
【0123】
汚泥槽8内のドラムスクリーン11へ送給された処理後汚泥は、ドラムスクリーン11によって凝集汚泥と凝集汚泥に含まれる汚水とに分離される。分離された凝集汚泥は、ドラムスクリーン11から汚泥槽8の底方へ排出される。一方、ろ過により分離された汚水は、ドラムスクリーン11の汚水収容部11bに一旦収容され、連通管93通じて、水中ポンプ設置室(不図示)に収容され、さらに、水中ポンプ95の送給力によって、第2配管71、第4配管73および吸引・排出ホース50を通じて浄化槽Sへ排出される。
【0124】
なお、反応槽7から凝集汚泥が排出された後に同槽7の底部に残った余剰の凝集汚泥は、ドラムスクリーン11を介さずに直接汚泥槽8へ移送することができる。この場合、作業手順(4)として、第2槽切換弁76Bを上位置qに切換え、エア切換弁237を左位置tに切換え、加圧バイパス開閉弁242を開放する。すると、反応槽7の底部と汚泥槽8とが72、232を介して連通され、反応槽7の底部に残った余剰の凝集汚泥はドラムスクリーン11を介さずに直接汚泥槽8へ移送される。
【0125】
汚水の排出および余剰の凝集汚泥の移送の完了後は、PTO51による真空ポンプ52およびドラムスクリーン11の駆動を停止し、開放した第1ホース開閉弁74を閉鎖して、汚泥濃縮装置20Aを搭載した汚泥濃縮車を処分場110まで移動させる。
【0126】
<濃縮汚泥排出>
処分場110では、排出弁82に短尺の吸引・排出ホース22の基端を接続し、そのホース22の先端を処分場110の所定場所へ配置する。
【0127】
作業手順(5)として、PTO51により真空ポンプ52を駆動し、吸引加圧切換弁66を右位置cに切換え、第1槽切換弁76Aを右位置pに切換え、第2槽切換弁76Bを中立位置rに切換え、凝集反応処理切換弁204を右位置nに切換え、エア切換弁237を右位置wに切換え、排出弁82を開放する。すると、真空ポンプ52の吐出側と反応槽7および汚泥槽8とが連通され、真空ポンプ5の吐出空気が汚泥槽8に送給され、汚泥槽8内が加圧されて、汚泥槽8内に蓄積されている濃縮汚泥が排出管81、短尺の吸引・排出ホース22を通じて処分場110へ圧送排出される。
【0128】
なお、第1の実施の形態において説明したように、第2の実施の形態に係る汚泥濃縮装置20Aも車両に搭載せずに使用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、浄化槽から汚泥を吸引して濃縮する汚泥濃縮装置、および該汚泥濃縮装置を車両に搭載してなる汚泥濃縮車に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る汚泥濃縮装置および汚泥濃縮車を示す左側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る汚泥濃縮装置および汚泥濃縮車を示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る汚泥濃縮装置および汚泥濃縮車を示す背面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る汚泥濃縮車に搭載された汚泥濃縮装置の配管図である。
【図5】ドラムスクリーンおよびその周囲部を示した図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る汚泥濃縮装置および汚泥濃縮車を操作する際に行うべき各種弁操作等を示した作業手順表である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る汚泥濃縮車に搭載された汚泥濃縮装置の配管図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る汚泥濃縮装置および汚泥濃縮車を操作する際に行うべき各種弁操作等を示した作業手順表である。
【図9】本件出願人が試作した汚泥濃縮装置の概略配管図である。
【符号の説明】
【0131】
1 汚泥濃縮車
7 反応槽
8 汚泥槽
11 ドラムスクリーン(汚泥分離機)
12 凝集液タンク(凝集剤収容部)
20,20A 汚泥濃縮装置
52 真空ポンプ(ポンプ)
53,64,203,205 凝集反応処理用吐出配管
61 一方向可変絞り弁(可変絞り弁)
61a 可変絞り弁
62 大気開放弁
66 吸引・加圧切換弁(切換連通手段)
87 サイトグラス(透明部材)
70 第1配管(汚泥圧送路)
70b ドラムスクリーン側配管(汚泥圧送路)
72 第3配管(汚泥圧送路)
204 凝集反応処理切換弁(切換連通手段)
207 エジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥が吸引されて凝集反応処理が施される反応槽と、
前記凝集反応処理が施された汚泥から凝集汚泥と汚水とに分離する汚泥分離機と、
前記反応槽を加減圧するポンプと、
前記ポンプにより前記反応槽が加圧されることにより、前記反応槽内に収容されている凝集反応処理が施された汚泥が前記汚泥分離機へ圧送される汚泥圧送路と、
前記汚泥分離機により分離された凝集汚泥が蓄積される汚泥槽と、
を備える汚泥濃縮装置において、
前記ポンプにより前記反応槽が加圧されるときに前記ポンプの吸込側の流路を調整可能に絞る可変絞り弁を備えることを特徴とする汚泥濃縮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の汚泥濃縮装置において、
前記可変絞り弁は、大気側から前記ポンプ側への流れを調整可能に絞るように配置された一方向可変絞り弁であることを特徴とする汚泥濃縮装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の汚泥濃縮装置において、
前記ポンプが前記反応槽を加圧するときに、前記ポンプの吸込側に前記可変絞り弁と並列に連通される大気開放弁が設けられたことを特徴とする汚泥濃縮装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の汚泥濃縮装置において、
前記汚泥圧送路を形成する部材の少なくとも一部が透明部材で構成されていることを特徴とする汚泥濃縮装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の汚泥濃縮装置を備えることを特徴とする汚泥濃縮車。
【請求項6】
汚泥が吸引されて凝集反応処理が施される反応槽と、
前記凝集反応処理が施された汚泥から凝集汚泥と汚水とに分離する汚泥分離機と、
前記反応槽を加減圧するポンプと、
前記汚泥分離機により分離された凝集汚泥が蓄積される汚泥槽と、
を備える汚泥濃縮装置において、
一端側が前記ポンプの吐出側に連通可能に設けられ、他端側が前記反応槽の底部に通じる凝集反応処理用吐出配管と、
前記凝集反応処理用吐出配管の途中位置に介設されたエジェクタと、
前記エジェクタの吸込口に連通可能に設けられた凝集剤収容部と、
を備えることを特徴とする汚泥濃縮装置。
【請求項7】
請求項6に記載の汚泥濃縮装置において、
一端側が前記ポンプの吸込側に連通可能に設けられ、他端側が前記反応槽の上部に通じる凝集反応処理用吸引配管と、
前記凝集反応処理用吐出配管の一端側を前記ポンプの吐出側に連通するとともに、前記凝集反応処理用吸引配管の一端側を前記ポンプの吸込側に連通する切換連通手段と、
を更に備えることを特徴とする汚泥濃縮装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の汚泥濃縮装置を備えることを特徴とする汚泥濃縮車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−66587(P2009−66587A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4702(P2008−4702)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】