説明

汚泥脱水システム

【課題】 加圧された下水汚泥を十分に濃縮して圧入式汚泥脱水機に供給することができ、しかも濃縮装置の製作コスト及びメンテナンスコストを従来よりも大幅に低減することができる汚泥脱水システムを提供する。
【解決手段】 ロータリープレスのような圧入式汚泥脱水機4の前段に、みかけ比重が0.1〜0.4の発泡樹脂製で、複数の突起を備えた浮上ろ材9が充填された上向流式の汚泥濃縮槽3を設置し、凝集剤が添加された汚泥をこの汚泥濃縮槽3で濃縮したうえ圧入式汚泥脱水機4に供給し、脱水する。汚泥濃縮槽3に撹拌手段10を設け、凝集混和槽としての機能を併せ持たせることができる。この構造の汚泥濃縮槽3は安価に製作でき、メンテナンスが容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧入式汚泥脱水機を用いて下水汚泥を脱水するための汚泥脱水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥の脱水処理装置には従来から様々な形式のものが用いられているが、フィルタープレスのように装置内部で汚泥の加圧が行われる形式と、ロータリープレスやスクリュープレスのように外部で加圧した汚泥を圧入する形式のものとに大別できる。後者の脱水機(圧入式汚泥脱水機)を用いる場合には、処理能力を高めるために予め汚泥を濃縮しておく必要がある。しかもこの濃縮はフロックの破壊を避けるため、予め加圧された状態の汚泥に対して行わねばならない。このため従来は、例えば特許文献1に示されるようなウェッジワイヤを用いた汚泥濃縮装置を用い、加圧された汚泥を濃縮したうえで圧入式汚泥脱水機に供給していた。
【0003】
ところがこのようなウェッジワイヤは加圧タンク内に固定されるものであり、しかも目詰まりし易いので、そのメンテナンスに多くの手数を必要とし、製作コストも高くなるという問題があった。またウェッジワイヤの目の粗さ設定が容易ではないうえ、SSを40000ppm以上になるまで濃縮することは困難であり、圧入式汚泥脱水機の処理能力を十分に発揮させることができないという問題もあった。
【特許文献1】特開平10―28505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記した従来の問題点を解決して、加圧された下水汚泥を十分に濃縮して圧入式汚泥脱水機に供給することができ、しかも濃縮装置の製作コスト及びメンテナンスコストを従来よりも大幅に低減することができる汚泥脱水システムを提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するためになされた本発明の汚泥脱水システムは、圧入式汚泥脱水機の前段に、浮上ろ材が充填された上向流式の汚泥濃縮槽を設置し、凝集剤が添加された汚泥を濃縮したうえ圧入式汚泥脱水機に供給することを特徴とするものである。なお、汚泥濃縮槽が撹拌手段を備え、凝集混和槽としての機能を兼ね備えたものであることが好ましく、汚泥濃縮槽に充填される浮上ろ材が、みかけ比重が0.1〜0.4の発泡樹脂製で、複数の突起を備えたものであることが好ましい。さらに汚泥濃縮槽の分離液排出経路に、濁度計及び流量計を設置し、汚泥濃縮槽の逆洗を自動的に行わせることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の汚泥脱水システムは、加圧された凝集汚泥の濃縮を浮上ろ材が充填された上向流式の汚泥濃縮槽を用いて行う点に最大の特徴があり、従来のウェッジワイヤ式の汚泥濃縮装置に比較して、汚泥濃度を3倍以上に高めることができる。このため圧入式汚泥脱水機の処理能力を十分に発揮させることができる。またこの浮上ろ材式の汚泥濃縮槽は製作コストが安価であるうえ、逆洗が容易であるのでメンテナンスコストが安く、システム全体の運転コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明のシステムを用いた全体フローを示す説明図であり、1は汚泥混合槽、2は混合汚泥貯留槽、3は汚泥濃縮槽、4は圧入式汚泥脱水機である。下水処理場から排出された初沈汚泥Aは汚泥スクリーン5で粗大夾雑物を取り除かれたうえ、余剰汚泥Bとともに汚泥混合槽1に投入され、混合撹拌される。混合された汚泥は汚泥移送ポンプ6により混合汚泥貯留槽2に貯留され、さらに汚泥供給ポンプ7により加圧されて汚泥濃縮槽3に供給される。なお汚泥供給ポンプ7と汚泥濃縮槽3との間で高分子凝集剤、PAC等の凝集剤Cが添加される。
【0008】
汚泥濃縮槽3は、図2に示すように密閉タンクの内部にスクリーン8を設け、その下側に浮上ろ材9が充填された上向流式のものである。この浮上ろ材9は、みかけ比重が0.1〜0.4の発泡樹脂製で、複数の突起を備えたものである。このような浮上ろ材9は発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレンなどの厚さが4〜10mmシートを打ち抜くことにより安価に製造できるものである。
【0009】
ここでみかけ比重を0.1〜0.4としたのは、これよりも比重が小さいと強度が低下して圧密しやすく、これよりも比重が大きいと水との比重差が小さくなって逆洗時に流失し易いからである。また運転中の圧密を避けるため、50%圧縮荷重が0.1MPa以上の硬さのものが好ましい。この50%圧縮荷重とは、シートを50%の厚さまで圧縮するのに要する圧力を意味するものである。浮上ろ材9のサイズは4〜10mm程度が好ましい。これよりも大きくても小さいくてもSS捕捉性能が低下するためである。
【0010】
この実施形態では、汚泥濃縮槽3は内部に撹拌手段10を備え、凝集剤が添加された汚泥を緩やかに撹拌してフロックを形成する凝集混和槽としての機能を兼ね備えたものとなっている。しかし汚泥濃縮槽3の前段に別に凝集混和槽を設置しても差し支えない。
【0011】
汚泥供給ポンプ7により加圧され、凝集剤が添加された汚泥は汚泥濃縮槽3の底部から供給され、槽内でフロックを形成しつつ浮上ろ材9の充填層を上向流として通過する間に、浮上ろ材9により濃縮される。スクリーン8の上部に移行したSSの少ない分離液は配管11を介して排出されるが、途中に濁度計12、流量計13、流量調整弁14が設けられており、濁度と流量を監視されている。これらに異常が発見された場合には、浮上ろ材9に目詰まり等の異常が生じたものと判断され、後記する逆洗操作が行われる。
【0012】
一方、浮上ろ材9の充填層の下部にはSS濃度の高い濃縮汚泥層が形成されるので、この部分から引き出された濃縮汚泥が圧入式汚泥脱水機4に供給される。浮上ろ材9の充填層の部分ではフロックを破壊するような剪断力は作用しない。この実施形態では圧入式汚泥脱水機4はロータリープレスであり、濃縮汚泥は両側面が脱水スクリーンとなった円弧状の通路を通過する間に脱水され、脱水ケーキとなる。しかし圧入式汚泥脱水機4はスクリュープレスであってもよい。本発明によれば汚泥濃縮槽3においてSS濃度を40000ppm程度まで濃縮できるので、従来のウェッジワイヤ式の汚泥濃縮装置を使用して濃縮した場合よりも、圧入式汚泥脱水機4の処理能力を約3倍に高めることができる。
【0013】
上記のように汚泥を濃縮するため、汚泥濃縮槽3の内部に充填された浮上ろ材9には、大量のSSが捕捉されて圧損が上昇するため、逆洗が必要となる。そこで圧損が上昇したときには、スクリーン8の上部に設置された逆洗水供給手段16から逆洗水を供給し、浮上ろ材9の逆洗を行う。前記したようにみかけ比重が0.1〜0.4である浮上ろ材9は逆洗により容易に分散してろ材間に捕捉されているSSを放出し、圧損を回復する。またこの逆洗によりスクリーン8の目詰まりも解消される。なお浮上ろ材9は比重が小さいので、充填層の下側にはスクリーンを設置しなくても流失のおそれはなく、下部スクリーンの目詰まりという問題が生ずることはない。
【0014】
このような理由によりこの構造の汚泥濃縮槽3はメンテナンスが容易であり、前記した濁度計12、流量計13による分離液の濁度及び流量の監視と組み合わせ、目詰まりが検出されたときに自動的に逆洗を行うようにすれば、ほとんどメンテナンスの手数を要しない。またこの構造の汚泥濃縮槽3は従来のウェッジワイヤ式の汚泥濃縮装置に比較して安価に製作できるうえ、ろ過流束を1000〜2000m/日程度の高流束とすることができるので、小型のサイズで大量の汚泥の濃縮が可能となる。
【0015】
なお、図1に示すように圧入式汚泥脱水機4から排出された脱水ケーキはケーキ移送ポンプ17により焼却設備等の後工程に移送される。図1では混合汚泥貯留槽2から汚泥を汚泥濃縮槽3に供給したが、この部分については本発明の要部ではなく、適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のシステムを用いた全体フローを示す説明図である。
【図2】本発明のシステムの要部を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 汚泥混合槽
2 混合汚泥貯留槽
3 汚泥濃縮槽
4 圧入式汚泥脱水機
5 汚泥スクリーン
6 汚泥移送ポンプ
7 汚泥供給ポンプ
8 スクリーン
9 浮上ろ材
10 撹拌手段
11 分離液の配管
12 濁度計
13 流量計
14 流量調整弁
16 逆洗水供給手段
17 ケーキ移送ポンプ
A 初沈汚泥
B 余剰汚泥
C 凝集剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧入式汚泥脱水機の前段に、浮上ろ材が充填された上向流式の汚泥濃縮槽を設置し、凝集剤が添加された汚泥を濃縮したうえ圧入式汚泥脱水機に供給することを特徴とする汚泥脱水システム。
【請求項2】
汚泥濃縮槽が撹拌手段を備え、凝集混和槽としての機能を兼ね備えたものであることを特徴とする請求項1記載の汚泥脱水システム。
【請求項3】
汚泥濃縮槽に充填される浮上ろ材が、みかけ比重が0.1〜0.4の発泡樹脂製で、複数の突起を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の汚泥脱水システム。
【請求項4】
汚泥濃縮槽の分離液排出経路に、濁度計及び流量計を設置したことを特徴とする請求項1記載の汚泥脱水システム。

【図1】
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【図2】
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