説明

決定ツリーを使用した神経刺激器パラメータ設定の選択

【課題】決定ツリーを使用して、神経刺激器用のパラメータ設定を選択する技法を提供する。
【解決手段】臨床医が選択したパラメータ設定を使用して治療を送出するように埋め込み可能神経刺激器をプログラムするために、パラメータ設定の選択がプログラミングデバイスによって使用される。このデバイスは、パラメータ設定の選択時に臨床医を誘導するために、探索アルゴリズムを実行する。探索アルゴリズムは、最適なパラメータ設定を識別するために決定ツリーに頼る。決定ツリーは、データセットの観測結果をそのデータ内の1つ又は複数の属性又はフィールドに基づく分類に役立つ。データセットは、類似の指標の患者に関する観測された有効性格付けに整合するパラメータ設定を含む。分類がそれに関して行われる学習された属性は、分類の生成に使用される格付け済み設定のセットについての最適なパラメータ設定である。決定ツリーは電極構成を識別に役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経刺激治療に関し、より詳細には、埋め込み可能神経刺激器用のパラメータ設定(parameter configuration)の選択のための技法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み可能医療デバイスは、慢性疼痛、振せん、パーキンソン病、癲癇、失禁、性機能不全、又は胃不全麻痺等の種々の症状又は状況を処置するために、神経刺激治療を患者に送出するのに使用される。埋め込み可能医療デバイスは、脊髄、骨盤神経、仙骨、又は胃に近接して、或いは、患者の脳内に位置する電極を含む1つ又は複数のリード線を介して神経刺激治療を送出する。一般に、埋め込み可能医療デバイスは、神経刺激治療を電気パルスの形態で送出する。
【0003】
臨床医は、患者に送出される神経刺激治療用のパラメータ設定を規定するために、多数のプログラム可能なパラメータについて値を選択する。たとえば、臨床医は、電流振幅又は電圧振幅であってよい振幅及び患者に送出される刺激波形についてのパルス幅、並びにパルスが患者に送出されるレート及び刺激エネルギーが送出される継続時間を選択することができる。さらに、臨床医はまた、パルスを送出するのに使用される電極セット内の特定の電極及び選択された電極の極性を選択する。電極の組み合わせ及び極性は、電極構成(electrode configuration)と呼ばれてもよい。そのため、パラメータ設定は、電極構成、振幅、パルス幅、パルスレート、及び継続時間を含む種々のパラメータの1つ又は複数を含んでもよい。
【0004】
パラメータ設定を選択するプロセスは、時間がかかり、最適な電極構成が発見されるまでに、多数のトライアル・アンド・エラーを必要とする場合がある。最適なパラメータ設定は、臨床結果と患者が経験する副作用をバランスさせる時に、他の設定より良好である場合がある。このバランスは、パラメータ設定の総合的な有効性を表す。パラメータ設定を選択するプロセスは、パラメータの組み合わせの可能性、基礎になる生物物理学の複雑さ、及び所与のパラメータ設定についての、観測された有効性に関する、患者からの主観的で、且つ、おそらくは一貫性の無いフィードバックのために、難しい可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、決定ツリーを使用して、神経刺激器用のパラメータ設定を選択する技法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技法は、プログラミングデバイスによって使用されて、臨床医が、パラメータ設定を選択し、次に、選択されたパラメータ設定を使用して治療を送出するように、埋め込み可能神経刺激器をプログラムすることが可能になる。
【0007】
パラメータ設定は、電極構成、振幅、パルス幅、パルスレート、又は継続時間等の、神経刺激の送出についての1つ又は複数のパラメータを規定することができる。たとえば、パラメータ設定は、患者に埋め込まれる電極セットについて電極の組み合わせ及び極性を指定する電極構成を規定することができる。電極セットは、神経刺激器に電気的に結合する1つ又は複数の埋め込み式リード線によって保持されることができる。或る実施形態では、パラメータ設定はさらに、その電極構成で電極が送出する刺激エネルギーの振幅、パルス幅、パルスレート、及び継続時間等の1つ又は複数のパラメータを規定することができる。
【0008】
動作時、プログラミングデバイスは、パラメータ設定の選択において臨床医を誘導するために、パラメータ設定探索アルゴリズムを実行する。この探索アルゴリズムは、電極セット内の電極構成等の可能性のある最適なパラメータ設定を識別するために決定ツリーに頼る。決定ツリーは、電極構成選択プロセスにおける誘導を提供し、評価セッション中に既に実施された有効性の観測に基づいて決定ツリーの経路に沿って求めた結果が与えられた状態で、有効である可能性が最も高い構成を提案することによって、臨床医を対話的に誘導する。
【0009】
決定ツリーは、データセットにおける観測結果をそのデータ内の1つ又は複数の属性又はフィールドに基づいて分類する時に役立つ。決定ツリーは、その分野の専門家によって手作業で構築することができるか、又は、既存のアルゴリズム、たとえば、ID3、C4.5等を使用してデータセットそのものから学習することができる。
【0010】
本発明によれば、学習されるか、又は、設計される階層的決定ツリーは、パラメータ最適化のプロセスを誘導する。データセットは、同様な症候性指標(symptomatic indication)の患者に関して観測された有効性の格付けと整合したパラメータ設定を含む。分類がそれに関して行われる学習された属性は、分類を生成するのに使用される所与の格付け済み設定のセットについての最適なパラメータ設定であることになる。決定ツリーは、電極構成を識別する時に特に役立つことができる。決定ツリーを使用して、プログラミングデバイスは、臨床医に、どの設定が、有効である可能性が最も高いかについての提案を与える。
【0011】
一実施の形態では、本発明は、神経刺激器用の第1パラメータ設定を選択すること、第1パラメータ設定の観測された有効性の指標を受け取ること、及び、観測された有効性の指標及び決定ツリーによって識別される付加的な電極構成のセットに基づいて神経刺激器用の第2パラメータ設定を選択することを含む方法を提供する。
【0012】
別の実施の形態では、本発明は、プロセッサが、神経刺激器用の第1パラメータ設定を選択し、第1パラメータ設定の観測された有効性の指標を受け取り、観測された有効性の指標及び決定ツリーによって識別される付加的な電極構成のセットに基づいて神経刺激器用の第2パラメータ設定を選択するようにさせる命令を含むコンピュータ読み取り可能媒体を提供する。
【0013】
さらなる実施の形態では、本発明は、神経刺激器用の第1パラメータ設定を選択し、第1パラメータ設定の観測された有効性の指標を受け取り、観測された有効性の指標及び決定ツリーによって識別される付加的な電極構成のセットに基づいて神経刺激器用の第2パラメータ設定を選択するようにプログラムされたプロセッサを備えるデバイスを提供する。
【0014】
本発明は、多くの利点を提供することができる。たとえば、本発明は、臨床医が、電極の組み合わせ等の望ましいパラメータ設定をより迅速に識別することを可能にすることができ、臨床医が、患者のために神経刺激治療をプログラムするのに費やす全体の時間量を減らす。ランダムな、又は、特有の探索技法と対照的に、決定ツリーに基づく技法は、以前のパラメータ設定の評価から学習し、最適な設定をもたらす可能性が高い決定ツリーを生成することが可能である。一般に、本発明は、臨床医及び患者についてのプログラミングセッションの長さを減らし、総合的な有効性を達成するために、最適な電極構成の選択をサポートすることができる。さらに、本発明によって、その他の方法では臨床医によって識別されないと思われる最適な、又は、最適に近いパラメータ設定を識別することが可能である場合がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、神経刺激治療をプログラムし、神経刺激治療を患者12に送出するための1つの例のシステム10を示す図である。システム10は、神経刺激治療を患者12に送出する埋め込み可能医療デバイス(IMD)14を含む。IMD14は、埋め込み可能パルス発生器であってよく、電気パルスの形態で神経刺激治療を患者12に送出することができる。システム10は、電極構成等のパラメータ設定の選択について決定ツリーを利用する。
【0016】
IMD14は、リード線16A及び16B(一まとめにして「リード線16」)を介して神経刺激治療を患者12に送出する。リード線16は、図1に示すように、患者12の脊髄18に近接して埋め込まれ、IMD14は、たとえば、患者12が受ける疼痛を軽減するために、脊髄刺激(SCS)治療を患者12に送出することができる。しかしながら、本発明は、図1に示すリード線16の構成又はSCS治療の送出に限定されない。たとえば、1つ又は複数のリード線16は、IMD14から患者12の脳(図示せず)に延び、IMD14は、たとえば、振せん又は癲癇を処置するために、深部脳刺激(DBS)治療を患者12に送出することができる。さらなる例として、1つ又は複数のリード線16は、骨盤神経(図示せず)、仙骨(図示せず)、又は胃(図示せず)に近接して埋め込まれ、IMD14は、失禁、性機能不全、又は胃不全麻痺を処置するために神経刺激治療を送出することができる。
【0017】
IMD14は、1つ又は複数の神経刺激治療プログラムに従って、神経刺激治療を患者12に送出する。神経刺激治療プログラムは、多数のパラメータについての値を含む場合があり、パラメータ値は、そのプログラムに従って送出される神経刺激治療の送出についてのパラメータ設定を規定する。IMD14が、電気パルスの形態で、神経刺激治療を送出する実施形態では、パラメータは、パルス電圧又は電流振幅、パルス幅、パルスレート、及び継続時間等を含むことができる。さらに、リード線16のそれぞれは電極(図1には示さず)を含み、プログラムについてのパラメータは、プログラムに従って、どの電極がパルスの送出のために選択されたか、及び、選択された電極の極性を識別する情報を含むことができる。そのため、パラメータ設定は、電極構成、振幅、パルス幅、パルスレート、及び継続時間を含む種々のパラメータの1つ又は複数を含んでもよい。本発明は、一般に、振幅、パルス幅、パルスレート、継続時間、及び電極構成等のパラメータの設定を含む、神経刺激パラメータ設定に適用可能であるが、本発明は、一般に、電極構成を確定する状況において具体的に示すために述べられるであろう。
【0018】
リード線16上に位置する選択された電極のサブセット及びサブセットの電極の極性は、一まとめにして「電極構成」を規定する。電極は、標準的なインラインリード線構成で、或いは外科用のパドルリード線、グリッド、又は他の形式として配列することができる。電極は、患者の体内の異なる目標領域に連結することができる。電極構成は、単一又は複数のカソード電極と単一又は複数のアノード電極の組み合わせを指す。刺激電流は、神経刺激治療の送出のためにカソードとアノード間を流れる。そのため、個々の電極の極性は、電極構成のもう1つの特徴である。電極構成の一部を形成する電極は、単一リード線上に共にあっても、又は、異なるリード線上にあってもよい。
【0019】
システム10はまたプログラマ20を含む。プログラマ20は、図1に示すように、手持ち式コンピューティングデバイスであってよい。プログラマ20は、情報をユーザに表示するために、LCD又はLEDディスプレイ等のディスプレイ22を含む。プログラマ20はまた、プログラマ20と対話するために、ユーザが使用することができるキーパッド24を含んでもよい。或る実施形態では、ディスプレイ22は、タッチスクリーンディスプレイであってよく、ユーザは、ディスプレイ22を介してプログラマ20と対話することができる。ユーザはまた、スタイラス又はマウス等の周辺指示デバイスを使用してプログラマ20と対話してもよい。キーパッド24は、英数字キーパッド又は特定の機能に関連する減少したキーのセットの形態をとってもよい。
【0020】
臨床医(図示せず)は、プログラマ20を使用して、患者12のために神経刺激治療をプログラムすることができる。特に、臨床医は、プログラマ20を使用して、神経刺激治療プログラムを作成することができる。プログラム作成プロセスの一部として、プログラマ20は、IMD14が、たとえば、症状の軽減、症状エリアに対するカバレジエリア、及び副作用の点で望ましい神経刺激治療を送出することを可能にするパラメータ設定を、臨床医が識別することを可能にする。プログラマ20はまた、IMD14が、望ましいデバイス性能特性、たとえば、低電池消耗を持って効率的な神経刺激治療を送出することを可能にするパラメータ設定を、臨床医が識別することを可能にしてもよい。さらに、本明細書で述べる技法を使用して、たとえば、所定期間にわたる有効性の観測結果を記録するための、患者12と患者プログラマとの間の対話によって、長期継続的に埋め込まれたIMDの使用の過程にわたって治療が最適化されてもよい。この場合、患者が保持するプログラマは、決定ツリーを使用してパラメータ設定の識別を補助するように設計された機能性を含む、本明細書で述べる、プログラマ20が持つと考えられる機能性の一部又は全てを組み込んでもよい。
【0021】
プログラマ20は、臨床医が望ましいパラメータ設定を効率的な方法で識別することを可能にするために、IMD14を制御して、パラメータ設定を試験する。以下でより詳細に述べるように、或る実施形態では、プログラマ20は、本明細書で述べる電極構成探索アルゴリズムに基づいて試験するために、パラメータ設定を選択する。特に、こうしたアルゴリズムによれば、プログラマ20は、最初に、IMD14を制御して、第1電極構成を識別するために、1つ又は複数の電極を試験し、次に、探索アルゴリズム内に構築された誘導に基づいて他の電極構成を試験してもよい。
【0022】
振幅、パルス幅、パルスレート、及び継続時間等の他の神経刺激パラメータはまた、電極構成と共に評価されてもよい。たとえば、種々のパラメータは、各電極構成の観測と同時に観測されてもよい。或いは、より小さい電極構成のセットが、振幅、パルス幅、及びパルスレートの所与の基線セットについて有効性を与えると識別されると、異なる振幅、パルス幅、及びパルスレートのパラメータが、そのより小さい電極構成のセットについて繰り返し観測されてもよい。IMD14を制御して、インテリジェントな方法で電極構成を試験することによって、プログラマ20は、臨床医が、望ましい電極構成をより迅速に識別することを可能にする。神経刺激エネルギー送出の継続時間もまた観測することができる。こうして、振幅、パルス幅、及びパルスレートのパラメータは、全ての電極構成について評価される必要はなく、特に、決定ツリーによって考慮から排除された電極構成について評価される必要はない。
【0023】
IMD14を制御して、インテリジェントな方法でパラメータ設定を試験することによって、プログラマ20は、臨床医が、望ましいパラメータ設定をより迅速に識別することを可能にし、臨床医が、患者12のために神経刺激治療をプログラムするのに費やす全体の時間量を減らす。たとえば、ランダムな順序に電極構成を提示する既存の神経刺激プログラミングシステム又は臨床医によって使用される特有の探索方法(methodologies)と対照的に、プログラマ20は、望ましい構成が、探索において早期に選択されることを可能にする可能性が高い方法で試験するように、電極構成を選択することができる。その結果、臨床医は、1つ又は複数の望ましい構成が既に識別されている場合、全ての可能性のある電極の組み合わせが試験される前に、探索を終わることができ、有効性のある電極構成を達成するために必要とされる臨床医と患者の全体の時間を節約する。さらに、本発明によって、その他の方法では臨床医によって識別されないと思われる最適な、又は、最適に近いパラメータ設定を識別することが可能である場合がある。
【0024】
臨床医が、全ての可能性のある電極の組み合わせを試験することをたとえ決めたとしても、たとえば、電極のセットが、全ての電極構成の試験を実際的にするのに十分に小さい場合、プログラマ20は、試験すべき、それぞれの新しい構成の選択を自動化することによって、望ましい電極構成を識別するのに必要とされる時間を減らすことができる。さらに、プログラマ20は、試験されるそれぞれの組み合わせについて、有効性情報を収集することによって、探索プロセスを改善することができる。以下でより詳細に述べるように、プログラマ20は、有効性情報に従って順序付けられた電極構成のリストを臨床医に提示することができ、臨床医が、望ましい構成をより容易に識別し選択することを可能にする。電極構成のこのリストは、付加的な電極構成が評価される時の、新たに観測された有効性情報に従って、順序付けられ、更新されてもよい。同様な技法は、振幅、パルス幅、パルスレート、及び継続時間等の、パラメータ設定の一部を形成する他の神経刺激パラメータについて適用されてもよい。
【0025】
IMD14を制御して、電極の組み合わせを試験するために、プログラマ20は、当該技術分野で知られているテレメトリ技法によってIMD14と通信してもよい。たとえば、プログラマ20は、RFテレメトリヘッド(図示せず)によってIMD14と通信してもよい。臨床医が識別した電極の望ましい組み合わせを識別する情報は、神経刺激治療プログラムに関連するパラメータ設定の一部として記憶されてもよい。プログラマ20を使用して臨床医によって作成された神経刺激治療プログラムは、テレメトリを介してIMD14に送信されてもよく、且つ/又は、別のプログラマ(図示せず)、たとえば、IMD14によって神経刺激治療の送出を制御するために患者12が使用する患者プログラマに送信されてもよい。
【0026】
図2は、リード線16の1つの例の構成を示すブロック図である。例の構成では、リード線16Aは、電極26A〜26Hを含み、リード線16Bは、電極26I〜26Pを含む。そのため、各リード線16は8つの電極を含むが、より少ない数か、又は、多い数の電極が可能である。電極26A〜26P(一まとめにして「電極26」)は、リング電極であってよい。電極26は、一まとめにして、患者12内に埋め込まれる電極セット28を形成する。図2に示すように、電極セット28は、2つのリード線16のそれぞれの上に8つの電極を含み、2つのリード線16は、図1に示すように、互いに、且つ、脊髄18に実質的に平行に(図1)、脊髄18の実質的に向かい側に、脊髄18に対してほぼ同じ高さになるように埋め込まれ、また、リード線16の遠位端がリード線16の近位端より脊髄に対して高くなるように向きを調整される(orient)。したがって、電極セット28の示す構成は、2×8の、並んで上方に向きを調整された構成として述べられてもよい。もちろん、電極セット28は、例のために提供され、本発明は、単一リード線電極セット、フラットパドルリード線、グリッドアレイ等を含む他のタイプのリード線及び電極セットに適用可能であってよい。
【0027】
こうした電極セットは、SCS治療を提供するのに一般に使用される。しかしながら、プログラマ20は、任意の方法で構成される、電極セット内の電極の望ましい組み合わせを識別するのに使用され、任意のタイプの神経刺激治療を提供するのに使用されてもよい。たとえば、4つ又は8つのリード線を含む単一リード線、リード線当たり4つの電極を含む2つのリード線、インラインリード線、及びオフセットリード線(その全てが、患者12に対して任意の方法で向きを調整されてもよい)は、プログラマ20によって探索されることができる電極セット構成を提供する。図2の例では、電極26は、人の脊椎のT7椎骨23、T8椎骨25、及びT9椎骨27の向かい側に設置される。
【0028】
IMD14(図1)は、電極26の任意の組み合わせによって神経刺激を送出することができる。IMD14は、或る構成についてカソード又はアノードの役目を果たすように、セット28の各電極26を独立に始動することができ、各構成は、少なくとも1つのカソード及び少なくとも1つのアノードを含むことになる。或る実施形態では、電極構成は、カソードの役目を果たす単一電極26を含んでもよく、この時、IMD14の筐体、すなわち、IMDハウジングがその構成についてアノードの役目を果たすことが可能である。
【0029】
或る電極構成では、その構成についてアノードの役目を果たす1つ又は複数の電極から、その構成についてカソードの役目を果たす1つ又は複数の電極に電子が流れる。アノードとカソード間の電流は、アノードとカソードの間の、且つ、アノードとカソードに近接するニューロンを刺激する。一般的に言うと、電流が、或る方向に特定のニューロン又は十分な数の特定のニューロンを刺激するのに十分な強度で送出されて、許容できない副作用をもたらすことなく、或る症状を軽減するために、電極構成は、望ましい神経刺激治療を使用可能にする。さらに、望ましくないほどに高いパルス振幅に頼ることなく症状が軽減される時に、電極構成は、望ましい神経刺激治療を使用可能にする。
【0030】
先に述べたように、プログラマ20は、試験すべき個々の電極26又は電極構成を選択して、臨床医が、電極探索アルゴリズムに従って望ましい電極構成を識別することを可能にする。プログラマ20は、電極セット28の構成に基づいて適切な探索アルゴリズムを選択し、選択された探索アルゴリズムに基づいて電極26又は電極構成を選択してもよい。プログラマ20は、IMD14を制御して、選択された電極26又は電極の組み合わせを介して神経刺激を送出することによって、選択された電極26又は電極の組み合わせを試験するようにIMD14を制御する。
【0031】
或る実施形態では、プログラマ20は、第1カソードの役目を果たすことになる個々の電極又は複数の電極26を識別するために、最初に、IMD14を制御して、電極26の1つ又は複数を個々に試験する。他の実施形態では、プログラマ20は、選択された電極26の或る組み合わせで始まる。一般に、電極セット28の中心が、症状を軽減するために刺激されるべきであると、臨床医が信じるエリアに近接するようなロケーションに、臨床医は、リード線16を埋め込む。したがって、プログラマ20は、電極セット28内の中心にある電極26、たとえば、図2に示す電極26D〜26E及び26L〜26Mが、周辺にある電極より前に試験されるような順序で、第1カソードとしての電極26を試験することができる。目標領域についての臨床医の推定が正しくない場合、プログラマ20は、第1カソードとして始動されると、望ましい神経刺激治療を使用可能にする電極26の1つが識別されるまで、こうした順序で個々の電極26を試験し続けることになる。第1カソードを最初に位置特定することは、電極の組み合わせの「粗い」最適化を提供し、プログラマ20及び臨床医が、神経刺激治療がそこに対して送出されるべき一般的なエリアを迅速に識別することを可能にする。
【0032】
プログラマ20は、その後、IMD14を制御して、第1カソードを含む電極構成を試験する。一般的な電圧又は電流振幅、周波数、及びパルス幅等の刺激パラメータの一般的なセットによって、種々の電極構成が試験されてもよい。或る実施形態では、一連の異なる刺激パラメータが、各電極の組み合わせに適用されて、電極の組み合わせの有効性だけでなく、振幅、周波数、及びパルス幅等の特定の刺激パラメータを有する電極の組み合わせもまた試験されてもよい。そのため、電極構成は、神経刺激パラメータ設定の一部を形成する電極の組み合わせに適用されてもよく、電極を介した神経刺激エネルギーの送出に関連する、振幅、パルス幅、及びパルスレート等のパラメータは、パラメータ設定の別の一部を形成してもよい。
【0033】
プログラマ20は、IMD14を制御して、第1カソードと対にして、第1アノードとして電極26のうちの異なる電極を試してもよく、付加的なアノード及び/又はカソードを付加してもよい。本発明の1つの実施形態によれば、プログラマ20は、IMD14を制御して、決定ツリーによって識別された電極構成に基づいて、第1アノード、及び付加的なアノード又はカソードとして残りの電極26を試験する。決定ツリーは、プログラマ20によって使用されて、臨床医が、電極構成を選択し、その後、最適な電極構成をもたらすようにIMD14をプログラムすることを可能にする。
【0034】
探索アルゴリズムは、決定ツリーを使用して、評価の過程で既に観測された電極構成の有効性に基づいて可能な電極構成を選択する。以前の観測結果を使用して、決定ツリー構造が構築される。決定ツリーの構造は、既存のデータセットから得ることができ、新しく考えられた電極構成についての有効性情報に基づいて更新することができる。特に、決定ツリー構造は、探索中に、電極構成について得られた新しい観測結果に基づいて更新されてもよい。決定ツリー構造は、特定の患者或いは患者の母集団又は部類についての有効性情報に基づいて更新されてもよい。決定ツリーを使用して、プログラマ20は、選択プロセス中に既に得られた観測結果が与えられた状態で、有効である可能性がある電極構成の提案を臨床医に与える。それに応答して、臨床医は、次に、提案された電極構成を選択してもよい。或る場合には、電極構成又は他のパラメータの選択は、決定ツリーを使用して生成された提案に応答して自動化されてもよい。他の場合には、パラメータ設定の選択は、臨床医による人の介入を必要とするが、提案によって補助されてもよい。
【0035】
図3は、プログラマ20の1つの例の構成を示すブロック図である。臨床医又は他のユーザは、ユーザインタフェース31を介してプロセッサ30と対話して、本明細書で述べるように、電極構成を識別し、選択する。ユーザインタフェース31は、ディスプレイ22及びキーパッド24(図1)を含み、同様に、上述したように、タッチスクリーン又は周辺指示デバイスを含んでもよい。プロセッサ30はまた、ユーザインタフェース31を介してグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を提供して、臨床医、技術者、又は他の医療要員との対話を容易にしてもよい。プロセッサ30は、マイクロプロセッサ、コントローラ、DSP、ASIC、FPGA、ディスクリートロジック回路要素等を含んでもよい。
【0036】
臨床医プログラマ20はまたメモリ32を含む。メモリ32は、プログラム命令を含んでもよく、プログラム命令は、プロセッサ30によって実行されると、臨床医プログラマ20が、本明細書で臨床医プログラマ20に帰すべき機能を実施するようにさせる。たとえば、プロセッサは、メモリ32内に記憶された1つ又は複数のパラメータ設定探索アルゴリズム34を実行することができる。特に、プロセッサ30は、臨床医が、決定ツリーを使用して望ましい電極の組み合わせを識別することを可能にするために、電極構成探索アルゴリズムを実行して、試験すべき個々の電極26又は複数の電極の組み合わせを選択してもよい。探索アルゴリズム34は、決定ツリー36の内容に基づいて実行され、プログラマ20を、予想される有効性を有する、電極セット28内の電極構成に誘導する。
【0037】
そのため、プログラマ20は、埋め込み可能デバイスのパラメータを最適化するプロセス中に、臨床医に対して対話的誘導を提供する。特に、評価セッション中に既に実施された試験結果が与えられると、有効である可能性が最も高い電極構成を提案することによって、プログラマ20は、臨床医を誘導する。これは、以前の結果に基づいて決定ツリーを構築することによって達成される。
【0038】
決定ツリーは、データ内の1つ又は複数の属性又はフィールドに基づいてデータセットにおける観測結果を分類するのに役立つ。決定ツリーは、神経刺激分野の専門家によって手作業で構築することができるか、又は、ID3、C4.5等のような分類モデルを構築するための知られているアルゴリズムを使用してデータセットそのものから学習することができる。本発明によれば、プログラマ20は、パラメータ最適化のプロセスを誘導するために、学習されるか、又は、設計された階層的決定ツリーを使用する。
【0039】
ツリーを構築するのに使用されるデータセットは、同様な症候性指標の患者に関して観測された有効性の格付けと整合したパラメータ設定を含む。分類がそれに関して行われる学習された属性は、分類に使用される所与の格付け済み設定のセットについての最適なパラメータ設定であることになる。
【0040】
決定ツリー探索アルゴリズムは、プログラマ20上の特徴部として実施することができる。動作時、セッションの始めにおいて、患者に埋め込まれたデバイス、リード線及び電極の数に関するリード線構成、治療のための患者の症候性指標に関する一連の質問にユーザ(たとえば、臨床医)が答える。或いは、この情報は、患者記録の一部として記憶することができる。これらの属性は、第1決定ツリーを教え、第1決定ツリーは、パラメータ最適化、たとえば、電極構成又は他のパラメータの選択を実施するための適切な決定ツリーを選択するのに役立つ。こうして、第1のツリーは、第2のツリーの選択を引き起こす。問題のこうした分解は、部分ツリーが、ずっと簡単に、且つ、計算的により実行可能になることを可能にする。
【0041】
パラメータ最適化のための部分ツリーの選択によって、プログラマ20は、ツリーのルートにおける属性、すなわち、ユーザが実施する第1パラメータ設定の観測を表示して、ユーザに入力を指示する。探索アルゴリズムは、その後、たとえば、治療利益と望ましくない副作用の間のバランスに基づいて、その設定に対してユーザが与えた有効性格付けを収集する。例として、治療利益と副作用に関する、患者からの口頭のフィードバック、疼痛/パラステジアマップのマーキング、疼痛格付けスケールを使用した客観的な測定、副作用の定量化、それらの組み合わせ、又は他の観測技法によって、有効性を観測することができる。有効性格付けに基づいて、探索アルゴリズムは、ツリーを調べ、次のパラメータ設定を指示する。十分な結果が得られるか、結果が全く得られないとツリーが判定するまで、このプロセスが続く。
【0042】
実際のデータから最適なツリーを学習することが好ましい場合がある。しかしながら、愚弟的に示すために、図4及び図5は、手作業によって設計された部分決定ツリーを示す。図4及び図5の部分決定ツリーは、最適な電極構成を選択するという問題に対処する。図4の部分決定ツリーは、決定ツリーの第1レベルを階層的に表し、治療、デバイス、リード線、及び症候性指標の識別を対象とする。具体的には、図4の決定ツリーは、患者に適用される神経刺激治療のタイプ(44)、たとえば、疼痛軽減(48)、胃障害(50)、運動障害(46)、又は性機能不全等の他の障害(52)を対象とする治療を識別するように設計される。
【0043】
治療のタイプを識別すると、図4の決定ツリーは、患者が提示する指標、たとえば、運動障害のための運動障害(MvD)指標(54)、疼痛のための疼痛指標(56)、胃障害のための胃指標(58)、又は他の指標(60)を識別することに進む。1つの例として疼痛(48、56)の場合、決定ツリーは、特定の疼痛指標、たとえば、下側背面(62)、脚(64)、足(66)、又は他のエリア(68)を識別することに進む。
【0044】
次に、特定の治療タイプ及び指標を識別すると、図4の決定ツリーは、患者に埋め込まれたデバイスのタイプを識別することに進む。図4の例では、決定ツリーは、患者が、利用可能な異なる神経刺激デバイスを表してもよい、デバイスタイプA(72)、B(74)、又はC(76)を有するかどうかを判定する。異なる神経刺激デバイスは、異なる能力及び目標部位を有してもよく、神経刺激デバイス品目内の異なるモデルであってよい。
【0045】
患者が、1つの例として、タイプC(76)の埋め込み式神経刺激デバイスを有すると判定されると、決定ツリーは、デバイス用のリード線構成、すなわち、疼痛リード線タイプ(78)を確定することに進む。たとえば、決定ツリーは、それぞれが8つの電極を有する2つのリード線を有する2×8構成(80)、1×8リード線(82)、又は分岐リード線(84)を患者が埋め込まれているかどうかを照会する。一般に、分岐リード線は、2つの同じ電極セットに分割される。リード線構成の識別によって、探索アルゴリズムは、決定ツリー階層の次の「部分(sub)」レベルへ進む。特に、探索アルゴリズムは、図5のパラメータ最適化決定ツリー(86)に進む。そのため、探索アルゴリズムは、第1決定ツリーを適用して、神経刺激治療タイプ、神経刺激デバイスタイプ、リード線タイプ、及び症候性指標を判定し、その判定に基づいた第2決定ツリーを適用して、第2パラメータ設定を選択する。第2決定ツリーは、異なる神経刺激治療、神経刺激デバイスタイプ、リード線タイプ、及び症候性指標等の異なる提示を対象とする複数の決定ツリーのうちの1つであってよい。図4に示す第1決定ツリーに関して行われる判定は、パラメータ最適化のための適切なツリーの選択をもたらす。
【0046】
図5に示すように、神経刺激治療タイプ、神経刺激デバイスタイプ、リード線タイプ、及び症候性指標に関して、図4に示す第1決定ツリーによって既に判定が行われている場合、パラメータ最適化ツリーは、一般に、患者のために有利な結果をもたらすことが予想される電極の組み合わせの点で、最適な電極構成を識別するように配列される。パラメータ最適化ツリーはまた、電極構成を形成する電極の組み合わせの極性を評価するように構成されてもよい。本発明によれば、同様なパラメータ最適化ツリーは、十分な有効性をもたらす、パラメータ設定内の他のパラメータを識別するのに使用されてもよい。たとえば、同様なツリーは、電極構成評価とは独立か、同じプロセスの一部としてのいずれかで、振幅、パルス幅、パルスレート、及び継続時間について使用されてもよい。
【0047】
図5のパラメータ最適化ツリーの種々のレベルは、たとえば、有効性及び副作用に関する、異なる電極の組み合わせの有効性に関する格付け情報に頼る。例として、治療利益と副作用に関する、患者からの口頭のフィードバック、疼痛/パラステジアマップのマーキング、疼痛格付けスケールを使用した客観的な測定、副作用の定量化、それらの組み合わせ、又は他の観測技法によって、有効性を観測することができる。
【0048】
図5の決定ツリーは、所与の電極構成を表す上位レベルを、付加的な電極構成の有効性をインテリジェントな方法で、さらに改善するか、又は、試験するように努める下位レベルにリンクするように配列される。図5のツリー構造を通過することによって、探索アルゴリズムは、たとえば、有効性格付け閾値に対して、適した結果を提供する、電極構成、又は、或る場合には、複数の電極構成に達する。
【0049】
たとえば、図5の決定ツリーは、電極組み合わせLE23(90)、すなわち、左手リード線上の第2電極と第3電極の組み合わせ等のルートノードで始まることができる。或る実施形態では、組み合わせはまた、極性を指定してもよい。たとえば、電極組み合わせLE23は、組み合わせにおいて、第2電極をカソードとして、第3電極をアノードとして指定してもよい。組み合わせが十分な有効性格付けを生成する場合、プロセスは終了する(92)。この場合、電極組み合わせLE23が選択される。図5の例は、1〜5の格付けスケールを使用し、5は最もよく、1は最も悪い。或る実施形態では、3未満の格付けを有するノードは、拡張するのではなく、廃棄されてもよい。5の格付けが達成されない場合、ルートノード90は、他の組み合わせを調査するために拡張してもよい。図5では、4及び3の格付けは、電極組み合わせLE34及びRE34を対象とする付加的な次レベルノード94、96の評価をもたらす。次レベルノードは、神経刺激ドメインの専門家によってツリーを構築する時に求められるか、又は、データから学習されてもよい。同様に、決定ツリーが処方される、特定の患者か、患者の部類のいずれかについて、特定のパラメータ設定についての過去の有効性の観測結果に基づいて、ツリーを、徐々に更新してもよい。患者の部類は、症状、年齢、健康、性、サイズ等の特定の提示に基づいて確定されてもよい。
【0050】
ノード94及び96は、同様に、拡張し、格付けされて、ノード94の場合、最終の電極構成98、100又は付加的なノード102、104がもたらされる。格付け情報に基づいて、ツリーのどの分岐が通過されるかに応じて、プロセスは、さらに続き、ノード110、112、最終電極構成114、116、付加的なノード118、120、最終電極構成122、124等をもたらす。或る実施形態では、より高い格付けを有する分岐は、より低い格付けを有する分岐の前に通過されてもよい。たとえば、ノード94から分岐する分岐等の、4の格付けを有する分岐は、ノード96から分岐する分岐等の、3の格付けを有する分岐の前に評価されてもよい。
【0051】
特定の分岐が、5等の、十分な格付けを有する電極構成をもたらす場合、他の分岐を考慮することは必要でない。この場合、以前の分岐が、十分に有効な結果、すなわち、有効性閾値を満たす有効性を有する電極構成をもたらさなかった場合にだけ、他の分岐が考慮される。或いは、ユーザは、決定を下す前に、付加的な分岐の全て又は一部を評価したいと思う場合がある。それぞれの場合に、特定の分岐に沿った拡張の深度を含む、ツリー内での反復の深度を制限するために、反復限界が使用されてもよい。
【0052】
プロセッサ30は、図4及び図5の決定ツリーによって識別されるパラメータ設定に関連する情報を収集し、望ましいパラメータ設定の識別を容易にするため、臨床医が後で取り出し、再調査するために、情報をメモリ32に記憶する。臨床医によって作成された神経刺激治療プログラム38は、メモリ32に記憶され、プログラム38のうちの1つのプログラムのために利用される、臨床医によって選択された電極構成を識別する情報は、プログラム38の一部として、メモリ32内に記憶することができる。メモリ32は、RAM、ROM、CD−ROM、ハードディスク、取り外し可能磁気ディスク、メモリカード又はスティック、NVRAM、EEPROM、フラッシュメモリ等の、任意の揮発性の、不揮発性の、固定の、取り外し可能な、磁気の、光の、又は、電気の媒体を含んでもよい。再び、メモリ32又は他のコンピュータ読み取り可能媒体はまた、本明細書で述べるように、プロセッサ30が、神経刺激器用のパラメータ設定を選択する技法を実施するようにさせる命令を記憶してもよい。
【0053】
プロセッサ30は、決定ツリーに従ってIMD14を制御して、テレメトリ回路40によって、選択された個々の電極26又は電極の組み合わせを介して神経刺激治療を患者12に送出することによって、選択された、個々の電極26又は電極の組み合わせを試験するようにIMD14を制御する。プロセッサ30は、入力/出力回路42を介して神経刺激治療の送出を制御するために、テレメトリ回路40を介してIMD14に、又は、患者が使用する別のプログラマに、臨床医が作成したプログラム38を送信してもよい。I/O回路42は、無線通信用の送受信機、有線通信又は取り外し可能電気媒体を介した通信用の適切なポート、或いは、取り外し可能な磁気又は光媒体を介した通信用の適切なドライブを含んでもよい。
【0054】
決定ツリー構造を使用して、プログラマ20は、どの電極構成が、有効である可能性が最も高いかに関する提案を提供する。こうして、決定ツリーを使用して、評価のために、電極構成等の最適なパラメータ設定のセットに臨床医を誘導することができ、それによって、良好な結果を確保するために行う必要がある観測数が減る。換言すれば、決定ツリーは、臨床医が、以前の経験に基づくと、有効な結果をもたらす可能性がない多くの電極構成を回避することを可能にすることができる。むしろ、決定ツリーの階層的構造は、過去の観測から、有効性のある最適な結果を生成する可能性がより高いと判定された特定の電極構成をもたらす。
【0055】
図6は、本明細書で述べた決定ツリーを使用してパラメータ設定を選択するために、プログラマによって実行可能である探索アルゴリズムを示すフロー図である。図4の例は、具体的に示すための電極構成を対象とする。図6に示すように、アルゴリズムは、電極構成の識別等の、パラメータ最適化問題のために構築された決定ツリーにアクセスする(126)ことを含む。再び、決定ツリーは、手作業で、又は、自動化技法によって構築されてもよい。探索アルゴリズムを始動する(128)ことによって、第1のツリーを使用して、治療、指標、デバイス、及びリード線構成が選択される(130)。これに基づいて、アルゴリズムは、第2のツリーを選択する。より詳細には、第2のツリーのルートノードを選択する(132)。ルートノードは、第1電極構成に相当し、第1のツリーから得られた疼痛及び領域指標に基づいて確定されてもよい。或いは、ユーザがルートノードを選択してもよい。
【0056】
その時のノードに関連する電極構成の観測された有効性(134)の指標を受け取ることによって、アルゴリズムは、有効性閾値が満たされたかどうか(135)を判定する。有効性閾値が満たされている場合、アルゴリズムは、終了し、決定ツリーのその時のノードに関連する選択された電極構成を、プログラマ20によって記憶された神経刺激プログラムに付加することに進む。再び、有効性は、疼痛軽減又は他の治療利益の点で肯定的に、また、治療の副作用の点で否定的に格付けされてもよい。探索能力は、埋め込み可能デバイスプログラマ20の機能(feature)として実施することができる。有効性閾値が満たされない場合(135)、プロセスは、ルートノードを拡張して、観測された有効性の指標に基づいて次レベルノードが選択される(136)。たとえば、図5に示すように、いくつかの次レベルノードのうちの1つは、ルートノードの有効性格付けに基づいて選択されてもよい。
【0057】
プロセスは、その後、次レベルノードの有効性を観測する(138)。有効性閾値が満たされる場合(140)、次レベルノードに関連する電極の組み合わせが選択され、神経刺激プログラムに付加される(146)。有効性閾値が満たされず(140)、反復限界を超える場合(142)、アルゴリズムは終了する。この場合、その時の電極構成が、選択され、神経刺激プログラムに付加されてもよく(146)、又は、臨床医が、他の処置をとるよう指示されてもよい。反復限界を超えていない場合(142)、有効性閾値が満たされるか、又は、反復限界を超えるまで、決定ツリープロセスは、反復して続く(144)。反復限界は、臨床医によって確立されるか、又は、適用可能な決定ツリーの深度によって規定されることができる。或る場合には、臨床医は、手作業でアルゴリズムを終了することに決めてもよい。
【0058】
全ての可能性のある電極26の組み合わせが試験されてしまう前に、臨床医が探索を停止する場合、プログラマ20は、未試験の組み合わせのブラケットを作成してもよく、そのブラケットを、臨床医は、神経刺激治療プログラムに含めることを決めてもよい。ブラケットは、任意の数の電極の組み合わせからなり、電極組み合わせ探索アルゴリズムに従って試験されたであろう次のn個の組み合わせを含んでもよい。臨床医にそのブラケットを与えることによって、プログラマ20は、臨床医が、後続のプログラミングセッションにおいて、望ましい電極組み合わせを探索するのに費やす時間を少なくすることを可能にすることができる。具体的には、ブラケットの組み合わせを使用して作成されたプログラムは、ごく最近試験された組み合わせによって作成されたプログラムに設けられた治療に似た望ましい神経刺激治療を使用可能にすることができ、プログラムは、患者12に提供されるため、患者12は、診療所以外で、ブラケットプログラムに関して実験することができる。
【0059】
本明細書で述べるように、プログラマ20は、IMD14を制御して、電極の組み合わせを介して神経刺激を送出することによって、電極構成を試験するようにIMD14を制御する。さらに、プログラマ20は、他の最適な治療パラメータの探索を容易にするように構成されてもよい。たとえば、臨床医又はプログラマ20は、各電極構成について、パルス振幅、レート、パルス幅、及び継続時間用の望ましい開始点を選択することができ、プログラマ20は、同様な技法を使用して、振幅を、開始点から第1振幅増加レートで単調増加してもよい。プログラマ20は、振幅を、たとえば、直線的か、又は階段的に増加させてもよい。或る実施形態では、臨床医又は患者12は、振幅増加レートを制御してもよい。臨床医又は患者12は、刺激によって不快又は他の望ましくない副作用が生じた時に振幅の単調増加を停止させる。
【0060】
プログラマ20は、単調増加が停止した時に、振幅を或る量、たとえば、あるパーセンテージだけ減少させ、臨床医及び/又は患者12が、最良の神経刺激治療を提供する振幅を識別することが可能になるように、振幅を再び単調増加させる。この2回目に、プログラマ20は、最良の神経刺激が達成される点の識別を容易にするために、振幅をより遅い振幅増加レートで単調増加させてもよい。再び、或る場合には、臨床医又は患者12は振幅を制御することができる。
【0061】
プログラマ20は、臨床医及び/又は患者12によって、最良の神経刺激治療が指示される時の振幅及び電極の組み合わせについての格付け情報を記憶する。臨床医及び/又は患者12は、有効性格付け情報、たとえば、組み合わせを格付けするための1つ又は複数のメトリックについての数値を提供することができ、有効性格付け情報は、組み合わせによって使用可能になる有効性、組み合わせの使用から生じる副作用、又はその両方に関連する。
【0062】
臨床医は、望ましい電極構成を識別するために、それぞれの試験済み組み合わせについて記憶された格付け情報及び/又は振幅値を使用することができる。構成並びに構成に関連する情報及び値は、リストで提示することができ、リストは、情報、値、その両方の組み合わせに従って順序付けられてもよい。振幅値は、たとえば、それぞれの組み合わせが望ましい神経刺激治療を使用可能にするために消費されなければならない電力に基づいて、類似の格付けを有する試験済み組み合わせを区別するのに使用されてもよい。
【0063】
本発明の種々の実施形態が述べられた。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対して種々の追加及び変更を行うことができることを、当業者は理解するであろう。本発明は、一般に、比較的迅速に、また、臨床プログラミング環境内で、設定からのフィードバックが利用可能である、あらゆるプログラミング最適化問題に適用可能であってよい。これは、疼痛及び運動障害用の刺激治療を含み、他の刺激ベースの治療も含むことができる。
【0064】
たとえば、プログラマ20は、本明細書では、手持ち式コンピューティングデバイスとして述べられたが、プログラマ20は、ラップトップ又はデスクトップコンピュータ等の、任意のタイプのコンピューティングデバイスの形態をとってもよく、LAN、WAN、又はワールドワイドウェブ等のコンピュータネットワークを介して、メモリ54等の資源にアクセスしてもよい。さらに、プログラマ20は、複数のコンピューティングデバイスを含んでもよく、複数のコンピューティングデバイスは、プログラマ20に帰す機能性を提供するために、本明細書ではコンピュータネットワークを介して通信することができる。
【0065】
臨床医、すなわち、臨床医プログラマに関連し、且つ、それと対話するものとして本明細書で述べたが、プログラマ20は、患者12、すなわち、患者プログラマに関連してもよい。或る実施形態では、電極組み合わせ識別プロセスの一部又は全てについて、患者12は、臨床医に代わってプログラマ20と単に対話してもよい。他の実施形態では、患者12は、臨床によって監督されることなく、たとえば、診療所から離れて、患者プログラマを使用して、構成識別プロセスの一部を実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】神経刺激治療をプログラムし、送出するシステムを示す図である。
【図2】患者の脊椎に近接して埋め込まれた1つの例の電極セットを示す図である。
【図3】神経刺激治療プログラムについて望ましいパラメータ設定を識別するのに使用されるプログラミングデバイスを示すブロック図である。
【図4】治療、デバイス、及び症候性指標を識別するように構成された決定ツリーの構造を示す図である。
【図5】リード線及び電極構成を識別するように構成された決定ツリーの構造を示す図である。
【図6】決定ツリーを使用して、電極構成を選択するために、プログラマによって実行可能である探索アルゴリズムを示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経刺激器用の第1パラメータ設定を選択すること、
該第1パラメータ設定の観測された有効性の指標を受け取ること、
前記観測された有効性の指標及び決定ツリーによって識別される付加的な電極構成のセットに基づいて前記神経刺激器用の第2パラメータ設定を選択すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記パラメータ設定は電極構成を含み、該電極構成のそれぞれは神経刺激エネルギーを送出するための2つ以上の電極の組み合わせを規定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電極構成のそれぞれは、前記組み合わせにおける電極についての極性を規定する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電極は2つ以上の埋め込み式リード線によって保持され、前記電極は、患者の体内の異なる目標領域に連結される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記リード線は、患者の脊椎に近接して埋め込まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
先行する電極構成の前記観測された有効性の指標及び前記決定ツリーに基づいて前記神経刺激器用の付加的な電極構成を反復して選択すること、及び、1つ又は複数の終了基準が満たされると、前記付加的な電極構成の反復式選択を終了することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記終了基準は、閾値有効性を満たす観測された有効性を有する、前記電極構成のうちの1つの電極構成の選択を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記終了基準は反復限度を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
先行する電極構成の観測された有効性及び前記決定ツリーに基づいて前記神経刺激器用の付加的な電極構成を反復して選択すること、
1つ又は複数の終了基準が満たされると、最終電極構成において、前記付加的な電極構成の前記反復式選択を終了すること、及び
神経刺激治療の送出時に前記最終電極構成を使用するように、前記神経刺激器をプログラムすることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記神経刺激器は脊髄刺激器であり、前記最終電極構成はさらに1つの埋め込み式脊椎リード線上に配置される電極を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記最終電極構成は、少なくとも8つの電極のセットから2つの電極の組み合わせを規定する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1パラメータ設定は第1電極構成を含み、前記第2パラメータ設定は第2電極構成を含み、前記第1電極構成は前記決定ツリーのルートノードによって規定され、前記方法は、前記ルートノードを拡張することであって、それによって、前記第1電極構成についての前記観測された有効性が閾値有効性を満たさない時に、前記第2電極構成を規定する次レベルノードを生成する、拡張することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記次レベルノードによって規定された前記第2電極構成の前記有効性の指標を受け取ること、及び、前記次レベルノードをさらに拡張することであって、それによって、付加的な電極構成を規定する1つ又は複数の付加的な次レベルノードを、該次レベルノードのうちの1つの次レベルノードに関連する前記電極構成のうちの1つの電極構成が前記閾値有効性を満たすか、又は、反復限度に達するまで生成する、さらに拡張することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1パラメータ設定及び前記第2パラメータ設定を選択することは、該第1パラメータ設定及び該第2パラメータ設定をユーザに提案することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
観測された有効性に関連する指標を受け取ることは、観測された有効性を指示するユーザ入力を受け取ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記観測された有効性に基づいて前記決定ツリーを更新することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
特定の患者について、前記観測された有効性に基づいて前記決定ツリーを更新することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第1決定ツリーを適用することであって、それによって、神経刺激治療タイプ、神経刺激デバイスタイプ、リード線タイプ、及び症候性指標を確定する、適用すること、並びに、該確定に基づいて第2決定ツリーを適用することであって、それによって、前記第2パラメータ設定を選択する、適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
プロセッサが、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法を実施するようにさせる命令を含む、コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法を実施するようにプログラムされたプロセッサを備える、デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−505698(P2007−505698A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526985(P2006−526985)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/030138
【国際公開番号】WO2005/028028
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(591007804)メドトロニック・インコーポレーテッド (243)
【Fターム(参考)】