説明

決済システム

【課題】商品を保持した利用者が所定の課金エリアに進入したことをその利用者の位置情報に基づいて検出し、該商品について該利用者に対する課金を行なう決済システムを提供する。
【解決手段】測位部56により、前記利用客に伴って移動し、相互に識別可能な情報を送信する利用者端末10の位置が前記利用客の位置として算出され、利用客の位置が課金エリア8B内に含まれることに基づいて課金エリア進入検知部62により前記利用客が前記課金エリア8Bに進入したことが検知され、購入物品検出部62において利用客が保持する商品が検出され、課金手段64において利用客が保持する商品についての購入物品情報と、商品の価格についての情報とに基づいて合計課金額が決定され、利用者タグ17に記憶された情報に基づいて前記利用客を識別し、識別された利用客に対して課金処理が行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、決済システムに関するものであり、特に、利用客の位置を検出し、利用客が所定の課金エリアに進入したことに基づいてその利用客が保持する商品についての課金を行なうことができるシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
支払い手続をユーザが自ら行なうことなく、いわゆるノンストップでキャッシュレスによる自動的な課金処理を行なう手法が近年提案されている。例えば、有料道路の通行料金収受システムとして提案されているETC(Electric Toll Collection)がそれである。かかるETCなどにおいては、例えば有料道路などの課金対象となる所定の施設の予め定められた地点において設けられた地上装置と、車両に設けられた車載装置とが無線による通信を行なうことにより進入および進出を検知し、利用者の課金額を決定し、さらに決定した課金額の決済を行なう様にされている。
【0003】
かかるETCにおいては、前述の様に利用車両の進入および進出を検出するために、予め定められた地点に地上装置を設ける必要がある。また、逆に言えば、課金対象に対する進入および進出は、前記地上装置が設けられた地点に限定される。
【0004】
特許文献1においては、GPS(Global Positioning System)を用いて課金施設に対する進入および進出を検出し、検出された進入地点および進出地点に基づいて利用料金を決定し課金処理を行なう課金装置が開示されている。特許文献1に開示の技術によれば、GPSによって測位された利用者の位置に基づいて課金施設への進入および進出を認定する。
【0005】
【特許文献1】特開平11−66365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば前記特許文献1に開示された技術などのいわゆるノンストップ課金システムの多くにおいては、課金額は、課金施設に対する進入地点および進出地点によって、例えば課金施設の利用距離や時間などに基づいて決定されるものとされている。そのため、例えば前記課金施設における物品の購入などに対し、購入額を決定する技術が求められていた。
【0007】
ところで、所定の情報が記憶された無線タグ(応答器)から所定の無線タグ通信装置(質問器)により非接触にて情報の読み出しを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムが知られている。このRFIDシステムは、無線タグが汚れている場合や見えない位置に配置されている場合であっても無線タグ通信装置との通信によりその無線タグに記憶された情報を読み出すことが可能であることから、商品管理などの分野において実用が期待されている。
【0008】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、商品を保持した利用者が所定の課金エリアに進入したことをその利用者の位置情報に基づいて検出し、該商品について該利用者に対する課金を行なう決済システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)利用客が、商品を保持して所定の課金エリアに進入したことに基づいて、該商品について該利用者に対する課金を行なう決済システムであって、(b)前記利用客に伴って移動し、相互に識別可能な情報を送信可能な利用者端末と既知の位置に設置された基地局との間で電波の送受信を行い、その受信結果に基づいて前記利用者端末の位置を前記利用客の位置として検出する利用客位置検出手段と、(c)前記利用客が移動可能な領域のうち、前記商品についての課金が行なわれる予め定められた課金エリアの位置を定義する情報を記憶する課金エリアデータベース部と、(d)前記利用客位置検出手段により検出される前記利用客の位置が前記課金エリアデータベース部に記憶された前記課金エリア内に含まれることに基づいて、前記利用客が前記課金エリアに進入したことを検知する課金エリア進入検知手段と、(e)前記利用客が保持する商品を検出する購入物品検出手段と、(f)前記課金エリア進入検知手段により前記利用者が前記課金エリアに進入されたことが検知された場合において、前記購入物品検出手段によって検出される前記利用客が保持する商品についての購入物品情報と、前記商品の価格についての情報とに基づいて合計課金額を決定し、前記利用者端末が送信する識別可能な情報に基づいて前記利用客を識別し、識別された利用客に対し課金処理を行なう課金手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記課金エリアデータベース部には、前記商品の複数の販売者のそれぞれについて前記課金エリアの位置がそれぞれ定義され、(b)前記課金エリア進入検知手段は、前記利用客位置検出手段により検出される前記利用客の位置が、前記課金エリアデータベース部に定義されるいずれか1の前記課金エリア内に含まれることに基づいて、前記利用客が前記課金エリアに進入したことを検知するとともに、該利用客が進入した課金エリアがいずれの販売者のものであるかを検知し、(c)前記課金手段は、前記課金エリア進入検知手段により前記利用者が前記課金エリアに進入されたことが検知された場合において、前記課金エリア進入検知手段により検知された、利用者が進入した課金エリアに対応する課金対象販売者についての情報と、前記購入物品検出手段によって検出される前記利用客が保持する商品についての購入物品情報と、前記商品の価格および販売者についての情報とに基づいて、前記利用客が保持する商品のうち、その販売者と前記課金対象販売者とが一致した商品について合計課金額を決定し、課金処理を行なうことを特徴とする。
【0011】
好適には、請求項3にかかる発明は、前記課金手段は、課金処理が複数回実行される場合において、前記購入物品検出手段によって検出される前記購入物品情報と、前回以前に課金処理が行なわれた際の前記購入物品情報とを比較し、前回以前の課金処理実行時に課金処理の対象とされた商品は再度の課金処理の対象から除外することを特徴とする。
【0012】
また好適には、請求項4にかかる発明は、前記課金手段による課金処理が実行されたことを報知する報知手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1にかかる決済システムによれば、前記課金エリア進入検知手段において、前記利用客位置検出手段により、前記利用客に伴って移動し、相互に識別可能な情報を送信可能な利用者端末と既知の位置に設置された基地局との間で電波の送受信を行い、その受信結果に基づいて前記利用者端末の位置が前記利用客の位置として算出され、該利用客の位置が、前記課金エリアデータベース部にその位置を定義する情報が記憶される前記課金エリア内に含まれることに基づいて、前記利用客が前記課金エリアに進入したことが検知され、前記購入物品検出手段において、前記利用客が保持する商品が検出され、前記課金手段において、前記課金エリア進入検知手段により前記利用者が前記課金エリアに進入されたことが検知された場合において、前記購入物品検出手段によって検出される、前記利用客が保持する商品についての購入物品情報と、前記商品の価格についての情報とに基づいて、合計課金額が決定され、前記利用者端末が送信する識別可能な情報に基づいて前記利用客を識別し、識別された利用客に対して課金処理が行なわれるので、利用客が、前記商品を保持して所定の課金エリアに進入したことに基づいて、該商品について該利用者に対する課金を行なうことができる。
【0014】
また、請求項2にかかる決済システムによれば、前記課金エリアデータベース部には、前記商品の複数の販売者のそれぞれについて前記課金エリアの位置がそれぞれ定義され、前記課金エリア進入検知手段は、前記利用客位置検出手段により検出される前記利用客の位置が、前記課金エリアデータベース部に定義されるいずれか1の前記課金エリア内に含まれることに基づいて、前記利用客が前記課金エリアに進入したことを検知するとともに、該利用客が進入した課金エリアがいずれの販売者のものであるかを検知し、前記課金手段は、前記課金エリア進入検知手段により前記利用者が前記課金エリアに進入されたことが検知された場合において、前記課金エリア進入検知手段により検知された、利用者が進入した課金エリアに対応する課金対象販売者についての情報と、前記購入物品検出手段によって検出される前記利用客が保持する商品についての購入物品情報と、前記商品の価格および販売者についての情報とに基づいて、前記利用客が保持する商品のうち、その販売者と前記課金対象販売者とが一致した商品について合計課金額を決定し、課金処理を行なうので、前記利用客が保持する商品に複数の販売者による商品が混在する環境においても、利用客が、前記商品を保持して所定の課金エリアに進入したことに基づいて、該商品について該利用者に対する課金を行なうことができる。
【0015】
また、請求項3にかかる発明によれば、前記課金手段は、課金処理が複数回実行される場合において、前記購入物品検出手段によって検出される前記購入物品情報と、前回以前に課金処理が行なわれた際の前記購入物品情報とを比較し、前回以前の課金処理実行時に課金処理の対象とされた商品は再度の課金処理の対象から除外するので、同一の商品について二重に課金が行なわれることがなく、好適に該商品について該利用者に対する課金を行なうことができる。
【0016】
また、請求項4にかかる発明によれば、前記課金手段による課金処理が実行された場合において、音、音声、光学表示、振動などの少なくとも1つを発生させることにより前記課金処理が実行されたことを報知する報知手段を有するので、前記利用客に対し課金が行なわれたことを報知することができる。
【0017】
好適には、前記課金エリアは複数種類の課金処理における決済方法のそれぞれに対応して複数個に分割して設定され、前記課金手段は、該複数個に分割して設定された課金エリアの何れの内部に含まれたかに基づいて、その課金方法を決定することを特徴とする。このようにすれば、利用客は前記複数個に分割して設定された課金エリアのいずれに位置するかによって課金処理における決済方法を選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本実施例の決済システム6の一実施態様を説明する図である。この決済システム6においては、商品が陳列され、利用客がその陳列された商品を選択することができる陳列エリア8Aと、図1において斜線の付された領域であって利用客が選択した商品についての課金処理が行なわれる課金エリア8Bとが予め定義され、その陳列エリア8Aと課金エリア8Bの位置や大きさなどについての情報が後述する課金エリアデータベース部60に記憶されている。
【0020】
本実施例の決済システム6は、利用客位置検出手段として、利用客に伴って移動する利用者端末10と、その利用者端末10から送信される利用者端末10の位置検出のための電波を受信し、その受信結果を算出する既知の位置に設置された複数の基地局12と、必要な演算を行なうためのサーバ14を含んで構成されている。サーバ14と前記複数の基地局12とは通信ケーブル20により情報交換可能に接続されている。なお、図1には例として3人の利用者のそれぞれに伴って移動する第1利用者端末10A、第2利用者端末10B、第3利用者端末10Cの3つの利用者端末が図示されているが、利用者端末の数は3つに限定されるものではない。以下、これらの複数の利用者端末を区別しない場合、利用者端末10と表わす。図1においては、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12Dの4つの基地局12(以下、第1基地局12A乃至第4基地局12Dを区別しない場合、基地局12という。)が図示されているが、後述する様に、利用者端末10の測位のために必要な最小の数の基地局以上の基地局であれば、基地局12の数は4つに限られない。なお、陳列エリア8Aおよび課金エリア8Bにおいては、例えば図1に示す様に座標系が定義され、この室内領域8における利用者端末10や基地局12の位置などは例えばこの図1に示すような共通する座標を用いて表される。
【0021】
図2は、前記利用者端末10の実施態様の一例を説明する図である。図2に示す様に、利用者端末10は、例えば前記決済システム8が適用される店舗などにおいて、利用客が使用するカートなどに付されることにより、利用客に伴って移動する。また、この利用者端末10は、利用客を識別する利用者タグ17、利用客が選択し前記カートなどに取り込まれた商品に付された商品タグ16などに記憶された情報を短距離無線通信により読み込む。また、利用者端末10は、前記基地局12に対し利用者端末10の位置を算出する(測位する)ための電波を長距離無線通信により送信するとともに、前記短距離無線通信により読み込まれた前記利用者タグ17、商品タグ16などに記憶された情報を前記基地局12を介してサーバ14に送信する。
【0022】
図3は、利用者端末10の有する機能の概要を説明するブロック図である。利用者端末10は、短距離無線部86、短距離無線通信用アンテナ90、長距離無線部88、長距離無線通信用アンテナ92、利用者端末制御部78、利用者端末制御部78による演算結果などを読み出し可能に記憶するメモリなどの記憶部80、利用者端末制御部78による入出力を行なうための機器を接続するための入出力インタフェース82、入出力インタフェース82を介して利用者端末制御部78と接続される出力部としての表示部84などを有して構成される。また、好適には利用者端末10は図示しないバッテリなどの電源を有し、前記短距離無線部86、長距離無線部88、利用者端末制御部78などはこの電源から供給される電力により駆動する。利用者端末制御部78は例えばCPU、RAM、ROM等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なう。
【0023】
短距離無線部86は、利用者端末10の所定の通信範囲にある利用者タグ17および商品タグ16についての情報を読み出す。この所定の通信範囲とは、例えば図2に示す様に、利用者端末10の付されたカートを使用している利用客の有する利用者タグ17、およびカートに取り込まれた商品に付された商品タグ16が通信対象となる様に定められる。この短距離無線部86は、後述する利用者タグ17および商品タグ16とともに、いわゆるRFID(Radio Frequeny Identification)システムを構成する。具体的には、短距離無銭部86は、通信対象(検出対象)である利用者タグ17および商品タグ16に対し所定の質問波を送信し、この質問波を受信した利用者タグ17および商品タグ16により変調されて送信される応答波を受信する。このようにして短距離無線通信部86は通信対象である利用者タグ17および商品タグ16に記憶された情報を読み出す。
【0024】
また、短距離無線通信用アンテナ90は、前述の短距離線部86が電波を送受信する際に用いられるものであって、送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。また、前述のように短距離無線部86が通信対象とする利用者タグ17および商品タグ16との通信が好適に行なわれとともに、例えば前記利用者端末10のカートに取り込まれていない商品の商品タグ16など、通信の必要がない通信相手との通信が行なわれない様にその指向性が調整されたアンテナが好適に用いられる。
【0025】
長距離無線部88は、前記基地局12との間の無線通信機能を実現するものであって、長距離無線通信用アンテナ92を用いて電波の送受信を行なう。例えば長距離無線部88は、前記基地局12に対し相関値を算出するための拡散符号や、前記短距離無線部86により取得された前記利用者タグ17や商品タグ16に記憶された情報を含む電波を送信する。また、基地局12より送信される、利用者端末10の作動に関する指令を含む電波を受信する。長距離無線部88は、所定の周波数の搬送波を発生する発振器、電波により送信する信号に基づいて前記搬送波を変調し、またデジタル変調などを行なう変調器、前記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどを有する。さらに、長距離無線部88は、長距離無線通信用アンテナ92によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行なう復調器などによって実現される受信機能を含む。このとき、長距離無線部88が行なう無線通信は例えばいわゆるデジタル通信が好適に用いられるので、長距離無線部88はそのデジタル通信に必要となる変調あるいは復調のための機構を含む。
【0026】
ここで、利用者端末10の長距離無線部88が送信する電波は、例えば電波に含まれる信号波のヘッダ部分に個々の利用者端末10を識別するための符号を含める、前記短距離無線部86により取得された利用者タグ17に記憶された情報を送信する、あるいは個々の利用者端末10により異なる拡散符号を送信するなど、予め定めた方法により送信される。そのため、利用者端末10が複数存在する場合であってもその電波を受信した利用者端末は前記予め定めた方法に従ってその受信した電波を解析することにより、受信した電波が何れの利用者端末10から送信されたものであるかを識別することができる。
【0027】
また、長距離無線通信用アンテナ92は、前述の長距離無線部88が電波を送受信する際に用いられるものであって、送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。また、利用者端末10からの距離が同じ場合に長距離無線通信用アンテナ92からの距離が同じ基地局12において利用者端末10からの方向に関わらず電波を受信できるように、長距離無線通信用アンテナ92は少なくとも電波の伝搬方向に関して無指向性であるアンテナが好適に用いられる。
【0028】
図4は、利用者端末10の利用者端末制御部78の有する機能の概要を説明する機能ブロック図である。図4に示す様に、利用者端末制御部78は、作動指令受付部94、タグ読取部96、送信情報設定部98などを有する。
【0029】
このうち、作動指令受付部94は、前記基地局12から送信される指令に基づいて利用者端末10の作動を制御を行なうものであって、具体的には例えば、移動局制御部24は移動局無線部22に対して送信または受信の切り替え、搬送波周波数の設定、送信アンプにおける出力の設定を行なう。これらの制御における設定値の決定は基地局12との通信の結果により、例えば、長距離無線部88により受信され復号された基地局12からの電波に含まれる前記基地局12から送信される指令に基づいて決定される。
【0030】
タグ読取部96は、利用者タグ17および商品タグ16に記憶された情報の読取を実行するものであって、前記短距離無線部86による質問波の送信を実行させるとともに、前記短距離無線通信部86により受信された応答波に含まれる利用者タグ17および商品タグ16に記憶された情報を取り出し、例えば前記記憶部80の所定の領域に設けられるタグ情報記憶部100に記憶する。
【0031】
送信情報設定部98は、利用者端末10の長距離無線部88から基地局12に対して送信される電波に含まれる信号を設定するものであって、必要に応じて、送信される電波に含まれる信号を、測位のための拡散符号、あるいは前記タグ読取部96により読み取られタグ情報記憶部100に記憶された利用者タグ17および商品タグ16に記憶された情報などに設定する。
【0032】
ここで、送信情報設定部98によって設定される前記測位のための拡散符号は、例えば図示しない記憶手段から記憶された拡散符号を読み出すことにより、あるいは所定の生成方法、例えば予め定められた原始多項式に基づいて生成することにより決定される。
【0033】
図5は、前記利用者タグ17および商品タグ16(以下、これらを区別しない場合、タグ16、17と記す。)として用いられる無線タグの構成の一例を説明する図である。このタグ16、17は、前記利用者端末10の短距離無線部86から送信される質問波を受信すると共に、その質問波に応じて応答波を返信するための送受信共用のアンテナ30と、そのアンテナ部30により電波を送受信するためのタグ無線部26、およびタグ無線具26により受信された信号を処理するためのタグ制御部28とを、備えて構成されている。
【0034】
このうち、タグ無線部26は、整流回路を含み、前記アンテナ部30により受信された前記短距離無線部86からの質問波を整流し、電力に変換する。変換された電力は、タグ制御部28の作動やタグ無線部26による応答波の返信に用いられる。このようにすれば、タグ16、17は作動のための電源を有する必要がない。
【0035】
また、タグ無線部26は、アンテナ30を介して受信された質問波を復調してタグ制御部28に出力するとともに、質問波からクロック信号を生成し、タグ制御部28に出力する。受信信号及びクロック信号が入力されたタグ制御部28は、予め記憶された所定の情報信号をタグ無線部26に出力する。タグ無線部26は、入力された信号に基づいて所定の変調処理を行ない応答波を生成し、アンテナ30を介して送信する。ここで、前記所定の情報信号は予め各タグ16、17のそれぞれに固有の値とされることにより、前記短距離無線部86は、受信した応答波が何れのタグから送信されたものであるかを識別することができる。
【0036】
図6は、基地局12の有する機能の概要の一例を説明するブロック図である。基地局12は、アンテナ36、基地局無線部32、電子制御装置33、時計40、通信インタフェース42などを含んで構成される。また、電子制御装置33は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インタフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なうことにより、前記受信時刻検出部38、基地局制御部34などにおける処理を実行するようになっている。
【0037】
基地局無線部32は、いわゆる無線通信機能を実現するものであって、アンテナ36を用いて電波の送受信を行なう。基地局無線部32は、前記利用者端末10の作動を制御する指令を含む電波を送信する。また、基地局無線部32は、利用者端末10によって送信される電波を受信し、その内容を必要に応じて後述する受信時刻検出部38などに渡し処理を実行させる。すなわち、基地局無線部32は、所定の周波数の搬送波を発生する発振器、電波により送信する信号に基づいて前記搬送波を変調し、またデジタル変調などを行なう変調器、前記変調された搬送波を所定の出力に増幅する送信アンプなどを有し、また、アンテナ36によって受信された受信波を増幅する受信アンプ、受信波から所定の周波数成分のみを取り出すフィルタ、デジタル復調や検波器などによる復調を行なう復調器などによって実現される。このとき、基地局無線部32が行なう無線通信は例えばいわゆるデジタル通信が好適に用いられるので、基地局無線部32はそのデジタル通信に必要となる変調あるいは復調のための機構を含む。
【0038】
また、アンテナ36は、前述の基地局無線部32が電波を送受信する際に用いられるものであって、送受信する電波の周波数に適したものが用いられる。また、利用者端末10の位置、すなわち基地局12から見た利用者端末10の方向に関わらず基地局12からの距離が同じ位置に移動局10が存在する場合には電波を受信できるように、アンテナ36は少なくとも電波の伝搬方向に関して無指向性であるアンテナが好適に用いられる。
【0039】
基地局制御部34および受信時刻検出部38は前記電子制御装置33によって実現される。このうち、基地局制御部34は前記基地局無線部32の制御を行なう。具体的には例えば、基地局制御部34は基地局無線部32に対して送信または受信の切り替え、搬送波周波数の設定、送信アンプの出力の設定などを行なう。これらの制御における設定値の決定は後述のサーバ14あるいは利用者端末10との通信の結果により決定される。また基地局制御部34は受信時刻検出部38に対しては、受信時刻検出実行の制御および受信時刻検出結果出力の要求および取得を制御する。また基地局制御部34は、基地局無線部32において受信され復号される、利用者端末10から送信される電波の内容を解析する。同様に基地局制御部34は、後述する通信インタフェース42において受信されたサーバ14からの送信内容を解析し、基地局12の制御作動に関する指令を取り出す。さらに、基地局制御部34は、後述する通信インタフェース42や基地局無線部32を介して、他の機器に対し必要な情報を送信する。
【0040】
受信時刻検出部38は、利用者端末10から送信される電波に含まれる拡散符号と、その拡散符号のレプリカ符号との相関値を算出する。具体的には、予め利用者端末10が送信する拡散符号と同一のレプリカ符号を受信時刻検出部38が有しておき、そのレプリカ符号と、受信された利用者端末10からの電波から取り出された拡散符号(受信符号)とをマッチドフィルタに入力することにより、両者の相関値を得ることができる。この相関値のピークを示す時刻が電波の受信時刻となる。したがって相関値のピークを示す時刻を後述の時計40より得ることにより受信時刻が検出される。
【0041】
時計40は、時刻を計測するものであって、例えば受信時刻検出部38が受信時刻を検出する際などに参照される。各基地局12は各々の時計を有しており、それらの時刻は予め同期されている。
【0042】
通信インタフェース42は、通信ケーブル20により接続された他の基地局12とサーバ14などとの情報通信を行なう。具体的には、基地局12の同期時刻検出部38によって検出される電波の受信時刻や、利用者端末10から送信される電波に含まれる情報が基地局12からサーバ14に送信されるほか、サーバ14から送信される基地局12の作動に関する指令などが受信される。
【0043】
図7は、サーバ14の構成の概要を説明する図である。図7に示す様に、サーバ14はCPUに対応し、必要な演算処理を行なう電子制御装置48、RAM、ROM、あるいはハードディスクなどに対応し、前記電子制御装置48などの指示に応じて情報を読み出し可能に記憶する記憶部50、入出力インタフェース部52、およびその入出力インタフェース部52に接続され、サーバ14に対するユーザからの入力操作を受け付けるキーボードやマウスなどの入力部53、サーバ14による作動結果などを表示するためのディスプレイ表示装置などの表示を行なう出力部54、通信インタフェース部46等を備えた所謂コンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行なうことができる。
【0044】
通信インタフェース部46は、例えば通信ケーブル20により他の基地局12や他のサーバ14、あるいは共有機器16との情報通信を行なう。通信インタフェース48は、例えばサーバ14から基地局12に対し、基地局12の制御作動に関する指令や、後述する測位部56によって算出される利用者端末10の位置に関する情報を送信し、また、基地局12から送信される情報、例えば基地局12における電波の受信時刻に関する情報を受信する。この基地局12における電波の受信時刻は、利用者端末10から送信される拡散符号の受信時刻として受信時刻検出部38によって検出される。
【0045】
図8は、サーバ14の電子制御装置48が有する機能の概要を説明する機能ブロック線図である。この機能は例えば、前記図7のサーバ14において所定のプログラムが実行されることにより実現される。測位部56は、4つの基地局12において検出された利用者端末10からの測位のための電波、すなわち前記拡散符号を含む電波の受信時刻の時間差に基づいて利用者端末10の位置の算出を行なう(TDOA(Time Difference of Arrival)方式)。移動局の座標を(x、y)とし、第1基地局12Aの位置を表す座標が(xB1,yB1)、第2基地局12Bの座標が(xB2,yB2)、第3基地局12Cの座標が(xB3,yB3)、第4基地局12Dの座標が(xB4,yB4)であるとき、移動局の位置は以下の(1)式により表される。ここで、これらの基地局12や利用者端末10の座標は、例えば図1に示す様に定義された座標系により表わされる。
(xB1−x)2+(yB1−y)2={c×(Tr1−Ts)}2
(xB2−x)2+(yB2−y)2={c×(Tr2−Ts)}2
(xB3−x)2+(yB3−y)2={c×(Tr3−Ts)}2
(xB4−x)2+(yB4−y)2={c×(Tr4−Ts)}2…(1)
ここで、Tr乃至Tr(sec)はそれぞれ、第1基地局12A乃至第4基地局12Dにおける電波の受信時刻、Tsは利用者端末10での電波の送信時刻であり、例えば利用者端末10から基地局12に対し電波により送信され、これを基地局12が受信することにより得られる。すなわち、前記(1)式の各式の右辺における(Tr−Ts)(i=1,2,…)は、利用者端末10から基地局12iへの電波の伝搬時間を表しており、c×(Tr−Ts)は、利用者端末10と基地局12iとの距離を表している。(1)式はx、y、Tsを未知数とした連立方程式となる。(1)式よりTsを消去すると以下の(2)式となる。
【数1】

この(2)式を解くことにより未知数x、yが得られる。具体的にはニュートン法などの求解法を使用することにより(2)式の解、すなわち利用者端末10の位置を算出する。そして、利用者端末10はその利用者端末10が取り付けられたカートを利用する利用客と共に移動させられるので、算出された利用者端末10の位置は利用客の位置でもある。なお、測位部56と、利用者端末10、基地局12などからなる位置検出システムが位置検出部に対応する。なお、前記(1)式および(2)式に示す様に、利用者端末10が2次元平面を移動する場合には、少なくとも3局の基地局12によって移動局10からの電波を受信する必要がある。なお、この測位部56と、前記利用者端末10、および前記複数の基地局12によって構成される移動局10の位置を測位するためのシステムが、位置検出部に対応する。
【0046】
図9は、前記(1)式の関係を図示したものである。なお、説明を容易にするために図9における基地局12の配置は図1のそれとは異なっている。図9のr乃至rは第1基地局12A乃至第4基地局12Dのそれぞれと利用者端末10との距離を表しており、前記(1)式の各式の右辺の平方根に対応するものである。すなわち、(1)式の解の算出は、図9における第1基地局12Aを中心とする半径rの円、第2基地局12Bを中心とする半径rの円、第3基地局12Cを中心とする半径rの円、第4基地局12Dを中心とする半径rの円の交点を算出するものである。一方、前記(1)式が前記(2)式のように変形されることにより、(2)式はTsを含まないものとなるので、利用者端末10での電波の送信時刻を必要とすることなく利用者端末10の位置の算出を行なうことができる。
【0047】
図8に戻って、課金エリアデータベース部60は、陳列エリア8Aおよび課金エリア8B(図1参照)のそれぞれの位置についての情報を、例えば記憶サーバ14の記憶部50などに読み出し可能に記憶する。これらの情報は、予め設定されて入力されることにより記憶される。図10は、この課金エリアデータベース部60に記憶される、陳列エリア8A,課金エリア8Bについて座標の範囲により表現された情報の例である。この座標は、例えば前記図1に示すように定義された座標により表現されるものであって、検出された利用者端末10の位置が陳列エリア8Aにあるか課金エリア8Bにあるかの判断などの際に読み出される。
【0048】
課金エリア進入検知部58は、前記測位部56によって算出された前記利用客の位置と、前記課金エリアデータベース部60に記憶された課金エリア8Bの位置についての情報とに基づいて、前記利用客が前記課金エリア8Bに進入したことを検知する。具体的には、前記測位部56によって算出された前記利用客の位置が前記課金エリアデータベース部60に記憶された課金エリア8Bの範囲に含まれる場合、課金エリア進入検知部58は前記利用客が前記課金エリア8Bに進入したと検知する。前記図1の例においては、前記測位部56によって算出される前記利用者端末10の位置の履歴が軌跡119で表わされる場合において、利用者端末10の位置が点120、および点122であると算出された場合に、課金エリア進入検知部58は前記利用客が前記課金エリア8Bに進入したと検知する。この課金エリア進入検知部58は課金エリア進入検知手段に対応する。
【0049】
購入物品検出部62は、前記利用者端末10の短距離無線部86に対し、利用者端末10の所定の通信範囲にある利用者タグ17および商品タグ16に記憶された情報を取得し、サーバ14に送信させる。このようにして、前記利用者端末10の付されたカートを利用する利用者の有する利用者タグ17、および前記カートに取り込まれた商品に付された商品タグ16のそれぞれに記憶された情報が得られる。なお、本実施例においては、サーバ14は通信ケーブル20を介した有線通信のための機能を有し、無線通信のための機能を有していない一方、利用者端末10は有線通信のための機能を有していないので、購入物品検出部62を有するサーバ14から利用者端末10への短距離無線部86への実行指令は、サーバ14と通信ケーブル20を介した有線通信が可能であり、かつ利用者端末10と無線通信が可能である基地局12を介して行なわれる。この購入物品検知部62による利用者タグ17および商品タグ16に記憶された情報を取得する作動は、例えば、前記課金エリア進入検知部58により前記利用客が前記陳列エリア8Aから前記課金エリア8Bに進入したことが検知された場合において実行される。この購入物品検出部62と、前記利用者端末10のタグ読取部96、利用者タグ17、商品タグ16などにより購入物品検出手段が構成される。また、このようにして購入物品検出部62に取得された商品タグ16に記憶された情報、もしくは後述する商品情報データベース部66に記憶された情報から商品タグ16に記憶された情報に対応する情報として読み出された情報、すなわち、商品属性についての情報が、購入物品情報に対応する。
【0050】
商品情報データベース部66は、前記商品タグ16に記憶された情報と、そのタグが付された商品の属性についての情報を、例えばサーバ14の記憶部50などに読み出し可能に記憶する。図11は、この商品情報データベース66に記憶される情報の一例を説明する図である。図11に示すように、商品情報データベース部66には、商品タグの付された商品の属性に関する情報(商品属性)が、商品タグ16に記憶された情報(商品ID)のそれぞれに対応して記憶されており、商品タグ16に記憶された情報に基づいて商品の属性に関する情報を読み出すことができる。
【0051】
また、商品価格データベース部68は、商品の属性についての情報と、その商品の価格についての情報を、例えば記憶サーバ14の記憶部50などに読み出し可能に記憶する。図12は、この商品価格データベース部68に記憶される情報の一例を説明する図である。この図12に示すように、商品価格データベース部68には、前記商品情報データベース部66に記憶される商品の属性に関する情報(商品属性)のそれぞれに対応して、商品の価格(単価)が記憶されており、商品の属性に関する情報に基づいて、その商品の価格についての情報を読み出すことができる。また、前記商品の価格についての情報は、単なる商品の単価についての情報に限られず、図12に示すように、例えば同一の商品が同時に所定の個数(図12においては5個)以上購入された場合のまとめ売り単価などのように、販売態様に応じた情報が記憶されていてもよい。
【0052】
利用者データベース部67は、前記利用者タグ17に記憶された情報と、そのタグを有する利用者についての情報を、例えば記憶サーバ14の記憶部50などに読み出し可能に記憶する。図13は、この利用者データベース67に記憶される情報の一例を説明する図である。図13に示すように、利用者データベース部67には、利用者タグ17を有する利用者についての情報(図13においては利用者名)、およびその利用者のそれぞれに対して予め設定された決済方法やその決済についての詳細な情報が記憶されており、利用者タグ17に記憶された情報(利用者ID)に基づいて利用者およびその利用者への決済方法についての情報を読み出すことができる。
【0053】
課金部64は、前記課金エリア進入検知部58により前記利用者が前記陳列エリア8Aから前記課金エリア8Bに進入したことが検知された場合に、前記購入物品検出部62により取得される前記利用者端末10の所定の通信範囲にある利用者タグ17および商品タグ16に記憶された情報、前記商品情報データベース部66に記憶された情報、商品価格データベース部68に記憶された情報、および利用者データベース部67に記憶された情報に基づいて、課金処理を行なう。この課金部64が課金手段に対応する。
【0054】
具体的には、課金部64はまず、前記購入物品検出部62により取得された商品タグ16に記憶された情報と、前記商品情報データベース部66に記憶された情報とに基づいて、課金対象とする商品の属性(種類)と個数を決定する。例えば、前記購入物品検出部62により取得された購入物品情報が、商品タグ16に記憶された情報である商品IDである000001と000002であった場合には、前記図12の商品情報データベース部66に記憶された情報を参照して、課金対象はリンゴが2個であると決定する。
【0055】
続いて課金部64は、決定された商品の属性と個数についての情報と、前記商品価格データベース部68に記憶された情報とに基づいて課金金額を決定する。例えば、前述のように課金対象がリンゴ2個であると決定された場合、図12の商品価格データベース部68に記憶された情報を参照して、課金金額はリンゴ1個乃至4個の販売時の単価100円に個数2個を乗じた200円であると決定する。
【0056】
さらに課金部64は、前記購入物品検出部62により取得された利用者タグ17に記憶された情報と、前記利用者データベース部67に記憶された情報とに基づいて、課金が行なわれる利用者とその決済方法とを決定し、決済処理を実行する。例えば、前記購入物品検出部62により取得された利用者タグ17に記憶された情報である利用者IDが900003であった場合には、図13の利用者データベース部67に記憶された情報から、利用者は上野であり、その利用者に対する決済方法はクレジットカードであることと、例えばそのカード番号などが読み出す。そして、読み出された決済方法により決済処理、すなわち、前記決定された課金金額の支払いのための処理が行なわれる。この決済処理は、サーバ14の内部で行なわれる必要はなく、サーバ14においては例えば前記決済方法のそれぞれに対応して予め定められる金融機関に対し、決済処理を行なう旨の依頼を行なうことであってもよい。
【0057】
また、課金済商品データベース部69は、課金部64において決済処理が行なわれた商品についての情報、例えばその商品に付された商品タグに記憶された情報などを、例えば記憶サーバ14の記憶部50などに読み出し可能に記憶する。図14はこの課金済商品データベース部69に記憶される情報の一例であって、ある利用客に対しすでに課金処理が行なわれた商品の一覧についての情報を説明する図である。課金済商品データベース部69には、前記利用客のそれぞれについて、すでに課金部64により決済が行なわれた商品に付された商品タグ16の有する情報である商品IDが、購入済商品IDとして記憶されている。また、課金部64は、前記課金対象を決定する際に、この課金済データベース部69に記憶された商品を課金対象から除外する。このようにすれば、課金処理が繰り返し行なわれる場合において、同一の商品について複数回の課金が行なわれることがない。
【0058】
報知部70は、課金部64により行なわれた決済処理についての情報を、その決済処理の対象となった利用者端末10の出力部84に表示させる。この表示は、例えば、出力部84として設けられた表示装置において課金金額についての情報や、その明細についての情報などを光学表示させる。なお、この出力部84としての表示装置に代えて、出力部84として音声出力装置が設けられ、この音声出力装置によって前記課金金額についての情報を音声により発声させてもよいし、単に所定のブザー音のような信号音や振動などを発生させ課金が行なわれたことを報知するものであってもよい。この報知部70が報知手段に対応する。
【0059】
図15は、本実施例における決済システム6の制御作動の一例を説明するフローチャートであって、タグ16、17、利用者端末10、基地局12、およびサーバ14のそれぞれの作動を関連付けて説明するものであって、所定の間隔により繰り返し実行されるものである。なお、複数の利用者端末10が存在する場合には、このフローチャートが利用者端末10のそれぞれについて実行される。まず、利用客位置検出手段に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、利用者端末10の位置を算出するための測位ルーチンが実行される。
【0060】
図16は、前述のSA1などにおいて実行される測位ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートであって、前記利用者端末10、前記複数の基地局12、および前記サーバ14、特にサーバ14の測位部56の作動を関連付けて説明する図である。
【0061】
まず、ステップ(以下「ステップ」を省略する。)SB1においてはサーバ14から各基地局12のそれぞれに対し、利用者端末10の測位を実行するための指令が行なわれる。この指令は、(1)複数の基地局12のいずれか1つに対し、利用者端末10に測位のための電波を送信させるための指令を基地局12の基地局無線部32から利用者端末10に送信させる指令と、(2)複数の基地局12のそれぞれに対し、利用者端末10から送信される測位の為の電波を受信し、受信時刻を検出し、検出した受信時刻をサーバ14に送信させる指令とを含む。このうち、前記(1)の指令は、サーバ14は無線通信のための電波の送受信などについての機能を有していないために、サーバ14から利用者端末10への指令はいずれかの基地局12の有する基地局無線部32を介して行なわれることによるものであって、前記いずれか1つの基地局12は、例えば、任意に選択される基地局12とされる。
【0062】
SB2においては、各基地局12において、サーバ14からのSB1の指令が受信されたか否かが待機される。サーバ14からのSB1の指令、すなわち前記(1)および(2)の指令あるいは(2)のみの指令が受信される場合には、本ステップの判断が肯定され、続くSB4が実行される。一方サーバ14からのSB1の指令が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、繰り返しSB1が実行されて、サーバ14からのSB1の指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0063】
SB3においては、前記SB2において受信されたサーバ14からの指令に、前記(1)の指令、すなわち、複数の基地局12のいずれか1つに対し、利用者端末10に測位のための電波を送信させるための指令を基地局12の基地局無線部32から利用者端末10に送信させる指令が含まれていたか否かが判断される。前記(1)の指令を受け取ったいずれか1つの基地局12においては、本ステップの判断は肯定され、続くSB4が実行される。一方、前記(2)のみの指令を受け取った基地局においては、本ステップの判断は否定され、後述するSB6において利用者端末10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0064】
SB4は、SB3の判断が肯定された場合に実行されるステップであって、具体的にはSB2において前記(1)および(2)の指令を受信した基地局においてその(1)の指令が実行される。すなわち、利用者端末10に測位のための電波を送信させるための指令が無線により利用者端末10に対して送信されるとともに、送信後には利用者端末10から送信される測位のための電波の受信が行なわれる。
【0065】
SB5においては、利用者端末10において、測位のための電波の送信を行なうための指令(SB4)が受信されたか否かが待機される。利用者端末10において測位のための電波の送信を行なうための指令が受信された場合には本ステップの判断が肯定され、続くSB6が実行される。一方、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されない場合には本ステップの判断が否定され、繰り返しSB5が実行されて、測位のための電波の送信を行なうための指令が受信されるまで待機が行なわれる。
【0066】
利用者端末10の長距離無線部88などに対応するSB6においては、利用者端末10から測位のための電波の送信が行なわれる。この測位のための電波には、受信時刻を検出するための拡散符号が含まれる。
【0067】
各基地局12の基地局無線部32などに対応するSB7においては、利用者端末10から送信される測位のための電波が受信されたか否かが判断される。利用者端末10から送信される電波が受信された場合においては、本判断は肯定され、続くSB10が実行される。一方、利用者端末10から送信される電波が受信されない場合、本ステップの判断が否定され、続くSB8が実行される。
【0068】
SB8においては、利用者端末からの電波の受信を開始してからの経過時間が予め設定されたタイムアウト時間を超えたか否かが判断される。そして、経過時間が前記タイムアウト時間を超えた場合には本ステップの判断が肯定され、SB9が実行される。また、経過時間が前記タイムアウト時間を超えていない場合には本ステップの判断は否定され、引き続き利用者端末10からの電波の受信が行なわれる。
【0069】
SB7の判断が肯定された場合に実行されるSB9においては、SB8の判断が肯定された基地局については、利用者端末10からの電波を受信することができなかったとして、エラー処理が行なわれる。具体的には例えば、サーバ14に対し、利用者端末10からの電波を受信しなかった旨の情報が送信される。
【0070】
受信時刻検出部38に対応するSB10においては、SB7において受信が行なわれた利用者端末10からの測位のための電波に含まれている拡散符号と、予め各基地局が有している前記拡散符号のレプリカ符号との相関値が算出され、その相関値がピークとなった時刻が利用者端末10からの電波の受信時刻として検出される。
【0071】
SB11においては、各基地局12においてSB10で検出された利用者端末10からの電波の受信時刻についての情報がサーバ14に送信される。
【0072】
SB12においては、各基地局12における利用者端末10からの電波の受信時刻についての情報が、予め定められた所定数以上の数の基地局12から送信され、サーバ14に受信されたか否かが判断される。この所定数は、続くSB15において利用者端末10の位置の算出を行なうために必要となる数であって、例えば利用者端末10の移動が3次元空間であるい場合には4つであり、2次元平面である場合や、3次元空間であっても利用者端末10の高さについての情報を図示しない高さ検出手段などにより得ることが可能な場合には3つである。前記所定数以上の数の基地局12から受信時刻についての情報が受信された場合には、本ステップの判断は肯定され、続くSB15が実行される。一方、前記所定数以上の数の基地局12から受信時刻についての情報が受信されない場合には、本ステップの判断が否定され、続くSB13が実行される。
【0073】
SB13においては、SB1の指令を行なってからの経過時間が予め設定されたタイムアウト時間を超えたか否かが判断される。そして、経過時間が前記タイムアウト時間を超えた場合には本ステップの判断が肯定され、SB14が実行される。また、経過時間が前記タイムアウト時間を超えていない場合には本ステップの判断は否定され、引き続き基地局12からの受信時刻についての情報の受信が行なわれる。
【0074】
SB13の判断が肯定された場合に実行されるSB14においては、利用者端末10の位置の算出を行なうために必要な数の基地局12から、利用者端末10からの電波の受信時刻を受信することができなかったとして、エラー処理が行なわれる。具体的には例えば、利用者端末10の位置の算出に失敗した旨の情報が記録される。
【0075】
サーバ14の測位部56に対応するSB15においては、SB12で受信された各基地局12における利用者端末10からの電波の受信時刻についての情報に基づいて、利用者端末10の位置の算出が実行される。具体的には、前記各基地局12における利用者端末10からの電波の受信時刻についての情報と、予め既知である各基地局12の位置に関する情報に基づいて前記(2)式を解くことにより、利用者端末10の位置が作業者の位置として算出される。
【0076】
図15に戻って、課金エリア進入探知部58に対応するSA2においては、SA1において算出された利用客の位置としての前記利用者端末10の位置座標を、課金エリアデータベース部60を参照して陳列エリア8Aを表わす範囲、課金エリア8Bを表わす範囲と比較することにより前記陳列エリア8Aから前記課金エリア8Bに進入したか否かが判断される。すなわち測位部56により検出された利用客の座標(x、y)が、例えば図10に示すの課金エリア8Bを表わす範囲を表す不等式の条件を満足する場合に課金エリア8Bに進入したと判断される。この判断は、例えば、前記利用者端末10の位置の算出が繰り返し行なわれる場合に、前回の算出において前記陳列エリア8Aにあった利用者端末10が、直前のSA1における算出において前記課金エリア8B内にあると算出されると、利用客の位置が、前記陳列エリア8Aから前記課金エリア8Bに進入したと判断される。そして、本ステップの判断が肯定されると、決済処理を行なう必要があるとして、SA3以降が実行される。一方、本ステップの判断が否定されると、引き続き利用者の位置の算出を行なうべく、SA1が反復して実行される。
【0077】
続くSA3乃至SA7は購入物品検出部62に対応する。まず、SA3乃至SA4においては、サーバ14から利用者端末10に対し、所定の通信範囲にある利用者タグ17および商品タグ16に記憶された情報を取得しサーバ14に送信する様に指令が行なわれる。前述の様に本実施例においては、サーバ14は通信ケーブル20を介した有線通信のための機能を有し、無線通信のための機能を有していない一方、利用者端末10は有線通信のための機能を有していないので、このサーバ14から利用者端末10への指令はまず、SA3においてサーバ14から基地局12に対して通信ケーブル20を介した有線通信により伝達され、続いてSA4において、基地局12から利用者端末10へ無線通信により伝達される。なお、SA4および後述するSA6、SA12の作動を行なう基地局12は、前記複数の基地局のうち任意の1つの基地局12が用いられる。
【0078】
利用者端末10の短距離無線部86などに対応するSA5においては、利用者端末10の所定の通信範囲にある利用者タグ17および商品タグ16、すなわち、その利用者端末10が前記カートに付される場合、そのカートを利用する利用客の有する利用者タグ17とそのカートに取り込まれた商品に付された商品タグ16のそれぞれに記憶された情報を読み出すための購入物品検知ルーチンが実行される。
【0079】
図17は、この購入物品検知ルーチンにおける制御作動の一例を説明するフローチャートである。まず利用者端末10の作動指令受付部94に対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SC1においては、サーバ14から利用者タグ17および商品タグ16に記憶された情報を取得するための指令が行なわれたか否かが判断される。利用者端末10がサーバ14からの指令を受信した場合には、本ステップの判断が肯定され、SC2以降が実行される。一方利用者端末10がサーバ14からの指令を受信していない場合には、SC1が繰り返し実行され、サーバ14からの指令が待機される。
【0080】
利用者端末10のタグ読取部96に対応するSC2においては、利用者端末10から利用者タグ17および商品タグ16に対し、タグに記憶された情報を読み出すための質問波が送信される。
【0081】
SC3においては、SC2において利用者端末10から送信された質問波を受信したタグ16、17において、タグ16、17のそれぞれに記憶された固有の情報に基づいて応答波が生成され、利用者端末10に送信される。
【0082】
利用者端末10の送信情報設定部98、長距離無線部88などに対応するSC4においては、SC3において各タグ16、17からそれぞれ送信された応答波が利用者端末10において受信されるとともに、その応答波から前記タグ16、17のそれぞれに記憶された固有の情報が取り出される。そして、利用者端末10からサーバ14に対し、取り出された前記タグ16、17のそれぞれに固有の情報が送信される。
【0083】
図15に戻って、SA6においては、前述のSA4においてサーバ14から利用者端末10への指令が基地局12を介して行なわれたの同様に、利用者端末10からサーバ14へ送信される前記タグ16、17のそれぞれに記憶された情報は、前記SC4において利用者端末10から少なくとも任意の1つの基地局12に無線通信により送信され、本ステップSA6においてその任意の1つの基地局12からサーバ14に対して通信ケーブル20を介して送信される。
【0084】
SA7においては、SA6により基地局12からサーバ14へ送信された前記タグ16、17のそれぞれに記憶された情報に基づいて、利用者が商品を所持しているか否かが判断される。具体的には、SA6により基地局12からサーバ14へ送信された情報に、前記商品タグ16に記憶された情報が含まれていた場合には、利用者が商品を所持しているとして、SA8以降が実行される。一方、SA6により基地局12からサーバ14へ送信された情報に、前記商品タグ16に記憶された情報が含まれず、前記利用者タグ17に記憶された情報のみが含まれるような場合には、決済処理を行なう必要がないとして、本ステップの判断が否定されSA1に戻って、図15のフローチャートが繰り返し実行される。
【0085】
続くSA8乃至SA10は課金部64に対応する。まず、SA8においては、SA6で得られた商品タグ16に記憶された情報と、前記商品情報データベース部66に記憶された情報とに基づいて、利用客が保持している商品の属性(種類)と個数が課金対象の候補として決定される。続いて、課金済データベース部69に記憶された情報に基づいて、既に決済処理が行なわれた商品を課金対象の候補から除外することにより、課金対象が決定される。
【0086】
続くSA9においては、SA8において決定された課金対象についての情報と、前記商品価格データベース部68に記憶された情報とに基づいて課金金額が決定される。
【0087】
SA10においては、SA6において得られた前記利用者タグ17に記憶された情報と、前記利用者データベース部67に記憶された情報とに基づいて、課金が行なわれる利用者とその決済方法とを決定し、決済処理、すなわち、前記決定された課金金額の支払いのための処理が行なわれる。
【0088】
報知部70に対応するSA11においては、SA10において決済処理が行なわれたこと、あるいはその決済処理の内容を利用者端末10の表示部84などに表示させるための指令が送信される。なお、前述のSA4と同様に、このSA11におけるサーバ14から利用者端末10への指令の送信も、任意の1つの基地局12を介して行なわれる。すなわち、SA11においては、利用者端末10への表示のための指令が通信ケーブル20を介して前記任意の1つの基地局12に送信される。そしてSA12においては、SA11でサーバ14からの指令を受信した前記基地局12から利用者端末10へ無線により前記表示のための指令が送信される。
【0089】
利用者端末10の表示部84などに対応するSA13においては、SA11において送信された表示のための指令の内容に応じた出力が行なわれる。この出力は前述の様に、例えば表示部84にSA10で行なわれた決済処理の課金金額についての情報などが表示されたり、あるいは音声出力装置などにより前記課金金額についての情報が発生されたり、あるいは単に電子音が発生されたりする。
【0090】
本実施例の決済システム6によれば、前記測位部56(SA1)により、前記利用客に伴って移動し、相互に識別可能な情報を送信する利用者端末10の位置が前記利用客の位置として算出され、前記課金エリア進入検知部62(SA2)において、該利用客の位置が、前記課金エリアデータベース部60にその位置を定義する情報が記憶される前記課金エリア8B内に含まれることに基づいて、前記利用客が前記課金エリア8Bに進入したことが検知され、前記購入物品検出部62において、前記利用客が保持する商品が検出され、前記課金手段64において、前記課金エリア進入検知手段58により前記利用者が前記課金エリア8Bに進入されたことが検知された場合において、前記購入物品検出手段62(SA3乃至SA7)によって検出される、前記利用客が保持する商品についての購入物品情報と、前記商品価格データベース部68に記憶される前記商品の価格についての情報とに基づいて、合計課金額が決定され、前記利用者端末10が送信する識別可能な情報である利用者タグ17に記憶された情報に基づいて前記利用客を識別し、識別された利用客に対して課金処理が行なわれるので、利用客が、前記商品を保持して所定の課金エリア8Bに進入したことに基づいて、該商品について該利用者に対する課金を行なうことができる。
【0091】
また、本実施例の決済システム6によれば、前記課金部64(SA8)は、課金処理が複数回実行される場合において、前記購入物品検出手段によって検出される前記購入物品情報と、前記課金済商品データベース部69に記憶された、前回以前に課金処理が行なわれた際の前記購入物品情報とを比較し、前回以前の課金処理実行時に課金処理の対象とされた商品は再度の課金処理の対象から除外するので、同一の商品について二重に課金が行なわれることがなく、好適に該商品について該利用者に対する課金を行なうことができる。
【0092】
また、本実施例の決済システム6によれば、前記課金部64(SA8)による課金処理が実行された場合において、前記利用者端末10の出力部84に音、音声および光学表示の少なくとも1つを発生させる報知手段70(SA11)を有するので、前記利用客に対し課金が行なわれたことを報知することができる。
【実施例2】
【0093】
続いて、本発明の別の実施例について説明する。なお実施例相互に共通する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0094】
図18は、本実施例における決済システム6が適用される領域を説明する図である。本実施例においては、複数の販売者が存在し、これらの販売者のそれぞれについて、その販売者が商品を陳列し利用客が商品を選択することのできる陳列エリアと、選択した商品について商品を選択した利用客に対して課金処理が行なわれる課金エリアとがそれぞれ設けられる。図18においては、8つの販売者のそれぞれに対し、領域102A、104A、106A、108A、110A、112A、114A、116Aが前記8つの販売者のそれぞれに対して設けられる陳列エリアである。また、領域118は、例えば通路などであって、前記複数(8つ)の販売者の陳列エリアの何れにも属さない領域である。利用者は、これら領域102A、104A、106A、108A、110A、112A、114A、116Aおよび領域118によって形成される領域(以下、全体領域という。)内を移動可能とされている。前記利用客位置検出手段は、前記領域内にある利用者端末10の位置を検出することのできる様に、必要な数および間隔で基地局12が配置されている。なお、図18において、基地局12およびサーバ14については記載が省略されている。
【0095】
図19は、前記複数の販売者のうち、領域112Aを陳列エリアとする販売者を例として、その陳列エリア112Aと課金エリア112Bとを説明する図である。図19に示す様に、領域112Aを陳列エリアとする販売者の課金エリア112Bは、全体領域のうち陳列エリアである領域112Aを除く領域となる様に定義される。他の販売者についても同様である。このように前記複数の販売者のそれぞれについての陳列エリアおよび課金エリアの位置などについての情報が予め定義され、課金エリアデータベース部60に記憶されている。
【0096】
また、課金エリア進入検知部58は、前記測位部56によって算出された前記利用客の位置と、前記課金エリアデータベース部60に記憶された前記複数の販売者のそれぞれについての課金エリアの位置についての情報とに基づいて、前記利用客が前記課金エリア8Bに進入したことが検知する。具体的には、前記測位部56によって算出された前記利用客の位置が前記課金エリアデータベース部60に記憶されたいずれかの販売者の課金エリアに含まれる場合、課金エリア進入検知部58は前記利用客がその販売者の課金エリアに進入したと検知する。前記図18の例においては、前記測位部56によって算出される前記利用者端末10の位置の履歴が軌跡123で表わされる場合において、利用者端末10の位置が点124であると算出された場合には、課金エリア進入検知部58は前記利用客が領域112Aを陳列エリアとする販売者の課金エリアに進入したと検知し、また、利用者端末10の位置が点126であると算出された場合には、課金エリア進入検知部58は前記利用客が領域116Aを陳列エリアとする販売者の課金エリアに進入したと検知する。この課金エリア進入検知部58は課金エリア進入検知手段に対応する。
【0097】
また、本実施例においては、商品情報データベース部66においては、前記商品タグ16に記憶された情報と、そのタグが付された商品の属性についての情報に加え、その商品を販売する販売者についての情報が記憶される。図20は、この商品情報データベース66に記憶される情報の一例を説明する図である。図20に示すように、商品情報データベース部66には、商品タグの付された商品の属性に関する情報およびその商品の販売者についての情報(店舗属性)が、商品タグ16に記憶された情報のそれぞれに対応して記憶されており、商品タグ16に記憶された情報に基づいて商品の属性に関する情報とその商品の販売者についての情報を読み出すことができる。
【0098】
また、課金部64は、前記課金エリア進入検知部58により前記利用者がある販売者の陳列エリアからその販売者(以下、課金対象販売者という。)の課金エリアに進入したことが検知された場合に、前記購入物品検出部62により取得される前記利用者端末10の所定の通信範囲にある利用者タグ17および商品タグ16に記憶された情報、前記商品情報データベース部66に記憶された情報、商品価格データベース部68に記憶された情報、および利用者データベース部67に記憶された情報に基づいて、前記課金対象販売者について課金処理を行なう。この課金部64が課金手段に対応する。
【0099】
具体的には、課金部64はまず、前記購入物品検出部62により取得された商品タグ16に記憶された情報と、前記商品情報データベース部66に記憶された情報とに基づいて、前記課金対象販売者によって販売される商品を抽出し、課金対象とする商品の属性(種類)と個数を決定する。例えば、前記購入物品検出部62により取得された商品タグ16に記憶された情報である商品IDが000001と000015であった場合には、前記図12の商品情報データベース部66に記憶された情報を参照して、利用客が課金対象販売者の課金エリアに進入した際に保持していた商品はリンゴが1個と紳士用靴下が1個である一方、課金対象販売者が果物店Aである場合には、課金対象商品は商品IDが000001であるリンゴ1個と決定する。
【0100】
続いて課金部64は、決定された商品の属性と個数についての情報と、前記商品価格データベース部68に記憶された情報とに基づいて課金金額を決定する。例えば、前述のように課金対象がリンゴ1個であると決定された場合、図12の商品価格データベース部68に記憶された情報を参照して、課金金額はリンゴ1個乃至4個の販売時の単価100円に個数1個を乗じた100円であると決定する。
【0101】
さらに課金部64は、前記購入物品検出部62により取得された利用者タグ17に記憶された情報と、前記利用者データベース部67に記憶された情報とに基づいて、課金が行なわれる利用者とその決済方法とを決定し、決済処理を実行する。例えば、前記購入物品検出部62により取得された利用者タグ17に記憶された情報である利用者IDが900003であった場合には、図13の利用者データベース部67に記憶された情報を参照して、利用者は上野であり、その利用者に対する決済方法はクレジットカードであることと、例えばそのカード番号などが読み出される。そして、読み出された決済方法により決済処理、すなわち、前記決定された課金金額の支払いのための処理が行なわれる。また、この支払いは前記課金対象販売者に支払われるようにされる。この決済処理は、サーバ14の内部で行なわれる必要はなく、サーバ14においては例えば前記決済方法のそれぞれに対応して予め定められる金融機関に対し、決済処理を行なう旨の依頼を行なうことであってもよい。
【0102】
なお、決済システム6の作動については、前述の実施例において図15のフローチャートを用いて説明したのと同様であるので、説明を省略する。
【0103】
本実施例の決済システム6によれば、前記課金エリアデータベース部60には、前記商品の複数の販売者のそれぞれについて前記課金エリアの位置がそれぞれ定義され、前記測位部56により検出される前記利用客の位置が、前記課金エリアデータベース部60に定義されるいずれか1の販売者の課金エリア内に含まれることに基づいて、前記課金エリア進入検知部58は、前記利用客がその販売者の課金エリアに進入したことを検知するとともに、該利用客が進入した課金エリアがいずれの販売者のものであるかを検知し、前記課金部64は、前記課金エリア進入検知部58により前記利用者が前記課金エリアに進入されたことが検知された場合において、前記課金エリア進入検知部58により検知された、利用者が進入した課金エリアに対応する課金対象販売者についての情報と、前記購入物品検出部62によって検出される前記利用客が保持する商品についての購入物品情報と、前記商品情報データベース部66および商品価格データベース部68にそれぞれ記憶された前記商品の販売者および価格についての情報とに基づいて、前記利用客が保持する商品のうち、その販売者と前記課金対象販売者とが一致した商品について合計課金額を決定し、課金処理を行なうので、前記利用客が保持する商品に複数の販売者による商品が混在する環境においても、利用客が前記商品を保持して所定の課金エリアに進入したことに基づいて、該商品について該利用者に対する課金を行なうことができる。
【0104】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0105】
例えば、前述の実施例においては、測位部56は、利用者端末10が送信する電波を複数の基地局12によって受信し、その複数の基地局12における受信結果としての受信時刻に基づいて利用者端末10の位置の算出を行なったが、かかる態様に限られず、例えば利用者端末10が所定の出力により送信する電波を複数の基地局12で受信し、その受信強度を受信結果として検出し、検出された電波の受信強度および、予め記憶された電波の受信強度と電波の伝搬距離との関係に基づいて、利用者端末10と前記複数の基地局12のそれぞれとの距離を算出し、利用者端末10の位置の算出を行なってもよい。
【0106】
また、前述の実施例においては、測位のための電波は利用者端末10から送信され複数の基地局12によって受信され、測位部56はその複数の基地局12におけるそれぞれの受信結果に基づいて利用者端末10の位置の算出を行なったが、このような態様に限られない。例えば前記複数の基地局12のそれぞれから利用者端末10に対して送信される測位のための電波を、前記利用者端末10がそれぞれ受信して受信結果を算出し、その受信結果に基づいて測位部56が利用者端末10の位置の算出を行なうこともできる。
【0107】
また、多数の基地局12を例えば格子状に配置しておき、利用者端末10から送信される電波を前記多数の基地局12により受信してその受信強度を測定し、測位部56は、利用者端末10からの電波を最も受信強度が強く受信した基地局12の位置を利用者端末10の位置とするいわゆるゾーン検知と呼ばれる手法によって利用者端末10の位置を測定することもできる。この場合、前記格子状に配置される基地局12は、利用者端末10の位置の算出を行なう際に必要とされる測位精度に基づいてその配置間隔が決定される。この場合、利用者端末10から基地局12に向けて送信されるのは電波に限られず、例えば赤外線による信号波であってもよい。
【0108】
また、前述の実施例においては、サーバ14と基地局12とは通信ケーブル20によって情報通信可能に接続されたが、この通信は有線通信に限らず、無線通信であってもよい。
【0109】
また、前述の実施例においては、商品の価格についての情報や商品の販売者についての情報は、商品に付された商品タグ16に記憶された情報である商品IDに基づいて、商品情報データベース部66に記憶された情報や商品価格データベース部68に記憶された情報から適宜読み出すことによって得られたが、これらの情報を商品タグ16に記憶させておいて、前記購入物品検出部62によって取得してもよい。
【0110】
また、前述の実施例においては、商品タグ16および利用者タグ17として、それぞれ電源を内部に必要としない、いわゆるパッシブタグが用いられたが、かかる態様に限られず、電源を有し、その電源から供給される電力により電波を送信することのできるアクティブタグが用いられてもよい。すなわち、利用者端末からの質問波に対し、個々に識別可能な応答波を返信することのできる機能を有するものであればよい。
【0111】
また、前述の実施例においては、購入物品検出手段62は、利用者端末10の短距離無線部86により読み取られた前記商品タグ16に記憶される情報に基づいて課金対象となる商品を検出したが、かかる態様に限られない。例えば、内部に電源を有しその電源から供給される電力により前記複数の基地局12が受信可能な出力により位置検出のための個々に識別可能な電波を送信可能なアクティブタグが商品タグとして商品に付される場合には、前記測位部56により前記商品タグとしてのアクティブタグの位置を算出し、算出されたアクティブタグの位置としての商品の位置が前記利用客の位置としての前記利用者端末10の位置と所定の範囲内にある、例えば前記カートに取り込まれていると見なすことのできる距離にある場合に、その商品を課金対象とするようにしてもよい。
【0112】
また、前述の実施例においては、利用客位置検出手段としての測位部56は、利用者端末10の位置を測定するとともに、利用者端末の短距離無線部86により読み取られた前記利用者タグ17に記憶される情報に基づいて利用者の位置とその利用者の特定を行なったが、かかる態様に限られない。例えば、予め利用客を特定可能な電波を送信する利用者端末であれば、前記利用者端末10に加えて利用者タグ17を有する必要はなく、利用者端末10と利用者タグ17とは共通する1つのアクティブタグによって実現される。
【0113】
また、前述の実施例においては、利用者端末10はカートに取り付けられたが、このような態様に限られず、利用客に伴って移動させられ、その利用客の位置を測位部56によって算出される利用者端末10の位置と見なすことのできる態様であればよい。
【0114】
また、前述の実施例においては、課金エリア8Bは販売者のそれぞれについて単一の種類の領域として設けられたが、このような態様に限られない。具体的には、前記課金エリア8Bが複数種類の課金処理における決済方法のそれぞれに対応して複数個に分割して設定され、前記課金エリア進入検知部58は、利用者端末10の位置が、陳列エリア8Aから分割された課金エリア8Bのいずれの部分に進入したかを検知し、課金部64は、課金エリア8Bのうち前記課金エリア進入検知部58により利用客の進入が検知された部分に対応する決済方法により、その課金を実行してもよい。このようにすれば、利用客は前記複数個に分割して設定された課金エリアのいずれに位置するかによって課金処理における決済方法を選択することができる。また、例えば図13に示すように利用者データベース部67に記憶された決済方法に限定されない決済を行なうことができる。なお、決済方法とは、例えば銀行決済、クレジットカードによる支払い、プリペイドカード(予納口座)からの決済、あるいは、クレジットカードによる支払いにおいて一括払い、分割払いなどである。
【0115】
また、前述の実施例においては、陳列エリア8Aと課金エリア8Bとが設けられ、測位部56によって測定される利用者端末10の位置が陳列エリア8Aから課金エリア8Bに進入したことが課金エリア進入検知部58により検出された場合に課金部64による課金処理が行なわれたが、このような態様に限られない。例えば、前記陳列エリア8Aと課金エリア8Bとの間に、購入物品検出部62による購入物品の検出とそれらの購入物品に対する合計課金金額の算出と算出された合計課金金額を利用者端末10に設けられた出力部84により出力するための合計算出提示エリア8Cが設けられてもよい。この場合、測位部56によって測定される利用者端末10の位置が陳列エリア8Aから合計算出提示エリア8Cに進入したことが課金エリア進入検知部58により検出された場合に合計課金金額の提示のみが行なわれ、さらに測位部56によって測定される利用者端末10の位置が合計算出提示エリア8Cから課金エリア8Bに進入したことが課金エリア進入検知部58により検出された場合に課金部64による課金処理が行なわれてもよい。このようにすれば、利用者は課金処理が行なわれるまえに合計課金金額を確認することができる。
【0116】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の決済システムの一実施態様を説明する図である。
【図2】図1の決済システムにおける利用者端末の実施態様の一例を説明する図である。
【図3】図1の決済システムにおける利用者端末の構成の一例を説明する図である。
【図4】図3の利用者端末の電子制御装置の有する制御機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図5】図1の決済システムにおける利用者タグおよび商品タグの構成の一例を説明する図である。
【図6】図1の決済システムにおける基地局の構成の一例とその基地局の有する機能の概要を説明する図である。
【図7】図1の決済システムにおけるサーバの構成の一例を説明する図である。
【図8】図6の決済システムにおけるサーバの電子制御装置の有する制御機能の概要を説明する機能ブロック図である。
【図9】図7の測位部による利用者端末の位置の算出の原理を説明する図である。
【図10】図8のサーバの課金エリアデータベース部に記憶される陳列エリア、課金エリアの情報について説明する図である。
【図11】図8のサーバの商品情報データベース部に記憶される情報の一例を説明する図である。
【図12】図8のサーバの商品価格データベース部に記憶される情報の一例を説明する図である。
【図13】図8のサーバの利用者データベース部に記憶される情報の一例を説明する図である。
【図14】図8のサーバの購入済商品データベース部に記憶される情報の一例を説明する図である。
【図15】図1の決済システムの制御作動の一例における概要を説明するフローチャートである。
【図16】図15のフローチャートにおいて実行される測位ルーチンの制御作動の一例における概要を説明するフローチャートである。
【図17】図15のフローチャートにおいて実行される購入物品検知ルーチンの制御作動の一例における概要を説明するフローチャートである。
【図18】本発明の別の実施例における、決済システムが適用される複数の販売者が存在する場合の領域の構成を説明する図である。
【図19】図18の複数の販売者のうちの1の販売者について設定される陳列エリアおよび販売エリアの例を説明する図である。
【図20】本発明の別の実施例における、図8のサーバの商品情報データベース部に記憶される情報の一例を説明する図であって、図11に対応する図である。
【符号の説明】
【0118】
6:決済システム
8B:課金エリア
10:利用者端末
56:測位部(利用客位置検出手段)
58:課金エリア進入検知部(課金エリア進入検知手段)
60:課金エリアデータベース部
62:購入物品検出部(購入物品検出手段)
64:課金部(課金手段)
70:報知部(報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用客が、商品を保持して所定の課金エリアに進入したことに基づいて、該商品について該利用者に対する課金を行なう決済システムであって、
前記利用客に伴って移動し、相互に識別可能な情報を送信可能な利用者端末と既知の位置に設置された基地局との間で電波の送受信を行い、その受信結果に基づいて前記利用者端末の位置を前記利用客の位置として検出する利用客位置検出手段と、
前記利用客が移動可能な領域のうち、前記商品についての課金が行なわれる予め定められた課金エリアの位置を定義した情報を記憶する課金エリアデータベース部と、
前記利用客位置検出手段により検出される前記利用客の位置が前記課金エリアデータベース部に記憶された前記課金エリア内に含まれることに基づいて、前記利用客が前記課金エリアに進入したことを検知する課金エリア進入検知手段と、
前記利用客が保持する商品を検出する購入物品検出手段と、
前記課金エリア進入検知手段により前記利用者が前記課金エリアに進入されたことが検知された場合において、前記購入物品検出手段によって検出される前記利用客が保持する商品についての購入物品情報と、前記商品の価格についての情報とに基づいて合計課金額を決定し、前記利用者端末が送信する識別可能な情報に基づいて前記利用客を識別し、識別された利用客に対し課金処理を行なう課金手段と、を有すること
を特徴とする決済システム
【請求項2】
前記課金エリアデータベース部には、前記商品の複数の販売者のそれぞれについて前記課金エリアの位置がそれぞれ定義され、
前記課金エリア進入検知手段は、前記利用客位置検出手段により検出される前記利用客の位置が、前記課金エリアデータベース部に定義されるいずれか1の前記課金エリア内に含まれることに基づいて、前記利用客が前記課金エリアに進入したことを検知するとともに、該利用客が進入した課金エリアがいずれの販売者のものであるかを検知し、
前記課金手段は、前記課金エリア進入検知手段により前記利用者が前記課金エリアに進入されたことが検知された場合において、前記課金エリア進入検知手段により検知された、利用者が進入した課金エリアに対応する課金対象販売者についての情報と、前記購入物品検出手段によって検出される前記利用客が保持する商品についての購入物品情報と、前記商品の価格および販売者についての情報とに基づいて、前記利用客が保持する商品のうち、その販売者と前記課金対象販売者とが一致した商品について合計課金額を決定し、課金処理を行なうこと
を特徴とする請求項1に記載の決済システム
【請求項3】
前記課金手段は、課金処理が複数回実行される場合において、前記購入物品検出手段によって検出される前記購入物品情報と、前回以前に課金処理が行なわれた際の前記購入物品情報とを比較し、前回以前の課金処理実行時に課金処理の対象とされた商品は再度の課金処理の対象から除外すること
を特徴とする請求項1または2に記載の決済システム。
【請求項4】
前記課金手段による課金処理が実行されたことを報知する報知手段を有すること
を特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の決済システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−238043(P2009−238043A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85021(P2008−85021)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】