説明

決済支援装置、および決済支援用プログラム

【課題】24時間、365日フル稼働体制を整えていない既存銀行の勘定システムに対しても
、随時外部からの決済要求を受付け、即時決済処理を行う、支援装置を低コストに提供する。
【解決手段】銀行勘定システムに対する所定の決済要求の処理を支援する決済支援装置において、該所定の決済要求に紐付けられた口座であってユーザが銀行内に有する実口座と連動し、電子的に決済処理が可能な該ユーザ用の仮想的な仮想決済口座を保持する。そして、所定の決済要求が受け付けられると、銀行勘定システムにおいて所定の決済要求処理が制限されているか否かにかかわらず、仮想決済口座において該所定の決済要求を処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行における決済処理を支援する装置およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は銀行における決済処理についても、様々なIT技術を利用してユーザの利便性を向上させようとする技術開発動向がある。例えば、2人のユーザの実際の銀行口座間の送金において、インターネット上に仮想的なインターネット支店を設け、そのインターネット支店に送金元と送金先に対応する2つの仮想口座を設けその間で資金の移動を行うことで、送金処理を実行する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
その他、決済処理に関して、複数の銀行口座をまとめた架空の口座を設定し、この架空口座に対して所定の出金順序に従って出金処理を行うことで、複数の銀行口座から預金を引き出す手間を解消する技術(例えば、特許文献2を参照)や、テレホンバンキングに関する決済処理技術(例えば、特許文献3を参照)が開示されている。後者の技術では、テレホンバンキングシステム利用に際して、サーバは一時的に利用可能な仮想取引口座を特定し、この口座を利用して更なる仮想取引口座を特定し、これらの口座の中からテレホンバンキングに使用する口座を決定する。これにより、テレホンバンキングに利用できる口座をユーザが当初に登録していなくても、自動的に利用口座が特定されることを目的とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-357214号公報
【特許文献2】特開2003-132286号公報
【特許文献3】特開2002-269353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インターネットバンキングシステムを除いては、従来からの銀行の決済処理を司る勘定システムは、外部からの決済要求に対して常時処理を行える体制を有していない。すなわち、一日のうち所定範囲の時間帯や一年のうち所定範囲の期日においては、外部からの所定の決済要求は受け付けられず、そのため当該決済処理を要する外部でのサービスは、事実上ユーザに対して提供することが困難となる場合がある。
【0006】
例えば、デビットカードのサービスにおいては、ユーザがカードを利用して決済処理を行おうとすると(即ち、商品等を購入しようとすると)、ユーザの銀行の口座から決済額を即時に引き落とす処理が必要となるが、銀行の勘定システムが外部からの決済要求を受け付けない状況である場合には、このようなデビットサービスを提供することは困難となり、ユーザの利便性は下がる。一方で、銀行の勘定システムを24時間、365日フル稼働す
るシステムに変更することは技術的には可能ではあろうが、金融インフラとしての銀行の勘定システムは、第一にその安定性・安全性が求められるものであり、システムの大幅な変更は敬遠されるため、現実に既存の銀行の大部分の勘定システムにおいては、24時間、365日フル稼働体制は実施できていない。さらに、このような勘定システムの大幅な変更
には、多額のコストが発生するため、その理由からも当該変更の実現性は困難とならざるを得ない。
【0007】
そこで、本発明では、上記問題に鑑み、上記のように24時間、365日フル稼働体制を整
えていない既存銀行の勘定システムに対しても、随時外部からの決済要求を受付け、即時決済処理を行う、支援装置を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記の課題を解決するために、24時間、365日フル稼働体制を整えていな
い既存銀行の勘定システム(以下、単に「銀行勘定システム」という)に対して、常時決済処理が可能な仮想決済口座を有する決済処理支援装置を提供する。この仮想決済口座は、実口座と電子的に連動する口座であって、銀行勘定システムが稼動している間に実際の資金の移動を完了させておき、ユーザからの決済要求はこの仮想決済口座側で処理することで、ユーザとしては常時決済処理が可能となり、一方で銀行側では、銀行勘定システムは従来どおりの稼動を行うので、当該システムの大幅な変更を免れることが可能となる。
【0009】
詳細には、本発明は、銀行内に実際に設けられている実口座に対する決済処理を行うシステムであって、外部からの所定の決済要求については一日のうち所定範囲の時間、もしくは一年のうち所定範囲の日時において該所定の決済要求の処理が制限されている銀行勘定システムに対して、システム外部からの該所定の決済要求の処理を支援する決済支援装置である。この決済支援装置は、前記所定の決済要求に紐付けられた口座であってユーザが銀行内に有する実口座と連動し、電子的に決済処理が可能な該ユーザ用の仮想的な仮想決済口座を保持するデビット決済用口座保持部と、前記実口座に対する前記所定の決済要求をシステム外部から受け付ける決済要求受付部と、前記銀行勘定システムにおいて前記所定の決済要求処理が制限されていないときに、前記仮想決済口座の残高に応じて、前記実口座から前記仮想決済口座への入金処理を行う口座残高調整部と、前記決済要求受付部によって前記所定の決済要求が受け付けられると、前記銀行勘定システムにおいて前記所定の決済要求処理が制限されているか否かにかかわらず、前記仮想決済口座において該所定の決済要求を処理する決済処理部と、を備える。
【0010】
デビット決済用口座保持部は、ユーザの実口座に電子的に紐付けられた口座である仮想決済口座を電子的に保持する。本発明に係る決済支援装置では、本来的にはユーザの実口座に対して決済処理が求められている所定の決済要求を、この仮想決済口座において決済処理しようとするものである。すなわち、ユーザの決済要求とは実態的には異なる電子的な口座上で、実口座に対する決済要求を処理することから、当該電子的口座を仮想的な口座と称するものである。この仮想決済口座は、実態的には実口座とは独立した口座であるから、たとえ銀行勘定システム側に位置する実口座が、外部からのアクセスが制限される状況におかれていたとしても、仮想決済口座での決済処理は随時行うことが可能である。
【0011】
そこで、決済要求受付部がシステム外部から所定の決済要求を受け付けると、決済処理部が、上記仮想決済口座においてその所定の決済要求の処理を行う。このとき銀行勘定システム側の実口座に対しては、何らかの決済処理を要求されることはない。決済処理部による決済処理は、実口座へのアクセスが制限されているか否かにかかわらず、すなわち銀行勘定システムにおいて所定の決済要求処理が制限されているか否かにかかわらず、実行されるため、ユーザからの決済要求は安定的に、即時に処理されることになる。そのためユーザの利便性は極めて高い。
【0012】
また、仮想決済口座と実口座は、口座残高調整部によってそれぞれの残高が連動される。すなわち、ユーザの有する資金は、本発明に係る決済支援装置の存在により不明確な状態に至ってはならず、そこで口座残高調整部が、ユーザの保有残高のつじつまが合うように仮想決済口座と実口座との残高を調整する。なお、この残高調整は、銀行勘定システムが稼動している間に行われるものであるから、銀行勘定システムにとっては、従来から行われている決済処理に変わりはなく、そのため銀行勘定システムに対して大幅な変更は求
められない。
【0013】
このように本発明に係る決済支援装置では、仮想決済口座を介してユーザからの所定の決済要求を随時処理することが可能となり、ユーザの利便性向上に寄与すると考えられる。また、銀行勘定システムに対しては、その大幅なシステム変更を行わずとも上記所定の決済要求の処理が可能となることから、決済支援装置の構築を低コストで実現することが可能となる。
【0014】
ここで、上記決済支援装置において、前記銀行勘定システムは、複数の自動現金支払い装置と決済インターフェースを介して接続され、各自動現金支払い装置からの決済要求に対して決済処理を行うシステムである場合、前記決済支援装置は、前記銀行勘定システムに対して独立して構成され、且つ前記口座残高調整部による前記実口座から前記仮想決済口座への入金処理は、該銀行勘定システムにおける前記自動現金支払い装置との前記決済インターフェースを利用して実行されるように構成してもよい。このような構成により、銀行勘定システムと決済支援装置をそれぞれ別に形成しながら、銀行勘定システムと決済支援装置との間で行われる口座残高調整部による送金処理は、既存の決済インターフェースが利用されるため、本発明に係る決済支援装置を導入するに際して、銀行勘定システム側に余計なシステム変更を課すことを回避できる。
【0015】
ここで上述の決済処理支援装置において、前記決済処理部は、前記所定の決済要求に係る金額が前記仮想決済口座の残高より大きい場合は、前記銀行勘定システムにおいて前記所定の決済要求処理が制限されていないときには、前記口座残高調整部を介して前記仮想決済口座の残高を増額させた後に、該仮想決済口座において該所定の決済要求を処理してもよい。すなわち、この場合、仮想決済口座の残高が不十分であるときは、直ちに実口座から仮想決済口座へ入金処理を行い、その後当該仮想決済口座において決済要求を処理する。
【0016】
一方で、前記所定の決済要求に係る金額が前記仮想決済口座の残高より大きい場合であって、前記銀行勘定システムにおいて前記所定の決済要求処理が制限されているときには、前記決済処理部は、該所定の決済要求の送信元に対して決済不可能である旨の通知を行うとともに、次に該所定の決済要求処理の制限が解除された直後に前記仮想決済口座の残高の増額を実行すべく前記口座残高調整部に対して指示するようにしてもよい。銀行勘定システムにおいて所定の決済要求処理が制限されているときには、口座残高調整部による仮想決済口座への入金処理を直ちに行うことが困難である。そこで、次に当該制限が解消されたときに入金処理を行えるように、決済処理部が口座残高調整部に対して予約的に指示を出す。この結果、ユーザにおいては、可能な限り速やかな仮想決済口座を利用した所定の決済要求の処理が可能となる。
【0017】
また上述までの決済処理支援装置において、前記口座残高調整部は、前記仮想決済口座の残高が所定残高以下となっている場合、前記実口座から該仮想決済口座へ、自動的に予め設定されている所定額の入金処理を実行し、又はユーザからの入金指示に従い該実口座から該仮想決済口座へ入金処理を実行するように構成されてもよい。
【0018】
なお、上述した本発明に係る決済支援装置の技術的思想は、銀行勘定システムの決済処理の支援を行うコンピュータのプログラムや、銀行勘定システムの決済処理の支援方法にも適用が可能である。また、当該プログラムが記録されている記録媒体、例えばCD、DVD等にも上記技術的思想は適用できる。
【発明の効果】
【0019】
既存銀行の勘定システムに対して、随時外部からの決済要求を受付け、即時決済処理を
行う、支援装置を低コストに提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る決済支援装置の概略構成、および当該決済支援装置を含んで構成されるユーザからの決済要求を処理するシステムの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す決済処理部の機能ブロック図である。
【図3A】決済情報データベースの構成を示す図である。
【図3B】口座残高情報データベースの構成を示す図である。
【図4】図1に示す決済処理支援装置で行われるデビット決済処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図1に示す決済処理支援装置で行われる残高調整処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る決済処理支援装置で決済要求の処理が行われたときの、デビット決済用口座と実際の銀行口座における残高の推移を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明に係る決済支援装置について説明する。当該決済支援装置は、銀行が発行するデビットカードを利用したデビット決済の支援を行う装置であるが、以下の実施の形態の構成は例示であり、本発明はこの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0022】
ここで、銀行が発行するデビットカードを利用したデビット決済とは、通常行われるクレジット決済とは異なる決済方法である。概略的に述べると、クレジット決済は、ユーザが商品の購入に要する費用をクレジットカード会社が一時的に店舗等に立て替え、後日、クレジットカード会社がユーザの指定の銀行口座から立て替えた分を引き落とす決済処理を行うものである。この場合、一般的には、予め決められた日時に、銀行の口座に対する決済処理が行われるため、銀行の口座に必要な残高がある限り、銀行の勘定システムが稼動している間にクレジット決済は実施される。一方で、デビット決済は、ユーザが商品の購入等資金が必要となったとき、デビットカードと紐付けられているユーザの銀行口座から即時に資金が引き出され、必要な資金の移動が行われる決済方法である。したがって、デビット決済を行われる際には、銀行の口座からの資金の引き落としが即時に行われ得る状態でなければならない。
【0023】
しかし、銀行の勘定システムは、一日のうち所定範囲の時間帯や、一年のうち所定範囲の期日は稼動が停止するため、外部からのデビット決済を即時に処理することができない状況が発生し得る。そこで、本発明に係る決済支援装置は、このような銀行の勘定システムにおけるデビット決済の支援を行う装置であり、ユーザからの随時のデビット決済の要求を処理可能とするものである。
【0024】
図1には、本発明に係る決済支援装置10の概略構成、および当該決済支援装置10を含んで構成されるユーザからのデビットカードに関する決済要求を処理するシステムの概略構成が示されている。決済支援装置10は銀行1内に設けられ、銀行1内には、他に勘定システム30が設けられている。決済支援装置10および勘定システム30はコンピュータで構成され、そこで実行されるプログラムにより、決済のための様々な処理が実現されることとなる。
【0025】
ユーザは、店舗4で自己が所有するデビットカードを利用して商品等を購入する。その場合デビット決済を利用することになり、その決済要求は、アクワイアラ3を介して、決済ブランド会社所有のネットワーク2に到達する。そして、ネットワーク2から銀行1へ決済要求の処理が求められることになる。また、このネットワーク2には、決済ブランド
会社と提携する銀行5(銀行1との異同は問わない。)が接続され、ユーザはデビットカードを銀行5の自動現金支払い装置(ATM)で使用することで、資金を得ることができる。この場合は、デビット決済の要求が、ネットワーク2を経て銀行1へ伝えられることになる。
【0026】
このようにデビットカードを利用したユーザからの様々な決済要求が、ネットワーク2を介して銀行1に届けられる。ここで、銀行1内に設けられているシステムについて説明する。銀行1内の勘定システム30は、既存の勘定システムであり、口座間の送金処理など様々な決済処理を司る。また、勘定システム30は、自動現金支払い装置(ATM)インターフェース(I/F)部40を介して、銀行1外に設けられた自動現金支払い装置6と接続されており、これらの自動現金支払い装置6からの現金の引き落としや預け入れ等の決済要求の処理も行う。このような様々な決済処理を行う勘定システム30は、常時外部に対して稼動しているものではなく、一日のうち限られた時間帯のみ、もしくは一年のうち限られた時期のみ外部に対して稼動しており、このような稼動形態は既存の銀行においては一般的である。そのため、外部からの決済要求を常時受け付けて即時に処理をすることが必ずしもできるとは限らない。図1においては、このような勘定システム30の限定的な決済処理のやりとりを黒塗りの矢印で示している。
【0027】
銀行1においては、上記勘定システム30に対して、独立した装置として決済支援装置10が形成されている。決済支援装置10はコンピュータによって構成され、不図示のCPU、メモリ、ハードディスク等を含む当該コンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって、以下に述べるデビット決済要求の処理が行われる。ここで、決済支援装置10には、ネットワークインターフェース(I/F)部20を介して、決済ブランド会社のネットワーク2に接続されており、上述したデビット決済要求が届けられる。それらのうちデビット決済要求は、デビットインターフェース(I/F)部11を介してデビット決済部12が受け付ける。
【0028】
デビット決済部12の機能ブロック図を図2に示す。この機能ブロック図は、決済支援装置10上で実行される決済支援用のプログラムが発揮する機能をイメージ化したものである。デビット決済部12は、デビット決済用口座保持部127を有している。このデビット決済用口座保持部127は、ユーザが実際に所有している銀行1内の実口座(以下、単に「銀行口座」という)に紐付けられている、決済支援装置10内に仮想的に存在する仮想決済口座であるデビット決済用口座を電子的に保持する。決済支援装置10は、実際には銀行口座に対して要求されているデビット決済要求を、デビット決済用口座保持部127が有するデビット決済用口座で処理しようとするものである。
【0029】
そこで、デビット決済部12は、更に決済情報データベース128、口座残高情報データベース129の他に、決済情報取得部121、口座情報取得部122、決済要求受付部123、口座残高調整部124、決済処理部125を有する。
【0030】
決済情報データベース128は、図3Aに示すように、ユーザのデビットカード番号に対して、暗証番号、デビットカードの実際の決済処理が行われる銀行口座の口座番号、そして当該銀行口座に紐付けられたデビット決済用口座の口座番号を関連付けたデータベースである。そして、決済情報取得部121が、デビット決済要求に含まれているデビットカード番号と暗証番号に基づいて、この決済情報データベース128から、デビット決済要求の処理に必要なデビット決済用口座と、それに紐付けられた銀行口座のそれぞれの口座番号に関する情報を取得する。この決済情報データベース128は、ユーザがデビット決済を行う前に、事前に銀行に対して当該決済を行いたい旨を通知することで構築される。
【0031】
また、口座残高情報データベース129は、図3Bに示すように、デビット決済要求の処理に必要な上記デビット決済用口座の口座残高を格納しているデータベースである。そして、口座情報取得部122が、決済情報取得部121が取得したデビット決済用口座の口座番号に基づいて、口座の残高に関する情報を取得する。この口座残高情報データベース129は、後述する残高調整処理によって更新される。
【0032】
そして、決済要求受付部123は、デビットインターフェース部11を介して届けられるデビット決済要求の受付を行う機能部である。口座残高調整部124は、デビット決済用口座と銀行口座との間で送金処理を行うことで、デビット決済要求を処理するためのデビット決済用口座の残高を調整する機能部である。決済処理部125は、受け付けたデビット決済要求の実質的な処理を行う機能部である。
【0033】
ここで、デビット決済要求の処理を即時性をもって実行するデビット決済処理について、図4に基づいて説明する。このデビット決済処理は、決済支援装置10で実行されるプログラムによって行われ、即ちデビット決済部12の各機能部によって実行される処理であり、当該プログラムは、ネットワーク2からデビット決済要求が届けられると直ちに実行される。先ず、S101ではネットワーク2から届けられたデビット決済要求の受付が行われる。当該処理は、決済要求受付部123によって実施される。S101の処理が終了すると、S102へ進む。
【0034】
S102では、受け付けられたデビット決済要求に基づいて、当該要求を行ったユーザの個人認証とその口座残高の確認が行われる。具体的には、デビット決済要求に含まれるデビットカード番号と暗証番号に基づいて、決済情報取得部121が決済情報データベース128から最終的にデビット決済用口座と銀行口座の各番号を取得する。そして、口座情報取得部122がそれらの口座番号に基づいて、口座残高情報データベース129から各口座の残高情報を取得する。S102の処理が終了すると、S103へ進む。
【0035】
S103では、デビット決済用口座の残高が、デビット決済要求に係る引き落とし額よりも多い状態であるか否かが判定される。ここで肯定判定されると、デビット決済用口座においてデビット決済要求の処理が直ちに実行可能であることを意味する。そこで、その場合にはS104へ進み、デビット決済要求の処理がデビット決済用口座において直ちに行われる。なお、ユーザに対してはS104の処理が終了すると直ちに決済終了の旨が通知される。
【0036】
一方で、S103で否定判定されると、S106へ進み、更に勘定システム30がその時点で稼動中であるか否かが判定される。S106で肯定判定されるとS107へ進み、勘定システム30側の実口座である銀行口座から、仮想決済口座であるデビット決済用口座へ、デビット決済要求の処理が可能となるように所定の金額が送金処理され、仮想決済口座の残高が補充(増額)される。例えば、デビット決済要求10万円のときに、デビット決済用口座に3万円しか残っていなかった場合には、少なくとも7万円の送金処理がS107で実行される。なお、S107の処理は、口座残高調整部124によって実施される。S107の処理が終了すると、S104へ進み、デビット決済要求の処理がデビット決済用口座において直ちに行われる。
【0037】
また、S106で否定判定された場合、それは勘定システム30側の銀行口座から、仮想決済口座であるデビット決済用口座に対して送金を直ちに行うことが困難であることを意味し、したがってデビット決済要求の処理を直ちに行うことができない。そこで、S106で否定判定されるとS108へ進み、デビット決済要求を出した要求元に対して、当該決済は不可能である旨の通知を行う。この通知により、ユーザは、現時点では自分の口座ではデビット決済を行うことができないことを知る。そして、S108の処理が終了す
るとS109へ進む。S109では、次に勘定システム30が稼動中となったときに、直ちに勘定システム30側の銀行口座から、仮想決済口座であるデビット決済用口座に対して送金が実施されるように、口座残高調整部124に対して処理の予約が行われる。この結果、現時点では直ちにデビット決済要求の処理はできないが、可能な限り速やかに当該要求の処理ができるようにデビット決済用口座の残高補充の準備が行われることになる。
【0038】
なお、S103、S104、S106、S108、S109の処理は、決済処理部125によって実施される。
【0039】
このように本発明に係る決済支援装置10によれば、デビット決済要求は、勘定システム30側の銀行口座で処理されるのではなく、その銀行口座と紐付けられている決済支援装置10内の仮想的なデビット決済用口座で処理される。そのため勘定システム30が稼動中か否かにかかわらず、デビット決済要求の処理を即時に実施することが可能となる。また、決済支援装置10は、勘定システム30の稼動状態に合わせて勘定システム30にアクセスするため、勘定システム30側に大幅なシステム変更は必要とはされず、以て決済支援装置10の導入にあたり必要なコストを可及的に抑制することができる。
【0040】
ここで、口座残高調整部124によるデビット決済用口座の残高調整のための処理について、図5に基づいて説明する。図5に示す残高調整処理は、所定のタイミングで繰り返し実行される。先ずS201では勘定システム30が稼動中であるか否かが判定される。ここで肯定判定されるとS202へ進み、否定判定されると銀行口座からの送金処理によるデビット決済用口座の残高調整はできないことを意味するため、本残高調整処理は終了する。
【0041】
S202では、上記S109で決済処理部125によって出された残高補充の予約が存在するか否かが判定される。ここで肯定判定されるとS203へ進み、必要な所定額の残高補充が行われる。当該所定額は、先のデビット決済要求の処理時に不足した額を考慮して適宜決定されればよい。次にS202で否定判定されると、S205へ進む。S205では、仮想決済口座であるデビット用決済口座の残高が基準額以下であるか否かが判定される。当該基準額は、ユーザが事前に設定することができる。そして、S205で肯定判定されると、S206へ進み、ユーザの残高補充の意思にかかわらずに、自動的に所定額のデビット用決済口座の残高補充が行われる。一方で、S205で否定判定されると、ユーザからの直接の残高補充の指示があるか否かが判定される。ここで肯定判定されるとS208へ進み、ユーザからの指示に従った額のデビット用決済口座の残高補充が行われ、否定判定されると本残高調整処理は終了する。
【0042】
ここで、S203、S206、S208において各処理が終了すると、S204へ進む。S204では、口座残高情報データベース129の更新処理が行われる。すなわち、S203、S206、S208においては、銀行口座からデビット決済用口座への送金処理が行われているため、口座の残高に関するデータベースである口座残高情報データベース129の更新がS204で行われる。
【0043】
このように残高調整処理では、デビット決済要求の処理に利用するデビット決済用口座の残高が、当該要求処理に対応可能な程度となるように、少なくとも3種類のパターンで残高補充が行われる。即ち、決済支援装置10側の判断による自動的な残高補充、残高の値を基準とした自動的な残高補充、そしてユーザからの直接の指示に従った残高補充の3種類のパターンが利用されることで、デビット決済用口座を可及的にデビット決済要求の処理に適した状態とし、以て即時性のある決済処理に備えている。なお、この残高調整処理は、勘定システム30が稼動中に行われるものであるから、結果として決済支援装置10は、勘定システム30の稼動状態に合わせて勘定システム30にアクセスする。そのた
め、勘定システム30側に大幅なシステム変更は必要とはされず、以て決済支援装置10の導入にあたり必要なコストを可及的に抑制することができる。
【0044】
ここで、本発明に係る決済支援装置10で上記デビット決済処理と残高調整処理が行われたときのデビット決済用口座の残高と、銀行口座の残高の推移の一例を、図6に示す。なお、図6に示す数値は各口座の残高で、単位は「万円」である。先ず、最初の段階で銀行口座に30万円あるが、そのうち10万円をデビット決済用口座に移す。そのため銀行口座には20万円が残る。ここで、デビット決済要求が9万円分発生すると、当該要求に対しては即座にデビット決済用口座から9万円分の引き落としが行われ(S104の処理を参照)、残高が1万円となる。ここで、自動的にデビット決済用口座の残高補充を行う基準額が1万円に設定されている場合には、上記9万円分の引き落としが行われた時点で、所定額(本実施例では10万円とする)の残高補充が行われる(S206の処理を参照)。その結果、デビット決済用口座の残高は11万円となり、一方で銀行口座の残高は10万円となる。
【0045】
更に、5万円分のデビット決済要求が発生すると、デビット決済用口座から5万円分の引き落としが行われ(S104の処理を参照)、その残高は6万円となる。この時点では、デビット決済用口座の残高が基準額以下となっていないため、自動的な残高補充は行われないが、ユーザから4万円分の直接の残高補充指示が出されると、それに従いデビット決済用口座の残高が10万円となり、銀行口座の残高が6万円となる(S208の処理を参照)。
【0046】
このようにデビット決済用口座の残高を適切な値に維持することで、即時性のあるデビット決済要求の処理が可能となる。
【0047】
なお、上記の実施例はデビットカードを利用したデビット決済に関するものであるが、本発明に係る決済支援装置が適用可能な例はこれに限られない。例えば、ユーザがプリペイドカードを利用して、商品の購入等をする場合に、そのカードに担保されているプリペイド額を上限とした決済要求の処理についても、デビット決済要求の場合と同様に即時性の決済処理が求められるため、本発明に係る決済支援装置が好適に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1・・・・銀行
2・・・・ネットワーク
4・・・・店舗
5・・・・銀行
6・・・・自動現金支払い装置
10・・・・決済支援装置
30・・・・勘定システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀行内に実際に設けられている実口座に対する決済処理を行うシステムであって、外部からの所定の決済要求については一日のうち所定範囲の時間、もしくは一年のうち所定範囲の日時において該所定の決済要求の処理が制限されている銀行勘定システムに対して、システム外部からの該所定の決済要求の処理を支援する決済支援装置であって、
前記所定の決済要求に紐付けられた口座であってユーザが銀行内に有する実口座と連動し、電子的に決済処理が可能な該ユーザ用の仮想的な決済口座を保持するデビット決済用口座保持部と、
前記実口座に対する前記所定の決済要求をシステム外部から受け付ける決済要求受付部と、
前記銀行勘定システムにおいて前記所定の決済要求処理が制限されていないときに、前記仮想決済口座の残高に応じて、前記実口座から前記仮想決済口座への入金処理を行う口座残高調整部と、
前記決済要求受付部によって前記所定の決済要求が受け付けられると、前記銀行勘定システムにおいて前記所定の決済要求処理が制限されているか否かにかかわらず、前記仮想決済口座において該所定の決済要求を処理する決済処理部と、
を備える決済支援装置。
【請求項2】
前記銀行勘定システムは複数の自動現金支払い装置と決済インターフェースを介して接続され、各自動現金支払い装置からの決済要求に対して決済処理を行うシステムであって、
前記決済支援装置は、前記銀行勘定システムに対して独立して構成され、且つ前記口座残高調整部による前記実口座から前記仮想決済口座への入金処理は、該銀行勘定システムにおける前記自動現金支払い装置との前記決済インターフェースを利用して実行される、
請求項1に記載の決済支援装置。
【請求項3】
前記決済処理部は、前記所定の決済要求に係る金額が前記仮想決済口座の残高より大きい場合は、
前記銀行勘定システムにおいて前記所定の決済要求処理が制限されていないときには、前記口座残高調整部を介して前記仮想決済口座の残高を増額させた後に、該仮想決済口座において該所定の決済要求を処理し、
前記銀行勘定システムにおいて前記所定の決済要求処理が制限されているときには、該所定の決済要求の送信元に対して決済不可能である旨の通知を行うとともに、次に該所定の決済要求処理の制限が解除された直後に前記仮想決済口座の残高の増額を実行すべく前記口座残高調整部に対して指示する、
請求項1又は請求項2に記載の決済支援装置。
【請求項4】
前記口座残高調整部は、前記仮想決済口座の残高が所定残高以下となっている場合、前記実口座から該仮想決済口座へ、自動的に予め設定されている所定額の入金処理を実行し、又はユーザからの入金指示に従い該実口座から該仮想決済口座へ入金処理を実行する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の決済支援装置。
【請求項5】
銀行内に実際に設けられている実口座に対する決済処理を行うシステムであって、外部からの所定の決済要求については一日のうち所定範囲の時間、もしくは一年のうち所定範囲の日時において該所定の決済要求の処理が制限されている銀行勘定システムに対して、システム外部からの該所定の決済要求の処理を支援するコンピュータのプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記所定の決済要求に紐付けられた口座であってユーザが銀行内に有する実口座と連動
し、電子的に決済処理が可能な該ユーザ用の仮想的な決済口座を保持するデビット決済用口座保持部と、
前記実口座に対する前記所定の決済要求をシステム外部から受け付ける決済要求受付部と、
前記銀行勘定システムにおいて前記所定の決済要求処理が制限されていないときに、前記仮想決済口座の残高に応じて、前記実口座から前記仮想決済口座への入金処理を行う口座残高調整部と、
前記決済要求受付部によって前記所定の決済要求が受け付けられると、前記銀行勘定システムにおいて前記所定の決済要求処理が制限されているか否かにかかわらず、前記仮想決済口座において該所定の決済要求を処理する決済処理部として機能させる、
決済支援用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−70604(P2011−70604A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223497(P2009−223497)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(393010570)TIS株式会社 (10)