説明

沈設構造物及び沈設方法

【課題】従来、ケーソン躯体を地盤中に沈設する際に、ケーソンの最下端に設けられた刃口にウォータージェットを噴射して掘削を行う技術があったが、高圧水と圧縮空気とを併用した高圧流体を噴射することにより効率よく沈設する。
【解決手段】地盤中にケーソンを圧入する際の刃口に、ケーソンの短手方向に沿って、ケーソンの外側遮壁4と内側遮壁5を配設し、ケーソンの長手方向に沿って液体と気体の高圧流体用のパイプを設け、パイプの先端ノズルから高圧流体を外側遮壁4に斜めに噴射し、外側遮壁4によって噴射による噴流を、内側遮壁5方向に反射散乱させることによって外側遮壁4と内側遮壁5との遮壁間の刃口内部の土砂を、ケーソンの長手方向に沿って中空の揚土管21から排土し除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中構造物の基礎、シールド工法の発進等で必要となる立坑その他の土木構造物に用いられるPCウェル工法、オープンケーソン工法等のように筒状沈設体や矩形沈設体を地中に沈設する沈設構造物及び沈設方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
立坑等の沈設構造物を地中に沈設するために、地上で構築乃至は組立てた矩形乃至は円筒形の躯体よりなる沈設構造物を、地中に圧入し沈設する沈設工法が採用されている。
【0003】
〔発明の背景〕
従来この種の工法として、例えばPCウェル工法、オープンケーソン工法等の圧入工法が一般に知られている。従来では、図14に示すように、ケーソンの底部の地盤をクラムシェルバケットにより水中掘削し排土しながら、グラウンドアンカーから反力を取った圧入ジャッキによりケーソンを徐々に沈下させる。ケーソンの刃口に係る刃口下部の地盤は、ケーソンの内側面より外側に位置する地盤であり、クラムシェルバケットでの掘削が困難である。特に、地盤が硬質である場合には、ケーソンの刃口抵抗が増大することから、ケーソンを沈下させること自体が困難となるという問題がある。
【0004】
〔従来の技術〕
これを改良する目的で、従来この種の沈設構造物としては、例えばこのような場合には、従来から専らケーソンの刃口に係る地盤の掘削をするために以下のような水中掘削装置が用いられている。
【0005】
すなわち、従来のこの種の水中掘削装置としては、例えばクレーンにより吊り下げられる吊下部材と、この吊下部材に対して可動可能に取設され、噴射によりケーソンの刃口に係る地盤の掘削をする噴射掘削手段たるエアー併用ウォータージェット(以後、ウォータージェットという)とから構成されるものがある。
【0006】
かかる水中掘削装置によれば、吊下部材の下端部に可動可能に取設されたるウォータージェットのノズルの方向をケーソンの刃口に係る地盤へと設定することとすれば、ノズルからの噴射によりケーソンの刃口に係る地盤の掘削をすることが一応可能である。(例えば、特許文献1)
【0007】
また、ケーソンの躯体内を配管してウォータージェットノズルをケーソンの刃口に取り付けて、ケーソンの刃口下部の地盤に噴射して掘削する方法がある。
【0008】
かかるウォータージェットノズルをケーソンの刃口下部の地盤に噴射することによりケーソンの刃口に係わる地盤の掘削をすることが一応可能である。(例えば、特許文献2)
【0009】
【特許文献1】特開2003−3484号公報(例えば、図8)
【特許文献2】特開平11−117317号公報(例えば、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、かかる吊下部材に取設されたるウォータージェットによりケーソンの刃口下部の地盤に噴射して掘削するには、刃口下部の地盤の掘削に合わせて的確に噴射することが困難であり、噴射して掘削した地盤の排土が困難となるので掘削効率が著しく低下することとなる。
【0011】
また、ケーソンの躯体内を配管したウォータージェットにより刃口下部の地盤に噴射して掘削するには、ウォータージェットは鉛直方向に噴射されるので、ウォータージェットの噴射と地盤掘削後の反射噴流とが衝突して噴射の勢いが減じ、掘削力が半減することに加えて、噴射して掘削した地盤の排土も困難となるので掘削効率が著しく低下することとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、第一発明と、第二発明とを含むものとして構成されている。第一発明は、ケーソンの沈設構造物に係るものであり、第二発明は、ケーソンの沈設方法に係るものである。
【0013】
第一発明に係るケーソンの沈設構造物は、地盤中にケーソンを圧入する際の刃口にウォータージェットを噴射して、地盤を掘削し土砂を除去し、ケーソンを地中に沈下させるために用いられるものである。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ケーソンの短手方向に沿って、ケーソンの外側と内側とに遮壁を配設し、ケーソンの長手方向に沿って液体と気体の高圧流体用パイプを設け、パイプの先端ノズルから高圧流体を外側の遮壁に噴射し、外側の遮壁によって前記噴射による噴流を、内側の遮壁方向に反射散乱させることによって外側と内側との遮壁間の刃口内部の土砂を除去することを備えたことを趣旨とする。
【0015】
上記発明の構成によれば、ケーソンの壁厚部の下縁端の外側と内側との遮壁に囲まれた刃口内部には、外側の遮壁の内面に向かって高圧流体を噴射する先端ノズルが、ケーソンの壁厚部の下縁端にケーソンの短手方向である周方向に適宜数設置されている。この高圧流体を噴射する先端ノズルからの噴流を、外側の遮壁の内面に対して斜め下方に向って照射する。噴射方向と遮壁との交差角度は地質や遮壁の幅や高さにより適宜きめることになる。ケーソンの外側の遮壁の内面側に噴射された噴流は、外側の遮壁に衝突後に地盤を掘削しならが反射散乱し、その噴流は内側の遮壁の地盤を掘削しながら内側の遮壁に衝突後、高圧流体の液体と気体との噴流の搬送力によりに排土する。
高圧流体は、液体は水であり気体は空気である。高圧流体噴射は、ウォータージェットでありエアージェットである。地盤の掘削にはウォータージェットが主体的であり、掘削地盤の搬送にはエアーリフトによるエアージェットが主体的である。
【0016】
高圧水と圧縮空気を別々の配管で、刃口近傍の同一の高圧タンクに導き、同時に噴射して高圧噴流となすことがよい。又、高圧タンクは適宜数あり、それぞれ独立して配管されており、夫々の高圧タンクからは複数の噴射孔或いは連続溝孔を開孔することがよい。
【0017】
また、高圧水用の高圧タンクと圧縮空気用の高圧タンクとを別々に設けるか、背割管構造やや二重管構造として、夫々独立した高圧室を設けて、夫々から配管して、先端ノズルでミキシングした噴流となすこともできる。これによれば、夫々性状の異なる流体を別系統の高圧タンクにて圧力〜流量管理がコントロールできるので、噴流の制御がしやすい。
【0018】
また、内側の遮壁は外側の遮壁に比してケーソンの長手方向に若干長いことが、内側の遮壁の下部地盤の洗掘を防げるので好ましい。洗掘が大きいとケーソンの内側地盤まで抜けるので噴流とエアーの土砂搬送力の減少となる。
【0019】
遮壁の材質は、鋼製乃至はコンクリート製或いはコンクリートを基材にその外殻に鋼板を巻いたコンポジットタイプとしてもよい。遮壁の断面形状は、矩形や台形など任意な形状でよく、要は、両遮壁間に適度な間隔を有しており、両遮壁間に適度な空間があればよい。
【0020】
ケーソンの下端部の両遮壁の上部には、ケーソンの短手方向に連続して両側を該遮壁で囲われた隔壁があるが、該隔壁は、ケーソンの外側から内側に向かって仰角をなく取り付けてもよいが、仰角をもって傾斜して設けることが好ましい。
【0021】
ケーソンの内側の遮壁には、ケーソン短手方向に連続した開孔部が形成されており、開口部は、外側と内側との隔壁間の刃口内部の上端部にある隔壁を上限として下方に向かって適宜幅で開孔されているが、その開孔幅は地盤の性状や高圧噴流など規模などによっても異なる。
【0022】
上記目的を達成するため、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の沈設構造物において、ケーソンの外側の遮壁の内面に噴射は、ケーソン内に垂下した高圧流体噴射装置による噴流であることを趣旨とする。
これによれば、ケーソンの底部の地盤をクラムシェルバケットにより水中掘削し排土して、可搬できる高圧流体噴射装置を所定部位に垂下して、高圧流体をケーソンの外側の遮壁の内面に噴射することにより、内側の遮壁方向に反射散乱させて、刃口下部の地盤の掘削と排土ができる。
この可搬可能な高圧流体噴射装置としては、単体ノズルから噴射するエアー併用ウォータージェットが好ましい。
【0023】
上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の沈設構造物において、ケーソンの内側の遮壁が、遮壁の鉛直軸を基準に傾斜していることを趣旨とする。
これによれば、ケーソンの外側の遮壁の内面に斜めに噴射された高圧流体は、ケーソンの外側の遮壁の近傍の土砂を噴射により掘削して、その反射噴流がケーソンの内側の遮壁に向かって反射散乱させて、内側の遮壁に達することにより、遮壁の下端側が開くように傾斜することにより、ケーソンの刃口の掘削幅を広くとれる効果がある。また、前記遮壁の上端側が開くように傾斜することにより、掘削崩壊土砂の搬出力の増大に効果がある。
【0024】
上記目的を達成するため、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいづれか1項に記載の沈設構造物において、ケーソンの内側の遮壁に、開孔部が形成されていることを趣旨とする。
これによれば、ケーソンの短手方向に連続した適宜幅の開口部を内側の遮壁に設けて、開口部から外側の遮壁に噴射後に反射噴流による掘削土砂の搬出が容易となる。また、開口部からの外部噴射手段の挿入が容易にできる。
【0025】
上記目的を達成するため、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいづれか1項に記載の沈設構造物において、ケーソンの内側の遮壁に、ケーソンの長手方向に沿って中空の揚土管を配設したことを趣旨とする。
これによれば、ケーソンの外側の遮壁と内側の遮壁とケーソンの壁厚部の下縁端とで囲まれた、ケーソンの短手方向に沿って形成された刃口内部と、内側の遮壁の更に内側に、ケーソンの短手方向に適宜間隔で中空の揚土管を配設することにより、刃口空間からの噴射による掘削土砂を揚土管によりエアーリフトして排土ができる。また、ケーソンの内側の遮壁の更に内側に仕切壁を設けて、内側の遮壁と該仕切壁とで形成された空間を短手方向に形成連続して設けることにより、揚土管として使用することができる。
【0026】
上記目的を達成するため、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいづれか1項に記載の沈設構造物において、ケーソンの揚土管は、ケーソンの長手方向に沿ってケーソン躯体内に配設したことを趣旨とする。
これによれば、ケーソンの躯体内に揚土管を配設できる壁厚を確保可能であれば、設備が容易である。
【0027】
上記目的を達成するため、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいづれか1項に記載の沈設構造物において、ケーソンは任意形状の中空パイプを該ケーソンの短手方向に連続して設けたことを趣旨とする。
これによれば、ケーソンの躯体の形状はボックス鋼管などの汎用性のある中空パイプを使える。
【0028】
第二発明に係るケーソンの沈設方法は、地盤中にケーソンを圧入する際の刃口に高圧流体を噴射して、地盤を掘削し土砂を除去し、ケーソンを地中に沈下させるために用いられるものである。
【0029】
上記目的を達成するため、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいづれか1項に記載の沈設方法において、ケーソンの短手方向に沿って、ケーソンの外側と内側とに遮壁を配設し、ケーソン内に高圧流体を噴射する手段から高圧流体の噴流を外側の遮壁に噴射し、外側の遮壁によって高圧流体による噴流を内側の遮壁方向に反射散乱させることによって外側と内側との遮壁間の刃口内部の土砂を除去することによりケーソンの沈設方法を趣旨としている。
【0030】
上記発明の構成によれば、ケーソンの最下端に沿って据え付けた外側と内側との遮壁とケーソンの壁厚部の最下端とに囲まれた刃口内部から、外側の遮壁の内面に向かって設置された流体と液体(即ち液体は高圧水であり気体とは圧縮空気である)の高圧流体を噴射して掘削する流体噴射ノズルが、ケーソンの短手方向に複数設置されている。この流体噴射ノズルからは、高圧流体が外側の遮壁の内面に斜め下方に向って噴射される。ケーソンの外側の内面の遮壁に噴射された噴流は、遮壁部位の土砂を掘削するとともに反射散乱して内側の遮壁の下部の地盤に至り洗掘するので、エアー併用のウォータージェットの噴流により水中掘削の威力を高め、且つ、圧縮空気の噴流によるエアーリフト効果により、掘削土砂の搬送と排土を容易にして効率的なケーソンの沈設方法である。
【0031】
上記目的を達成するため、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の沈設方法において、ケーソン内部を掘削せずにケーソンを沈設することを趣旨としている。
この方法によれば、ケーソンの躯体内にウォータージェット噴射手段を持っており、且つ、ケーソン内部に掘削土砂を排土を必要としない、例えば、中空パイプなどを沈設する場合などには特に有効である。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係るケーソンの沈設構造物及び沈設方法によれば、ケーソンの壁厚部下の刃口内部の地盤は、クラムシェルバケットでの掘削は壁厚部の存在によりバケット刃が入らないので物理的に掘削が困難であったが、高圧流体の噴射により最大掘削効率を発揮できる刃口形状を有する本発明により、刃口内部の地盤を効率よく掘削・排土できるので、ケーソンを確実に沈設することができる。また、ケーソンの内部を掘削せずにケーソン躯体のみを沈設することができるので、橋梁基礎などのケーソン内部の掘削を不要とする基礎構造物では工期/工費が然も短く/安い沈設構造物が得られることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る沈設構造物及び沈設方法について詳細に説明する。
【0034】
なお、ここでは、ケーソン内部の土砂を掘削して沈設するシールド発進立坑や、ケーソン内部の土砂を掘削せずにケーソン躯体のみを沈設することでその目的が適える場合のある橋梁の基礎に適用する場合について説明するが、これに限られるものではなく、集水井戸や橋梁の基礎その他の用途に適用する場合でも、以下の説明が妥当する。
また、ケーソンとして圧入ケーソンを採用する場合について説明するが、これに限られるものではなく、条件さえ整えばニューマティックケーソンその他のケーソンを採用する場合でも、以下の説明が妥当する。
また、ケーソンの躯体は、施工現場でコンクリートやスティールなどで一体整形した躯体でもよく、あるいは予め工場などで作ったセグメントやPCウェルを施工現場で組み立てて躯体を形成した場合でも、以下の説明が妥当する。
【実施例1】
【0035】
以下、本発明(請求項1、2、3、4)の沈設構造物及び沈設方法に使用される沈設構造物を具体化した第1の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0036】
図1は、本実施の形態に係る沈設構造物であるケーソン1の斜視図を示す。図2は図1の部分斜視図である。図14は沈設構造物の全体側面図である。この実施の形態では、沈設構造物であるケーソン1のケーソン内部の地盤をクラムシェルバケットで掘削・排土してのケーソン1を地盤中に沈設する沈設構造物について説明する。
【0037】
図14に示すように、この実施の形態におけるケーソン1が地盤中に圧入される周囲には、予め複数のグラウンドアンカー101が打ち込まれてモルタルにて地盤に固定されており、このグラウンドアンカー101に接続されたアンカーケーブル102は、ケーソン1の上縁端に備えた圧入桁103上に取り付けた圧入ジャッキ104にロッド105を介して接続されており、圧入ジャッキ104が働いてジャッキを伸張すると、ロッド105〜アンカーケーブル102〜グラウンドアンカー101に引張力が伝達されて、地盤中にコンクリートで固定されたグラウンドアンカー101には、引張力に対する反力が発生し、その圧入力が圧入桁103を介してケーソン1に伝えられ、ケーソン1は下方の地盤に向かって圧入される。
【0038】
また、ケーソン内部52の地盤51の掘削機であるクラムシェルバケット201がクレーン202によってワイヤー203にて吊り下げられ、ケーソン内部2の地盤51を掘削・排土する。そして、後述するように、ケーソン1の最下端においては、この実施の形態に係る高圧流体の噴射ノズルから噴出される、圧縮空気と高圧水が噴射される、ウォータージェットにより掘削が行われるが、ウォータージェットにより掘削された土砂は、クラムシェルバケットにより外部に搬出される。
【0039】
図1、2に示すように、地盤51にケーソン1を圧入する際の壁厚部2の下縁端の刃口3には、ケーソン1の短手方向に沿って、外側遮壁4と内側遮壁5とが配設されている。外側遮壁4と内側遮壁5とは夫々独立しておりケーソン1の短手方向に連続した遮壁を形成している。
【0040】
外側遮壁4と内側遮壁5とに囲まれた刃口内部17には、ケーソン1の短手方向に外側遮壁4の内側壁面6に向かって高圧流体を噴射する先端ノズル7が、ケーソン1の壁厚部2内に配管された高圧流体用パイプ8から、流体及び気体を供給される圧力タンク9に取り付けられている。圧力タンク9は壁厚部2の下縁端の刃口内部17の隔壁10内に、ケーソン1の短手方向に連続して設置されている。高圧流体を噴射する先端ノズル7からの噴流11は、外側遮壁4の内側壁面6に対して斜め下方に向って噴射する。噴射方向と外側遮壁4との交差角度は地質や遮壁の幅や高さにより適宜きめることになるが、先端ノズル7からの噴流11の延長線上方向には内側壁面6が存在するように交差角度を設定していることにより、噴流11により外側遮壁4の地盤の洗掘がないので、ケーソン1の外側周辺地盤の呼込みもなく、地盤沈下などの周辺構造物への影響が起こらない。
【0041】
外側遮壁4の内側壁面6側に噴射された噴流11は、内側壁面6に衝突後、外側遮壁4と内側遮壁5とに囲まれた刃口内部17の地盤を掘削しならが反射散乱しながら内側遮壁5に衝突して、高圧流体の液体(所謂、高圧水)と気体(所謂、圧縮空気)との噴流の搬送力によりに、内側遮壁5の開口部12から排土する。
【0042】
刃口内部17の上部のケーソン1の短手方向に連続して、両側を外側遮壁4と内側遮壁5とで囲われた隔壁10は、ケーソン1の外側から内側に向かって仰角を付けて取り付けているが、噴流11の反射散乱による刃口内部17の地盤の掘削土をケーソン内部52に排土するのに、エアーリフト効果により上昇する土砂の反射板となり、ケーソン内部52側に反射散乱した土砂をケーソン内部6から排土するのに有効である。
【0043】
高圧流体は、高圧水と圧縮空気の総称である。高圧流体の噴射装置は、本実施例では、図7(a)に示すように、圧力タンク9に高圧水と圧縮空気を高圧流体用パイプ8で導き、本図では高圧流体用パイプ8はダブルチューブで描画しており、夫々のチューブで高圧水と圧縮空気を圧力タンク9に供給して、圧力タンク9に取り付けた先端ノズル7から噴射する。圧力タンク9は水と空気を先端ノズル7から混合して噴射するレジューサーの役割をする。圧力タンク9は刃口内部17にケーソンの短手方向に連続して設けており、圧力タンクを必要ブロック毎に分割して、夫々の圧力タンクには高圧流体用パイプが接続されている。このような分割構造すると、各圧力タンクへの高圧流体の供給がコントロールし易いので、噴流の勢いに均等性を保たせることが容易となり、刃口内部の地盤の効率よい掘削と排土が可能となる。また、先端ノズル7は地盤の性状や噴出量などによっても異なり、圧力タンクには適宜間隔で取り付ける。
【0044】
図7(b)は、圧力タンク9に高圧水と圧縮空気を高圧流体用パイプ8で導き、溝状ノズル13から高圧流体を噴流する装置である。刃口内部17に噴射できるように短手方向に連続して設けるが、圧力タンクを必要ブロック毎に分けて噴流を制御することは前記と同様である。これによれば地盤の性状などに係わらずに定常設定が可能となるとともに、満遍なく噴流が地盤に加えることができるので掘削・排土効率が向上する。
【0045】
本実施例の刃口内部17の空間を構成する壁である外側遮壁4と内側遮壁5と隔壁10とは、互いに独立して壁厚部2に比してスレンダーな鋼板などで形成しているのでこのため各遮壁間には、ケーソンの短手方向に適宜間隔にて遮壁補強版14及び/乃至は内側遮壁補強板15(図3に図示)を設けてある。
【0046】
図3、4に示すように、請求項2に対応した実施例である。ケーソン内部52の地盤51をクラムシェルバケット201により水中掘削・排土して、刃口3の開口部12から、可搬可能なる高圧流体噴射装置16を所定部位に垂下して、高圧流体をケーソン1の外側遮壁4の内側壁面6に斜めに噴射することにより、内側遮壁5の方向に反射散乱させて、刃口内部17の地盤の掘削と排土ができる。この可搬可能な高圧流体噴射装置としては、単体ノズルから噴射するエアー併用ウォータージェットが好ましい。単体ノズルとは、公知の技術である、エアー併用のウォータージェットのことであるが、この単体ノズルを複数個使用して、刃口内部に噴射するれば、より掘削効率を高めることができる。
図7(c)は、当該先端ノズルである。
【0047】
図6(a)に示すように、請求項3に対応した実施例である。ケーソン1の刃口3の内側遮壁5は、外側遮壁4に比してケーソン1の長手方向に若干長いことが、内側遮壁5の下部地盤の洗掘を防げるので好ましい。洗掘が大きいとケーソンの内側まで噴流が抜け出るので、噴流とエアーの土砂搬送力の減少となるからである。
【0048】
図6(b)に示すように、ケーソン1の外側遮壁4の内側壁面6に斜めに噴射された高圧流体は、ケーソン1の外側遮壁6の近傍の土砂を掘削して、その反射噴流は下部が開いた刃口内部17の断面形状を有する、鉛直軸から上部を狭く下部を広く内側に傾いて取り付けた、内側遮壁5に向かって反射散乱され、内側遮壁5の下端側が開くように傾斜していることにより、刃口内部17の掘削幅を広く取れる効果がある。
【0049】
図6(c)に示すように、ケーソン1の外側遮壁4の内側壁面6に斜めに噴射された高圧流体は、ケーソン1の外側遮壁6の近傍の土砂を掘削して、その反射噴流は上部が開いた刃口内部17の断面形状を有する、鉛直軸から上部を広く下部を狭く内側に傾いて取り付けた、内側遮壁5に向かって反射散乱され、内側遮壁5の上側が開くように傾斜していることにより、刃口内部17の掘削崩壊土砂の反出力が増大するという効果がある。
【実施例2】
【0050】
次に、本発明(請求項5、6)の沈設構造物及び沈設方法に使用される沈設構造物を具体化した第2の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。尚、この実施の形態で前記第1の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0051】
図8は、本実施の形態に係る沈設構造物であるケーソン1の内側に揚土管を配した斜視図を示す。図9は図8の断面図である。図10は、ケーソン1の壁厚部内に揚土管を配した断面図である。この実施の形態では、沈設構造物であるケーソン1のケーソン内部の地盤をクラムシェルバケットで掘削・排土してのケーソン1を地盤中に沈設することも可能であるが、本実施例では、ケーソン内部の地盤を掘削・排土せずにケーソン1のみを沈設することが可能となる沈設構造物について説明する。
【0052】
図8,9に示すように、ケーソン1の外側遮壁4と内側遮壁5とケーソンの壁厚部2の下縁端の隔壁10とで囲まれた、ケーソン1の短手方向に沿って形成された刃口空間である刃口内部17と、内側遮壁5の更に内側に、ケーソン1の短手方向に適宜間隔で中空の揚土管21を配設することにより、刃口内部17への高圧流体の噴射による掘削土砂を揚土管21によりエアーリフトして排土がができる。
【0053】
外側遮壁4と内側遮壁5と隔壁10とで囲まれた刃口空間である刃口内部17は、ケーソン1の短手方向に連続した空間を形成しているが、ケーソン1の短手方向に適宜間隔に仕切壁22を設けて、刃口内部17を夫々独立したブロックとし、各ブロックには夫々に揚土管21が配設されている。刃口内部17の地盤の掘削は刃口3内に配設した高圧流体の噴射によりブロック毎に掘削されて、掘削土砂は各ブロックにある揚土管21をエアーリフト効果で上昇して揚土管内を搬送されて、ケーソン1の外部、例えば、地表に設けた土砂ピット(図示しない)に排出する。
【0054】
揚土管21のある断面箇所での内部遮壁5は、該揚土管が該内部遮壁と同等に機能することができるので、該内部遮蔽は省くことができる。
【0055】
図10に示すように、ケーソン1の躯体内部である壁厚部2に、ケーソン1の長手方向に沿って揚土管21を取り付けている。揚土管21は、ケーソン1の短手方向に適宜間隔で配設している。この場合、刃口空間である刃口内部17を独立したブロックとして、夫々の揚土管21と関連付けることは、前記と同様であるので説明を省く。
【0056】
本実施の形態のように、ケーソン1の刃口内部17の地盤を掘削した土砂を、揚土管21を経由して、地表に排土するので、ケーソン内部52をクラムシェルバケットで掘削しなくとも、ケーソン1の躯体のみを沈設できる。このため、橋梁基礎などのようにケーソン内部を掘削しなくとも用途可能な構造物を沈設する場合には、ケーソン内部の掘削が必要ないので極めて経済的な沈設構造物ができる。
【実施例3】
【0057】
次に、本発明(請求項7)の沈設構造物及び沈設方法に使用される沈設構造物を具体化した第3の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。尚、この実施の形態で前記第1、2の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0058】
図11は、本実施の形態に係る沈設構造物であるケーソン1を中空管で形成した斜視図を示す。図12,13は図11の断面図である。この実施の形態では、沈設構造物であるケーソン1のケーソン内部の地盤をクラムシェルバケットで掘削・排土してのケーソン1を地盤中に沈設することも可能であるが、本実施例では、ケーソン内部の地盤を掘削・排土せずにケーソン1のみを沈設することが可能となる沈設構造物について説明する。
【0059】
図11に示すように、ケーソン1の壁厚部2の構造を中空管23として、ケーソン1の短手方向に連続して設けている。外側遮壁4と内側遮壁5と隔壁10とで囲まれた刃口空間である刃口内部17は、ケーソン1の短手方向に連続した空間を形成しているが、ケーソン1の短手方向に適宜間隔に仕切壁22を設けて、刃口内部17を夫々独立したブロックとしている。各ブロックには夫々に土砂搬出シャフトとして機能するものとして、中空管23の単管が揚土管としての役割を担う。即ち、揚土管としての役割を担う箇所の中空管部では隔壁10を開孔させておき、他は隔壁として刃口内部17と中空管23とは連通を絶つ。刃口内部17に高圧流体を噴射して、該隔壁10の開孔の中空管23から、掘削土砂は搬送されて地表のピットに排出される。
【0060】
図12に示すように、ケーソン1の長手方向に連通し、短手方向に連続して中空管23を設けることにより、該中空管23の下部に斜めに高圧流体を噴射すれは、該中空間23を掘削と排土と共有した管として使えるので、単独あるいは複数の中空間を連続して沈設することにより、ケーソン1による沈設構造物ができる。
【0061】
図13に示すように、ケーソン1の刃口空間の上部に開口部を設ければ、掘削土砂をケーソン内部52に排出することもできる。
【0062】
いままでは、高圧流体は略同一ノズルからの噴出を基本に説明をしてきたが、刃口内部の掘削土砂を排土する、エアーリフト効果の効率を高めるために、揚土管など排土する機能をもった構造体の刃口空間付近に、新たに圧縮空気を噴出するノズルを設けてもよい。
【0063】
第二発明に係るケーソンの沈設方法は、地盤中にケーソンを圧入する際の刃口に高圧流体を噴射して、地盤を掘削し土砂を除去し、ケーソンを地中に沈下させるために用いられるものである。
【0064】
図1乃至図7に示すように、本発明(請求項8)の沈設構造物及び沈設方法に使用される沈設方法を具体化した実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。尚、この実施の形態で前記第1、2、3の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0065】
ケーソン1の最下端に沿って据え付けた外側遮壁4と内側遮壁5とケーソン1の壁厚部2の最下端にある隔壁10とに囲まれた刃口内部17から、外側遮壁4の内側壁面6に向かって設置された流体と液体(即ち液体は高圧水であり気体とは圧縮空気である)の高圧流体を噴射して掘削する流体噴射のための先端ノズル7が、ケーソン1の短手方向に複数設置されている。この先端ノズル7からは、高圧流体が外側遮壁4の内側壁面6に斜め下方に向って噴射される。ケーソン1の外側遮壁4の内側壁面6に噴射された噴流11は、該遮壁部位の土砂を掘削するとともに反射散乱して内側遮壁5の下部の地盤を掘削するので、エアー併用のウォータージェットの噴流により水中掘削の威力を高め、且つ、圧縮空気の噴流によるエアーリフト効果により、掘削土砂の搬送と排土を容易にして効率的なケーソンの沈設方法である。
【0066】
図8乃至図12に示すように、本発明(請求項9)の沈設構造物及び沈設方法に使用される沈設方法を具体化した実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。尚、この実施の形態で前記第1,2,3の実施の形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0067】
図8,9、10に示すように、ケーソン1の外側遮壁4と内側遮壁5とケーソンの壁厚部2の下縁端の隔壁10とで囲まれた、ケーソン1の短手方向に沿って形成された刃口空間である刃口内部17と、内側遮壁5の更に内側に、ケーソン1の短手方向に適宜間隔で中空の揚土管21を配設することにより、刃口内部17への高圧流体の噴射による掘削土砂を揚土管21によりエアーリフトして排土がができる。外側遮壁4と内側遮壁5と隔壁10とで囲まれた刃口空間である刃口内部17は、ケーソン1の短手方向に連続した空間を形成しているが、ケーソン1の短手方向に適宜間隔に仕切壁22を設けて、刃口内部17を夫々独立したブロックとし、各ブロックには夫々に揚土管21が配設されている。刃口内部17の地盤の掘削は刃口3内に配設した高圧流体の噴射によりブロック毎に掘削されて、掘削土砂は各ブロックにある揚土管21をエアーリフト効果で上昇して揚土管内を搬送されて、ケーソン1の外部、例えば、地表に設けた土砂ピット(図示しない)に排出する。ケーソン内部52を掘削せずに、ウォータージェット水噴射手段を持っており、且つ、ケーソン内部に掘削土砂を排土を必要としない、例えば、中空パイプなどを沈設する場合などには特に有効な沈設方法である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係るケーソンの沈設構造物及び沈設方法にあっては、高圧流体の噴射により刃口内部の地盤を効率よく掘削・排土できるので、ケーソンを確実に沈設することができるとともに、ケーソンの内部を掘削せずにケーソン躯体のみを沈設することができるので、橋梁基礎に最適なコストメリットのある沈設構造物として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る沈設構造物を示す斜視図である。
【図2】同じく、沈設構造物の部分斜視図である。
【図3】同じく、沈設構造物の部分斜視図である。
【図4】同じく、沈設構造物の部分斜視図である。
【図5】同じく、沈設構造物の断面図である。
【図6】同じく、沈設構造物の断面図である。
【図7】同じく、沈設構造物の高圧流体噴射装置の斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る沈設構造物を示す斜視図である。
【図9】同じく、沈設構造物の断面図である。
【図10】同じく、沈設構造物の断面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る沈設構造物を示す斜視図である。
【図12】同じく、沈設構造物の断面図である。
【図13】同じく、沈設構造物の断面図である。
【図14】沈設構造物の説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1 ケーソン
2 壁厚部
3 刃口
4 外側遮壁
5 内側遮壁
6 内側壁面
7 先端ノズル
8 高圧流体用パイプ
9 圧力タンク
10 隔壁
11 噴流
12 開口部
13 溝状ノズル
14 遮壁補強板
15 内側遮壁補強板
16 高圧流体噴射装置
17 刃口内部
21 揚土管
22 仕切壁
23 中空管
51 地盤
52 ケーソン内部
101 グラウンドアンカー
102 アンカーケーブル
103 圧入桁
104 圧入ジャッキ
201 クラムシェルバケット
202 クレーン
203 ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中にケーソンを圧入する際の刃口に関し、該ケーソンの短手方向に沿って、該ケーソンの外側と内側とに遮壁を配設し、該ケーソンの長手方向に沿って液体と気体の高圧流体用のパイプを設け、該パイプの先端ノズルから該高圧流体を該外側の遮壁に噴射し、該外側の遮壁によって該噴射による噴流を、該内側の遮壁方向に反射散乱させることによって該外側と内側との遮壁間の刃口内部の土砂を除去することを特徴とする沈設構造物。
【請求項2】
前記ケーソンの前記外側の遮壁への高圧流体の噴射は、該ケーソン内に垂下した高圧流体噴射装置による噴流であることを特徴とする請求項1に記載の沈設構造物。
【請求項3】
前記ケーソンの内側の遮壁が、傾斜していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の沈設構造物。
【請求項4】
前記ケーソンの内側の遮壁に、開孔部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいづれか1項に記載の沈設構造物。
【請求項5】
前記ケーソンの内側の遮壁に、該ケーソンの長手方向に沿って中空の揚土管を配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいづれか1項に記載の沈設構造物。
【請求項6】
前記ケーソンの揚土管は、該ケーソンの長手方向に沿って該ケーソン躯体内に配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいづれか1項に記載の沈設構造物。
【請求項7】
前記ケーソンは任意形状の中空パイプを該ケーソンの短手方向に連続して設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいづれか1項に記載の沈設構造物。
【請求項8】
地盤中にケーソンを圧入する際の刃口に関し、該ケーソンの短手方向に沿って、該ケーソンの外側と内側とに遮壁を配設し、該遮壁内に高圧流体を噴射する手段から高圧流体を該外側の遮壁に噴射し、該外側の遮壁によって該高圧流体を噴射した噴流を該内側の遮壁方向に反射散乱させることによって該外側と内側との遮壁間の刃口内部の土砂を除去することにより該ケーソンを沈設することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいづれか1項に記載の沈設構造物を用いた沈設方法。
【請求項9】
前記ケーソンの該ケーソン内部を掘削せずに該ケーソンを沈設することを特徴とする請求項8に記載の沈設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−291618(P2007−291618A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117462(P2006−117462)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(392030494)ヤマハ化工建設株式会社 (1)