説明

沸騰水型原子炉の蒸気乾燥器

【課題】蒸気乾燥器への組込み性を確保しつつ各波板の間隔を均一に保持できる沸騰水型原子炉の蒸気乾燥器を提供すること。
【解決手段】液滴を捕集する複数枚の液滴捕集板15が取り付けられた複数の波板9と、その複数の波板9を貫通するスペーサロッド13と、その複数の波板9のうち隣接する波板9の間に位置するようにスペーサロッド13に通され、その隣接する波板9の間隔をネジ機構によって調節可能に保持するスペーサ装置16Aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は沸騰水型原子炉で気水分離器からの湿り蒸気から湿分を除去する蒸気乾燥器に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(以下、単に「原子炉」と称することがある。)は、原子炉炉心で発生した蒸気から水分を除去する気水分離システムを備えている。一般的に、気水分離システムは、原子炉炉心で発生した水と蒸気の混合流から蒸気と水を分離する気水分離器と、気水分離器で分離された湿り蒸気から液滴を除去する蒸気乾燥器を有している。
【0003】
気水分離器から放出された液滴を含む湿り蒸気は、フードプレート(以下、フードと称することがある。)に向かって上昇し、フードによって上向きから水平寄りに向きを変えて蒸気乾燥器ユニットに導入される。蒸気乾燥器ユニットは、複数の波板(波形状をした薄い部材)の同じ位置にパンチ等で孔を開け、そこにスペーサロッドを通すことによって複数の波板を集合体としたもので、各波板には複数の液滴捕集板が溶接されている。蒸気乾燥器ユニットに導入された蒸気は、波板間に形成された屈曲した蒸気流路に導かれ、蒸気中の液滴は蒸気流路内で波板と衝突することで蒸気から分離される。分離された液滴は、波板上を液膜状となって、重力と蒸気からのせん断力によって斜め下方向に流れて波板の水分除去機構に入り、水分除去機構を下方に流下して蒸気流路から除去される。そして、この液膜は蒸気流路真下のドレンといによって収集され、ドレンダクトへ排出されてドレンダクトから原子炉のダウンカマへと導かれる(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
ところで、蒸気乾燥器ユニットにおいて湿り空気中の液滴を捕獲する機能に影響がある要素の一つとして、隣り合う波板の間隔が挙げられる。蒸気乾燥器ユニット全体としての液滴の捕獲機能を確保する観点からは、隣り合う波板の間隔を均一にし、蒸気流路を均一にすることが望ましい。従来技術では、この点を鑑み、スペーサロッドに波板を通す際に、隣り合う波板の間に同じ長さのスペーサを挿入することで、蒸気流路の幅の均一化を図っている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−222190号公報
【特許文献2】特公昭45−20079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蒸気乾燥器ユニットの一般的な組立方法としては、(1)蒸気乾燥器ユニットにおける中央の波板にスペーサロッドを通し、スペーサロッドの両端まで波板とスペーサを交互に通していき、波板の端がL型に加工された部位と側板を溶接し、さらにスペーサロッドと側板をネジ止めし、最後にスペーサロッドの両端面を側板に溶接することで一体化する方法や、(2)スペーサロッドの一方側の端部に側板をネジ止めし、当該スペーサロッドの端面を側板に溶接をし、波板の端がL型に加工された部位と側板を溶接し、その後波板とスペーサを交互にスペーサロッドに通していき、波板の端がL型に加工された部位と側板と溶接し、さらにスペーサロッドの他方側の端部に側板をネジ止めし、当該スペーサロッドの端面を側板に溶接をして一体化する方法などが挙げられる。どちらの組立方法においても蒸気乾燥器ユニットの実際の幅(スペーサロッドの軸方向の長さ)は、波板を組立てた後に決まる。また、スペーサの長さを決める加工は、組立前に事前に加工され準備されるのが一般的である。
【0007】
ところで、実際の組立においては、スペーサ同士には微小な長さのばらつきがある。そのため、複数のスペーサを用いて蒸気乾燥器ユニットを組み立てると、スペーサ1個当たりの微小なばらつきが累積して、蒸気乾燥器ユニットの幅にばらつきが生じる。また、スペーサロッドを通すための孔を波板に設けるときにはパンチ等で波板をせん断加工するが、その孔の周囲にはスペーサロッド軸方向の微小な凹凸が形成される。この微小な凹凸によっても、蒸気乾燥器ユニットの幅にばらつきが生じることがある。
【0008】
このように蒸気乾燥器ユニットの幅にばらつきが生じることは、仮に蒸気乾燥器ユニット組立後の蒸気乾燥器への組込み性を優先し、蒸気乾燥器ユニットの幅を先に決めた場合には、スペーサと波板の接触面に隙間ができ、波板が隙間分移動した場合は蒸気流路が均一にならないことを意味する。一方、蒸気乾燥器ユニットの幅を確保するため、組立後に蒸気乾燥器ユニットを分解し、スペーサの長さの再調整及び波板の孔回りの微小な凹凸の再仕上げを行うことは組立工数の増大につながる。
【0009】
本発明の目的は、蒸気乾燥器への組込み性を確保しつつ各波板の間隔を均一に保持できる沸騰水型原子炉の蒸気乾燥器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、液滴を捕集する複数枚の液滴捕集板が取り付けられた複数の波板と、前記複数の波板を貫通するスペーサロッドと、前記複数の波板のうち隣接する波板の間に位置するように前記スペーサロッドに通され、前記隣接する波板の間隔をネジ機構によって調節可能に保持するスペーサ装置とを備えるものとする。
【0011】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記波板において前記スペーサロッドが貫通する孔の内周には雌ネジ部が形成されており、前記スペーサ装置は、前記スペーサロッドに通されたスペーサであり、当該スペーサの軸方向における一方側の端部には、前記雌ネジ部と係合する雄ネジ部が設けられているものとする。
【0012】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記スペーサ装置は、前記スペーサロッドに通された2つのスペーサであり、当該2つのスペーサの一方は軸方向における一方側の端部に雄ネジ部を備えており、前記2つのスペーサの他方は軸方向における他方側の端部に前記雄ネジ部と係合する雌ネジ部を備えるものとする。
【0013】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記スペーサロッドの外周には、雄ネジ部が形成されており、前記スペーサ装置は、前記スペーサロッドに通された2つのスペーサであり、当該2つのスペーサの内周には、前記スペーサロッドの雄ネジ部と係合する雌ネジ部がそれぞれ形成されているものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蒸気乾燥器ユニット組立後においても隣接する波板の間隔を調節することができるので、蒸気乾燥器ユニットの組み込み性を確保しつつ各波板の間隔を均一に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る沸騰水型原子炉の原子炉内構造物を示す縦断面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る蒸気乾燥器の斜視図。
【図3】一般的な蒸気乾燥器ユニットの斜視図。
【図4】一般的な蒸気乾燥器ユニットにおける蒸気の流れ方向を示した斜視図。
【図5】図3中のV-V断面における断面図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る蒸気乾燥器におけるスペーサロッド付近の拡大図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る蒸気乾燥器におけるスペーサロッド付近の拡大図。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る蒸気乾燥器におけるスペーサロッド付近の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態に係る沸騰水型原子炉の原子炉内構造物を示す縦断面図である。この図に示す沸騰水型原子炉(以下、原子炉と称することがある)は、原子炉圧力容器1と、原子炉炉心2と、気水分離器5と、蒸気乾燥器6と、ダウンカマ3と、再循環系ポンプ4と、主蒸気ノズル11を備えている。
【0018】
ダウンカマ3内の炉水は、再循環系ポンプ4によって原子炉炉心2に導入され、原子炉炉心2で加熱されて水と蒸気の混合流体となる。この混合流体は、原子炉炉心2の真上に配備されている気水分離器5に入り、気水分離器5内を通過する途中で水と蒸気に遠心分離される。気水分離器5で分離された蒸気は、気水分離器5の上方に配備された蒸気乾燥器6に導入される。これは、気水分離器5で分離された蒸気は、まだ蒸気タービンが受け入れることのできない過剰な液滴量を含んでおり、蒸気乾燥器6において蒸気タービンが受け入れることのできる湿分量にまで蒸気を乾燥する必要があるからである。一方、気水分離器5で分離された水は、気水分離器5の途中から気水分離器5外へ排出される。気水分離器5外へ排出された水は降下してダウンカマ3へ戻され、再循環系ポンプ4によって原子炉炉心2へ再度導入される。
【0019】
図2は本発明の実施の形態に係る蒸気乾燥器6の斜視図である。この図に示す蒸気乾燥器6は、気水分離器5が収納される円筒状のスカート20と、スカート20の上部に設置された隔離壁18と、隔離壁18の上に複数配列された蒸気乾燥器ユニット12と、蒸気乾燥器ユニット12で捕集された水分が排出されるドレンダクト19を備えている。
【0020】
気水分離器5からの蒸気は、隔離壁18に設けられた開口部(図示せず)を介して上昇し、蒸気乾燥器ユニット12内に導入される。蒸気乾燥器ユニット12を通過することで湿分が低下した蒸気(乾燥蒸気)は蒸気乾燥器6の上側へ抜ける。蒸気乾燥器6を抜けた乾燥蒸気は、主蒸気ノズル11(図1参照)を通過し、主蒸気配管(図示せず)を介して蒸気タービン(図示せず)へ供給される。一方、蒸気乾燥器ユニット12で捕集された水分は、隔離壁18に設けられた孔を介してドレンダクト19へ流れ、ドレンダクト19を介してスカート20の外側へ排出される。
【0021】
ここで、一般的な蒸気乾燥器ユニットの構成について図3〜5を用いて説明する。図3は一般的な蒸気乾燥器ユニットの斜視図であり、図4はその蒸気乾燥器ユニットにおける蒸気の流れ方向を示した斜視図であり、図5は図3中のV-V断面における断面図である。
【0022】
これらの図に示す蒸気乾燥器ユニット12は、ユニットサポート17を介して隔離壁18上に設置されており、フードプレート(以下、フードと称することがある)7と、多孔板8と、側板14と、波板9と、液滴捕集板15と、スペーサロッド13と、スペーサ16を備えている。
【0023】
フード7は、気水分離器5から放出された液滴を含む湿り蒸気の流れを上向きから水平寄りに変更するものであり(図4の矢印参照)、各蒸気乾燥器ユニット12に取り付けられている。フード7によって流れる方向が変更された蒸気は、蒸気乾燥器6の入口を形成する多孔板8の孔内に導入される。
【0024】
波板9は、凸部と凹部が交互に表れる波形状をした薄い板部材である。蒸気乾燥器ユニット12内には、複数の波板9が所定の間隔を介して収納されており、各波板9の間には蒸気流路10(図5参照)が形成されている。各波板9には、蒸気流通方向に沿って所定の間隔で複数の液滴捕集板15が溶接されている(図5参照)。蒸気中に含まれる液滴は、この複数の液滴捕集板15及び波板9により捕集される。図5に示した例では、液滴捕集板15は、波板9において凹部となる部分にそれぞれ溶接されている。多孔板8を通過した蒸気は、このように構成された各波板9の間に形成される蒸気流路10を図4中に点線で示した矢印(蒸気流れ)に沿ってほぼ水平に通過する。このように蒸気流路10を蒸気が通過すると、蒸気中に残存する液滴は蒸気流路10の途中で液膜となって液滴捕集板15及び波板9に捕獲される。これにより蒸気の湿分が低下する。
【0025】
また、各波板9の同じ位置には、スペーサロッド13を貫通させるための孔が設けられている。図4に示した例では、波板9の四隅に近い4箇所に加えて、高さ方向の略中央の2箇所に孔が設けられている。また、図5に示すように、複数の波板9のうち側板14と隣接する2枚の波板9の両端はL字型に加工されており、当該L字型の部分を介して側板14に溶接されている。
【0026】
スペーサロッド13は複数の波板9貫通してこれらを支持するものであり、図5に示すように、スペーサロッド13には波板9とスペーサ16が交互に通されている。図4では、各波板9には合計6本のスペーサロッドが貫通されており、各スペーサロッド13の両端はそれぞれ側板14に固定されている。スペーサロッド13と側板14を固定する手段としては、スペーサロッド13の端部を側板14とネジ止めし、さらにスペーサロッド13の端面を側板14と溶接するものがある。
【0027】
各スペーサロッド13に通された各スペーサ16は、それぞれ同じ長さで形成されている。このスペーサ13により、隣接する波板9の間に形成される蒸気流路10の幅は一定に保持される。しかしながら、各スペーサ16を一定の長さで形成しようとしても、製造時の誤差により各スペーサ16にはどうしても微小な長さのばらつきが生じてしまう。そのため、複数のスペーサ16を用いて蒸気乾燥器ユニット12を組み立てると、スペーサ1個当たりの微小なばらつきが累積して、蒸気乾燥器ユニット12の幅にばらつきが生じてしまうことがある。この点を鑑みて、本実施の形態では、蒸気乾燥器6を以下のように構成した。
【0028】
図6は本発明の第1の実施の形態に係る蒸気乾燥器におけるスペーサロッド付近の拡大図である。この図に示すスペーサロッド13には、波板9Aとスペーサ16Aが交互に通されている。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明は省略し、特に説明しない部分については図1〜図5を用いて説明した蒸気乾燥器と同じとする(後の実施の形態も同様に扱う)。
【0029】
波板9Aにおいてスペーサロッド13が貫通する孔の内周には、スペーサロッド13の直径よりも大きい径を有する雌ネジ部92が設けられている。この図に示した例では、波板9Aにおいてスペーサロッド13が貫通する孔は、波板9Aに液滴捕集板15が取り付けられた部分に設けられているため、雌ネジ部92の長さ21は波板9Aの板厚と液滴捕集板15の板厚の合計となっている。
【0030】
スペーサロッド13に通された複数のスペーサ16Aはそれぞれ同じ長さであり、各スペーサ16Aの軸方向における一方側の端部には、波板9Aに設けた雌ネジ部92と係合する雄ネジ部91が設けられている。雄ネジ部91の長さは雌ネジ部92の長さ以上に確保されており、雌ネジ部92の長さ分だけスペーサ16Aを波板9Aにねじ込むことが可能になっている。すなわち、スペーサ16Aは、スペーサロッド13の軸方向に雌ネジ部92の長さ21分だけ移動することができ、これにより隣接する波板9Aの間隔をネジ機構によって調節可能に保持するスペーサ装置として機能する。
【0031】
例えば、図6に示すように、スペーサ16Aにおける雄ネジ部91側の端部が雌ネジ部92の中央(すなわち、波板9Aと液滴捕集板15の合計板厚の1/2位置)に位置する状態を基準として各波板9Aの間隔(蒸気流路10の幅)を決定したとする。このときには、蒸気乾燥器ユニットを組み立てた後においても、各波板9Aの間隔を当該基準値から最大で雌ネジ部92の長さ21の1/2分だけ増減(調節)することができる。
【0032】
すなわち、上記のような波板9Aとスペーサ16Aを備える本実施の形態の蒸気乾燥器によれば、各スペーサ16Aの長さの微小なばらつきやスペーサロッド13用の孔を波板9Aに設ける際に形成される微小な凹凸の影響によって各波板9Aの間隔が不均一になっても、波板9Aに対するスペーサ16Aのねじ込み量を変更すれば、各波板9Aの間隔を調節することができる。また、蒸気乾燥器6への組込み性を優先して蒸気乾燥器ユニット12の組立前にその幅を決定しておいても、波板9Aに対するスペーサ16Aのねじ込み量を調整することにより、蒸気乾燥器ユニット12の幅を組立前に決定しておいた幅に調節しつつ各蒸気流路10の幅を一定に調整することがユニット12の組立後においても可能となる。したがって、本実施の形態によれば、蒸気中の液滴を捕集する機能を損なうことなく、蒸気乾燥器ユニット12の組込み性を確保しながらも、隣り合う波板9Aの間隔を一定に保持することができる。
【0033】
図7は本発明の第2の実施の形態に係る蒸気乾燥器におけるスペーサロッド付近の拡大図である。この図に示すスペーサロッド13には、波板9と2つのスペーサ31a,31bが交互に通されている。
【0034】
図7中において2枚の波板9の間に挿入された2つのスペーサのうち右側に位置するスペーサ31aには、その軸方向における左側端部に雄ネジ部41が設けられている。雄ネジ部41はスペーサ31aの外周面に加工されている。また、図7中において左側に位置するスペーサ31bには、その軸方向における右側端部に、スペーサ31aの雄ネジ部41と係合する雌ネジ部42が設けられている。雌ネジ部42は、スペーサロッド13が通るスペーサ31bの内周面に加工されている。
【0035】
図7に示した例では、雄ネジ部41の長さは雌ネジ部42の長さ22と同一に設定されており、その長さ分だけスペーサ31aをスペーサ31bにねじ込むことが可能になっている。すなわち、2つのスペーサ31a,31bを係合して形成される組立体の長さはスペーサ31aのねじ込み量を調節することで変更することができ、これにより当該組立体は隣接する波板9の間隔をネジ機構によって調節可能に保持するスペーサ装置として機能する。なお、雄ネジ部41と雌ネジ部42の長さはそれぞれ所望の値に設定することが可能である。このように所望の値にした場合には、より短いネジ部を有する一方のスペーサにおける当該ネジ部の長さ分だけ波板9の間隔を調節することができる。
【0036】
ここで、例えば、図7に示すように、スペーサ31aにおける雄ネジ部41側の端部が雌ネジ部42の中央に位置する状態を基準として各波板9の間隔(蒸気流路10の幅)を決定したとする。このときには、蒸気乾燥器ユニットを組み立てた後においても、各波板9の間隔を当該基準値から最大で雌ネジ部42(雄ネジ部41)の長さ22の1/2分だけ増減(調節)することができる。
【0037】
したがって、本実施の形態によっても、蒸気乾燥器ユニット12の組立後においても隣接する波板9の間隔を調節することができるので、蒸気中の液滴を捕集する機能を損なうことなく、蒸気乾燥器ユニット12の組込み性を確保しながらも、隣り合う波板9の間隔を一定に保持することができる。なお、本実施の形態において調整可能な波板9の間隔は、第1の実施の形態のように波板9Aと液滴捕集板15の板厚の合計に左右されない。そのため、第1の実施の形態の場合よりも柔軟に波板9の間隔を調整することができる。
【0038】
図8は本発明の第3の実施の形態に係る蒸気乾燥器におけるスペーサロッド付近の拡大図である。この図に示すスペーサロッド13Aには、その外周に雄ネジ部51が形成されており、波板9と2つのスペーサ32a,32bが交互に通されている。
【0039】
2枚の波板9の間に挿入された2つのスペーサ32a,32bには、その内周の全てにスペーサロッド13Aの雄ネジ部51と係合する雌ネジ部52がそれぞれ形成されており、各スペーサ32a,32bをスペーサロッド13Aの周りに回転させると、各スペーサ32a,32bをスペーサロッド13A上で移動させることができる。図8中において2枚の波板9の間に挿入された2つのスペーサのうち右側に位置するスペーサ32aは、その軸方向における右側端面で波板9と接触しており、右側から当該波板9に接触するスペーサ32bとともに当該波板9を挟み込んで保持している。また、図8中において左側に位置するスペーサ32bは、その軸方向における左側端面で波板9と接触しており、左側から当該波板9に接触するスペーサ32aとともに当該波板9を挟み込んで保持している。
【0040】
すなわち、本実施の形態における各波板9の間隔は、2枚の波板9の間に挿入された2つのスペーサ32a,32bのうちスペーサ32aの右側端面からスペーサ32bの左側端面までの距離で規定されており、各スペーサ32a,32bを回転させてスペーサロッド13A上の位置を変更することで各波板9の間隔を調節することができる。
【0041】
したがって、本実施の形態によっても、蒸気乾燥器ユニット12の組立後においても隣接する波板9の間隔を調節することができるので、蒸気中の液滴を捕集する機能を損なうことなく、蒸気乾燥器ユニット12の組込み性を確保しながらも、隣り合う波板9の間隔を一定に保持することができる。なお、図8では、スペーサ32a,32bを6角ナットとして表記したが、内周に雌ネジ部52が形成されているものであれば、外観は他の形状としても良い。ただし、図8に示した6角ナットのような汎用品を用いれば、蒸気乾燥器を製造する際の部品の調達性を向上させることができる。また、本実施の形態では波板9を利用したが、貫通孔の内周に雌ネジ部92を有する波板9A(第1の実施の形態のもの)を利用しても良い。
【符号の説明】
【0042】
6 蒸気乾燥器
9 波板
9A 波板(雌ネジ部有り)
12 蒸気乾燥器ユニット
13 スペーサロッド
16 スペーサ
16A スペーサ
31a,31b スペーサ
32a,32b スペーサ
41 雄ネジ部
42 雌ネジ部
51 雄ネジ部
52 雌ネジ部
91 雄ネジ部
92 雌ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を捕集する複数枚の液滴捕集板が取り付けられた複数の波板と、
前記複数の波板を貫通するスペーサロッドと、
前記複数の波板のうち隣接する波板の間に位置するように前記スペーサロッドに通され、前記隣接する波板の間隔をネジ機構によって調節可能に保持するスペーサ装置とを備えることを特徴とする沸騰水型原子炉の蒸気乾燥器。
【請求項2】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉の蒸気乾燥器において、
前記波板において前記スペーサロッドが貫通する孔の内周には雌ネジ部が形成されており、
前記スペーサ装置は、前記スペーサロッドに通されたスペーサであり、
当該スペーサの軸方向における一方側の端部には、前記雌ネジ部と係合する雄ネジ部が設けられていることを特徴とする沸騰水型原子炉の蒸気乾燥器。
【請求項3】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉の蒸気乾燥器において、
前記スペーサ装置は、前記スペーサロッドに通された2つのスペーサであり、
当該2つのスペーサの一方は軸方向における一方側の端部に雄ネジ部を備えており、
前記2つのスペーサの他方は軸方向における他方側の端部に前記雄ネジ部と係合する雌ネジ部を備えることを特徴とする沸騰水型原子炉の蒸気乾燥器。
【請求項4】
請求項1に記載の沸騰水型原子炉の蒸気乾燥器において、
前記スペーサロッドの外周には、雄ネジ部が形成されており、
前記スペーサ装置は、前記スペーサロッドに通された2つのスペーサであり、
当該2つのスペーサの内周には、前記スペーサロッドの雄ネジ部と係合する雌ネジ部がそれぞれ形成されていることを特徴とする沸騰水型原子炉の蒸気乾燥器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−13645(P2012−13645A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152924(P2010−152924)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)