説明

油ポット

【課題】浄油器などとして使用される油ポットにおいては、注ぎ口から油を排出した後に、注ぎ口の裏側に回り込んだ油が垂れ落ちたり流れ落ちたりする、という不具合がある。
【解決手段】開口部11を有し、油を貯めるための内部空間12を有する、本体容器1と、開口部11に嵌め込まれた環状体であり、注ぎ口21を有する、注ぎ口用枠体2と、を備えた浄油器10において、枠体2が、下部枠部25と上部枠部26とを有しており、更に、枠体2が、注ぎ口21の裏側211に回り込んだ油を内部空間12へ戻すための、戻し流路8を、有しており、戻し流路8が、溝からなっており、その溝が、注ぎ口21の直下の位置から、上部枠部26の外周面261に沿って円周方向両側に向けて漸次下降しながら延び、更に、下部枠部25の外周面251に沿って円周方向両側に向けて漸次下降しながら延びて、内部空間12に通じるように、形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば浄油器として使用される油ポットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
浄油器などとして使用される油ポットにおいては、注ぎ口から油を排出した後に、注ぎ口の裏側に回り込んだ油が垂れ落ちたり流れ落ちたりする、という不具合があった。そこで、そのような不具合を解消するための工夫を備えた油ポットが、種々提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−143253号
【特許文献2】実用新案登録3044665号
【特許文献3】特開平10−295565号公報
【特許文献4】実用新案登録3022964号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、使用者は、更に簡便に且つ確実に、油の垂れ落ちなどを防止できる、油ポットを、望んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、平面視円形の且つ上開きの開口部を有し、油を貯めるための内部空間を有する、本体容器と、上記開口部に着脱自在に嵌め込まれた環状体であり、半径方向外方向に突出した注ぎ口を有する、注ぎ口用枠体と、を備えた油ポットにおいて、上記枠体が、上記開口部に内嵌した下部枠部と、上記開口部から露出しており、上記注ぎ口を有する、上部枠部と、を有しており、更に、上記枠体が、上記注ぎ口の裏側に回り込んだ油を上記内部空間へ戻すための、戻し流路を、有しており、上記戻し流路が、溝からなっており、その溝が、上記注ぎ口の直下の位置から、上部枠部の外周面に沿って円周方向両側に向けて漸次下降しながら延び、更に、下部枠部の外周面に沿って円周方向両側に向けて漸次下降しながら延びて、上記内部空間に通じるように、形成されている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、注ぎ口の裏側へ回り込んだ油を、戻し流路を介して内部空間へ戻すことができるので、油が垂れ落ちたり本体容器の外周面に沿って流れ落ちたりするのを、防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の油ポットの一例である浄油器を示す前方斜視図である。
【図2】上記浄油器の後方斜視図である。
【図3】上記浄油器の分解側面図である。
【図4】注ぎ口用枠体の平面図である。
【図5】図4のV矢視図である。
【図6】図4のVI矢視図である。
【図7】上記浄油器の作用を示す側面部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の油ポットの一例である浄油器を示す前方斜視図である。図2は、当該浄油器の後方斜視図である。図3は、当該浄油器の分解側面図である。この浄油器10は、外容器である本体容器1と、注ぎ口用枠体2と、内容器3と、メッシュ皿4と、蓋5と、からなっている。
【0009】
本体容器1は、例えばステンレス製の、有底円筒体である。すなわち、平面視円形の且つ上開きの、開口部11を、有しており、また、油を貯めるための内部空間12を、有している。本体容器1の側面の一部には、把持部13が設けられている。
【0010】
図4は、注ぎ口用枠体2の平面図である。枠体2は、開口部11に着脱自在に嵌め込まれる環状体であり、例えばポリスチレン樹脂製である。枠体2には、半径方向外方向に突出した注ぎ口21が形成されている。また、枠体2において、注ぎ口21に対向した箇所には、位置決め用凸部22が半径方向外方向に突出して形成されている。枠体2は、開口部11に嵌め込まれた際に、開口部11に内嵌する下部枠部25と、開口部11から露出する上部枠部26と、により構成されている。注ぎ口21及び凸部22は、上部枠部26に形成されている。
【0011】
内容器3は、大円筒体部31と小円筒体部32とが連通して構成されており、例えばステンレス製である。小円筒体部32は、活性炭フィルタ321によって塞がれている。大円筒体部31の開口縁311の一部には、半径方向外方向に延びた把持片33が設けられている。
【0012】
メッシュ皿4は、例えばステンレス製の、メッシュネットからなっている。メッシュ皿4の上縁411の一部には、半径方向外方向に延びた把持片41が設けられている。
【0013】
蓋5は、枠体2を塞ぐ大きさの円板である。蓋5の周縁の一部には、半径方向外方向に延びた把持部51が設けられている。
【0014】
なお、本体容器1の把持部13の上面131には、位置決め用凸部22、把持片33、及び把持片41が嵌り込むための、凹部132が、形成されている。また、凸部22の上面には、把持片33及び把持片41が嵌り込むための、溝部221(図4)が、形成されている。溝部221は、凸部22が凹部132に嵌め込まれると、凹部132と連通するように、形成されている。また、把持部51は、把持部13の上面131にぴったりと合って把持部13と共に一体型の取っ手を形成する形態を、有している。
【0015】
浄油器10は、次のようにして組み立てられている。すなわち、まず、枠体2が、本体容器1の開口部11に、嵌め込まれる。このとき、凸部22は、凹部132に嵌め込まれる。これにより、注ぎ口21が、把持部13の反対側に位置決めされる。次に、内容器3が、枠体2を貫通して、本体容器1の内部空間12に入れられる。このとき、把持片33は、溝部221及び凹部132に嵌め込まれる。次に、メッシュ皿4が、内容器3の開口縁311上に載せられる。このとき、把持片41は、溝部221及び凹部132に嵌め込まれる。そして、蓋5が、枠体2を塞ぐように、枠体2上に載せられる。このとき、把持部51は、把持部13の上面131の上に重ねられる。
【0016】
そして、上記構成の浄油器10において、枠体2は、注ぎ口21の裏側211に回り込んだ油を内部空間12へ戻すための、戻し流路8を、有している。図5は、図4のV矢視図である。図6は、図4のVI矢視図である。戻し流路8は、溝からなっている。その溝は、注ぎ口21の直下の位置Pから、上部枠部26の外周面261に沿って円周方向(矢印X方向)両側に向けて漸次下降しながら延びるように形成された、上溝部81と、更に、下部枠部25の外周面251に沿って円周方向両側に向けて漸次下降しながら延びて、内部空間12に通じるように、形成された、下溝部82と、からなっている。上溝部81は、位置Pから、円周方向両側に向けて、緩やかに下降している。上溝部81の溝幅W1は、全体に渡って、略均一であり、下側部分が下部枠部25の外周面251に存在するような大きさを有している。下溝部82は、上溝部81の円周方向両端から、円周方向両側に向けて急激に下降している。下溝部82の溝幅W2は、円周方向両側に向けて漸次幅狭となっており、内部空間12への開口821が最も狭くなっている。両側の開口821間の距離L(図4)は、本体容器1の開口部11の全円周距離の1/3〜1/2に設定されている。
【0017】
上記構成の浄油器10は、次のように使用する。すなわち、まず、蓋5を開ける。次に、メッシュ皿4の上方から、ゆっくりと、使用済みの油を注ぎ込む。注ぎ込まれた油は、メッシュ皿4によって大きな不要物が取り除かれ、次いで、活性炭フィルタ321によって小さな不要物が取り除かれることによって、清浄化されて、内部空間12に貯められる。この後は、清浄化された油を、そのまま保管してもよいが、次の用途に供してもよい。保管する場合は、蓋5を閉じる。
【0018】
清浄化された油を次の用途に供する場合は、蓋5、メッシュ皿4、及び内容器3を、この順に、本体容器1から取り外し、枠体2を備えた本体容器1を傾けて、注ぎ口21から油を排出する。
【0019】
ところで、注ぎ口21から油を排出する際、大部分の油は注ぎ口21から順当に排出されるが、一部の油は注ぎ口21の裏側211へ回り込んでしまう。その状態で、油の排出を止めて、浄油器10を水平台などの上に静置すると、従来においては、注ぎ口21の裏側211へ回り込んだ油が、垂れ落ちたり、本体容器1の外周面に沿って流れ落ちたりしていた。しかしながら、上記構成の浄油器10においては、図7に示されるように、注ぎ口21の裏側211へ回り込んだ油は、戻し流路8を流れて内部空間12へ戻される。
【0020】
すなわち、注ぎ口21の裏側211へ回り込んだ油は、まず、上溝部81内に次第に貯まっていく。上溝部81の溝幅W1は、油が流れ込むのに充分な大きさに設定されているので、上溝部81には油が円滑に流れ込んで貯まっていく。しかも、上溝部81は、位置Pから、円周方向両側に向けて、緩やかに下降しているので、油は、上溝部81に貯まりながら、円周方向両側に向けて流れて行く。下溝部82も円周方向両側に向けて漸次下降しているので、上溝部81内を円周方向両側に向けて流れた油は、更に、下溝部82内を流れて行き、開口821から内部空間12へ流れ落ちる。このとき、下溝部82が急激に下降しているために、油は、勢い良く流れて、内部空間12へ確実に流れ落ちる。しかも、下溝部82の溝幅W2が漸次幅狭となっているために、油の流れは速度を増し、それ故、油は、開口821から勢い良く、内部空間12へ流れ落ちる。
【0021】
したがって、上記構成の浄油器10によれば、注ぎ口21の裏側211へ回り込んだ油を、戻し流路8を介して内部空間12へ戻すことができるので、油が垂れ落ちたり本体容器1の外周面に沿って流れ落ちたりするのを、防止できる。
【0022】
また、上記構成の浄油器10においては、戻し流路8の両側の開口821間の距離Lが、本体容器1の開口部11の全円周距離の1/3〜1/2に設定されているので、注ぎ口21から油を排出するために本体容器1を傾けた際に、内部空間12内の油面が両開口821に到達することは殆ど無い。したがって、上記構成の浄油器10によれば、注ぎ口21から油を排出する際に内部空間12の油が戻し流路8を通って本体容器1の外へ流出するのを、防止できる。
【0023】
仮に、注ぎ口21から油を排出する際に油面が両開口821に到達した場合でも、開口821が非常に幅狭に設定されているので、油は戻し流路8に流入しにくい。したがって、この点からも、上記構成の浄油器10によれば、注ぎ口21から油を排出する際に内部空間12の油が戻し流路8を通って本体容器1の外へ流出するのを、防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の油ポットは、注いだ後に油が垂れ落ちたり流れ落ちたりするのを防止できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0025】
1 本体容器 10 浄油器 11開口部 12 内部空間 2 注ぎ口用枠体 21 注ぎ口 211 裏側 25 下部枠部 26 上部枠部 8 戻し流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視円形の且つ上開きの開口部を有し、油を貯めるための内部空間を有する、本体容器と、
上記開口部に着脱自在に嵌め込まれた環状体であり、半径方向外方向に突出した注ぎ口を有する、注ぎ口用枠体と、
を備えた油ポットにおいて、
上記枠体が、上記開口部に内嵌した下部枠部と、上記開口部から露出しており、上記注ぎ口を有する、上部枠部と、を有しており、
更に、上記枠体が、上記注ぎ口の裏側に回り込んだ油を上記内部空間へ戻すための、戻し流路を、有しており、
上記戻し流路が、溝からなっており、その溝が、上記注ぎ口の直下の位置から、上部枠部の外周面に沿って円周方向両側に向けて漸次下降しながら延び、更に、下部枠部の外周面に沿って円周方向両側に向けて漸次下降しながら延びて、上記内部空間に通じるように、形成されている、
ことを特徴とする、油ポット。
【請求項2】
溝の円周方向両端の間の距離が、上記開口部の全円周距離の1/3〜1/2に設定されている、請求項1記載の油ポット。
【請求項3】
上記溝の円周方向両端部が、円周方向両側に向けて漸次幅狭となるように形成されている、請求項1又は2に記載の油ポット。
【請求項4】
上記溝の円周方向両端部が、円周方向両側に向けて急激に下降しながら延びている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の油ポット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−115422(P2011−115422A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276223(P2009−276223)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000133445)株式会社ダスキン (119)
【Fターム(参考)】