油中水素検知センサ
【課題】油中に存在する溶存水素を簡便に短時間で精度よく検知でき、油を持ち運ぶこと無く、その場で溶存水素ガス濃度測定ができる水素検知センサを提供する。
【解決手段】油中で用いられる水素検知センサであって、水素検知部は、固体電解質2を挟んで一対の電極5が形成され、該水素検知部は耐油性及び耐薬品性を有する絶縁保護膜3によって被覆されている。
【解決手段】油中で用いられる水素検知センサであって、水素検知部は、固体電解質2を挟んで一対の電極5が形成され、該水素検知部は耐油性及び耐薬品性を有する絶縁保護膜3によって被覆されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に油中に含まれる水素を検知することができる水素検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に代表される水素エネルギーシステムを構成するうえで、水素を精度良く検知する水素検知センサの必要性は極めて高い。
【0003】
このような水素検知センサにおいて、プロトン導電体膜を使用した水素検知センサが知られており、プロトン導電体膜としてナフィオン膜のような固体高分子膜を用いたものや、光硬化性樹脂等の樹脂とイオン液体を混合した高分子電解質膜を用いたものが知られている(例えば、特許文献1〜5)。これらの特許文献に記載される水素検知センサは、酸素非存在下での気相中での水素ガスを検知部に直接接触させることより水素を検知するものである。
【0004】
前記水素ガスと検知部を直接接触させることによって水素を検知する水素ガス検知センサに加えて、近年、水素エネルギーシステム等に使用される、油中に溶存する水素を検知可能なセンサが望まれている。
【0005】
油中の溶存水素ガス濃度の測定は、コンプレッサー等の使用機器の異常を把握する目安として、工場等では定期的に油中の溶存水素ガス濃度測定を行っている。しかしながら、現状の油中の水素ガス濃度測定は、油中の水素ガスを抽出した後に、ガスクロマトグラフィーで測定するため、油を持ち出さなければならない。また分析機器も例えば、特許文献6の様に、複雑な装置が必要である。このため、現状の油中の溶存水素ガスの測定は、測定時間、労力、測定技術等の問題を抱えている。
【0006】
このように、油中のような特殊な環境下での溶存水素を精度よく簡便に検知できるセンサは、知られておらず、未だ開発の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開番号2008/093813号パンフレット
【特許文献2】国際公開番号2009/011368号パンフレット
【特許文献3】特開2009−300224号公報
【特許文献4】特開2010−197074号公報
【特許文献5】特開2010−197075号公報
【特許文献6】特開2010−25899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、油中に存在する溶存水素を簡便に短時間で精度よく検知でき、油を持ち運ぶこと無く、その場で溶存水素ガス濃度測定ができる水素検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、水素検知センサにおいて、耐油性及び耐薬品性を有する、水素を検知する検知部を用いることによって、耐油性を向上させることができ、油中に含まれる溶存水素を精度よく検出することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の油中用水素検知センサを提供する。
【0011】
項1.固体電解質を挟んで一対の電極が形成された水素検知部であって、
前記水素検知部が耐油性及び耐薬品性を有する、
油中で用いられる水素検知センサ。
【0012】
項2.水素検知部が、さらに絶縁保護膜によって被膜された、項1に記載の水素検知センサ。
【0013】
項3.固体電解質が、i)固体高分子電解質、ii)イオン液体と樹脂の混合物、及びiii)固体無機電解質と樹脂の混合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である項1又は2に記載の水素検知センサ。
【0014】
項4.樹脂が、耐熱性樹脂である項3に記載の水素検知センサ。
【0015】
項5.樹脂が、フッ素樹脂である項3又は4に記載の水素検知センサ。
【0016】
項6.一対の電極の少なくとも一側面に触媒層が形成されている項1〜5のいずれかに記載の水素検知センサ。
【0017】
項7.絶縁保護膜が、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素樹脂、及びシリコーン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である項2〜6のいずれかに記載の水素検知センサ。
【0018】
以下、本発明の油中で用いられる水素検知センサについて、詳細に説明する。
【0019】
本発明の油中で用いられる水素検知センサは、固体電解質を挟んで一対の電極が形成された耐油性及び耐薬品性を有する水素検知部を有する。
【0020】
固体電解質としては、i)固体高分子電解質、ii)イオン液体と樹脂の混合物、又はiii)固体無機電解質と樹脂の混合物等が挙げられる。
【0021】
i)固体高分子電解質
固体高分子電解質としては、例えば、高いプロトン導電性を有するパーフルオロスルホン酸系重合体、パーフルオロカルボン酸系重合体等のパーフルオロ系重合体や、スルホン化されたスチレン−エチレンランダム共重合体(Poly(styrene-ran-ethylene) sulfonated)等の部分的にスルホン化されたスチレン−オレフィン共重合体(partially sulfonated styrene-olefin copolymer)等が挙げられる。これらの固体高分子電解質は、例えば、ナフィオン(デュポン社登録商標:NAFION)、アシプレックス(旭化成株式会社登録商標:ACIPLEX)等として好適に入手できる。
【0022】
さらに、プロトン伝導体として固体高分子電解質を用いる場合に、出力の安定性を確保することができるという点から、導電性粒子等を固体高分子電解質中に分散させることがより好ましい。固体高分子電解質に分散される導電性粒子としては、例えば、導電性樹脂、カーボン素材、金属化合物、金属酸化物等が挙げられる。
【0023】
前記カーボン素材の具体例としては、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも記す。)、フラーレン、グラファイト、ナノカーボン、カーボンブラック、ナノダイヤモンド、ナノポーラスカーボン等が挙げられる。また、カーボンブラックの具体例としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、グラフトカーボン等が例示できる。いずれの場合にも優れた安定性が示される。これらのカーボン素材は、単独で用いてもよく、また2種以上の複数で用いてもよい。
【0024】
ii)イオン液体と樹脂の混合物
イオン液体と樹脂の混合物におけるイオン液体としては、例えば、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、脂肪族アンモニウム塩、脂環式アンモニウム塩、脂肪族ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0025】
イミダゾリウム塩の具体例としては、式(1):
【0026】
【化1】
【0027】
で表されるものが挙げられる。
【0028】
式(1)中、R1a〜R5aは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
【0029】
また、式(1)中のX−としては、例えば、ハロゲンイオン、ホスホン酸イオン、ホウ酸イオン、トリフラートアニオン、イミドイオン等が挙げられる。式(1)中のX−におけるハロゲンイオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が挙げられ、ホスホン酸イオンを形成するホスホン酸としては、例えば、ジメチルホスホン酸、ジエチルホスホン酸等が挙げられ、イミドイオンを形成するイミドとしては、例えば、ビスフルオロスルホニルイミド等が挙げられる。
【0030】
式(1)の具体的としては、例えば、1−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチルイミダゾリウムイオン、1−n−プロピルイミダゾリウムイオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−n−プロピルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジメチル−n−プロピルイミダゾリウムイオン、1,3,4−トリメチルイミダゾリウムイオン、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウムイオン等のイミダゾリウムイオンと、前記式(1)におけるX−との塩が挙げられる。
【0031】
ピリジニウム塩の具体例としては、式(2):
【0032】
【化2】
【0033】
で表されるものが挙げられる。
【0034】
式(2)中、R1b〜R6bは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0035】
また、式(2)中のX−としては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0036】
式(2)の具体的としては、例えば、1−ブチル−3−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−ピリジニウムイオン、1−エチル−3−メチルピリジニウムイオン、1−エチルピリジニウムイオン等のピリジニウムイオンと、前記式(1)におけるX−との塩が挙げられる。
【0037】
アンモニウム塩の具体例としては、式(3):
【0038】
【化3】
【0039】
で表されるものが挙げられる。
【0040】
式(3)中、R1c〜R4cは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0041】
また、式(3)中のX−としては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0042】
式(3)の具体的としては、例えば、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、エチルジメチルプロピルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオンと、前記式(1)におけるX−との塩が挙げられる。
【0043】
ホスホニウム塩の具体例としては、式(4):
【0044】
【化4】
【0045】
で表されるものが挙げられる。
【0046】
式(4)中、R1d〜R4dは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0047】
また、式(4)中のX−としては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0048】
式(4)の具体的としては、例えば、シクロヘキシルトリメチルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、トリブチルメチルホスホニウムイオン等のホスホニウムイオンと、前記式(1)におけるX−との塩が挙げられる。
【0049】
ピロリジニウム塩の具体例としては、式(5):
【0050】
【化5】
【0051】
で表されるものが挙げられる。
【0052】
式(5)中、R1e及びR2eは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
【0053】
また、式(5)中、X−は、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0054】
式(5)の具体的としては、例えば、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム、1−オクチル−1−メチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム等のピロリジニウムイオンと、前記式(1)におけるX−との塩が挙げられる。
【0055】
前記ii)のイオン液体と樹脂の混合物における樹脂としては、例えば、耐熱性樹脂、光硬化樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0056】
耐熱性樹脂の具体例としては、ビニリデンフルオライド(VdF)単位、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位、テトラフルオロエチレン(TFE)単位、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)単位、フッ化ビニル(VF)単位、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位等を1種又は2種以上有するフッ素樹脂;ナフィオンのようなモノマー単位中にスルホン酸基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基等の極性基を有するフッ素樹脂;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、環状オレフィン、ポリエチレンスルフォネート、ポリアミドイミド、ポリブチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチック;ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等のスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。
【0057】
前記フッ素樹脂を構成するPAVE単位のアルキル基としては、炭素数1〜6、好ましくは1〜3であり、具体的には、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)単位、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)単位、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)単位等が挙げられる。
【0058】
これらの耐熱性樹脂の中で、耐薬品性、耐溶剤性、撥水性等の観点から、フッ素樹脂がより好ましく、その具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、VdF−HFP共重合体、TFE−PAVE共重合体、TFE−HFP共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン(Et−TFE)共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。これらの中で、耐湿熱性と成形性において良好であるという点から、PVdF、VdF−HFP共重合体がさらに好ましい。
【0059】
樹脂がフッ素樹脂である場合のフッ素樹脂の融点としては、フッ素樹脂の種類にもよるが、固体電解質膜の耐熱安定性が向上し、熱変形等による電極との接触不良等が発生しない点から、140℃以上が好ましく、140〜350℃程度が好ましく、160〜250℃程度がさらに好ましい。また、フッ素樹脂のガラス転移点は、ガラス転移温度が低いほど、低温でも固体電解質膜の機械的物性や電気的物性が維持されやすく、センサの低温動作性が良くなる点で良好であるという観点から、100℃以下が好ましく、−50℃以下がより好ましい。なお、フッ素樹脂及びガラス転移温度は、ISO3146に準拠してDSC測定法により測定することが可能である。
【0060】
光硬化樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、不飽和ポリエステル樹脂、ジアゾ樹脂、アジド樹脂等が挙げられる。
【0061】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、尿素樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、アリル樹脂等が挙げられる。
【0062】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の汎用樹脂が挙げられる。
【0063】
前記の樹脂は、単独で用いてもよく、また、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
【0064】
前記イオン液体の含有量は、水素センサの出力電圧が増加して感度が向上するために良好であるという点から、樹脂100重量部に対して、25重量部以上が好ましく、50重量部以上がより好ましく、100重量部以上がさらに好ましい。また、プロトン導電性電解質の含有量は、樹脂成分が相対的に少なくならず、電解質膜の成膜性が良好であるという点から、500重量部以下が好ましく、300重量部以下がより好ましく、200重量部以下がさらに好ましい。
【0065】
iii)固体無機電解質と樹脂の混合物
iii)における固体無機電解質と樹脂の混合物における樹脂としては、前記ii)の混合物に含まれる樹脂と同様のものが挙げられる。
【0066】
iii)における固体無機電解質と樹脂の混合物における固体無機電解質としては、種々のものがあるが、常温でプロトン導電性を発現することができるという観点から、例えば、ホスホシリケート、尿素シリケート、ウラニルリン酸水和物、モリブドリン酸水和物等が好ましい。
【0067】
前記固体無機電解質の含有量は、水素センサの出力電圧が増加し感度が向上するため良好であるという点から、樹脂100重量部に対して、25重量部以上が好ましく、50重量部以上がより好ましく、100重量部以上がさらに好ましい。また、固体無機電解質の含有量は、樹脂成分が相対的に少なくならず、固体電解質膜の成膜性が良好であるという点から、500重量部以下が好ましく、300重量部以下がより好ましく、200重量部以下がさらに好ましい。
【0068】
また、水素検知センサが、後述する形態2に示される積層構造を有する水素検知センサである場合には、固体電解質の膜を自立膜とするため、また、成膜性や膜の強度を付与するために、固体電解質中に無機層状化合物等をさらに含有させてもよい。
【0069】
無機層状化合物としては、ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトや有機変性モンモリロナイト、スメクタイト等が挙げられる。
【0070】
無機層状化合物の含有量は、膜の補強効果や溶液の増粘効果が十分に得られるという点から、i)における固体高分子電解質、若しくはii)又はii)における樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、2重量部以上がさらに好ましい。また、無機層状化合物の含有量は、樹脂と配合した際に、溶液が高粘度にならず、成膜性が良好であり、また溶液が短時間でゲル化しにくいという点から、30重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましい。
【0071】
また、本発明の水素検知センサにおける水素検知部は、さらに、絶縁保護膜によって被膜されていてもよい。
【0072】
水素検知部を被膜するための絶縁保護膜としては、検知対象となる油に前記水素検知部が浸漬されるため、水素検知部に密着できる水素透過性の撥水性樹脂を用いる。このような絶縁被覆膜に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン系樹脂等及びそれらの紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0073】
より具体的には、アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等が挙げられ、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体等が挙げられ、シリコーン系樹脂としては、置換基としてポリエーテル、エポキシ、アミン類、カルボキシル基、アラルキル基、メチル基、フェニル基等を含むシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0074】
本発明の油中で用いられる水素検知センサの構成は、例えば、以下の形態1に示される基板型の構造や、形態2に示される積層型の構造を有するもの等が例示される。
【0075】
形態1で用いられる基板としては、その上面に成膜される固体電解質を安定に保持できるものであれば特に限定されないが、例えば、ガラス、セラミック、シリコン等の無機材料を用いた基板、樹脂材料等が挙げられる。
【0076】
基板を構成する樹脂材料の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、環状オレフィン、ポリエチレンスルフォネート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ウレタン、アクリル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE、FEP、PVDF等)等が挙げられる。
【0077】
形態1の基板を有する構造としては、図1に示す断面図のような構成を有する。図1に示すように、形態1の水素検知センサは、基板1上に、一対の電極を載せ、その電極を覆うように固体電解質2が被覆された検知部を有している。当該検知部は、さらに絶縁保護膜3で被膜された構成をとっていてもよい。
【0078】
水素検知部を絶縁保護膜で被膜する場合において、絶縁保護膜3として紫外線硬化樹脂や、熱硬化性樹脂を用いる場合には、基板1上に形成された水素検知部に絶縁保護膜3を形成する材料樹脂を塗布し、硬化処理することにより絶縁被覆膜3が形成される。絶縁保護膜3として熱可塑性樹脂を用いる場合には、基板1上に形成された水素検知部に熱溶融した材料樹脂を塗布して硬化させる、フィルム状の材料樹脂を被覆した後に当該フィルムを熱融着させる、又は基板1上に形成された水素検知部に、粘着剤や粘着シートを介して該材料樹脂の熱溶融押出成形フィルムを貼付させることにより絶縁被覆膜3が形成される。
【0079】
このような絶縁被覆層3により、水素検知部が油中に浸漬された場合にも、水素検知部が直接油に触れることがなく、油による劣化を防ぐことができる。
【0080】
電極は、一方は水素をプロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4であり、もう一方は、触媒層として機能しない電極5である。このような構成をとることにより、水素6が固体電解質の層を介して触媒を兼ねた電極4においてプロトンと電子に分解され、この水素分解反応の起電力により、触媒を兼ねた電極4ともう一方の電極5との間の電位差が生じる。ネルンストの式より水素分解反応の起電力は水素濃度に依存しているので、この電位差を測定することによって、水素6の濃度検知も可能となる。
【0081】
水素をプロトンに反応させるための触媒を兼ねた電極4として用いられる材料は、水素をプロトンに反応させる機能を有するものであれば、特に限定されないが、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、イットリウム(Y)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ジルコニア、希土類金属等の金属又はその合金;モリブデンカーバイド(Mo2C)、タングステンカーバイド(WC)等の炭化金属;酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコン等の遷移金属酸化物、鉄やコバルト等の金属ポルフィリン及びフタロシアニン等の遷移金属錯体等を用いることができる。その他に、N,N’−ビス(サリチリデン)エチレン−ジアミノ−金属(金属=Ni,Fe,V等)、N,N’−モノ−8−キノリル−σ−フェニレンジアミノ−金属(金属=Ni,Fe,V等)等の有機金属触媒;ピロロピロール赤色顔料、ジピリジル誘導体等の有機化合物が挙げられる。これらの中で、触媒性能と化学的安定性の点から、白金電極、モリブデンカーバイド(Mo2C)が好ましい。
【0082】
形態1の水素検知センサにおける触媒を兼ねた電極4の厚さとしては、触媒反応が十分に進み、良好な出力信号が得られるという点から、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。また、触媒材料が貴金属であり高価なためコストの観点から、10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。
【0083】
電極5としては、電極4のような触媒能を有さないものであれば特に限定されないが、例えば、カーボン電極、ステンレス鋼等が挙げられ、これらの中で、耐腐食性を有する点から、カーボン電極が好ましい。
【0084】
電極5の厚さとしては、印刷やコーティングで塗布成膜しやすい点から、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、その上に固体電解質膜を塗布成膜しやすい点から、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0085】
固体電解質2の膜厚は、充分なプロトン導電が得られ、センサの出力電圧が小さくならず、感度が良好となるという点から、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。また、成膜時に膜の収縮応力による膜の基板からの剥離が生じにくくなるという点から、2000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0086】
絶縁保護膜3の厚さとしては、耐油性及び耐薬品性の向上等の観点から、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。また、油中に存在する水素の膜の透過性の向上や、応答速度が良好であるという点から、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0087】
前記一対の電極において、電極間の距離(固体電解質2を挟んだ電極4と電極5との距離)としては、固体電解質の抵抗が小さくならず、出力電圧も小さくならない点、及び電極間が短絡しやすくならないという点から、10μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましい。また、固体電解質の抵抗(インピーダンス)が大きくならず、出力信号にノイズが重畳されにくい点から、5000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましい。
【0088】
なお、形態1に示される基板を有する構造の水素検知センサにおいて、固体電解質と基板1の熱膨張率差や剛性の差が大きいために固体電解質が剥離しやすい場合等には、固体電解質との密着性を向上させるために、基板1と電極4又は5との間に、樹脂層7を設けておいてもよい(図2参照)。
【0089】
水素検知センサとして形態1のような構成をとる場合、小型化、軽量化、フレキシブル化が可能であり、センサの用途や設置場所を拡大することができる。また、センサの組立が容易になり生産性を向上させることもできる。
【0090】
形態2の水素検知センサとしては、例えば、図3に示されるものが挙げられる。図3に示すように、形態2の水素検知センサは、固体電解質2を電極で挟む構造を有し、一方に、プロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4を備え、もう一方に、触媒層として機能しない電極5を備える。また、図3に示すように水素検知部を絶縁保護膜3で被膜された構造をとっていてもよい。プロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4は、そのまま電極としても用いてもよく、また、さらに、電極4上に通気性を有する電極8を設けてもよい(図4参照)。さらに、プロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4(通気性電極を設ける場合には通気性を有する電極8)、及び電極5の上に、固体電解質を均一に押圧しながら形状保持して、計測部に確実に電気接続するための通電電極として、さらにSUS電極9を設けてもよい(図4参照)。なお、SUS電極9を設けた際には、油中の水素6を拡散させるための孔10が必要となる。
【0091】
このような構成をとることにより、水素6が吹き込まれると、触媒を兼ねた電極4に接触し、水素が分解されてプロトンと電子が発生する。その際に、水素分解反応の起電力によって、電極5と触媒を兼ねた電極4との間の電位差が生じる。ネルンストの式よりこの起電力は水素濃度に依存しているので、この電位差を測定することによって、水素の濃度検知が可能となる。
【0092】
水素をプロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4としては前記の形態1に示される基板を有する構造のものと同様のものを用いることができる。
【0093】
形態2に示される積層構造を有する水素検知センサにおける水素をプロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4の厚さとしては、触媒反応が十分に進み、良好な出力信号が得られる点から、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。また、水素が通りにくくならず、触媒材料が貴金属であり高価なためにコストを抑えることができるという点から、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
【0094】
形態2に示される積層構造を有する水素検知センサにおける電極5としては、前記の電極4のような触媒能を有さないものであれば特に限定されないが、例えば、カーボン電極、ステンレス鋼等が挙げられ、これらの中で、耐腐食性の観点から、カーボン電極が好ましい。
【0095】
電極5の厚さとしては、自立性があり、組立時に破損しにくいという点から、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。また、膜厚方向の電気抵抗を小さくして抵抗損失を少なくすることができるという点から、2000μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましい。
【0096】
形態2に示される積層構造を有する水素検知センサにおける固体電解質2の膜厚は、膜の抵抗(インピーダンス)が小さくならず、出力電圧も小さくならない点、及び膜を挟んだ電極の変形等による電極の短絡が少ないという点から、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましい。また、膜の抵抗(インピーダンス)が大きくならず、出力電圧にノイズが重畳しにくいという点から、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。
【0097】
形態2に示される積層構造を有する水素検知センサにおける絶縁保護膜3の厚さとしては、耐油性及び耐薬品性の向上等の観点から、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。また、油中に存在する水素の膜の透過性の向上や、応答速度が良好であるという点から、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0098】
なお、前述のように、形態2に示される積層構造を有する水素検知センサにおいて用いられる固体電解質2の層は、成膜性や膜の強度を付与するために、固体電解質中に無機層状化合物等を添加したものを用いてもよい。
【0099】
必要に応じて積層される電極8としては、前記電極5で用いられるものが挙げられるが、水素6を触媒を兼ねた電極4に接触させる必要があるため、通気性を有する必要がある。このため、電極8の形状としては、例えば、多孔質の金属体、金属繊維メッシュや炭素繊維のカーボンクロス、カーボンペーパー等が必要となる。
【0100】
水素検知センサとして形態2に示される積層構造を有する構成をとる場合、固体電解質を電極で挟むという構造上、広い面積の固体電解質を使用すれば、電極や触媒膜との接触面積を大きくして反応量を増やすことができるため、高感度なセンサを作製することが容易になる。また、電解質膜表面にある触媒膜が直接水素と接する構造を有するため、反応が早く、応答速度の速いセンサを製造することができる。
【0101】
前記電極は、いずれもスパッタリング、真空蒸着、電子照射、CVD、PVD、含浸、スプレーコート、スプレー熱分解、練りこみ、吹き付け、ロールやコテによる塗り付け、スクリーン印刷、混錬法、光電解法、コーティング法、ゾルゲル法、ディップ法等の公知の方法により形成することができる。
【0102】
検知対象となる油としては、用途に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、工業用、燃料用、食用等の用途に用いられる油が用いられる。工業用途としては、潤滑油、冷凍油、熱媒体油、絶縁油、切削油、防錆油、モーターオイル等が挙げられる。これらの油の具体例としては、合成油、植物性油、動物性油、シリコーンオイル、石油等が挙げられ、油の具体的な成分としては、例えば、アルキルベンゼン、ポリブデン、アルキルナフタレン、シリコーン、紅花油、ラード等が挙げられる。
【0103】
本発明の水素検知センサは、油中に含まれる水素を検知することができるため、例えば、前記用途の油中の混入水素の検出が可能となる。よって、前記油を使用する機器の異常の検知等の用途に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0104】
本発明の水素検知センサは、水素を検知する検知部が耐油性及び耐薬品性を有するため、油中に含まれる溶存水素を簡便に短時間で精度よく検知できる。また本発明の水素検知センサは、検出対象となる油を持ち運ぶことなく、その場で溶存水素濃度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】形態1の水素検知センサを模式的に表した断面図である。
【図2】形態1の水素検知センサの一態様を模式的に表した断面図である。
【図3】形態2の水素検知センサを模式的に表した断面図である。
【図4】形態2の水素検知センサの一態様を模式的に表した断面図である。
【図5a】実施例1におけるサンプル1のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図5b】実施例1におけるサンプル2のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図5c】実施例1におけるサンプル3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図5d】実施例1におけるサンプル1〜3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、出力電位が安定した時の電圧をプロットしたグラフである。
【図6a】実施例2におけるサンプル1のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図6b】実施例2におけるサンプル2のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図6c】実施例2におけるサンプル3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図6d】実施例2におけるサンプル1〜3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、出力電位が安定した時の電圧をプロットしたグラフである。
【図7】実施例3におけるサンプル1〜3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、出力電位が安定した時の電圧をプロットしたグラフである。
【図8a】実施例4におけるサンプル1のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図8b】実施例4におけるサンプル2のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図8c】実施例4におけるサンプル3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図8d】実施例4におけるサンプル1〜3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、出力電位が安定した時の電圧をプロットしたグラフである。
【図9a】実施例5におけるサンプルaのシリコーンオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図9b】実施例5におけるサンプルbのシリコーンオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図9c】実施例5におけるサンプルcのシリコーンオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0106】
[実施例]
以下、比較例と共に実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0107】
・実施例1(フッ素樹脂(PVDF)、及びホスホシリケートゲル電解質膜を用いた基板型水素検知センサ)
図2に示す断面図のような構成を有する形態1の基板型水素検知センサを製造した。
【0108】
<白金対電極基板の作成>
触媒を兼ねた電極4となる白金を樹脂層7であるポリイミドフィルム(東レデュポン製(厚さ30μm))上にスパッタリング成膜し、1mm幅の短冊状にカットした。カットした短冊状のポリイミドフィルム2本を、基板1として厚さ188μmの白PET(東レ ルミラーU2)フィルム基板の上に、0.5mm間隔に粘着材で貼り付け固定した。
【0109】
<触媒層の形成>
片方のポリイミドフィルム上に有する白金電極を触媒(白金触媒層)層とし、他方の白金電極の上に、電極5であるカーボンペースト((株)アサヒ化学研究所製のFTU−30)を専用溶剤((株)アサヒ化学研究所製の#155)で希釈して塗布し、熱風循環オーブンで100℃、1時間乾燥してカーボン電極を形成した。
【0110】
<固体電解質溶液の調製>
テトラエトキシシラン、リン酸、水、塩酸、及びエタノールを混合し、スターラーで3時間撹拌し、100gのホスホシリケートゾル液を得た。各成分の濃度を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
得られたゾル液を、50℃の恒温槽で2週間乾燥してゲル化し固化させた後に乳鉢で粉砕した。粉砕したゲルを、150℃で3時間熱処理を施した後、さらに乳鉢で粉砕して、ホスホシリケートゲルの粉末を得た。
【0113】
得られたホスホシリケートゲル粉末20gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)80gに溶解してボールミルで分散させ、固形分濃度20重量%のホスホシリケートゲルのスラリー液Aを調製した。
【0114】
前記スラリー液Aとは別にポリフッ化ビニリデン(PVDF)(アルケマ(株)製のカイナー#301F)樹脂20gをDMAc80gに溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液Bを調製した。
【0115】
ホスホシリケートゲルのスラリー液Aを10gと、前記溶液Bを10g攪拌混合し、PVDF樹脂中にホスホシリケートゲル電解質を50重量%含む複合固体電解質溶液を調製した。
【0116】
<水素検知部の作製>
前記複合固体電解質溶液を前記白金対電極基板の中央部に1μL滴下し、膜が2つの電極を覆うように塗布し、熱風循環オーブンで120℃で4時間乾燥して成膜した。
【0117】
<絶縁保護膜の形成>
前記検知部に、熱硬化性シリコーン樹脂(信越化学工業(株)製のKE3495W)を、固体電解質膜が被覆されるように塗布して、熱風循環オーブンで100℃、1時間乾燥して絶縁被覆膜3を成膜した。絶縁被覆層の膜厚は、約100μmであった。
【0118】
以上の手順より、図2に示す対電極基板型の油中用水素検知センサが得られた。
【0119】
<油中での水素検知センサの評価>
1.測定サンプル準備
測定対象となる油として、鉱物油のCastrol製のモーターオイルを使用した。
【0120】
前記鉱物油600mLに、窒素ガスベースの4%水素ガスを0.5L/minの流量でバブリングを行った。この時、バブリング時間を0分(サンプル1)、10分(サンプル2)、60分(サンプル3)の3水準で行い、それぞれ油中に水素を溶解させた。
【0121】
サンプル1〜3の油中から、溶存水素ガスを抽出し、ガスクロマトグラフィーにより水素ガスの濃度測定を行った。その結果サンプル1は0ppm、サンプル2は約500ppm、サンプル3は約1000ppmであることが分かった。
【0122】
2.水素応答性の評価
前記水素ガスをバブリングした油に、水素検知センサを浸漬させ、水素検知センサの白金電極とカーボン電極の間の電位差をデジタルマルチメータ(岩通計測(株)製のVOAC7411)にて測定した。測定結果を図5a(サンプル1)、図5b(サンプル2)、及び図5c(サンプル3)に示す。なお、図5bのサンプル2の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に3000秒間水素検知センサを浸漬させたものであり、図5cのサンプル3の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に2400秒間水素検知センサを浸漬させたものである。また、図5a〜5cのグラフは、測定時間に対する、出力電圧をプロットしたグラフである。
【0123】
図5a〜5cの測定結果より、溶存水素の濃度に応じて、水素検知センサを油中に浸漬している間は、出力電圧が上昇していることから、精度よく水素を検知できていることがわかった。
【0124】
また、図5dは、サンプル1〜3の出力電位が安定した時の電位をプロットしたグラフである。図5dより、油中の溶存水素の濃度の上昇に伴い、出力電圧も上昇することがわかった。
【0125】
・実施例2
<水素検知部の作製>
実施例1の<水素検知部の作製>において、PVDF樹脂を含む溶液B10gとホスホシリケートゲルのスラリー液A15gを攪拌混合して、PVDF樹脂中にホスホシリケートゲル電解質を60重量%含む複合電解質溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、対電極基板型の油中水素検知センサを作製した。
【0126】
<油中での水素検知センサの評価>
前記水素ガスをバブリングした油に、水素検知センサを浸漬させ、実施例1と同様の方法により、水素検知センサの白金電極とカーボン電極の間の電位差を測定した。測定結果を図6a(サンプル1)、図6b(サンプル2)、及び図6c(サンプル3)に示す。なお、図6bのサンプル2の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に3600秒間水素検知センサを浸漬させたものであり、図6cのサンプル3の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に3600秒間水素検知センサを浸漬させたものである。また、図6a〜6cのグラフは、測定時間に対する、出力電圧をプロットしたグラフである。
【0127】
図6a〜6cの測定結果より、溶存水素の濃度に応じて、水素検知センサを油中に浸漬している間は、出力電圧が上昇していることから、精度よく水素を検知できていることがわかった。
【0128】
また、図6dは、サンプル1〜3の3600秒後の測定時間の出力電圧をプロットしたグラフである。図6dより、油中の溶存水素の濃度の上昇に伴い、出力電圧も上昇することがわかった。
【0129】
・実施例3
<水素検知部の作製>
実施例1の<電解質膜の作製>において、PVDFとホスホシリケートゲル電解質の複合体膜の代わりに、ビニリデンフロライド(VdF)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合樹脂とイオン液体の複合体膜を用いた。
【0130】
VdFとHFPの共重合体であるVdF−HFP共重合樹脂(アルケマ(株)製のカイナー#2801、HFPの含有割合:11モル%)200gを、DMAc800gに溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液Aを調製した。
【0131】
溶液Aを2gと、イオン液体としてメチルエチルイミダゾリウム−ビスフルオロスルホニルイミド(第一工業製薬(株)製のIL110)を0.2g加えて、撹拌混合して、複合電解質溶液を調製した。
【0132】
前記複合電解質溶液を用いたことと、保護膜を設けなかった以外は、実施例1と同様の方法により、対電極基板型の油中水素検知センサを作製した。
【0133】
<油中での水素検知センサの評価>
前記水素ガスをバブリングした油に、水素検知センサを浸漬させ、実施例1と同様の方法により、水素検知センサの白金電極とカーボン電極の間の電位差を測定した。測定結果を図7に示す。図7は、サンプル1〜3の出力電位が安定した電位をプロットしたグラフである。
【0134】
図7より、油中の溶存水素の濃度の上昇に伴い、出力電圧も上昇することがわかった。
【0135】
・実施例4
<水素検知部の作製>
実施例1の<電解質膜の作製>において、炭化水素系電解質膜(Poly(styrene-ran-ethylene),sulfonated solution(ALDRICH製))を用いた。
【0136】
前記炭化水素系電解質膜溶液を用いたことと、保護膜を設けなかった以外は、実施例1と同様の方法により、対電極基板型の油中水素検知センサを作製した。
【0137】
<油中での水素検知センサの評価>
前記水素ガスをバブリングした油に、水素検知センサを浸漬させ、実施例1と同様の方法により、水素検知センサの白金電極とカーボン電極の間の電位差を測定した。測定結果を図8a(サンプル1)、図8b(サンプル2)、及び図8c(サンプル3)に示す。なお、図8bのサンプル2の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に600秒間水素検知センサを浸漬させたものであり、図8cのサンプル3の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に600秒間水素検知センサを浸漬させたものである。また、図8a〜8cのグラフは、測定時間に対する、出力電圧をプロットしたグラフである。
【0138】
図8a〜8cの測定結果より、溶存水素の濃度に応じて、水素検知センサを油中に浸漬している間は、出力電圧が上昇していることから、精度よく水素を検知できていることがわかった。
【0139】
また、図8dは、サンプル1〜3の600秒後の測定時間の出力電圧をプロットしたグラフである。図8dより、油中の溶存水素の濃度の上昇に伴い、出力電圧も上昇することがわかった。
【0140】
・実施例5
シリコーンオイル(東レ・ダウコーティング株式会社製のSRX310 FLUID)300mL中に、窒素ガスベース4%水素ガスを用いて、0.5mL/minでバブリングを行い、シリコーンオイル中に水素ガスを溶解させた。このバブリング時間を、0分(サンプル(a))、10分(サンプル(b))、60分(サンプル(c))行い、3水準でシリコーンオイル中に水素を溶解させた。この3水準のシリコーンオイルに、実施例2と同様の水素検知センサを浸漬させ、出力電位が安定した時の電位を読み取った。確認を行った所、バブリング0分のサンプル(a)では−0.118V、バブリング10分のサンプル(b)では0.106V、バブリング60分のサンプル(c)では0.140Vであり、溶存水素濃度が高くなるにつれて、出力電位の値も大きくなることを確認した。
【0141】
<油中での水素検知センサの評価>
前記水素ガスをバブリングした油に、水素検知センサを浸漬させ、実施例1と同様の方法により、水素検知センサの白金電極とカーボン電極の間の電位差を測定した。測定結果を図9a(サンプルa)、図9b(サンプルb)、及び図9c(サンプルc)に示す。なお、図9bのサンプル2の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に600秒間水素検知センサを浸漬させたものであり、図9cのサンプル3の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に600秒間水素検知センサを浸漬させたものである。また、図9a〜9cのグラフは、測定時間に対する、出力電圧をプロットしたグラフである。
【0142】
図9a〜9cの測定結果より、溶存水素の濃度に応じて、水素検知センサを油中に浸漬している間は、出力電圧が上昇していることから、精度よく水素を検知できていることがわかった。
【符号の説明】
【0143】
1 基板
2 固体電解質
3 絶縁保護膜
4 触媒を兼ねた電極
5 電極
6 水素
7 樹脂層
8 通気性を有する電極
9 SUS電極
10 孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に油中に含まれる水素を検知することができる水素検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池に代表される水素エネルギーシステムを構成するうえで、水素を精度良く検知する水素検知センサの必要性は極めて高い。
【0003】
このような水素検知センサにおいて、プロトン導電体膜を使用した水素検知センサが知られており、プロトン導電体膜としてナフィオン膜のような固体高分子膜を用いたものや、光硬化性樹脂等の樹脂とイオン液体を混合した高分子電解質膜を用いたものが知られている(例えば、特許文献1〜5)。これらの特許文献に記載される水素検知センサは、酸素非存在下での気相中での水素ガスを検知部に直接接触させることより水素を検知するものである。
【0004】
前記水素ガスと検知部を直接接触させることによって水素を検知する水素ガス検知センサに加えて、近年、水素エネルギーシステム等に使用される、油中に溶存する水素を検知可能なセンサが望まれている。
【0005】
油中の溶存水素ガス濃度の測定は、コンプレッサー等の使用機器の異常を把握する目安として、工場等では定期的に油中の溶存水素ガス濃度測定を行っている。しかしながら、現状の油中の水素ガス濃度測定は、油中の水素ガスを抽出した後に、ガスクロマトグラフィーで測定するため、油を持ち出さなければならない。また分析機器も例えば、特許文献6の様に、複雑な装置が必要である。このため、現状の油中の溶存水素ガスの測定は、測定時間、労力、測定技術等の問題を抱えている。
【0006】
このように、油中のような特殊な環境下での溶存水素を精度よく簡便に検知できるセンサは、知られておらず、未だ開発の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開番号2008/093813号パンフレット
【特許文献2】国際公開番号2009/011368号パンフレット
【特許文献3】特開2009−300224号公報
【特許文献4】特開2010−197074号公報
【特許文献5】特開2010−197075号公報
【特許文献6】特開2010−25899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、油中に存在する溶存水素を簡便に短時間で精度よく検知でき、油を持ち運ぶこと無く、その場で溶存水素ガス濃度測定ができる水素検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、水素検知センサにおいて、耐油性及び耐薬品性を有する、水素を検知する検知部を用いることによって、耐油性を向上させることができ、油中に含まれる溶存水素を精度よく検出することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の油中用水素検知センサを提供する。
【0011】
項1.固体電解質を挟んで一対の電極が形成された水素検知部であって、
前記水素検知部が耐油性及び耐薬品性を有する、
油中で用いられる水素検知センサ。
【0012】
項2.水素検知部が、さらに絶縁保護膜によって被膜された、項1に記載の水素検知センサ。
【0013】
項3.固体電解質が、i)固体高分子電解質、ii)イオン液体と樹脂の混合物、及びiii)固体無機電解質と樹脂の混合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である項1又は2に記載の水素検知センサ。
【0014】
項4.樹脂が、耐熱性樹脂である項3に記載の水素検知センサ。
【0015】
項5.樹脂が、フッ素樹脂である項3又は4に記載の水素検知センサ。
【0016】
項6.一対の電極の少なくとも一側面に触媒層が形成されている項1〜5のいずれかに記載の水素検知センサ。
【0017】
項7.絶縁保護膜が、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素樹脂、及びシリコーン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である項2〜6のいずれかに記載の水素検知センサ。
【0018】
以下、本発明の油中で用いられる水素検知センサについて、詳細に説明する。
【0019】
本発明の油中で用いられる水素検知センサは、固体電解質を挟んで一対の電極が形成された耐油性及び耐薬品性を有する水素検知部を有する。
【0020】
固体電解質としては、i)固体高分子電解質、ii)イオン液体と樹脂の混合物、又はiii)固体無機電解質と樹脂の混合物等が挙げられる。
【0021】
i)固体高分子電解質
固体高分子電解質としては、例えば、高いプロトン導電性を有するパーフルオロスルホン酸系重合体、パーフルオロカルボン酸系重合体等のパーフルオロ系重合体や、スルホン化されたスチレン−エチレンランダム共重合体(Poly(styrene-ran-ethylene) sulfonated)等の部分的にスルホン化されたスチレン−オレフィン共重合体(partially sulfonated styrene-olefin copolymer)等が挙げられる。これらの固体高分子電解質は、例えば、ナフィオン(デュポン社登録商標:NAFION)、アシプレックス(旭化成株式会社登録商標:ACIPLEX)等として好適に入手できる。
【0022】
さらに、プロトン伝導体として固体高分子電解質を用いる場合に、出力の安定性を確保することができるという点から、導電性粒子等を固体高分子電解質中に分散させることがより好ましい。固体高分子電解質に分散される導電性粒子としては、例えば、導電性樹脂、カーボン素材、金属化合物、金属酸化物等が挙げられる。
【0023】
前記カーボン素材の具体例としては、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも記す。)、フラーレン、グラファイト、ナノカーボン、カーボンブラック、ナノダイヤモンド、ナノポーラスカーボン等が挙げられる。また、カーボンブラックの具体例としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、グラフトカーボン等が例示できる。いずれの場合にも優れた安定性が示される。これらのカーボン素材は、単独で用いてもよく、また2種以上の複数で用いてもよい。
【0024】
ii)イオン液体と樹脂の混合物
イオン液体と樹脂の混合物におけるイオン液体としては、例えば、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、脂肪族アンモニウム塩、脂環式アンモニウム塩、脂肪族ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0025】
イミダゾリウム塩の具体例としては、式(1):
【0026】
【化1】
【0027】
で表されるものが挙げられる。
【0028】
式(1)中、R1a〜R5aは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
【0029】
また、式(1)中のX−としては、例えば、ハロゲンイオン、ホスホン酸イオン、ホウ酸イオン、トリフラートアニオン、イミドイオン等が挙げられる。式(1)中のX−におけるハロゲンイオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等が挙げられ、ホスホン酸イオンを形成するホスホン酸としては、例えば、ジメチルホスホン酸、ジエチルホスホン酸等が挙げられ、イミドイオンを形成するイミドとしては、例えば、ビスフルオロスルホニルイミド等が挙げられる。
【0030】
式(1)の具体的としては、例えば、1−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチルイミダゾリウムイオン、1−n−プロピルイミダゾリウムイオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−n−プロピルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、2−エチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジメチル−n−プロピルイミダゾリウムイオン、1,3,4−トリメチルイミダゾリウムイオン、2−エチル−1,3,4−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウムイオン等のイミダゾリウムイオンと、前記式(1)におけるX−との塩が挙げられる。
【0031】
ピリジニウム塩の具体例としては、式(2):
【0032】
【化2】
【0033】
で表されるものが挙げられる。
【0034】
式(2)中、R1b〜R6bは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基である。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0035】
また、式(2)中のX−としては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0036】
式(2)の具体的としては、例えば、1−ブチル−3−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−ピリジニウムイオン、1−エチル−3−メチルピリジニウムイオン、1−エチルピリジニウムイオン等のピリジニウムイオンと、前記式(1)におけるX−との塩が挙げられる。
【0037】
アンモニウム塩の具体例としては、式(3):
【0038】
【化3】
【0039】
で表されるものが挙げられる。
【0040】
式(3)中、R1c〜R4cは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基等が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0041】
また、式(3)中のX−としては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0042】
式(3)の具体的としては、例えば、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、エチルジメチルプロピルアンモニウムイオン等のアンモニウムイオンと、前記式(1)におけるX−との塩が挙げられる。
【0043】
ホスホニウム塩の具体例としては、式(4):
【0044】
【化4】
【0045】
で表されるものが挙げられる。
【0046】
式(4)中、R1d〜R4dは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0047】
また、式(4)中のX−としては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0048】
式(4)の具体的としては、例えば、シクロヘキシルトリメチルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、トリブチルメチルホスホニウムイオン等のホスホニウムイオンと、前記式(1)におけるX−との塩が挙げられる。
【0049】
ピロリジニウム塩の具体例としては、式(5):
【0050】
【化5】
【0051】
で表されるものが挙げられる。
【0052】
式(5)中、R1e及びR2eは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、又は炭素数1〜8、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
【0053】
また、式(5)中、X−は、前記式(1)と同じものが挙げられる。
【0054】
式(5)の具体的としては、例えば、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム、1−オクチル−1−メチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウム等のピロリジニウムイオンと、前記式(1)におけるX−との塩が挙げられる。
【0055】
前記ii)のイオン液体と樹脂の混合物における樹脂としては、例えば、耐熱性樹脂、光硬化樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0056】
耐熱性樹脂の具体例としては、ビニリデンフルオライド(VdF)単位、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)単位、テトラフルオロエチレン(TFE)単位、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)単位、フッ化ビニル(VF)単位、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位等を1種又は2種以上有するフッ素樹脂;ナフィオンのようなモノマー単位中にスルホン酸基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基等の極性基を有するフッ素樹脂;ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、環状オレフィン、ポリエチレンスルフォネート、ポリアミドイミド、ポリブチレンテレフタレート等のエンジニアリングプラスチック;ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等のスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。
【0057】
前記フッ素樹脂を構成するPAVE単位のアルキル基としては、炭素数1〜6、好ましくは1〜3であり、具体的には、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)単位、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)単位、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)単位等が挙げられる。
【0058】
これらの耐熱性樹脂の中で、耐薬品性、耐溶剤性、撥水性等の観点から、フッ素樹脂がより好ましく、その具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、VdF−HFP共重合体、TFE−PAVE共重合体、TFE−HFP共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン(Et−TFE)共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体等が挙げられる。これらの中で、耐湿熱性と成形性において良好であるという点から、PVdF、VdF−HFP共重合体がさらに好ましい。
【0059】
樹脂がフッ素樹脂である場合のフッ素樹脂の融点としては、フッ素樹脂の種類にもよるが、固体電解質膜の耐熱安定性が向上し、熱変形等による電極との接触不良等が発生しない点から、140℃以上が好ましく、140〜350℃程度が好ましく、160〜250℃程度がさらに好ましい。また、フッ素樹脂のガラス転移点は、ガラス転移温度が低いほど、低温でも固体電解質膜の機械的物性や電気的物性が維持されやすく、センサの低温動作性が良くなる点で良好であるという観点から、100℃以下が好ましく、−50℃以下がより好ましい。なお、フッ素樹脂及びガラス転移温度は、ISO3146に準拠してDSC測定法により測定することが可能である。
【0060】
光硬化樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、不飽和ポリエステル樹脂、ジアゾ樹脂、アジド樹脂等が挙げられる。
【0061】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、尿素樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、アリル樹脂等が挙げられる。
【0062】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート等の汎用樹脂が挙げられる。
【0063】
前記の樹脂は、単独で用いてもよく、また、2種以上の樹脂を混合して用いてもよい。
【0064】
前記イオン液体の含有量は、水素センサの出力電圧が増加して感度が向上するために良好であるという点から、樹脂100重量部に対して、25重量部以上が好ましく、50重量部以上がより好ましく、100重量部以上がさらに好ましい。また、プロトン導電性電解質の含有量は、樹脂成分が相対的に少なくならず、電解質膜の成膜性が良好であるという点から、500重量部以下が好ましく、300重量部以下がより好ましく、200重量部以下がさらに好ましい。
【0065】
iii)固体無機電解質と樹脂の混合物
iii)における固体無機電解質と樹脂の混合物における樹脂としては、前記ii)の混合物に含まれる樹脂と同様のものが挙げられる。
【0066】
iii)における固体無機電解質と樹脂の混合物における固体無機電解質としては、種々のものがあるが、常温でプロトン導電性を発現することができるという観点から、例えば、ホスホシリケート、尿素シリケート、ウラニルリン酸水和物、モリブドリン酸水和物等が好ましい。
【0067】
前記固体無機電解質の含有量は、水素センサの出力電圧が増加し感度が向上するため良好であるという点から、樹脂100重量部に対して、25重量部以上が好ましく、50重量部以上がより好ましく、100重量部以上がさらに好ましい。また、固体無機電解質の含有量は、樹脂成分が相対的に少なくならず、固体電解質膜の成膜性が良好であるという点から、500重量部以下が好ましく、300重量部以下がより好ましく、200重量部以下がさらに好ましい。
【0068】
また、水素検知センサが、後述する形態2に示される積層構造を有する水素検知センサである場合には、固体電解質の膜を自立膜とするため、また、成膜性や膜の強度を付与するために、固体電解質中に無機層状化合物等をさらに含有させてもよい。
【0069】
無機層状化合物としては、ベントナイトの主成分であるモンモリロナイトや有機変性モンモリロナイト、スメクタイト等が挙げられる。
【0070】
無機層状化合物の含有量は、膜の補強効果や溶液の増粘効果が十分に得られるという点から、i)における固体高分子電解質、若しくはii)又はii)における樹脂100重量部に対して、0.5重量部以上が好ましく、1重量部以上がより好ましく、2重量部以上がさらに好ましい。また、無機層状化合物の含有量は、樹脂と配合した際に、溶液が高粘度にならず、成膜性が良好であり、また溶液が短時間でゲル化しにくいという点から、30重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましい。
【0071】
また、本発明の水素検知センサにおける水素検知部は、さらに、絶縁保護膜によって被膜されていてもよい。
【0072】
水素検知部を被膜するための絶縁保護膜としては、検知対象となる油に前記水素検知部が浸漬されるため、水素検知部に密着できる水素透過性の撥水性樹脂を用いる。このような絶縁被覆膜に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン系樹脂等及びそれらの紫外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0073】
より具体的には、アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等が挙げられ、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体等が挙げられ、シリコーン系樹脂としては、置換基としてポリエーテル、エポキシ、アミン類、カルボキシル基、アラルキル基、メチル基、フェニル基等を含むシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0074】
本発明の油中で用いられる水素検知センサの構成は、例えば、以下の形態1に示される基板型の構造や、形態2に示される積層型の構造を有するもの等が例示される。
【0075】
形態1で用いられる基板としては、その上面に成膜される固体電解質を安定に保持できるものであれば特に限定されないが、例えば、ガラス、セラミック、シリコン等の無機材料を用いた基板、樹脂材料等が挙げられる。
【0076】
基板を構成する樹脂材料の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、環状オレフィン、ポリエチレンスルフォネート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ウレタン、アクリル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂(PTFE、PFA、ETFE、FEP、PVDF等)等が挙げられる。
【0077】
形態1の基板を有する構造としては、図1に示す断面図のような構成を有する。図1に示すように、形態1の水素検知センサは、基板1上に、一対の電極を載せ、その電極を覆うように固体電解質2が被覆された検知部を有している。当該検知部は、さらに絶縁保護膜3で被膜された構成をとっていてもよい。
【0078】
水素検知部を絶縁保護膜で被膜する場合において、絶縁保護膜3として紫外線硬化樹脂や、熱硬化性樹脂を用いる場合には、基板1上に形成された水素検知部に絶縁保護膜3を形成する材料樹脂を塗布し、硬化処理することにより絶縁被覆膜3が形成される。絶縁保護膜3として熱可塑性樹脂を用いる場合には、基板1上に形成された水素検知部に熱溶融した材料樹脂を塗布して硬化させる、フィルム状の材料樹脂を被覆した後に当該フィルムを熱融着させる、又は基板1上に形成された水素検知部に、粘着剤や粘着シートを介して該材料樹脂の熱溶融押出成形フィルムを貼付させることにより絶縁被覆膜3が形成される。
【0079】
このような絶縁被覆層3により、水素検知部が油中に浸漬された場合にも、水素検知部が直接油に触れることがなく、油による劣化を防ぐことができる。
【0080】
電極は、一方は水素をプロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4であり、もう一方は、触媒層として機能しない電極5である。このような構成をとることにより、水素6が固体電解質の層を介して触媒を兼ねた電極4においてプロトンと電子に分解され、この水素分解反応の起電力により、触媒を兼ねた電極4ともう一方の電極5との間の電位差が生じる。ネルンストの式より水素分解反応の起電力は水素濃度に依存しているので、この電位差を測定することによって、水素6の濃度検知も可能となる。
【0081】
水素をプロトンに反応させるための触媒を兼ねた電極4として用いられる材料は、水素をプロトンに反応させる機能を有するものであれば、特に限定されないが、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、イットリウム(Y)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ジルコニア、希土類金属等の金属又はその合金;モリブデンカーバイド(Mo2C)、タングステンカーバイド(WC)等の炭化金属;酸化タンタル、酸化チタン、酸化ジルコン等の遷移金属酸化物、鉄やコバルト等の金属ポルフィリン及びフタロシアニン等の遷移金属錯体等を用いることができる。その他に、N,N’−ビス(サリチリデン)エチレン−ジアミノ−金属(金属=Ni,Fe,V等)、N,N’−モノ−8−キノリル−σ−フェニレンジアミノ−金属(金属=Ni,Fe,V等)等の有機金属触媒;ピロロピロール赤色顔料、ジピリジル誘導体等の有機化合物が挙げられる。これらの中で、触媒性能と化学的安定性の点から、白金電極、モリブデンカーバイド(Mo2C)が好ましい。
【0082】
形態1の水素検知センサにおける触媒を兼ねた電極4の厚さとしては、触媒反応が十分に進み、良好な出力信号が得られるという点から、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。また、触媒材料が貴金属であり高価なためコストの観点から、10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。
【0083】
電極5としては、電極4のような触媒能を有さないものであれば特に限定されないが、例えば、カーボン電極、ステンレス鋼等が挙げられ、これらの中で、耐腐食性を有する点から、カーボン電極が好ましい。
【0084】
電極5の厚さとしては、印刷やコーティングで塗布成膜しやすい点から、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、その上に固体電解質膜を塗布成膜しやすい点から、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0085】
固体電解質2の膜厚は、充分なプロトン導電が得られ、センサの出力電圧が小さくならず、感度が良好となるという点から、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。また、成膜時に膜の収縮応力による膜の基板からの剥離が生じにくくなるという点から、2000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0086】
絶縁保護膜3の厚さとしては、耐油性及び耐薬品性の向上等の観点から、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。また、油中に存在する水素の膜の透過性の向上や、応答速度が良好であるという点から、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0087】
前記一対の電極において、電極間の距離(固体電解質2を挟んだ電極4と電極5との距離)としては、固体電解質の抵抗が小さくならず、出力電圧も小さくならない点、及び電極間が短絡しやすくならないという点から、10μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましい。また、固体電解質の抵抗(インピーダンス)が大きくならず、出力信号にノイズが重畳されにくい点から、5000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましい。
【0088】
なお、形態1に示される基板を有する構造の水素検知センサにおいて、固体電解質と基板1の熱膨張率差や剛性の差が大きいために固体電解質が剥離しやすい場合等には、固体電解質との密着性を向上させるために、基板1と電極4又は5との間に、樹脂層7を設けておいてもよい(図2参照)。
【0089】
水素検知センサとして形態1のような構成をとる場合、小型化、軽量化、フレキシブル化が可能であり、センサの用途や設置場所を拡大することができる。また、センサの組立が容易になり生産性を向上させることもできる。
【0090】
形態2の水素検知センサとしては、例えば、図3に示されるものが挙げられる。図3に示すように、形態2の水素検知センサは、固体電解質2を電極で挟む構造を有し、一方に、プロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4を備え、もう一方に、触媒層として機能しない電極5を備える。また、図3に示すように水素検知部を絶縁保護膜3で被膜された構造をとっていてもよい。プロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4は、そのまま電極としても用いてもよく、また、さらに、電極4上に通気性を有する電極8を設けてもよい(図4参照)。さらに、プロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4(通気性電極を設ける場合には通気性を有する電極8)、及び電極5の上に、固体電解質を均一に押圧しながら形状保持して、計測部に確実に電気接続するための通電電極として、さらにSUS電極9を設けてもよい(図4参照)。なお、SUS電極9を設けた際には、油中の水素6を拡散させるための孔10が必要となる。
【0091】
このような構成をとることにより、水素6が吹き込まれると、触媒を兼ねた電極4に接触し、水素が分解されてプロトンと電子が発生する。その際に、水素分解反応の起電力によって、電極5と触媒を兼ねた電極4との間の電位差が生じる。ネルンストの式よりこの起電力は水素濃度に依存しているので、この電位差を測定することによって、水素の濃度検知が可能となる。
【0092】
水素をプロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4としては前記の形態1に示される基板を有する構造のものと同様のものを用いることができる。
【0093】
形態2に示される積層構造を有する水素検知センサにおける水素をプロトンに反応させる触媒を兼ねた電極4の厚さとしては、触媒反応が十分に進み、良好な出力信号が得られる点から、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。また、水素が通りにくくならず、触媒材料が貴金属であり高価なためにコストを抑えることができるという点から、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。
【0094】
形態2に示される積層構造を有する水素検知センサにおける電極5としては、前記の電極4のような触媒能を有さないものであれば特に限定されないが、例えば、カーボン電極、ステンレス鋼等が挙げられ、これらの中で、耐腐食性の観点から、カーボン電極が好ましい。
【0095】
電極5の厚さとしては、自立性があり、組立時に破損しにくいという点から、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。また、膜厚方向の電気抵抗を小さくして抵抗損失を少なくすることができるという点から、2000μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましい。
【0096】
形態2に示される積層構造を有する水素検知センサにおける固体電解質2の膜厚は、膜の抵抗(インピーダンス)が小さくならず、出力電圧も小さくならない点、及び膜を挟んだ電極の変形等による電極の短絡が少ないという点から、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、40μm以上がさらに好ましい。また、膜の抵抗(インピーダンス)が大きくならず、出力電圧にノイズが重畳しにくいという点から、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましい。
【0097】
形態2に示される積層構造を有する水素検知センサにおける絶縁保護膜3の厚さとしては、耐油性及び耐薬品性の向上等の観点から、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。また、油中に存在する水素の膜の透過性の向上や、応答速度が良好であるという点から、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0098】
なお、前述のように、形態2に示される積層構造を有する水素検知センサにおいて用いられる固体電解質2の層は、成膜性や膜の強度を付与するために、固体電解質中に無機層状化合物等を添加したものを用いてもよい。
【0099】
必要に応じて積層される電極8としては、前記電極5で用いられるものが挙げられるが、水素6を触媒を兼ねた電極4に接触させる必要があるため、通気性を有する必要がある。このため、電極8の形状としては、例えば、多孔質の金属体、金属繊維メッシュや炭素繊維のカーボンクロス、カーボンペーパー等が必要となる。
【0100】
水素検知センサとして形態2に示される積層構造を有する構成をとる場合、固体電解質を電極で挟むという構造上、広い面積の固体電解質を使用すれば、電極や触媒膜との接触面積を大きくして反応量を増やすことができるため、高感度なセンサを作製することが容易になる。また、電解質膜表面にある触媒膜が直接水素と接する構造を有するため、反応が早く、応答速度の速いセンサを製造することができる。
【0101】
前記電極は、いずれもスパッタリング、真空蒸着、電子照射、CVD、PVD、含浸、スプレーコート、スプレー熱分解、練りこみ、吹き付け、ロールやコテによる塗り付け、スクリーン印刷、混錬法、光電解法、コーティング法、ゾルゲル法、ディップ法等の公知の方法により形成することができる。
【0102】
検知対象となる油としては、用途に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、工業用、燃料用、食用等の用途に用いられる油が用いられる。工業用途としては、潤滑油、冷凍油、熱媒体油、絶縁油、切削油、防錆油、モーターオイル等が挙げられる。これらの油の具体例としては、合成油、植物性油、動物性油、シリコーンオイル、石油等が挙げられ、油の具体的な成分としては、例えば、アルキルベンゼン、ポリブデン、アルキルナフタレン、シリコーン、紅花油、ラード等が挙げられる。
【0103】
本発明の水素検知センサは、油中に含まれる水素を検知することができるため、例えば、前記用途の油中の混入水素の検出が可能となる。よって、前記油を使用する機器の異常の検知等の用途に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0104】
本発明の水素検知センサは、水素を検知する検知部が耐油性及び耐薬品性を有するため、油中に含まれる溶存水素を簡便に短時間で精度よく検知できる。また本発明の水素検知センサは、検出対象となる油を持ち運ぶことなく、その場で溶存水素濃度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】形態1の水素検知センサを模式的に表した断面図である。
【図2】形態1の水素検知センサの一態様を模式的に表した断面図である。
【図3】形態2の水素検知センサを模式的に表した断面図である。
【図4】形態2の水素検知センサの一態様を模式的に表した断面図である。
【図5a】実施例1におけるサンプル1のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図5b】実施例1におけるサンプル2のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図5c】実施例1におけるサンプル3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図5d】実施例1におけるサンプル1〜3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、出力電位が安定した時の電圧をプロットしたグラフである。
【図6a】実施例2におけるサンプル1のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図6b】実施例2におけるサンプル2のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図6c】実施例2におけるサンプル3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図6d】実施例2におけるサンプル1〜3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、出力電位が安定した時の電圧をプロットしたグラフである。
【図7】実施例3におけるサンプル1〜3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、出力電位が安定した時の電圧をプロットしたグラフである。
【図8a】実施例4におけるサンプル1のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図8b】実施例4におけるサンプル2のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図8c】実施例4におけるサンプル3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図8d】実施例4におけるサンプル1〜3のモーターオイル中の溶存水素を測定した結果であって、出力電位が安定した時の電圧をプロットしたグラフである。
【図9a】実施例5におけるサンプルaのシリコーンオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図9b】実施例5におけるサンプルbのシリコーンオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【図9c】実施例5におけるサンプルcのシリコーンオイル中の溶存水素を測定した結果であって、測定時間に対する出力電圧をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0106】
[実施例]
以下、比較例と共に実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0107】
・実施例1(フッ素樹脂(PVDF)、及びホスホシリケートゲル電解質膜を用いた基板型水素検知センサ)
図2に示す断面図のような構成を有する形態1の基板型水素検知センサを製造した。
【0108】
<白金対電極基板の作成>
触媒を兼ねた電極4となる白金を樹脂層7であるポリイミドフィルム(東レデュポン製(厚さ30μm))上にスパッタリング成膜し、1mm幅の短冊状にカットした。カットした短冊状のポリイミドフィルム2本を、基板1として厚さ188μmの白PET(東レ ルミラーU2)フィルム基板の上に、0.5mm間隔に粘着材で貼り付け固定した。
【0109】
<触媒層の形成>
片方のポリイミドフィルム上に有する白金電極を触媒(白金触媒層)層とし、他方の白金電極の上に、電極5であるカーボンペースト((株)アサヒ化学研究所製のFTU−30)を専用溶剤((株)アサヒ化学研究所製の#155)で希釈して塗布し、熱風循環オーブンで100℃、1時間乾燥してカーボン電極を形成した。
【0110】
<固体電解質溶液の調製>
テトラエトキシシラン、リン酸、水、塩酸、及びエタノールを混合し、スターラーで3時間撹拌し、100gのホスホシリケートゾル液を得た。各成分の濃度を表1に示す。
【0111】
【表1】
【0112】
得られたゾル液を、50℃の恒温槽で2週間乾燥してゲル化し固化させた後に乳鉢で粉砕した。粉砕したゲルを、150℃で3時間熱処理を施した後、さらに乳鉢で粉砕して、ホスホシリケートゲルの粉末を得た。
【0113】
得られたホスホシリケートゲル粉末20gをN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)80gに溶解してボールミルで分散させ、固形分濃度20重量%のホスホシリケートゲルのスラリー液Aを調製した。
【0114】
前記スラリー液Aとは別にポリフッ化ビニリデン(PVDF)(アルケマ(株)製のカイナー#301F)樹脂20gをDMAc80gに溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液Bを調製した。
【0115】
ホスホシリケートゲルのスラリー液Aを10gと、前記溶液Bを10g攪拌混合し、PVDF樹脂中にホスホシリケートゲル電解質を50重量%含む複合固体電解質溶液を調製した。
【0116】
<水素検知部の作製>
前記複合固体電解質溶液を前記白金対電極基板の中央部に1μL滴下し、膜が2つの電極を覆うように塗布し、熱風循環オーブンで120℃で4時間乾燥して成膜した。
【0117】
<絶縁保護膜の形成>
前記検知部に、熱硬化性シリコーン樹脂(信越化学工業(株)製のKE3495W)を、固体電解質膜が被覆されるように塗布して、熱風循環オーブンで100℃、1時間乾燥して絶縁被覆膜3を成膜した。絶縁被覆層の膜厚は、約100μmであった。
【0118】
以上の手順より、図2に示す対電極基板型の油中用水素検知センサが得られた。
【0119】
<油中での水素検知センサの評価>
1.測定サンプル準備
測定対象となる油として、鉱物油のCastrol製のモーターオイルを使用した。
【0120】
前記鉱物油600mLに、窒素ガスベースの4%水素ガスを0.5L/minの流量でバブリングを行った。この時、バブリング時間を0分(サンプル1)、10分(サンプル2)、60分(サンプル3)の3水準で行い、それぞれ油中に水素を溶解させた。
【0121】
サンプル1〜3の油中から、溶存水素ガスを抽出し、ガスクロマトグラフィーにより水素ガスの濃度測定を行った。その結果サンプル1は0ppm、サンプル2は約500ppm、サンプル3は約1000ppmであることが分かった。
【0122】
2.水素応答性の評価
前記水素ガスをバブリングした油に、水素検知センサを浸漬させ、水素検知センサの白金電極とカーボン電極の間の電位差をデジタルマルチメータ(岩通計測(株)製のVOAC7411)にて測定した。測定結果を図5a(サンプル1)、図5b(サンプル2)、及び図5c(サンプル3)に示す。なお、図5bのサンプル2の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に3000秒間水素検知センサを浸漬させたものであり、図5cのサンプル3の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に2400秒間水素検知センサを浸漬させたものである。また、図5a〜5cのグラフは、測定時間に対する、出力電圧をプロットしたグラフである。
【0123】
図5a〜5cの測定結果より、溶存水素の濃度に応じて、水素検知センサを油中に浸漬している間は、出力電圧が上昇していることから、精度よく水素を検知できていることがわかった。
【0124】
また、図5dは、サンプル1〜3の出力電位が安定した時の電位をプロットしたグラフである。図5dより、油中の溶存水素の濃度の上昇に伴い、出力電圧も上昇することがわかった。
【0125】
・実施例2
<水素検知部の作製>
実施例1の<水素検知部の作製>において、PVDF樹脂を含む溶液B10gとホスホシリケートゲルのスラリー液A15gを攪拌混合して、PVDF樹脂中にホスホシリケートゲル電解質を60重量%含む複合電解質溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、対電極基板型の油中水素検知センサを作製した。
【0126】
<油中での水素検知センサの評価>
前記水素ガスをバブリングした油に、水素検知センサを浸漬させ、実施例1と同様の方法により、水素検知センサの白金電極とカーボン電極の間の電位差を測定した。測定結果を図6a(サンプル1)、図6b(サンプル2)、及び図6c(サンプル3)に示す。なお、図6bのサンプル2の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に3600秒間水素検知センサを浸漬させたものであり、図6cのサンプル3の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に3600秒間水素検知センサを浸漬させたものである。また、図6a〜6cのグラフは、測定時間に対する、出力電圧をプロットしたグラフである。
【0127】
図6a〜6cの測定結果より、溶存水素の濃度に応じて、水素検知センサを油中に浸漬している間は、出力電圧が上昇していることから、精度よく水素を検知できていることがわかった。
【0128】
また、図6dは、サンプル1〜3の3600秒後の測定時間の出力電圧をプロットしたグラフである。図6dより、油中の溶存水素の濃度の上昇に伴い、出力電圧も上昇することがわかった。
【0129】
・実施例3
<水素検知部の作製>
実施例1の<電解質膜の作製>において、PVDFとホスホシリケートゲル電解質の複合体膜の代わりに、ビニリデンフロライド(VdF)−ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合樹脂とイオン液体の複合体膜を用いた。
【0130】
VdFとHFPの共重合体であるVdF−HFP共重合樹脂(アルケマ(株)製のカイナー#2801、HFPの含有割合:11モル%)200gを、DMAc800gに溶解させ、固形分濃度20重量%の溶液Aを調製した。
【0131】
溶液Aを2gと、イオン液体としてメチルエチルイミダゾリウム−ビスフルオロスルホニルイミド(第一工業製薬(株)製のIL110)を0.2g加えて、撹拌混合して、複合電解質溶液を調製した。
【0132】
前記複合電解質溶液を用いたことと、保護膜を設けなかった以外は、実施例1と同様の方法により、対電極基板型の油中水素検知センサを作製した。
【0133】
<油中での水素検知センサの評価>
前記水素ガスをバブリングした油に、水素検知センサを浸漬させ、実施例1と同様の方法により、水素検知センサの白金電極とカーボン電極の間の電位差を測定した。測定結果を図7に示す。図7は、サンプル1〜3の出力電位が安定した電位をプロットしたグラフである。
【0134】
図7より、油中の溶存水素の濃度の上昇に伴い、出力電圧も上昇することがわかった。
【0135】
・実施例4
<水素検知部の作製>
実施例1の<電解質膜の作製>において、炭化水素系電解質膜(Poly(styrene-ran-ethylene),sulfonated solution(ALDRICH製))を用いた。
【0136】
前記炭化水素系電解質膜溶液を用いたことと、保護膜を設けなかった以外は、実施例1と同様の方法により、対電極基板型の油中水素検知センサを作製した。
【0137】
<油中での水素検知センサの評価>
前記水素ガスをバブリングした油に、水素検知センサを浸漬させ、実施例1と同様の方法により、水素検知センサの白金電極とカーボン電極の間の電位差を測定した。測定結果を図8a(サンプル1)、図8b(サンプル2)、及び図8c(サンプル3)に示す。なお、図8bのサンプル2の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に600秒間水素検知センサを浸漬させたものであり、図8cのサンプル3の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に600秒間水素検知センサを浸漬させたものである。また、図8a〜8cのグラフは、測定時間に対する、出力電圧をプロットしたグラフである。
【0138】
図8a〜8cの測定結果より、溶存水素の濃度に応じて、水素検知センサを油中に浸漬している間は、出力電圧が上昇していることから、精度よく水素を検知できていることがわかった。
【0139】
また、図8dは、サンプル1〜3の600秒後の測定時間の出力電圧をプロットしたグラフである。図8dより、油中の溶存水素の濃度の上昇に伴い、出力電圧も上昇することがわかった。
【0140】
・実施例5
シリコーンオイル(東レ・ダウコーティング株式会社製のSRX310 FLUID)300mL中に、窒素ガスベース4%水素ガスを用いて、0.5mL/minでバブリングを行い、シリコーンオイル中に水素ガスを溶解させた。このバブリング時間を、0分(サンプル(a))、10分(サンプル(b))、60分(サンプル(c))行い、3水準でシリコーンオイル中に水素を溶解させた。この3水準のシリコーンオイルに、実施例2と同様の水素検知センサを浸漬させ、出力電位が安定した時の電位を読み取った。確認を行った所、バブリング0分のサンプル(a)では−0.118V、バブリング10分のサンプル(b)では0.106V、バブリング60分のサンプル(c)では0.140Vであり、溶存水素濃度が高くなるにつれて、出力電位の値も大きくなることを確認した。
【0141】
<油中での水素検知センサの評価>
前記水素ガスをバブリングした油に、水素検知センサを浸漬させ、実施例1と同様の方法により、水素検知センサの白金電極とカーボン電極の間の電位差を測定した。測定結果を図9a(サンプルa)、図9b(サンプルb)、及び図9c(サンプルc)に示す。なお、図9bのサンプル2の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に600秒間水素検知センサを浸漬させたものであり、図9cのサンプル3の水素溶存油を用いた測定結果は、油中に600秒間水素検知センサを浸漬させたものである。また、図9a〜9cのグラフは、測定時間に対する、出力電圧をプロットしたグラフである。
【0142】
図9a〜9cの測定結果より、溶存水素の濃度に応じて、水素検知センサを油中に浸漬している間は、出力電圧が上昇していることから、精度よく水素を検知できていることがわかった。
【符号の説明】
【0143】
1 基板
2 固体電解質
3 絶縁保護膜
4 触媒を兼ねた電極
5 電極
6 水素
7 樹脂層
8 通気性を有する電極
9 SUS電極
10 孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質を挟んで一対の電極が形成された水素検知部であって、
前記水素検知部が耐油性及び耐薬品性を有する、
油中で用いられる水素検知センサ。
【請求項2】
水素検知部が、さらに絶縁保護膜によって被膜された、請求項1に記載の水素検知センサ。
【請求項3】
固体電解質が、i)固体高分子電解質、ii)イオン液体と樹脂の混合物、及びiii)固体無機電解質と樹脂の混合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の水素検知センサ。
【請求項4】
樹脂が、耐熱性樹脂である請求項3に記載の水素検知センサ。
【請求項5】
樹脂が、フッ素樹脂である請求項3又は4に記載の水素検知センサ。
【請求項6】
一対の電極の少なくとも一側面に触媒層が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の水素検知センサ。
【請求項7】
絶縁保護膜が、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素樹脂、及びシリコーン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2〜6のいずれかに記載の水素検知センサ。
【請求項1】
固体電解質を挟んで一対の電極が形成された水素検知部であって、
前記水素検知部が耐油性及び耐薬品性を有する、
油中で用いられる水素検知センサ。
【請求項2】
水素検知部が、さらに絶縁保護膜によって被膜された、請求項1に記載の水素検知センサ。
【請求項3】
固体電解質が、i)固体高分子電解質、ii)イオン液体と樹脂の混合物、及びiii)固体無機電解質と樹脂の混合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の水素検知センサ。
【請求項4】
樹脂が、耐熱性樹脂である請求項3に記載の水素検知センサ。
【請求項5】
樹脂が、フッ素樹脂である請求項3又は4に記載の水素検知センサ。
【請求項6】
一対の電極の少なくとも一側面に触媒層が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の水素検知センサ。
【請求項7】
絶縁保護膜が、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素樹脂、及びシリコーン系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2〜6のいずれかに記載の水素検知センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【公開番号】特開2012−163506(P2012−163506A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25560(P2011−25560)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
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