説明

油中油型分散液およびその製造方法

連続する第2油相中に液滴として分散した第1油相を含む油中油型エマルションを含む組成物中において、液滴は1〜10μmの数中位径を持ち、液滴の大きさと粒度分布とを制御した結果として、液滴は比較的小さな表面疎水化固体粒子の層でほぼ覆われている。第1油相は必要に応じて着色剤および/またはポリマーを更に含んでいる。更に、このような油中油型エマルションの製造方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、多相液体系とその製造方法、特に、制御された所定の大きさと粒度分布とを備えた液体粒子の製造方法の分野に関する。より詳細には、本発明は一般に、固体粒子によって安定化された分散油相を含む油中油型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションや懸濁液などのコロイド状分散液は、2つ以上の互いに不溶または僅かに可溶である液体から成る分散系である。一般に液体の一方がより多く存在して連続相または外相と呼ばれ、連続相中に分散している液体は分散相、不連続相、または内相と呼ばれる。連続相が水から成り、分散相が鉱油などの有機液体から成る場合、水中油型(O/W)エマルションまたは懸濁液の語が用いられる。有機または非水液体中に水が微細に分散すれば、油中水型(W/O)エマルションまたは懸濁液が生成する。2つの有機液体が互いに乳化している場合、油中油型(O/O)エマルションまたは懸濁液の語が用いられる。エマルションという語は通常、直径1マイクロメートル(μm)以下の粒子を指し、懸濁液という語は一般に直径1μm以上の粒子を示すために用いられる。しかし本件では、エマルションと懸濁液の語を区別なく、分散相の大きさが1μm以下、1μm以上のどちらの多相系を指すためにも使用する。
【0003】
シリコーンなどの無極性油を含むO/W型およびW/O型エマルションは一般的であるが、両方の相が本質的に無極性であるO/O型エマルションは比較的稀である。しかし、Journal of Colloid and Interface Science, Volume 195, Pages 101-113, Article No. CS975158, Jan. 1, 1997では、パラフィン油中にある種のシリコーン油を含むO/O型エマルションだけでなく、シリコーン油中にある種のパラフィン油を含むO/O型エマルションについても述べている。同様に、Journal of Drug Deliver Science and Technology (2004), 14(2), 113-117には、薬物送達用の配合物として、シリコーン油中にひまし油を含むエマルションが記載されている。
【0004】
米国特許出願公開第2004/0002429号は、低粘度で比較的無極性の炭化水素キャリア流体と、少量の非混和性または半混和性で極性の炭化水素流体とを含むエマルションを含む潤滑剤組成物を述べている。
【0005】
国際公開第2003/000396A1号は、連続相または分散相としてシリコーン類を含み、グラフトまたはブロック共重合体によって安定化されたエマルションを述べている。このエマルションは化粧品用として有用である。
【0006】
米国特許第6,080,394A号は、乳化剤によってシリコーン油連続相中に分散させた非水極性溶媒相を含む、油中に非水極性溶媒のあるエマルション組成物を開示している。米国特許第6,238,657B1号は、シリコーンエラストマー類で安定化した、油相の一つがシリコーン油で、他の油相が鉱油やひまし油などの有機油である、O/O型エマルションを述べている。更に、このようなエマルションから誘導した三相の水性エマルションと、そのパーソナルヘルスケアへの使用についても述べている。
【0007】
低い比誘電率を持つ、ドデカンなどの脂肪族炭化水素類またはその類似物中でのO/O型エマルションの生成は、特にこのようなエマルション中の2つの相に対して特定の性質が望まれる場合、あまり一般的ではない。一般に、エマルションの生成において、2つの液滴間の引力ポテンシャルが斥力ポテンシャルより小さい場合に、液滴または粒子の安定な分散物が得られる。斥力ポテンシャルは分散媒体の比誘電率に直接比例するため、脂肪族炭化水素などの比誘電率の非常に低い媒体中では、安定な分散物は容易に得られない。
【0008】
ドデカンなどの低密度の炭化水素溶媒中に粒子を分散する場合に対処すべきもう一つの問題は、流体中の粒子の沈降速度を次の方程式で定義する、ストークスの法則に従って、時間と共に分散相が沈降することである。
【0009】
V = (2gr)(d−d)/9μ
式中、Vは沈降速度、gは重力加速度、rは粒子または分散相の半径、dは分散相の密度、dは媒体の密度、μは連続相の粘度である。粒子の沈降またはクリーミングの問題は、電気泳動、エレクトロウェッティング(electrowetting)、またはエレクトロクロミックディスプレイデバイスなど、粒子が液体系の中に分散している電気光学変調ディスプレイデバイスに特に関係する。このような系中の粒子は、沈降することもクリーミングすることもなく、中立的に浮遊していることが重要である。このような流体中での固体粒子と連続相の粘度と密度の違いは一般に大きいため、その影響を小さくするようポリマー添加剤を用いて連続相の粘度を大きくする方法などが用いられているが、このような溶液は粒子の電気的移動度を低下させるおそれがある。もう一つの問題は、分散相としてシリコーン油を用いる場合、これらの多くの用途のため、その中に効果的に溶解または分散できる添加剤が限定されることである。
【0010】
前述の特許およびその他の出版物の多くは、適度に広い粒度分布を持つO/O型粒子を開示しているが、1μm以上の大きさで、同時に狭い粒度分布を備えた粒子を開示しているものはない。
【0011】
Wileyらは、米国特許第2,932,629号で、水媒体中(O/W)において1μm以上の油滴を安定化するため、懸濁化剤として固体のコロイド状シリカを使用することを述べている。安定化は、固体のコロイド状シリカ粒子の疎水性−親水性バランスに影響する水溶性“促進剤”によって促進される。この特許に述べられているように、促進剤は、親油性または疎水性モノマー液滴と水媒体との液−液界面に固体コロイドの粒子を移動させる。
【0012】
【特許文献1】米国特許第2,932,629号明細書
【特許文献2】国際公開第2003/000396号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように、一方の相がシリコーン油であるような、先行技術のO/O型エマルションでは得られない、連続相と分散相の両者が特定の望ましい性質または性質の組み合わせを備えている、O/O型組成物が求められている。用途に応じ、2つまたはそれ以上のエマルション相に特に求められる性質は、低い比誘電率または無極性である。更に、分散相に着色剤、ポリマー、またはその他の添加剤が混ざり易いことも望ましい。また、分散相が1μm以上の大きさを持つ液滴からなることも望ましい。新たな、または改良された性質を備えたO/O型組成物は、このような材料に関する当業者に公知の様々な用途に有益と考えられる。更に、これまでに得られたことのない新たな、または改良された性質を備えたO/O型組成物は、このような材料の新たな用途の開発の機会を与えるものと考えられる。そこで、本発明の目的は、前述の問題の1つ以上を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
簡略にまとめるならば、本発明の態様の一つは、連続する第2油相中に液滴として分散した第1油相を含む油中油型エマルションを含む組成物に関する。この液滴は、所定のまたは制御された大きさおよび粒度分布と、1〜10μmの数中位径とを備えている。第1油相は第2油相に殆ど混和しない。第1油相は1つ以上の第1油類を含み、第2油相は1つ以上の第2油類を含む。第1油相は必要に応じて着色剤および/またはポリマーを更に含む。液滴は、比較的小さな表面疎水化固体粒子の層でほぼ覆われ、または被覆されている。
【0015】
本発明のもう一つの態様は、このような油中油型エマルションの製造方法から成る。この方法は、効果的な量の表面疎水化固体粒子の存在下で、1つ以上の第1油類を含む第1油組成物を1つ以上の第2油類を含む第2油組成物中に分散させて、コロイド状に安定なエマルションを生成するものである。第1油相は必要に応じて着色剤および/またはポリマーを含み、1〜10μmの数中位径に一致する所定のまたは制御された大きさと粒度分布を備えた液滴の形を成している。
【0016】
本発明は、所定のまたは制御された大きさと粒度分布という特徴を持つ分散相を生成するだけでなく、着色剤や、液滴に所望の性質を持たせるために用いられる官能性ポリマーなどの他の成分の化学的性質にあまり影響されない、O/O型エマルション粒子を製造する有利な方法を提示する。
【0017】
このように、本発明は、連続有機相とは混和しない分散有機相中に可溶または分散可能な様々な種類の着色剤を加えたO/O型組成物の製造を意図している。生成する分散液滴の大きさと粒度分布は、微粒子状懸濁安定剤とも呼ばれる表面疎水化固体粒子の、分散相に対する相対量と大きさによって予め決定し、制御することができる。望ましい実施の形態においては、表面疎水化固体粒子は、シラン化剤と反応させてシリカ粒子の表面を疎水性としたシリカ粒子である。このO/O型組成物は合一(coalescence)に対して優れた安定性を持ち、沈降速度が極度に遅いため沈降せず、中立的に浮遊している。分散液滴は、望ましくは1μm以上の大きさと狭い粒度分布とを持つ。ある望ましい実施の形態では、エマルションの2つの相、連続相と分散または非連続相は似通った屈折率を持ち、分散相は連続相と異なる色に着色されている。このようなO/O型組成物は、分散油相中の油とそれを取り囲む微粒子安定剤によって着色剤を効果的に封入することで、異なる様々な着色剤に対してほぼ共通する表面を形成するには有利であり、このため、特定の用途、例えば、電気駆動型ディスプレイ類、液体調色装置(toning systems)、静電印刷インク等の画像形成装置などの用途に応じて、所定の色系統に亘る挙動をより良く予想することができる。
【0018】
油とは、水と混和せず、一般に可燃性であり、望ましくは不揮発性であるが、エーテルに可溶な液状化合物を指す。油組成物とは、1つ以上の油類、例えば油類の混合物または単一の油を指す。
【0019】
比誘電率とは、物質が電界を保持する能力の指標をいい、物質の極性の指標である。媒体の比誘電率εは、真空と比較した、距離r離れた荷電粒子qおよびqの引力Fを減じるその能力である。比誘電率εは、方程式F=q/(εr)で定義される。よく知られているいくつかの物質の比誘電率を挙げると、水80.4、メタノール33.6、ベンゼン2.3である。水などの比誘電率の高い溶媒は一般に極性官能基を持ち、しばしば高い双極子モーメントを持つ。
【0020】
相とは、液状油組成物とその中に溶解または分散させた全ての添加剤の両方を含む、相の組成物全体を指すものである。油組成物、液状キャリア、または流体とは、油相に含まれる全ての有機溶媒または液状有機溶媒混合物を指す。これらの溶媒は純粋な状態では室温で本質的に液体であり、溶解させた本質的に固体の物質や液体中に分散させた固体を含まないものである。状況に応じ、様々な性質は、相の組成物全体、あるいは相中の油組成物のみのいずれかを指している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、表面疎水化シリカ粒子などの固体微粒子安定剤を使用して、低比誘電率の、本質的に不揮発性の有機液体、例えば有機リン酸液体またはシリコーン油などを含む不連続油相の液滴を、本質的に不揮発性の炭化水素などの別の低比誘電率有機液体の連続相中に分散させた、油中油(O/O)型組成物に関する。この組成物には更に着色剤を加えることができる。このようなエマルション中の分散相は、1μm以上の数中位径を持ち、合一に対して優れた安定性を備え、相対的に非常に狭い粒度分布を持つよう制御することができる。このエマルションは比較的簡単で安価な方法で製造可能である。
【0022】
連続油相のための液状キャリアは、用途に応じ、比誘電率、沸点、溶解度などの性質に基づいて選ぶことができる。ある実施の形態において、望ましい流体は、低い比誘電率(10以下)、高い沸点(大気圧で100℃以上)、25℃で50cP以下の粘度を持つものである。不連続相の流体は、望ましくは連続相の流体に対して、室温で1重量%以下の溶解度を持つ。更に、ストークスの法則に従って、O/O型エマルション中での分散相の沈降速度を小さくしてエマルション液滴の中立的な浮力を保つため、不連続相と連続相との密度の差を小さく、また分散相液滴の数中位径を十分に小さくするべきである。
【0023】
連続相のための油の選択は、更に、分散油相との化学反応のしにくさや、化学的親和性に基づいて行う。電気光学的変調を行う場でエマルションを使用する場合など、分散液滴が移動し易いことが望ましい場合には、流体の粘度を低くする。O/O型組成物の光透過性が良いことが望まれる用途では、連続相流体と液滴の屈折率をほぼ等しくして、散乱を最小にすることが望ましい。ここでは、連続相またはそのキャリア流体の屈折率と、分散相またはそのキャリア流体の屈折率との差が0〜0.3、望ましくは0.05〜0.2ならば、“ほぼ等しい”とする。更に、連続相の流体は、分散油相に加えられているいくつかのポリマー類または着色剤に対して貧溶媒となるものを選ぶ。このような条件であると、ポリマー類と着色剤とを含む液滴を分散させる際に使用できる材料の範囲が広くなるため、液滴の製造に有利である。
【0024】
連続相に関しては、一般式C2n+2(nは6〜20)で示される飽和直鎖または分枝炭化水素類またはアルカン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化有機溶媒、およびシリコーン油などの有機溶媒が、連続相に用いられるいくつかの適した種類の液状流体であり、これらの流体は、単一の流体から成るものである。しかし、その化学的および物理的性質を調節するため、流体に1つ以上の油類を混合することができる。有用な炭化水素類としては、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、キシレン、トルエン、ナフタレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、脂肪族炭化水素類(ISOPARシリーズ(エクソン(Exxon)))、NORPAR(エクソンのノルマルパラフィン系液体の1シリーズ)、SHELL−SOL(シェル(Shell))、SOL−TROL(シェル))、ナフサ、およびその他の石油系溶剤、例えば、上級灯油(superior kerosene)、パラフィン油、白色鉱油、モレックスラフィネート(molex raffinate)など、またはこれらの適当な混合物が挙げられる(但し、これらに限定しない)。これらの材料は一般に低密度である。シリコーン油類の有用は例としては、オクタメチルシクロシロキサンおよび高分子量の環状シロキサン類、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、ヘキサメチルジシロキサン、およびポリジメチルシロキサンが挙げられる(但し、これらに限定しない)。これらの材料も一般に低密度である。その他の有用な有機溶媒としては、エポキシド類、例えば、デカンエポキシドおよびドデカンエポキシドなど、ビニルエーテル類、例えば、シクロヘキシルビニルエーテなどが挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【0025】
更に、連続相流体は、分散油滴の表面エネルギーまたは電荷を調整する表面調整剤を含んでいても良い。望ましくは、流体は明澄または透明で、それ自体何の色も示さないものであるが、先にも述べたように、本発明によってそのように制限されるものではない。連続相は、望ましくは低比誘電率組成物で、殆どイオンを含まないものである。
【0026】
本発明によるO/O型エマルション中の分散または不連続相に用いられる油類は不揮発性で、望ましくは無極性の液体であって、ある実施の形態においては望ましくは有機リン酸液体またはシリコーン油である。望ましい有機リン酸液体としては、例えば、リン酸の、分枝または非分枝アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、およびアルキルアリールエステル系溶媒(リン酸ジアルキル、ジアリール、トリアルキル、およびトリアリールなど)が挙げられる。その中の有機基は、置換されていても置換されていなくても良く、望ましい置換基としては、ハロゲン類やエーテル類などの無極性基が挙げられる。望ましい実施の形態では、リン酸ジまたはトリアルキルの各アルキル基は1〜10の炭素原子、より望ましくは2〜8の炭素原子を含むものである。アリール基は、例えば、リン酸トリクレジルに含まれているような置換された環であっても良い。リン酸ジまたはトリアルキルおよびアリールのアルキルまたはアリール基は、全て同じでも異なっていても良い。特に望ましいリン酸トリアルキルはリン酸トリエチルである。異なる液状有機リン酸類の混合物、例えば、リン酸ジアルキルとリン酸トリアルキルとの混合物、またはリン酸ジアリールとリン酸トリアリールとの混合物を使用することも可能である。望ましくは、これらのリン酸類は、大気圧で100℃以上の沸点と、25以下の比誘電率と、25℃で100cP以下の粘度を持ち、連続相に殆ど不溶である。更に、連続相へ分散し易くするため、分散油相液体にポリマー類と必要に応じて着色剤とを加えた後の最終的な粘度は、25℃で200cP以下が望ましく、より望ましくは100cP以下である。
【0027】
分散相に用いられる油は、液滴を生成する温度において、連続相中に小さな液滴を生じるものでなければならない。小液滴の生成法としては、高剪断乳化装置や高圧ホモジナイザの他に、フロースルージェット、メンブラン、ノズル、またはオリフィスが挙げられる。電界または音波を用いて小液滴の生成を促しても良い。
【0028】
連続相中に分散相を乳化させる際または乳化させた後の安定性を高めるため、疎水性表面を持つ固体粒子安定剤が用いられる。様々な無機粒子、例えば、疎水性材料で表面を処理したアルミナやケイ素含有酸化物などの金属酸化物の使用が適している。あるいは、適当な固体有機コロイド状粒子、例えば、米国特許第4,965,131号に記載のような共重合体粒子を固体微粒子安定剤として使用しても良い。
【0029】
特に望ましい表面疎水化固体粒子安定剤は、疎水性シリカと呼ばれるものである。このようなシリカ粒子は、油類と均質化する前で、0.1〜5mmの平均粒径を持つ。均質化の間にシリカ粒子は砕け、透過型顕微鏡による測定で500ナノメートル(nm)以下に粒径が減少する。分散相を効果的に取り囲んで安定化させるものはこのような粒子である。小さくなった疎水性シリカ粒子の大きさは10〜300nm、望ましくは30〜150nmである。この粒子の大きさと量が分散相液滴の大きさを制御する。疎水性シリカが望ましいが、前述のように、疎水性または無極性油に分散可能なその他の固体有機および/または無機微粒子も使用可能である。
【0030】
本発明のO/O型組成物の製造に用いられる疎水性シリカとしては、シリカ表面を疎水性とする市販のシラン化剤などの反応性ケイ素含有化合物で表面処理した、様々なフュームドシリカ類が挙げられる。特に有用な疎水性シリカ類としては、キャボット・コーポレーション(Cabot Corporation)製のNANOGELおよびCAB−O−SIL TS 610が挙げられる。必要な安定性を得るため、シリカ類の混合物を用いても良い。
【0031】
表面疎水化固体粒子の適当な含有量は、分散油相に対して5〜75重量%、望ましくは分散油相の5〜50重量%である。
【0032】
望ましくは、表面疎水化固体粒子安定剤は、連続油相に可溶な共安定剤と共に使用する。より詳細には、共安定剤は、分散相油滴と無極性の連続油相との界面での表面疎水化固体粒子安定剤の吸着を促進または増進する。具体的には、この共安定剤と粒子安定剤との組み合わせは、連続相中に分散相液滴が良好に分散し続けるのを助け、これにより、特にある無極性油中に別の無極性油が分散している場合にはO/O型組成物の保存期間が長くなる。固体粒子安定剤を分散相液滴と連続相との界面に移動させるために、連続有機相に可溶で連続相中の固体粒子安定剤の表面エネルギーに好ましい影響を与えるような適当な共安定剤が用いられる。このような化合物は、少なくとも2つの異なるセグメントまたは部分を含むことができ、第1のセグメントは分散相に引き付けられる部分から成り、第2のセグメントは連続相に可溶な部分から成る。例えば、第1セグメントがアミン基から成り、第2セグメントが無極性モノマー、例えばイソブチレンなどの繰り返し単位から成るものである。有用な共安定剤としては、例えば、OLOA(シェブロン(Chevron))やSOLSPERSE(ノベオン(Noveon))の商品名で市販の化合物が挙げられる。例えば、SOLSPERSE 13940は、ポリエステルアミン(アジリジン−ヒドロキシステアリン酸共重合体)である。望ましい共安定剤は、ポリイソブチレンのポリエチレンイミン置換スクシンイミド誘導体である、OLOA 11000である。
【0033】
本発明の実施において有用な更にもう一つの共安定剤の種類は、アミンを含む小さな有機分子、特に複素環式アミン類から誘導したものである。いくつかの望ましい例は、N−(1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2−ドデシルスクシンイミド(SANDUVOR 3058)、2−ドデシル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)スクシンイミド(SANDUVOR 3055)、および2−ドデシル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)スクシンイミド(SANDUVOR 3056)である。
【0034】
一般に共安定剤の使用量は固体粒子安定剤の1〜15重量%、より望ましくは1〜10重量%である。
【0035】
前述のように、O/O型組成物の分散相には、有用な成分、例えば、顔料、ポリマー、レーキ顔料、染料、顔料−ポリマー複合物、染料−ポリマー複合物、またはこれらのいくつかの組み合わせを加えることができ、また望ましくはこれらを加える。望ましくは、分散油相中に含まれる顔料、ポリマー、および/または顔料−ポリマー複合物の総量は、分散相の1〜50重量%であり、分散相中の油の含有量は、分散相の50〜99重量%である。ある実施の形態において、分散油相は、分散第1油相の1〜30重量%、望ましくは1〜15重量%、分散油相中に分子状に溶解させた1つ以上のポリマー類の0.1〜60重量%、望ましくは1〜40重量%の着色剤(顔料または染料など)を含んでいる。分散相中に分散させるため、顔料、レーキ顔料、または顔料−ポリマー複合物は、分散第1油相の直径に対して十分に小さい平均粒径、望ましくは平均して10〜100nmの平均粒径を持つものでなければならない。
【0036】
ある実施の形態では、ポリマーと着色剤とを溶融反応した後、粉砕、摩砕、またはボールミルにかけるといった物理的工程により、顔料−ポリマー複合物を生成する。このような複合物は、以前は一般的な電子写真用トナーの製造に使われており、当該分野においてよく知られている。このようなトナーの製造に用いられるポリマーや着色剤も知られており、また多くの製造業者から市販されている。顔料−ポリマー複合物は、ポリマーが油に溶解するまで複合物中で撹拌することにより、分散相用の油流体に混ぜ合わせることができる。また顔料を、ポリマーを加え、または加えずに分散相用の油の中でミル(mill)しても良い。顔料−ポリマー複合物中の顔料の含有量は、顔料−ポリマー複合物の0.1〜80重量%である。顔料−ポリマー複合物は、分散相の1〜50重量%、望ましくは5〜30重量%、最も望ましくは10〜25重量%の量で用いることができる。
【0037】
本発明の実施において、着色剤と共に、または着色剤を加えずに油滴に加える有用なポリマー類は、望ましくは油溶性樹脂である。このようなポリマーとしては、ポリエステル類、スチレン類(例えば、スチレンおよびクロロスチレン)、モノオレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、およびイソプレン)、ビニルエステル類(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、および酪酸ビニル)、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、およびメタクリル酸ドデシル)、ビニルエーテル類(例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、およびビニルブチルエーテル)、ビニルケトン類(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、およびビニルイソプロペニルケトン)などのホモポリマーおよび共重合体、更にこれらの混合物が挙げられる(但し、これらに限定しない)。特に望ましいバインダ樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン/アクリル酸アルキル共重合体、スチレン/メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。更に、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、変性ロジン、パラフィン類、ワックス類、およびこれらの混合物も挙げることができる。望ましい実施の形態において、O/O型組成物に最も望ましい樹脂はポリエステル類で、これらは分散相の油に可溶である。適当なポリエステル樹脂としては、ビスフェノールAから誘導したポリエステル類が挙げられる。望ましいポリマーの一つは、ポリエステル、例えば、ビスフェノールAのポリエステル共重合体であるTUFTONE NE−303(花王株式会社)である。
【0038】
分散相に用いられる任意のポリマー類は、特定の用途に応じて、ポリマー類を加えることで得られる好ましい性質に基づいて選ばれる。例えば、エマルション組成物が電界または磁界の影響下にあるときの連続相中での分散相の移動度を制御するため、荷電基で官能化されるよう設計または前もって選ばれたポリマーを用いる。更に、分散油相液滴の粘度に影響するようなポリマーを選んでも良い。
【0039】
本発明で有用な染料は、黒などの特定の色が得られる純粋な化合物または染料類の混合物である。染料は、可視光または紫外光のいずれかを照らすと、蛍光性、感光性、変色性、または脱色性のものであっても良い。更に、染料は、例えば、熱、光化学、または化学拡散工程により重合して、液滴内部に固体の吸収ポリマーを生成するものでも良い。染料として望ましい性質としては、耐光性、懸濁液体への溶解性、および色が挙げられる。コストが低いことも一つの要素である。これらの染料は一般に、アゾ、アントラキノン、およびトリフェニルメタン型染料から選ばれ、油相への溶解性を高めるため化学的に変性しても良い。有用なアゾ染料としては、オイルレッド染料と、SUDANレッドおよびSUDANブラックシリーズの染料が挙げられる(但し、これらに限定しない)。有用なアントラキノン染料としては、オイルブルー染料と、MACROLEXブルーシリーズの染料が挙げられる(但し、これらに限定しない)。有用なトリフェニルメタン染料としては、ミヒラーのヒドロール(hydrol)、マラカイトグリーン、クリスタルバイオレット、およびオーラミンOが挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【0040】
純顔料はどのような顔料でも良く、一般に明色の粒子には、ルチル(チタニア)、アナタース(チタニア)、硫酸バリウム、カオリン、または酸化亜鉛などの顔料が有用である。一部の典型的な粒子は、高い屈折率、高い散乱係数、および低い吸収係数を備えている。その他の粒子は、塗料やインキに用いられるカーボンブラックまたは着色顔料などの吸収性のものである。更に顔料は連続相に不溶でなければならない。ジアリライドイエロー、HANSAイエロー(クラリアント(Clariant))、およびベンジジンイエローなどの黄色顔料も同様のディスプレイに使用できることが分かっている。その他の反射性材料、例えば金属粒子などの非顔料系材料を、明色粒子に用いても良い。
【0041】
有用な純顔料としては、PbCrO、SUNFASTブルー15:3、SUNFASTマゼンタ122、シアンブルーGT 55−3295(ニュージャージー州ウェイン、アメリカン・サイアナミッド・カンパニー(American Cyanamid Company))、CIBACRONブラックBG(デラウェア州ニューポート、チバ・カンパニー・インク(Ciba Company, Inc.))、CIBACRONターコイズブルーG(チバ)、CIBALONブラックBGL(チバ)、ORASOLブラックBRG(チバ)、ORASOLブラックRBL(チバ)、アセタミンブラックCBS(デラウェア州ウィルミントン、E.I.デュポン・ド・ネモー・アンド・カンパニー・インク(E.I. DuPont de Nemours and Company, Inc.)、以後、“デュポン”と略す)、CROCEINスカーレットN Ex(デュポン)(27290)、ファイバーブラックVF(デュポン)(30235)、LUXOLファストブラックL(デュポン)(ソルベントブラック17)、NIROSINEベースNo.424(デュポン)(50415B)、オイルブラックBG(デュポン)(ソルベントブラック16)、ROTALINブラックRM(デュポン)、SEVRONブリリアントレッド3B(デュポン)、ベーシックブラックDSC(ダイ・スペシャリティーズ・インク(Dye Specialties, Inc.))、HECTOLENEブラック(ダイ・スペシャリティーズ・インク)、AZOSOLブリリアントブルーB(ニュージャージー州ウェイン、GAF染料化学品部)(ソルベントブルー9)、AZOSOLブリリアントグリーンBA(GAF)(ソルベントグリーン2)、AZOSOLファストブリリアントレッドB(GAF)、AZOSOLファストオレンジRA Conc.(GAF)(ソルベントオレンジ20)、AZOSOLファストイエローGRA Conc.(GAF)(13900A)、ベーシックブラックKMPA(GAF)、BENZOFIXブラックCW−CF(GAF)(35435)、CELLITAZOL BNFV Ex Soluble CF(GAF)(ディスパースブラック9)、CELLITONファストブルーAF Ex Conc(GAF)(ディスパースブルー9)、CYPERブラックIA(GAF)(ベーシックブラック3)、DIAMlNEブラックCAP Ex Conc(GAF)(30235)、ダイアモンドブラックEAN Hi Con. CF(GAF)(15710)、ダイアモンドブラックPBBA Ex(GAF)(16505)、ダイレクトディープブラックEA Ex CF(GAF)(30235)、HANSAイエローG(GAF)(11680)、INDANTHRENEブラックBBK Powd.(GAF)(59850)、INDOCARBON CLGS Conc. CF(GAF)(53295)、KATIGENディープブラックNND Hi Conc. CF(GAF)(15711)、RAPIDOGENブラック3G(GAF)(アゾイックブラック4)、SULPHONEシアニンブラックBA−CF(GAF)(26370)、ZAMBEZIブラックVD Ex Conc.(GAF)(30015)、RUBANOXレッドCP−1495(オハイオ州クリーブランド、ザ・シャーウィン・ウィリアムズ・カンパニー(The Sherwin-Williams Company))(15630)、REGAL 330(キャボット・コーポレーション(Cabot Corporation))、RAVEN 11(ジョージア州アトランタ、コロンビアン・カーボン・カンパニー(Columbian Carbon Company))(粒径25μmのカーボンブラック凝集体)、STATEX B−12(コロンビアン・カーボン・カンパニー)(平均粒径33μmのファーネスブラック)、およびクロムグリーンが挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【0042】
レーキ顔料は粒子上に染料を沈殿させたもので、易溶性アニオン染料の金属塩である。これらは、1つ以上のスルホン基またはカルボン酸基を含む、アゾ、トリフェニルメタン、またはアントラキノン構造の染料である。これらは通常、カルシウム、バリウム、またはアルミニウム塩によって基材上に沈殿する。典型的な例は、PEACOCK BLUEレーキ(CIピグメントブルー24)、PERSIAN ORANGE(CIアシッドオレンジ7のレーキ)、BLACK M TONER(GAF)(カーボンブラックとレーキ上に沈殿させた黒色染料との混合物)である。
【0043】
顔料−ポリマー複合物には、顔料とポリマー以外に、有機カチオン類、例えば、第4級アンモニウムおよびホスホニウム化合物などの他の添加剤を加えても良い。その具体的な例としては、ラウラミド(lauramido)プロピルトリメチルアンモニウム=メチルスルファート、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム=m−ニトロベンゼンスルホナート、メチルトリフェニルホスホニウム=テトラフルオロボラート、およびメチルトリフェニルホスホニウム=トシラートが挙げられる(但し、これらに限定しない)。
【0044】
本件に記載の分散油相液滴は、表面疎水化固体粒子安定剤と共安定剤の存在下で、1つ以上の第2油類から成る連続相中に1つ以上の第1油類から成る不連続液滴を形成し、分散油相液滴の大きさを小さくし、液滴表面の固体粒子安定剤の作用によって、液滴の合一を制限することにより調製可能である。これらの工程を行うには、バッチミキサ、プラネタリーミキサ、単または複スクリュー押出器、動的または静的ミキサ、コロイドミル、高圧ホモジナイザ、超音波破砕機、またはこれらの組み合わせなど、どのような種類の混合および剪断装置を用いても良い。本発明の工程にはいずれの高剪断型撹拌機も使用できるが、望ましい均質化装置は、ミクロフルイディクス・マニュファクチャリング(Microfluidics Manufacturing)製の110T型などのMICROFLUIDIZERである。この装置では、高剪断撹拌部において分散油相の液滴を連続相中に分散させ、粒径を小さくする。この部分にある間に、分散相の粒径は小さくなり、連続相中に分散した均一な大きさの油相液滴となる。それぞれの分散油相液滴は表面疎水化固体粒子安定剤で取り囲まれており、この固体粒子安定剤が液滴の大きさと粒度分布とを所定の範囲内に制限し、制御する。ある実施の形態では、表面疎水化シリカ粒子はまず、1つ以上の第1油類と組み合わせる前に、連続相中でより小さな粒子に砕かれる。
【0045】
示したように、ホモジナイザから排出後には、液滴の粒径はほぼ完成させることができる。こうして分散相液滴は、疎水性シリカ粒子で取り囲まれたまま連続相中に残る。例えば、O/O型組成物の製造工程は、分散相の1つ以上の油類中に分散させた顔料−ポリマー複合物と、疎水性シリカまたはその他の固体粒子安定剤と共安定剤とを含む連続相の1つ以上の油類とを組み合わせることにより行うことができる。このとき、分散相の量は連続相の1〜50重量%、望ましくは5〜40重量%であり、分散相液滴の粒径を最終的に望まれる粒径より小さくするため、高速撹拌、超音波装置、高圧ホモジナイザなどの適当な装置を用いて成分を激しくかき混ぜる。工程の温度は、液滴の乳化に最も適した粘度となるよう調節することができる。固体粒子安定剤の存在が、平衡に達して粒径がもうこれ以上大きくならなくなるまでに起こる合一の程度を制御する。本発明に記載のO/O型組成物の分散液滴の数中位径は、望ましくは1〜10μm、より望ましくは1〜5μmである。
【0046】
本発明に従い、様々な成分の量とそれらの互いの関係とは、O/O型組成物の所望とする最終的な性質に応じて広い範囲で変えることができる。分散油相液滴の大きさと量は固体粒子安定剤の粒子の大きさと量に応じて変わる。つまり、高剪断撹拌によって分散油相液滴の大きさはより小さくなるため、油相液滴の表面を全て覆って液滴が際限なく合一するのを防ぎ、生成する液滴を揃った大きさと粒度分布とするために、所定の大きさにおいて必要とされる表面疎水化シリカなどの固体粒子安定剤の量は、多くなる。
【0047】
本発明によるO/O型組成物は、電気光学変調ディスプレイデバイスなど、公知の、または新たに開発された様々な用途に使用できる。電気光学変調ディスプレイデバイスは、画像形成材料に少なくとも電界または電子の移動を与えて、画像形成材料の光学的状態を変調または変化させる表示ディスプレイデバイスであり、例えば、電気泳動、エレクトロウェッティング、およびエレクトロクロミックディスプレイデバイスである。画像を形成する用途としては、例えば、インクの分離と移動に静電気を用いる、粒子移動型表示(migration imaging)および液体調色装置が挙げられる。工業的用途としては、例えば、機械装置のコーティングや潤滑膜が挙げられる。
【0048】
本発明のある具体的な実施の形態では、O/O型組成物は、液体系に着色粒子を分散させた電気泳動ディスプレイなどの電気光学変調ディスプレイデバイスの表示用流体として有用である。この液体系は望ましくは、50〜95重量%の連続相と5〜50重量%の着色した分散油滴とを含んでいる。
【実施例】
【0049】
以下の実施例により、本発明を更に説明する。
【0050】
以下の実施例で用いた、TUFTONE NE−303、ビスフェノールAポリエステル樹脂ポリマー(密度1.16g/cc)は、花王株式会社の一部門である、カオウ・スペシャルティーズ・アメリカズLLCより入手した。実施例で用いた、カーボンブラック顔料、REGAL 330(密度1.8g/cc)は、マサチューセッツ州ビルリカ、キャボット・コーポレーションより入手した。使用した着色顔料のSUNFASTブルー15:3(PB15:3)およびSUNFASTマゼンタ122(PR122)は、サン・ケミカルズより入手した。リン酸トリエチル(TEP)およびn−ドデカンは、ウィスコンシン州ミルウォーキー、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)より購入した。共安定剤OLOA 11000、ポリイソブチレンスクシンイミド(62%活性、鉱油中)は、カリフォルニア州サンラモン、シェブロンより入手した。SANDUVOR 3058(N−(1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2−ドデシルスクシンイミド)は、クラリアントより入手した。実施例で用いた表面疎水化シリカ、疎水性シラン処理フュームドシリカ、CAB−O−SILナノゲルグレード08N半透明エアロゲル(CS−1)およびTS 610(CS−2)は、イリノイ州タスコラ、キャボット・コーポレーションより購入した。
【0051】
以下の表1に、様々な油相組成物とその性質を掲げる。粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)コーン/プレート粘度計を用いて25℃で測定した。その他のパラメータは様々な刊行物から得た。添加剤を含む油相の密度は加重平均より算出した。
【表1】

【0052】
(実施例1〜3)
25重量%の顔料(カーボンブラックまたは着色顔料のいずれか)と75重量%のTUFTONE NE−303ポリマーとから成る顔料−ポリマー樹脂複合物(4g)を、16gのTEPに溶解した。これを、0.125gのOLOA 11000(100%活性)と1.75gのCS−1とを含む50gのドデカン中に、シルバーソン(Silverson)のオーバーヘッドSILVERSON L4Rミキサを用いて、最高速度で1分間、分散させた。生成した分散液を、ミクロフルイディクスの110T型MICROFLUIDIZERを用い、12,000ポンド/平方インチ(約844kg/cm)の圧力で、微細な分散液が得られるまで更にホモジナイスした。数中位径D(n)および体積中位径D(v)を、波長633nm、4mWのHe−Neレーザーを用いる、MALVERN ZETASIZER ZSを使用し、低角レーザー光散乱法で測定した。中央値(50%)は、この値より上に分散の50%、下に50%があるよう、集団を2つの等半分に正確に分けたときの粒径である。これらの実施例および以下の実施例で述べるエマルションは、沈降が少なく粒径が変化しないことから明らかなように、周囲温度で数ヶ月間は安定であった。
【0053】
(実施例4〜6)
これらの実施例は、実施例1〜3に述べたものと同じ方法を用いて行った。但し、実施例4では顔料を加えず、樹脂として3gのTUFTONE NE−303ポリマーを用い、実施例5では異なるシリカを用い、実施例6ではOLOA 11000分散剤を用いなかった。
【0054】
実施例1〜6で得られた粒径を下記の表2に示す。OLOA共安定剤を加えない実施例6では安定な粒子が形成されなかった。他の実施例では全て、数中位径のCVが狭いことから明らかなように、非常に粒度分布の狭い粒子が生成した。更に、各試料のD(n)とD(v)の値が非常に近いことも粒径分布が均一であることを示している。CS−2シリカでは、CS−1に比べて粒径が多少大きくなる。これは生成するO/O型エマルションの粒径に対する、異なるシリカの影響を示している。
【表2】

【0055】
(実施例7〜9)
これらの実施例では、共安定剤としてOLOA 11000の代わりにSANDUVOR 3058を用いる以外、上記の実施例4と同じ手法に従った。更に、SANDUVOR 3058とフュームドシリカの量を下記の表3に示すように変えた。実施例7および実施例8のように、同量のシリカに対してSANDUVOR共安定剤の量を多くすると、全ての粒径が小さくなった。同様に、実施例7および実施例9のようにシリカの量を増やすと、再び粒径は小さくなった。全ての場合において、粒度分布は比較的狭かった。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する第2油相中に液滴として分散した第1油相を含む油中油型エマルションの製造方法であって、
前記液滴は、所定の制御された大きさおよび粒度分布と、1〜10μmの数中位径とを備え、
前記第1油相は前記第2油相に殆ど混和することなく、
前記第1油相は1つ以上の第1油類を含み、前記第2油相は1つ以上の第2油類を含み、
前記方法は、効果的な量の表面疎水化固体粒子の存在下で、前記第1油相の1つ以上の第1油類を前記第2油相の1つ以上の第2油類中に分散させて、前記第2油相中に前記第1油相の安定な分散物を生成する工程を含み、
前記第1油相は必要に応じて着色剤および/またはポリマーを更に含む、
ことを特徴とする油中油型エマルションの製造方法。
【請求項2】
前記表面疎水化固体粒子は10〜300nmの平均粒径を持つことを特徴とする、請求項1に記載の油中油型エマルションの製造方法。
【請求項3】
分散させた固体粒子または溶解させた物質を必要に応じて含む、1つ以上の前記第1油類を、前記表面疎水化固体粒子を含む1つ以上の前記第2油類中に分散させるため、高剪断撹拌を用いることを特徴とする、請求項1に記載の油中油型エマルションの製造方法。
【請求項4】
前記表面疎水化固体粒子は、疎水性材料で表面処理した無機粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の油中油型エマルションの製造方法。
【請求項5】
前記表面疎水化固体粒子は金属酸化物または酸化ケイ素を含み、前記粒子の表面は反応性のケイ素含有有機化合物で処理されていることを特徴とする、請求項4に記載の油中油型エマルションの製造方法。
【請求項6】
前記表面疎水化固体粒子はシリカ粒子を含み、前記シリカ粒子の表面は、1つ以上のシラン化剤(silating agent)で処理され、前記粒子上に疎水性表面が形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の油中油型エマルションの製造方法。
【請求項7】
前記表面疎水化固体粒子は30〜150nmの平均粒径を持つことを特徴とする、請求項2に記載の油中油型エマルションの製造方法。
【請求項8】
前記表面疎水化固体粒子の量は、前記第1油相の5〜75重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の油中油型エマルションの製造方法。
【請求項9】
効果的な量の表面疎水化固体粒子の存在下で、前記第1油相の1つ以上の前記第1油類を、1つ以上の前記第2油類中に分散させる場合、前記第2油相の1つ以上の前記第2油類は、前記第1油相液滴と前記連続第2油相との界面での前記表面疎水化固体粒子の吸着性を高めるため、前記第2油相の1つ以上の前記第2油類に可溶な効果的な量の共安定剤を更に含んでいることを特徴とする、請求項1に記載の油中油型エマルションの製造方法。
【請求項10】
前記共安定剤は、ポリイソブチレンのポリエチレンイミン置換スクシンイミド誘導体、N−(1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2−ドデシルスクシンイミド、2−ドデシル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)スクシンイミド、および2−ドデシル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)スクシンイミドから成る群より選ばれる1つ以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項9に記載の油中油型エマルションの製造方法。
【請求項11】
1つ以上の前記第1油類は液状有機リン酸化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の油中油型エマルションの製造方法。
【請求項12】
連続する第2油相中に液滴として分散した第1油相を含む油中油型エマルションを含む組成物であって、
前記液滴は1〜10μmの数中位径を備え、
前記第1油相は前記第2油相に殆ど混和することなく、
前記第1油相は1つ以上の第1油類を含み、前記第2油相は1つ以上の第2油類を含み、
前記第1油相は必要に応じて着色剤および/またはポリマーを更に含み、
前記液滴は、比較的小さな表面疎水化固体粒子の層でほぼ覆われている、
ことを特徴とする組成物。
【請求項13】
前記表面疎水化固体粒子は1〜100nmの平均粒径を持つことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記表面疎水化固体粒子は、疎水性材料で表面処理した無機粒子を含むことを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記表面疎水化固体粒子は、反応性のケイ素含有有機化合物で処理した金属酸化物または酸化ケイ素を含むことを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記表面疎水化固体粒子は、シラン化剤で処理して前記粒子上に疎水性表面を形成したシリカ粒子を含むことを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記表面疎水化固体粒子は10〜300nmの平均粒径を持つことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記表面疎水化固体粒子の量は、前記第1油相の5〜75重量%であることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
前記油中油型エマルションは、前記第1油相液滴と前記連続第2油相との界面での前記表面疎水化固体粒子の吸着性を高めるため、前記連続第2油相に可溶な共安定剤を更に含むことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項20】
前記共安定剤は、ポリイソブチレンのポリエチレンイミン置換スクシンイミド誘導体、N−(1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2−ドデシルスクシンイミド、2−ドデシル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)スクシンイミド、および2−ドデシル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)スクシンイミドから成る群より選ばれる1つ以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
1つ以上の前記第1油類は液状有機リン酸化合物を含むことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項22】
前記連続第2油相中の1つ以上の前記第2油類の屈折率は、前記分散第1油相中の1つ以上の前記第1油類の屈折率とほぼ同じで、それぞれの屈折率の差は0〜0.3であることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項23】
それぞれの前記屈折率の差は0.05〜0.2であることを特徴とする、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記2相中の、1つ以上の前記第1油類および1つ以上の前記第2油類の、前記相に固体添加物を加える以前のそれぞれの比誘電率は、いずれも25以下であることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項25】
前記連続第2油相は10以下の比誘電率を持つことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項26】
前記第2油相は、ほぼ無極性の置換または非置換C〜C20アルカン類または芳香族炭化水素類から成る群より選ばれる1つ以上の溶媒、およびそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項27】
前記第2油相は、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、キシレン、トルエン、ナフタレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、石油系溶媒、パラフィン系液体、白色鉱油、シリコーン油類、および有機エポキシド類から成る群より選ばれる溶媒、およびそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記有機リン酸化合物は、大気圧で100℃以上の沸点と、25以下の比誘電率と、25℃で100cP以下の粘度とを備えていることを特徴とする、請求項21に記載の組成物。
【請求項29】
前記分散相液体中に、1つ以上の前記第1油類と、必要に応じてポリマー類、着色剤類、またはその他の添加剤とを加えた前記第1油相は、25℃で200cP以下の粘度を備えていることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項30】
前記第1油相は、リン酸の分枝または非分枝アルキル、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、アリール、およびアルキルアリールエステル類から成る群より選ばれる第1油を含み、
前記リン酸類中の有機基は置換されている、または非置換である、
ことを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項31】
前記第1油相は、リン酸トリアルキル類及びリン酸トリアリール類から成る群より選ばれる1つ以上の油類を含むことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項32】
前記分散第1油相中の1つ以上の前記第1油類および前記連続第2油相の沸点は、それぞれ大気圧で100℃以上であることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項33】
前記分散第1油相の含有量は、前記連続第2油相の1〜50重量%であることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項34】
前記分散第1油相は、分子状に溶解したポリマーを含むことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項35】
前記ポリマーはポリエステルであることを特徴とする、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記分散第1油相は着色剤を更に含むことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項37】
前記分散第1油相中の前記着色剤は、染料または顔料系着色剤であることを特徴とする、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記着色剤は10〜100nmの平均粒径を持つ顔料であることを特徴とする、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記顔料系着色剤は、顔料をポリマー中に分散させた顔料−ポリマー複合物を含むことを特徴とする、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
前記顔料−ポリマー複合物は、着色剤とポリマーとを溶融混合し、前記溶融体を固化した後、前記固体溶融体を粉砕または別な方法で物理的に微細化して粒子とした生成物であることを特徴とする、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記分散第1油相は、着色剤と分子状に溶解したポリマーの両方を含むことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項42】
前記分散第1油相は、前記分散第1油相の1〜30重量%の量の着色剤を含むことを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項43】
前記分散第1油相中の顔料、ポリマー、および/または顔料−ポリマー複合物の合計含有量は、前記分散相の1〜50重量%であり、1つ以上の前記第1油類の含有量は、前記分散相の50〜99重量%であることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−526633(P2009−526633A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554268(P2008−554268)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/002542
【国際公開番号】WO2007/094959
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】