説明

油冷式スクリュー圧縮機

【課題】ベルトが切断されたときに素早く対応して、吸込み絞り弁の一次側への油の漏れを抑えることができる油冷式スクリュー圧縮機を提供する。
【解決手段】作動室内に油を注入しつつ空気を圧縮する圧縮機本体1と、電動モータ2と、圧縮機本体1の回転軸及びモータ2の回転軸にそれぞれ設けられたプーリ1a,2aの間で掛け渡され、モータ2の動力を圧縮機本体1に伝達するベルト8と、圧縮機本体1の吸入側に設けられた吸込み絞り弁18と、を備えた油冷式スクリュー圧縮機において、モータ電流を検出する電流センサ7と、圧縮機本体1の運転中に、モータ電流の減少率Aを演算し、モータ電流の減少率Aが予め設定された閾値A以上であると判定したときに、吸込み絞り弁18を全閉状態に制御する制御装置3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動室内に油を注入しつつ空気を圧縮する圧縮機本体を備えた油冷式スクリュー圧縮機に係わり、特に、ベルトを介しモータの動力を伝達して圧縮機本体を駆動する油冷式スクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機本体の作動室内に油を注入することにより、油の冷却、潤滑、及びシール作用によって圧縮効率を高めることができる油冷式スクリュー圧縮機が知られている。圧縮機本体の吐出側には、圧縮空気から油を分離する油分離器が設けられている。そして、油分離器で分離された油は、圧縮機本体の作動室へ供給される一方、圧縮空気は、アフタークーラ等で冷却されて使用先へ供給されるようになっている。
【0003】
また、圧縮機本体の吸入側には、吸込み絞り弁が設けられている。圧縮機本体が停止すると、圧縮機本体の吐出側(高圧側)の圧縮空気及びこれに含まれる油は、圧縮機本体の吸入側(低圧側)へ逆流する。そのため、圧縮機本体を停止させる場合には、吸込み絞り弁を全閉状態に制御し、吸込み絞り弁の一次側への油の噴出を防ぐようになっている。
【0004】
ところで、油冷式スクリュー圧縮機においては、ベルトを介しモータの動力を伝達して圧縮機本体を駆動するタイプのものがある。ベルトは、経年的なのびや異物の噛込みによってプーリとの間でスリップが生じ、摩擦熱が発生する。そして、摩擦熱によってベルトが切断される可能性があり、ベルトが切断された場合には圧縮機本体が停止して逆流が発生する。そこで、例えばモータ電流が予め設定された閾値より小さくなったときにベルトが切断状態であると判定して、吸込み絞り弁を全閉状態に制御する方法が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−300087号公報(第1頁右欄6〜8行参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。すなわち、上記従来技術では、モータ電流に対する閾値を、ベルトが正常状態である場合のモータ電流より小さくなるように設定しなければならない。モータ電流は、負荷、すなわち圧縮機本体の吐出側圧力に追従する。そのため、例えば圧縮機本体の吐出側圧力を低下させるアンロード運転に切換えるような構成においては、アンロード運転中のモータ電流の最小値よりも小さくなるように閾値を設定しなければならない。そして、例えば、ロード運転中にベルトが切断すると、圧縮空気及び油の逆流が素早く始まるのにもかかわらず、モータ電流が閾値まで低下してベルトの切断状態を検知するまでに時間を要することになる。したがって、吸込み絞り弁の一次側への油の漏れが生じる。
【0007】
本発明の目的は、ベルトが切断されたときに素早く対応して、吸込み絞り弁の一次側への油の漏れを抑えることができる油冷式スクリュー圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために、作動室内に油を注入しつつ空気を圧縮する圧縮機本体と、電動モータと、前記圧縮機本体の回転軸及び前記モータの回転軸にそれぞれ設けられたプーリの間で掛け渡され、前記モータの動力を前記圧縮機本体に伝達するベルトと、前記圧縮機本体の吸入側に設けられた吸込み絞り弁と、を備えた油冷式スクリュー圧縮機において、前記モータの電流を検出する電流検出手段と、前記電流検出手段の検出結果に基づいて前記モータの電流の減少率を演算するモータ電流減少率演算手段と、前記圧縮機本体の運転中に、前記モータの電流の減少率が予め設定された閾値以上であるか否かを判断することにより、前記ベルトが切断状態であるか否かを判定するベルト異常判定手段と、前記ベルトが切断状態であると判定されたときに、前記吸込み絞り弁を全閉状態に制御する第1の弁制御手段と、を備える。
【0009】
このように本発明においては、モータの電流の減少率(言い換えれば、単位時間当たりのモータの電流の減少幅)が予め設定された閾値以上であるか否かを判断することにより、ベルトが切断状態であるか否かを判定する。これにより、例えばモータの電流が予め設定された閾値より小さいか否かを判断することにより、ベルトが切断状態であるか否かを判定する場合とは異なり、ベルトの切断状態を素早く検知することができる。したがって、ベルトが切断されたときに素早く対応して、吸込み絞り弁を全閉状態に制御することができ、吸込み絞り弁の一次側への油の漏れを抑えることができる。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記圧縮機本体の吐出側圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧縮機本体の吐出側圧力が予め設定された上限値まで上昇した場合に、前記吸込み絞り弁を全閉状態に制御してアンロード運転に切換え、そのアンロード運転中に前記圧縮機本体の吐出側圧力が予め設定された下限値まで下降した場合に、前記吸込み絞り弁を全開状態に制御してロード運転に復帰させる第2の弁制御手段と、を備え、前記モータの電流の減少率に対する前記閾値は、前記ベルトが正常状態における前記アンロード運転中の前記モータの電流の減少率より大きくなるように、予め設定される。
【0011】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記ベルトが切断状態であると判定された場合に、前記モータを停止するモータ停止手段を備える。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1つにおいて、好ましくは、前記ベルトが切断状態であると判定された場合に、その旨を表示する表示手段を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ベルトが切断されたときに素早く対応して、吸込み絞り弁の一次側への油の漏れを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における油冷式スクリュー圧縮機の構成を表す概略図である。
【図2】本発明の一実施形態における吸込み絞り弁の構造を表す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態における制御装置の構成を関連部品とともに表すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態における制御装置の運転制御に係わる制御処理内容を表すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態における制御装置の停止制御に係わる制御処理内容を表すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態における圧縮機本体の吐出側圧力及びモータの電流値の経時変化を一例として表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、本実施形態における油冷式スクリュー圧縮機の構成を表す概略図である。図2は、本実施形態における吸込み絞り弁の構造を表す断面図であり、吸込み絞り弁の開状態を示している。
【0017】
これら図1及び図2において、油冷式スクリュー圧縮機は、作動室内に油を注入しつつ空気を圧縮する圧縮機本体1と、電動モータ2と、制御装置3とを備えている。電源4からモータ2に電力を供給する電力供給配線5にはモータリレー6が介在しており、このモータリレー6は制御装置3によって開閉制御されている。また、電力供給配線5には電流センサ7が設けられており、この電流センサ7で検出されたモータ電流が制御装置3に出力されるようになっている。
【0018】
圧縮機本体1は、詳細を図示しないが、互いに噛み合うように回転する雌雄一対のスクリュロータと、これらスクリュロータを収納するケーシングとを備えており、スクリュロータの歯溝とケーシングの内壁との間で複数の作動室が形成されている。雌雄一対のスクリュロータのうちの一方(すなわち、雄ロータ又は雌ロータ)の軸端部にはプーリ1aが設けられ、モータ2の回転軸の端部にはプーリ2aが設けられ、これらプーリ1a,2aの間でベルト8が掛け渡されている。これにより、ベルト8を介しモータ2の回転力(動力)がスクリュロータに伝達される。そして、雌雄一対のスクリュロータが互いに噛み合うように回転することにより、複数の作動室が軸方向に移動しつつその容積が減少されて、作動室内の空気を圧縮するようになっている。
【0019】
圧縮機本体1の吐出側には、圧縮空気から油を分離するとともに分離した油を貯留する油分離器9が設けられている。油分離器9で分離された油は、油系統10を介し圧縮機本体1の作動室に供給されるようになっている。油系統10には、油を冷却するオイルクーラ11が設けられ、その下流側に油中の不純物を除去するオイルフィルタ12が設けられている。
【0020】
分離器9で分離された圧縮空気は、圧縮空気系統13を介し使用先に供給されるようになっている。圧縮空気系統13には、調圧逆止弁14が設けられ、その下流側に圧縮空気を冷却するアフタークーラ15などが設けられている。また、調圧弁14とアフタークーラ15との間には圧力センサ16が設けられており、この圧力センサ16で検出された圧縮機本体1の吐出側圧力が制御装置3に出力されるようになっている。
【0021】
圧縮機本体の吸入側には、吸気中の塵埃を除去する吸気フィルタ17と吸込み絞り弁18が設けられている。吸込み絞り弁18は、シリンダ部20内に摺動可能に設けられたピストン21と、このピストン21に接続された軸22と、この軸22の先端側(図2中左側)の小径部にスライド可能に挿通された弁体23と、この弁体23によって開閉される弁座24とを有している。シリンダ部20内はピストン21で区画されており、ピストン21の摺動方向一方側(図2中左側)にバネ室25が形成され、ピストン21の摺動方向他方側(図2中右側)に操作室(加圧室)26が形成されている。バネ室25内にはバネ27が収納されており、このバネ27の力が開弁方向の付勢力としてピストン21に作用している。また、操作室26内の圧力が閉弁方向の付勢力としてピストン21に作用している。
【0022】
吸込み絞り弁18の操作室26と油分離器9との間には放気経路28Aが接続されている。この放気経路28Aには放気弁(電磁弁)29が介在しており、この放気弁29は制御装置3によって開閉制御されている。また、吸込み絞り弁18の操作室26と弁座24の一次側との間には放気経路28Bが接続されている。そして、例えば放気弁29が閉状態に制御されると、吸込み絞り弁18の操作室26内の圧力が弁座24の一次側の圧力程度まで下がり、バネ27の力が操作室26内の圧力に打ち勝ってピストン21を図2中右側に摺動させる。これにより、弁体23が図2中右側に移動して弁座24を開放する。したがって、いわゆるロード運転となる。
【0023】
一方、例えば放気弁29が開状態に制御されると、油分離器9からの圧縮空気が導入されて吸込み絞り弁18の操作室26内の圧力が上がり、この操作室26内の圧力がバネ27の力に打ち勝ってピストン21を図2中左側に摺動させる。これにより、弁体23が図2中左側に移動して弁座24を閉塞する。また、このとき、油分離器9内の圧縮空気が放気経路28A,28Bを介し吸込み絞り弁18の一次側に放出されて、油分離器9内の圧力(言い換えれば、調圧逆止弁14の上流側圧力)を低下させる。したがって、いわゆるアンロード運転となる。
【0024】
なお、本実施形態では、弁体23が軸22にスライド可能に挿通されおり、吸込み絞り弁18が逆止弁機能を有している。すなわち、ピストン21及び弁体23が図2中右側に移動した開弁状態であっても、吐出側(高圧側)の圧縮空気及びこれに含まれる油が逆流した場合には、その圧力作用によって弁体32のみが図2中左側に移動して弁座24を閉塞するようになっている。
【0025】
次に、本実施形態の要部である制御装置3について説明する。図3は、制御装置3の構成を関連部品とともに表すブロック図である。
【0026】
この図3において、制御装置3は、運転/停止スイッチ30、圧力センサ16、及び電流センサ7等からの信号を入力する入力部31と、後述する制御処理のプログラムを記憶するROM32(記憶部)と、このROM32に記憶されたプログラムに基づいて制御処理を行うCPU33(中央演算処理部)と、このCPUで生成した制御信号をモータリレー6、放気弁29、及び表示器34(例えば液晶ディスプレイ)等へ出力する出力部35とを有している。なお、運転/停止スイッチ30は、操作者が運転指示/停止指示を入力可能なものである。
【0027】
そして、制御装置3は、第1の制御機能として、運転/停止スイッチ30からの指示信号に応じて、モータリレー6を開閉制御するようになっている。詳細には、例えば運転/停止スイッチ30から運転指示信号を入力した場合は、モータリレー6を閉状態に制御する。これにより、電源4からの電力がモータ2に供給されて、モータ2が駆動する。一方、例えば運転/停止スイッチ30から停止指示信号を入力した場合は、モータリレー6を開状態に制御する。これにより、電源4からモータ2への電力供給が遮断されて、モータ2が停止するようになっている。
【0028】
また、制御装置3は、第2の制御機能として、圧縮機本体1の運転時(言い換えれば、モータ2の駆動時)に、圧力センサ16で検出された吐出側圧力に基づいてロード運転又はアンロード運転に切換えるようになっている(第2の弁制御手段)。詳細には、例えば圧力センサ16で検出された吐出側圧力Pが予め設定された上限値Pまで上昇した場合は、放気弁29を開状態に制御する。これにより、吸込み絞り弁18が全閉状態となり、アンロード運転に切換わる。また、例えば、アンロード運転中に、圧力センサ16で検出された吐出側圧力Pが予め設定された下限値P(但し、P<P)まで下降した場合は、放気弁29を閉状態に制御する。これにより、吸込み絞り弁18が全開状態となり、ロード運転に復帰する。このような運転制御に係わる制御手順を、図4を用いて説明する。図4は、制御装置3の運転制御に係わる制御処理内容を表すフローチャートである。
【0029】
この図4において、まず、ステップ100にて、制御装置は、運転/停止スイッチ30から運転指示信号が入力されたか否かを判定する。例えば運転/停止スイッチ30から運転指示信号が入力されていない場合は、ステップ100の判定が満たされず、このステップ100の手順を繰返す。一方、例えば運転/停止スイッチ30から運転指示信号が入力された場合は、ステップ100の判定が満たされ、ステップ110に移る。ステップ110では、モータリレー6を閉状態に制御し、モータ2を駆動させる。その後、ステップ120に進み、放気弁29を閉状態に制御し、吸込み絞り弁18を全開状態とする(ロード運転)。
【0030】
そして、ステップ130に進み、圧力センサ16で検出された吐出側圧力Pが上限値P以上であるか否かを判定する。例えば吐出側圧力Pが上限値P未満である場合は、ステップ130の判定が満たされず、このステップ130の手順を繰返す。一方、例えば吐出側圧力Pが上限値P以上である場合は、ステップ130の判定が満たされ、ステップ140に移る。ステップ140では、放気弁29を開状態に制御し、吸込み絞り弁18を全閉状態とする。これにより、アンロード運転に切換わる。
【0031】
そして、ステップ150に進み、アンロード運転中、圧力センサ16で検出された吐出側圧力Pが下限値P以下であるか否かを判定する。例えば吐出側圧力Pが下限値Pを超える場合は、ステップ150の判定が満たされず、ステップ160に移る。ステップ160では、アンロード運転が予め設定された所定時間経過したか否かを判定する。例えばアンロード運転が所定時間経過していない場合は、ステップ160の判定が満たされず、前述のステップ150に戻って上記同様の手順を繰返す。
【0032】
例えばステップ150にて吐出側圧力Pが下限値P以下である場合は、その判定が満たされ、前述のステップ120に戻る。ステップ120では、放気弁29を閉状態に制御し、吸込み絞り弁18を全開状態とする。これにより、ロード運転に復帰する。
【0033】
また、例えばステップ160にてアンロード運転が所定時間経過した場合は、その判定が満たされ、ステップ170に移る。ステップ170では、モータリレー6を開状態に制御し、モータ2を停止する。
【0034】
ここで、本実施形態の最も大きな特徴として、制御装置3は、第3の制御機能として、電流センサ7で検出されたモータ電流に基づいてモータ電流の減少率A(言い換えれば、単位時間当たりのモータ電流の減少幅)を演算し(モータ電流減少率演算手段)、このモータ電流の減少率Aが予め設定された閾値A以上であるか否かを判断することにより、ベルト8が切断状態であるか否かを判定する(ベルト異常判定手段)。そして、例えばモータ電流の減少率Aが閾値A以上でベルト8が切断状態であると判定されたときに、上述した運転制御より優先して、吸込み絞り弁18を全閉状態に制御し(第1の弁制御手段)、モータ2を停止する(モータ停止手段)。このような停止制御に係わる制御手順を、図5を用いて説明する。図5は、制御装置3の停止制御に係わる制御処理内容を表すフローチャートである。
【0035】
この図5において、ステップ200において、制御装置3は、運転/停止スイッチ30から運転指示信号が入力されたか否かを判定する。例えば運転/停止スイッチ30から運転指示信号が入力されていない場合は、ステップ200の判定が満たされず、このステップ200の手順を繰返す。一方、例えば運転/停止スイッチ30から運転指示信号が入力された場合は、ステップ200の判定が満たされ、ステップ210に移る。ステップ210では、電流センサ7で検出されたモータ電流に基づき、例えば0.5秒毎にモータ電流の減少率Aを演算する。そして、ステップ220に進み、運転/停止スイッチ30から停止指示信号が入力されたか否かを判定する。例えば運転/停止スイッチ30から停止指示信号が入力されていない場合は、ステップ230に移る。ステップ230では、ステップ210で演算されたモータ電流の減少率Aが閾値A以上であるか否かを判断することにより、ベルト8が切断状態であるか否かを判定する。この閾値Aは、後述の図6で示すように、アンロード運転中のモータ電流の減少率よりも大きくなるように、予め設定されている。そして、例えばモータ電流の減少率Aが閾値A未満である場合(言い換えれば、ベルト8が正常状態である場合)は、ステップ230の判定が満たされず、前述のステップ210に戻って上記同様の手順を繰返す。
【0036】
一方、例えばモータ電流の減少率Aが閾値A以上である場合(言い換えれば、ベルト8が切断状態である場合)は、ステップ230の判定が満たされ、ステップ240に移る。ステップ240では、放気弁29を開状態に制御し、吸込み絞り弁18を全閉状態とする。その後、ステップ250に進み、モータリレー6を開状態に制御し、モータ2を停止する。その後、ステップ260に進み、ベルト8が切断状態(異常)であることをモニタ34に表示させる。
【0037】
なお、例えばステップ220にて運転/停止スイッチ30から停止指示信号が入力された場合は、その判定が満たされ、ステップ270に移る。ステップ270では、放気弁29を開状態に制御して、吸込み絞り弁18を全閉状態とする。その後、ステップ280に進み、モータリレー6を開状態に制御し、モータ2を停止する。
【0038】
次に、本実施形態の動作及び作用効果を、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態における吐出側圧力及びモータ電流の経時変化を一例として表すタイムチャートである。
【0039】
例えば図6で示すように、ロード運転中に吐出側圧力Pが上限値Pまで上昇すると(時間t1)、アンロード運転に切換わる。このアンロード運転中、モータ電流は、負荷、すなわち圧縮機本体1の吐出側圧力(詳細には、調圧逆止弁14の下流側圧力Pではなく、上流側圧力)に追従して、小さくなる。そして、吐出側圧力Pが下限値Pまで下降すると(時間t2)、ロード運転に復帰する。その後、ロード運転中にベルト8が切断すると(時間t3)、モータ電流が急激に低下する。このとき、モータ電流の減少率Aが閾値A以上となり、ベルト8の切断状態を検知することができる。
【0040】
ここで、比較例として、モータ電流が予め設定された閾値より小さいか否かを判断することにより、ベルト8が切断状態であるか否かを判定する場合を想定する。この比較例では、モータ電流に対する閾値を、アンロード運転中のモータ電流の最小値Bよりも小さくなるように設定する必要がある。そのため、ロード運転中にベルト8が切断した場合、モータ電流が閾値まで低下してベルト8の切断状態を検知するまでに時間を要することになる。
【0041】
これに対し、本実施形態では、モータ電流の減少率Aが予め設定された閾値A以上であるか否かを判断することにより、ベルト8が切断状態であるか否かを判定するので、上述した比較例よりも素早く(言い換えれば、モータ電流が、アンロード運転中のモータ電流の最小値Bよりも小さくなる前に)、ベルトの切断状態を検知することができる。したがって、ベルト8が切断されたときに素早く対応して、吸込み絞り弁18を全閉状態に制御することができ、吸込み絞り弁18の一次側への油の漏れを抑えることができる。
【0042】
なお、例えば吸込み絞り弁18の逆止弁機能のみによって吸込み絞り弁18の一次側への油の噴出を防止する方法も考えられるが、このような場合には、弁座24の一次側への油の噴出の開始とともに弁座24が閉じ始めるので、油が僅かながらも漏れる。このような場合と比べても、本実施形態は、ベルト8が切断されたときに素早く対応して、吸込み絞り弁18の一次側への油の漏れを抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態では、ベルト8が切断状態であると判定された場合に、モータ2を停止させている。これにより、例えばモータ2を停止させない場合と比べ、無駄な電力消費を防ぐことができる。
【0044】
なお、上記一実施形態においては、制御装置3は、前述の図5で示すように、モータ電流の減少率によってベルト8が切断状態であると判定されたときに、モータ2を停止させた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば圧縮機本体1の吐出側圧力Pが予め下限値Pより低くなるように設定された閾値まで減少したときに圧縮機本体1の吐出側圧力Pが予め下限値Pより低くなるように設定された閾値まで減少したときに、若しくは吸込み絞り弁18を全閉状態に制御してから所定時間が経過した後に、モータ2を停止させてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、上記一実施形態においては、吸込み絞り弁18の一次側への油の漏れを抑えるための二重の策として、吸込み絞り弁18が逆止弁機能を有する場合を例にとって説明したが、これに限られず、逆止弁機能を有しなくともよい。また、上記一実施形態においては、制御装置3は、圧縮機本体1の吐出側圧力に基づいて吸込み絞り弁18を全開状態・全閉状態に切換える制御機能を有する場合を例にとって説明したが、これに限られず、圧縮機本体1の吐出側圧力に基づいて吸込み絞り弁18の開度を連続的に可変制御する制御機能を有してもよい。また、上記一実施形態においては、特に説明しなかったが、モータ2は、定速であってもよいし、インバータ等で可変速制御されてもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 圧縮機本体
1a プーリ
2 電動モータ
2a プーリ
3 制御装置(モータ電流減少率演算手段、ベルト異常判定手段、第1の弁制御手段、第2の弁制御手段、モータ停止手段)
6 モータリレー(モータ停止手段)
7 電流センサ(電流検出手段)
8 ベルト
16 圧力センサ(圧力検出手段)
18 吸込み絞り弁
29 放気弁(第1の弁制御手段、第2の弁制御手段)
32 表示器(表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動室内に油を注入しつつ空気を圧縮する圧縮機本体と、
電動モータと、
前記圧縮機本体の回転軸及び前記モータの回転軸にそれぞれ設けられたプーリの間で掛け渡され、前記モータの動力を前記圧縮機本体に伝達するベルトと、
前記圧縮機本体の吸入側に設けられた吸込み絞り弁と、を備えた油冷式スクリュー圧縮機において、
前記モータの電流を検出する電流検出手段と、
前記電流検出手段の検出結果に基づいて前記モータの電流の減少率を演算するモータ電流減少率演算手段と、
前記圧縮機本体の運転中に、前記モータの電流の減少率が予め設定された閾値以上であるか否かを判断することにより、前記ベルトが切断状態であるか否かを判定するベルト異常判定手段と、
前記ベルトが切断状態であると判定されたときに、前記吸込み絞り弁を全閉状態に制御する第1の弁制御手段と、を備えたことを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1記載の油冷式スクリュー圧縮機において、
前記圧縮機本体の吐出側圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧縮機本体の吐出側圧力が予め設定された上限値まで上昇した場合に、前記吸込み絞り弁を全閉状態に制御してアンロード運転に切換え、そのアンロード運転中に前記圧縮機本体の吐出側圧力が予め設定された下限値まで下降した場合に、前記吸込み絞り弁を全開状態に制御してロード運転に復帰させる第2の弁制御手段と、を備え、
前記モータの電流の減少率に対する前記閾値は、前記ベルトが正常状態における前記アンロード運転中の前記モータの電流の減少率より大きくなるように、予め設定されたことを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の油冷式スクリュー圧縮機において、
前記ベルトが切断状態であると判定された場合に、前記モータを停止するモータ停止手段を備えたことを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の油冷式スクリュー圧縮機において、
前記ベルトが切断状態であると判定された場合に、その旨を表示する表示手段を備えたことを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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