油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置
【課題】 従来のセンタフレ−ムの上面板に円環状の取付部材に施される脚長の長い溶接および、上面板(厚板)の曲げ加工を廃止し、製作コストが安価で、しかも耐久性のあるセンタフレ−ム旋回支持装置を提供する。
【解決手段】 油圧ショベル20のセンタフレーム2の旋回支持装置であって、センタフレーム2Aの上面板41と4つの脚部上面板42を固着し、このセンタフレーム2の中央上面板41と旋回フレーム1との間に旋回装置のインナレース4Aを着脱自在に取着したものである。
【解決手段】 油圧ショベル20のセンタフレーム2の旋回支持装置であって、センタフレーム2Aの上面板41と4つの脚部上面板42を固着し、このセンタフレーム2の中央上面板41と旋回フレーム1との間に旋回装置のインナレース4Aを着脱自在に取着したものである。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は油圧ショベル等の建設機械の下部走行体のセンタフレームに上部旋回体を支持する旋回装置の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】下部走行体と上部旋回体から成る油圧ショベルを例にして従来のセンタフレ−ムの構造について説明する。先ず、図7により油圧ショベル20について説明する。下部走行体21は左右のクローラフレーム3(左クローラフレーム3a,右クローラフレーム3b)を配設している。この左右のクローラフレーム3とセンタフレーム2を着脱自在に取着されている。この下部走行体21は図示しない走行モ−タにより前後走行自在となっている。この下部走行体21の上部にはスイングサ−クル22を介して上部旋回体23が装着されている。上部旋回体23は図示しない旋回モ−タにより旋回可能となっている。この上部旋回体23の旋回フレームには作業機30、マシンキャブ26、オペレ−タキャビン27およびカウンタウエイト28を取着している。作業機30はブ−ム31、ア−ム33およびバケット35を備え、各油圧シリンダ32、34、36により駆動されるようになっている。
【0003】次に、従来の油圧ショベル20のセンタフレーム旋回支持装置について図8乃至図12により説明する。図8は旋回装置の平面図であり、インナレースの内歯歯車4aと旋回モータの出力軸に固着するスイングピニオン9aと噛み合って駆動するようになっている。この旋回装置のM−M断面した図9により詳細説明する。スイングサ−クル22は、センタフレ−ム2の上面板10に固着された円環状の取付部材12を設けている。この円環状の取付部材12に環状体のインナレース4をボルト7により締着されている。このインナレース4の外周部に上部旋回体23の旋回フレーム1に環状体のアウタレース5をボルト8により締着されている。このインナレース4とアウタレース5とはボール6を介して互いに回転自在となっており、旋回ベアリングを構成している。
【0004】また、インナレース4の内側には内歯歯車4aが設けられ、この内歯歯車4aは旋回フレーム1に装着された旋回モータ25の出力軸9に固着されたスイングピニオン9aと噛み合っている。スイングピニオン9aが旋回モータ25の駆動により回転すると、スイングピニオン9aは内歯歯車4aと噛み合うことにより公転し、上部旋回体23は旋回可能となっている。
【0005】次に、従来の油圧ショベルのセンタフレ−ムについて図11,図12により説明する。図11に示すセンタフレーム2は、上面板10に円環状の取付部材12を固着している。この円環状の取付部材12と前記インナレース4がボルト7により締着されている。この上面板10から延設する脚部上面板11a,11a,11a,11aを設けている。上面板10と脚部上面板11a,11a,11a,11aとは一体的に形成されていて、曲げ加工部11b,11b,11b,11bを施してある。このセンタフレーム2は右クローラフレーム3aと左クローラフレーム3bに跨がってボルトで着脱自在に締着されている。この脚部上面板のP部を図12により説明する。上面板10から延設する脚部上面板11aは、下面板13および側板11e,11dにより箱型形状となっている。11cは補強用のリブである。このようにセンタフレーム2は前記旋回ベアリングを支持するために円環状の取付部材12を設ける必要があり、しかも上面板10は曲げ加工により脚部を形成する必要があった。
【0006】更に、スイングピニオン9aと内歯歯車4aとの噛み合い部はグリースによって潤滑されている。図10はグリースを溜めるグリースバスの構成を示しており、センタフレーム2の上面板10には円環状のプレート14が溶着されている。このプレート14の内周部には筒状のグリースバス15がボルト16により締着されている。グリースバス15の上端部にはシール17が取着されて旋回フレーム1に当接しており、内部にグリース18を溜めている。
【0007】
【本発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のセンタフレーム旋回支持装置では、次の問題点がある。
(1)上面板10に円環状の取付部材12を溶接するため、この溶接部に十分な強度を確保するためには溶接の脚長を長くして、溶接部に応力集中しないようにするためにグラインダ処理等の多大な製作工数がかかりコスト高となっていた。
(2)上面板10に曲げ加工を施して脚部上面板11aを形成しているが、上面板10は厚板のため曲げ加工が困難でコスト高になっていた。
(3)従来のグリースバスはボルト締めのためフレームの変形やたわみに追従できず、ボルトのゆるみや溶接部の亀裂を発生することがあった。また、ボルト締め構造のためにボルト穴の加工、ボルト締め工数およびボルト、ワッシャによりコスト高となっていた。
【0008】本発明は上記従来の問題点に着目し、上面板を厚板として、この上面板に直接インナレ−ス取付用のタップ穴を設け、円環状の取付部材及びその溶接を廃止する。また、厚板の上面板と薄板の脚部上面板とを別材料で準備して、それぞれを溶接し一体形成し曲げ加工は薄板の脚部上面板に施すことにより、厚板の上面板の曲げ加工を廃止し製作工数を少なくし、かつ、グリースバスの取り付け容易化を図って耐久性の高い油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置は、左右のクローラフレームに連結するセンタフレームと、このセンタフレームに固着するインナレースと、インナレースに固着する内歯歯車と、上部旋回体の旋回フレームに取着した旋回モータと、旋回モータの出力軸に固着したスイングピニオンと、インナレースの内歯歯車とスイングピニオンとを支承する円環状の旋回ベアリングとを備え、旋回モータの駆動によりスイングピニオンとインナレースの内歯歯車とを噛み合せて上部旋回体を旋回駆動する油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置であって、上面板41と4つの脚部上面板42を固着して箱型形状からなるセンタフレーム2Aを設け、このセンタフレーム2Aの上面板41と前記旋回フレーム1との間に前記インナレース4Aを挟んで着脱自在に取着した構成としたものである。
【0010】また、上記構成において、前記センタフレーム2Aの上面板41と前記旋回フレーム1との間にインナレース4Bとスペーサ4bを介在させて着脱自在に取着した構成としたものである。
【0011】更に、上記構成において、前記センタフレーム2Aの上面板41と前記旋回フレーム1との間にインナレース4Bとスペーサ4bを介在させ、かつ、前記インナレース4Bとスペーサ4bとの間に設けた環状溝53にグリースバス50の底板51の外周部を挾着した構成としたものである。
【0012】そして、上記構成において、前記グリースバス50の底板51の外周部に、弾性体よりなる環状シール55と、前記グリースバス50の内周側板52の上端部と前記旋回フレーム1との間に取着するシール17とを備えた構成としたものである。
【0013】
【作用】上記構成によれば、センタフレームの上面板にインナレ−ス取付用のタップ穴が直接設けられ、上面板とインナレ−スを直接ボルト締めするようにする。また、上面板と脚部上面板は別材料として、上面板は厚板とし、脚部上面板は薄板として、それぞれを突き合せ溶接するようにしたので従来のように厚板を曲げ加工して脚部上面板を形成する必要がない。更に、前記突き合せ溶接部は脚長が短く溶接も容易である。
【0014】また、インナレ−スと上面板との間にスペ−サを挿入することにより、インナレースが小さくて良い。
【0015】そして、センタフレームの上面板と旋回フレームとの間に、インナレースとスペーサを介在させ、かつ、インナレースとスペーサとの間に設けた環状溝にグリースバスの底板の外周部を挾着すると共に、グリースバスの底板の外周部に、弾性体よりなる環状シールと、グリースバスの内周側板の上端部と旋回フレームとの間にシールを取着する構成としたので、変形やねじれに対する強度が向上し、構造が簡単となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に本発明に係る油圧ショベルのセンタフレ−ム旋回支持装置の一実施例について、図1R>1乃至図4により説明する。尚、図9乃至図12と同一符号を付したものは同一であり説明は省略する。先ず、図1乃至図3によりセンタフレ−ム旋回支持装置の第1実施例を説明する。図1に示すセンタフレーム2Aの上面板41の中央にサークル41bを穿設してある。このサークル41b内に図示しない油圧スイベルジョイント等が配設されるようになっている。サークル41bの外周に複数のタップ孔41aが明けられている。センタフレ−ム2Aは、上面板41と溶接により接合する4つの脚部上面板42,42,42,42を備え、一体形成されている。この上面板41および脚部上面板42,42,42,42は、下面板13と、図2に示す縦板44,側板(図12に示すものと同様の側板11d,11e)とにより箱型形状となっており、リブ11cで補強された構造となっている。
【0017】次に、センタフレーム2Aの上面板41と脚部上面板42との接合状態と、旋回装置との支持状態の詳細について図2乃至図3により説明する。先ず、図2R>2に示すセンタフレーム2Aの上面板41は板厚T2 であり、脚部上面板42は板厚T1 である。上面板41の板厚は脚部上面板42より厚くしている。この上面板41と脚部上面板42は突き合せ溶接している。この上面板41にボルト7A用のタップ孔41aが明けられ、上面板41と旋回フレーム1との間にスイングサークル22Aのインナレース4Aを挟んでボルト7Aにより締着されている。この場合、上面板41の上面と旋回フレ−ム1との間にアウタレ−ス5を固定するので、上面板41の上面とボルト8との間に所定量の隙間S3を確保する必要があるのでインナレ−ス4Aの高さH1は従来のインナレ−スより高くしてある。
【0018】図3は、上面板41Aと脚部上面板42Aとを突き合せ溶接するときの他の例を示すものである。この図に示すように上面板41Aに対して脚部上面板42Aを所定の角度Cを傾けて、突き合せ溶接している。このようにすれば、従来のように曲げ加工をしないで上面板41と脚部上面板42を一体的に形成できる。
【0019】このような構造によれば、上面板に直接タップ孔を設けて、インナレ−スを取付るようにすれば、従来の円環状の取付部材は必要ない。また、上面板(厚板)と脚部上面板(薄板)とを溶接するようにしたので、従来のように上面板(厚板)を曲げ加工して脚部を形成する必要がない。
【0020】次に、図4によりセンタフレ−ム旋回支持装置の第2実施例を説明する。第1実施例の図1乃至図3R>3と同一符号を付したものは同一であり説明は省略する。図に示す上面板41と旋回フレーム1との間にスイングサークル22Bのインナレース4Bおよびスペーサ4bを挟んでボルト7Aにより締着している。このような構造によれば、インナレース4Bを小さくできるので製作コストが安価となる。
【0021】次に、図5および図6によりセンタフレーム旋回支持装置の第3実施例を説明する。図1乃至図4と同一符号を付したものは同一であり説明は省略する。グリースバス50は円環状の底板51に内周側板52を溶着して構成し、底板51の外周部をインナレース4Bとスペーサ4bとの間に挾持させ、ボルト54により上面板41に締着している。図6は、図5のA部詳細図である。図に示すセンタフレーム2Aの上面板41と旋回フレーム1との間に、インナレース4Bとスペーサ4bを介在させると共に、インナレース4Bとスペーサ4bとの間に設けた環状溝53にグリースバス50の底板51の外周部をボルト54により挾着している。このグリースバス50の底板51の外周部に、ゴム等の弾性体よりなる環状シール55を取着している。また、グリースバス50の内周側板52の上端部にはシール17を取着して旋回フレーム1に当接させてグリース18漏れを防止している。これにより、上面板41が変形やたわみを発生した場合でもグリースバス50は追従でき、グリースバス50は損傷することはない。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置によれば、センタフレームの上面板と脚部上面板は別材料として、上面板は厚板とし、脚部上面板は薄板として、それぞれを突き合せ溶接するようにしたので従来のように厚板を曲げ加工して脚部上面板を形成する必要がないので製作が容易となると共に、従来の上面板に固着した円環状の取付部材を廃止することにより耐久性および経済性が向上する。
【0023】また、インナレ−スと上面板との間にスペ−サを挿入することにより、インナレースを小さくできるので安価となる。
【0024】更に、ゴム等の弾性体よりなる環状シール部材を介してグリースバスをインナレースとスペーサとの間に挾持することにより、変形やたわみを防止し耐久性を向上すると共に、構造簡単で安価となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセンタフレ−ム斜視図である。
【図2】同、センタフレ−ム旋回支持装置の第1実施例である。
【図3】同、第1実施例の上面板と脚部上面板の溶接状態を示す他の説明図である。
【図4】同、センタフレ−ム旋回支持装置の第2実施例である。
【図5】同、センタフレーム旋回支持装置の第3実施例である。
【図6】同、図5のグリースバス装着部のA部詳細図である。
【図7】油圧ショベルの側面図である。
【図8】従来の旋回装置の平面図である。
【図9】図6のM−M断面図である。
【図10】従来のグリースバスの構成図である。
【図11】従来のセンタフレ−ム斜視図である。
【図12】図11のP部詳細図である。
【符号の説明】
1…旋回フレーム、2,2A…センタフレーム、3…クロ−ラフレーム、4,4A,4B…インナレース、4a…内歯歯車、4b…スペ−サ、5…アウタレース、6…ボ−ル、7,7A,8…ボルト、9…出力軸、9a…スイングピニオン、10,41,41A…上面板、11a,42,42A…脚部上面板、12…円環状の取付部材、11c…リブ、11d,11e…側板、17…シール、20…油圧ショベル、21…下部走行体、22,22A,22B…スイングサ−クル、23…上部旋回体、25…旋回モータ、50…グリースバス、51…底板、52…内周側板、53…環状溝、55…環状シール。
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は油圧ショベル等の建設機械の下部走行体のセンタフレームに上部旋回体を支持する旋回装置の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】下部走行体と上部旋回体から成る油圧ショベルを例にして従来のセンタフレ−ムの構造について説明する。先ず、図7により油圧ショベル20について説明する。下部走行体21は左右のクローラフレーム3(左クローラフレーム3a,右クローラフレーム3b)を配設している。この左右のクローラフレーム3とセンタフレーム2を着脱自在に取着されている。この下部走行体21は図示しない走行モ−タにより前後走行自在となっている。この下部走行体21の上部にはスイングサ−クル22を介して上部旋回体23が装着されている。上部旋回体23は図示しない旋回モ−タにより旋回可能となっている。この上部旋回体23の旋回フレームには作業機30、マシンキャブ26、オペレ−タキャビン27およびカウンタウエイト28を取着している。作業機30はブ−ム31、ア−ム33およびバケット35を備え、各油圧シリンダ32、34、36により駆動されるようになっている。
【0003】次に、従来の油圧ショベル20のセンタフレーム旋回支持装置について図8乃至図12により説明する。図8は旋回装置の平面図であり、インナレースの内歯歯車4aと旋回モータの出力軸に固着するスイングピニオン9aと噛み合って駆動するようになっている。この旋回装置のM−M断面した図9により詳細説明する。スイングサ−クル22は、センタフレ−ム2の上面板10に固着された円環状の取付部材12を設けている。この円環状の取付部材12に環状体のインナレース4をボルト7により締着されている。このインナレース4の外周部に上部旋回体23の旋回フレーム1に環状体のアウタレース5をボルト8により締着されている。このインナレース4とアウタレース5とはボール6を介して互いに回転自在となっており、旋回ベアリングを構成している。
【0004】また、インナレース4の内側には内歯歯車4aが設けられ、この内歯歯車4aは旋回フレーム1に装着された旋回モータ25の出力軸9に固着されたスイングピニオン9aと噛み合っている。スイングピニオン9aが旋回モータ25の駆動により回転すると、スイングピニオン9aは内歯歯車4aと噛み合うことにより公転し、上部旋回体23は旋回可能となっている。
【0005】次に、従来の油圧ショベルのセンタフレ−ムについて図11,図12により説明する。図11に示すセンタフレーム2は、上面板10に円環状の取付部材12を固着している。この円環状の取付部材12と前記インナレース4がボルト7により締着されている。この上面板10から延設する脚部上面板11a,11a,11a,11aを設けている。上面板10と脚部上面板11a,11a,11a,11aとは一体的に形成されていて、曲げ加工部11b,11b,11b,11bを施してある。このセンタフレーム2は右クローラフレーム3aと左クローラフレーム3bに跨がってボルトで着脱自在に締着されている。この脚部上面板のP部を図12により説明する。上面板10から延設する脚部上面板11aは、下面板13および側板11e,11dにより箱型形状となっている。11cは補強用のリブである。このようにセンタフレーム2は前記旋回ベアリングを支持するために円環状の取付部材12を設ける必要があり、しかも上面板10は曲げ加工により脚部を形成する必要があった。
【0006】更に、スイングピニオン9aと内歯歯車4aとの噛み合い部はグリースによって潤滑されている。図10はグリースを溜めるグリースバスの構成を示しており、センタフレーム2の上面板10には円環状のプレート14が溶着されている。このプレート14の内周部には筒状のグリースバス15がボルト16により締着されている。グリースバス15の上端部にはシール17が取着されて旋回フレーム1に当接しており、内部にグリース18を溜めている。
【0007】
【本発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のセンタフレーム旋回支持装置では、次の問題点がある。
(1)上面板10に円環状の取付部材12を溶接するため、この溶接部に十分な強度を確保するためには溶接の脚長を長くして、溶接部に応力集中しないようにするためにグラインダ処理等の多大な製作工数がかかりコスト高となっていた。
(2)上面板10に曲げ加工を施して脚部上面板11aを形成しているが、上面板10は厚板のため曲げ加工が困難でコスト高になっていた。
(3)従来のグリースバスはボルト締めのためフレームの変形やたわみに追従できず、ボルトのゆるみや溶接部の亀裂を発生することがあった。また、ボルト締め構造のためにボルト穴の加工、ボルト締め工数およびボルト、ワッシャによりコスト高となっていた。
【0008】本発明は上記従来の問題点に着目し、上面板を厚板として、この上面板に直接インナレ−ス取付用のタップ穴を設け、円環状の取付部材及びその溶接を廃止する。また、厚板の上面板と薄板の脚部上面板とを別材料で準備して、それぞれを溶接し一体形成し曲げ加工は薄板の脚部上面板に施すことにより、厚板の上面板の曲げ加工を廃止し製作工数を少なくし、かつ、グリースバスの取り付け容易化を図って耐久性の高い油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置は、左右のクローラフレームに連結するセンタフレームと、このセンタフレームに固着するインナレースと、インナレースに固着する内歯歯車と、上部旋回体の旋回フレームに取着した旋回モータと、旋回モータの出力軸に固着したスイングピニオンと、インナレースの内歯歯車とスイングピニオンとを支承する円環状の旋回ベアリングとを備え、旋回モータの駆動によりスイングピニオンとインナレースの内歯歯車とを噛み合せて上部旋回体を旋回駆動する油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置であって、上面板41と4つの脚部上面板42を固着して箱型形状からなるセンタフレーム2Aを設け、このセンタフレーム2Aの上面板41と前記旋回フレーム1との間に前記インナレース4Aを挟んで着脱自在に取着した構成としたものである。
【0010】また、上記構成において、前記センタフレーム2Aの上面板41と前記旋回フレーム1との間にインナレース4Bとスペーサ4bを介在させて着脱自在に取着した構成としたものである。
【0011】更に、上記構成において、前記センタフレーム2Aの上面板41と前記旋回フレーム1との間にインナレース4Bとスペーサ4bを介在させ、かつ、前記インナレース4Bとスペーサ4bとの間に設けた環状溝53にグリースバス50の底板51の外周部を挾着した構成としたものである。
【0012】そして、上記構成において、前記グリースバス50の底板51の外周部に、弾性体よりなる環状シール55と、前記グリースバス50の内周側板52の上端部と前記旋回フレーム1との間に取着するシール17とを備えた構成としたものである。
【0013】
【作用】上記構成によれば、センタフレームの上面板にインナレ−ス取付用のタップ穴が直接設けられ、上面板とインナレ−スを直接ボルト締めするようにする。また、上面板と脚部上面板は別材料として、上面板は厚板とし、脚部上面板は薄板として、それぞれを突き合せ溶接するようにしたので従来のように厚板を曲げ加工して脚部上面板を形成する必要がない。更に、前記突き合せ溶接部は脚長が短く溶接も容易である。
【0014】また、インナレ−スと上面板との間にスペ−サを挿入することにより、インナレースが小さくて良い。
【0015】そして、センタフレームの上面板と旋回フレームとの間に、インナレースとスペーサを介在させ、かつ、インナレースとスペーサとの間に設けた環状溝にグリースバスの底板の外周部を挾着すると共に、グリースバスの底板の外周部に、弾性体よりなる環状シールと、グリースバスの内周側板の上端部と旋回フレームとの間にシールを取着する構成としたので、変形やねじれに対する強度が向上し、構造が簡単となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に本発明に係る油圧ショベルのセンタフレ−ム旋回支持装置の一実施例について、図1R>1乃至図4により説明する。尚、図9乃至図12と同一符号を付したものは同一であり説明は省略する。先ず、図1乃至図3によりセンタフレ−ム旋回支持装置の第1実施例を説明する。図1に示すセンタフレーム2Aの上面板41の中央にサークル41bを穿設してある。このサークル41b内に図示しない油圧スイベルジョイント等が配設されるようになっている。サークル41bの外周に複数のタップ孔41aが明けられている。センタフレ−ム2Aは、上面板41と溶接により接合する4つの脚部上面板42,42,42,42を備え、一体形成されている。この上面板41および脚部上面板42,42,42,42は、下面板13と、図2に示す縦板44,側板(図12に示すものと同様の側板11d,11e)とにより箱型形状となっており、リブ11cで補強された構造となっている。
【0017】次に、センタフレーム2Aの上面板41と脚部上面板42との接合状態と、旋回装置との支持状態の詳細について図2乃至図3により説明する。先ず、図2R>2に示すセンタフレーム2Aの上面板41は板厚T2 であり、脚部上面板42は板厚T1 である。上面板41の板厚は脚部上面板42より厚くしている。この上面板41と脚部上面板42は突き合せ溶接している。この上面板41にボルト7A用のタップ孔41aが明けられ、上面板41と旋回フレーム1との間にスイングサークル22Aのインナレース4Aを挟んでボルト7Aにより締着されている。この場合、上面板41の上面と旋回フレ−ム1との間にアウタレ−ス5を固定するので、上面板41の上面とボルト8との間に所定量の隙間S3を確保する必要があるのでインナレ−ス4Aの高さH1は従来のインナレ−スより高くしてある。
【0018】図3は、上面板41Aと脚部上面板42Aとを突き合せ溶接するときの他の例を示すものである。この図に示すように上面板41Aに対して脚部上面板42Aを所定の角度Cを傾けて、突き合せ溶接している。このようにすれば、従来のように曲げ加工をしないで上面板41と脚部上面板42を一体的に形成できる。
【0019】このような構造によれば、上面板に直接タップ孔を設けて、インナレ−スを取付るようにすれば、従来の円環状の取付部材は必要ない。また、上面板(厚板)と脚部上面板(薄板)とを溶接するようにしたので、従来のように上面板(厚板)を曲げ加工して脚部を形成する必要がない。
【0020】次に、図4によりセンタフレ−ム旋回支持装置の第2実施例を説明する。第1実施例の図1乃至図3R>3と同一符号を付したものは同一であり説明は省略する。図に示す上面板41と旋回フレーム1との間にスイングサークル22Bのインナレース4Bおよびスペーサ4bを挟んでボルト7Aにより締着している。このような構造によれば、インナレース4Bを小さくできるので製作コストが安価となる。
【0021】次に、図5および図6によりセンタフレーム旋回支持装置の第3実施例を説明する。図1乃至図4と同一符号を付したものは同一であり説明は省略する。グリースバス50は円環状の底板51に内周側板52を溶着して構成し、底板51の外周部をインナレース4Bとスペーサ4bとの間に挾持させ、ボルト54により上面板41に締着している。図6は、図5のA部詳細図である。図に示すセンタフレーム2Aの上面板41と旋回フレーム1との間に、インナレース4Bとスペーサ4bを介在させると共に、インナレース4Bとスペーサ4bとの間に設けた環状溝53にグリースバス50の底板51の外周部をボルト54により挾着している。このグリースバス50の底板51の外周部に、ゴム等の弾性体よりなる環状シール55を取着している。また、グリースバス50の内周側板52の上端部にはシール17を取着して旋回フレーム1に当接させてグリース18漏れを防止している。これにより、上面板41が変形やたわみを発生した場合でもグリースバス50は追従でき、グリースバス50は損傷することはない。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置によれば、センタフレームの上面板と脚部上面板は別材料として、上面板は厚板とし、脚部上面板は薄板として、それぞれを突き合せ溶接するようにしたので従来のように厚板を曲げ加工して脚部上面板を形成する必要がないので製作が容易となると共に、従来の上面板に固着した円環状の取付部材を廃止することにより耐久性および経済性が向上する。
【0023】また、インナレ−スと上面板との間にスペ−サを挿入することにより、インナレースを小さくできるので安価となる。
【0024】更に、ゴム等の弾性体よりなる環状シール部材を介してグリースバスをインナレースとスペーサとの間に挾持することにより、変形やたわみを防止し耐久性を向上すると共に、構造簡単で安価となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセンタフレ−ム斜視図である。
【図2】同、センタフレ−ム旋回支持装置の第1実施例である。
【図3】同、第1実施例の上面板と脚部上面板の溶接状態を示す他の説明図である。
【図4】同、センタフレ−ム旋回支持装置の第2実施例である。
【図5】同、センタフレーム旋回支持装置の第3実施例である。
【図6】同、図5のグリースバス装着部のA部詳細図である。
【図7】油圧ショベルの側面図である。
【図8】従来の旋回装置の平面図である。
【図9】図6のM−M断面図である。
【図10】従来のグリースバスの構成図である。
【図11】従来のセンタフレ−ム斜視図である。
【図12】図11のP部詳細図である。
【符号の説明】
1…旋回フレーム、2,2A…センタフレーム、3…クロ−ラフレーム、4,4A,4B…インナレース、4a…内歯歯車、4b…スペ−サ、5…アウタレース、6…ボ−ル、7,7A,8…ボルト、9…出力軸、9a…スイングピニオン、10,41,41A…上面板、11a,42,42A…脚部上面板、12…円環状の取付部材、11c…リブ、11d,11e…側板、17…シール、20…油圧ショベル、21…下部走行体、22,22A,22B…スイングサ−クル、23…上部旋回体、25…旋回モータ、50…グリースバス、51…底板、52…内周側板、53…環状溝、55…環状シール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 左右のクローラフレームに連結するセンタフレームと、このセンタフレームに固着するインナレースと、インナレースに固着する内歯歯車と、上部旋回体の旋回フレームに取着した旋回モータと、旋回モータの出力軸に固着したスイングピニオンと、インナレースの内歯歯車とスイングピニオンとを支承する円環状の旋回ベアリングとを備え、旋回モータの駆動によりスイングピニオンとインナレースの内歯歯車とを噛み合せて上部旋回体を旋回駆動する油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置において、上面板(41)と4つの脚部上面板(42)を固着して箱型形状からなるセンタフレーム(2A)を設け、このセンタフレーム(2A)の上面板(41)と前記旋回フレーム(1) との間に前記インナレース(4A)を挟んで着脱自在に取着したことを特徴とする油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置。
【請求項2】 前記センタフレーム(2A)の上面板(41)と前記旋回フレーム(1) との間にインナレース(4B)とスペーサ(4b)を介在させて着脱自在に取着したことを特徴とする請求項1記載の油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置。
【請求項3】 前記センタフレーム(2A)の上面板(41)と前記旋回フレーム(1) との間にインナレース(4B)とスペーサ(4b)を介在させ、かつ、前記インナレース(4B)とスペーサ(4b)との間に設けた環状溝(53)にグリースバス(50)の底板(51)の外周部を挾着したことを特徴とする請求項2記載の油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置。
【請求項4】 前記グリースバス(50)の底板(51)の外周部に、弾性体よりなる環状シール(55)と、前記グリースバス(50)の内周側板(52)の上端部と前記旋回フレーム(1) との間に取着するシール(17)とを備えたことを特徴とする請求項3記載の油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置。
【請求項1】 左右のクローラフレームに連結するセンタフレームと、このセンタフレームに固着するインナレースと、インナレースに固着する内歯歯車と、上部旋回体の旋回フレームに取着した旋回モータと、旋回モータの出力軸に固着したスイングピニオンと、インナレースの内歯歯車とスイングピニオンとを支承する円環状の旋回ベアリングとを備え、旋回モータの駆動によりスイングピニオンとインナレースの内歯歯車とを噛み合せて上部旋回体を旋回駆動する油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置において、上面板(41)と4つの脚部上面板(42)を固着して箱型形状からなるセンタフレーム(2A)を設け、このセンタフレーム(2A)の上面板(41)と前記旋回フレーム(1) との間に前記インナレース(4A)を挟んで着脱自在に取着したことを特徴とする油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置。
【請求項2】 前記センタフレーム(2A)の上面板(41)と前記旋回フレーム(1) との間にインナレース(4B)とスペーサ(4b)を介在させて着脱自在に取着したことを特徴とする請求項1記載の油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置。
【請求項3】 前記センタフレーム(2A)の上面板(41)と前記旋回フレーム(1) との間にインナレース(4B)とスペーサ(4b)を介在させ、かつ、前記インナレース(4B)とスペーサ(4b)との間に設けた環状溝(53)にグリースバス(50)の底板(51)の外周部を挾着したことを特徴とする請求項2記載の油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置。
【請求項4】 前記グリースバス(50)の底板(51)の外周部に、弾性体よりなる環状シール(55)と、前記グリースバス(50)の内周側板(52)の上端部と前記旋回フレーム(1) との間に取着するシール(17)とを備えたことを特徴とする請求項3記載の油圧ショベルのセンタフレーム旋回支持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図12】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図12】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図10】
【公開番号】特開平9−158252
【公開日】平成9年(1997)6月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−326214
【出願日】平成7年(1995)11月22日
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【公開日】平成9年(1997)6月17日
【国際特許分類】
【出願日】平成7年(1995)11月22日
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
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