説明

油圧シリンダ駆動回路の作動油交換方法

【課題】多機能弁で形成する2種類の回路構成と方向切換弁との関連作動により一回の操作で往復動型油圧シリンダと駆動回路内の作動油のほぼ全てを交換とする油圧シリンダ作動回路の作動油交換方法を提案する。
【解決手段】多機能弁が形成した第1回路構成(駆動回路)方向切換弁35の左切換位置35cとの操作である第1操作と、多機能弁第2回路構成(フラッシング回路)と方向切換弁35の右切換位置35bとの操作である第2操作と、多機能弁の第1回路構成と方向切換弁35の右切換位置との操作である第3操作と多機能弁が形成した第2回路構成と右切換位置との操作である第4操作を、順次操作量を加減しつつ操作することによる油圧シリンダ10作動回路の作動油交換方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水門の駆動装置に利用される往復動型の油圧シリンダの駆動回路の様に作動油が駆動回路の中を移動するだけで循環しない駆動回路の作動油の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダで駆動される水門の一つとしては、河川を横断して設置した転倒ゲート装置がある。この転倒ゲート装置は、河川を横断して設けた転倒ゲートの転倒量を制御して、河川の水資源の有効利用目的、河口に設け海水と淡水の混合を防止する目的、海岸に設置して防潮提等の目的に利用される。
【0003】
水資源の有効利用を図る転倒ゲート装置は、河川を横断して設置した転倒ゲートの両側にピア(pier)を設け、このピア内に前記転倒ゲートが固定されるシャフトと、このシャフトに固定してあり油圧シリンダで回動させられるカムが設置され、前記ピア内に設けた油圧シリンダで回動されるカムのシャフトによりその転倒量が制御される構造である。
【0004】
この転倒ゲートの駆動源として用いられる、往復動型の油圧シリンダの駆動回路では、油圧シリンダで分断され油圧シリンダを移動させるに必要な作動油(油圧シリンダの容積分)が往復するから、駆動回路と油圧シリンダ内に作動油が停滞している。したがって、使用時間が長くなると駆動回路や油圧シリンダの中にゴミ、澱などが蓄積される。また、油圧シリンダの圧力室の中には、油圧シリンダのシールの摩耗粉などが蓄積される。この油圧シリンダ内の摩耗粉は、シールを破損させるので、シリンダの内部漏れを起こす原因になる。また、この作動油圧源から転倒ゲートを駆動する油圧シリンダまでの駆動回路を構成する油圧配管は、油圧源と油圧シリンダの設置場所が離れているので、距離が長くなると共に、その途中がコンクリート中又は土中に埋設される場合があるり、地震、地層のずれなどの自然現象により亀裂や破損が発生するなどの問題点を有する。
【0005】
このような油圧シリンダの駆動回路に発生する問題点を検出し対応するため、特許文献1に開示され図4に示される多機能弁が提案されていた。
【0006】
図4において、70は、油圧シリンダであり、80は、この油圧シリンダ70と作動油圧源との間に接続した多機能弁である。この多機能弁80に接続する油圧シリンダ70は、そのシリンダチューブ71内にシールされて摺動自在に嵌入するピストン72と、このピストン72に固定してありシリンダチューブ71のロッドカバーから外部に突出し負荷(転倒ゲート)に接続するピストンロッド73を有し、前記ピストン72がそのロッド側にロッド側圧力室75を形成しヘッド側にヘッド側圧力室74を形成する。
【0007】
前記ピストンロッド73は、シリンダチューブ71に形成してあるヘッド側圧力室74に作動圧油が供給され、ロッド側圧力室75が作動油タンクに接続されると、シリンダチューブ71から突出する方向である矢印aの方向に移動し、(以下伸長方向に移動すると記載する場合もある。)ヘッド側圧力室74作動油タンクに接続され、ロッド側圧力室75に作動圧油が供給されると、シリンダチューブ71内を矢印bの方向に移動(以下縮小方向に移動すると記載する場合もある。)する構成である。
【0008】
多機能弁80は、作動油タンク又は作動圧油源と方向切換弁を介して接続する作動油給排回路81と作動油給排回路82が接続する弁内給排回路81aと弁内給排回路82a及びこの弁内給排回路81aと弁内給排回路82aを連結するバイパス回路85とを備えている。この作動油給排回路81は多機能弁80内の弁内給排回路81aから分岐して油圧シリンダ70のヘッド側圧力室74に給排回路83を介して接続し給排回路用止弁86が設けてある区間給排回路83aと、前記作動油給排回路82は多機能弁80内の弁内給排回路82aから分岐して油圧シリンダ70のロッド側圧力室74に給排回路84を介して接続し給排回路用止弁87が設けてある区間給排回路84aと、前記弁内給排回路81aと弁内給排回路82aとを接続しバイパス回路用止弁88を備えたバイパス回路85とを有する構成である。
【0009】
尚、多機能弁80には、油圧シリンダ70の漏れを検出する流量計測器93aが区間給排回路83aから分岐し止弁95aを有する継手96aを介して着脱可能に設けてある。この流量計測器93aは、ヘッド側圧力室74側への作動油の漏れを検知するものであるから、検知するとき以外は外してある。同様に流量計測器93bは、区間給排回路84aから分岐し止弁95bを有する継手96bを介して着脱可能に設けてある。この流量計測器93bは、ロッド側圧力室75側への作動油の漏れを検知するものであるから、検知するとき以外は外してある。また、作動油給排回路81の漏れを検出する圧力計97aは、弁内給排回路81aから分岐し止弁94aを備えた継手98aに着脱可能に設けてある。作動油給排回路81の破損を検知しない場合は外してある。同様に作動油給排回路82の漏れを検出する圧力計97bは、弁内給排回路82aから分岐し止弁94bを備えた継手98bに着脱可能に設けてある。作動油給排回路82,弁内給排回路82aの破損を検知しない場合は外してある。
【0010】
前記止弁94a、94bと止弁95a,95bは、継手96a,96bと継手98aと98bが破損しても、駆動回路の安全性を確保する機能を有する。したがって、継手96a、96b、98a、98bに流量計測器および圧力計が接続されない時は閉鎖位置にし、検出中計器が破損しても油圧シリンダ70の暴走を止めることができる機能を有する。
【0011】
油圧シリンダの内部漏れ検出ついて述べる。
油圧シリンダ70の内部漏れを検知するには、油圧シリンダ70のピストン72を図示の最左端に位置させた後、給排回路用止弁86とバイパス回路用止弁88を給排回路用止弁87とバイパス回路用止弁88とで閉鎖して作動油給排回路82からロッド側圧力室75に作動圧油を供給しヘッド側圧力室74への漏れがあると流量計測器93aで計測される。また、油圧シリンダ70の内部漏れを検知するには、油圧シリンダ70のピストン72を最右端に位置させた後、給排回路用止弁87とバイパス回路用止弁88とで閉鎖して作動油給排回路82からロッド側圧力室74に作動圧油を供給しヘッド側圧力室75への漏れがあると流量計測器93aで計測される。この様にして、ピストン72の漏れは、ピストン72をいずれかのストロークエンドに位置させ、他方から作動油圧を作用さえて流量計測器93a、93bに作動油の漏洩する作動油の量によりその合否が判定できる。
【0012】
作動油給排回路の破損検出について述べる。
上記の多機能弁の機能である作動油給排回路81、82の破損検出について。作動油給排回路81、弁内給排回路81aの破損を検出するには、給排回路用止弁86とバイパス回路用止弁88を遮断し作動油給排回路81に作動油圧を作用させた状態で閉鎖する。すなわち、作動油給排回路81と弁内給排回路81aに作動油圧を封入して所定時間例えば10分間放置すると、この所定時間内に圧力計97aの圧力降下が所定量に達するか否で破損の有無を検出できる。同様に作動油給排回路82、弁内給排回路82aの破損を検出するには、給排回路用止弁87とバイパス回路用止弁88を遮断し作動油給排回路82に作動油圧を作用させた状態で閉鎖する。すなわち、作動油給排回路82と弁内給排回路82aに作動油圧を封入して所定時間例えば10分間放置すると、この所定時間内に圧力計97bの圧力降下が所定量に達するか否で破損の有無を検出できる。
【0013】
作動油給排回路81,82の清掃機能(フラッシング機能)について。作動油給排回路81と作動油給排回路82には、油圧シリンダ70の作動により、ヘッド側圧力室74内の作動圧油の油量が回路83と区間給排回路83aと弁内給排回路81aを介して作動油給排回路81に停滞し、ヘッド側圧力室75内の作動圧油の油量が回路84と区間給排回路84aと弁内給排回路82aから作動油給排回路82を介して作動油給排回路82に停滞している。この様に、給排回路内に作動油を中時間停滞させると、作動油の変質などが発生するので、定期的に清掃する必要があるすなわち清掃(フラッシング)を行う必要がある。
【0014】
フラッシング機能について述べる。
作動油給排回路81と作動油給排回路82の清掃は、給排回路用止弁86と給排回路用止弁87を閉鎖してバイパス回路用止弁88を開く、すると油圧シリンダ70への回路が遮断され作動油給排回路81と作動油給排回路82を接続して循環回路が構成できるので、一方の給排回路から他方の給排回路に、作動圧油を供給し作動油給排回路81と作動油給排回路82内に停滞している作動圧油を作動油タンクの新しい作動油と交換することで清掃(フラッシング)を完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3696850号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述した特許文献1に記載された往復動型の油圧シリンダの駆動回路は、作動油圧力源と油圧シリンダとの間に配置した多機能弁が、その弁体内に配置した2つの給排回路用止弁とバイパス回路用止弁の操作により、油圧シリンダの内部漏れの検知、給排回路の漏れの検知、及び給排回路の清掃(フラッシング)を行い、往復動型油圧シリンダの駆動回路の保全に貢献するものである。
【0017】
しかしながら、多機能弁の2つの給排回路用止弁とバイパス回路用止弁の操作だけでは、作動油給排回路81と作動油給排回路82のフラッシングは簡単に出来るが、このフラッシングでは油圧シリンダ内の作動油は停滞したままである。このため、油圧シリンダ70内の作動油をフラッシングするには、作動油給排回路のフラッシングの後油圧シリンダを作動させその中に停滞している古い作動油を作動油給排回路に送り出しその後フラッシングにより作動油給排回路内を清掃する作業を繰り返す必要がある。
【0018】
このような同種の作動油の清掃は、多少の時間を費やしてもフラッシングに用いた作動油を廃棄せず濾過して再度使用するので実態にあまり影響が無いと考えられる。しかし、種類の相違する作動油を交換する場合、例えば、多少外部に漏れても周囲を汚染しない環境にやさしい作動油に交換する場合は、交換される作動油は廃棄する必要がある。配管が長くまた大口径の油圧シリンダを用いる転倒ゲートの駆動回路では、交換される作動油が大量であるから、大量の作動油を廃棄する必要がある。このため、この廃棄する作動油を最小限にとどめるためには、一回の操作で往復動型油圧シリンダの駆動回路内の作動油のほとんど全てを交換しなければ、大量の作動油が混合した状態になりその全てを廃棄しなければならなくなる。従来の技術のようにフラッシング機能により作動油を交換するには何度もフラッシング動作を繰り返すので大量の作動油の廃棄を必要とする問題点があった。
【0019】
本発明は、多機能弁の2つの給排回路用止弁とバイパス回路用止弁の操作による回路構成と方向切換弁の操作とを組み合わせることで、一回の操作で往復動型油圧シリンダと駆動回路内の作動油のほぼ全てを交換とする油圧シリンダ作動回路の作動油交換方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、作動油のタンクに接続し圧力作動油を発生する油圧ポンプと、この油圧ポンプからの作動圧油の給排により負荷を駆動するピストンを備えた油圧シリンダと、この油圧シリンダと前記油圧ポンプ及び前記作動油のタンクの間に接続してあり前記油圧シリンダを油圧ポンプと作動油のタンクに接続する2つの切換位置と油圧シリンダと油圧ポンプの間を遮断する中立位置を有する方向切換弁と、この方向切換弁と前記油圧シリンダと間に配置してあり2つの作動油給排回路で接続する多機能弁と、で構成した油圧シリンダ駆動回路において、前記多機能弁を、前記2つの作動油給排回路に接続する弁内給排回路と、この弁内給排回路を接続しバイパス回路用止弁を備えたバイパス回路と、前記弁内給排回路から分岐し給排回路用止弁を備え前記油圧シリンダに接続する2つの区間給排回路と、を備えた構成とし、前記多機能弁が、前記バイパス回路用止弁がバイパス回路遮断し給排回路用止弁が前記区分給排回路を連通する第1回路構成と、前記バイパス回路用止弁がバイパス回路連通し給排回路用止弁が前記区分給排回路を遮断する第2回路構成と、を形成する機能を備え、この多機能弁の回路構成と方向切換弁の切換位置を、前記方向切換弁を中立位置に操作した状態で前記多機能弁が前記第1回路構成を形成しその後、前記方向切換弁を切換位置に操作し前記油圧シリンダのロッドを一方のストロークエンドに位置させた後中立位置に復帰させる第1操作と、前記第1操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成しその後、方向切換弁を前記第1操作と対抗する切換位置に操作し前記第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を少なくとも前記バイパス回路を満たす油量分を供給し、その後中立位置に復帰させる第2操作と、前記第2操作の操作後、前記多機能弁が前記第1回路構成を形成し、その後方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を供給して前記油圧シリンダを第1操作と反対側のストロークエンドまで位置させその後、中立位置に復帰させる第3操作と、前記第3操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成し、その後前記方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を1つの給排回路の容積以上供給した後、中立位置に復帰させる第4操作と、になることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、多機能弁が構成する第1回路構成と第2回路構成と方向切換弁の操作の組み合わせの途中に、方向切換弁を中立位置に操作することを要件としているので、第1操作から第4操作までの間の作動圧油の給排を停止して順次一定の方向に作動油を供給する。すなわち、一定の量の作動油を循環させるので、交換する作動圧油と交換される作動油を回路中で混合せず一回の操作で作動油の交換を確実に行うことが出来る。
【0022】
また、本発明は、作動油のタンクに接続し圧力作動油を発生する油圧ポンプと、この油圧ポンプからの作動圧油の給排により作動し負荷を駆動するピストンを備えた油圧シリンダと、この油圧シリンダと前記油圧ポンプ及び前記タンクの間に接続してあり前記油圧シリンダを油圧ポンプと作動油タンクに接続する2つの切換位置と油圧シリンダと油圧ポンプの間を遮断する中立位置を有する方向切換弁と、この方向切換弁と前記油圧シリンダと間に配置してあり2つの作動油給排回路で接続する多機能弁と、で構成した油圧シリンダ駆動回路において、前記多機能弁を、前記2つの作動油給排回路に接続する弁内給排回路と、この弁内給排回路を接続しバイパス回路用止弁を備えたバイパス回路と、
前記弁内給排回路から分岐し給排回路用止弁を備え前記油圧シリンダに接続する2つの区間給排回路と、を備えた構成とし、前記多機能弁が、前記バイパス回路用止弁がバイパス回路遮断し給排回路用止弁が前記区分給排回路を連通する第1回路構成と、前記バイパス回路用止弁がバイパス回路連通し給排回路用止弁が前記区分給排回路を遮断する第2回路構成と、を形成する機能を備え、この多機能弁の回路構成と方向切換弁の切換位置を、前記方向切換弁を中立位置に操作した状態で前記多機能弁が前記第1回路構成を形成しその後、前記方向切換弁を切換位置に操作し前記油圧シリンダのピストンを前記油圧シリンダのピストンに作用する負荷の作用方向と同一方向のストロークエンドに位置させた後、中立位置に復帰させる第1操作と、前記第1操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成しその後、方向切換弁を前記第1操作と対抗する切換位置に操作し前記第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を少なくとも前記バイパス回路を満たす油量分を供給し、その後中立位置に復帰させる第2操作と、前記第2操作の操作後、前記多機能弁が前記第1回路構成を形成し、その後方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を供給して前記油圧シリンダを第1操作と反対側のストロークエンドまで位置させその後、中立位置に復帰させる第3操作と、前記第3操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成し、その後前記方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を1つの給排回路の容積以上供給した後、中立位置に復帰させる第4操作と、になることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、第1操作時が油圧シリンダのピストンをピストンに作用する負荷の作用方向と同一方向のストロークエンドに位置させた後、前記方向切換弁を中立位置に復帰させる第1操作であるから、第3操作時において排出側となった作動油給排回路に前記油圧ポンプの作動圧油を供給して前記油圧シリンダのピストンを第1操作と反対側のストロークエンドまで操作するとき、その作動圧油の圧力が油圧シリンダのロッドに作用する負荷に対応した高圧となるので、油圧シリンダへの気体の混入を防止できる効果を有する。
【0024】
又本発明は、油圧シリンダと前記油圧ポンプ及び前記タンクの間に接続してあり前記油圧シリンダを油圧ポンプと作動油タンクに接続する2つの切換位置と油圧シリンダと油圧ポンプの間を遮断する中立位置を有する方向切換弁と作動油タンクとの間に残圧発生弁を備えたことを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、方向切換弁が操作された時に油圧シリンダの排出側と作動油タンクの間に設けた残圧発生弁により、残圧発生弁が発生する残圧に対応して油圧シリンダ駆動回路の圧力を上げるものであるから、作動油の交換を圧力存在下で行うので、気体の混入を防止できる効果を有する。
【0026】
又本発明は、作動油のタンクに接続し圧力作動油を発生する油圧ポンプと、この油圧ポンプからの作動圧油の給排により作動し負荷を駆動するピストンを備えた油圧シリンダと、この油圧シリンダと前記油圧ポンプ及び前記タンクの間に接続してあり前記油圧シリンダを油圧ポンプと作動油タンクに接続する2つの切換位置と油圧シリンダと油圧ポンプの間を遮断する中立位置を有する方向切換弁と、この方向切換弁と前記油圧シリンダと間に配置してあり2つの作動油給排回路で接続する多機能弁と、で構成した油圧シリンダ駆動回路において、前記多機能弁を、前記2つの作動油給排回路に接続する弁内給排回路と、この弁内給排回路を接続しバイパス回路用止弁を備えたバイパス回路と、前記弁内給排回路から分岐し給排回路用止弁を備え前記油圧シリンダに接続する2つの区間給排回路と、を一体の弁体内に収納した複合弁に構成とし、前記多機能弁が、前記バイパス回路用止弁がバイパス回路遮断し給排回路用止弁が前記区分給排回路を連通する第1回路構成と、前記バイパス回路用止弁がバイパス回路連通し給排回路用止弁が前記区分給排回路を遮断する第2回路構成と、を形成する機能を備え、前記複合弁を前記油圧シリンダの高圧側の給排ポートに直接結合すると共に低圧側の給排ポートに配管を介して接続した構成とし、この多機能弁の回路構成と方向切換弁の切換位置を、前記方向切換弁を中立位置に操作した状態で前記多機能弁が前記第1回路構成を形成しその後、前記方向切換弁を切換位置に操作し前記油圧シリンダのロッドを一方のストロークエンドに位置させた後中立位置に復帰させる第1操作と、前記第1操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成しその後、方向切換弁を前記第1操作と対抗する切換位置に操作し前記第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を少なくとも前記バイパス回路を満たす油量分を供給し、その後中立位置に復帰させる第2操作と、前記第2操作の操作後、前記多機能弁が前記第1回路構成を形成し、その後方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を供給して前記油圧シリンダを第1操作と反対側のストロークエンドまで位置させその後、中立位置に復帰させる第3操作と、前記第3操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成し、その後前記方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を1つの給排回路の容積以上供給した後、中立位置に復帰させる第4操作と、になることを特徴とする。
【0027】
上記構成によると、多機能弁を一つの弁体に収納した複合弁にし、この服合弁の弁体を油圧シリンダの高圧側の給排ポートに直接接続するので、油圧シリンダの高圧側とその区分給排回路に設けた給排回路用止弁との距離が極めて短縮化されるので、高圧の油圧が作用する油圧シリンダの高圧側の作動油の交換される作動油との混ざりを極めて小さい値にすることができ、交換する作動油の性能を発揮しやすい効果を有する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の油圧シリンダ作動回路の作動油交換方法は、多機能弁と方向切換弁の組み合わせにより、油圧シリンダの1回の操作により確実に交換を終了する。特に長い配管を有する水門の油圧シリンダ駆動回路のように、交換する容量の大きい回路では必要最小限度の作動油の量で交換が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧シリンダの駆動装置の概念を示す。
【図2】図1に示した駆動装置の駆動回路図。
【図3(A)】複合弁40の第1回路構成の回路図。
【図3(B)】複合弁40の第1回路構成の回路図。
【図3(C)】制御ボックス30内に設けた残圧維持弁の回路図
【図4】従来技術の油圧シリンダの駆動回路図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
図1において、油圧シリンダ10は、河川を横切って設置してある転倒ゲート20の両側にピア(pier)を設け、このピア内に前記転倒ゲートが固定されるシャフト23とこのシャフト23に固定してあり油圧シリンダ10で回動させられるカム24を有する。この転倒ゲート20は、前記ピア内に設けた油圧シリンダ10で回動されるカム24のシャフト23によりその転倒量が水流に逆らって閉じる方向と、水流21に沿った開き方向に制御される。すなわち、転倒ゲート20が水流21に抗して閉じられるとその上流側の水深は深くなり、転倒ゲート20を水流21に沿って開くと水深は浅くなるものである。ピア内に設置した油圧シリンダ10は、そのクレビス13をピア内に設置してありそのロッド12がカム24接続する。そして、油圧シリンダ10は、油圧源30からの作動圧油が管路31から供給され油圧シリンダ10の作動油が管路32から排出されると、ロッド12が矢印aの伸長方向に作動してカム24を回動しその軸23で転倒ゲート20を水流21に逆らって閉じる方向に駆動する。油圧シリンダ10は、油圧源30からの作動圧油が管路32から供給され管路31から排出されると、ロッド12が矢印bの縮小方向に作動してカム24を回動しその軸23で転倒ゲート20を水流21に沿って開く方向に駆動する。
【0032】
前記油圧シリンダ10を設置してあるピア内には、油圧シリンダ10の一端であるクレビス13が固定してあり、その他端であるピストンロッド12の先端が取り付けてあるカム24を有する。この油圧シリンダ10には、そのヘッドカバー14aに前記した多機能の各弁を一つの弁体内に設けた構成の複合弁40が固定してあり、この複合弁40は、油圧シリンダ10のヘッド側圧力室に開口する給排ポートに直接連結されている。又、油圧シリンダ10のロッドカバー14bには、複合弁40のフランジ41と配管16を介して接続するフランジ15が設けてあり、前記複合弁40とロッド側圧力室とは、フランジ41と配管16とフランジ15を介して接続する。
【0033】
前記油圧シリンダ10は、ヘッド側圧力室に作動圧油が供給されロッド12を伸長方向の移動に大きな負荷(伸長方向の移動により転倒ゲート20が水門を水流21に抗して閉じる方向に作動するので、転倒ゲート20を上昇させるための大きな負荷が作用する。)が作用し、ロッド側圧力室に作動圧油が供給されロッド12が縮小方向の移動に小さな負荷(縮小方向の移動により移動により転倒ゲート20が水門を下降させる方向に作動するので、水門を自走させないための小さな負荷が作用する。)が作用するように設置されている。そして、前記複合弁40の油圧シリンダ10への取り付けは、ヘッドカバー14aである高圧側の給排ポートに直接取り付けてあり、ロッドカバー14bの低圧側はフランジ41とフランジ15を配管16で接続する構成であるから。伸長方向の高圧な作動油圧を複合弁40の強固な弁体で対応し、縮小方向の低圧の作動油圧をフランジ41と配管16とフランジ15で対応する構造である。
【0034】
上述したように、油圧シリンダ10に取り付けた複合弁40は、図2に基づいた詳細に説明するが、複合弁40の内部に設けた一方の給排回路用止弁を開閉駆動する駆動モータ42とバイパス回路のバイパス回路用止弁を開閉駆動する駆動モータ43及び他方の給排回路用止弁を駆動する駆動モータ44を備えており、複合弁40の各弁を前記駆動モータにより遠隔操作可能である。
【0035】
制御ボックス30は、作動油タンクと油圧ポンプ及びそれらを制御する機器が収納され前記油圧シリンダ10が設置されるピアと隔離された場所に設置してあり、油圧ポンプ、作動油のタンク左切換位置等と前記複合弁40および方向切換弁の遠隔操作する機能を有する機器が設置してある。
【0036】
この制御ボックス30と複合弁40の間に設置してある管路31と管路32は、制御ボックス30内に設けた油圧ポンプとタンクとが接続し作動圧油の流れの方向を制御する方向切換弁に接続してあり、この方向切換弁の操作により油圧シリンダ10が転倒ゲート20を駆動する。すなわち、方向切換弁により管路31が油圧ポンプに接続され、管路32がタンクに接続されると、油圧シリンダ10のヘッド側圧力室に作動圧油が供給され、ロッド側圧力室の作動油が排出されるので、ロッド12が伸長する。なお50は、管路31と管路32の埋設部分を示す。
【0037】
次に、本発明の実施形態に係る油圧シリンダの駆動装置の概念を示す図1の機能を駆動回路図にした図2について説明する。
【0038】
油圧シリンダ10は、シリンダチューブ11の内部に摺動自在に嵌入するピストン17は、ヘッド側圧力室11aとロッド側圧力室12aを形成する。このヘッド側圧力室11aは、ヘッドカバー14aに固定された複合弁40から作動油が直接給排され、ロッド側圧力室12aには、ロッドカバー14bに固定されたフランジ15と配管16及びフランジ41から複合弁40を解して作動油が給排される。
【0039】
油圧シリンダ10に取り付けられた複合弁40は、従来の多機能弁80と同一機能で、多機能弁80の回路及びその回路に設けた多機能弁を一体の弁体に収納した構造であり、管路31と管路32が複合弁40の弁内油給排回路31bと弁内油給排回路32bに接続する。
【0040】
前記複合弁40は、弁内油給排回路31bと弁内油給排回路32bを接続しバイパス回路用止弁48が設けてあるバイパス回路45と、前記弁内油給排回路31bから分岐し給排回路用止弁46が設けてあり油圧シリンダ10のヘッド側圧力室11aに接続する区間給排回路31cと、前記弁内油給排回路32bから分岐し給排回路用止弁47が設けてあり油圧シリンダ10のロッド側圧力室12aにフランジ41と配管16とフランジ15を介して接続する区間給排回路32cとを備えた構成である。
【0041】
なお、前記給排回路用止弁46は、開閉駆動させられる駆動モータ42を備えており、前記給排回路用止弁47は、開閉駆動させられる駆動モータ44を備えており、前記バイパス回路45は、開閉駆動させられる駆動モータ42を備えている。このため、上記給排回路用止弁46、47およびバイパス回路用止弁48は、夫々の駆動モータで制御可能である。
【0042】
また、前記複合弁40は、図3(A)に示す第1回路構成と、図3(B)に示す第2回路構成を形成する。この第1回路構成は、前記バイパス回路用止弁48がバイパス回路45を遮断し給排回路用止弁46,47が前記区分給排回路31c、32cを連通する構成であり、区間給排回路31cを開放して作動油給排回路31aをヘッド側圧力室11aに連通する油圧シリンダ10の通常作動回路である。また、第2回路構成は、前記バイパス回路用止弁48がバイパス回路45連通し給排回路用止弁46,47が前記区分給排回路31c、32cを遮断する構成であり、弁内油給排回路31bと弁内油給排回路32bを接続し、作動油給排回路31aと弁内油給排回路32bを接続するフラッシング用回路である。
【0043】
制御ボックス30には、管路31が形成する作動油給排回路31aと管路32が形成する作動油給排回路32aが接続する方向切換弁35とこの方向切換弁35に油圧ポンプ33と作動油のタンク34とが接続している。
【0044】
この方向切換弁35は、4ポート3位置切換弁であり、作動油給排回路31a、32aが接続する2つの給排出ポートと油圧ポンプ33が接続するポンプポートと作動油タンク作動油のタンク34が接続するタンクポートの4つのポートを備え、前記2つの給排ポートをタンクポートに接続する中立位置35aと、作動油給排回路31aを油圧ポンプ33に接続し、作動油給排回路32aを作動油タンク作動油のタンク34に接続する右切換位置35bと、作動油給排回路31aを作動油タンク作動油のタンク34に接続し作動油給排回路32aを油圧ポンプ33に接続する左切換位置35cと、電磁操作部36bと36c及びこの電磁操作部36b、36cのいずれにも操作信号が印加されないとき中立位置35aに保つ中立位置復帰ばね37b、37cで構成してある。
【0045】
作動油給排回路31aに設けてあるパイロットチェック弁25は、作動油給排回路32aに接続したパイロット回路26が接続しており、パイロット回路26に油圧が作用しないときは、作動油給排回路32aを遮断し、パイロット回路26に油圧が作用したとき作動油給排回路32aを連通する。すなわち、パイロットチェック弁25は、方向切換弁35が左切換位置35cに操作され油圧ポンプ33の作動油圧が作動油給排回路32aに作用するとパイロットチェック弁25が開く。なお、作動油給排回路32aにおけるヘッド側圧力室11a方向への流れは常に開放する機能を有する。このパイロットチェック弁25は、方向切換弁35がスプール型であるためシール力が弱くその中立位置をオールポートブロックタイプにしても、油圧シリンダ10に作用する負荷による圧力を保持できないので、油圧シリンダ10の負荷側である作動油給排回路31aをパイロットチェック弁25で閉鎖する構成としたものである。
【0046】
方向切換弁35と作動油のタンク34の間に設けた2ポート2位置切換弁38は、残圧発生用の絞りを形成する絞り位置38aと残圧発生用の絞りを形成しない中立位置38bと、中立位置復帰ばね39bと電磁操作部39aとを有し、電磁操作部39aに操作信号が印加されないとき、中立位置復帰ばね39bによって中立位置38bに位置する構造である。尚、図3(C)に示した実施例は、方向切換弁35と作動油のタンク34との間に設けた残圧維持弁であり、この弁は、逆止弁60に残圧維持用のばね61を設け、方向切換弁35から作動油のタンク34方向に作動油が通過するとき、逆止弁60の上流側に低圧の圧力を維持する機能を有する。したがって、方向切換弁35の中立位置35aにおいて作動油給排回路31a、作動油給排回路32aが共にタンクに接続されても、逆止弁60の上流側には低圧の油圧を維持し、逆止弁60の上流側に気体の流入を防止する。
【0047】
なお、止弁27a、27bは、作動油給排回路31a、32aに作動圧油を封入して回路の破損、ひび割れ等を検査するために用いるものである、すなわち、作動油給排回路31aの漏れは、給排回路用止弁46とバイパス回路用止弁48を閉鎖して作動油給排回路31aに作動油圧を作用させ止弁27aを閉鎖したときから、単位時間当たりの圧力降下により検出する。また、作動油給排回路31aの漏れは、給排回路用止弁47とバイパス回路用止弁48を閉鎖して作動油給排回路32aに作動油圧を作用させ止弁27bを閉鎖したときから、単位時間当たりの圧力降下により検出する。
【0048】
上記構成を有する油圧シリンダの駆動回路における作動油交換方法について述べる。なお、作動油交換方法と記載したが、回路の清掃であるフラッシングにおいても同様である。つまり、駆動回路中の作動油を同一の作動油に交換する場合をフラッシング称し、異種の作動油の交換を作動油交換と称する。
【0049】
本発明の作動油交換方法は、複合弁40が形成する第1と第2の回路構成と方向切換弁35の操作位置との組合せにより第1操作から第4操作にいたる操作を順次実施することで、油圧シリンダ作動回路内の作動油を一操作ごとの単位量を循環さて交換するものである。
【0050】
複合弁40が形成する第1回路構成と第2回路構成について
第1回路構成は、図3(A)に示すようにバイパス回路45のバイパス回路用止弁48を閉鎖し、他の給排回路用止弁46、47を開放状態とし区間給排回路31cと区間給排回路32c連通状態に保つ回路構成である。この第1回路は油圧シリンダ10駆動回路である。以下第1回路構成を油圧シリンダの駆動回路と記載する場合もある。
【0051】
第2回路構成は、図3(B)に示すように駆動モータ42、44に操作信号を印加し給排回路用止弁46、47で区間給排回路31c、32cを遮断し、バイパス回路用止弁48を開放状態に保つ回路構成である。この第2回路構成は、フラッシング回路である。以下第2回路構成をフラッシング回路と記す場合もある。
【0052】
作動油交換方法の第1操作について
第1操作は、複合弁40を第1回路構成に形成した状態で方向切換弁35を左切換位置35cに操作すると、油圧シリンダ10のロッド側圧力室12aが作動油給排回路32aと複合弁40の区間給排回路32cを介して油圧ポンプ33が接続し、ヘッド側圧力室11aは複合弁40の区間給排回路31cと作動油給排回路31aを介して作動油タンク34に接続される。このとき、パイロットチェック弁25で作動油給排回路31aが閉鎖されるので、作動油給排回路32aの油圧が上昇する。この油圧は、パイロット回路26を介してパイロットチェック弁25を開放する。したがって、作動油給排回路31aが開放され、油圧シリンダ10のピストン17を矢印bの縮小方向に移動させる。そして、油圧シリンダ10のピストン17がストロークエンドに達すると、方向切換弁35を中立位置35aに復帰させる。この状態では油圧シリンダ10のピストン17は、ストロークエンドに達した図2の位置になり、作動油給排回路31aと作動油給排回路32aがともに作動油のタンク34に連結されるので、作動油給排回路32aの油圧が降下してパイロットチェック弁25が作動油給排回路31aを閉鎖する。このパイロットチェック弁25の機能により、ヘッド側圧力室11a内の作動圧油が封じ込まれるので、ピストンロッド12はその位置を保持する。
【0053】
作動油交換方法の第2操作について
第2操作は、複合弁40を第2回路構成に形成した状態で方向切換弁35を第1操作と反対の切換位置である右切換位置35bに操作すると、油圧ポンプ33は作動油給排回路31aとバイパス回路45と作動油給排回路32aを介して作動油タンク34に接続される。この状態で少なくとも作動油給排回路31aとバイパス回路45の容量以上の作動圧油を供給し、方向切換弁35を中立位置35aに復帰させる。この状態では、油圧シリンダ10が給排回路用止弁46と給排回路用止弁47でブロックされたままで作動油給排回路31aとバイパス回路45内の作動油が交換される、
【0054】
作動油交換方法の第3操作について
第3操作は、複合弁40を第1回路構成に形成した状態で方向切換弁35を右切換位置35bに操作すると、油圧シリンダ10のヘッド側圧力室11aが作動油給排回路31aと複合弁40の区間給排回路31cとパイロットチェック弁25を介して油圧ポンプ33に接続し、ロッド側圧力室12aは複合弁40の区間給排回路32cと作動油給排回路32aを介して作動油タンク34に接続されるので、油圧シリンダ10ヘッド側圧力室11aには油圧ポンプ33の作動圧油が供給されるので、ピストン17が矢印aの伸長方向に移動する。このようにして、ピストン17がそのストロークエンドに達すまで移動させ他の後方向切換弁35を中立位置35aに復帰させると、こ油圧シリンダ10のピストン17がロッド側圧力室12aのストロークエンドに達した位置になり、パイロットチェック弁25により作動油給排回路31aが閉鎖された状態となる。したがって、油圧シリンダ10のピストンロッド12は、負荷が作用してもその位置を保持する。また、この操作により油圧シリンダ10のヘッド側圧力室11aの作動油は全部交換され、ロッド側圧力室12aの作動油が配管16から、区間給排回路32cを介して作動油給排回路32aに流入する。この時バイパス回路45には交換する作動油が充填されておりバイパス回路用止弁48が閉鎖しているので、ロッド側圧力室12aの作動油は、配管16と区間給排回路32cと作動油給排回路32aに充満する。
【0055】
作動油交換方法の第4操作について
第4操作は、複合弁40を第2回路構成に形成した状態で方向切換弁35を第1操作と反対の切換位置である左切換位置35cに操作すると、油圧ポンプ33は、作動油給排回路31aとバイパス回路45と作動油給排回路32aを介して作動油タンク34に接続される。この状態で少なくとも作動油給排回路32aの容量以上の作動圧油を供給し、方向切換弁35を中立位置35aに復帰させる。油圧シリンダ10は、給排回路用止弁46と給排回路用止弁47でブロックされたままで作動油給排回路31aとの作動油が交換されるが、配管16と区間給排回路32c内の作動油は、僅かであるが残存したままである。
【0056】
上述のように、第1操作から第4操作を順次実施することで、油圧シリンダ10とその駆動回路内の作動油を交換できる。この作動油の交換において、交換する作動油が同種の場合、交換される作動油を作動油のタンク34に還流して、作動油のタンク34内で濾過すればよいが、交換する作動油が異種の場合、新しい作動油を油圧ポンプ33から送出し、そのタンク側をべつの容器に受けることで、作動油の交換が行える。
【0057】
位置切換弁38は、方向切換弁35が油圧シリンダ10の作動位置である右切換位置35b又は、左切換位置35cにおいて、絞り位置38aに操作すると、作動油給排回路が油圧ポンプ33と作動油のタンク34に接続され、油圧ポンプ33が発生する作動圧油が位置切換弁38を通過して作動油のタンク34に還流する。この時、位置切換弁38が絞り位置38aに切換えられていると、絞り位置38aで発生する圧力が油圧ポンプ33の発生油圧に反映されるので、その圧力の下で作動油が循環する。
【0058】
したがって、油圧シリンダ10に作用する負荷の方向にかかわらず、必ず2位置切換弁38の絞り位置38aが発生する圧力を前回路に確保できるので、作動油の交換途中において気体を吸い込むなどの障害が発生しない。
【符号の説明】
【0059】
10 油圧シリンダ
12 ピストンロッド
17 ピストン
20 転倒ゲート
30 制御ボックス
31a 作動油給排回路
31c 区間給排回路
32a 作動油給排回路
32c 区間給排回路
33 油圧ポンプ
34 作動油のタンク
35 方向切換弁
35a 中立位置
35b 右切換位置
35c 左切換位置
40 複合弁
46 給排回路用止弁
47 給排回路用止弁
58 バイパス回路用止弁
80 多機能弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油のタンクに接続し圧力作動油を発生する油圧ポンプと、
この油圧ポンプからの作動圧油の給排により負荷を駆動するピストンを備えた油圧シリンダと、
この油圧シリンダと前記油圧ポンプ及び前記作動油のタンクの間に接続してあり前記油圧シリンダを油圧ポンプと作動油のタンクに接続する2つの切換位置と油圧シリンダと油圧ポンプの間を遮断する中立位置を有する方向切換弁と、
この方向切換弁と前記油圧シリンダと間に配置してあり2つの作動油給排回路で接続する多機能弁と、
で構成した油圧シリンダ駆動回路において
前記多機能弁を、
前記2つの作動油給排回路に接続する弁体内回路と、
この弁内給排回路を接続しバイパス回路用止弁を備えたバイパス回路と、
前記弁内給排回路から分岐し給排回路用止弁を備え前記油圧シリンダに接続する2つの区間給排回路と、
を備えた構成とし、
前記多機能弁が
前記バイパス回路用止弁がバイパス回路遮断し給排回路用止弁が前記区分給排回路を連通する第1回路構成と、
前記バイパス回路用止弁がバイパス回路連通し給排回路用止弁が前記区分給排回路を遮断する第2回路構成と、
を形成する機能を備え、
この多機能弁の回路構成と方向切換弁の切換位置を、
前記方向切換弁を中立位置に操作した状態で前記多機能弁が前記第1回路構成を形成しその後、前記方向切換弁を切換位置に操作し前記油圧シリンダのロッドを一方のストロークエンドに位置させた後中立位置に復帰させる第1操作と、
前記第1操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成しその後、方向切換弁を前記第1操作と対抗する切換位置に操作し前記第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を少なくとも前記バイパス回路を満たす油量分を供給し、その後中立位置に復帰させる第2操作と、
前記第2操作の操作後、前記多機能弁が前記第1回路構成を形成し、その後方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を供給して前記油圧シリンダを第1操作と反対側のストロークエンドまで位置させその後、中立位置に復帰させる第3操作と、
前記第3操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成し、その後前記方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を1つの給排回路の容積以上供給した後、中立位置に復帰させる第4操作と、
になることを特徴とする油圧シリンダ作動回路の作動油交換方法。
【請求項2】
作動油のタンクに接続し圧力作動油を発生する油圧ポンプと、
この油圧ポンプからの作動圧油の給排により負荷を駆動するピストンを備えた油圧シリンダと、
この油圧シリンダと前記油圧ポンプ及び前記作動油のタンクの間に接続してあり前記油圧シリンダを油圧ポンプと作動油のタンクに接続する2つの切換位置と油圧シリンダと油圧ポンプの間を遮断する中立位置を有する方向切換弁と、
この方向切換弁と前記油圧シリンダと間に配置してあり2つの作動油給排回路で接続する多機能弁と、
で構成した油圧シリンダ駆動回路において
前記多機能弁を、
前記2つの作動油給排回路に接続する弁内給排回路と、
この弁内給排回路を接続しバイパス回路用止弁を備えたバイパス回路と、
前記弁内給排回路から分岐し給排回路用止弁を備え前記油圧シリンダに接続する2つの区間給排回路と、
を備えた構成とし、
前記多機能弁が
前記バイパス回路用止弁がバイパス回路遮断し給排回路用止弁が前記区分給排回路を連通する第1回路構成と、
前記バイパス回路用止弁がバイパス回路連通し給排回路用止弁が前記区分給排回路を遮断する第2回路構成と、
を形成する機能を備え、
この多機能弁の回路構成と方向切換弁の切換位置が、
前記方向切換弁を中立位置に操作した状態で前記多機能弁が前記第1回路構成を形成しその後、前記方向切換弁を切換位置に操作し前記油圧シリンダのピストンを前記油圧シリンダのピストンに作用する負荷の作用方向と同一方向のストロークエンドに位置させた後、中立位置に復帰させる第1操作と、
前記第1操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成しその後、方向切換弁を前記第1操作と対抗する切換位置に操作し前記第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を少なくとも前記バイパス回路を満たす油量分を供給し、その後中立位置に復帰させる第2操作と、
前記第2操作の操作後、前記多機能弁が前記第1回路構成を形成し、その後方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を供給して前記油圧シリンダを第1操作と反対側のストロークエンドまで位置させその後、中立位置に復帰させる第3操作と、
前記第3操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成し、その後前記方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を1つの給排回路の容積以上供給した後、中立位置に復帰させる第4操作と、
になることを特徴とする油圧シリンダ作動回路の作動油交換方法。
【請求項3】
油圧シリンダと前記油圧ポンプ及び前記タンクの間に接続してあり前記油圧シリンダを油圧ポンプと作動油タンクに接続する2つの切換位置と油圧シリンダと油圧ポンプの間を遮断する中立位置を有する方向切換弁と作動油タンクとの間に残圧発生弁を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載油圧シリンダ作動回路の作動油交換方法。
【請求項4】
作動油のタンクに接続し圧力作動油を発生する油圧ポンプと、
この油圧ポンプからの作動圧油の給排により負荷を駆動するピストンを備えた油圧シリンダと、
この油圧シリンダと前記油圧ポンプ及び前記作動油のタンクの間に接続してあり前記油圧シリンダを油圧ポンプと作動油のタンクに接続する2つの切換位置と油圧シリンダと油圧ポンプの間を遮断する中立位置を有する方向切換弁と、
この方向切換弁と前記油圧シリンダと間に配置してあり2つの作動油給排回路で接続する多機能弁と、
で構成した油圧シリンダ駆動回路において
前記多機能弁を、
前記2つの作動油給排回路に接続する回路と、
この回路を接続しバイパス回路用止弁を備えたバイパス回路と、
前記回路から分岐し給排回路用止弁を備え前記油圧シリンダに接続する2つの区間給排回路と、
を一体の弁体内に収納した複合弁に構成し、
前記複合弁が
前記バイパス回路用止弁がバイパス回路遮断し給排回路用止弁が前記区分給排回路を連通する第1回路構成と、
前記バイパス回路用止弁がバイパス回路連通し給排回路用止弁が前記区分給排回路を遮断する第2回路構成と、
を形成する機能を備え、
前記複合弁を前記油圧シリンダの高圧側の給排ポートに直接結合すると共に低圧側の給排ポートに配管を介して接続した構成とし、
この多機能弁の回路構成と方向切換弁の切換位置を、
前記方向切換弁を中立位置に操作した状態で前記多機能弁が前記第1回路構成を形成しその後、前記方向切換弁を切換位置に操作し前記油圧シリンダのロッドを一方のストロークエンドに位置させた後中立位置に復帰させる第1操作と、
前記第1操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成しその後、方向切換弁を前記第1操作と対抗する切換位置に操作し前記第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を少なくとも前記バイパス回路を満たす油量分を供給し、その後中立位置に復帰させる第2操作と、
前記第2操作の操作後、前記多機能弁が前記第1回路構成を形成し、その後方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を供給して前記油圧シリンダを第1操作と反対側のストロークエンドまで位置させその後、中立位置に復帰させる第3操作と、
前記第3操作の操作後、前記多機能弁が前記第2回路構成を形成し、その後前記方向切換弁を前記第2操作と同一の切換位置に操作し第1操作時において排出側となった給排回路に前記油圧ポンプの作動油を1つの給排回路の容積以上供給した後、中立位置に復帰させる第4操作と、
になることを特徴とする油圧シリンダ作動回路の作動油交換方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3(A)】
image rotate

【図3(B)】
image rotate

【図3(C)】
image rotate

【図4】
image rotate