説明

油圧プレス固形化処理設備

【課題】 産業廃棄物運搬に係わる事業所・工場・研究所等に設置されて、低電力化による省エネルギー運転を可能とした油圧プレス固形化処理設備を提供する。
【解決手段】 産業廃棄物からなる材料kを、金型1内で圧縮用の油圧シリンダ2により圧縮して固形化物Kとする油圧プレス固形化処理設備である。圧縮用の油圧シリンダ2の他に、金型へ1の材料の給排に係わる少なくとも一つの油圧シリンダ5,9を有する。これら各油圧シリンダ2,5,9に、互いに共通の油圧ポンプ12から圧力油を供給する油圧回路13を設ける。油圧回路13に接続された全ての油圧シリンダ2,5,9が油圧力不要な間は油圧ポンプ12を停止状態とする制御装置17を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業廃棄物運搬に係わる事業所・工場・研究所等に設置されて、各種の産業廃棄物、例えば、水分、油分、研削液等を含む様な汚泥の圧搾固形化や、廃棄茶葉・おから等の圧搾固形化、鉄鋼ダスト・旋盤切子・シュレッダー紙・他、等の圧縮固形化を行う油圧プレス固形化処理設備に関し、特にその低電力化による省エネルギー運転を可能とした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃棄物は再利用を図ることが好ましいが、上記のような汚泥状や粉状、細片状の産業廃棄物は、そのままでは、再利用のための運搬や取り扱いが困難である。そのため、従来よりブリケット状に固形化し、固形化物として運搬・取り扱いが行われている。その油圧プレスを用いた固形化処理において、油圧シリンダを制御し、固形時の加圧力及び加圧速度を調整して適切な固形化処理を行う手段として、特許文献1,2に示す方法等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−141935号公報
【特許文献2】特開2009−220124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の油圧プレス固形化処理設備では、設備稼働中は常に油圧ポンプを稼働状態としており、サイクル中の廃棄物等の材料投入時は、油圧力を必要としないが、油圧ポンプを稼動させて無駄な電気を消費している。すなわち、一般的に油圧回路が構成された場合、その回路に供給する油圧力を発生させるポンプ、かつ動力源として主に用いられる電動機によって構成される様な、『油圧ポンプ』によって油圧回路動作の動力源として取り扱われる。そして『油圧ポンプ』は設備自体の動作にかかわらず、一定の油圧力を発生させている。油圧力の取り出しは、制御されたバルブによって目的の配管へと油圧力を伝えているのが一般的である。しかし制御動作の必要がない状態では、『油圧ポンプ』の『一定の油圧力を発生させている』と言う部分は全く無駄になっている。
また、別な具体例として、油圧回路内における、高圧力状態でのバルブ切替時に発生する大ショックは、高圧でプレスする油圧プレス固形化処理設備では、油圧配管に大きな負荷であり、油漏れ・油圧配管継手破損などの発生要因となっている。現在の公知技術では、油圧ポンプを稼動してのショックレス回路で対応しており、電気を消費しての対応である。そのため、省エネルギー化が望まれる。
【0005】
この発明の目的は、低電力化による省エネルギー運転を可能とした油圧プレス固形化処理設備を提供することである。
この発明の他の目的は、油圧回路内で生じる急激な油圧変動による大ショックを無くすことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の油圧プレス固形化処理設備は、産業廃棄物からなる材料を、金型内で圧縮用の油圧シリンダにより圧縮して固形化物とする油圧プレス固形化処理設備であって、前記圧縮用の油圧シリンダの他に、前記金型への前記材料の給排に係わる少なくとも一つの油圧シリンダを有し、これら圧縮用の油圧シリンダを含む複数の油圧シリンダに、互いに共通の油圧ポンプから圧力油を供給する油圧回路と、この油圧回路に設けられた制御弁および前記油圧ポンプを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記油圧回路に接続された全ての油圧シリンダが油圧力不要な間は前記油圧ポンプを停止状態とすることを特徴とする。
この構成によると、全ての油圧シリンダが油圧力不要な間は、前記制御装置の制御により前記油圧ポンプを停止状態とするため、そのポンプ停止時はポンプ駆動のための電力消費がなく、低電力化による省エネルギー運転が可能となる。
すなわち、油圧回路を用いた圧搾設備では、その動作サイクルのすべてで油圧力を必要としている訳ではない。設備の圧搾材料搬送サイクル時などの、油圧力不要な状態では油圧力を0に出来る構造を備えるようにする。これにより油圧力を発生させる『油圧ポンプ』の動力を止める事が出来、サイクル中の消費電力を抑えることが出来る。また、圧縮用の油圧シリンダへ送られる、油圧力の掛からない状態からの緩やかな動作油圧力の供給は、油圧制御バルブの開閉時に起こり得る油圧配管内の急激な圧力上昇状態、つまりは『大ショック』を緩和させる。
【0007】
この発明において、前記金型は円筒状の圧縮室を有し、一端が開閉自在なシャッターにより開閉され、他端から挿入された加圧用のプッシャーにより金型内部で材料の圧縮を行って円柱状の固形化物とするものであり、この加圧用のプッシャーが前記圧縮用の油圧シリンダで進退駆動され、前記シャッターが他の油圧シリンダにより開閉駆動されるものであっても良い。
このようなシャッターの開閉用の油圧シリンダと圧縮用の油圧シリンダとを同じ油圧ポンプで駆動する場合に、この発明における、油圧力不要な間に油圧ポンプを停止させることによる省エネルギー運転が効果的に行える。
【0008】
上記の金型は円筒状の圧縮室を有しシャッターを有する構成の場合に、前記金型の材料入口に連通して材料を内部に収容する準備室と、この準備室内の材料を前記金型内に押し込む押し込み用のプッシャーと、この押し込み用のプッシャーを進退させる押し込み用の油圧シリンダと、前記準備室に材料を投入する材料投入手段とを備えるものとしても良い。このようなシャッターおよび押し込み用のプッシャーを、圧縮用の油圧シリンダとを同で油圧シリンダで駆動する構成の場合に、この発明における、油圧力不要な間に油圧ポンプを停止させることによる省エネルギー運転が効果的に行える。
【0009】
上記のシャッターおよび押し込み用のプッシャーを有する構成の場合に、前記制御装置は、前記材料投入手段を制御する機能を有し、かつ前記制御装置は、1個の固形化物を製造するサイクル中の過程として、前記シャッターが閉じ、加圧用のプッシャーが後退し、押し込み用のプッシャーが後退位置で停止して、全ての油圧シリンダが停止した状態で前記材料投入手段により材料を投入させる材料投入過程を含み、この材料投入過程で前記油圧ポンプを停止させるようにしても良い。
材料投入手段により材料を投入させる過程では、全ての油圧シリンダが停止しているため、油圧ポンプを停止状態とすることが可能である。この油圧ポンプを停止状態とした時間の、ポンプ駆動のための電力消量が削減される。
【0010】
前記制御装置は、1個の固形化物を製造するサイクル中の過程として、前記加圧用のプッシャーにより金型内の材料を加圧した状態で定められた時間だけ停止させる加圧保持過程と、この加圧保持過程の後、加圧用のプッシャーによる加圧を解除する加圧解除過程とを含み、この加圧解除過程で前記油圧ポンプを停止させるものとしても良い。
材料の種類により、金型内の材料を加圧した状態で停止させることが、崩れにくい固形化物を製造するにつき効果的となる。特に、材料が油分を含む泥状の材料である場合、圧搾により分離される液の粘性や搾り難さのため、高加圧力で一定時間保持することが、固形化のために好ましい。この加圧力の保持の後、高圧の加圧力を解除したときや、再度加圧を行うときに、バルブによる切換では急激な油圧変動による大ショックを生じ、この大ショックは、油圧回路の油圧配管等での油漏れや、油圧配管継手の破損の発生要因となる。従来ではショックレス回路を使用しているが、この発明では油圧ポンプを停止させるため、ショックレス回路を使用することなくショックの回避が行え、かつポンプ停止による電力消費量の削減が行える。
【0011】
前記制御装置は、前記1個の固形化物を製造するサイクルとして、前記材料投入過程と、この材料投入過程で金型内に投入された材料を、前記加圧用のプッシャーの前進により圧縮する過程と、前記加圧保持過程と、前記加圧解除過程と、この加圧解除過程の後、前記シャッターを開き、前記加圧用のプッシャーの前進により金型内の固形化物を押し出す固形化物排出過程と、この排出後に、前記シャッターを閉じ、加圧用のプッシャーを後退させる初期状態戻り過程とを含むようにしても良い。
このようなサイクル中で、前記材料投入過程と加圧解除過程で油圧ポンプの停止を行うことにより、効果的に電力消費量の削減が行える。
【0012】
前記油圧回路は、例えば、前記油圧ポンプの出口および入口に対して、前記加圧用の油圧シリンダ、シャッターの開閉用の油圧シリンダ、および前記押し込み用のプッシャーの油圧シリンダ、における各トップ側の油室およびボトム側の油室と並列に接続した各並列回路部と、これち各並列回路部に介在して、トップ側の油室とボトム側の油室とに流れ方向を切り換える方向切換機能および油の流れを停止する停止機能とを有する電磁制御弁を設け、これら各電磁制御弁に前記制御装置を接続したものとされる。
このような油圧回路の場合に、油圧力不要なときに、油圧ポンプを停止させることによる電力消費量の削減が効果的に行える。
【0013】
前記油圧回路を設けた場合に、前記押し込み用のプッシャーの動作方向および前記シャターの動作方向が上下方向であり、前記油圧回路に、油圧ポンプから受ける油圧力が遮断された時でも、前記押し込み用のプッシャーを駆動する油圧シリンダおよび前記シャターを駆動する油圧シリンダに内在する油量を維持させるパイロットチェック弁を設けてもよい。これらパイロットチェック弁を設けることにより、油圧ポンプから受ける油圧力を遮断しても、自重のかかる押し込み用のプッシャーやシャターが不測に下降することがなく、現在位置を維持することができる。
【0014】
前記油圧回路を設けた場合に、前記油圧回路に、前記圧縮用の油圧シリンダに対して、加圧動作時に徐々に逃がす機能を有する制御弁を設け、かつ前記圧縮用の油圧シリンダに高圧が掛かる加圧動作側の油室に流入する油量を制御する電磁操作2速バルブを設けても良い。これにより、固形化物を生成する過程と、固形化物を金型から排出する過程において、動作速度を可変とすることができる。
【0015】
前記制御装置は、例えばシーケンス制御装置とされる。このシーケンス制御装置は、マイクロコンピュータ等を用いたコンピュータ式のものであっても、半導体の論理回路素子やリレー等により論理回路を構成したものであっても良い。
【0016】
この発明において、前記産業廃棄物の材料は、水分または油分を含む泥状の材料であっても良い。この水分または油分を含む泥状の材料の代表例は研削スラッジである。このような泥状の材料の場合、上記金型を用いた圧縮は圧搾処理となり、高圧で加圧保持を行うことが、崩れ難い固形化物を製造する上で必要となる。この場合に、加圧解除過程における油圧ポンプの停止によるショックレス効果が良好に行える。また、加圧解除過程や材料投入過程で油圧ポンプを停止させることにより、効果的に電力消費量の削減が行える。
【0017】
前記産業廃棄物の材料は、製鋼過程で発生した製鋼ダストであっても良い。また、前記材料は、旋盤で発生する切粉、およびシュレッダーで発生する裁断紙屑のいずれかであっても良い。この他に前記材料は、廃棄茶葉・おから等であっても良い。
【発明の効果】
【0018】
この発明の油圧プレス固形化処理設備は、産業廃棄物からなる材料を、金型内で圧縮用の油圧シリンダにより圧縮して固形化物とする油圧プレス固形化処理設備であって、前記圧縮用の油圧シリンダの他に、前記金型への前記材料の給排に係わる少なくとも一つの油圧シリンダを有し、これら圧縮用の油圧シリンダを含む複数の油圧シリンダに、互いに共通の油圧ポンプから圧力油を供給する油圧回路と、この油圧回路に設けられた制御弁および前記油圧ポンプを制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記油圧回路に接続された全ての油圧シリンダが油圧力不要な間は前記油圧ポンプを停止状態とするため、低電力化による省エネルギー運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態に係る油圧プレス固形化処理設備の構成の説明図である。
【図2】同油圧プレス固形化処理設備の油圧回路の回路図である。
【図3】同油圧プレス固形化処理設備の固形化サイクルを示す流れ図である。
【図4】1回の固形化サイクルにおける同実施形態と従来例との圧力変動の状態を示す説明図である。
【図5】1回の固形化サイクルにおける同実施形態と従来例との電力の瞬時値の変動を示すグラフである。
【図6】1回の固形化サイクルにおける同実施形態と従来例との電力の積算値の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一実施形態を図1ないし図6と共に説明する。この油圧プレス固形化処理設備は、産業廃棄物からなる材料kを、金型1内で圧縮用の油圧シリンダ2により圧縮して固形化物Kとする油圧プレス固形化処理設備である。材料kは、この実施形態では、水分または油分を含む泥状の材料であり、具体的には、研削ラインで発生した研削屑と研削油とが含有した研削スラッジである。この研削スラッジは、例えば、研削ラインで採取した後、ろ過等により濃縮されて濃縮スラッジとされ、この濃縮スラッジが前記材料kとされる。固形化物Kは、この実施形態では円柱状のブリケットとされる。
【0021】
金型1は、横姿勢に設置されていて、円筒状の圧縮室1a、つまり内周面が円筒面状となった圧縮室1aを有し、一端が開閉自在なシャッター3により開閉され、他端から挿入された加圧用のプッシャー4により金型内部で材料kの圧縮が行われる。この圧縮により材料kが円柱状の固形化物Kとされる。加圧用のプッシャー4は前記圧縮用の油圧シリンダ2で進退駆動される。シャッター3は、ガイド(図示せず)によって、金型1の端面に沿って上下方向、または斜め上方向や横方向に回転自在に案内され、他の油圧シリンダ5により開閉駆動される。
【0022】
金型1には、前記他端の付近の上面に材料入口6を有し、この材料入口6に連通して材料kを内部に収容する準備室7が、金型1から上方に立ち上がる円筒状の外周壁によって設けられている。準備室7内には、準備室7内の材料を金型内に押し込む押し込み用のプッシャー8が嵌合し、プッシャー8は、準備室7の上方に設置された押し込み用の油圧シリンダ9によって上下に進退させられる。この押し込み用の油圧シリンダ9、およびシャッター3の開閉用の油圧シリンダ5が、金型1に対する給排に係わる油圧シリンダとなる。
準備室7の外周壁の上部の側面には、材料投入口10が設けられ、この材料投入口10から準備室7内に材料kを投入する材料投入手段11が設けられている。材料投入手段11は、例えばスクリューの強制供給装置(図示せず)を有するホッパー等からなり、前記強制供給装置の駆動は、電気モータ等により行われる。
【0023】
上記加圧用の油圧シリンダ2と、シャッター開閉用の油圧シリンダ5と、押し込み用の油圧シリンダ9とは、互いに共通の油圧ポンプ12から圧力油を供給する油圧回路13から圧力油の給排が行われる。油圧ポンプ12は、駆動用のモータ(図示せず)が設られている。油圧回路13には、個々の油圧シリンダ2,5,9に対してそれぞれ圧力油の流れを制御する電磁弁からなる制御弁14〜16が設けられている。
各制御弁14〜16と、油圧ポンプ12と、材料投入手段11とは、制御装置17によって制御される。
【0024】
図2は、油圧回路13の具体例を示す。上記各油圧シリンダ2,5,9は、いずれも複動式であって、ボトム側の油室2a,5a,9aと、トップ側の油室2b,5b,9bを有する。油圧回路13は、油圧ポンプ12の出口12aおよび入口12bと、前記各油圧シリンダ2,5,9における、各ボトム側の油室2a,5a,9aおよびトップ側の油室2b,5b,9bとを並列に接続した各並列回路部13a〜13cを有し、これら各並列回路部13a〜13cに、前記各制御弁14〜16が介在している。これら各制御弁14〜16は、いずれも、トップ側の油室2b,5b,9bとボトム側の油室2a,5a,9aとに流れ方向を切り換える方向切換機能と、油の流れを停止する停止機能とを有する電磁制御弁からなる。詳しくは、各制御弁14〜16は、4ポート3位置の制御弁である。この他に、加圧用の油圧シリンダ2の並列回路部13aには、絞り流路、逆止弁と、電磁操作2速制御弁21aとの並列回路21が設けられている。また、シャッター開閉用の油圧シリンダ5と、押し込み用の油圧シリンダ9の並列回路部13b,13cには、パイロットチェック弁22,23が設けられている。
【0025】
図2の油圧回路13は、換言すると次の構成である。すなわち、押し込みプッシャー8の駆動用の油圧シリンダ9の動作を制御する電磁バルブからなる制御弁16と、シャッター(圧受けシャッター)3の開閉用の油圧シリンダ5の動作を制御する電磁バルブからなる制御弁15、押し込みプッシャー8の駆動用の油圧シリンダ9への油圧力の流入を制御するパイロットチェック弁23、シャッター(圧受けシャッター)3へ動力を伝える油圧シリンダ5への油圧力の流入を制限するパイロットチェック弁22、加圧用のプッシャー(加圧固定子)4の動力を制御する電磁バルブからなる制御弁14、加圧用のプッシャー(加圧固定子)4へ動力を伝える油圧シリンダ2への油圧力の流入を制御する電磁操作2速制御バルブ21a、各動作へ油圧力を供給する油圧ポンプ12で構成されている。
【0026】
図1において、制御装置17は、設備の統制管理を行う手段である。制御装置17は、マイクロコンピュータ、または半導体論理回路素子、またはリレー等を用いたシーケンス制御回路からなる。制御装置17は、油圧ポンプ12、および油圧回路13の各制御弁14〜16やその他の弁、並びに材料投入手段11を制御することにより、固形化物を製造するサイクルとして、図3に流れ図で示す材料投入過程S1、圧縮過程S2、加圧保持過程S3、加圧解除過程S4、固形化物排出・初期戻り過程S6を、1個の固形化物Kの製造毎に繰り返す制御を行う。また、制御装置17は、次の各過程S1〜S6の説明中で示すように、油圧力が不要な状態では、油圧ポンプ12を停止させる。
【0027】
材料投入過程S1は、シャッター3が閉じ、加圧用のプッシャー4が後退し、押し込み用のプッシャー8が上方に位置する後退位置で停止して、全ての油圧シリンダ2,5,9が停止した状態で、前記材料投入手段11により材料を投入させる過程である。材料投入過程S1では、油圧ポンプ12を停止させる。
圧縮過程S2は、材料投入過程S1で金型1内に投入された材料kを、加圧用のプッシャー4の前進により圧縮する過程である。
加圧保持過程S3は、加圧用のプッシャー4により金型1内の材料kを加圧した状態で定められた時間だけ停止させる過程である。
加圧解除過程S4は、加圧保持過程S3の後、加圧用のプッシャー4による加圧を解除する過程である。加圧解除過程S4では、油圧ポンプ12を停止させる。
固形化物排出過程S5は、加圧解除過程S4の後、シャッター3を開き、加圧用のプッシャー4の前進により金型1内の固形化物Kを押し出す過程である。
初期戻り過程S6は、戻り過程S6は、この排出後に、シャッター3を閉じ、加圧用のプッシャ4ーを後退させる過程である。
各過程S1〜S6の詳細は、後の作用説明の中で説明する。
【0028】
次に上記構成の動作を説明する。固形化処理は、以下動作順に繰り返し行われと共に、消費電力の削減がされる。
材料投入過程S1では、材料投入手段11により準備室7に材料kを投入することで、金型1内に材料kを投入する。この過程S1では全油圧シリンダ2,5,9は停止状態のため、油圧ポンプ12は停止が可能であり、油圧ポンプ12を停止する。この油圧ポンプ12を停止した時間分の電気消費量が削減できる。
その後、押し込み用プッシャー8により、材料kを金型1内へ確実に収める。この時、シャッター3と加圧用プッシャー4は、金型1の圧縮室1aを、両端を蓋する様な位置で待機・停止している。
【0029】
次に、圧縮過程S2で、加圧用プッシャー4が前進し、金型1の圧縮室1aの材料kを圧縮する。材料が研削スラッジ等の液体成分を含む泥状のものである場合は、この圧縮の処理は圧搾処理となる。なお、構造上、押し込み用プッシャー8、シャッター3、加圧用プッシャー4は、金型1の圧縮室1aを閉塞する時、各々の隣接面において、固形化処理で発生する搾液が通り得る隙間を有し、固形化処理する材料kを可能な限り通さない様な隙間がある。これにより、閉塞された圧縮室1aに内在する材料kを、加圧用プッシャー4へ動力を伝える油圧シリンダ2の推力によって加圧する時、材料k内に含まれる水・油分などの搾液が圧縮室1aを閉塞する隙間より押し出される。
【0030】
加圧保持過程S3で、加圧用プッシャー4により、さらに加圧が続けられることにより、材料kは、高加圧力とその体積密度上限と釣合う、固形化物Kとなる。固形化物Kは、圧搾によって、分離される搾液の粘性・搾り難さにより、加圧用プッシャー4により高加圧力にて一定時間保圧されるなど、その性状に合わされた制御が、加圧用プッシャー4の油圧ポンプ2に対してなされる。
【0031】
加圧保持過程S3における、一定時間保圧後、通常はショックレス回路を使用するが、この実施形態の設備では、加圧力解除過程S4として、油圧ポンプ12を停止させる。これにより、ショックレスを行うと共に、ポンプ停止による電気消費量の削減を図る。完成された固形化物Lは、加圧用プッシャー4へ動力を伝える油圧シリンダ2の推力によって微量後退し、加圧用プッシャー4からの加圧力から開放される。
【0032】
この後、固形化物排出過程S5で、シャッター3へ動力を伝える油圧シリンダ5の推力により、シャッターCを、上方向、または斜め上方向へ移動させ、開放待機点(上昇端)へと移動させる。これにより、金型1の圧縮室1aは開放される。この時同時に、押し込みプッシャー8へ動力を伝える油圧シリンダ9の推力により、押し込みプッシャー8を上方向へ移動させ、サイクル開始原点へと戻る。押し込みプッシャー8は、加圧用プーシャープッシャー4やシャッター3に対して、先にサイクル開始原点へ戻ることになる。
【0033】
金型1の圧縮室1aに残された固形化物Kは、加圧用プッシャー4へ動力を伝える加圧用の油圧シリンダ2の推力によって前方へ押し出され、金型1外へ排出される。この時、前進する加圧用プッシャー4は、金型1の圧縮室1aとシャッター3の隣接点をストローク端とし、シャッター3と干渉することが無い。
【0034】
初期戻り過程S6では、次の強制剥離を行って加圧用のプッシャー4をサイクル開始原点へ戻す。すなわち、上記のように固形化さた固形化物Kは、加圧用プッシャー4の押し出し面に吸着する事がある。これを強制的に剥離し、自由落下排出させる為に、シャッター3へ動力を伝える油圧シリンダ5の推力により、シャッター3をサイクル開始原点へと戻す。加圧用プッシャー4は、加圧用の油圧シリンダ2の推力によって後退し、金型1の圧縮室1aを他端で位置であるサイクル開始原点へと移動する。
【0035】
なお、サイクルの途中にて、操作盤(図示せず)等から、『停止』をシーケンス制御装置からなる制御内17に指令した時、上記の固形化物排出過程S5では、押し込みプッシャー8は上方向へ移動せず、下降位置を機械原点とする。ただし、サイクル開始時は機械原点とする為、初回動作として押し込みプッシャー8の上昇が行われる。
【0036】
以上のような動作が行われるが、この実施形態では、全ての油圧シリンダ2,5,9が油圧力不要な間は、制御装置17の制御により油圧ポンプ12を停止状態とする。このため、そのポンプ停止時はポンプ駆動のための電力消費がなく、低電力化による省エネルギー運転が可能となる。さらに、従来のショックレス回路部分を省略し、油圧ポンプ12を停止させることで、大ショックを無くすと共に省エネルギー化を実現している。
【0037】
ここで、課題となる『油圧プレス固形化処理設備の省エネルギー化』、『低電力とショックレス』について説明する。上記のように、従来の一般的な油圧回路では、常に油圧ポンプを駆動して一定の油圧力を発生させているため、制御動作の必要がない状態では、油圧ポンプの駆動が全く無駄になっている。そこで、油圧動作の一部、またはその油圧動作の全ての完了後、油圧力の供給を停止させることを考えたが、この実施形態の設備では、設備構成上、つぎの問題点がある。
すなわち、押し込み用のプッシャー8と圧受け用のシャッター3は、縦方向に動作が行われる為、押し込みプッシャー8と圧受けシャッター3はそれぞれ自身の重量の影響を受けながら動作している。この為に、各々が上昇位置で油圧力の供給を断たれた場合、その自身の自重により下降してしまう恐れがある。また下降位置においても、何らかの力が上方向に掛かる場合にも同様の事が言える。この問題点が、図2の油圧回路によって解消される。
【0038】
同図の回路構成では、自重の影響を受ける押し込みプッシャー8と圧受けシャッター3は油圧ポンプ12から受ける油圧力を遮断された時でも、パイロットチェック弁23、およびパイロットチェック弁22の影響により、各々へ動力を伝える油圧シリンダ9、油圧シリンダ5に内在する油量を維持する。つまり、停止位置を維持する仕組みになっている。また、加圧用のプッャー(加圧固定子)へ動力を伝える油圧シリンダ2には、加圧動作時に流入した高油圧力を徐々に逃がす様な電磁バルブである制御弁14となっている。また高圧が掛かる加圧動作側に流入する油量を制御する電磁操作2速制御バルブ21aを備える事により、固形化物Kを生成する加圧サイクルと、固形化物Kを円筒型圧搾室1aより排出する排出サイクルにおいての動作速度を可変する事が出来る。
【0039】
次に、上記構成の油圧変動と、電力消費の関係等を説明する。図2(B)は、上記実施形態の設備構成(「省力化構成」と称す)による、油圧回路13内の油圧力変動を、図2の油圧回路13のポンプ出口付近となるP点において測定した結果を示す。同図(A)は、同実施形態と同様な構成の設備構成で、従来の通常に行われている運転形態の場合(「通常構成」と称す)を示す。
固形化処理において、『目的とする高加圧力』は14MPaとした。したがって、圧縮室1aの圧力変化範囲Aは、0〜14MPaである。図4において、最大油圧力変動差はBである。通常構成の場合(同図(A))は、無駄油圧力Cが生じており、これに対して実施形態の場合(省力構成の場合)は、削減油圧力Dを生じている。また、実施形態の場合は、ショックレス化された油圧力変動Eがある。
【0040】
波形に示されたように、実施形態の場合(省力構成の場合)では、最大油圧力変動差Bだけの最大圧力変動差を低減させる。これは、油圧回路・配管継手に掛かる負担が軽減されたと言える。また削減油圧力D、並びにショックレス化された油圧力変動Eの部分に、油圧力供給の減少が見られる。これは停止させた油圧ポンプ12からの油圧力が断たれた為、そして『油圧力の掛からない状態からの緩やかな動作油圧力の供給』がなされた為である。
【0041】
次に削減効果を電力比較した、測定条件等表の表1〜表3と、電力比較波形図5,図6を記載する。
【表1】

【表2】

【表3】

【0042】
表1の『1.測定条件』は、『油圧圧力・流量が可変制御可能な機構がある場合』に当てはまる油圧ポンプ12と、設備の統制管理を目的としたシーケンス制御の制御装置17に設定された制御値である。表2の『2.測定時C.T』では、通常構成時と実施形態(省力構成時)における、電力量測定時・瞬時値測定時の設備動作1サイクルに掛かった時間を記載した。表紙3の『3.効果』では、通常構成時と実施形態(省力構成時)の連続運転時の消費電力と設備動作を行わず、待機状態である時の消費電力を比較したものである。その削減効果は設備の稼働率により、効果の幅を広げている。
【0043】
図5の電力比較波形図の『・.瞬時値グラフ』は、通常構成時と実施形態(省力構成時)の各々における設備動作につき、数サイクル分を測定した電力瞬時値のグラフである。長方形で囲う部分が各々の1サイクル分にあたる。
図6の『・.積算電力グラフ』では、通常構成時と実施形態(省力構成時)の各々における設備動作につき、数サイクル分を測定した電力グラフである。長方形で囲う部分が各々の1サイクル分にあたる。
図5から、各1サイクル分で、実施形態(省力構成時)の場合は通常構成時に比べて瞬時値が低くなる時間があり、図6の積算電力グラフで示されるように、各1サイクル分の電力消費量が、実施形態(省力構成時)の場合の方が通常構成時よりも少なくなっていることがわかる。
なお、成形された固形化物Kの品質は、通常構成時と実施形態(省力構成時)とで変わりはない。
【0044】
上記実施形態では、材料が研削スラッジの場合につき説明したが、この発明は、各種の産業廃棄物、例えば、水分、油分、研削液等を含む様な汚泥や、廃棄茶葉・おから、鉄鋼ダスト・旋盤切子・シュレッダー紙・他、等の各種の産業廃棄物を材料して用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
1… 金型
1a…圧縮室
2…加圧用の油圧シリンダ
3…シャッター
4…加圧用のプッシャー
6…材料入口
7…準備室
8…プッシャー
9…押し込み用の油圧シリンダ
12…ポンプ
13…制御装置
K…固形化物
k…材料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業廃棄物からなる材料を、金型内で圧縮用の油圧シリンダにより圧縮して固形化物とする油圧プレス固形化処理設備であって、前記圧縮用の油圧シリンダの他に、前記金型への前記材料の給排に係わる少なくとも一つの油圧シリンダを有し、これら圧縮用の油圧シリンダを含む複数の油圧シリンダに、互いに共通の油圧ポンプから圧力油を供給する油圧回路と、この油圧回路に設けられた制御弁および前記油圧ポンプを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記油圧回路に接続された全ての油圧シリンダが油圧力不要な間は前記油圧ポンプを停止状態とすることを特徴とする油圧プレス固形化処理設備。
【請求項2】
請求項1において、前記金型は円筒状の圧縮室を有し、一端が開閉自在なシャッターにより開閉され、他端から挿入された加圧用のプッシャーにより金型内部で材料の圧縮を行って円柱状の固形化物とするものであり、この加圧用のプッシャーが前記圧縮用の油圧シリンダで進退駆動され、前記シャッターが他の油圧シリンダにより開閉駆動される油圧プレス固形化処理設備。
【請求項3】
請求項2において、前記金型の材料入口に連通して材料を内部に収容する準備室と、この準備室内の材料を前記金型内に押し込む押し込み用のプッシャーと、この押し込み用のプッシャーを進退させる押し込み用の油圧シリンダと、前記準備室に材料を投入する材料投入手段とを備える油圧プレス固形化処理設備。
【請求項4】
請求項3において、前記制御装置は、前記材料投入手段を制御する機能を有し、かつ前記制御装置は、1個の固形化物を製造するサイクル中の過程として、前記シャッターが閉じ、加圧用のプッシャーが後退し、押し込み用のプッシャーが後退位置で停止して、全ての油圧シリンダが停止した状態で前記材料投入手段により材料を投入させる材料投入過程を含み、この材料投入過程で前記油圧ポンプを停止させる油圧プレス固形化処理設備。
【請求項5】
請求項4において、前記制御装置は、1個の固形化物を製造するサイクル中の過程として、前記加圧用のプッシャーにより金型内の材料を加圧した状態で定められた時間だけ停止させる加圧保持過程と、この加圧保持過程の後、加圧用のプッシャーによる加圧を解除する加圧解除過程とを含み、この加圧解除過程で前記油圧ポンプを停止させる油圧プレス固形化処理設備。
【請求項6】
請求項5において、前記制御装置は、前記1個の固形化物を製造するサイクルとして、前記材料投入過程と、この材料投入過程で金型内に投入された材料を、前記加圧用のプッシャーの前進により圧縮する過程と、前記加圧保持過程と、前記加圧解除過程と、この加圧解除過程の後、前記シャッターを開き、前記加圧用のプッシャーの前進により金型内の固形化物を押し出す固形化物排出過程と、この排出後に、前記シャッターを閉じ、加圧用のプッシャーを後退させる初期状態戻り過程とを含む油圧プレス固形化処理設備。
【請求項7】
請求項3ないし請求項4のいずれか1項において、前記油圧回路は、前記油圧ポンプの出口および入口に対して、前記加圧用の油圧シリンダ、シャッターの開閉用の油圧シリンダ、および前記押し込み用のプッシャーの油圧シリンダ、における各トップ側の油室およびボトム側の油室を並列に接続した各並列回路部と、これち各並列回路部に介在して、トップ側の油室とボトム側の油室とに流れ方向を切り換える方向切換機能および油の流れを停止する停止機能とを有する電磁制御弁を設け、これら各電磁制御弁に前記制御装置を接続した油圧プレス固形化処理設備。
【請求項8】
請求項7において、前記押し込み用のプッシャーの動作方向および前記シャターの動作方向が上下方向であり、前記油圧回路に、油圧ポンプから受ける油圧力が遮断された時でも、前記押し込み用のプッシャーを駆動する油圧シリンダおよび前記シャターを駆動する油圧シリンダに内在する油量を維持させるパイロットチェック弁を設けた油圧プレス固形化処理設備。
【請求項9】
請求項7または請求項8において、前記油圧回路に、前記圧縮用の油圧シリンダに対して、加圧動作時に徐々に逃がす機能を有する制御弁を設け、かつ前記圧縮用の油圧シリンダに高圧が掛かる加圧動作側の油室に流入する油量を制御する電磁操作2速バルブを設けた油圧プレス固形化処理設備。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記制御装置はシーケンス制御装置である油圧プレス固形化処理設備。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記材料は、水分または油分を含む泥状の材料である油圧プレス固形化処理設備。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記材料は、製鋼過程で発生した製鋼ダストである油圧プレス固形化処理設備。
【請求項13】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記材料は、旋盤で発生する切粉、およびシュレッダーで発生する裁断紙屑のいずれかである油圧プレス固形化処理設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−66255(P2012−66255A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210510(P2010−210510)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】