説明

油圧式無段変速装置

【課題】従来のクレイドル式可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備えた油圧式無段変速装置では、可動斜板の操作力は常に圧油を介して間接的にしか変速レバーに伝達されず、変速レバーの操作力からは可動斜板の不具合を感知できず、適切な時期にメンテナンスができずに部材寿命が短くなる、等の問題があった。
【解決手段】外部から変速操作する外部操作具18は、スプール16を摺動させるスプール操作具42に弾性部材74を介して連結すると共に、前記スプール16を中立位置78から作用位置79・80まで移動させた後に、前記スプール操作具42の一部42dがピストン13に当接する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変容積型の油圧ポンプまたは油圧モータにおける可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備え、該油圧サーボ機構には前記可動斜板に連結連動するピストンと該ピストン内を摺動するスプールとを設け、該スプールは外部操作可能な構成とした油圧式無段変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、クレイドル式の可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備えた油圧式無段変速装置においては、油圧サーボ機構を構成する斜板角制御弁のスプールの位置に連動して、該スプールの外周部を覆うピストンが動作し、これにより、該ピストンと連結連動する前記可動斜板を回動させて斜板角を任意に制御する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−182442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記スプールは、該スプールに一端部を係合する操作ロッドによって摺動され、該操作ロッドの他端部は変速レバーと連結されており、該変速レバーを外部から操作することにより、操作ロッドを介してスプールの位置を変更するようにして、ピストンの上下の油室への連通油路を連通又は遮断し、上下いずれかの油室に圧油を送油してピストンを動作させるようにしている。このため、可動斜板の操作力は、常に圧油を介して間接的にしか変速レバーに伝達されず、可動斜板と斜板受け間の摺動面が高速長時間稼働によって粗化したり、該摺動面の潤滑油が不足して油膜切れが発生したりして、摺動面の摺動抵抗が増加しても、該摺動抵抗の変化を変速レバーの操作力からは感知することができず、可動斜板や斜板受けに対して適切な時期にメンテナンスを施せないことから、部材寿命が短くなり、抵抗増加が著しい場合には摺動面が焼き付いて装置全体の交換が必要となる、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、可変容積型の油圧ポンプまたは油圧モータにおけるクレイドル式の可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備え、該油圧サーボ機構には前記可動斜板に連結連動するピストンと該ピストン内を摺動するスプールとを設け、該スプールを外部操作可能な構成とした油圧式無段変速装置において、外部から変速操作する外部操作具は、前記スプールを摺動させるスプール操作具に弾性部材を介して連結すると共に、前記スプールを中立位置から作用位置まで移動させた後に、前記スプール操作具の少なくとも一部が前記ピストンに当接する構成としたものである。
請求項2においては、前記スプール操作具は、前記スプールに直接係合する操作ロッド部と、該操作ロッド部を固定支持する支持部とから構成され、該支持部が前記ピストンに当接するものである。
請求項3においては、前記油圧式無段変速装置には、前記可動斜板の中立位置を保持する中立位置保持機構を一体的に内装し、該中立位置保持機構は、前記スプール操作具の一部を挟持して中立位置に保持するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1においては、可変容積型の油圧ポンプまたは油圧モータにおけるクレイドル式の可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備え、該油圧サーボ機構には前記可動斜板に連結連動するピストンと該ピストン内を摺動するスプールとを設け、該スプールを外部操作可能な構成とした油圧式無段変速装置において、外部から変速操作する外部操作具は、前記スプールを摺動させるスプール操作具に弾性部材を介して連結すると共に、前記スプールを中立位置から作用位置まで移動させた後に、前記スプール操作具の少なくとも一部が前記ピストンに当接する構成としたので、可動斜板の操作力が大きくなると、該可動斜板の操作力を、ピストンとスプール操作具との当接部を介してピストンからスプール操作具に直接伝達し、該スプール操作具に連結された外部操作具の操作力増加から、作業者が可動斜板の操作力増加を感知することができ、可動斜板や斜板受けに適切な時期にメンテナンスを施して部材寿命を長くし、焼き付け等のトラブルも確実に防止することができる。更に、可動斜板の操作力が大きいためにスプール操作具がピストンに当接した後も該ピストンが即座にそれ以上移動しない場合であっても、スプール操作具と外部操作具との間に弾性部材を介設することで、該弾性部材の弾性力に抗して外部操作具だけを操作させることができ、該外部操作具が変速操作中に急に操作できなくなるといったことがなく、変速操作性を向上させることができる。しかも、この場合、弾性部材の変形量が増加すると外部操作具の操作力も増加するが、ピストンが徐々に移動を開始すると弾性部材の変形量が減少し、この変形量の減少に呼応して外部操作具の操作力も減少していくことから、作業者は、外部操作具の操作力変化から、ピストンの移動状況をリアルタイムで感知して可動斜板の操作力の変化を正確に把握することができ、前記メンテナンスに適切な時期を一層な正確に推定することができる。
請求項2においては、前記スプール操作具は、前記スプールに直接係合する操作ロッド部と、該操作ロッド部を固定支持する支持部とから構成され、該支持部が前記ピストンに当接するので、前記支持部を交換することでスプール操作具とピストンとの間隔を変更し、可動斜板の操作力の感知感度を自在に調整することができ、装置使用状況に応じて外部操作具の操作力を適正化し、変速操作性を更に向上させることができる。
請求項3においては、前記油圧式無段変速装置には、前記可動斜板の中立位置を保持する中立位置保持機構を一体的に内装し、該中立位置保持機構は、前記スプール操作具の一部を挟持して中立位置に保持するので、一体的に内装することにより、前記中立位置保持機構の構成部材に泥やゴミなどの異物が付着して動作不良が発生したり、外部からの衝撃により調節が狂ったりすることを防止することができ、また、スプール操作具の一部を使って中立位置に保持することにより、前記中立位置保持機構を簡単な構成にすると共に小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係わる油圧式無段変速装置の全体構成を示す側面断面図、図2は同じく平面一部断面図、図3は同じく正面一部断面図、図4は同じく上部側面図、図5は油圧式無段変速装置の油圧回路図、図6は油圧サーボ機構を示す手動斜板角制御バルブの側面断面図、図7は手動斜板角制御バルブの側面断面図であって、図7(a)はスプールが作用位置にある場合の油路接続構成とスプール操作アーム位置を示す手動斜板角制御バルブの側面断面図、図7(b)はスプールが中立位置にある場合の油路接続構成とスプール操作アーム位置を示す、手動斜板角制御バルブの側面断面図、図8はスプール操作アームが配置された開口部近傍の側面図であって、図8(a)はスプール操作アーム回動前の開口部近傍の側面図、図8(b)はスプール操作アームが回動後にピストンと当接した時の開口部近傍の側面図、図8(c)はスプール操作アームがピストンと当接後に更に回動して捻りバネが拡開された時の開口部近傍の側面図、図9はスプール操作アームの別形態を示す、手動斜板角制御バルブの側面断面図である。
【0007】
まず、本発明に係わる油圧式無段変速装置1の全体構成について、図1乃至図3、図5により説明する。
該油圧式無段変速装置1においては、可変容積型の油圧ポンプ2と固定容積型の油圧モータ3が、ハウジング4に内包されると共に、センタセクション5の同一側面に配設されている。
【0008】
このうちの油圧ポンプ2は、前記センタセクション5に挿嵌されて一端をハウジング4に回動自在に支持された駆動軸2a、該駆動軸2aが挿嵌されて駆動軸2aと一緒に回動するシリンダブロック2b、該シリンダブロック2bに摺動自在に挿嵌されたプランジャ2c、及び該プランジャ2cに当接したクレイドル式の可動斜板2dにより構成され、該可動斜板2dは、前記ハウジング4に固設されたクレイドル受け6に、ハーフベアリング7を介して揺動自在に支持されている。これにより、可動斜板2dによってプランジャ2cの摺動量を規制し、油圧ポンプ2からの作動油の吐出量を調節可能に構成している。
【0009】
前記油圧モータ3も、前記センタセクション5に挿嵌されて一端をハウジング4に回動自在に支持された出力軸3a、該出力軸3aが挿嵌されて出力軸3aと一緒に回動するシリンダブロック3b、該シリンダブロック3bに摺動自在に挿嵌されたプランジャ3c、及び該プランジャ3cに当接した固定斜板3dにより構成され、該固定斜板3dは前記ハウジング4に固設されている。更に、前記センタセクション5内には一対のメイン油路9a・9bが形成され、該メイン油路9a・9bにより前記油圧ポンプ2と油圧モータ3とを接続して閉回路8が構成されている。
【0010】
以上のような構成において、エンジン等の駆動源19からの駆動力が、該駆動源19の出力軸20から出力プーリ21、ベルト22、入力プーリ23を介して伝達され、該入力プーリ23を後端に固設した前記駆動軸2aに入力されると、前記油圧ポンプ2が駆動されて作動油が吐出される。この吐出された作動油は、センタセクション5内の前記メイン油路9a・9bを介して油圧モータ3に供給され、該油圧モータ3は、この際の作動油の流出入によって駆動されて、該油圧モータ3の駆動力が、出力軸3aから出力されるようにしている。
【0011】
このような油圧式無段変速装置1の油圧ポンプ2の一側方には、油圧サーボ機構11が配設されている。該油圧サーボ機構11は、油圧ポンプ2の上面に付設された自動斜板角制御バルブ12、ピストン13、及び該ピストン13の内部に配置されてスプール16を有する手動斜板角制御バルブ14から構成されると共に、油圧式無段変速装置1のハウジング4に一体的に構成されている。
【0012】
更に、この油圧サーボ機構11を手動操作する変速レバー18には中立位置保持機構15が配設されている。これにより、変速レバー18とともに可動斜板2dの中立位置を保持するようにしている。一方、油圧ポンプ2の駆動軸2aの前端部には、チャージポンプ10が付設されており、該チャージポンプ10によって、ハウジング4内等に設けられた油溜まり59からフィルター64、油路65を介して吸い上げ加圧された圧油を、前記閉回路8内のチェックバルブ17・17はもとより、前記自動斜板角制御バルブ12と手動斜板角制御バルブ14にも供給するようにしている。
【0013】
次に、前記油圧サーボ機構11について、図2、図3、図5、図6により説明する。
油圧サーボ機構11は、前述の如く、自動斜板角制御バルブ12及び手動斜板角制御バルブ14を有するものであり、まず、このうちの手動斜板角制御バルブ14について説明する。該手動斜板角制御バルブ14においては、ハウジング4内で前記油圧ポンプ2の可動斜板2dの側部にシリンダ室24が形成され、該シリンダ室24内に前記ピストン13が収納されている。そして、該ピストン13の側面には、前記可動斜板2dの側部より突設したピン軸25が嵌合されると共に、ピストン13の軸心位置には貫通孔47が開口され、該貫通孔47内に前記スプール16が摺動自在に嵌装されている。
【0014】
ここで、前記ハウジング4には管継手ボルト28が装着されており、該管継手ボルト28の先部はピストン13の外周凹部38に挿入され、この状態でピストン13はシリンダ室24内を摺動可能となっており、ピストン13が摺動方向を回転軸として回動しようとすると、ピストン13と管継手ボルト28とが接触してピストン13の回動が規制されるようにしている。更に、この管継手ボルト28は、パイロット油路の一部を構成するものであり、管継手ボルト28を介して手動斜板角制御バルブ14にパイロット油圧が供給される。
【0015】
前記ピストン13には、このパイロット油圧を供給するパイロットポート29、上部の油室26に接続する穿設油路31、該穿設油路31下端に接続する内周油路35、下部の油室27に接続する穿設油路32、該穿設油路32上端に接続する内周油路34、及びスプール16にスプール操作アーム42を係合可能とするための開口部43が形成されている。該開口部43は、油圧回路44における手動斜板角制御バルブ14のドレンポート30としても機能し、この開口部43を通って排出された作動油は、中立位置保持機構15のケーシング45と前記ハウジング4との間の空間に形成された油溜まり46内に流入し、中立位置保持機構15等に潤滑油として供されるようにしている。更に、ピストン13を上下に貫通する前記貫通孔47の両端は、蓋48・48により閉塞され、該蓋48・48は止め輪49・49によって抜止めされると共に、蓋48・48にはOリング50・50が装着されて、パイロット圧による作動油の漏出を防止している。
【0016】
一方、前記スプール16には、その上部にバネ受け凹部51が形成され、該バネ受け凹部51と前記蓋48との間には、スプール16を蓋48に弾性支持するバネ52が介設されている。更に、スプール16の下部には嵌合凹部39が形成され、該嵌合凹部39に、スプール操作アーム42の操作ロッド部42aにおけるロッド内端42bがピストン13の前記開口部43を通って嵌合されており、スプール16にスプール操作アーム42の操作ロッド部42aを係合できるようにしている。該スプール操作アーム42の操作ロッド部42aにおけるロッド外端42cには、前記中立位置保持機構15が配設されると共に、前記変速レバー18が連結連動されている。更に、スプール16の摺動方向途中部には、外周油路33を挟んで上下に排出油路36・37が形成され、このうちの外周油路33は、中立位置において前記パイロットポート29に開口されている。
【0017】
以上のような構成における手動斜板角制御バルブ14の制御構成について説明する。
前記チャージポンプ10は、途中にラインフィルタ53を配した外部配管等からなる油路54、油路55を介してハウジング4内の前記油路40に接続され、該油路40は、更に、前記管継手ボルト28、外周凹部38を介してポンプポート29に接続されており、該ポンプポート29を介して、スプール16の前記外周凹部33にパイロット圧がかかった状態となっている。
【0018】
前記手動斜板角制御バルブ14が中立位置78にあると、スプール16の外周凹部33がピストン13の内周壁面によって閉塞されているため、ポンプポート29、ドレンポート30ともに接続が断たれ、パイロット圧が供給されない。
【0019】
そこで、前記手動斜板角制御バルブ14を作用位置79又は80に設定すると、次のようなピストン制御が行われる。すなわち、前記変速レバー18を操作し、スプール操作アーム42を介してスプール16を上昇させると、スプール16の外周油路33と、ピストン13の内周油路34とが接続し、ポンプポート29内の作動油が、外周油路33、内周油路34、該内周油路34に接続された前記穿設油路32を経由して、下部の油室27に流入し、この作動油の圧力によってピストン13が上昇する。この場合、スプール16はスプール操作アーム42に係合して位置が保持されているため、ピストン13が上昇することにより、スプール13が中立位置78に復帰することとなり、再び、前記外周油路33と内周油路34との接続が断たれて、ピストン13の移動が止まると共にピストン13の位置が保持される。
【0020】
逆に、スプール16を下降させると、スプール16の外周油路33と、ピストン13の内周油路35とが接続し、ポンプポート29内の作動油が、外周油路33、内周油路35、該内周油路35に接続された前記穿設油路31を経由して、上部の油室26に流入し、この作動油の圧力によってピストン13は下降する。この場合も、スプール16は、スプール操作アーム42に係合して位置が保持されているため、ピストン13が下降することにより、スプール16が中立位置78に復帰することとなり、再び、前記外周油路33と内周油路35との接続が断たれて、ピストン13の移動が止まると共にピストン13の位置が保持されるのである。
【0021】
なお、ピストン13の上下からの戻り油については、ピストン13を上昇させる場合は、スプール16の排出油路37と、ピストン13の内周油路35とが接続し、上部の油室26内の作動油は、穿設油路31、内周油路35、排出油路37を経由し、更にスプール16の中空部41からピストン13の前記開口部43を通って油溜まり46へと排出される。逆に、ピストン13を下降させる場合には、スプール16の排出油路36と、ピストン13の内周油路34とが接続し、下部の油室27内の作動油は、穿設油路33、内周油路34、排出油路36を経由して、同様に油溜まり46へと排出される。
【0022】
このように、前記ピストン13には、シリンダ室24の上部と下部の油室26・27を連通する各種油路が形成されており、該油路はスプール16の摺動によって連通又は遮断されてピストン13の油室26・27に圧油を供給し、該ピストン13の両端に圧力差を発生させて、ピストン13を摺動制御できるようにしている。
【0023】
また、前記自動斜板角制御バルブ12は、電磁弁により構成されており、油圧式無段変速装置1の出力軸3aに接続される足回りの負荷等をセンサ等の検出手段により検出し、該検出値に応じて自動斜板角制御バルブ12を切換えて、スプール16を昇降する方向に、該スプール16の上下の位置から作動油を供給する構成となっている。
【0024】
該作動油は、前記チャージポンプ10から供給され、前記油路54より分岐した油路56を通って自動斜板角制御バルブ12のポンプポート57に供給される。そして、ドレンポート58から排出された作動油は前記油溜まり59に流入させるようにしている。
【0025】
以上のようにして、前記自動斜板角制御バルブ12と手動斜板角制御バルブ14とにより、ピストン13とスプール16とを操作することで、可動斜板2dを回動し、油圧式無段変速装置1を変速することができる。
【0026】
なお、前記チャージポンプ10からの油路54にはリリーフバルブ61を接続し、該リリーフバルブ61によって、前記閉回路8内の最高圧を規制するようにしている。更に、前記油路54には油路62を介してチャージ油路63・63を接続し、該チャージ油路63・63を通して前記チェックバルブ17・17に作業油を供給すると共に、該チェックバルブ17・17にはニュートラルバルブ60・60を設け、メイン油路9a・9bのうちの高圧側油路からチャージ油路63・63へのリークを許容するようにしている。
【0027】
次に、前記中立位置保持機構15について、図2乃至図4により説明する。
該中立位置保持機構15は、ケーシング45によって、前記油圧式無段変速装置1に一体的に内装され、該ケーシング45内に形成される空間45aには、デテントロッド66が軸心方向へ摺動自在に設けられ、該デテントロッド66は、その両端をケーシング45の支持凹部45b及びケーシング45に螺装されたキャップ67によって支持されている。これにより、中立位置保持機構15を構成するデテントロッド66等の構成部品に、外部からの異物が付着したりしないようにしている。
【0028】
該キャップ67の下端部には、アジャストボルト68が一体的に形成され、該アジャストボルト68は前記キャップ67に螺装されており、このアジャストボルト68を回転させることで前記デテントロッド66を長手方向へ移動可能に構成している。そして、アジャストボルト68は通常はロックナット69によって位置固定されている。
【0029】
前記デテントロッド66の長手方向略中央部には、固定部66aが形成され、該固定部66aと位置を合わせるようにして、前記スプール操作アーム42の操作ロッド部42aにおけるロッド外端42cがケーシング45の空間45a内に挿入されると共に、これらロッド外端42cの径と固定部66aの幅とは略同一としている。
【0030】
更に、該固定部66aの両側には、バネ受け70・70がデテントロッド66の軸心方向へ摺動自在に設けられ、該バネ受け70・70は、ケーシング45と該バネ受け70との間に介装されるバネ71、及びキャップ67とバネ受け70との間に介装されるバネ71によって、前記固定部34a方向に向かって付勢されている。このようなバネ受け70・70によって、デテントロッド66の固定部66aと、スプール操作アーム42の操作ロッド部42aにおけるロッド外端42cとが、一緒に両側から挟持される構成となっている。
【0031】
また、前記変速レバー18は、ケーシング45の回動軸72に固定され、該回動軸72を中心に回動自在に支持されると共に、該回動軸72には、前記操作ロッド部42aを外嵌して固定支持する支持アーム部42dが回動自在に軸支されている。そして、この回動軸72の外周部には、捻りバネ74が回動自在に巻回され、該捻りバネ74には、前記スプール操作アーム42の操作ロッド部42aにおけるロッド外端42cが挟持されている。更に、回動軸72には、該回動軸72と一体的に回動する連動アーム75が固設されており、該連動アーム75から後方に突出した係合部75aも、前記捻りバネ74によって挟持されている。
【0032】
このような構成において、前記変速レバー18を回動操作すると、回動軸72に固設される連動アーム75と、該連動アーム75を挟持する捻りバネ74とが一体的に回動され、更に、該捻りバネ74に挟持されるロッド外端42cも、捻りバネ74と一体的に回動される。つまり、変速レバー18を回動操作すると、スプール操作アーム42が連動アーム75と捻りバネ74を介して一体的に回動され、前記スプール16を移動操作することができる。
【0033】
そして、前記変速レバー18が回動操作されていない状態においては、スプール操作アーム42は、そのロッド外端42cが位置固定されているデテントロッド66の固定部66aと一緒に、バネ受け70・70によって挟み込まれているので、該固定部66aの位置で、その回動位置が保持され、これにより、たとえ変速レバー18に操作力がかかっていなくても、ロッド外端42cが固定部66aの位置でバネ受け70・70により保持されている状態で、油圧ポンプ2の可動斜板2dが中立位置に位置するように調節されている。
【0034】
すなわち、以上のように、前記油圧式無段変速装置1には、前記可動斜板2dの中立位置を保持する中立位置保持機構15を一体的に内装し、該中立位置保持機構15は、前記スプール操作具であるスプール操作アーム42の一部であるロッド外端42cを挟持して中立位置に保持するので、一体的に内装することにより、前記中立位置保持機構15の構成部材に泥やゴミなどの異物が付着して動作不良が発生したり、外部からの衝撃により調節が狂ったりすることを防止することができ、また、スプール操作アーム42の一部を使って中立位置に保持することにより、前記中立位置保持機構15を簡単な構成にすると共に小型化を図ることができる。
【0035】
ここで、このような構成の中立位置保持機構15における中立位置調整機構について説明する。
前述の如く、前記デテントロッド66は、前記キャップ67に螺装されるアジャストボルト68を回転させることにより、軸心方向へ移動することができるため、前記固定部66aの位置でロッド外端42cが保持された状態において、可動斜板2dが中立位置からずれている場合には、アジャストボルト68を回転してデテントロッド66の固定部66aの位置を調節し、該固定部66aの位置で前記ロッド外端42c、すなわちスプール操作アーム42が保持された状態にして、可動斜板2dが中立位置に位置するように調整することが可能である。
【0036】
すなわち、中立位置保持機構15は、中立位置の微調整を行う中立位置調整機構を備え、該中立位置調整機構は、外部に突出するアジャストボルト68を回転操作することにより中立位置調整を行うように構成しているので、中立位置保持機構15を分解して調整する必要がなく、外部から操作可能であるので、調整作業を容易にすることができる。
【0037】
次に、以上のような中立位置保持機構15等を有する前記油圧サーボ機構11において、可動斜板2dの操作力を感知可能な操作力感知構成について、図3、図5乃至図9により説明する。
図3、図5、図6に示すように、前述の如く、前記ピストン13の下半部には開口部43が形成され、該開口部43を通して、スプール操作アーム42の操作ロッド部42aにおけるロッド内端42bを、ピストン13の貫通孔47内に挿入してスプール16の嵌合凹部39に嵌合させている。そして、この開口部43における貫通孔47側には、開口面積の小さい長穴状の内開口部43aが穿孔され、該内開口部43aに連設して、ピストン13外周側に、前記内開口部43aよりも開口面積が大きい縦断面視コ字状の外開口部43bが形成されている。
【0038】
このうちの内開口部43a内には、スプール操作アーム42の操作ロッド部42aにおけるロッド内端42bのみが挿入され、外開口部43b内には、スプール操作アーム42の支持アーム部42dが挿入され、該支持アーム部42dの内側面は、前記内開口部43aと外開口部43bとの段差部側面43eによってそれ以上内側に移動しないようにしており、スプール操作アーム42が原因でスプール16の円滑な摺動が阻害されることのないようにしている。なお、これら操作ロッド部42a、及び支持アーム部42dのいずれも、前記回動軸72を中心にして上下に回動可能としている。
【0039】
該支持アーム部42dの外周上面42eと外周下面42fは、それぞれピストン13の外開口部43bにおける天井部43cと底部43dに近接配置されており、各間隔距離76・77は、前記手動斜板角制御バルブ14において、スプール16を中立位置78から作用位置79・80のいずれか一方まで移行させるのに必要な、貫通孔47内の摺動ストローク(以下、「作用ストローク」とする)よりも、若干大きく設定している。
【0040】
このような構成において、図7(a)に示すように、前記変速レバー18を操作し、スプール操作アーム42の操作ロッド部42aによってスプール16を前記作用ストロークだけ上昇させると、前述の如く、スプール16の外周油路33と、ピストン13の内周油路34とが接続し、ポンプポート29内の作動油が、外周油路33、内周油路34、該内周油路34に接続された前記穿設油路32を経由して下部の油室27に流入し、該油室27の油圧が上がってピストン13が上昇する。
【0041】
この際、図7(b)に示すように、ピストン13上昇中のスプール16は、操作ロッド部42aのロッド内端42bに係合して位置が保持されているため、ピストン13が前記作用ストロークに相当する距離81だけ上昇し、その結果、スプール13がピストン13の中立位置78に復帰することとなり、前記外周油路33と内周油路34との接続が断たれて、再びピストン13の移動が停止すると共に、ピストン13の位置が保持されるのである。
【0042】
これにより、変速レバー18の回動操作→スプール操作アーム42の回動→操作ロッド部42aの上昇→スプール16の上昇→スプール16が作用位置へ移行→外周油路33と内周油路34との接続→油室27への作動油流入→ピストン13の上昇→スプール16が中立位置へ復帰、というプロセスを繰り返すことによって、ピストン13は油圧を介して徐々に上昇され、可動斜板2dの斜板角を所定の角度まで変更して、無段変速できるようにしている。
【0043】
更に、前述の如く、前記間隔距離76を作用ストロークよりも若干大きく設定しているので、例えば、変速レバー18によってスプール操作アーム42を回動して操作ロッド部42aを上昇させた場合、該操作ロッド部42aに外嵌された支持アーム部43dの外周上面42eが開口部43の天井部43cに当接する前に、スプール16が作用位置に到達し、スプール16とピストン13の油路を経由して作動油が下部の油室27に流入し、この作動油の油圧によってピストン13が押し上げられる。
【0044】
このため、支持アーム部42dの外周上面42eが開口部43の天井部43cに当接する前にピストン13が上昇し、ピストン13の上昇に必要な変速レバー18の操作力を、作動油の油圧によって大きく軽減することができ、変速操作性を良好なものとしている。これは、たとえ、可動斜板2dの摺動面での摺動抵抗が大きくてピストン13が上昇しにくくなり、外周上面42eが天井部43cに当接するような場合であっても、同様にして、作動油の油圧によって変速レバー18の操作力を軽減させることができる。
【0045】
ここで、該変速レバー18の操作力の変化に及ぼす前記捻りバネ74の作用について説明する。
図8(a)に示すように、前述の如く、変速レバー18の回動軸72の外周部に回動自在に巻回された捻りバネ74は、その両端部間に、回動軸72に固設された連動アーム75の係合部75aと、回動軸72に回動自在な支持アーム部42dに貫設された操作ロッド部42aのロッド外端42cとを、一緒に挟持している。
【0046】
このような状態において、図8(b)に示すように、変速レバー18を矢印82の方向に回動すると、連動アーム75の係合部75aと操作ロッド部42aのロッド外端42cとが、捻りバネ74と一体的に回動され、前述のように、スプール操作アーム42の支持アーム部42dの外周上面42eが、ピストン13の開口部43の天井部43cに当接される。
【0047】
更に、前記変速レバー18を矢印82の方向に回動すると、図7に示すようにしてピストン13が即座に上昇しない場合には、図8(c)に示すように、連動アーム75の係合部75aが捻りバネ74を上方に拡開しながら回動しようとする。このため、捻りバネ74の変形に必要な弾性力の分だけ、変速レバー18の操作力が増加し、この操作力増加によって、ピストン13の上昇が阻害されていること、つまり、該ピストン13にピン軸25を介して連結連動された可動斜板2dの操作力が増加していることを、作業者は感知することができる。
【0048】
なお、図8(c)に示すような場合であっても、可動斜板2dの操作力がそれほど大きくないと、支持アーム部42dが開口部43に当接した後でも油圧によってピストン13が徐々に上昇していき、捻りバネ74の変形量も減少して変速レバー18の操作力が減少していく。つまり、作業者は、変速レバー18の操作力をもとにして、ピストン13の移動状況、つまり、可動斜板2dの操作力の変化を直接把握できるのである。
【0049】
すなわち、可変容積型の油圧ポンプ2または油圧モータ3におけるクレイドル式の可動斜板2dの斜板角を制御する油圧サーボ機構11を備え、該油圧サーボ機構11には前記可動斜板2dに連結連動するピストン13と該ピストン13内を摺動するスプール16とを設け、該スプール16を外部操作可能な構成とした油圧式無段変速装置1において、外部から変速操作する外部操作具である変速レバー18は、前記スプール16を摺動させるスプール操作具であるスプール操作アーム42に弾性部材である捻りバネ74を介して連結すると共に、前記スプール16を中立位置78から作用位置79・80まで移動させた後に、前記スプール操作アーム42の一部である支持アーム部42dが前記ピストン13に当接する構成としたので、可動斜板2dの操作力が大きくなると、該可動斜板2dの操作力を、ピストン13とスプール操作アーム42との当接部を介してピストン13からスプール操作アーム42に直接伝達し、該スプール操作アーム42に連結された変速レバー18の操作力増加から、作業者が可動斜板2dの操作力増加を感知することができ、可動斜板2dや斜板受けであるクレイドル受け6に適切な時期にメンテナンスを施して部材寿命を長くし、焼き付け等のトラブルも確実に防止することができる。更に、可動斜板2dの操作力が大きいためにスプール操作アーム42がピストン13に当接した後も該ピストン13が即座にそれ以上移動しない場合であっても、スプール操作アーム42と変速レバー18との間に捻りバネ74を介設することで、該捻りバネ74の弾性力に抗して変速レバー18だけを操作させることができ、該変速レバー18が変速操作中に急に操作できなくなるといったことがなく、変速操作性を向上させることができる。しかも、この場合、捻りバネ74の変形量が増加すると変速レバー18の操作力も増加するが、ピストン13が徐々に移動を開始すると捻りバネ74の変形量が減少し、この変形量の減少に呼応して変速レバー18の操作力も減少していくことから、作業者は、変速レバー18の操作力変化から、ピストン13の移動状況をリアルタイムで感知して可動斜板2dの操作力の変化を正確に把握することができ、前記メンテナンスに適切な時期を一層な正確に推定することができる。
【0050】
また、図9に示すスプール操作アーム83は、これまでのスプール操作アーム42における支持アーム部42dの上下方向幅を短く変更したものである。
該スプール操作アーム83によって、支持アーム部83dの外周上面83eと外周下面83fを、それぞれピストン13の外開口部43bにおける天井部43cと底部43dとに対して大きな間隔距離84・85を設けて配置することができる。該間隔距離84・85は、スプール16の作用ストロークに比べて著しく大きく設定している。
【0051】
このような構成においては、可動斜板2dの操作力が増加し、スプール16が移動してからピストン13が移動するまでのタイムラグが少々大きくなっても、スプール操作アーム42がピストン13に当接するまで余裕があり、変速レバー18の操作力増加を抑えることができる。つまり、可動斜板2dの操作力の変化を感知する感度を低下させることができるのである。この感知感度の調整は、例えば、頻繁に変速する必要のある作業等で変速操作時の操作力をできるだけ軽くしたい場合等に対応するために、変速レバー18の操作力を調整する上で有効である。
【0052】
すなわち、前記スプール操作具であるスプール操作アーム83は、前記スプール16に直接係合する操作ロッド部83aと、該操作ロッド部83aを固定支持する支持部である支持アーム部83dとから構成され、該支持アーム部83dが前記ピストン13に当接するので、前記支持アーム部42dを交換することでスプール操作アーム83とピストン13との間隔を変更し、可動斜板2dの操作力の感知感度を自在に調整することができ、装置使用状況に応じて外部操作具である変速レバー18の操作力を適正化し、変速操作性を更に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、可変容積型の油圧ポンプまたは油圧モータにおけるクレイドル式の可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備え、該油圧サーボ機構には前記可動斜板に連結連動するピストンと該ピストン内を摺動するスプールとを設け、該スプールを外部操作可能な構成とした全ての油圧式無段変速装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係わる油圧式無段変速装置の全体構成を示す側面断面図である。
【図2】同じく平面一部断面図である。
【図3】同じく正面一部断面図である。
【図4】同じく上部側面図である。
【図5】油圧式無段変速装置の油圧回路図である。
【図6】油圧サーボ機構を示す手動斜板角制御バルブの側面断面図である。
【図7】手動斜板角制御バルブの側面断面図であって、図7(a)はスプールが作用位置にある場合の油路接続構成とスプール操作アーム位置を示す手動斜板角制御バルブの側面断面図、図7(b)はスプールが中立位置にある場合の油路接続構成とスプール操作アーム位置を示す、手動斜板角制御バルブの側面断面図である。
【図8】スプール操作アームが配置された開口部近傍の側面図であって、図8(a)はスプール操作アーム回動前の開口部近傍の側面図、図8(b)はスプール操作アームが回動後にピストンと当接した時の開口部近傍の側面図、図8(c)はスプール操作アームがピストンと当接後に更に回動して捻りバネが拡開された時の開口部近傍の側面図である。
【図9】スプール操作アームの別形態を示す、手動斜板角制御バルブの側面断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 油圧式無段変速装置
2 油圧ポンプ
2d 可動斜板
3 油圧モータ
11 油圧サーボ機構
13 ピストン
15 中立位置保持機構
16 スプール
18 外部操作具
42・83 スプール操作具
42a・83a 操作ロッド部
42c・42d スプール操作具の一部
42d・83d 支持アーム部
74 弾性部材
78 中立位置
79・80 作用位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容積型の油圧ポンプまたは油圧モータにおけるクレイドル式の可動斜板の斜板角を制御する油圧サーボ機構を備え、該油圧サーボ機構には前記可動斜板に連結連動するピストンと該ピストン内を摺動するスプールとを設け、該スプールを外部操作可能な構成とした油圧式無段変速装置において、外部から変速操作する外部操作具は、前記スプールを摺動させるスプール操作具に弾性部材を介して連結すると共に、前記スプールを中立位置から作用位置まで移動させた後に、前記スプール操作具の少なくとも一部が前記ピストンに当接する構成としたことを特徴とする油圧式無段変速装置。
【請求項2】
前記スプール操作具は、前記スプールに直接係合する操作ロッド部と、該操作ロッド部を固定支持する支持部とから構成され、該支持部が前記ピストンに当接することを特徴とする請求項1記載の油圧式無段変速装置。
【請求項3】
前記油圧式無段変速装置には、前記可動斜板の中立位置を保持する中立位置保持機構を一体的に内装し、該中立位置保持機構は、前記スプール操作具の一部を挟持して中立位置に保持することを特徴とする請求項1または請求項2記載の油圧式無段変速装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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