説明

油性修正液組成物

【課題】十分な隠蔽力を持ち長期間経過してもその隠蔽力を保持し続けることができ、水性ボールペン等で上書きを行っても水性ボールペンインクの乾燥性の低下が見られない修正インク組成物、また、塗膜安定性、貯蔵安定性に優れ、修正塗膜の汚染のない修正インク組成物を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル93〜99.6重量%と、塩基性含窒素モノマーの0.4重量%〜2重量%と、更にスチレンモノマーの1〜5重量%を共重合して得られるアクリル系合成樹脂(a)(メタクリル酸エチル樹脂)を5〜30重量%、および、メタクリル酸n−ブチルモノマーを含むモノマーを重合して得られるアクリル系合成樹脂(b)を5〜20重量%との混合樹脂溶液と、隠蔽性顔料40〜60重量%、シリカ粒子、ならびに、非極性有機溶剤25〜55重量%を含有する修正液組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールペン、サインペン、マーカーなどの筆記具やプリンター等で誤って文字を筆記、印刷した際にその筆記文字、印刷箇所を修正するために使用される油性の修正液組成物に関し、特に油溶性染料を含む油性インキ組成物による描線を隠蔽可能かつ染料のブリード現象がなく、更には隠蔽した塗膜の上からの筆記具による再筆記が容易である修正液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで言う修正液とは、紙上に記された筆跡、複写機による複写像などの上に塗布することにより、この筆跡あるいは複写像などを被覆隠蔽するものである。最近では、油性・水性どちらのインキの文字の修正にも対応可能な両用もしくは共用タイプと呼ばれる修正液が主流となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アクリル系合成樹脂、非水系溶剤および二酸化チタンからなる共用タイプの修正液組成物が開示されている。この修正液では、水性、油性に関わらず、ボールペンインキによる上書き乾燥性(いわゆる再筆記性)が著しく低下するなどの課題があった。
また、特許文献2には、隠蔽剤と、アクリル系の樹脂エマルジョンと、ポリエーテル変性ジメチルシロキサンと水を少なくとも含み、塗布面の平滑さ、所謂レベリング性に優れた水性修正液が開示されている。このような修正インクは筆記跡を隠蔽してから長期間経過すると、隠蔽したはずの筆記跡が表面から読み取れるほどに浮き出てくること(いわゆるブリード現象)がある。特に、油性ボールペンインキの筆跡を修正後、高温高湿下に放置した場合はこの現象はより短時間で起こりやすい傾向にあるといえる。これは隠蔽した筆記具等の染料、着色剤が、修正液の塗膜に移行し、表面に浮き出すことが理由である。
【特許文献1】特開平6−184476号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2002−294103号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題に鑑み、十分な隠蔽力を持ち長期間経過してもその隠蔽力を保持し続けることができ、水性ボールペン等で上書きを行っても水性ボールペンインクの乾燥性の低下が見られない修正インク組成物、また、塗膜安定性、貯蔵安定性に優れ、修正塗膜の汚染のない修正インク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者は上記課題に対し、修正インク組成物に、隠蔽性顔料、化学構造が異なる2種類の適切なアクリル系合成樹脂、即ち(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、塩基性含窒素モノマーと、更にスチレンモノマーを含むアクリル系合成樹脂(a)、並びに、メタクリル酸ブチルモノマーを含むアクリル系合成樹脂(b)の2種類を混合し、シリカ粒子を更に配合することで、前述のようなインキの染料の溶解は起こりにくく、修正により隠蔽した筆記具等の着色剤が表面へ移行するのを防ぐことができることを見出した。また、前記2種類のアクリル系樹脂のうち、ガラス転移点(Tg)が異なるものを用いることにより、更なるブリード現象の防止に繋がることを見出した。即ち、隠蔽した筆記跡や印刷物が、長期間ブリード現象を起こすことなく隠蔽し続ける修正液インク組成物を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1)少なくとも、下記一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル93〜99.6重量%と、下記一般式(2)で示される塩基性含窒素モノマーの0.4重量%〜2重量%と、更にスチレンモノマーの1〜5重量%以下を共重合して得られるアクリル系合成樹脂(a)(メタクリル酸エチル樹脂)5〜30重量%、および、下記一般式(3)で示されるメタクリル酸n−ブチルモノマーを含むモノマーを重合して得られるアクリル系合成樹脂(b)5〜20重量%との混合樹脂溶液と、隠蔽性顔料40〜60重量%、シリカ粒子、ならびに、非極性有機溶剤25〜55重量%を含有する修正液組成物。
【0007】
【化1】

(ただし、R1 は水素またはメチル基を表し、R2 は炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基または一部芳香族基で置換された脂肪族炭化水素基を表す。)
【0008】
【化2】

(ただし、R3 は水素またはメチル基を表し、R4 とR5はそれぞれ独立したメチル基またはエチル基を表し、Aは炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【0009】
【化3】

(3) 前記メタクリル酸エステルモノマーを含む合成樹脂の重量平均分子量が20,000〜200,000で、ガラス転移温度が10〜30℃であり、前記メタクリル酸n−ブチル樹脂のガラス転移点とは異なる前記(1)に記載の修正液インク組成物。
(4)前記メタクリル酸n−ブチル樹脂の重量平均分子量が20,000〜200,000で、ガラス転移温度が30〜75℃であり、前記メタクリル酸エステルモノマーを含む合成樹のTgとは異なる前記(1)に記載の修正液インク組成物。
(5)前記シリカ粒子は吸油量が100〜200(ml/100g)以下であって、その含有量が1 〜10重量%であることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか一つに記載の修正液インク組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、修正液において顔料の分散状態の安定化を図り、沈降した顔料の再分散性及び修正塗膜の接着性等を改良し、紙上の書き損じを被覆するために用いられる修正液インク組成物の中に、2種類の化学構造およびTgの異なるアクリル系合成樹脂、隠蔽性顔料、シリカ粒子および有機溶剤を配合し、その塗膜の中を、油性染料インキによる筆跡から染料がブリードするのを防止できる。従って、この修正液インク組成物の修正塗膜は、汚染のない修正液組成物で十分な隠蔽力を持ち長期間経過してもその隠蔽力を保持し続けることができる。また、本発明の修正液は、修正塗膜の隠蔽性、乾燥性、レベリング性、及び再筆記性が良好であることは勿論、初期分散時及び長時間経過後においても耐湿度性と顔料の分散性が良好であり、再分散性及び経時安定性を示しハードケーキの形成、隠蔽性の低下などの不都合を防止する効果に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
下記一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル93〜99.6重量%と、下記一般式(2)で示される塩基性含窒素モノマーの0.4重量%以上〜2重量%未満と、更にスチレンモノマーの5重量%以下を共重合して得られるアクリル系合成樹脂(a)(メタクリル酸エチル樹脂)は、単一の(メタ)アクリル酸エステルモノマーからなる樹脂よりも、やや親水性が強いために油溶性染料のマトリックス内の移動を阻害するものであると推測される。このことは、共重合体中に微量のスチレンモノマーが加わっても変化はないものと推測される。このような化学構造を持つアクリル系合成樹脂は、Tgが低めであって、塗膜に柔軟性を付与する効果を与えるものである。
【0012】
【化4】

(ただし、R1 は水素またはメチル基を表し、R2 は炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基または一部芳香族基で置換された脂肪族炭化水素基を表す。)
【0013】
【化5】

(ただし、R3 は水素またはメチル基を表し、R4 とR5はそれぞれ独立したメチル基またはエチル基を表し、Aは炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【0014】
下記一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル93〜99.6重量%と、下記一般式(2)で示される塩基性含窒素モノマーの0.4重量%〜2重量%と、更にスチレンモノマーの1〜5重量%以下を共重合して得られるアクリル系合成樹脂(a)(メタクリル酸エチル樹脂)の望ましい特性は以下の通りである。
【0015】
アクリル系合成樹脂(a)の重量平均分子量は20,000〜200,000、好ましくは25,000〜100,000、とすることが望ましい。重量平均分子量が20,000未満では、顔料の分散性、修正塗膜の接着性、柔軟性に不足があり、修正液インク組成物の経時安定性が保持できない。200,000を超える重量平均分子量では、粘度の増大が著しく好ましくなく、また、隠蔽性顔料が沈降するとハードケーキ化し易く、再分散性を高めるためには不利である。
【0016】
樹脂のTgは樹脂がガラス状からゴム状に変化する温度である。一般にTgは構成される樹脂モノマーのホモポリマーのガラス転移温度とその重量分率から算出される。修正液インク組成物においては、配合した樹脂のTgが低い場合(0℃以下)では乾燥後の塗膜が、べたべたと粘着性を帯び再筆記もできない。また、一般には−70℃〜30℃のTgを持つ樹脂を使用する事によって紙面の変形に対応した塗膜を形成する修正塗膜とすることができる。従って、このアクリル系合成樹脂(a)は、Tgを10〜30℃の範囲に制御することが望ましい。
【0017】
本発明に用いるアクリル系合成樹脂(a)としては、LP189が挙げられる。このLP189は前記アクリル系合成樹脂を主溶剤メチルシクロヘキサンに溶解させたもので、所望の分子量およびTgに対して、重合度、モノマー比率を変化させることで、対応する(いずれも樹脂固形分40%、藤倉化成株式会社製)。修正液全量に対して0.4〜12重量%(樹脂溶液で1〜30重量%)、好ましくは4〜10重量%(同じく10〜25重量%)程度使用する。0.4重量%未満では充分な効果を発揮し得ず、12重量%以上では、修正液インク組成物の粘度が高くなり過ぎ、また、修正塗膜に光沢が生じ好ましくない。
【0018】
下記一般式(3)で示されるメタクリル酸n−ブチルモノマーを含むモノマーを重合して得られるアクリル系合成樹脂は常温で結晶性に富み、一般的には高いTgを示すものであり、化学構造式からは親油性が強そうに見えるため、普通に考えれば油溶性染料の拡散は抑えられないものと思われたが、実際には優れた耐ブリード性を示すこととなった。これは結晶構造が油溶性染料の拡散を阻害するための結果であると推測された。
【0019】
【化6】

【0020】
配合した樹脂のTgが高い場合(30℃以上)には、塗膜が硬くなり柔軟性が低下する。しかしながら描線の乾燥性はアップする。即ち、塗膜の乾燥が速く、変形性がなくなることとなる。前記の通り、本願発明者は、このTgの領域の樹脂においてブリード阻止効果を確認した。ただし、Tgが高すぎる場合(75℃超)では、塗膜の硬化が著しく、修正した紙面を曲げた場合に塗膜が割れて破損、脱落し、修正した筆記面が露わになってしまう事象が起り得る。従って、このアクリル系合成樹脂(b)は、Tgを30〜75℃の範囲に制御することが望ましく、好ましくは30〜50℃の範囲である。
【0021】
アクリル系合成樹脂(b)の重量平均分子量は、20,000〜200,000、好ましくは30,000〜60,000、とすることが望ましい。
前記樹脂(a)同様、重量平均分子量が20,000未満では、顔料の分散性、修正塗膜の耐ブリード性に不足があり、修正液インク組成物の経時安定性が保持できない。200,000を超える重量平均分子量では、粘度の増大が著しく好ましくなく、また、隠蔽性顔料が沈降するとハードケーキ化し易く、再分散性を高めるためには不利である。
【0022】
アクリル系合成樹脂(b)は、メタクリル酸ブチル樹脂でダイヤナールBR−50(分子量65,000、Tg:100℃)、BR−60(分子量70,000、Tg:75℃)、BR−75(分子量85,000、Tg:90℃)、BR−85(分子量280,000、Tg:105℃)、BR−100(分子量120,000、Tg:105℃)、BR−101(分子量160,000、Tg:50℃)、BR−102(分子量360,000、Tg:20℃)、BR−105(分子量5,5000、Tg:50℃)、BR−110(分子量72,000、Tg:90℃)、BR−113(分子量30,000、Tg:75℃)、BR−115(分子量55,000、Tg:50℃)、BR−116(分子量45,000、Tg:50℃)、BR−117(分子量140,000℃、Tg:35℃)、BR−118(分子量190,000、Tg:35℃)、BR−1122(分子量180,000、Tg:20℃)、MB−2539(分子量80,000、Tg:55℃)、MB−2660(分子量65,000、Tg:52℃)、MB−2478(分子量80,000、Tg:50℃)、MB−2952(分子量82,000、Tg:84℃)、MB−3012(分子量220,000、Tg:40℃)、MB−7033(分子量92,000、Tg:84℃)(以上三菱レイヨン株式会社製)などが挙げられる。これらのアクリル系合成樹脂は、溶剤を含まないビーズ状の樹脂であり、したがって粘性調整が必要で、主溶剤メチルシクロヘキサンに20%〜50%の溶解で使用するものとする。本発明の修正液全量に対して1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%使用する。1重量%未満では充分な耐ブリード性を発揮し得ず、15重量%を超える場合では、修正液の粘度が高くなり過ぎ、また、修正液インク組成物にハードケーキ化が生じ好ましくない。
【0023】
本願発明者はブリード現象の防止に供することができるTgの高い樹脂と、柔軟性を付与できるTgの低い樹脂とを併用することで、修正液による紙への乾燥塗膜の密着性をより良くし、かつ、染料のブリードを抑制できる修正液インク組成物ができるものと考えた。これらアクリル系合成樹脂(a)/アクリル系合成樹脂(b)の固形分での混合比としては1/10〜10/1が好ましく、より好ましくは1/10〜5/1である。この比率が1/10を下回ると塗膜が硬くなり、塗膜が割れる可能性が高まる。逆に20/1を超えると耐ブリード性が弱まり好ましくない。
【0024】
これらアクリル系合成樹脂を混合し添加する際の総量としては、10〜30重量%が望ましい。10重量%未満であると顔料分散保持力が不十分となり、修正液の経時安定性及び沈降顔料の再分散性に問題が生じ、本発明の目的が達成できない。また、30重量%を越えると、溶剤に対する溶解性が極端に低下し、修正液の安定性が保持できない。
【0025】
また、本発明の修正液には、場合によっては、本発明の所期の目的を達成し、その効果を奏し得る範囲内において各種の樹脂を本発明に用いるアクリル系合成樹脂(a)および(b)の使用総量の範囲内で補助的に加え、且つ、用いる樹脂の総和が修正液の30重量%内となる量で併用することができる。そのような樹脂としては、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸エチル樹脂、メタクリル酸イソブチル樹脂、メタクリル酸ラウリル樹脂、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル樹脂などのアクリル樹脂、アルキッド樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。このうち修正液の塗膜性能に優れるアクリル樹脂やスチレン樹脂が好ましい。
【0026】
本発明の修正液組成物に用いる非極性溶剤としては、修正液としての適正な乾燥速度を有し、前記アクリル系合成樹脂(a)および(b)を溶解し、かつ水性インキ、油性インキ、PPCトナーや熱転写リボンなどの色材成分を溶解・滲出させにくいものであれば特に限定するものではないが、特に主溶剤としてシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのシクロパラフィン系溶剤やn‐ヘプタン、3‐メチルペンタン、2,2,4トリメチルペンタンなどのパラフィン系溶剤、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタンなどのシクロペンタン系溶剤が、単独または混合して使用される。
【0027】
ところで、これらアクリル系合成樹脂の総量は、溶剤に対する溶解性と顔料分散性と対ブリード性のバランスをとる必要があること、修正塗膜の硬さを調整する必要性があることから、溶剤/樹脂固形分の割合は、通常1/1〜10/1、好ましくは2/1〜5/1である。この比率が1/1を下回る場合には、アクリル系合成樹脂混合物の溶存状態が不安定となり好ましくない。10/1を上回る場合にも、粘度低下などによる分散安定性の欠如、隠蔽性粒子のハードケーキ化などが起り、好ましくない。
【0028】
シリカ粒子は、隠蔽性粒子(酸化チタンなど)とともに隠蔽性を期待されるものであるが、その大きな比表面積によって油溶性染料の拡散を物理的に阻害すると考えられる。そのため、比表面積が100(ml/100g)未満では、ブリード現象を防止できない。比表面積が200(ml/100g)を超えると修正液インク組成物の粘度増大が著しく好ましくない。
【0029】
添加するシリカ粒子の好ましい平均粒子径は2〜10μmである。シリカ粒子の粒子径が塗膜の厚みに対し大きすぎる(10μmを超える)と、上から筆記具で文字等を書き込んだときに滑らかに書き込めずに削れてしまうことがある。逆に2μm未満では、耐ブリード性が弱まり好ましくない。また、シリカの充填量が10重量%を超える場合には、相対的に酸化チタンの充填量が低くなり隠蔽力が低下し、ひび割れが生じやすくなってしまう。更には、粘性が高くなり、経時安定性が悪くなる傾向にある。逆に1重量%未満であると、前記同様耐ブリード性が弱まり好ましくない。本発明の組成物に使用できるシリカ粒子として具体的には、ミズカシルP−510、P−526、P−527、P−603、P−801、P−803(いずれも水澤化学(株)製)が挙げられる。
【0030】
本発明の修正液組成物に用いる隠蔽性顔料としては、ルチル型及びアナターゼ型の二酸化チタンが必須成分として用いられる。通常ルチルタイプとして、R−780、R−820、CR−50、CR−93(以上、石原産業株式会社製)、R−900、R−931(以上、デュポン社製)、JR−701、JR−600、JR−801、JRNC(以上、テイカ社製)、KR−380、KR−380N、KR−460(以上、チタン工業株式会社製)などが使用可能であり、アナターゼタイプとして、A−100、A−220(以上、石原産業株式会社製)、JA−3、JA−5(以上、テイカ株式会社製)、KA−10、KA−20(以上、堺化学株式会社製)などが使用可能である。二酸化チタン以外の顔料として、所望に応じ微細シリカ粉、炭酸カルシウム、タルク、クレー、ケイ酸アルミニウム粉などを適宜組み合わせて用いることができるが、この場合隠ぺい性の点からみて、二酸化チタン量に対して30%以下が好ましい。
【0031】
本発明の修正液組成物には必要に応じて、二酸化チタン粒子、シリカ粒子、着色用顔料などの分散用として油中分散剤が用いられる。例えば、アニオン系ではポリカルボン酸系分散剤、カチオン系では長鎖アミン系分散剤、ノニオン系では、ポリエーテル系分散剤が使用でき得る。また、これらの粒子の分散を助けるために各種のカップリング剤を用いることができる。使用できる市販品のチタネートカップリング剤としては、チタコートS−151、S−152(以上、日本曹達株式会社製)、Disperbyk−160、ラクチモン(以上、ビッグケミー社製)、ソルスパース#3000、#9000、#24000(以上、ICI社製)、アンチゲル(シュベックマン社製)などが使用できる。
【0032】
その他に、修正塗膜の色調の調整や、光沢の調整のために、カーボンブラック、酸化鉄、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、マイカ、珪酸アルミニウムなどの黒色顔料や体質顔料、着色用の有色顔料や非極性の揮発性有機溶剤に不要な樹脂粒子などを併用することもできる。その使用量は酸化チタン粒子に対し、0.01重量%以上20重量%以下であることが好ましい。また、水性インキによる再筆記の筆跡が乾燥し易くすることや、塗膜の乾燥が速いものとするために、乾燥塗膜中の顔料容積濃度を70容積%以上にすることが好ましい。
【0033】
本発明の修正液組成物には、上述した各成分以外にも必要に応じて、従来、公知の沈降防止剤、粘性調整剤、重合防止剤、皮張り防止剤、着色顔料などが用いることができる。本発明の修正液組成物は、上述した各成分を混合分散機、たとえば、ビーズミル、アトライター、サンドグラインダー、等の撹拌分散機を使用して分散混合することによって製造することができる。
【実施例】
【0034】
次に、実施例及び比較例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は勿論これらに限定されるものではない。
【0035】
〔実施例1〜39及び比較例1〜14〕
下記表1〜表8に示す配合処方で、ボールミルを使用して16時間分散処理することにより油性修正液インク組成物を調製した。得られた本発明の修正液インク組成物について隠蔽性、乾燥性、描線割れ、再筆記性、耐湿度性、経時安定性及び再分散性試験を行い、評価を行った。
【0036】
〔隠蔽性〕
すき間50μmのフィルムアプリケーターを用いて、隠蔽率試験紙(JISK5400)上に修正液を塗布した。塗膜乾燥後、試験紙の白地部分上の塗膜と黒字部分上の塗膜の0度45度拡散反射率を測定(光源C/2における三刺激値X、Y、Z中のY値を、分光側色計[スガ試験機製:SC−P型式]により測定する。)し、白地部分上の塗膜の拡散反射率に対する黒字部分上の塗膜の拡散反射率の割合が90%以上であるか否かにより評価を行った。
【0037】
○:90%以上
×:90%未満
【0038】
〔ブリード性〕
隠蔽率試験紙(JISK5400)上に三菱鉛筆製の油性ボールペン(SXN−150、ボール径0.7mm)で筆記後、本発明の修正液インク組成物を塗布した。塗膜乾燥後、高温高湿下(40℃80%)で5日間放置し、筆記描線の隠蔽状態を判断した。
【0039】
◎:塗布直後の状態を保っている
○:塗膜表面に薄く被覆したインク色が認識できる
△:塗膜表面に被覆したインク描線の存在が確認できる
×:塗膜表面で被覆した筆記描線が判別、判読できる
【0040】
〔乾燥性〕
すき間50μmのフィルムアプリケーターを用いて、筆記用紙A(JIS P3201)上に修正液を塗布した。1分後に、塗膜上にボールペン(JIS S6015)にて通常の筆圧で筆記し、塗膜に破れが生じたか否かにより評価した。
【0041】
◎:通常の紙面と遜色なく筆記できる
○:やや筆記しづらいが、筆記による塗膜の変形、破壊は無い
△:筆記した結果、一部に塗膜の変形、破壊が認められる
×:筆記により、塗膜の破壊が起る
【0042】
〔再筆記性〕
すき間50μmのフィルムアプリケーターを用いて、筆記用紙A(JIS P3201)上に修正液を塗布する。1分後に、各種筆記具(JIS S6015、S6053、S6037)で筆記し、筆跡におけるインキのはじき、色沈み及び滲みの有無により評価した。
【0043】
◎:いずれの筆記具においても色沈み及び滲みは無かった
○:一部の筆記具において、インキのはじき、色沈み及び滲みが見られた
△:全ての筆記具において、インキのはじき、色沈み及び滲みが見られた
×:全ての筆記具の、ほぼ全筆跡にインキのはじき、色沈み及び滲みが見られた
【0044】
〔描線割れ〕
すき間50μmのフィルムアプリケーターを用いて、筆記用紙A(JIS P3201)上に修正液を塗布する。塗膜乾燥後に、塗布部を内側にして筆記用紙を2つ折りにし、その折り目と直角方向に更に折り曲げて、塗膜が破壊されるか否かにより評価した。
【0045】
◎:塗膜の線割れは見られなかった
○:塗膜の折り目部分の一部に割れが見られた
△:塗膜の折り目部分のほぼ全部に割れが見られた
×:塗膜の折り目部分から割れ、塗膜が脱落した
【0046】
〔耐湿度性〕
同種の修正液インク組成物を、温度0℃及び40℃の恒温槽にそれぞれ1時間放置後、室温で30分間放置し、前記の隠蔽性試験を行い、通常の隠蔽性試験の結果と比較した。
【0047】
○:通常の隠蔽性試験同様で変化が無かった
×:いずれかの温度のサンプルが通常の隠蔽性試験よりも隠蔽性が落ちた
【0048】
〔経時安定性(保存性)〕
マヨネーズ瓶に各修正液インク組成物を300ml入れ、50℃中に3ケ月間静置保存した後の沈降分離の状態を観察し、沈積物の状態をスパチュラにてかき混ぜながら修正液組成物の状態をつぎの基準で評価した。
【0049】
◎:良好
○:やや沈降分離が見られたが容易に再分散できた
△:沈降分離が見られ、再分散には、やや力が必要であった
×:沈降分離が大きく沈積物がハードケーキ化しており、人力での再分散は困難であった
【0050】
〔容器内における再分散性〕
撹拌ボールが2ケ入った修正液貯蔵管を有する三菱鉛筆株式会社製修正ペンCLB−300の貯蔵管に、各実施例、比較例の修正液インク組成物を入れ、3ケ月間上向きに静置したのち、再撹拌した時の撹拌ボールの衝突音がするまでの撹拌回数を測定した。
◎:最初から撹拌ボールの衝突音が聞かれた
○:撹拌回数5回以内で撹拌ボールの衝突音が聞かれた
△:撹拌回数10回以内で撹拌ボールの衝突音が聞かれた
×:撹拌回数11回以上でも撹拌ボールの衝突音は聞かれなかった
【0051】
【表1】


a−1:LP−189(平均分子量:30,000、Tg:10℃)
a−2:LP−189(平均分子量:70,000、Tg:10℃)
a−3:LP−189(平均分子量:100,000、Tg:10℃)
a−6:LP−189(平均分子量:30,000、Tg:30℃)
a−7:LP−189(平均分子量:70,000、Tg:30℃)
a−8:LP−189(平均分子量:100,000、Tg:30℃)
b−2:ダイヤナールBR−102(平均分子量:360,000、Tg:20℃)
*1:JR−701
*2:ミズカシルP−527
*3:三菱化学製、MA−8
【0052】
【表2】


b−3:ダイヤナールBR−117(平均分子量:140,000、Tg:35℃)
【0053】
【表3】


b−5:ダイヤナールMB−3012(平均分子量:220,000、Tg:40℃)
【0054】
【表4】


b−6:ダイヤナールBR−115(平均分子量:55,000、Tg:50℃)
【0055】
【表5】


b−8:ダイヤナールBR−113(平均分子量:30,000、Tg:75℃)
b−9:ダイヤナールBR−60(平均分子量:70,000、Tg:75℃)
【0056】
【表6】

【0057】
【表7】


a−11:LP−189(平均分子量:100,000、Tg:50℃)
a−12:LP−189(平均分子量:100,000、Tg:0℃)
【0058】
【表8】


a−4:LP−189(平均分子量:150,000、Tg:10℃)
a−5:LP−189(平均分子量:200,000、Tg:10℃)
a−9:LP−189(平均分子量:150,000、Tg:30℃)
a−10:LP−189(平均分子量:200,000、Tg:30℃)
b−1:ダイヤナールBR−1122(平均分子量:180,000、Tg:20℃)
b−4:ダイヤナールBR−118(平均分子量:190,000、Tg:35℃)
【0059】
【表9】

【0060】
上記表1〜9の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜39は、本発明の範囲外となる比較例1〜14に比べて、耐ブリード性に優れていることが分かった。他の性能についても、遜色ないか、それを超えるものであることが分かった。比較例1〜9を見ると、これらは単一のアクリル系合成樹脂のみを配合した組成であり、比較例10〜13は、更にアクリル系合成樹脂の全量が本発明の範囲を逸脱する組成であり、これらの場合には、本発明の効果を発揮できないことが判明した。また、比較例14はシリカ粒子を配合しない組成であり、この場合もまた、本発明の効果を発揮できないことが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステル93〜99.6重量%と、下記一般式(2)で示される塩基性含窒素モノマーの0.4重量%〜2重量%と、更にスチレンモノマーの1〜5重量%を共重合して得られるアクリル系合成樹脂(a)(メタクリル酸エチル樹脂)を5〜30重量%、および、下記一般式(3)で示されるメタクリル酸n−ブチルモノマーを含むモノマーを重合して得られるアクリル系合成樹脂(b)を5〜20重量%との混合樹脂溶液と、隠蔽性顔料40〜60重量%、シリカ粒子、ならびに、非極性有機溶剤25〜55重量%を含有する修正液組成物。
【化1】

(ただし、R1 は水素またはメチル基を表し、R2 は炭素数1〜18の脂肪族炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基または一部芳香族基で置換された脂肪族炭化水素基を表す。)
【化2】

(ただし、R3 は水素またはメチル基を表し、R4 とR5はそれぞれ独立したメチル基またはエチル基を表し、Aは炭素数1〜4のアルキレン基を表す。)
【化3】

【請求項2】
前記メタクリル酸エステルモノマーを含むアクリル系合成樹脂(a)の重量平均分子量が20,000〜200,000で、ガラス転移温度が10〜30℃であり、前記メタクリル酸n−ブチルモノマーを含むアクリル系合成樹脂(b)のガラス転移点とは異なる請求項1に記載の修正液インク組成物。
【請求項3】
前記メタクリル酸n−ブチルモノマーを含むアクリル系合成樹脂(b)の重量平均分子量が20,000〜200,000で、ガラス転移温度が30〜75℃であり、前記アクリル系合成樹脂(a)のTgとは異なる請求項1に記載の修正液インク組成物。
【請求項4】
前記シリカ粒子は吸油量が100〜200(ml/100g)であって、その含有量が1 〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の修正液インク組成物。

【公開番号】特開2010−144122(P2010−144122A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325412(P2008−325412)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】