説明

油性修正液組成物

【課題】 隠蔽性が高く、かつ薄膜で、塗膜の乾燥が速く、しかも、ボールペン等での上書き筆記性、筆跡乾燥性に優れた油性修正液組成物を提供する。
【解決手段】 白色材として、比表面積30m/g以上のルチル型酸化チタンと、顔料粒子を合計で30〜50質量%と、有機溶剤20〜70質量%と、重量平均分子量のピークが10,000以上220,000以下にあるアクリル系合成樹脂であって、重量平均分子量のピークの異なる少なくとも2種類のアクリル系合成樹脂を、合計の固形分で3〜20質量%とを含有することを特徴とする油性修正液組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペン、サインペン、マーカーなどの筆記具やプリンター等で誤って文字を筆記、印刷した際に、その筆記文字、印刷箇所を修正するために使用される油性修正液組成物に関し、更に詳しくは、隠蔽性が高く、かつ薄膜で、塗膜の乾燥が速く、しかも、ボールペン等での上書き筆記性、筆跡乾燥性に優れた油性修正液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筆記文字、印刷箇所を修正するために使用される修正液組成物としては、これまで多種多様の組成が知られており、例えば、酸化チタンなどの隠蔽材と、メチルシクロヘキサンなどの溶剤と、該溶剤に可溶な樹脂などを少なくとも含むものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、修正液組成物を用いて誤字などを修正した場合に、その塗膜上に上書き筆記する際には、塗膜の乾燥時間は早い方が好ましく、また、塗膜上に水性インク等で上書き筆記した際の筆跡乾燥性も早い方が好ましいものである。
【0004】
しかしながら、塗膜の乾燥時間を早くするためには、酸化チタンなどの隠蔽材の含有量を少なくすれば良好となるものであるが、隠蔽材の含有量が少ないと十分な隠蔽性を発揮できないものであった。また、ただ単に、隠蔽材となる汎用の酸化チタンの含有量を増加させる方法では、隠蔽力は上がるものの、粘度が上がり塗布性は低下してしまい、塗膜も厚くなるものであった。
【0005】
そこで、隠蔽性を損なうことなく、塗膜乾燥性、筆跡乾燥性を早くする試みとして、例えば、揮発性有機溶剤、樹脂、隠蔽性無機粉体、界面活性剤からなる組成物に、シリカゲル、シリカアルミナゲル、アルミナゲルなどの多孔性無機質を少なくとも一種添加してなる誤字修正液(例えば、特許文献2参照)や、酸化チタンを主成分とする顔料と、有機溶剤と、該有機溶剤に可溶な樹脂とを主成分とする修正液にあって、多孔質粒子を含むことを特徴とする修正液(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
これらの修正液は、含有される多孔質粒子などによりインクを吸収する作用による効果である。また、微粉末シリカや微粉末炭酸マグネシウムなどを含有することにより、紙面への酸化チタンなどの隠蔽材の浸透を抑え、隠蔽率の低下を抑えることができるものである。
【0006】
しかしながら、これらの修正液では、修正液の粘度が高いものとなり膜圧は厚くなり、塗膜の乾燥はさほど早くならず、かえって上書き筆記性も遅くなるという課題が生じる。
また、このような多孔質粒子を含有すると、隠蔽材の表面積が増加するため、隠蔽材を定着させる樹脂が不足することとなり、かつ、塗膜の圧さが増すこととなる。すると修正液は厚く塗られることになり、塗膜を形成した紙面を折り曲げると塗膜が剥離しやすい課題がある。
従って、これまで塗膜表面に筆記する場合、厚膜になり、筆跡乾燥性と塗膜強度を両立した修正液組成物が得られないのが現状であった。
【0007】
一方、修正液組成物中にアクリル系樹脂を用いたものとしては、例えば、隠蔽材と、融点が72℃以下の炭化水素系溶剤と、該炭化水素系溶剤に可溶な重量平均分子量が200,000以上のアクリル系樹脂とより少なくともなり、顔料容積濃度(P.V.C)が70%以上である修正液(例えば、特許文献4参照)や、酸化チタンと、ナフテン系炭化水素溶剤を少なくとも含有する有機溶剤と、特定のアクリル樹脂を少なくとも含有する修正液(例えば、特許文献5参照)などが知られている。
しかしながら、これらの文献に示される各修正液を用いても、隠蔽性、薄膜性、塗膜強度、塗膜の乾燥性、ボールペン等での上書き筆記性、筆跡乾燥性を未だ満足するものでない点に課題があるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−24765号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平1−292074号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開平03−115475号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2004−252919号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2007−231140号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、隠蔽性が高く、薄膜で、かつ、塗膜強度が高く、しかも、塗膜の乾燥も速く、ボールペン等での上書き筆記性、筆跡乾燥性に優れた油性修正液組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記従来の課題等を解決するために鋭意研究を行った結果、特定物性となるルチル型酸化チタン、特定物性となる2種類のアクリル系樹脂を含有することなどにより、上記目的の油性修正液組成物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) 白色材として、比表面積30m/g以上のルチル型酸化チタンと、顔料粒子を合計で30〜50質量%と、有機溶剤20〜70質量%と、重量平均分子量のピークが10,000以上220,000以下にあるアクリル系合成樹脂であって、重量平均分子量のピークの異なる少なくとも2種類のアクリル系合成樹脂を、合計の固形分で3〜20質量%とを含有することを特徴とする油性修正液組成物。
(2) 前記アクリル系合成樹脂は、少なくとも、下記一般式(I)及び(II)で示されるモノマーを共重合して得られるアクリル系合成樹脂であることを特徴とする上記(1)に記載の油性修正液組成物。
【化1】

【化2】

(3) 前記アクリル系合成樹脂が、一般式(I)で示されるモノマー93〜99.6質量%を重合して得られるアクリル系合成樹脂であることを特徴とする上記(2)に記載の油性修正液組成物。
(4) 前記重量平均分子量の異なる2種類のアクリル系合成樹脂のうち、第1のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが10,000〜120,000であり、第2のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが100,000〜220,000であって、かつ、第1のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークは、第2のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークより小さいことを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の油性修正液組成物。
(5) 前記2種類のアクリル系合成樹脂のガラス転移温度が、10〜30℃であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の油性修正液組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、隠蔽性が高く、薄膜で、かつ、塗膜強度が高く、しかも、塗膜の乾燥も速く、ボールペン等での上書き筆記性、筆跡乾燥性に優れた油性修正液組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の油性修正液組成物は、白色材として、比表面積30m/g以上のルチル型酸化チタンと、顔料粒子を合計で30〜50質量%と、有機溶剤20〜70質量%と、重量平均分子量のピークが10,000以上220,000以下にあるアクリル系合成樹脂であって、重量平均分子量のピークの異なる少なくとも2種類のアクリル系合成脂を、合計の固形分で3〜20質量%とを含有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明において、修正液用として下地を覆い隠すために最も隠蔽力の高い白色材として用いる酸化チタンは、比表面積30m/g以上となるルチル型の酸化チタンを用いるものである。隠蔽材となる酸化チタンには、ルチル型、アナターゼ型などがあるが、本発明では、屈折率が高いため、隠蔽性の効果が高く、被覆した下地が隠蔽される点から、ルチル型酸化チタンを用いるものであり、かつ、その比表面積が30m/g以上となるものが使用され、好ましくは、35m/g以上、更に好ましくは、35〜40m/gとなるものが望ましい。
なお、比表面積30m/g未満となるルチル型酸化チタンでは、薄膜化での隠蔽力が劣ることとなり、好ましくない。また、本発明で規定する「比表面積」は、BET法により測定した値を意味する、
【0014】
本発明に用いる比表面積30m/g以上となるルチル型酸化チタンは、例えば、ルチル型酸化チタンの表面を、アルミナ、シリカ、チタニアのほか、ジルコニア、酸化錫、酸化アンチモン、酸化亜鉛などの無機金属酸化物等を含有する表面処理剤で処理したものなどを用いることができ、使用に供した場合に、当該表面処理により、隠蔽性を損なうことなく、塗膜は多孔質になり、かつ、薄膜にすることができるため、塗膜後の蒸発が早くなり、塗膜後の樹脂+溶剤の乾燥性が良好となり、塗膜上に再筆記できるまでの時間がかからず、しかも、ボールペン等での上書き筆記性、筆跡乾燥性を向上させるものとなる。
具体的に用いることができる比表面積30m/g以上となるルチル型酸化チタンとしては、市販のR−901、R−931、R−933(以上、デュポン・ジャパン・リミテッド製)、R−780、R−780−2(石原産業社製)、JR−800、JR−802(テイカ社製)などの少なくとも1種が挙げられる。
【0015】
これらの白色材となる上記物性のルチル型酸化チタンの含有量は、油性修正液組成物全量(100質量%、以下、単に「%」という)に対して、30〜50%、好ましくは、35〜45%とすることが望ましい。
この含有量が50%超過では、修正液の粘度が高くなり、塗布具での吐出が難しくなり、一方、30%未満では十分な隠蔽性が得られなくなり、好ましくない。
【0016】
本発明に用いる顔料粒子は、修正液塗膜の色調の調整や光沢の調整のために用いるものであり、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、マイカ、ケイ酸アルミなどの顔料や、使用する溶剤に不溶な顔料粒子などの少なくとも1種を用いることができる。
これらの顔料粒子の含有量は、用いる上記物性のルチル型酸化チタンに対し、質量比で0.01〜20%、好ましくは、0.05〜0.5%とすることが望ましい。
この顔料粒子の含有量がルチル型酸化チタンに対し、0.01%未満では、酸化チタンの白さで明度が最大となることで、より白くなり、一方、20%超過では逆に色が着きすぎて明度が低くなりすぎて、紙面との色差が共に大きくなってしまい修正液としては、好ましくない。
【0017】
本発明に用いるアクリル系合成樹脂は、重量平均分子量のピークが10,000以上220,000以下にあるアクリル系合成樹脂であって、重量平均分子量のピークの異なる少なくとも2種類のアクリル系合成樹脂を用いることが必要である。
本発明では、白色材として用いる上記比表面積30m/g以上となるルチル型酸化チタンの効果を最大限に発揮せしめると共に、該白色材の分散性向上、被吸収面への定着後の被膜強度を最大限に発揮せしめる点から、重量平均分子量のピークが10,000以上220,000以下となり、この重量平均分子量のピークの異なる少なくとも2種類のアクリル系合成樹脂が用いられる。
用いる前記アクリル系合成樹脂は、少なくとも、下記一般式(I)及び(II)で示されるモノマーを共重合して得られるアクリル系合成樹脂であるものが好ましく、更に好ましくは、前記アクリル系樹脂が、一般式(I)で示されるモノマー93〜99.6質量%を重合して得られるものが望ましい。
【0018】
【化3】

【化4】

【0019】
前記一般式(I)で示されるモノマーとなる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリレート類や、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、セチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリレート類などが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステル類は、修正塗膜性能や顔料分散性能により各々単独使用でも2種類以上の使用で差し支えない。
【0020】
また、前記一般式(II)で示されるモノマーとなる塩基性含窒素モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート等が挙げられる。
更に、必要に応じて共重合成分として、スチレンモノマーを(0.1〜)5%未満で混入してもよい。このスチレンモノマーを共重合することにより、修正塗膜に可溶性のある塗膜を得ることができる。しかし、5%以上では、用いる溶剤への溶解性が低下する他、塗膜強度の低下が生じる。
【0021】
特に好ましい上記共重合して得られるアクリル系合成樹脂としては、前記一般式(I)ではn−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート及びエチルメタクリレートからなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーとラウリルメタクリレート、n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルメタクリレートからなる群から選ばれた少なくとも一種のモノマーとの組み合わせが良く、前記一般式(II)ではN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートが、顔料分散性や粘度安定性の面で好ましい。
【0022】
前記一般式(I)のモノマーの量が99.6%超過では、分散安定性が低下し、一方、93%未満では、用いる溶剤に対する溶解性が低下したり、修正塗膜が脆くなったりすることとなる。
上記特性のアクリル系合成樹脂の製造方法は、従来からの公知の溶液重合法によって製造することができる。用いるアクリル系合成樹脂は、主溶剤となるメチルシクロヘキサン等に溶解させたもので、所望の重量平均分子量ピークおよびガラス転移温度(Tg)に対して、重合度、モノマー比率を変化させることで、好適なアクリル系合成樹脂が得られるものとなる。
用いるアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが10,000未満であると、修正塗膜に粘着性を帯び、再筆記性が悪くなる。反対に、重量平均分子量のピークが220,000を超えると、修正液の粘度が高くなり、流動性が悪くなり、塗布性能が著しく低下する。
【0023】
好ましくは、インクを低粘度とすることで、より安定性の点から、前記重量平均分子量の異なる少なくとも2種類のアクリル系合成樹脂のうち、第1のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが10,000〜120,000が望ましく、第2のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが100,000〜220,000であって、かつ、第1のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークは、第2のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークより小さいことが望まく、例えば、第1のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが20,000、第2のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが200,000のもの、第1のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが30,000、第2のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが200,000のものが挙げられ、更に、アクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが相違する2種類、若しくは3種類以上の混合で更に好ましい塗膜強度が得られるものとなる。
【0024】
これらのアクリル系合成樹脂の含有量は、修正液組成物全量に対して、合計(固形分)で3〜20%、好ましくは、10〜18%とすることが望ましい。
このアクリル系合成樹脂の含有量が20%超過では、修正液の粘度が高くなり、塗布具での吐出が難しくなり、一方、3%未満では、十分な隠蔽性が得られなくなり、好ましくない。
また、重量平均分子量の異なる少なくとも2種類のアクリル系合成樹脂の配合比は、樹脂量の質量割合で1:1でいいが、より薄膜、乾燥性を考慮すると、低分子量となる樹脂(A)が多く、高分子量樹脂が少ない方が好ましい。しかし、あまり高分子量樹脂(B)が少ないと、塗膜の強度が低くなり、膜がもろくなってしまうものとなるので、(A):(B)の配合比が7:3〜8:2となる範囲が望ましい。
また、前記少なくとも2種類のアクリル系合成樹脂のガラス転移温度(Tg)は、修正液インク組成物において、配合した樹脂のTgが低い場合(0℃以下)では乾燥後の塗膜が、ベタベタと粘着性を帯び再筆記もできない。また、高過ぎるとパリパリとなって紙面からポロポロと剥がれてしまう。紙面の変形に対応した塗膜を形成する修正塗膜とすることができる点から、10〜30℃であることが好ましい。なお、本発明において、上記重量平均分子量(ピーク)は、GPCを用いた分子量分布測定で得られるものであり、ガラス転移温度(Tg)は、DSC測定により算出した。
【0025】
本発明に用いる有機溶剤は、適正な乾燥速度を有し、用いるアクリル系合成樹脂を溶解させるものであれば、特に限定されないが、好ましくは、水性インクや油性インク、PPCトナーや熱転写リボン等の色材成分を溶解・滲出させにくい有機溶剤が望ましい。
これらの特性を有する有機溶剤としては、例えば、シクロパラフィン系溶剤、パラフィン系溶剤、シクロペンタン系溶剤の単独或いは二種以上混合して使用することができる。
シクロパラフィン系溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられ、パラフィン系溶剤としては、例えば、n−ヘプタン、3−メチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン等が挙げられ、シクロペンタン系溶剤としては、例えば、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン等が挙げられる。
【0026】
これらの有機溶剤の含有量は、修正液組成物全量に対して、20〜70%、好ましくは、25〜35%とすることが望ましい。
この有機溶剤の含有量が70%を超えると、塗膜固化までの乾燥時間が長くなり、使用性の点で劣ることとなり、一方、20%未満では、塗布具での修正液組成物の吐出が少なくなったり、レベリング性の低下が起こりやすくなる。
【0027】
本発明の油性修正液組成物は、上記各成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、分散剤、沈降防止剤、重合防止剤、上記顔料粒子以外の着色剤などを適宜含有することができ、これらの上記各成分をボールミル、アトライター、サンドグラインダー等の撹拌分散機を使用して分散混合することによって得られる。
【0028】
このように構成される本発明の油性修正液組成物では、隠蔽性が高く、薄膜で、かつ、塗膜強度が高く、しかも、塗膜の乾燥も速く、ボールペン等での上書き筆記性、筆跡乾燥性に優れた油性修正液組成物が得られるものとなる。具体的に詳述すれば、上記物性のルチル型酸化チタンを用いることで、CPVC(臨界的顔料容積濃度)が従来の汎用の酸化チタンより低く、隠蔽力が高く、塗膜を薄膜化にすることができ、かつ、多孔質になり、塗膜乾燥を速くすることができ、しかも、重量平均分子量のピークが10,000以上220,000以下となり、この重量平均分子量のピークの異なる少なくとも2種類のアクリル系合成樹脂を併用することにより、低粘度化と共に、より乾燥性アップ(速乾性)と紙面への塗膜強度を更に増し、上書き筆記性が良好でボールペンで塗膜上に再筆記できるまでの時間がかかず、その筆跡乾燥性にも優れた油性修正液組成物が得られるものとなる。
【0029】
次に、実施例及び比較例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0030】
〔アクリル合成樹脂溶液(樹脂1〜3)の調製〕
温度計、撹拌混合機、加熱ジャケット、還流コンデンサ−などを装着した800mlの反応容器に、下記表1記載の配合割合で配合し、窒素ガス気流下において80℃で溶液重合を開始した。重合途中において反応中の樹脂をサンプリングし、重量平均分子量を確認しながら重合時間を調整することで、目的とする重量平均分子量(ピーク)を有した有効樹脂濃度(固形分)40%のアクリル系合成樹脂溶液A1〜A3を得た。
【0031】
【表1】

【0032】
〔油性修正液組成物(実施例1〜14及び比較例1〜15)の調製〕
上記表1で得たアクリル合成樹脂溶液(樹脂A1〜3)を用いて、下記表2及び表3に示した配合組成(樹脂A1〜3は固形分量)により、ボ−ルミルにて16時間混合分散または撹拌機付き圧力釜(オ−トクレ−ブ)にて加温混合分散をして、各油性修正液組成物(全量100質量%)を得た。
【0033】
得られた実施例及び比較例の各油性修正液組成物について、下記各評価方法により分散安定性、水生インク上書き乾燥性、塗膜強度、塗膜厚、塗膜乾燥性について評価を行った。
これらの結果を下記表2及び表3に示す。
【0034】
〔分散安定性の評価方法〕
マヨネーズ瓶に各修正液組成物を300ml入れ、50℃中に1ヶ月間静置保存した後、スパチュラにて再分散し、E型粘度計(トキメック社製、TVE−20H 50rpm)にて室温下(25℃)で粘度測定を行い、製造直後の初期粘度値と比較して下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:粘度変化なし(0〜10mPa・s未満)
△:僅かに上昇(10mPa・s以上〜20mPa・s未満)
×:著しい粘度上昇(20mPa・s以上)或いは凝集物がある
【0035】
〔水性インクの上書き乾燥性の評価方法〕
事務用修正液JIS S 6055−1988の5.試験方法(25℃、相対湿度65%下)に準じて、試験を行った。
JIS指定の筆記用紙(上質紙)に、隙間50μmのフィルムアプリケーターで修正液を塗布し、水性ボールペン「ユニボールUB−200黒」(三菱鉛筆社製)にて通常に筆記し、所定時間後、指による擦過により水性ボールペンの描線乾燥状態を確認し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:60秒後の擦過で、文字の判別ができ、且つ汚れが無い。
○:120秒後の擦過で、文字の判別ができ、且つ汚れが無い。
△:120秒後の擦過で、文字の判別ができるが、汚れる。
×:120秒後の擦過で、文字の判別ができず、汚れる。
【0036】
〔塗膜強度の評価方法〕
事務用修正液JIS S 6055−1988の5.試験方法(同上)に準じて、試験を行った。
JIS指定の上質紙に、隙間50μmのフィルムアプリケーターで修正液を塗布し、油性ボールペン「SA−S黒」(三菱鉛筆社製)にて螺旋を書き、修正塗膜の強度を確認し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:修正塗膜が削れず、紙面同様に筆記できる。
○:修正塗膜が僅かに削れるが、抵抗感なく筆記できる。
△:修正塗膜が僅かに削れたり、ペン先が沈み込んでしまうが、筆記は可能。
×:修正塗膜が崩れてしまい、筆記ができない。
【0037】
〔塗膜厚の評価方法〕
アプリケーターとしては気孔率85%、厚み1.5mmのスポンジを付けたもので塗布したものをマイクロメーターで厚みを測定した。
【0038】
〔塗膜乾燥性の評価方法〕
JIS規定の上質紙に液を気孔率85%、厚み1.5mmのスポンジのアプリケーターで塗布する。数十秒間隔に油性ボールペンSA−S(三菱鉛筆社製)にて螺旋状に筆記し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:40秒後の擦過で、文字の判別ができ、且つ汚れが無い。
○:60秒後の擦過で、文字の判別ができ、且つ汚れが無い。
△:90秒後の擦過で、文字の判別ができ、且つ汚れが無い。
×:120秒後の擦過で、文字の判別ができず、汚れる。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
上記表1〜表3の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜14は、本発明の範囲外となる比較例1〜15に較べて、分散安定性に優れ、薄膜にすることができ、塗膜乾燥性に優れ、水性インクの上書き乾燥性が良好、かつ塗膜強度の優れた油性修正液組成物ができ、水性インクの上書き乾燥性が30秒以内であることが判った。
比較例を個別的にみると、比較例1〜15は、白色材として、本発明の範囲から外れる比表面積30m/g未満のルチル型酸化チタンと、各種有機溶剤及び各種アクリル系合成樹脂等とを組み合わせた各例示であり、これらの場合には、目的の分散安定性、薄膜性、塗膜乾燥性、水性インクの上書き乾燥性及び塗膜強度を満足することができないことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0042】
ボールペン、サインペン、マーカーなどの筆記具やプリンター等で誤って文字を筆記、印刷した際に、その筆記文字、印刷箇所を修正するために好適な油性修正液組成物が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色材として、比表面積30m/g以上のルチル型酸化チタンと、顔料粒子を合計で30〜50質量%と、有機溶剤20〜70質量%と、重量平均分子量のピークが10,000以上220,000以下にあるアクリル系合成樹脂であって、重量平均分子量のピークの異なる少なくとも2種類のアクリル系合成樹脂を、合計の固形分で3〜20質量%とを含有することを特徴とする油性修正液組成物。
【請求項2】
前記アクリル系合成樹脂は、少なくとも、下記一般式(I)及び(II)で示されるモノマーを共重合して得られるアクリル系合成樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の油性修正液組成物。
【化1】

【化2】

【請求項3】
前記アクリル系合成樹脂が、一般式(I)で示されるモノマー93〜99.6重量%を重合して得られるアクリル系合成樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の油性修正液組成物。
【請求項4】
前記重量平均分子量の異なる2種類のアクリル系合成樹脂のうち、第1のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが10,000〜120,000であり、第2のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークが100,000〜220,000であって、かつ、第1のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークは、第2のアクリル系合成樹脂の重量平均分子量のピークより小さいことを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の油性修正液組成物。
【請求項5】
前記2種類のアクリル系合成樹脂のガラス転移温度が、10〜30℃であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の油性修正液組成物。

【公開番号】特開2012−36250(P2012−36250A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175452(P2010−175452)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】