説明

油水分離装置

【課題】油及び水の混合液を油と水とに効率よく分離できる油水分離装置を提供する。
【解決手段】 本発明に係る油水分離装置は、第1槽と、第1槽に油及び水の混合液を供給する供給管と、液を溢流させる堰を有し、かつ、第1槽の下部と連通する第2槽と、第2槽の堰から溢流する液を貯留する第3槽と、第1槽の液面に浮上した油を回収する油受器と、油受器により回収された油が供給される第4槽と、を備え、供給管は、第1槽内において、第2槽の堰の高さよりも低い位置に開口している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油及び水の混合液を油と水とに分離する油水分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、油及び水の混合液を油と水とに分離する油水分離装置として、油と水との比重差を利用して分離するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の油水分離装置では、液面より上から混合液を槽内に供給し、供給された混合液を油と水との比重差を利用して分離している。
【0003】
【特許文献1】特開2003−144804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の油水分離装置では、液面より上から混合液を槽内に供給している。液面より上から供給される混合液は、液面に流入する際に極めてよく混合・撹拌されることとなる。このように、油及び水の混合液が混合・撹拌された場合、液がエマルジョン化することがある。エマルジョン化した混合液は、油と水とを分離しにくい状態となる。したがって、上述の油水分離装置では、混合液をエマルジョン化してしまうため、効率よく油と水とに分離することができないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、油及び水の混合液を油と水とに効率よく分離できる油水分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る油水分離装置は、第1槽と、第1槽に油及び水の混合液を供給する供給管と、液を溢流させる堰を有し、かつ、第1槽の下部と連通する第2槽と、第2槽の堰から溢流する液を貯留する第3槽と、第1槽内に設けられ、第1槽の液面に浮上した油を回収する油受器と、油受器により回収された油が供給される第4槽と、を備え、供給管は、第1槽内において、第2槽の堰の高さよりも低い位置に開口している。
【0007】
本発明に係る油水分離装置では、供給管が第2槽の堰の高さよりも低い位置に開口しているため、混合液は第1槽の液中に供給されることとなる。液中に供給される混合液は、液の外から供給される場合と比べて、ほとんど撹拌されない。そして、この第1槽では、比重の小さい油が上方へ浮上し、比重の大きい水は下方へ沈み、油水分離が効率よく行われる。第1槽の下方へ沈む水は、第1槽の下部を通じて第2槽に流れていく。第2槽に流れた水は、第2槽の堰から溢流して第3槽に貯留されることとなる。一方、第1槽の上方へ浮上して分離された油は、混合液の表面に達して油膜を形成し、油受器によって回収される。油受器によって回収された油は、第4槽に供給されることとなる。このようにして、本発明に係る油水分離装置は、混合液をほとんど撹拌することなく分離を行うため、油と水とを効率よく分離することができる。
【0008】
また、供給口は、第2槽の堰の高さよりも第1槽の底部により近い高さに開口していることが好ましい。例えば、供給口が第2槽の堰の高さに近い高さに開口している場合、混合液は第1槽の液面近くに供給されることとなる。この場合、供給口から供給される混合液の流れによって、第1槽の液面に形成される油膜が乱され、分離した油と水とが混合する可能性がある。そこで、供給口を第2槽の堰の高さよりも第1槽の底部により近い高さに開口させることで、第1槽の液面に形成される油膜を乱すことなく、第1槽に混合液を供給することができる。
【0009】
また、第3槽内の液を外部に排出する第3槽排出口と、第3槽内に設けられ、第3槽排出口に流入する液をろ過する第3槽ストレーナと、第3槽ストレーナに洗浄液を噴射する第3槽ストレーナ洗浄ノズルと、第4槽内の液を外部に排出する第4槽排出口と、第4槽内に設けられ、第4槽排出口に流入する液をろ過する第4槽ストレーナと、第4槽ストレーナに洗浄液を噴射する第4槽ストレーナ洗浄ノズルと、を更に備えることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第3槽に供給される液や第4槽に供給される油に異物が含まれていたとしても、ストレーナによってそれぞれろ過されるため、異物により排出口が詰まることを抑制することができる。また、ろ過によってストレーナに異物が付着しても、ストレーナ洗浄ノズルから噴射される洗浄液により付着した異物を除去することができるため、ストレーナの目詰まり防止を図ることができる。
【0011】
また、油受器は、樋状部材であり、樋状部材の軸周りに回動可能に支持されることが好ましい。この油受器によれば、油受器を軸周りに回動させて第1槽の液面に浮上した油を効率よく回収することができる。
【0012】
また、第1槽、第2槽、第3槽及び第4槽内のガスを吸引するエジェクタを更に備えることが好ましい。このようなエジェクタを備えることにより、槽内部に高温の水蒸気や可燃性ガス等が充満することを抑制できる。このため、点検等で槽を開放する場合に、充満した高温の水蒸気や可燃性ガス、有臭ガス等が外部へ噴出することがなく、油水分離装置の安全性の向上を図ることができる。
【0013】
また、第1槽内に邪魔板が設けられることが好ましい。この邪魔板によって、混合液が第1槽内を滞留する時間が長くなる。その結果、第1槽において液から油が十分に分離しないまま、第2槽へ流れてしまうことを抑制することとなる。したがって、油水分離装置は、第1槽における油と水との分離をより確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、油及び水の混合液を油と水とに効率よく分離できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る油水分離装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1、図2及び図3に示すように、本発明に係る油水分離装置は、油及び水の混合液を水と油とに分離するための油水分離槽1を備えている。この油水分離槽1の内部は、隔壁等により、4つの槽に区画されている。第1の槽として、油と水との比重差を利用して油と水とを分離する重力分離を行う重力分離槽Aが形成されている。この重力分離とは、比重の小さい油が槽の上部へと浮上し、比重の大きい水が槽の下部へと沈むことにより行われる油と水との分離方法である。この重力分離槽Aには、混合液を供給する供給管2が設けられている。
【0017】
また、第2の槽として、重力分離槽Aと隔壁3aを介して隣接し、重力分離槽Aの下部と連通している連通槽Bが形成されている。この連通槽Bには、重力分離槽Aの下部を介して重力分離後の液が流れ込む。連通槽Bは、流れ込んだ液を溢流させる堰4を有しており、重力分離は、この堰4から液が溢流した状態で行われる。このため、重力分離時において、この堰4の高さが重力分離槽A及び連通槽Bにおける液面の高さhとなる。
【0018】
そして、第3の槽として、連通槽Bと堰4を介して隣接し、連通槽Bの堰4から溢流した液を貯留する液槽Cが形成されている。この液槽Cには、液を排出するための液排出口(第3槽排出口)5が設けられている。この液排出口5を通じて、重力分離後の液が排出されることとなる。
【0019】
また、第4の槽として、重力分離槽Aと隔壁3bを介して隣接し、重力分離槽Aで重力分離された油を貯留する油槽Dが形成されている。この油槽Dには、油を排出するための油排出口(第4槽排出口)6が設けられている。この油排出口6を通じて、重力分離後の油が排出されることとなる。
【0020】
図2に示すように、重力分離槽Aに設けられた供給管2は、連通槽Bの堰4の高さよりも低い位置に開口している。このため、供給管2は、重力分離の際の液面の高さhよりも低い位置に開口していることとなる。その結果、混合液は、供給管2を介して液中に供給されることとなる。また、供給管2は、連通槽Bの堰4の高さよりも重力分離槽Aの底部により近い高さに開口している。このため、混合液は、液面から離れた位置に供給されるので、混合液の流れで液面が撹拌されにくくなる。特に、供給管2が下方を向いて開口しているとこの効果が高い。
【0021】
また、重力分離槽A内には、液の流れを妨げるための邪魔板7が設けられている。この邪魔板7は、供給管2と隔壁3aとの間に設けられており、重力分離槽Aの底部に対して50〜70度の角度をなすようにその上部が供給管2側に傾いている。この邪魔板7によって、供給管2により液中に供給された混合液は、その流れを妨げられることとなる。この邪魔板7によって流れを妨げられた混合液は、重力分離槽A内を滞留する時間が長くなる。その結果、重力分離槽Aにおいて、重力分離が十分に行われないまま、液が連通槽Bに流れてしまうことを抑制することができる。したがって、邪魔板7を設けることにより、重力分離槽Aにおける重力分離をより確実に行うことができる。
【0022】
このように重力分離槽A内を滞留する混合液では、比重の小さい油が槽の上部へと浮上し、比重の大きい水が槽の下部へと沈む重力分離が行われることとなる。そして、この重力分離によって槽の下部へと沈む水は、重力分離槽Aの下部と連通する連通槽Bに流れていくこととなる。その後、この連通槽Bに流れ込む水は、堰4から溢流して液槽Cに貯留される。
【0023】
図1、図2及び図3に示すように、液槽Cには、貯留する液を排出するための液排出口5が設けられていると共に、この液排出口側と堰側とに液槽C内を区画する液槽ストレーナ(第3槽ストレーナ)8が設けられている。液排出口5は、下方を向いて開口している。また、液槽ストレーナ8は、多孔性又は網状の仕切板であり、連通槽Bの堰4から溢流した液に含まれる異物を取り除いた上で、液排出口5に液を流入させるものである。液槽ストレーナ8としては、例えば、40メッシュの網目を有する板部材等を使用できる。
【0024】
この液槽ストレーナ8によって区画された液排出口側には、液槽ストレーナ8に対して洗浄液を噴射して液槽ストレーナ8を洗浄するための液槽ストレーナ洗浄器9が備えられている。
【0025】
図3、図5(a)に示すように、液槽ストレーナ洗浄器9は、上下方向に延在する主管9dと、この主管9dの周面上に複数設けられた洗浄液を噴射するノズル(第3槽ストレーナ洗浄ノズル)9a、9b、9cと、を有している。図3に示すように、主管9dには、洗浄液を主管9dに供給する洗浄液供給管10が接続されており、洗浄液供給管10には、洗浄液バルブ10a、10b、10cが設けられている。
【0026】
図5(a)に示すように、主管9dに設けられたノズル9a、9b、9cは、主管9dの延在方向に所定の間隔を持って配置されている。また、図5(a)及び図5(b)に示すように、ノズル部9a、9b、9cは、主管9dの周方向において、それぞれ異なる方向に洗浄液を噴射するように配置されている。例えば、ノズル9aとノズル9bとは、ノズル部9cを中心に、それぞれ20度間隔で左右異なる方向に向いている。また、ノズル9cは、液槽ストレーナ8に対してほぼ垂直に洗浄液を噴射するように配置されている。このように構成された液槽ストレーナ洗浄器9によれば、液槽ストレーナ8に対し洗浄液を広範囲に効果的に噴射することができ、液槽ストレーナ8の目詰まり防止を図ることができる。特に、液排出口側、すなわち、液の下流側から洗浄液を噴射するので、洗浄効果がより高くなる。洗浄液としては、水が挙げられ、洗浄は例えば、間歇的に行えばよい。
【0027】
また、図2及び図4に示すように、液槽C内において、液槽ストレーナ8によって区画された液排出口側には、液槽Cに貯留された液の液面高さを検出する液槽液面計11が備えられている。この液槽液面計11は、液槽Cの液面高さを高い順にHIHI、HI、LOWの3段階で検出する。また、この液槽液面計11は、油水分離槽1の上部に備えられたパトライト12と電気的に接続されており、このパトライト12は、液槽液面計10が液槽Cの液面高さはHIHI段階であると検出した場合に、赤色発光することにより油水分離槽1の周囲の人間に注意喚起を行う。また、パトライト12及び液槽液面計11としては、可燃性ガスや引火性の液体が存在する雰囲気下でも安全に使用できる防爆型のものが用いられる。
【0028】
一方、重力分離槽Aにおいて、重力分離によって槽の上部へと浮上する油は、重力分離槽Aの液面に到達することとなる。この液面に浮上した油は、重力分離槽A内において、液面高さhに設けられた油受器13によって回収される。
【0029】
図6に示すように、重力分離槽Aに設けられた油受器13は、樋状の部材であり、より具体的には、円筒に軸Xに沿って延びる開口部13aが形成されたものである。また、この油受器13の一端には、側方開口部13bが設けられ、他端は閉じられている。そして、この油受器13は、重力分離槽Aと油槽Dとを隔てる隔壁3bにはめ込まれた軸受け14と、重力分離槽Aの側面に取り付けられた軸受け15とによって重力分離槽Aと油槽Dとに渡って延びるように支持されていると共に、軸周りに回動可能となっている。
【0030】
また、油受器13は、図2に示すように、これらの軸受け14、15によって軸Xの高さがほぼ液面高さhとなるように支持されている。そして、図1に示すように、側方開口部13bを有する油受器13の一端は、軸受け14を有する隔壁3bを介して、油槽D内に突出している。
【0031】
また、この油受器13には、図6に示すように、上方に延びる棒状のレバー16が取り付けられており、このレバー16を操作することにより、樋状の油受器13を回動させて開口部13aの縁の高さを変えることができる。これにより、開口部13aの縁の高さを水面hよりも下げて液面の油を油受器13内に流入させ、重力分離層Aから油を選択的に回収することができ、また、水面に油が少ない場合には、開口部13aの縁の高さを水面hよりも上げて水が油受器13内に流入しないようにすることができる。このようにして油受器13によって回収された油は、側方開口部13bを通じて油槽Dに供給されることとなる。このような構成により、油受器13は、液面の油を回収して油を効率よく回収することができる。
【0032】
図3に示すように、油受器13に回収された油が供給される油槽Dには、供給される油を排出するための油排出口6が設けられていると共に、この油排出口側と油受器13の開口部側とに油槽D内を区画する油槽ストレーナ(第4槽ストレーナ)17が設けられている。油排出口6は、好ましくは下方に向いて開口している。
【0033】
この油槽ストレーナ17は、液槽ストレーナ17と同様のものであり、例えば、40メッシュの網目を有する板部材から成り、油受器13から供給される油に含まれる異物を取り除いた上で、油排出口6に油を流入させるものである。そして、油槽ストレーナ17によって区画された油排出口側には、洗浄液を供給して油槽ストレーナ18を洗浄する油槽ストレーナ洗浄器18と、油層Dに供給された油の液面高さを検出する油槽液面計19とが備えられている。
【0034】
この油槽ストレーナ洗浄器18は、図3、図5(a)及び図5(b)に示すように、主管18d、及び、ノズル(第4槽ストレーナ洗浄ノズル)18a、18b、18cを備え、主管18dにはバルブ10cを介して洗浄液を供給する洗浄液供給管10が配管されており、液槽Cに設けられた液槽ストレーナ洗浄器9と同じ構造及び機能を有している。また、油槽液面計19は、パトライト12と電気的に接続されており、液層Cに備えられた液槽液面計11と同じ構造及び機能を有している。洗浄液としては、油が挙げられ、洗浄は例えば、間歇的に行えばよい。
【0035】
図1及び図4に示すように、油水分離槽1は、重力分離槽A、連通槽B、液槽C及び油槽Dを覆って、各槽を密閉するための天井部1aを備えている。この天井部1aには、槽内部を点検するための点検窓20、21、22、23が設けられている。例えば、図4に示す点検窓23は、液槽C内の液槽ストレーナ8、液槽ストレーナ洗浄器9、液槽液面計11などの点検に用いられる。これらの点検窓20、21、22、23は、点検時以外は、図示しない蓋によって閉じられている。
【0036】
また、図4に示すように、油水分離槽1には、天井部1aに登るための昇降用ラダー24と、転落防止柵25とが設けられている。この昇降用ラダー24と天井部1aから転落することを防止するための転落防止柵25とを設けることで、天井部1aにおける作業の安全性を高めることができる。
【0037】
図1に示すように、油水分離槽1の側面には、重力分離槽Aと液槽Dとを連通する掃除用連絡管26が設けられている。この掃除用連絡管26には、掃除用連絡管バルブ28が設けられており、この掃除用連絡管バルブ27が開かれることで、重力分離槽A及び連通槽Bの液が掃除用連絡管26を介して液槽Cに流れ込む。液槽Cに流れ込んだ液は、液排出口5より排出される。このようにして、重力分離槽A及び連通槽Bの液を排出することで、重力分離槽A及び連通槽B内の掃除や点検を適切に行うことができる。
【0038】
図2に示すように、油水分離槽1の天井部1aには、油水分離槽1内に閉じ込められたガスを吸引するための吸引口28が備えられている。この吸引口28は、ベンチュリ機構により負圧を発生させるエジェクタ29と連通している。このエジェクタ29は、エジェクタ用エアー源30から圧縮空気を供給されており、このエジェクタ用エアー源30とエジェクタ29との間には、圧縮空気の流量を調整するエジェクタ用バルブ31が設けられている。エジェクタ29は、エジェクタ用エアー源30から供給された圧縮空気により負圧を発生させて油水分離槽1内のガスを吸引する。
【0039】
このエジェクタ29によって吸引されたガスは、脱臭槽32に送られる。そして、脱臭槽32において脱臭処理が行われた後、大気へ開放されることとなる。例えば、脱臭槽32における充填材として、ZnO等を用いることにより硫化水素を除去でき、また、活性炭等を用いることにより種々の有臭ガスを除去できる。このようなエジェクタ29によれば、油水分離槽1内に、高温の水蒸気や可燃性ガス、有臭ガス等が充満することを抑制することができる。その結果、点検等で槽を開放する場合に、充満した高温の水蒸気や可燃性ガス、有臭ガス等が外部へ噴出することがなく、槽開放時の安全性の向上を図ることができる。
【0040】
次に、液槽Cの液と油槽Dの油とをそれぞれ排出するための排出管構造について説明する。
【0041】
図1及び図7に示すように、液槽Cに設けられた液排出口5には、液を排出するための液排出管40が接続されている。また、油槽Dに設けられた油排出口6には、油を排出するための油排出管50が接続されている。
【0042】
この液排出管40及び油排出管50には、図7に示すように、液及び油を外部に排出するためのドレンバルブ41、51と、液及び油の流れを制御するための排出バルブ42、43、52、53とがそれぞれ設けられている。これらのドレンバルブ41、51及び排出バルブ42、43、52、53は、排出管内の掃除や点検の際などに開閉して用いられる。また、液排出管40及び油排出管50には、液及び油の逆流を防ぐための逆止弁44、54が設けられている。
【0043】
さらに、この液排出管40及び油排出管50には、圧縮空気により稼動するレシプロポンプ45、55が設けられている。このレシプロポンプ45、55は、排出管用エアー源60から圧縮空気を供給されており、この排出管用エアー源60とレシプロポンプ45、55との間には、圧縮空気の流量を調整する電磁弁61、62が設けられている。
【0044】
このレシプロポンプ45、55は、排出管用エアー源60から供給される圧縮空気の圧力により、それぞれ液排出管40の液及び油排出管50の油を排出方向へ送っている。また、液排出管40及び油排出管50におけるレシプロポンプ45、55の両側には、フランジ及びホースから成るホース部46、47、56、57がそれぞれ設けられている。
【0045】
レシプロポンプ45、55の吐出側の圧力は、圧力計48、58によってそれぞれ確認される。また、レシプロポンプ45、55の吐出側の圧力に異常がある場合に、液を圧力逃がし用配管49、59に流出させるため、液排出管40には、図1及び図7に示すように、バルブ49a、安全弁49b、バルブ49cを有する圧力逃がし用配管49が接続され、油排出管50には、バルブ59a、安全弁59b、バルブ59cを有する圧力逃がし用配管59が接続されている。
【0046】
図1に示すように、圧力逃がし用配管49、59の他端は、それぞれ掃除用連絡管26の重力分離槽側に配管されている。本装置の稼動時には通常、バルブ49a、49c、59a,59cは開放されており、重力分離槽Aと液排出管40又は油排出管50とが安全弁49a,59bを介して連通する。その結果、液排出管40の液又は油排出管50の油の圧力が所定の設定圧力を超えると、液や油が安全弁49b、59bを介して掃除用連絡管26に流れ、圧力異常による配管40、50やレシプロポンプ45、55の破損等を避けることができる。
【0047】
前述した構成の油水分離装置によれば、油及び水の混合液が滞留する重力分離槽A内において、比重の小さい油が上方へ浮上し、比重の大きい水は下方へ沈む重力分離が行われる。重力分離槽Aの下方へ沈む水は、重力分離槽Aの下部と連通している連通槽Bに流れていく。連通槽Bに流れた水は、連通槽Bの堰4から溢流して液槽Cに貯留されることとなる。一方、重力分離槽Aの上方へ浮上して分離された油は、混合液の表面に達して油膜を形成し、油受器13によって回収される。油受器13によって回収された油は、側面開口部13bを通じて油槽Dに供給されることとなる。このようにして、本実施形態に係る油水分離装置は、混合液をほとんど混合・撹拌することなく分離することができる。
【0048】
そして、本実施形態に係る油水分離装置では、供給管2が、重力分離槽Bの堰4の高さよりも低い位置に開口しているので、混合液が供給管2を介して重力分離槽Aの液中に供給される。このため、重力分離槽Aに供給される際に、混合液はほとんど混合・撹拌されない。その結果、混合・撹拌された混合液がエマルジョン化して、油と水とが分離しにくい状態になることを避けることができる。また、この混合液は、重力分離槽Aの液面から離れた底部に近い高さの供給管2から供給される。このため、供給される混合液の流れによって、液面に浮上した油を混合・撹拌してしまうことを抑制することができる。したがって、本実施形態に係る油水分離装置は、混合液をほとんど混合・撹拌することなく、供給及び分離を行うことができる。このため、本実施形態に係る油水分離装置は、混合液のエマルジョン化を招くことなく、油と水とを効率よく分離することができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る油水分離装置では、レシプロポンプ45、55の駆動に圧縮空気を用いており、液槽液面計11等の電気設備は全て防爆型のものを使用している。このため、本実施形態に係る油水分離装置は、例えば、原油蒸留装置やガソリン脱硫装置のように、ガソリンなどの引火性の高い液体を扱う装置に対して接続されている場合や、直接接続されていなくても可燃性のガス等が発生するおそれのある装置と隣接している場合においても、発火の可能性が少なく、安全に運転を行うことができる。
【0050】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、油水分離装置1内を区画して、重力分離槽A、連通槽B、液槽C、油槽Dを形成していたが、それぞれを独立して設けてもよい。
【0051】
また、油受器13は、図5に示すような樋状ではなく、皿状や箱状であってもよい。また、油受器13が回動することなく、例えば上下に移動可能なものであってもよく固定されていても実施は可能である。
【0052】
また、邪魔板7は、板状ではなく、棒状や箱状であってもよく、単体で設けても、複数設けてもよい。また、邪魔板7が無くても実施は可能である。
【0053】
また、エジェクタ29やレシプロポンプ45、55の動力源として、エアー源から供給されるエアーを用いているが、このエアー源は、工場に配設されるエアーヘッダーであっても、移動式のエアーコンプレッサであってもよい。また、機器の仕様によっては、動力源としてエアーではなく、通常の固定電源や移動式の発電装置から供給される電力を用いることもできる。この場合において、機器本体や動力源との接続配線などは全て防爆型のものが用いられることとなる。したがって、様々なユーティリティに対応することが可能である。
【実施例1】
【0054】
図1〜図3に示すような油水分離装置であって、油水分離槽1の高さが2000mm、幅が2500mm、長さが5000mmである油水分離装置を用いて、灯油又は軽油と水との混合液に対して油水分離を行った。表1は、実施例の条件及び結果を示している。
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すように、油水分離装置に供給する混合液の流量は5t/hとした。また、混合液及び分離後の液に含まれる油の量は、ヘキサン抽出物質(単位はmg/l)で表した。
【0057】
(実施例1)
灯油が1530mg/l含まれる混合液に対して油水分離を行った。その結果、分離後の液に含まれる灯油は、2mg/lであった。灯油と水との分離率として、99.9%を得ることができた。
【0058】
(実施例2)
軽油が110000mg/l含まれる混合液に対して油水分離を行った。その結果、分離後の液に含まれる灯油は、184mg/lであった。軽油と水との分離率として、99.8%を得ることができた。
【0059】
(実施例3)
軽油が185000mg/l含まれる混合液に対して油水分離を行った。その結果、分離後の液に含まれる灯油は、1400mg/lであった。軽油と水との分離率として、99.2%を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る油水分離装置を示す平面図である。
【図2】図1のI−I断面図である。
【図3】図1のII−II断面図である。
【図4】本発明に係る油水分離装置を示す斜視図である。
【図5】(a)液槽に設けられた液槽ストレーナ洗浄器を示す正面図である。(b)図5(a)液槽に設けられた液槽ストレーナ洗浄器の拡大断面図である。
【図6】重力分離槽に設けられた油受器を示す斜視図である。
【図7】油水分離装置の排出管構造を示す配管図である。
【符号の説明】
【0061】
1…油水分離槽、2…供給管、4…堰、5…液排出口(第3槽排出口)、6…油排出口(第3槽排出口)、7…邪魔板、8…液槽ストレーナ(第3槽ストレーナ)、9…液槽ストレーナ洗浄器、9a、9b、9c…ノズル(第3槽ストレーナ洗浄ノズル)、13…油受器、17…油槽ストレーナ(第4槽ストレーナ)、18…油槽ストレーナ洗浄器、18a,18b,18c…ノズル(第4槽ストレーナ洗浄ノズル)、29…エジェクタ、A…重力分離槽(第1槽)、B…連通槽(第2槽)、C…液槽(第3槽)、D…油槽(第4槽)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1槽と、
前記第1槽に油及び水の混合液を供給する供給管と、
液を溢流させる堰を有し、かつ、前記第1槽の下部と連通する第2槽と、
前記第2槽の堰から溢流する液を貯留する第3槽と、
前記第1槽内に設けられ、前記第1槽の液面に浮上した油を回収する油受器と、
前記油受器により回収された油が供給される第4槽と、を備え、
前記供給管は、前記第1槽内において、前記第2槽の堰の高さよりも低い位置に開口している油水分離装置。
【請求項2】
前記供給口は、前記第2槽の堰の高さよりも前記第1槽の底部により近い高さに開口している請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項3】
前記第3槽内の液を外部に排出する第3槽排出口と、
前記第3槽内に設けられ、前記第3槽排出口に流入する液をろ過する第3槽ストレーナと、
前記第3槽ストレーナに洗浄液を噴射する第3槽ストレーナ洗浄ノズルと、
前記第4槽内の液を外部に排出する第4槽排出口と、
前記第4槽内に設けられ、前記第4槽排出口に流入する液をろ過する第4槽ストレーナと、
前記第4槽ストレーナに洗浄液を噴射する第4槽ストレーナ洗浄ノズルと、
を更に備える請求項1又は2に記載の油水分離装置。
【請求項4】
前記油受器は、樋状部材であり、前記樋状部材の軸周りに回動可能に支持された請求項1〜3に記載の油水分離装置。
【請求項5】
前記第1槽、第2槽、第3槽及び第4槽内のガスを吸引するエジェクタを更に備える請求項1〜4に記載の油水分離装置。
【請求項6】
前記第1槽内に邪魔板が設けられた請求項1〜5に記載の油水分離装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−131810(P2009−131810A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311379(P2007−311379)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000231707)新日本石油精製株式会社 (33)
【Fターム(参考)】