説明

油水分離装置

【課題】回収した気泡をできる限り早く消滅させ、油分を迅速に回収できるようにする。
【解決手段】 処理槽内に貯留した被処理液中に気泡を発生させることにより、前記被処理液に含まれる油分を前記気泡とともに浮上させ、その気泡を回収することにより前記被処理液から油分を分離させる油水分離装置において、前記気泡を、回収タンク内に設けたフィルタに衝突させることにより消泡させ、その消泡により、前記気泡内の気体は前記フィルタの透孔を通過して排気手段によって回収タンク外に排気され、前記気泡を形成していた液体は、前記フィルタの下方に落下して回収タンクの底部から回収されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この本発明は、被処理液に含まれる油分を、気泡とともに浮上させて分離する油水分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドレン水等の油分を含む被処理液の中から油分を取り除く技術としては、浮上分離法による油水分離装置がある。
【0003】
この種の油水分離装置では、油分を含む被処理液を処理槽内に貯留し、その処理槽内などにおいて、例えば、空気などの気体を供給することによって、その被処理液内に気泡を生じさせている。
被処理液中に含まれる油分は気泡に付着し、その気泡が液面上に浮上することにより、被処理液から油分を分離することができる(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−16885号公報
【特許文献2】特開2006−51484号公報
【特許文献3】特開2007−144353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記油水分離装置では、気泡がなかなか消滅しないという問題がある。特に、一般的な工業油には界面活性剤等が含まれるため、このような工業油が付着した気泡は、さらに消滅しにくい傾向がある。
【0006】
気泡が消滅しないと容積が大きくなるので、気泡は回収後、できる限り早く消滅することが望ましい。
【0007】
そこで、この発明は、回収した気泡をできる限り早く消滅させ、油分を迅速に回収できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明は、処理槽内に貯留した被処理液中に気泡を発生させることにより、前記被処理液に含まれる油分を前記気泡とともに浮上させ、その気泡を回収することにより前記被処理液から油分を分離させる油水分離装置において、前記気泡を多数の透孔を有するフィルタに衝突させることにより消泡させ、その消泡により、前記気泡内の気体は前記透孔を通過して排気され、前記気泡を形成していた液体は、前記フィルタの下方に落下して回収される構成を採用した。
【0009】
気泡がフィルタに衝突すれば消泡が促進され、気泡の消滅が迅速になる。このため、油分を迅速に回収できる。
また、その消泡によって生じる気体が透孔を通過して排気され、また液体がフィルタから落下することにより、回収による次なる気泡が衝突した際の消泡を阻害しない。
【0010】
また、前記フィルタは回収タンク内に設けられ、前記液体は前記回収タンクの底部から回収されるようになっており、前記回収タンクに、前記透孔を通過した気体を前記回収タンク外へ排出する機能を有する排気手段を設けた構成を採用することができる。
【0011】
消泡によって生じる気体は、自然に空気中に排出(放出)されるようにしてもよいが、特に、フィルタを回収タンク内に収納した際には、排気手段を用いて、気体を強制的に回収タンク外に排出させることが望ましい。
【0012】
さらに、前記排気手段による気体の排出により、前記フィルタを夾んで前記通過方向への気流を発生させる構成とすれば、その気流により、気泡のフィルタへの衝突を促進することができる。
【0013】
また、前記フィルタは筒状を成し、前記気体は前記透孔を前記フィルタの外側から内側へ通過するようになっており、前記排気手段は、前記フィルタの筒軸方向一端を介して前記フィルタ内の空間に通じる流路に設けられる構成を採用することができる。
【0014】
フィルタが筒状で、前記排気手段を、そのフィルタの筒軸方向一端に通じる流路に設けたことにより、フィルタの周面全周からフィルタ内に入り込んだ気体を一斉に排気できる。
なお、前記筒状のフィルタは、その筒軸周りに回転するようにすれば、フィルタの周面全周に亘って効率的な消泡が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、回収した気泡をフィルタに衝突させることにより消泡させ、気体はフィルタの透孔を通過して排気され、液体はフィルタの下方に落下して回収されるようにしたので、気泡の消滅、油分の回収を迅速にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、この実施形態の油水分離装置の構成図である。
【0017】
被処理液である油水(少なくとも油と水とを含む混合物)は、図中矢印aで示すように、油水原液槽1内に投入される。その被処理液が、ポンプ2によって、配管3を通じて処理槽10に送られる。
【0018】
配管3の途中にはマイクロバブル発生装置4が設けられているので、図中の矢印4aで示すように、被処理液が処理槽10に投入される際に空気が送り込まれ、その被処理液中に多数の気泡が発生するようになっている。
【0019】
処理槽10内において、気泡は図中の第一処理槽11内を上昇し、被処理液の液面近くに浮上する。その間、被処理液中に含まれる油分は気泡に付着し、被処理液中から油分が取り除かれていく。浮上した気泡は、第一処理槽11の液面上に浮上した後、泡回収装置5によって回収される。
【0020】
泡回収装置5は、前記被処理液の液面に臨む泡回収フード6と、その泡回収フードから回収タンク20に通じる配管7とを備えている。
吸引等の手段によって、被処理液の液面近く、あるいは液面上に分布する気泡が、泡回収フード6、配管7を通じて回収タンク20内に送り込まれる。
【0021】
その第一処理槽11の下方には、図中右側の第二処理槽13に通じる連通部16が設けられている。連通部16は、前記第一処理槽11の底部から引き出されて上方へ伸び、第二処理槽13の傾斜樋12に通じている。
【0022】
第一処理槽11で多くの油分が取り除かれた被処理液は、図中矢印b1,b2のように導かれて傾斜樋12の上流側に流入する。被処理液は、傾斜樋12上を下流側に向かって流下し、矢印b3のように第二処理槽13に投入される。その傾斜樋12において、図中の矢印4bで示すように、マイクロバブル発生装置4から空気を含む被処理液が供給され、その傾斜樋12を流下中の被処理液中に多数の気泡が発生するようになっている。
この気泡は、被処理液が前記傾斜樋12を流下する途中に、前記泡回収装置5によって回収されるので、第一処理槽11において除去できなかった油分も、ここで除去できるようになっている。
【0023】
第二処理槽13内に貯留された被処理液は、ポンプ14、配管15を通じて矢印cで示すように回収されていく。
【0024】
回収タンク20内の詳細を図2に示す。気泡は、図中に矢印Aで示すように、回収タンク20内に進入し、その回収タンク20内に設けられた円筒状のフィルタ21に衝突するようになっている。配管7は、前記気泡が、フィルタ21に設けられた多数の透孔に対して効率的に衝突するように、回収タンク20の適宜の位置に開口する。
【0025】
なお、この実施形態では、フィルタ21の透孔は、そのフィルタ21の周面全体に設けられていることを想定しているが、フィルタ21の透孔は、周面だけに限定されず、例えば、底部(筒軸方向他端)を閉じる端壁にも透孔を設けても良い。
【0026】
また、そのフィルタ21の上部(筒軸方向一端)には、排気手段22が設けられている。排気手段22は、インバータ制御によって動作するモータMによって送風ファン22aが回転するようになっている。排気手段22は、回収タンク20の蓋20aに取付けられている。
【0027】
送風ファン22aが回転すると、フィルタ21内の気体は、フィルタ21の筒軸方向一端の開口21aから流路22bを通じて、矢印Cで示すように、回収タンク20外に排出される。
【0028】
この実施形態では、回収タンク20の蓋20aが、フィルタ21の筒軸方向一端を閉じるようになっており、その蓋20aに設けた排気用の流路22bが、開口21aを介してフィルタ21内の空間に連通している。
【0029】
気体の排出によって、フィルタ21の透孔を通過する矢印B方向の気流が発生するので、気泡がフィルタ21の透孔に衝突するのが促進される。このため、消泡が促進される。また、その消泡によって気泡内から発生した気体は、前記排気手段22によって、矢印B,C方向に排出される。
【0030】
また、その消泡によって生じる液体は、フィルタ21から落下して、回収タンク20の底部に貯留するようになっている。液体が随時落下することにより、次なる気泡がフィルタ21に衝突した際の消泡を阻害しない。
【0031】
回収タンク20の底部に貯留した液体は、レベルゲージ25によってレベルコントロールされたポンプ26によって、所定の液面に達すれば自動的にポンプ26が作動して配管23を通じて矢印dで示すように、高濃度油水タンク24に回収されていく。
【0032】
図3に、他の実施形態の排気手段22を示す。この実施形態は、前述の実施形態のモータM及び送風ファン22aを備えた排気手段22に代えて、インバータ制御によって動作するブロアNを備えた排気手段22を採用したものである。
【0033】
ブロアNが作動すると、フィルタ21内の気体は、フィルタ21の筒軸方向一端の開口21aから流路22bを通じて、矢印Cで示すように、回収タンク20外に排出される。
【0034】
この実施形態では、回収タンク20の蓋20aが、フィルタ21の筒軸方向一端を閉じるようになっており、その蓋20aに設けた開口21aから排気用の流路22bが引き出されている。他の構成は、前述の実施形態と同様である。
【0035】
なお、回収タンク20内に設けられるフィルタ21の形状は、この実施形態の円筒状に限定されず、例えば、角筒状、箱状、球状、板状など任意の形状としてよい。
【0036】
特に、フィルタ21を開放空間ではなく、前記回収タンク20のような閉鎖空間に設ける場合においては、消泡によって生じた気体を回収タンク20外に排出するための前記排気手段22の作用によって、気泡のフィルタ21(フィルタ21の透孔を設けた部分)への衝突が促進されるような配置とすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】一実施形態の油水分離装置の構成図
【図2】同実施形態の要部拡大図
【図3】他の実施形態の要部拡大図
【符号の説明】
【0038】
1 油水原液槽
2,14,26 ポンプ
3,7,15,23 配管
4 マイクロバブル発生装置
5 泡回収装置
6 泡回収フード
10 処理槽
11 第一処理槽
12 傾斜樋
13 第二処理槽
16 連通部
20 回収タンク
21 フィルタ
22 排気手段
22a 送風ファン
22b 流路
25 レベルゲージ
M モータ
N ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内に貯留した被処理液中に気泡を発生させることにより、前記被処理液に含まれる油分を前記気泡とともに浮上させ、その気泡を回収することにより前記被処理液から油分を分離させる油水分離装置において、
前記気泡を多数の透孔を有するフィルタに衝突させることにより消泡させ、その消泡により、前記気泡内の気体は前記透孔を通過して排気され、前記気泡を形成していた液体は、前記フィルタの下方に落下して回収されることを特徴とする油水分離装置。
【請求項2】
前記フィルタは回収タンク内に設けられ、前記液体は前記回収タンクの底部から回収されるようになっており、前記回収タンクに、前記透孔を通過した気体を前記回収タンク外へ排出する機能を有する排気手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項3】
前記排気手段による気体の排出により、前記フィルタを夾んで前記通過方向への気流を発生させることを特徴とする請求項2に記載の油水分離装置。
【請求項4】
前記フィルタは筒状を成し、前記気体は前記透孔を前記フィルタの外側から内側へ通過するようになっており、前記排気手段は、前記フィルタの筒軸方向一端を介して前記フィルタ内の空間に通じる流路に設けられることを特徴とする請求項2又は3に記載の油水分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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