説明

油脂含有センター入りグミキャンディの製造方法

【課題】センター部が外に漏れたりグミシロップに分散したりすることがない、油脂特有の口当たりや濃厚さを持ったセンターを有するグミキャンディの製造方法を提供すること。
【解決手段】下部用グミシロップと、油脂を5〜30重量%乳化させた糖液とをモールドに充填して、下部およびセンター部を形成し、形成したセンター部と下部の上に、比重を0.5〜1.0g/cm3に調整した含気グミシロップを充填して上部を形成する、または下部用グミシロップをモールドに充填して下部を形成し、形成した下部の上に油脂を5〜30重量%乳化させた糖液と比重を0.5〜1.0g/cm3に調整した含気グミシロップとを充填して、センター部と上部とを形成することを特徴とするセンター入りグミキャンディの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂を含有したセンターを安定的にグミ中央部に充填したセンター入りグミキャンディの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センター入りグミキャンディの製造方法についてはダブルノズルによるダブルデポジッターでセンター部とセンター部を包含するシェル部(外層部)とをタイミングをずらし圧出することで製造している。
【0003】
センター入りグミキャンディは従来のグミキャンディにテクスチャーや味の変化を付与することで、従来には無い新しさを持ったグミキャンディの提供を可能とし、このセンター部に用いられる素材としてはフルーツジャムやキサンタンガムなどのゲル化剤を用いたシロップなどが広く使用されている。
【0004】
しかしながらこれらゲル化剤を用いたセンター部は口当たりが悪く、またグミキャンディが持ち得ない濃厚さを付与するといった面で満足の出来るものではなかった。
【0005】
また、こういったセンター入りグミキャンディの製造に伴って最も問題となるのがセンター部がシェル部の外へ漏れてしまうこと、センター部がシェル部に分散してしまうことであり、現在までにセンター部のゲル化剤を限定し漏れと分散を防ぐ方法(特許文献1参照。)や、グミ生地のブリックスを調節し比重差を利用してセンター部を中央に留める方法(特許文献2参照。)が提案されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法ではセンター部に使用出来るシロップが限定される、センター部の味に濃厚さが出にくいなどの問題がある。また、特許文献2に記載の方法は、センター部の洩れや分散を防ぐことができる点で優れた方法であるが、近年の消費者からの多様な趣向にあわせて様々なキャンディ材料を組み合わせるとブリックスの調節が非常に難しくなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−304852号公報
【特許文献2】特開平5−68481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、以上の問題を鑑み、センター部が外に漏れたりグミシロップに分散したりすることがない、油脂特有の口当たりや濃厚さを持ったセンターを有するグミキャンディの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、センター部に油脂を乳化させることによって、センター部のグミシロップへの分散を防ぎ、さらに比重の小さいセンター部がグミキャンディ表面から漏れ出さないように上部から含気グミシロップで蓋をすることで、グミキャンディ表面からの漏れも防ぐことを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、
下部、センター部、上部の三部から成るセンター入りグミキャンディの製造方法であって、
下部用グミシロップと、油脂を5〜30重量%乳化させた糖液とをモールドに充填して、下部およびセンター部を形成し、形成したセンター部と下部の上に、比重を0.5〜1.0g/cm3に調整した含気グミシロップを充填して上部を形成する、または
下部用グミシロップをモールドに充填して下部を形成し、形成した下部の上に油脂を5〜30重量%乳化させた糖液と比重を0.5〜1.0g/cm3に調整した含気グミシロップとを充填して、センター部と上部とを形成する
センター入りグミキャンディの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、センター部が分散せずにグミキャンディ内に存在し、かつグミキャンディ外部への漏れも起こらず、また、従来のグミキャンディが持ち得なかった濃厚感をセンター部に有する新たなセンター入りグミキャンディを提供することを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、モールドを用いて製造されているセンター入りグミキャンディの概略断面図を示す。モールド1の凹部2に、下部3、センター部4、上部5が形成されている。
【図2】図2は、モールドを用いて製造されている別の態様のセンター入りグミキャンディの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、下部、センター部、上部の三部から成るセンター入りグミキャンディの製造方法であって、
下部用グミシロップと、油脂を5〜30重量%乳化させた糖液とをモールドに充填して、下部およびセンター部を形成し、形成したセンター部と下部の上に、比重を0.5〜1.0g/cm3に調整した含気グミシロップを充填して上部を形成する、または
下部用グミシロップをモールドに充填して下部を形成し、形成した下部の上に油脂を5〜30重量%乳化させた糖液と比重を0.5〜1.0g/cm3に調整した含気グミシロップとを充填して、センター部と上部とを形成する
【0014】
本発明では、センター部を形成する糖液中に油脂を乳化させることによって、センター部と上部および下部グミシロップとの親和性が低くなり、充填後に上部用含気グミシロップおよび下部用グミシロップ中にセンター部が分散することなく、喫食時にもはっきりとセンター部を感じることが出来るグミキャンディの提供を可能としている。
【0015】
また、通常であればセンター部を形成する糖液は油脂を含有することで比重が小さくなるため、通常のグミキャンディで使用されるようなグミシロップを上部に充填するとセンター部がこのグミシロップ表面に浮いてしまい、そこからセンター部の漏れが生じる。これに対して、本発明では、含気させて比重を小さく調整したグミシロップを上部に充填し、下部とセンター部とに蓋をすることによって、センター部の浮き上がりを抑えて、センター部の漏れの問題を解決することができる。
【0016】
本発明において、下部用グミシロップおよび上部用含気グミシロップとしては、通常のグミキャンディの作製に使用されるシロップであればいかなるものでも良く、例えば、砂糖と水飴からなるシロップにゼラチンを3〜10重量%、必要に応じて果汁、香料、酸味料などを添加したものなどが挙げられる。また、下部用グミシロップと上部用含気グミシロップとは、全く別の組成でも良いが、上部用含気グミシロップは下部グミシロップを含気させたものを用いるのが簡便である。含気手段としては、ハンドミキサー、ケーキミキサーなどのミキサーで混合する手段が挙げられる。
上部用含気グミシロップは、比重を0.5〜1.0g/cm3の範囲なるように含気処理される。また、本発明における比重は、所定の測定容器内に水をいれて重量を測定して水を取り出した後、同じ測定容器に、70℃の条件下で、含気グミシロップを水と同じ容量となるように入れてその重量を測定することで計算した値をいう。
【0017】
一方、センター部としては、油脂を5〜30重量%乳化された糖液が使用され、この乳化された糖液は、例えば、砂糖と水飴のシロップに5〜30重量%の油脂、乳化剤、必要に応じて果汁、香料、酸味料などを添加して、万能攪拌機、ニーダー、高速回転強せん断型攪拌分散機、コロイドミル、ホモジナイザー、連続式乳化分散機などのミキサーを用いて乳化し、必要により冷却することにより製造することができる。
【0018】
前記糖液中の砂糖と水飴のシロップの含有量は、80重量%以上が好ましい。砂糖と水飴の含有率については特に限定はない。
【0019】
前記油脂としては、特に制限はないが、油脂の融点が高すぎると口解けが悪くなるため、使用する油脂としては融点が−20℃〜40℃の食品添加用の動物油または植物油を使用するのが好ましい。
例えば、サラダ油、コーン油、ダイズ油、ナタネ油、サフラワー油、ゴマ油、綿実油、オリーブ油、ココアバター、ゴマ油、ピーナッツ油、アーモンド油、無塩バター、有塩バター、発酵バター、カカオバター、マーガリンなどが挙げられる。
【0020】
また、本発明では、油脂を糖液中に乳化させるため乳化剤を使用する。乳化剤としては、食品用乳化剤、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンが挙げられるが、特に限定はない。乳化剤の量としては、前記油脂が糖液内で乳化することが可能な量であればよく、特に限定はないが、多すぎると味の点から、糖液中に3重量%以下が好ましい。
【0021】
本発明では、前記下部用グミシロップと、前記糖液とをモールドに充填して、下部およびセンター部を形成し、形成したセンター部と下部の上に、前記含気グミシロップを充填して上部を形成する。
【0022】
この場合、モールドへの充填方法としては、例えば、最初にダブルデポジッターで下部用グミシロップとセンター部用の糖液を同時に充填した後、シングルデポジッターで上部用含気グミシロップを充填する方法がある。図1にこの方法で得られる充填後のセンター入りグミキャンディの断面図を示す。図1に示すように、モールド1に設けられた凹部2内で下部3のグミキャンディ、センター部4、そしてこれらの上に上部5の含気グミキャンディが充填される。なお、下部用グミシロップとセンター部用の糖液とを同時に充填する場合、前記糖液は油脂を含むことから下部用グミシロップよりも比重が小さくなっているために、下部3のグミキャンディの上面に浮くようにセンター部4が形成されることになる。
【0023】
また、本発明では、下部用グミシロップをモールドに充填して下部を形成し、形成した下部の上に前記糖液と前記含気グミシロップとを充填して、センター部と上部とを形成してもよい。
【0024】
この場合のモールドへの充填方法としては、最初にシングルデポジッターで下部グミシロップを充填後、ダブルデポジッターでセンター部と上部用含気グミシロップを同時に充填する方法がある。図2にこの方法で得られる充填後のセンター入りグミキャンディの断面図を示す。図2では、モールド1の凹部2に予め形成された下部のグミキャンディ3の略平坦な上面にセンター部4、そしてこれらの上に上部5の含気グミキャンディが形成される。なお、上部用含気グミシロップとセンター部用の糖液とを同時に充填する場合、前記糖液は前記上部用含気グミシロップよりも比重が小さいために、上部5の含気グミキャンディの下面に沈むようにセンター部4が形成されることになる。また、図2に示すものは、下部3のグミキャンディは凹部2に充填してから所定の時間冷却して上面を固化した場合の例である。下部のグミキャンディを充填後に冷却せずに上部の含気グミキャンディとセンター部用の糖液を充填した場合には、糖液の組成や、下部のグミキャンディの組成の違いにより、下部のグミキャンディの上面にセンター部が埋め込まれた形状、例えば、図1に示すようにセンター部4全部が下部3のグミキャンディの上面にまで沈む場合もある。
【0025】
なお、本発明においては、下部用グミシロップ、センター部用糖液、上部用含気グミシロップを順番に充填することもできる。ただし、この場合には、シロップや糖液を充填するたの、専用のシングルデポジッターなどの充填装置が3つ必要になるため、コストおよび装置のメンテナンスのしやすさの観点から、前記のように下部または上部のグミシロップと糖液とを同時に充填する方が好ましい。
【0026】
本発明に用いられるモールド材料としては、グミキャンディの製造に使用可能なもの、例えば、スターチ、ラバー、シリコン、金属などが挙げられる。
【0027】
上部用含気グミキャンディを充填後、室温下で静置することで、固化させて、センター入りグミキャンディを得ることができる。また、センター入りグミキャンディは、脱モールドした後に、グミキャンディ表面を植物油などの油でコートしてもよい。
【0028】
こうして得られたセンター入りグミキャンディは、喫食時にセンターの存在を明瞭に感じることができ、センター部が最終製品であるグミキャンディの外部に漏れ出さず、またそのセンター部に油脂を含むため、従来のグミキャンディでは得られなかった油脂特有の口当たりと濃厚さを有したものとなることから、今までにないタイプの味を有するグミキャンディとなる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
(A)下部用グミシロップとして、砂糖50部と水飴50部を煮詰めたものにゼラチン5部、クエン酸1部、いちご香料0.1部、いちご果汁1部を添加し、糖度72%に調整したものを用いた。
(B)上部用含気グミシロップとして、前記の下部用グミシロップを、ハンドミキサーを用いて含気処理し、比重を70℃で0.8g/cm3に調整したものと用いた。
(C)センター部用の糖液として、砂糖50部と水飴50部に無塩バター15部、レシチン0.1部、ミルク香料0.1部を添加し、攪拌して乳化し、糖度を80%に調整したものを用いた。
一方、スターチベッドにいちご型の石膏型を用いて、グミシロップ充填用の凹部を準備した。
【0030】
充填に関しては、まず、ダブルデポジッターで下部用グミシロップ3gとセンター部用の糖液1gを準備しておいたスターチベットに同時充填し、その上から上部用含気グミシロップ2gを充填した。室温で24時間乾燥させた後、スターチを取り除き、少量の油を用いてグミキャンディ表面をコートした。
こうして得られたセンター入りグミキャンディは、喫食時にセンターの存在を明瞭に感じることができ、かつ1kgの荷重を5秒間加えてもセンターが漏れ出さず、センター部に非常に濃厚感を有した今までに無い味を有するグミキャンディであった。また、グミキャンディを切断したところ、断面形状は下部のグミキャンディの上部側にセンター部が埋め込まれ、それらの上に上部の含気グミキャンディが覆っている構造となっていた。
【0031】
(実施例2)
(A)下部用グミシロップ、(B)上部用含気グミシロップ、(C)センター部用の糖液、およびスターチベッドは、実施例1と同様のものを用いた。
【0032】
充填に関しては、まず、下部用グミシロップ3gをスターチベットに充填し、直ちにその上からダブルデポジッターでセンター部用の糖液1gと、上部用含気グミシロップ2gとを同時充填した。室温で24時間乾燥させた後、スターチを取り除き、少量の油を用いてグミキャンディ表面をコートした。
こうして得られたセンター入りグミキャンディは、喫食時にセンターの存在を明瞭に感じることができ、かつ1kgの荷重を5秒間加えてもセンターが漏れ出さず、センター部に非常に濃厚感を有した今までに無い味を有するグミキャンディであった。
また、グミキャンディを切断したところ、断面形状は、実施例1と同様に、下部のグミキャンディ上部側にセンター部が埋め込まれ、それらの上に上部の含気グミキャンディが覆っている構造となっていた。
【0033】
(比較例1)
実施例1と同様に(A)下部用グミシロップおよび(B)上部用含気グミシロップを使用した。
(D)センター部用の糖液としては、砂糖50部と水飴65部にミルク香料0.1部を添加し、糖度を80%に調整したものを用いた。
これらの各部材料を実施例1と同様の方法でスターチベットに充填し、室温で24時間乾燥させた後、スターチを取り除き、少量の油を用いてグミキャンディ表面をコートした。
こうして得られたセンター入りグミキャンディは、油脂を含有していないセンター部がグミキャンディ内に分散しているためセンター部の存在が不明瞭で、また濃厚さも感じられないものであった。
【0034】
(比較例2)
実施例1と同様に(A)下部用グミシロップ、(C)センター部用糖液を用い、上部用グミシロップとしても(A)下部用グミシロップを用いた。これらの各部材料を実施例1と同様の方法でスターチベットに充填し、室温で24時間乾燥させた後、スターチを取り除き、少量の油を用いてグミキャンディ表面をコートした。
こうして得られたセンター入りグミキャンディは、上部のグミシロップが含気により比重調整されていないため、センター部の一部がグミキャンディの表面に出ているものがあり、センター部がグミキャンディの表面に出ていないものでも、1kg、5秒間の荷重によってセンター部がグミキャンディ表面に漏れ出してしまい、著しく外観を損なうものであった。
【符号の説明】
【0035】
1 モールド
2 凹部
3 下部
4 センター部
5 上部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部、センター部、上部の三部から成るセンター入りグミキャンディの製造方法であって、
下部用グミシロップと、油脂を5〜30重量%乳化させた糖液とをモールドに充填して、下部およびセンター部を形成し、形成したセンター部と下部の上に、比重を0.5〜1.0g/cm3に調整した含気グミシロップを充填して上部を形成する、または
下部用グミシロップをモールドに充填して下部を形成し、形成した下部の上に油脂を5〜30重量%乳化させた糖液と比重を0.5〜1.0g/cm3に調整した含気グミシロップとを充填して、センター部と上部とを形成する
ことを特徴とするセンター入りグミキャンディの製造方法。

【図1】
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【図2】
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