説明

治療のためのナチュラルキラー細胞活性増強法

障害が癌、増殖性細胞障害、非感染性熱ショックタンパク質70(Hsp70)反応性障害、またはプロテアソーム阻害剤反応性障害ではないような、それを必要としている被験体、例えば、感染または免疫不全を有する被験体のNK細胞活性を増強するためにビス(チオ-ヒドラジドアミド)を用いる方法が提供される。典型的に、被験体、例えば、ヒトはNK細胞活性増強を必要とすることがあり、免疫不全を有する、または感染(例えば、細菌、ウイルス、真菌、もしくは寄生生物感染、またはその組み合わせ)を治療されている。本方法は被験体に構造式Iで表される化合物の有効量を投与する段階を含む:Yは共有結合もしくは置換されていてもよい直鎖ヒドロカルビル基であるか、またはYはそれが結合している両方の>C=Z基と一緒になって置換されていてもよい芳香族基である。R1〜R4は独立に-H、置換されていてもよい脂肪族基、置換されていてもよいアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合している炭素および窒素原子と一緒になって、かつ/もしくはR2およびR4はそれらが結合している炭素および窒素原子と一緒になって、任意に芳香環と縮合している非芳香族複素環を形成する。R7〜R8は独立に-H、置換されていてもよい脂肪族基、または置換されていてもよいアリール基である。ZはOまたはSである。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は2005年4月15日提出の米国特許仮出願第60/671,910号の恩典を主張する。前述の出願の全教示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
ナチュラルキラー(NK)細胞は白血球の一種で、体の免疫系の重要な成分であることが公知である。NK細胞の特徴的な機能は事前免疫化なしの自発的細胞毒性であるため、NK細胞は免疫系における防御の第一線でありえ、癌細胞および感染疾患を攻撃する際に役割を果たすと考えられる。免疫不全疾患、加齢、毒素への曝露、子宮内膜症などの多くの状態は、被験体のNK細胞活性を低下させ、またはNK細胞を機能不全にすることがある。
【0003】
例えば、被験体は慢性疲労症候群(慢性疲労免疫機能不全症候群)またはエプスタイン-バーウイルス、ウイルス後疲労症候群、移植後症候群または宿主-移植片疾患、抗癌剤または酸化窒素シンターゼ阻害剤などの薬物への曝露、自然な加齢、および重症複合免疫不全、分類不能型免疫不全症候群などの様々な免疫不全状態などの状態において、NK細胞活性の低下または欠如を来すことがある。(Caligiuri M, Murray C, Buchwald D, Levine H, Cheney P, Peterson D, Komaroff AL, Ritz J. Phenotypic and functional deficiency of natural killer cells in patients with chronic fatigue syndrome. Journal of Immunology 1987; 139: 3306-13; Morrison LJA, Behan WHM, Behan PO. Changes in natural killer cell phenotype in patients with post-viral fatigue syndrome. Clinical and Experimental Immunology 1991; 83: 441-6; Klingemann, HG Relevance and Potential of Natural Killer Cells in Stem Cell Transplantation Biology of Blood and Marrow Transplantation 2000;6:90-99; Ruggeri L, Capanni M, Mancusi A, Aversa F, Martelli MF, Velardi A. Natural killer cells as a therapeutic tool in mismatched transplantation. Best Pract Res Clin Haematol. 2004 Sep;17(3):427-38; Cifone MG, Ulisse S, Santoni A. Natural killer cells and nitric oxide. Int Immunopharmacol. 2001 Aug;1(8):1513-24; Plackett TP, Boehmer ED, Faunce DE, Kovacs EJ. Aging and innate immune cells. J Leukoc Biol. 2004 Aug;76(2):291-9. Epub 2004 Mar 23; Alpdogan O, van den Brink MR. IL-7 and IL-15: therapeutic cytokines for immunodeficiency. Trends Immunol. 2005 Jan;26(1):56-64; Heusel JW, Ballas ZK. Natural killer cells: emerging concepts in immunity to infection and implications for assessment of immunodeficiency. Curr Opin Pediatr. 2003 Dec;15(6):586-93; Hacein-Bey-Abina S, Fischer A, Cavazzana-Calvo M. Gene therapy of X-linked severe combined immunodeficiency. Int J Hematol. 2002 Nov;76(4):295-8; Baumert E, Schlesier M, Wolff-Vorbeck G, Peter HH.Alterations in lymphocyte subsets in variable immunodeficiency syndrome Immun Infekt. 1992 Jul;20(3):73-5.)
【0004】
NK細胞は、細菌、ウイルス、真菌、原虫寄生生物、複合感染、例えば、複合細菌/ウイルス感染などの広範な感染病原体に対する活性を有することが公知である。NK細胞は、病原体が被験体細胞内で複製する細胞内感染、例えば、細胞内感染を形成しうるウイルスおよび多くの他の病原体のかなりの部分と戦う際に特に重要であると考えられる。
【0005】
例えば、クリプトコックス-ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、皮膚真菌類、例えば、紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、カンジダ-アルビカンス(Candida albicans)、コクシジオイデス-イミチス(Coccidioides immitis)、パラコクシジオイデス-ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)などの広範な真菌感染がNK細胞によって標的とされることが報告されている(Hidore MR, Mislan TW, Murphy JW. Responses of murine natural killer cells to binding of the fungal target Cryptococcus neoformans Infect Immun. 1991 Apr;59(4):1489-99; Akiba H, Motoki Y, Satoh M, Iwatsuki K, Kaneko F; Recalcitrant trichophytic granuloma associated with NK-cell deficiency in a SLE patient treated with corticosteroid. Eur J Dermatol. 2001 Jan-Feb;11(1):58-62; Mathews HL, Witek-Janusek L. Antifungal activity of interleukin-2-activated natural killer (NK1.1+) lymphocytes against Candida albicans. J Med Microbiol. 1998 Nov;47(11):1007-14; Ampel NM, Bejarano GC, Galgiani JN. Killing of Coccidioides immitis by human peripheral blood mononuclear cells. Infect Immun. 1992 Oct;60(10):4200-4; Jimenez BE, Murphy JW. In vitro effects of natural killer cells against Paracoccidioides brasiliensis yeast phase. Infect Immun. 1984 Nov;46(2):552-8.)
【0006】
同様にNK細胞によって標的とされるのは細菌、特に細胞内細菌、例えば、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ミコバクテリウム-アビウム(Mycobacterium avium)、リステリア-モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes);ヒト免疫不全ウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎などの多くの異なるウイルス、およびウイルス/細菌同時感染である(Esin S, Batoni G, Kallenius G, Gaines H, Campa M, Svenson SB, Andersson R, Wigzell H. Proliferation of distinct human T cell subsets in response to live, killed or soluble extracts of Mycobacterium tuberculosis and Myco. avium. Clin Exp Immunol. 1996 Jun;104(3):419-25; Kaufmann SH. Immunity to intracellular bacteria. Annu Rev Immunol. 1993;11:129-63; See DM, Khemka P, Sahl L, Bui T, Tilles JG. The role of natural killer cells in viral infections. Scand J Immunol. 1997 Sep;46(3):217-24; Brenner BG, Dascal A, Margolese RG, Wainberg MA. Natural killer cell function in patients with acquired immunodeficiency syndrome and related diseases. J Leukoc Biol. 1989 Jul;46(1):75-83; Kottilil S. Natural killer cells in HIV-1 infection: role of NK cell-mediated non-cytolytic mechanisms in pathogenesis of HIV-1 infection. Indian J Exp Biol. 2003 Nov;41(11):1219-25; Herman RB, Koziel MJ. Natural killer cells and hepatitis C: is losing inhibition the key to clearance? Clin Gastroenterol Hepatol. 2004 Dec;2(12): 1061-3; Beadling C, Slifka MK. How do viral infections predispose patients to bacterial infections? Curr Opin Infect Dis. 2004 Jun;17(3):185-91)
【0007】
加えて、NK細胞はトキソプラズマ症、トリパノソーマ症、リーシュマニア症およびマラリア、特に細胞内感染を含む原虫感染と戦う(Korbel DS, Finney OC, Riley EM. Natural killer cells and innate immunity to protozoan pathogens. Int J Parasitol. 2004 Dec;34(13-14):1517-28; Ahmed JS, Mehlhorn H. Review: the cellular basis of the immunity to and immunopathogenesis of tropical theileriosis. Parasitol Res. 1999 Jul;85(7):539-49; Osman M, Lausten SB, El-Sefi T, Boghdadi I, Rashed MY, Jensen SL. Biliary parasites. Dig Surg. 1998; 15(4):287-96; Gazzinelli RT, Denkers EY, Sher A. Host resistance to Toxoplasma gondii: model for studying the selective induction of cell-mediated immunity by intracellular parasites. Infect Agents Dis. 1993 Jun;2(3):139-49; Askonas BA, Bancroft GJ. Interaction of African trypanosomes with the immune system. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 1984 Nov 13;307(1131):41-9; Allison AC, Eugui EM. The role of cell-mediated immune responses in resistance to malaria, with special reference to oxidant stress. Annu Rev Immunol. 1983;1:361-92.)
【0008】
したがって、NK細胞は免疫系のそのように重要な成分であることが公知である。NK細胞活性を増強するための有効な治療が当技術分野において引き続き必要とされている。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
特定のビス(チオ-ヒドラジド)アミドはNK細胞活性の維持または増強において驚くほど有効であることが明らかにされた。本明細書に開示の方法は、ヒトのNK細胞活性を高めることにより驚くべき生物活性を示す(実施例3〜6参照)。さらに、これらの驚くべき結果は、NK細胞活性を低下させることが当技術分野において公知であるパクリタキセル存在下で得られた。
【0010】
障害が癌、増殖性細胞障害、非感染性熱ショックタンパク質70(Hsp70)反応性障害、またはプロテアソーム阻害剤反応性障害ではないとの条件で、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)を用いて、それを必要としている被験体のNK細胞活性を増強する方法を開示する。
【0011】
典型的に、被験体、例えば、ヒトはNK細胞活性増強を必要とすることがあり、免疫不全を有する、または感染(例えば、細菌、ウイルス、真菌、もしくは寄生生物感染、またはその組み合わせ)を治療されている。
【0012】
方法は、被験体に構造式Iで表される化合物の有効量を投与する段階を含む:

【0013】
Yは共有結合もしくは置換されていてもよい直鎖ヒドロカルビル基であるか、またはYはそれが結合している両方の>C=Z基と一緒になって置換されていてもよい芳香族基である。
【0014】
R1〜R4は独立に-H、置換されていてもよい脂肪族基、置換されていてもよいアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合している炭素および窒素原子と一緒になって、かつ/もしくはR2およびR4はそれらが結合している炭素および窒素原子と一緒になって、任意に芳香環と縮合している非芳香族複素環を形成する。
【0015】
R7〜R8は独立に-H、置換されていてもよい脂肪族基、または置換されていてもよいアリール基である。
【0016】
ZはOまたはSである。
【0017】
本明細書において用いられる「ビス(チオ-ヒドラジドアミド)」なる用語は、構造式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物も含む。
【0018】
NK細胞活性を増強するための本明細書に記載の方法は、例えば、免疫不全障害の被験体において免疫機能を回復または強化するため、および被験体の感染、例えば、細菌、真菌、ウイルス、寄生生物、またはその組み合わせによる感染を治療するために有効であると考えられる。
【0019】
発明の詳細な説明
以下に本発明の好ましい態様を記載する。
【0020】
本開示の発明において用いるビス(チオ-ヒドラジドアミド)は、構造式Iで表され、ならびに構造式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物である。
【0021】
一つの態様において、構造式IにおけるYは共有結合、-C(R5R6)-、-(CH2CH2)-、トランス-(CH=CH)-、シス-(CH=CH)-または-(C≡C)-基であり、好ましくは-C(R5R6)-である。R1〜R4は構造式Iについて前述したとおりである。R5およびR6はそれぞれ独立に-H、脂肪族もしくは置換脂肪族基であるか、またはR5は-Hであり、かつR6は置換されていてもよいアリール基であるか、またはR5およびR6は一緒になって置換されていてもよいC2〜C6アルキレン基である。薬学的に許容されるカチオンは以下に詳細に記載するとおりである。
【0022】
特定の態様において、Yはそれが結合している両方の>C=Z基と一緒になって置換されていてもよい芳香族基である。この場合、特定のビス(チオ-ヒドラジドアミド)は構造式IIで表される:

式中、環Aは置換されているか、または無置換であり、かつVは-CH-または-N-である。構造式IIにおける他の変数は構造式IまたはIIIについて本明細書に記載のとおりである。
【0023】
特定の態様において、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は構造式IIIで表される:

R1〜R8および薬学的に許容されるカチオンは構造式Iについて前述したとおりである。
【0024】
構造式I〜IIIにおいて、R1およびR2は同じもしくは異なっており、かつ/またはR3およびR4は同じもしくは異なっており;好ましくは、R1およびR2は同じであり、かつR3およびR4は同じである。構造式IおよびIIIにおいて、Zは好ましくはOである。典型的には、構造式IおよびIIIにおいて、ZはOであり;R1およびR2は同じであり;かつR3およびR4は同じである。より好ましくは、ZはOであり;R1およびR2は同じであり;R3およびR4は同じであり;かつR7およびR8は同じである。
【0025】
他の態様において、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は構造式IIIで表される:R1およびR2はそれぞれ置換されていてもよいアリール基、好ましくは置換されていてもよいフェニル基であり;R3およびR4はそれぞれ置換されていてもよい脂肪族基、好ましくはアルキル基、より好ましくはメチルまたはエチルであり;かつR5およびR6は前述のとおりであるが、R5は好ましくは-Hであり、かつR6は好ましくは-H、脂肪族または置換脂肪族基である。
【0026】
または、R1およびR2はそれぞれ置換されていてもよいアリール基であり;R3およびR4はそれぞれ置換されていてもよい脂肪族基であり;R5は-Hであり;かつR6は-H、脂肪族または置換脂肪族基である。好ましくは、R1およびR2はそれぞれ置換されていてもよいアリール基であり;R3およびR4はそれぞれアルキル基であり;かつR5は-Hであり、R6は-Hまたはメチルである。さらにより好ましくは、R1およびR2はそれぞれ置換されていてもよいフェニル基であり;R3およびR4はそれぞれメチルまたはエチルであり;かつR5は-Hであり、R6は-Hまたはメチルである。R1およびR2で表されるアリール基ならびにR3、R4およびR6で表される脂肪族基に適した置換基は、アリールおよび脂肪族基について以下に記載するとおりである。
【0027】
もう一つの態様において、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は構造式IIIで表される:R1およびR2はそれぞれ置換されていてもよい脂肪族基、好ましくは少なくとも一つのアルキル基で置換されていてもよいC3〜C8シクロアルキル基、より好ましくはシクロプロピルまたは1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は構造式Iについて前述したとおりであり、好ましくは両方とも置換されていてもよいアルキル基であり;かつR5およびR6は前述のとおりであるが、R5は好ましくは-Hであり、かつR6は好ましくは-H、脂肪族または置換脂肪族基、より好ましくは-Hまたはメチルである。
【0028】
または、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は構造式IIIで表される:R1およびR2はそれぞれ置換されていてもよい脂肪族基であり;R3およびR4は構造式Iについて前述したとおりであり、好ましくは両方とも置換されていてもよいアルキル基であり;かつR5は-Hであり、かつR6は-Hまたは置換されていてもよい脂肪族基である。好ましくは、R1およびR2は両方とも少なくとも一つのアルキル基で置換されていてもよいC3〜C8シクロアルキル基であり;R3およびR4は両方とも構造式Iについて前述したとおり、好ましくはアルキル基であり;かつR5は-Hであり、かつR6は-Hまたは脂肪族もしくは置換脂肪族基である。より好ましくは、R1およびR2は両方とも少なくとも一つのアルキル基で置換されていてもよいC3〜C8シクロアルキル基であり;R3およびR4は両方ともアルキル基であり;かつR5は-Hであり、かつR6は-Hまたはメチルである。さらにより好ましくは、R1およびR2は両方ともシクロプロピルまたは1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともアルキル基、好ましくはメチルまたはエチルであり;かつR5は-Hであり、かつR6は-Hまたはメチルである。
【0029】
特定の態様において、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は構造式IVで表される:

式中:R1およびR2は両方ともフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、R3およびR4は両方ともエチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも4-シアノフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方とも4-メトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、R3およびR4は両方ともエチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方とも4-シアノフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方とも3-シアノフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも3-フルオロフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも4-クロロフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方とも2-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも3-メトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも2,3-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも2,3-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジフルオロフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジフルオロフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジクロロフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメチルフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともエチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はメチルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はエチルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、R5はn-プロピルであり、かつR6は-Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともエチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、R3はメチルであり、R4はエチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも2-メチルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも2-フェニルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方とも1-フェニルシクロプロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともシクロブチルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともシクロペンチルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともシクロヘキシルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともシクロヘキシルであり、R3およびR4は両方ともフェニルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともメチルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともメチルであり、R3およびR4は両方ともt-ブチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともメチルであり、R3およびR4は両方ともフェニルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2は両方ともt-ブチルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;R1およびR2はエチルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである;またはR1およびR2は両方ともn-プロピルであり、R3およびR4は両方ともメチルであり、かつR5およびR6は両方とも-Hである。
【0030】
特定の態様において、ビス(チオ-ヒドラジドアミド)は構造式Vで表される:

式中:R1およびR2は両方ともフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともo-CH3-フェニルである;R1およびR2は両方ともo-CH3C(O)O-フェニルであり、かつR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともエチルである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともn-プロピルである;R1およびR2は両方ともp-シアノフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともp-ニトロフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともn-ブチルである;R1およびR2は両方ともp-クロロフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも3-ニトロフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも3-シアノフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも3-フルオロフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2-フラニルであり、かつR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方とも2-メトキシフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも3-メトキシフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2,3-ジメトキシフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2-メトキシ-5-クロロフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともエチルである;R1およびR2は両方とも2,5-ジフルオロフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2,5-ジクロロフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2,5-ジメチルフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2-メトキシ-5-クロロフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも3,6-ジメトキシフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともフェニルであり、かつR3およびR4は両方とも2-エチルフェニルである;R1およびR2は両方とも2-メチル-5-ピリジルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;またはR1はフェニルであり;R2は2,5-ジメトキシフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、かつR3およびR4は両方ともp-CF3-フェニルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、かつR3およびR4は両方ともo-CH3-フェニルである;R1およびR2は両方とも-(CH2)3COOHであり;かつR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方とも下記の構造式で表され:

かつR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方ともn-ブチルであり、かつR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方ともn-ペンチルであり、かつR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、かつR3およびR4は両方とも2-ピリジルである;R1およびR2は両方ともシクロヘキシルであり、かつR3およびR4は両方ともフェニルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、かつR3およびR4は両方とも2-エチルフェニルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、かつR3およびR4は両方とも2,6-ジクロロフェニルである;R1〜R4はすべてメチルである;R1およびR2は両方ともメチルであり、かつR3およびR4は両方ともt-ブチルである;R1およびR2は両方ともエチルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともt-ブチルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり、かつR3およびR4は両方ともエチルである;R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2-メチルシクロプロピルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも1-フェニルシクロプロピルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方とも2-フェニルシクロプロピルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともシクロブチルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1およびR2は両方ともシクロペンチルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである;R1はシクロプロピルであり、R2はフェニルであり、かつR3およびR4は両方ともメチルである。
【0031】
ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の好ましい例には化合物(1)〜(18)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物が含まれる:




【0032】
ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の特定の例には化合物(1)、(17)、および(18)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物が含まれる。
【0033】
「直鎖ヒドロカルビル基」はアルキレン基、すなわち、一つまたは複数(好ましくは一つ)の内部メチレン基が任意に連結基で置き換えられており、yが正の整数(例えば、1から10の間)、好ましくは1から6の間、より好ましくは1または2である、-(CH2)y-である。「連結基」とは、直鎖ヒドロカルビルにおけるメチレンに代わる官能基を意味する。適当な連結基の例にはケトン(-C(O)-)、アルケン、アルキン、フェニレン、エーテル(-O-)、チオエーテル(-S-)、またはアミン(-N(Ra)-)(Raは以下に定義される)が含まれる。好ましい連結基は-C(R5R6)-(R5およびR6は上で定義している)である。アルキレン基およびヒドロカルビル基の適当な置換基は、ビス(チオ-ヒドラジド)アミドの活性を実質的に妨害しないものである。R5およびR6はYで表されるアルキレンまたはヒドロカルビル基の好ましい置換基である。
【0034】
脂肪族基は、完全に飽和であるか、または一つもしくは複数の不飽和単位を含む、直鎖、分枝または環式非芳香族炭化水素である。典型的に、直鎖または分枝脂肪族基は1から約20個、好ましくは1から約10個の炭素原子を有し、環式脂肪族基は3から約10個、好ましくは3から約8個の炭素原子を有する。脂肪族基は好ましくは直鎖または分枝アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ペンチルもしくはオクチル、または3から約8個の炭素原子を有するシクロアルキル基である。C1〜C20直鎖もしくは分枝アルキル基またはC3〜C8環式アルキル基は「低級アルキル」基とも呼ぶ。
【0035】
「芳香族基」なる用語は「アリール」、「アリール環」、「芳香環」、「アリール基」および「芳香族基」と交換可能に用いうる。芳香族基には、フェニル、ナフチル、およびアントラシルなどの炭素環芳香族基、ならびにイミダゾリル、チエニル、フラニル、ピリジル、ピリミジル、ピラニル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、チアゾール、オキサゾリル、およびテトラゾールなどのヘテロアリール基が含まれる。「ヘテロアリール基」なる用語は「ヘテロアリール」、「ヘテロアリール環」、「複素芳香環」および「複素芳香族基」と交換可能に用いうる。本明細書において用いられる「ヘテロアリール」なる用語は、窒素、硫黄および酸素などの少なくとも一つのヘテロ原子を含むが、一つの環に1、2、3または4個のヘテロ原子を含んでいてもよい、単環式または多環式芳香族複素環を意味する。芳香族基には、炭素環芳香環またはヘテロアリール環が一つまたは複数の他のヘテロアリール環に縮合している、縮合多環式芳香環系も含まれる。例には、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、インドリル、キノリニル、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンズイミダゾール、キノリニル、イソキノリニルおよびイソインドリルが含まれる。
【0036】
「アリーレン」なる用語は、二つの他の結合によって分子の残りに連結されているアリール基を意味する。例として、1,4-フェニレン基の構造を以下に示す:

【0037】
アリーレン基の置換基はアリール基について以下に記載するとおりである。
【0038】
非芳香族複素環は、環内に一つまたは複数の窒素、酸素または硫黄などのヘテロ原子を含む非芳香環である。環は五、六、七または八員環であることもできる。例には、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、モルホリノ、チオモルホリノ、ピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、およびチアゾリジニルが含まれる。
【0039】
脂肪族基(アルキレン基を含む)、非芳香族複素環基、ベンジルまたはアリール基(炭素環およびヘテロアリール)上の適当な置換基は、ビス(チオ-ヒドラジド)アミドの活性を実質的に妨害しないものである。置換基のない化合物に比べて置換基を有する化合物の活性が約50%を越えて低下する場合、置換基は活性を実質的に妨害する。適当な置換基の例には

が含まれる。Ra〜Rdはそれぞれ独立にアルキル基、芳香族基、非芳香族複素環基であるか、または-N(RaRb)は、一緒になって、置換されていてもよい非芳香族複素環基を形成する。Ra〜Rdで表されるアルキル、芳香族および非芳香族複素環基、ならびに-N(RaRb)で表される非芳香族複素環基はそれぞれR#で表される一つまたは複数の基で独立に置換されていてもよい。
【0040】
R#はR+、-OR+、-O(ハロアルキル)、-SR+、-NO2、-CN、-NCS、-N(R+)2、-NHCO2R+、-NHC(O)R+、-NHNHC(O)R+、-NHC(O)N(R+)2、-NHNHC(O)N(R+)2、-NHNHCO2R+、-C(O)C(O)R+、-C(O)CH2C(O)R+、-CO2R+、-C(O)R+、-C(O)N(R+)2、-OC(O)R+、-OC(O)N(R+)2、-S(O)2R+、-SO2N(R+)2、-S(O)R+、-NHSO2N(R+)2、-NHSO2R+、-C(=S)N(R+)2、または-C(=NH)-N(R+)2である。
【0041】
R+はアルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ハロ、-CN、-NO2、アミン、アルキルアミンまたはジアルキルアミンで置換されていてもよい、-H、C1〜C4アルキル基、単環式ヘテロアリール基、非芳香族複素環基またはフェニル基である。任意に、基-N(R+)2は、二級環アミンを含むR+および-N(R+)2で表される非芳香族複素環基が任意にアシル化またはアルキル化されているとの条件で、非芳香族複素環基である。
【0042】
R1〜R4で表されるフェニル基を含むフェニル基の好ましい置換基には、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4ハロアルコキシ、フェニル、ベンジル、ピリジル、-OH、-NH2、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2または-CNが含まれる。
【0043】
R1〜R4で表される脂肪族基を含む脂肪族基の好ましい置換基には、C1〜C4アルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4ハロアルコキシ、フェニル、ベンジル、ピリジル、-OH、-NH2、-F、-Cl、-Br、-I、-NO2または-CNが含まれる。
【0044】
R1およびR2で表されるシクロアルキル基を含むシクロアルキル基の好ましい置換基は、メチルまたはエチル基などのアルキル基である。
【0045】
本明細書において用いるビス(チオ-ヒドラジド)アミドの薬学的に許容される塩も本発明に含まれる。これらの化合物は、適当な有機または無機塩基と反応して塩基付加塩を形成することができる、一つまたは複数の十分に酸性のプロトンを有することができる。塩基付加塩には水酸化、炭酸、炭酸水素アンモニウムまたはアルカリまたはアルカリ土類金属などの無機塩基、ならびにアルコキシド、アルキルアミド、アルキルおよびアリールアミンなどの有機塩基由来のものが含まれる。したがって、本発明の塩を調製する際に有用なそのような塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウムなどが含まれる。
【0046】
例えば、本明細書において用いるビス(チオ-ヒドラジド)アミドの薬学的に許容される塩(例えば、構造式I〜VIで表されるもの、化合物1〜18)は、化合物を一当量の適当な塩基と反応させて一価の塩を得ること(すなわち、化合物は薬学的に許容される対カチオン、例えば、一価のカチオンによって平衡化されている一つの負電荷を有する)または二当量の適当な塩基と反応させて二価の塩を得ること(例えば、化合物は二つの薬学的に許容される対カチオン、例えば、二つの薬学的に許容される一価のカチオンまたは一つの薬学的に許容される二価のカチオンによって平衡化されている二電子の負電荷を有する)により形成されるものである。ビス(チオ-ヒドラジドアミド)の二価の塩が好ましい。「薬学的に許容される」とは、カチオンが被験体への投与に適していることを意味する。例にはLi+、Na+、K+、Mg2+、Ca2+およびNR4+が含まれ、ここでRはそれぞれ独立に水素、置換されていてもよい脂肪族基(例えば、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基またはアンモニウムアルキル基)もしくは置換されていてもよいアリール基であるか、または二つのR基は、一緒になって、任意に芳香環に縮合されている置換されていてもよい非芳香族複素環を形成する。一般に、薬学的に許容されるカチオンはLi+、Na+、K+、NH3(C2H5OH)+またはN(CH3)3(C2H5OH)+であり、より典型的には、塩は2ナトリウムまたは2カリウム塩、好ましくは2ナトリウム塩である。
【0047】
アミンなどの十分に塩基性の基を有する本明細書において用いるビス(チオ-ヒドラジド)アミドは、有機または無機酸と反応して酸付加塩を形成することができる。塩基性基を有する化合物から酸付加塩を形成するために一般に用いる酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸、およびp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモフェニル-スルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸などの有機酸である。そのような塩の例には硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩などが含まれる。
【0048】
本明細書に記載のビス(チオ-ヒドラジドアミド)化合物の特定の塩は、2004年6月23日に提出された同時係属で共有の特許出願第60/582,596号に記載の方法に従って調製することができる。
【0049】
中性ビス(チオ-ヒドラジド)アミドは、いずれも「Synthesis of Taxol Enhancers」なる標題の米国特許第6,800,660号、および第6,762,204号に記載の方法に従って、ならびに同時係属で共有の2003年1月15日に提出された米国特許出願第10/345,885号、および2004年1月15日に提出された第10/758,589号に記載の方法にも従って調製することができる。本出願において引用するそれぞれの文書の全教示は参照により本明細書に明白に組み入れられる。
【0050】
本発明において用いる特定の化合物は異なる立体異性体(例えば、ジアステレオマーおよび鏡像異性体)として得られることもあり、本発明は開示する化合物のすべての異性体およびラセミ混合物、ならびに純粋な異性体およびラセミ混合物を含むその混合物による被験体の治療法を含むことも理解されると思われる。立体異性体は、クロマトグラフィなどの任意の適当な方法を用いて、分離し、単離することができる。
【0051】
「被験体」には哺乳動物、例えば、ヒト、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコ、鳥、観賞魚、爬虫類など)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、家禽、養殖魚など)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、鳥、観賞魚、爬虫類など)が含まれる。または、被験体は温血動物である。より好ましくは、被験体は哺乳動物である。最も好ましくは、被験体はヒトである。
【0052】
治療と必要としている被験体は、感染またはその可能性のために免疫系強化を必要としている。いくつかの態様において、そのような被験体は、その症状を本明細書において開示する方法によって軽減しうる感染を有しうる(または病原体が存在する感染環境、例えば、病院に曝露されたことがある)。例えば、治療を必要としている被験体は、開示するNK細胞活性化法が治療となりうる感染(細菌、ウイルス、真菌。または寄生生物(原生動物)を有しうる。
【0053】
いくつかの態様において、治療を必要としている被験体は、被験体が免疫不全を有するために免疫系強化を必要としている。そのような被験体は予防的療法を必要としているか、または予防的療法から利益を得ることができる、例えば、感染に対する不完全な、損傷された、もしくはそれ以外に損なわれた防御を有するか、または感染環境の影響下にあるなどの被験体である。例えば、被験体は、病原体が存在する感染環境、例えば、病院内にいる;開放創もしくは熱傷を有する;遺伝性もしくは後天性免疫不全(例えば、重症複合免疫不全または「バブルボーイ」症候群、分類不能型免疫不全症候群後天性免疫不全症候群(AIDS)など)を有する;身体状態、年齢、毒素曝露、薬物作用(免疫抑制剤、例えば、移植受容者において)もしくは副作用(例えば、抗癌剤による)による免疫系の低下を有するなどの可能性がある。
【0054】
いくつかの態様において、慢性疲労症候群(慢性疲労免疫機能不全症候群)もしくはエプスタイン-バーウイルス、ウイルス後疲労症候群、移植後症候群(特に同種移植)もしくは宿主-移植片疾患、抗癌剤もしくは酸化窒素シンターゼ阻害剤などの薬物への曝露、自然な加齢、および重症複合免疫不全、分類不能型免疫不全症候群などの様々な免疫不全状態などの状態において、NK細胞活性の低下または欠如を有する被験体のNK活性を増強することができる。
【0055】
いくつかの態様において、被験体は菌血症の治療を必要としている。菌血症は血流中の細菌感染の状態である。敗血症性ショックには全身炎症を伴う重篤局所または菌血症性感染、すなわち輸液療法に抗療性の低灌流および低血圧を伴う敗血症が含まれる。敗血症、または全身炎症反応症候群には、急性炎症を引き起こしうる感染、膵炎、熱傷、外傷)などの様々な重症状態が含まれる。敗血症性ショックは典型的にはグラム陰性菌、ブドウ球菌、または髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)による感染に関連する。敗血症性ショックは、典型的には低血圧を伴う急性循環不全、および多臓器不全によって特徴づけることができる。
【0056】
いくつかの態様において、方法は敗血症を含まない。
【0057】
一過性の菌血症は外科的創傷または外傷によって起こりうる。グラム陰性菌血症は間欠的かつ日和見的でありうる;これは健常者には影響がないかもしれないが、消耗性の根元疾患を有する、化学療法後、および栄養不良状態にある免疫無防備状態の患者では非常に重要でありうる。感染は典型的にはリスクの高い患者、および弁膜性心疾患、人工弁、または他の移植人工器官を有する患者の肺、GUもしくはGI管、または軟部組織、例えば、褥瘡性潰瘍、口腔潰瘍を有する患者の皮膚で起こりうる。
【0058】
典型的には、グラム陰性菌血症は慢性的に病気で免疫無防備状態の患者で発症しうる。そのような患者ではまた、血流感染は好気性菌、嫌気性菌、および真菌によっても起こりうる。バクテロイデスは、特に女性の腹部および骨盤の感染性合併症を来すことがある。一過性または持続性菌血症は典型的には脳脊髄膜または心膜もしくは大きい関節などの漿液腔の転移性感染を起こしうる。エンテロコッカス、ブドウ球菌、または真菌は心内膜炎を引き起こすこともあるが、グラム陰性菌血症よりも頻度は低い。ブドウ球菌血症はIV薬物使用者に典型的で、グラム陽性菌性心内膜炎の典型的原因でありうる。
【0059】
全身性真菌感染の発生率は、特にヒトで著しく増大しており、これは一部には免疫系が損なわれた被験体、例えば、高齢者、AIDS患者、化学療法を受けている患者、熱傷患者、糖尿病性ケトアシドーシスを有する患者、および免疫抑制剤を使用中の移植患者の数が増えたことによる。試験により、院内感染による死亡の約40%は真菌症によることが判明した;Sternberg et. al, Science, Vol. 266, (1994), pp.1632-1634を参照されたく、その全教示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0060】
様々な態様において、被験体を病原性皮膚糸状菌、病原性糸状真菌、および/または病原性非糸状真菌、例えば、酵母などによる真菌感染に対して治療することができる。病原性皮膚糸状菌には、例えば、白癬菌属、白癬、小胞子菌属、表面菌属などの菌種が含まれうる。病原性糸状真菌には、例えば、アスペルギルス属、ヒストプラスマ属、クリプトコックス属、小胞子菌属などの菌種が含まれうる。病原性非糸状真菌、例えば、酵母には、例えば、カンジダ属、マラセジア属、トリコスポロン属、ロドトルラ属、トルロプシス属、ブラストミセス属、パラコクシジオイデス属、コクシジオイデス属などの菌種が含まれうる。様々な態様において、被験体をアスペルギルス属または白癬菌属の菌種による真菌感染に対して治療することもできる。白癬菌属の菌には、例えば、毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)、紅色白癬菌、シェーンライン白癬菌(Trichophyton schoenleinii)、断髪性白癬菌(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン-ベルコースム(Trichophyton verrucosum)、および紫色白癬菌(Trichophyton violaceum)が含まれうる。アスペルギルス属の菌には、例えば、アスペルギルス-フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、黄色アスペルギルス(Aspergillus flavus)、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)、アスペルギルス-アムステロダミ(Aspergillus amstelodami)、アスペルギルス-カンジダス(Aspergillus candidus)、アスペルギルス-カルネウス(Aspergillus carneus)、アスペルギルス-ニズランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス-オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス-レストリクツス(Aspergillus restrictus)、アスペルギルス-シドウィ(Aspergillus sydowi)、アスペルギルス-テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス-ウスツス(Aspergillus ustus)、アスペルギルス-ベジルコロル(Aspergillus versicolor)、アスペルギルス-カエシエルス(Aspergillus caesiellus)、アスペルギルス-クラバタス(Aspergillus clavatus)、アスペルギルス-アベナセウス(Aspergillus avenaceus)、およびアスペルギルス-デフレクタス(Aspergillus deflectus)が含まれうる。いくつかの態様において、被験体を病原性皮膚糸状菌、例えば、白癬菌属(例えば、紅色白癬菌)、白癬、小胞子菌属、もしくは表面菌属;またはクリプトコックス属(例えば、クリプトコックス-ネオフォルマンス)カンジダ属(例えば、カンジダ-アルビカンス)、パラコクシジオイデス属(例えば、パラコクシジオイデス-ブラジリエンシス)、またはコクシジオイデス属(例えば、コクシジオイデス-イミチス)による真菌感染に対して治療することもできる。特定の態様において、被験体を紅色白癬菌、クリプトコックス-ネオフォルマンス、カンジダ-アルビカンス、パラコクシジオイデス-ブラジリエンシス、またはコクシジオイデス-イミチスに対して治療することもできる。
【0061】
したがって、様々な態様において、被験体は白癬菌属、白癬、小胞子菌属、表面菌属、アスペルギルス属、ヒストプラスマ属、クリプトコックス属、小胞子菌属、カンジダ属、マラセジア属、トリコスポロン属、ロドトルラ属、トルロプシス属、ブラストミセス属、パラコクシジオイデス属、およびコクシジオイデス属から選択される真菌が原因の感染を有しうる。いくつかの態様において、被験体は白癬菌属、白癬、小胞子菌属、表面菌属;クリプトコックス属、カンジダ属、パラコクシジオイデス属、およびコクシジオイデス属から選択される真菌が原因の感染を有しうる。特定の態様において、被験体は紅色白癬菌、クリプトコックス-ネオフォルマンス、カンジダ-アルビカンス、パラコクシジオイデス-ブラジリエンシス、およびコクシジオイデス-イミチスから選択される真菌が原因の感染を有しうる。
【0062】
様々な態様において、被験体をアロクロマチウム属、アシネトバクター属、バチルス属、カンピロバクター属、クラミジア属、クラミドフィラ属、クロストリジウム属、シトロバクター属、エシェリキア属、エンテロバクター属、エンテロコッカス属、フランシセラ属、ヘモフィルス属、ヘリコバクター属、クレブシエラ属、リステリア属、モラクセラ属、ミコバクテリウム属、ミクロコッカス属、ナイセリア属、プロテウス属、シュードモナス属、サルモネラ属、セラチア属、シゲラ属、ステノトロフォモナス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、シネココッカス属、ビブリオ属、およびエルシニア属;またはペプトストレプトコッカス属、ポルフィロモナス属、アクチノミセス属、クロストリジウム属、バクテロイデス属、プレボテラ属、アネロビオスピリルム属、フゾバクテリウム属、およびバイロフィラ属などの嫌気性菌から選択される細菌が原因の細菌感染に対して治療することもできる。いくつかの態様において、被験体をアロクロマチウム-ビノスム(Allochromatium vinosum)、アシネトバクター-バウマニイ(Acinetobacter baumanii)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、カンピロバクター-ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クラミジア-トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、クラミジア-ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、クロストリジウム菌種、シトロバクター菌種、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター菌種、エンテロコッカス-フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス-フェシウム(Enterococcus faecium)、フランシセラ-ツラレンシス(Francisella tularensis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター-ピロリ(Helicobacter pylori)、クレブシエラ菌種、リステリア-モノサイトゲネス、モラクセラ-カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ヒト結核菌、髄膜炎菌、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、霊菌(Proteus mirabilis)、尋常変形菌(Proteus vulgaris)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、サルモネラ菌種、セラチア菌種、シゲラ菌種、ステノトロフォモナス-マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス-アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、エルシニア-ペスティス(Yersina pestis)、エルシニア-エンテロコリティカ(Yersina enterocolitica)など;またはペプトストレプトコッカス-アサッカロリチカス(Peptostreptococci asaccharolyticus)、ペプトストレプトコッカス-マグヌス(Peptostreptococci magnus)、ペプトストレプトコッカス-ミクロス(Peptostreptococci micros)、ペプトストレプトコッカス-プレボッチイ(Peptostreptococci prevotii)、ポルフィロモナス-アサッカロリチカ(Porphyromonas asaccharolytica)、ポルフィロモナス-カノリス(Porphyromonas canoris)、ポルフィロモナス-ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)、ポルフィロモナス-マカッケイ(Porphyromonas macaccae)、イスラエル放線菌(Actinomyces israelii)、アクチノミセス-オドントリティクス(Actinomyces odontolyticus)、クロストリジウム-イノクーム(Clostridium innocuum)、クロストリジウム-クロストリジオフォルメ(Clostridium clostridioforme)、クロストリジウム-ディフィシレ(Clostridium difficile)、バクテロイデス-テクタム(Bacteroides tectum)、バクテロイデス-ウレオリチカス(Bacteroides ureolyticus)、バクテロイデス-グラシリス(Bacteroides gracilis)(カンピロバクター-グラシリス(Campylobacter gracilis))、プレボテラ-インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ-ヘパリノリチカ(Prevotella heparinolytica)、プレボテラ-オリスブッケイ(Prevotella oris-buccae)、プレボテラ-ビビア(Prevotella bivia)、プレボテラ-メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica)、フゾバクテリウム-ナヴィフォルメ(Fusobacterium naviforme)、壊死杆菌(Fusobacterium necrophorum)、フゾバクテリウム-ヴァリウム(Fusobacterium varium)、フゾバクテリウム-ウルセランス(Fusobacterium ulcerans)、フゾバクテリウム-ルッシー(Fusobacterium russii)、バイロフィラ-ワズワーシア(Bilophila wadsworthia)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi);カリマトバクテリウム-グラヌロマティス(Calymmatobacterium granulomatis)などによる細菌感染に対して治療することもできる。
【0063】
方法は、細胞内感染を有する被験体を治療するために特に有用でありうると考えられる。当技術分野において一般に、NK細胞は細胞内感染に対して特に有効であると考えられる。細胞内感染は、感染病原体の一部が被験体の細胞内にあるものである。
【0064】
例えば、細胞内感染は下記から選択される一つまたは複数の細菌によって起こりうる:エールリヒア属(例えば、腺熱エールリヒア(Ehrlichia sennetsu)、エールリヒア-ケニス(Ehrlichia canis)、エールリヒア-シャフェエンシス(Ehrlichia chaffeensis)、エールリヒア-ファゴサイトフィリア(Ehrlichia phagocytophilia)などのリンパ球および好中球内の小さい細胞質封入体として現れうる偏性、細胞内細菌);リステリア属(例えば、リステリア-モノサイトゲネス);レジオネラ属(例えば、レジオネラ-ニューモフィラ(Legionella pneumophila));リケッチア属(例えば、発疹チフスリケッチア(Rickettsiae prowazekii)、発疹熱リケッチア(Rickettsiae typhi)(丘疹熱リケッチア(Rickettsiae mooseri))、斑点熱リケッチア(Rickettsiae rickettsii)、恙虫病リケッチア(Rickettsiae tsutsugamushi)、リケッチア-シビリカ(Rickettsiae sibirica);リケッチア-オストラーリス(Rickettsiae australis);リケッチア-コノリイ(Rickettsiae conorii);痘瘡リケッチア(Rickettsiae akari);リケッチア-バーネッティイ(Rickettsiae burnetii));クラミジア属(例えば、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci);クラミジア-ニューモニエ;トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)など);ミコバクテリウム属(ヒト結核菌;ミコバクテリウム-マリヌム(Mycobacterium marinum);ミコバクテリウム-アビウム複合体;ウシ結核菌(Mycobacterium bovis);ミコバクテリウム-スクロフラセウム(Mycobacterium scrofulaceum);ミコバクテリウム-ウルセランス(Mycobacterium ulcerans);らい菌(Mycobacterium leprae)(らい、ハンセン菌));ブルセラ属(例えば、マルタ熱菌(Brucella melitensis);ウシ流産菌(Brucella abortus);ブタ流産菌(Brucella suis);イヌ流産菌(Brucella canis));コクシエラ属(例えば、コクシエラ-バーネッティイ(Coxiella burnetii))など。したがって、いくつかの態様において、被験体はエールリヒア属;リステリア属;レジオネラ属;リケッチア属;クラミジア属;ミコバクテリウム属;ブルセラ属;およびコクシエラ属から選択される細菌が原因の細胞内細菌感染を有しうる。
【0065】
様々な態様において、被験体を一つまたは複数の上気道細菌による細菌感染に対して治療することもできる。上気道細菌の例には、レジオネラ属、シュードモナス属などに属しているものが含まれる。いくつかの態様において、細菌は緑膿菌でありうる。特定の態様において、細菌はレジオネラ-ニューモフィラ(例えば、血清群1、2、3、4、5、6、7、8などを含む)、レジオネラ-ダモフィイ(Legionella dumoffii)、レジオネラ-ロングビーチエ(Legionella longbeachae)、レジオネラ-ミクダデイ(Legionella micdadei)、レジオネラ-オークリジエンシス(Legionella oakridgensis)、レジオネラ-フィーレイィ(Legionella feeleii)、レジオネラ-アニサ(Legionella anisa)、レジオネラ-セントヘレンシ(Legionella sainthelensi)、レジオネラ-ボゼマニイ(Legionella bozemanii)、レジオネラ-ゴルマニイ(Legionella gormanii)、レジオネラ-ワズワーシイ(Legionella wadsworthii)、レジオネラ-ジョルダニス(Legionella jordanis)、またはレジオネラ-ゴルマニイでありうる。
【0066】
いくつかの態様において、被験体をその慢性気管支炎の急性細菌性増悪(ABECB)を引き起こすものによる細菌感染に対して治療することもできる。典型的には、ABECBは肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)、またはモラクセラ-カタラーリスによって起こりうる。
【0067】
いくつかの態様において、被験体をその急性市中感染肺炎(CAP)を引き起こすものによる細菌感染に対して治療することもできる。典型的には、CAPは肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ-カタラーリス、肺炎マイコプラスマ(Mycoplasma pneumoniae)、クラミジア-ニューモニエ、または肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)によって起こりうる。特定の態様において、CAPは薬物耐性菌、例えば、肺炎連鎖球菌の多剤耐性株によって起こりうる。
【0068】
様々な態様において、被験体を肺炎連鎖球菌、インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌、モラクセラ-カタラーリス、肺炎マイコプラスマ、クラミジア-ニューモニエ、肺炎杆菌、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus)、化膿連鎖球菌、アシネトバクター-ルオフィイ(Acinetobacter lwoffii)、クレブシエラ-オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、レジオネラ-ニューモフィラ、または尋常変形菌による細菌感染に対して治療することもできる。
【0069】
様々な態様において、被験体を上顎洞病原菌による細菌感染に対して治療することもできる。本明細書において用いられる上顎洞病原菌は、急性もしくは慢性上顎洞炎から単離された菌株、または、例えば、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、ヘモフィルス菌種、モラクセラ-カタラーリス、非発酵性グラム陰性杆菌の嫌気性株、髄膜炎菌またはβ-溶血連鎖球菌の上顎洞単離菌である。様々な態様において、上顎洞病原菌には急性もしくは慢性上顎洞炎から単離された菌株;黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、ヘモフィルス菌種、モラクセラ-カタラーリス、非発酵性グラム陰性杆菌の嫌気性株、髄膜炎菌、β-溶血連鎖球菌、インフルエンザ菌、腸内細菌科、非発酵性グラム陰性杆菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌、メチシリン耐性ブドウ球菌菌種、レジオネラ-ニューモフィラ、マイコプラスマ菌種およびクラミジア菌種、インフルエンザ菌、パラインフルエンザ菌、ペプトストレプトコッカス属、バクテロイデス菌種、ならびにバクテロイデス-ウレアリチカス(Bacteroides ureolyticus)の上顎洞単離菌が含まれうる。
【0070】
様々な態様において、被験体をその尿路感染(UTI)を引き起こす細菌感染に対して治療することもできる。UTIの例には尿道炎、膀胱炎、前立腺炎、腎盂腎炎(急性、慢性、および黄色肉芽腫性)、および血行性UTI(例えば、サルモネラ属、黄色ブドウ球菌などの毒性杆菌による菌血症起因)が含まれる。典型的には、UTIはグラム陰性好気性菌、例えば、エシェリキア属(例えば、大腸菌)、クレブシエラ属、プロテウス属、エンテロバクター属、シュードモナス属、およびセラチア属;グラム陰性嫌気性菌;グラム陽性菌、例えば、エンテロコッカス(例えば、エンテロコッカス-フェカーリス)およびスタフィロコッカス菌種(例えば、スタフィロコッカス-サプロフィチカス(Staphylococcus saprophyticus)、黄色ブドウ球菌など);ヒト結核菌;ならびに性行為による細菌感染(例えば、トラコーマクラミジア、淋菌など)によって起こりうる。
【0071】
特定の態様において、方法は性行為感染を引き起こす微生物、例えば、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum);膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis);カンジダ(カンジダ-アルビカンス);淋菌;トラコーマクラミジア;性器マイコプラスマ(Mycoplasma genitalium)、ウレアプラズマ-ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum);軟性下疳菌;肉芽腫カリマトバクテリウム(Calymmatobacterium granulomatis)(以前はドノーヴァ肉芽腫菌(Donovania granulomatis));単純ヘルペスウイルス(HSV-1またはHSV-2);ヒト乳頭腫ウイルス[HPV];ヒト免疫不全ウイルス(HIV);様々な細菌(シゲラ属、カンピロバクター属、またはサルモネラ属)、ウイルス(A型肝炎)、または寄生生物(ジアルジア属またはアメーバ属、例えば、エントアメーバ-ディスパー(Entamoeba dispar)(以前は赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica))などによる感染を治療する際に有効でありうると考えられる。
【0072】
したがって、様々な態様において、被験体は上気道細菌感染、慢性気管支炎の急性細菌性増悪;急性市中感染肺炎、上顎洞病原菌;尿路感染;または性行為感染を来す感染を有しうる。
【0073】
方法はウイルス感染を有する被験体を治療するために特に有効でありうると考えられる。したがって、様々な態様において、被験体をピコルナウイルス(例えば、ポリオウイルス、ライノウイルスならびに特定のエコウイルスおよびコクサッキーウイルス);パルボウイルス(ヒトパルボウイルスB19);肝炎、例えば、ヘパドナウイルス(B型肝炎);パポバウイルス(JCウイルス);アデノウイルス(ヒトアデノウイルス);ヘルペスウイルス(例えば、サイトメガロウイルス、エプスタイン-バーウイルス(単核細胞症)、単核細胞症様症候群、小児バラ疹、水痘-帯状疱疹ウイルス(水疱瘡)、帯状ヘルペス(帯状疱疹)、単純ヘルペスウイルス(口腔ヘルペス、性器ヘルペス))、ポックスウイルス(疱瘡);カリシウイルス(ノーウォークウイルス)、アルボウイルス(例えば、トガウイルス(風疹ウイルス、デング熱ウイルス)、フラビウイルス(黄熱病ウイルス)、ブンヤウイルス(カリフォルニア脳炎ウイルス)、レオウイルス(ロタウイルス));コロナウイルス(コロナウイルス);レトロウイルス(ヒト免疫不全ウイルス1、ヒト免疫不全ウイルス2);ラブドウイルス(狂犬病ウイルス)、フィロウイルス(マルブルクウイルス、エボラウイルス、他の出血性ウイルス疾患);パラミクソウイルス(麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス);オルトミクソウイルス(インフルエンザウイルス);アレナウイルス(ラッサ熱);ヒトT細胞リンパ球向性ウイルスI型およびII型(HTLV-I、HTLV II);ヒト乳頭腫ウイルス[HPV]などのウイルスによる感染に対して治療することもできる。したがって、様々な態様において、被験体はピコルナウイルス;パルボウイルス;肝炎ウイルス;パポバウイルス;アデノウイルス;ヘルペスウイルス、ポックスウイルス;カリシウイルス;アルボウイルス;コロナウイルス;レトロウイルス;ラブドウイルス;パラミクソウイルス;オルトミクソウイルス;アレナウイルス;ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス;ヒト乳頭腫ウイルス;およびヒト免疫不全ウイルスから選択されるウイルスが原因の感染を有しうる。
【0074】
いくつかの態様において、被験体をヒト免疫不全ウイルス-1、ヒト免疫不全ウイルス-2、サイトメガロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、単核細胞症様症候群、小児バラ疹、水痘-帯状疱疹ウイルス、帯状ヘルペス、単純ヘルペスウイルス、または肝炎などのウイルスによる感染またはその感染に対して治療することもできる。
【0075】
方法は寄生生物感染を有する被験体を治療するために特に有効でありうると考えられる。したがって、様々な態様において、被験体をプラスモディウム属(例えば、典型的にはハマダラカ属の蚊によって媒介される、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodia falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodia vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodia ovale)、および四日熱マラリア原虫(Plasmodia malariae));リーシュマニア属(スナバエにより媒介され、偏性細胞内原生動物、例えば、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、小児リーシュマニア(Leishmania infantum)、シャーガスリーシュマニア(Leishmania chagasi)、メキシコリーシュマニア(Leishmania mexicana)、アマゾンリーシュマニア(Leishmania amazonensis)、ベネズエラリーシュマニア(Leishmania venezuelensis)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica);大形リーシュマニア(Leishmania major);エチオピアリーシュマニア(Leishmania aethiopica);ならびにビアーニア亜属、ブラジルリーシュマニア(Leishmania Viannia braziliensis)、ギアナリーシュマニア(Leishmania Viannia guyanensis)、パナマリーシュマニア(Leishmania Viannia panamensis)、およびペルーリーシュマニア(Leishmania Viannia peruviana)が原因);トリパノソーマ属(例えば、ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)およびローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei rhodesiense)が原因の睡眠病);ネグレリア属またはアカントアメーバ属のアメーバ;エントアメーバ属(赤痢アメーバおよびエントアメーバ-ディスパー)などの病原体;ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia);クリプトスポリジウム属;イソスポラ属;シクロスポラ属;微胞子虫類;回虫;住血吸虫属(例えば、ビルハルツ住血吸虫(S. hematobium);マンソン住血吸虫(S. mansoni);日本住血吸虫(S. japonicum);メコン住血吸虫(S. mekongi);インターカラタム住血吸虫(S. intercalatum))の住血吸虫による感染;トキソプラスマ症(例えば、トキソプラスマ-ゴンジ(Toxoplasma gondii));梅毒トレポネーマ;膣トリコモナスなどによる感染に対して治療することもできる。
【0076】
いくつかの態様において、被験体はトキソプラスマ-ゴンジ、ガンビアトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、ドノバンリーシュマニア、小児リーシュマニア、シャーガスリーシュマニア、メキシコリーシュマニア、アマゾンリーシュマニア、ベネズエラリーシュマニア、熱帯リーシュマニア;大形リーシュマニア;エチオピアリーシュマニア;およびビアーニア亜属、ブラジルリーシュマニア、ギアナリーシュマニア、パナマリーシュマニア、ペルーリーシュマニア、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、および四日熱マラリア原虫から選択される原生動物が原因の感染を有しうる。
【0077】
二十世紀に、死亡率の著しい低下をもたらした抗生物質が開発された。残念なことに、広範な使用が抗生物質耐性菌、例えば、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE)、およびペニシリン耐性肺炎連鎖球菌(PRSP)の出現を引き起こした。細菌の中には一連の抗生物質に耐性を示すものもあり、例えば、ヒト結核菌の菌株はイソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ストレプトマイシン、エチオナミド、カナマイシン、およびリファブチンに耐性である。耐性に加えて、全世界にわたる移動によって、比較的知られていない細菌が孤立した地域から新しい集団へと拡がることになった。さらに、生物兵器としての細菌の脅威がある。これらの細菌は既存の抗生物質では容易に治療できないと考えられる。
【0078】
本方法は薬物耐性病原体、例えば、薬物耐性菌、または利用できる薬物がない病原体、例えば、多くのウイルスに対して被験体を治療するために特に有効でありうると考えられる。理論に縛られたくはないが、方法はNK細胞活性を増強することにより作用しうるため、NK細胞は、病原体または感染細胞への化合物の任意の直接作用とは別に、感染性微生物または感染した細胞を死滅させることができると考えられる。したがって、本方法は、典型的に細菌自体に直接作用しうる抗生物質などの典型的抗感染薬とは別の、少なくとも一つの作用様式を有しうると考えられる。
【0079】
薬物耐性病原体は少なくとも一つ、典型的には複数の薬剤に耐性でありえ、例えば、薬物耐性菌はペニシリン、メチシリン、第二世代セファロスポリン(例えば、セフロキシムなど)、マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン、トリメトプリム/メトキサゾール、バンコマイシンなどの一つの抗生物質、または典型的には少なくとも二つの抗生物質に耐性でありうる。例えば、いくつかの態様において、被験体を多剤耐性肺炎連鎖球菌(MDRSP、以前はペニシリン耐性肺炎連鎖球菌、PRSPとして知られていた)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ペニシリン耐性肺炎球菌、抗生物質耐性サルモネラ、耐性および多耐性淋菌(例えば、テトラサイクリン、ペニシリン、フルオロキノロン、セファロスポリン、セフトリアキソン(ロセフィン)、セフィキシム(スプラックス)、アジスロマイシンなどの一つ、二つまたはそれ以上)、ならびに耐性および多耐性結核(例えば、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ピラジンアミド、アミノ配糖体、カプレオマイシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ゲミフロキサシン、シクロセリン、エチオナミド、パラアミノサリチル酸などの一つ、二つまたはそれ以上)から選択される細菌に対して治療することもできる。
【0080】
いくつかの態様において、免疫不全を有する被験体のNK活性を増強することができる。様々な態様において、これはNK細胞活性の低下または欠如によるものでありうる。いくつかの態様において、免疫不全は、NK細胞に直接影響をおよぼさないものであっても、任意の公知の免疫不全でありうる。理論に縛られたくはないが、NK細胞活性を高めることは多くの免疫不全状態で免疫機能を強化して、少なくとも部分的に、NK細胞活性に直接関わる局面とは別に免疫不全の局面を「補う」ことができると考えられる。
【0081】
様々な態様において、免疫不全障害には感染に対する感受性が高い障害、例えば、下記から選択される一つまたは複数の障害が含まれうる:循環および全身障害(鎌状赤血球症、真性糖尿病、ネフローゼ、拡張蛇行静脈、先天性心欠陥);閉塞性障害(尿管または尿道狭窄、気管支喘息、気管支拡張、アレルギー性鼻炎、エウスタキオ管遮断);外皮の欠陥(湿疹、熱傷、頭蓋骨折、正中瘻孔、毛様体異常);原発性免疫不全(X連鎖無ガンマグロブリン血症、ディジョージ異常、慢性肉芽腫症、C3欠損症);続発性免疫不全(栄養不良、早産、リンパ腫、脾摘、尿毒症、免疫抑制療法、タンパク喪失性腸症、慢性ウイルス疾患);異常微生物因子(抗生物質性過増殖、耐性微生物による慢性感染、持続的再感染(汚染された水の供給、感染性接触、汚染された吸入療法装置));異物、外傷(心室シャント、中心静脈カテーテル、人工弁、尿道カテーテル、異物吸引)同種移植、移植片対宿主病、子宮機能不全(例えば、子宮内膜症)など。
【0082】
様々な態様において、免疫不全障害には、例えば、新生児期の一過性低ガンマグロブリン血症、選択的IgA欠乏症、X連鎖無ガンマグロブリン血症(ブルトン無ガンマグロブリン血症;先天性無ガンマグロブリン血症)、分類不能型免疫不全(後天性無ガンマグロブリン血症)、高IgM免疫不全、IgG亜群不全、慢性粘膜皮膚カンジダ症、複合免疫不全、ヴィスコット-オールドリッチ症候群、毛細管拡張性運動失調、X連鎖リンパ増殖症候群、高IgE症候群(ジョブ-バックレイ症候群)、慢性肉芽腫症、白血球粘着不全症(MAC-1/LFA-1/CR3欠損)などが含まれうる。
【0083】
様々な態様において、免疫不全障害には原発性免疫不全障害、例えば下記が含まれうる:B細胞(抗体)欠損症(X連鎖無ガンマグロブリン血症;高IgMを伴うIg欠損症(XL);IgA欠損症);IgG亜群欠損症、正常または高Igを伴う抗体欠損症、胸腺腫を伴う免疫不全、分類不能型免疫不全、新生児期の一過性低ガンマグロブリン血症);T細胞(細胞性)欠損症(優勢型T細胞欠損症:ディジョージ異常、慢性粘膜皮膚カンジダ症、Igを伴う複合免疫不全(ネゼロフ症候群)、ヌクレオシドホスホリラーゼ欠損症(AR)、ナチュラルキラー細胞欠損症、特発性CD4リンパ球減少症、複合TおよびB細胞欠損症:重症複合免疫不全(ARまたはXL)、アデノシンデアミナーゼ欠損症(AR)、細網異形成症、裸リンパ球症候群、毛細管拡張性運動失調(AR)、ヴィスコット-オールドリッチ症候群(XL)、短肢矮小発育症、XLリンパ増殖症候群);食細胞障害(細胞運動の欠如:高免疫グロブリン血症E症候群、白血球粘着不全症1型(AR)、殺菌作用の欠如:慢性肉芽腫症(XLまたはAR)、好中球G6PD欠損症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症(AR)、チェディアック-東症候群(AR));補体障害(補体成分の欠如:C1q欠損症、制御タンパク質の欠如:C1阻害因子抑制因子欠損症(D1)、第I因子(C3b不活化因子)欠損症(ACD)、第H因子欠損症(ACD)、第D因子欠損症(ACD)、プロペルジン欠損症(XL))など。
【0084】
様々な態様において、免疫不全障害には続発性免疫不全障害、例えば、下記から選択される一つまたは複数の状態が含まれうる:早産児および新生児(免疫系未成熟による生理的免疫不全);遺伝および代謝疾患(染色体異常(例えば、ダウン症候群)、尿毒症、糖尿病(すなわち、末梢循環および神経機能不全に関連する壊疽)、栄養不良、ビタミンおよびミネラル欠乏、タンパク喪失性腸症、ネフローゼ症候群、筋緊張性ジストロフィ、鎌状赤血球症);免疫抑制因子(放射線、免疫抑制剤、コルチコステロイド、抗リンパ球または抗胸腺細胞グロブリン、抗T細胞モノクローナル抗体);感染症(先天性風疹、ウイルス性発疹(例えば、麻疹、水痘)、HIV感染、サイトメガロウイルス感染、感染性単核細胞症、急性細菌症、重症ミコバクテリアまたは真菌症);浸潤性および出血性疾患(組織球増殖症、サルコイドーシス、ホジキン病およびリンパ腫、白血病、骨髄腫、顆粒球減少症および再生不良性貧血);手術および外傷(熱傷、脾摘、麻酔、創傷);ならびにその他(SLE、慢性活動性肝炎、アルコール性肝硬変、加齢、抗痙攣薬、移植片対宿主病)など。
【0085】
特定の態様において、被験体を熱傷または創傷について治療することもできる。典型的には、そのような創傷または熱傷は被験体の免疫防御に著しい負荷をかける重度の傷害である。例えば、いくつかの態様において、被験体をその体表面積の少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、75%、またはそれ以上を覆う二度または三度の熱傷について治療する。また、いくつかの態様において、被験体を一つまたは複数の創傷、例えば、少なくとも約1cm2、2cm2、5cm2、10cm2、20cm2、50cm2もしくはそれ以上、または被験体の体表面積の1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、もしくはそれ以上の開放創;あるいは合計で少なくとも1cm、2cm、3cm、4cm、5cm、7cm、10cm、20cm、25cm、50cmの長さの、皮膚を貫通する切開;切断などについて治療する。
【0086】
様々な態様において、被験体は抗生物質耐性菌による感染を有しうる。いくつかの態様において、被験体は多剤耐性肺炎連鎖球菌、バンコマイシン耐性エンテロコッカス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ペニシリン耐性肺炎球菌、抗生物質耐性サルモネラ、耐性/多耐性淋菌、および耐性/多耐性結核から選択される細菌が原因の感染を有しうる。いくつかの態様において、被験体はペニシリン、メチシリン、第二世代セファロスポリン、マクロライド、テトラサイクリン、トリメトプリム/メトキサゾール、バンコマイシン、テトラサイクリン、フルオロキノロン、セフトリアキソン、セフィキシム、アジスロマイシン、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ピラジンアミド、アミノ配糖体、カプレオマイシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ゲミフロキサシン、シクロセリン、エチオナミド、およびパラアミノサリチル酸から選択される少なくとも一つの抗生物質に耐性の細菌感染を有しうる。
【0087】
したがって、様々な態様、被験体は免疫不全障害を有しうる。いくつかの態様において、被験体は原発性免疫不全障害を有しうる。いくつかの態様において、被験体は続発性免疫不全障害を有しうる。
【0088】
いくつかの態様において、免疫不全障害には尿毒症、糖尿病(その感染性合併症、栄養不良、ビタミンおよびミネラル欠乏、タンパク喪失性腸症、ネフローゼ症候群、筋緊張性ジストロフィ、鎌状赤血球症などが含まれうる。
【0089】
いくつかの態様において、免疫不全障害には免疫抑制因子、例えば、放射線、免疫抑制剤、コルチコステロイド、抗リンパ球または抗胸腺細胞グロブリン、抗T細胞モノクローナル抗体などが含まれうる。
【0090】
いくつかの態様において、免疫不全障害には手術および外傷、例えば、熱傷、脾摘、麻酔、創傷、埋込み医学装置などが含まれる。
【0091】
いくつかの態様において、免疫不全障害には慢性疲労症候群(慢性疲労免疫機能不全症候群);エプスタイン-バーウイルス感染、ウイルス後疲労症候群、移植後症候群(宿主-移植片疾患)、酸化窒素シンターゼ阻害剤への曝露、加齢、重症複合免疫不全、分類不能型免疫不全症候群などが含まれうる。
【0092】
本明細書において用いられる「薬学的組成物」は、被験体への投与に適した形の、開示化合物を含む製剤でありうる。薬学的組成物はバルクまたは単位用量剤形でありうる。単位用量剤形は、例えば、カプセル剤、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器のポンピング一回、またはバイアルを含む様々な剤形のいずれでもありうる。組成物の単位用量中の活性成分(すなわち、開示化合物またはその塩の製剤)の量は有効量でありえ、関与する特定の治療に応じて変動しうる。患者の年齢および状態に応じて用量を日常的に変えることが必要でありうることは理解されると思われる。用量は投与経路にも依存しうる。局所、経口、肺、直腸、腟や、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内および鼻内を含む非経口を含む、様々な経路が企図される。
【0093】
本明細書に記載の化合物、およびその薬学的に許容される塩を薬学的製剤において薬学的に許容される担体または希釈剤との組み合わせで用いることができる。適当な薬学的に許容される担体には、不活性固体充填剤または希釈剤および滅菌水性または有機溶液が含まれる。化合物はそのような薬学的組成物中に、本明細書に記載の範囲の所望の用量を提供するのに十分な量で含まれうる。本発明の開示化合物の製剤および投与の技術はRemington: the Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, Mack Publishing Co., Easton, PA (1995)において見いだすことができる。
【0094】
経口投与のために、開示化合物またはその塩を適当な固体または液体担体または希釈剤と組み合わせて、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤などを生成することができる。
【0095】
錠剤、丸剤、カプセル剤などは約1から約99重量パーセントの活性成分とトラガカントゴム、アカシア、トウモロコシデンプンもしくはゼラチンなどの結合剤;リン酸2カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンもしくはアルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;および/またはショ糖、乳糖もしくはサッカリンなどの甘味料とを含むことができる。用量単位剤形がカプセル剤である場合、これは前述の型の材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含んでいてもよい。
【0096】
様々な他の材料を、コーティングとして、または用量単位の物理的形状を変えるために含むこともできる。例えば、錠剤をシェラック、糖または両方でコーティングしてもよい。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性成分に加えて、甘味料としてのショ糖、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素ならびにサクランボおよびオレンジ風味の矯味矯臭薬などを含んでいてもよい。
【0097】
非経口投与のために、ビス(チオ-ヒドラジド)アミドを滅菌水性または有機媒質と組み合わせて、注射用液剤または懸濁剤を生成することができる。例えば、ゴマまたは落花生油、水性プロピレングリコールなどの溶液、ならびに化合物の薬学的に許容される水溶性塩の水溶液を用いることができる。分散剤を油中のグリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびその混合物中で調製することもできる。通常の保存および使用条件下で、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐために保存剤を含む。
【0098】
前述の製剤に加えて、化合物をデポー製剤として製剤してもよい。この型の適当な製剤には、架橋または水に不溶性の多糖製剤、重合可能なポリエチレンオキサイド製剤、含浸膜などを用いる生物適合性かつ生分解性ヒドロゲルポリマー製剤が含まれる。そのような長期作用製剤は埋込みもしくは経皮送達(例えば、皮下または筋肉内)、筋肉内注射または経皮パッチによって投与してもよい。典型的には、これらは患部臓器または組織の微環境に埋込むか、または適用することができ、例えば、開示化合物を含浸した膜を開放創または熱傷に適用することができる。したがって、例えば、化合物を適当なポリマーもしくは疎水性材料と共に、例えば、許容される油中の乳濁液として、またはイオン交換樹脂と共に製剤してもよく、または難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として製剤してもよい。
【0099】
局所投与のために、適当な製剤は生物適合性の油、ワックス、ゲル、粉末、ポリマー、または他の液体もしくは固体担体を含んでいてもよい。そのような製剤は患部組織に直接適用することにより投与してもよく、例えば、結膜組織の感染を治療するための液体製剤を被験体の目に滴下投与することもでき、クリーム製剤を創傷部位に投与することもでき、または包帯に製剤を含浸することもできる。
【0100】
直腸投与のために、適当な薬学的組成物は、例えば、局所製剤、坐剤または浣腸剤である。
【0101】
膣投与のために、適当な薬学的組成物は、例えば、局所製剤、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたは噴霧剤である。
【0102】
加えて、活性物質を肺投与により、例えば、活性物質を含むエアロゾル製剤の、例えば、手動ポンプスプレー、噴霧器または加圧式定量吸入器からの投与により送達するために化合物を製剤してもよい。この型の適当な製剤は、開示化合物を有効なエアロゾルに維持するために、帯電防止剤などの他の物質を含むこともできる。
【0103】
本明細書において用いられる「肺」なる用語は、主な機能が患者内部の外部環境とのガス交換、すなわち、O2/CO2交換である、いかなる部分、組織または臓器も意味する。「肺」とは、典型的には、気道の組織を意味する。したがって、「肺投与」なる語句は、本明細書に記載の製剤を、主な機能が外部環境とのガス交換である、任意の部分、組織または臓器(例えば、口、鼻、咽頭、口腔咽頭部、咽頭喉頭部、喉頭、気管、竜骨、気管支、細気管支、肺胞)に投与することを意味する。本発明の目的のために、「肺」は気道に付随する組織または空洞、特に洞を含むことも意味する。
【0104】
エアロゾルを送達するための薬物送達装置は、前述の薬学的エアロゾル製剤を含む計量弁付きの適当なエアロゾルキャニスターと、キャニスターを保持して薬物送達を可能にするために適合させたアクチュエーターハウジングを含みうる。薬物送達装置内のキャニスターはその全容積の約15%よりも大きいヘッドスペースを有する。しばしば、肺投与が意図されるポリマーを溶媒、界面活性剤および噴射剤の混合物に溶解、懸濁または乳化する。混合物を、計量弁と共に密封したキャニスター内で加圧下に維持する。
【0105】
鼻投与のために、固体または液体担体のいずれかを用いることができる。固体担体には、例えば、約20から約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗粉末が含まれ、そのような製剤を鼻腔から急速吸入により投与する。液体担体を用いる場合、製剤を鼻噴霧剤または点鼻薬として投与してもよく、活性成分の油または水溶液を含みうる。
【0106】
前述の製剤に加えて、製剤は一つまたは複数の追加の薬物、例えば、他の抗真菌剤、抗炎症剤、抗生物質、抗ウイルス剤、免疫調節剤、抗原虫薬、ステロイド、うっ血除去薬、気管支拡張薬、抗ヒスタミン剤、抗癌剤などを任意に含むか、またはそれらと同時投与することもできる。例えば、開示化合物をイブプロフェン、プレドニゾン(コルチコステロイド)ペントキシフィリン、アンホテリシンB、フルコナゾール、ケトコナゾール、イトラコナゾール、ペニシリン、アンピシリン、アモキシフィリンなどの薬物と同時投与することもできる。製剤は保存剤、可溶化剤、化学緩衝剤、界面活性剤、乳化剤、着色剤、臭気物質、および甘味料を含んでいてもよい。
【0107】
様々な態様から条件により除外されるHsp70反応性障害には、2004年11月19日に提出されたBarsoumの米国特許仮出願第60/629,595号(代理人事件番号3211.1017-000)において同定されたいかなる障害も含まれ、前述の開示の全教示は参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において用いられる非感染性熱ショックタンパク質70(Hsp70)反応性障害、例えば、様々な態様から条件により除外されるHsp70障害は、ストレスをかけられた細胞をHsp70発現の増大により治療しうる医学的状態でありうる。アルツハイマー病;ハンチントン病;パーキンソン病;球脊髄性筋萎縮症(例えば、ケネディ病)、脊髄小脳性運動失調障害、および他の神経筋萎縮症;家族性筋萎縮性側索硬化症;虚血;発作;低体温;高体温;熱傷;アテローム性動脈硬化症;放射線被曝;緑内障;毒素曝露;機械的傷害;炎症などを含むが、それらに限定されるわけではない、そのような障害は、多様な細胞ストレッサーによって引き起こされうる。
【0108】
本明細書において用いられる「Hsp70」には、構成性、同族、細胞特異的、グルコース調節、誘導性などの型を含む、約70キロダルトンの質量を有する熱ショックタンパク質のファミリーの各メンバーが含まれる。特定のHsp70タンパク質の例には、hsp70、hsp70hom;hsc70;Grp78/BiP;mt-hsp70/Grp75などが含まれる。典型的には、開示する方法は誘導性Hsp70の発現を増大させる。機能的に、70kDa HSP(HSP70)ファミリーは、細胞質、ミトコンドリア、および小胞体におけるタンパク質の折りたたみ、輸送、および配列を補助するシャペロンのグループである。ヒトでは、Hsp70ファミリーは、高度に関連するタンパク質をコードする少なくとも11の遺伝子を含む。例えば、Tavaria, et al., Cell Stress Chaperones, 1996;1(1):23-28; Todryk, et al., Immunology. 2003, 110(1):1-9;およびGeorgopoulos and Welch, Annu Rev Cell Biol. 1993;9:601-634を参照されたく、これらの文書の全教示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0109】
様々な態様から条件により除外されるHsp70障害の例には、神経変性障害が含まれうる。本明細書において用いられる、神経変性障害は、脳、脊髄、および末梢ニューロン(例えば、神経筋接合部)などのニューロンの分解、より典型的には脳および脊髄ニューロンの分解に関与する。神経変性障害には、アルツハイマー病;ハンチントン病;パーキンソン病;球脊髄性筋萎縮症および他の神経筋萎縮症;ならびに家族性筋萎縮性側索硬化症またはスーパーオキシドジムスターゼ(SOD)突然変異が含まれうる。神経変性障害には、虚血、発作、熱ストレス、放射線、毒素曝露、感染、傷害などが含まれうる。
【0110】
様々な態様から条件により除外されるHsp70障害の他の例には、アルツハイマー病;ハンチントン病;パーキンソン病などのタンパク質凝集/誤った折りたたみの障害が含まれうる。
【0111】
様々な態様から条件により除外されるHsp70障害の他の例には虚血が含まれうる。虚血は、酸素欠乏、グルコース欠乏、再灌流後の酸化ストレス、および/またはグルタミン酸毒性などを含む複数の経路によって組織を損傷しうる。虚血は内因性の状態(例えば、卒中、心臓発作など)、事故による機械的傷害、外科的傷害(例えば、移植臓器への再灌流ストレス)の結果起こりうる。または、虚血によって損傷されうる組織には、ニューロン、心筋、肝組織、骨格筋、腎組織、肺組織、膵組織などが含まれる。
【0112】
同様に、様々な態様から条件により除外されるHsp70障害の例には、発作、例えば、てんかん発作、傷害誘導性発作、化学誘導性発作なども含まれうる。
【0113】
様々な態様から条件により除外されるHsp70障害のさらなる例には、熱ストレスによる障害が含まれうる。熱ストレスには、高体温(例えば、発熱、熱射病、熱傷などによる)および低体温が含まれる。
【0114】
様々な態様から条件により除外されるHsp70障害のさらなる例には、例えば、可視光、紫外線、マイクロ波、宇宙線、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、X線などによる放射線損傷が含まれうる。例えば、損傷は、放射線療法による癌治療を受けた被験体の非癌組織への放射線損傷が考えられる。
【0115】
様々な態様から条件により除外されるHsp70障害の特定の例には、機械的傷害、例えば、手術、事故、特定の疾患状態(例えば、緑内障における圧損傷)などによる外傷が含まれうる。
【0116】
様々な態様から条件により除外されるHsp70障害の特定の例には、毒素への曝露、例えば、メタンフェタミン;抗レトロウイルスHIV療法(例えば、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤;重金属(例えば、水銀、鉛、ヒ素、カドミウム、その化合物など)、アミノ酸類縁体、化学酸化剤、エタノール、グルタミン酸塩、代謝阻害剤、抗生物質などから選択される神経毒への曝露が含まれうる。
【0117】
癌は本発明から除外される。例にはKoyaらの2004年10月5日に発行された米国特許第6,800,660号;2004年7月13日に発行された第6,762,204号;およびKoyaらの2004年1月15日に提出された米国特許出願第10/758,589号において同定されたものが含まれ、その全教示は参照により本明細書に組み入れられる。例えば、そのような癌はヒト肉腫および癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝癌、胆道癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫;白血病、例えば、急性リンパ球性白血病および急性骨髄球性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ球性白血病);ならびに真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキン病)、多発骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、および重鎖病でありうる。
【0118】
様々な態様から条件により除外される癌の他の例には、急性および/または慢性白血病、例えば、リンパ球性白血病(例えば、p388(マウス)細胞株によって例示される)、大型顆粒リンパ球性白血病、およびリンパ芽球性白血病;T細胞白血病、例えば、T細胞白血病(例えば、CEM、ジャーカット、およびHSB-2(急性)、YAC-1(マウス)細胞株によって例示される)、Tリンパ球性白血病、およびTリンパ芽球性白血病;B細胞白血病(例えば、SB(急性)細胞株によって例示される)、およびBリンパ球性白血病;混合型白血病、例えば、BおよびT細胞白血病ならびにBおよびTリンパ球性白血病;骨髄性白血病、例えば、顆粒球性白血病、骨髄球性白血病(例えば、HL-60(前骨髄球)細胞株によって例示される)、および骨髄性白血病(例えば、K562(慢性)細胞株によって例示される);好中球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病(例えば、THP-1(急性)細胞株によって例示される);骨髄単球性白血病;ネーゲリ型骨髄性白血病;および非リンパ球性白血病を含む白血病が含まれる。白血病の他の例はThe Chemotherapy Sourcebook, Michael C. Perry Ed., Williams & Williams (1992)の第60章およびHolland Frie Cancer Medicine 5th Ed., Bast et al. Eds., B.C. Decker Inc. (2000)の第36項に記載されている。前述の引用文献の全教示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0119】
様々な態様から条件により除外される癌の他の例には、多発骨髄腫、T白血病(例えば、ジャーカットおよびCEM細胞株によって例示される);B白血病(例えば、SB細胞株によって例示される);前骨髄球(例えば、HL-60細胞株によって例示される);子宮肉腫(例えば、MES-SA細胞株によって例示される);単球性白血病(例えば、THP-1(急性)細胞株によって例示される);およびリンパ腫(例えば、U937細胞株によって例示される)などの非固形腫瘍が含まれる。
【0120】
様々な態様から条件により除外される癌の他の例には、結腸癌、膵臓癌、黒色腫、腎癌、肉腫、乳癌、卵巣癌、肺癌、胃癌、膀胱癌および子宮頸癌が含まれる。
【0121】
様々な態様から条件により除外される癌の他の例には、「多剤耐性」となった癌が含まれる。最初は抗癌剤に反応していた癌が抗癌剤に対して耐性となり、その場合、抗癌剤は癌を有する被験体の治療においてもはや有効ではない。例えば、多くの腫瘍は最初は抗癌剤による治療に対して、サイズ縮小または寛解への移行により反応し、その薬剤に対する耐性を生じるにとどまる。薬剤耐性腫瘍は、高用量の抗癌剤投与にもかかわらず、見かけ上寛解に移行した後の増殖の再開および/または再発によって特徴づけられる。複数の抗癌剤に対する耐性を生じた癌は「多剤耐性」と言われる。例えば、癌では三つ以上の抗癌剤に対して耐性となることが一般的で、五つ以上の抗癌剤に対する耐性もよく見られ、時には十以上の抗癌剤に対する耐性も出現する。
【0122】
増殖性細胞疾患は本発明から除外される。例には、Shermanらの2004年9月16日に提出された米国特許仮出願第60/610,270号(代理人事件番号3211.1015-000)において同定される障害が含まれ、その全教示は参照により本明細書に組み入れられる。例えば、様々な態様から条件により除外される非癌性増殖性障害には、平滑筋細胞増殖、全身性硬化症、肝硬変、成人呼吸促進症候群、特発性心筋症、紅斑性狼蒼、網膜症、例えば、糖尿病性網膜症または他の網膜症、心過形成、良性前立腺過形成および卵巣嚢胞などの生殖系関連障害、肺線維症、子宮内膜症、線維腫症、過誤腫、リンパ管腫症、類肉腫症、類腱腫などが含まれる。様々な態様から条件により除外される非癌性増殖性障害には、平滑筋細胞増殖、例えば、増殖性血管障害、例えば、内膜平滑筋細胞過形成、再狭窄および血管閉塞、特に生物学的または機械的血管傷害、例えば、バルーン血管形成または血管狭窄に関連する血管傷害後の狭窄も含まれる。さらに、内膜平滑筋細胞過形成には、血管系以外の平滑筋の過形成、例えば、胆管閉塞、喘息患者の肺の気管支気道、腎間質性線維症患者の腎臓などにおける過形成が含まれうる。様々な態様から条件により除外される非癌性増殖性障害には、乾癬およびその様々な臨床型、ライター症候群、毛口性紅色粃糠疹、ならびに角化(例えば、光線角化症、老年性角化症)、強皮症などの障害の過剰増殖性変異型などの皮膚における細胞の過剰増殖も含まれる。
【0123】
本発明から除外されるプロテアソーム阻害剤反応性障害。例には、Mei Zhangらの2004年11月19日に提出された米国特許仮出願第60/629,858号(代理人事件番号3211.1018-000)に、おいて同定される障害が含まれ、その全教示は参照により本明細書に組み入れられる。そのような状態には、例えば、前述の癌および非癌性増殖性状態、過度または加速されたタンパク質分解によって特徴づけられる状態、およびHsp70反応性障害が含まれる。様々な態様から条件により除外されるプロテアソーム阻害剤反応性障害のその他の例には、筋消耗病(例えば、発熱、筋廃用(萎縮)および脱神経、神経損傷、飢餓、アシドーシスに関連する腎不全、肝不全、尿毒症、糖尿病、および敗血症)、骨損失または低い骨密度の結果起こる骨格系障害(例えば、閉鎖骨折、開放骨折、偽関節骨折、年齢関連性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、糖質コルチコイド誘導性骨粗鬆症、廃用骨粗鬆症、関節炎)、成長不足(例えば、歯周疾患および欠陥、軟骨欠陥または障害)、毛髪成長の障害(例えば、男性型禿頭症、化学療法による脱毛症、加齢による毛髪菲薄化、毛髪被覆の欠損を来す遺伝障害)、乾燥眼障害(例えば、涙腺およびマイボーム腺などの関連する眼組織の過度の炎症、屈折手術(例えば、LASIK手術)に関連する乾燥眼)ならびに嚢胞性線維症が含まれる。
【0124】
実施例
実施例1:熱ショックタンパク質70(Hsp70)の測定
血漿Hsp70をサンドイッチELISAキット(Stressgen Bioreagents Victoria, British Columbia, CANADA)により社内の改変プロトコルに従って測定した。簡単に言うと、血漿試料中のHsp70および連続濃度のHsp70標準を96穴プレートに加え、その上に抗Hsp70抗体をコーティングした。次いで、プレート内のHsp70をビオチン化抗Hsp70抗体で検出し、続いてユーロピウム結合ストレプトアビジンと共にインキュベートした。各インキュベーションの後、未結合材料を洗浄により除去した。最後に、抗体-Hsp70複合体をユーロピウムの時間分解蛍光測定法により測定した。Hsp70の濃度を標準曲線から計算した。
【0125】
実施例2:
ナチュラルキラー細胞の細胞毒性活性の測定
以下の方法を用いて被験体のNK細胞活性をアッセイすることができる。方法をKantakamalakul W, Jaroenpool J, Pattanapanyasat K. A novel enhanced green fluorescent protein (EGFP)-K562 flow cytometric method for measuring natural killer (NK) cell cytotoxic activity. J Immunol Methods. 2003 Jan 15; 272:189-197から適合させ、その全教示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0126】
材料と方法:
ヒト赤白血病細胞株、K562をAmerican Type Culture Collection (CCL-243, American Type Culture Collection, Manassas, VA)から入手し、10%熱不活化ウシ胎仔血清(Gibco)、2mM L-グルタミン、100μg/mlストレプトマイシンおよび100IU/mlペニシリンを補充したRPMI-1640培地(Cat#11875-093Gibco Invitrogen Corp, Carlsbad, CA)中、37℃、5%CO2で培養した。K562細胞に緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするレトロウイルスベクターを導入した。安定細胞株を抗生物質、G418で選択した。約99.6%のG418耐性細胞が切断後にeGFP陽性であった。
【0127】
被験体の末梢血単核細胞(PBMC)は臨床試験実施施設が調製し、ヘパリンナトリウム(Product Number: 362753, Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)を含むBD Vacutainer Cell Preparation Tube中で受け取った。
【0128】
1×106細胞/mLから出発して二倍連続希釈したエフェクター細胞(患者のPBMC)800μlを4つの個々のポリスチレン12×75mmチューブに加えた。対数期増殖標的細胞(K562/eGFP)を増殖培地(RPMI-1640)で1×105細胞/mLに調節し、次いで100μLの標的をチューブに加えて、エフェクター/標的(E/T)比80:1、40:1、20:1、10:1とした。エフェクター細胞単独および標的細胞単独を対照として用いた。すべてのチューブを37℃、5%CO2で約3.5時間インキュベートした。濃度1mg/mLのヨウ化プロピジウム(PI)10マイクロリットルを、エフェクターおよび標的対照チューブを含む各チューブに加え、次いで室温で15分間インキュベートした。
【0129】
細胞毒性活性をFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)で分析した。前方および側方散乱(FSC/SSC)シグナルの直線増幅、ならびに緑色および赤色蛍光におけるeGFPおよびPI発光の対数増幅を得た。試料チューブ1本あたり100,000イベントを取得のためのゲーティングなしで収集した。eGFP対PIのための2パラメータードットプロットのデータ解析を、CELLQuest(Becton Dickinson Biosciences)ソフトウェアを用いて行い、生存および死滅標的細胞を計数した。細片および死滅細胞を、前方光散乱の閾値を設定することにより除外した。
【0130】
実施例3:開示の組み合わせ療法はHsp70を誘導する
様々な固形腫瘍を有するヒト被検者へのビス(チオ-ヒドラジド)アミド(化合物(1))とタキサン(パクリタキセル)との組み合わせ投与について第I相試験を実施した。化合物(1)およびパクリタキセルを3週間毎に3時間かけて静脈内に同時投与した。出発用量は化合物(1)44ミリグラム/メートル2(mg/m2、または110マイクロモル/メートル2(μmol/m2))およびパクリタキセル135mg/m2(158μmol/m2)であった。次いで、パクリタキセルを175mg/m2(205μmol/m2)に増量し、続いて化合物(1)を増量して、各用量レベルで3から6名の患者における第一周期毒性に基づき最大耐容用量を確立した。薬物動態(PK)試験を、血漿中の両化合物を測定するための液体クロマトグラフィ/質量分析(LC/MS)を用いて第1周期中に行った。血漿中の熱ショックタンパク質70(Hsp70)を治療前後に測定した。35名の患者を、パクリタキセル135mg/m2(158μmol/m2)および化合物(1)44mg/m2、ならびにパクリタキセル175mg/m2(205μmol/m2)および化合物(1)44〜525mg/m2(110〜1311μmol/m2)の範囲の用量を含む8段階の用量レベルで評価した。表1に8段階の異なる用量#1〜#8をmg/m2およびμmol/m2で示す。
【0131】
【表1】

【0132】
化合物(1)に起因しうる重篤な作用は観察されなかった。パクリタキセルの用量制限毒性は上から3つの用量レベルでそれぞれ1名の患者に現れ(好中球減少、関節痛、および粘膜炎を伴う有熱性好中球減少)、コホートを拡大することになった。化合物(1)はパクリタキセル用量によって影響されない直線PKを示し、血漿から速やかに排出され、終末相半減期は0.94±0.23時間(h)で、全身クリアランスは28±8リットル/時間/メートル2(L/h/m2)であった。その見かけの分布容積は循環血液量に匹敵していた(Vss 23±16L/m2)。パクリタキセルのPKは、クリアランス低下と、最大血漿濃度およびVss上昇の顕著な傾向があるが、終末相半減期に影響をおよぼさないことで示されるとおり、化合物(1)に中等度に依存していると思われた。これらの知見はパクリタキセル肝代謝の競合的阻害に一致している。高用量レベルでの毒性増大はパクリタキセル全身曝露の中等度の増大に一致していた。血漿中のHsp70の誘導は用量依存的で、投与後約8時間から約24時間の間に最大となった。
【0133】
図1A、1B、および1Cは、化合物(1)/パクリタキセル組み合わせ療法の投与に関連してのHsp70血漿レベルの、投与後1時間(図1A)、5時間(図1B)、および8時間(図1C)における上昇パーセントを示す棒グラフである。Hsp70レベルの著しい上昇が化合物(1)88mg/m2(220μmol/m2)用量の少なくとも一名の患者で見られ、この場合Hsp70レベルのパーセント上昇は二倍近くとなり、約90%であった。化合物(1)175mg/m2(437μmol/m2)用量では、Hsp70濃度は2名の患者で二倍を越え;化合物(1)263mg/m2(657μmol/m2)用量では、Hsp70濃度は2名の患者でほぼ二倍、3人目の患者では250%を越えて上昇し;化合物(1)350mg/m2(874μmol/m2)用量では、Hsp70濃度はすべての患者で200%を越えて上昇し、2名では500%も上昇し;化合物(1)438mg/m2(1094μmol/m2)用量では、Hsp70濃度は2名の患者でほぼ二倍、1名の患者で2005を越えて上昇し、もう1名では500%も上昇した。
【0134】
進行までの時間を患者無作為化から患者がRECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors Group)基準に従い最初に腫瘍進行を有すると記録されるまでの時間として測定する;Therasse P, Arbuck SG, Eisenhauer EA, Wanders J, Kaplan RS, Rubinstein L, et al. New guidelines to evaluate the response to treatment in solid tumors. J Natl Cancer Inst 2000;92:205-16を参照されたく、その全教示は参照により本明細書に組み入れられる。いかなる原因による死亡も進行と考える。
【0135】
進行までの時間は無作為化試料ならびに有効性試料で実施することができる。治療群を対数順位検定を用いて比較し、進行までの時間のカプラン-マイヤー曲線を示すことができる。
【0136】
図2は、白金抗癌剤およびタキサンの様々な組み合わせの試験における進行までの時間(癌増殖の回復)のカプラン-マイヤーグラフである。ビスチオヒドラジド(化合物(1))、タキサン(パクリタキセル)および白金抗癌剤、カルボプラチンの開示した組み合わせも示している。予備的データは、開示した方法がプラチン/タキサンの組み合わせだけよりも優れていることを示している。
【0137】
したがって、ビ(チオ-ヒドラジド)アミドとタキサンとの組み合わせは患者の血漿Hsp70レベルを劇的に高め、パクリタキセル用量175mg/m2(205μmol/m2)と化合物(1)用量88から438mg/m2(220〜1094μmol/m2)の範囲の組み合わせによる患者で著しい上昇が認められた。さらに、この組み合わせは耐容性が良好で、有害事象はパクリタキセル単独で予想されるものと一致していた。
【0138】
実施例4:第2相試験は開示したカルボプラチンとの組み合わせ療法が非小細胞肺癌の治療において有効であることを示している
非小細胞肺癌を有する患者における化合物(1)およびパクリタキセルの以下の試験を、化合物(1)とパクリタキセルとの組み合わせ投与が用量関連のHsp70誘導を引き起こした、前述の第I相試験の結果により示される生物活性に基づいて開始した。
【0139】
第I相(安全性/PK/MTD(最大耐容用量)に続いて、第2相無作為化2群試験を行った。第1相では二つの用量レベルを評価した。
【0140】
コホート1にはカルボプラチンAUC(area under the curve)6、パクリタキセル175mg/m2および化合物(1)233mg/m2を投与した。最大耐容用量が観察されなければ、コホート2をカルボプラチンAUC6、パクリタキセル200mg/m2および化合物(1)266mg/m2で登録した。
【0141】
投与は3週間毎にIVで、用量制限毒性または進行が見られない場合に6周期まで行った。第2相では、86名の患者をカルボプラチンAUC6+パクリタキセル200mg/m2を3週間毎にIV投与またはカルボプラチンAUC6、パクリタキセル200mg/m2および化合物(1)266mg/m2に1:1で無作為化するよう計画する。第2相の第1終点は進行までの時間、第2終点は反応率、生存率および生活の質である。試験の薬力学パラメーターにはNK細胞活性およびHsp70レベルが含まれる。
【0142】
第1相で16名の患者のうち、7名をコホート1で、9名をコホート2で治療した。第一周期の用量制限毒性はいずれのコホートでも見られなかった。相有害事象(AE)には(通常1〜2級)関節痛および筋痛、末梢神経障害、発疹、悪心および嘔吐、疲労、脱毛、浮腫、脱水、便秘、ならびに血球数減少が含まれた。11名の患者が6周期の治療を完了した。8名(50%)は部分寛解(PR)を達成した。試料が評価可能な8名のうちの7名は、二回目の投与の7日後に試験した際、NK細胞活性上昇を示した。
【0143】
カルボプラチン:パクリタキセル:化合物(1)の組み合わせは、試験した用量レベルでよく耐容され、全般的安全性プロファイルはカルボプラチン:パクリタキセルのみの場合とほぼ同等と思われる。有望な臨床活性、ならびに化合物(1)がインビボで生物活性であるとの結論を裏付ける相補的NK活性が観察された。
【0144】
すべての標的病巣について最も長い直径を考慮に入れて、RECIST基準を用いて標的病巣の客観的腫瘍反応を評価した。RECIST基準には下記が含まれる:
完全寛解(CR):すべての標的病巣の消失
部分寛解(PR):標的病巣の最長直径(LD)の合計において、基準時合計LDを基準とした場合の少なくとも30%減少
進行性疾患(PD):標的病巣のLDの合計において、少なくとも20%増加、または一つもしくは複数の新しい病巣の出現
安定疾患(SD):治療開始以来の最小合計LDを基準とした場合、PRと認定するのに十分な縮小が見られず、またPDと認定するのに十分な増加もない
【0145】
表2は、異なる被験体における実質的抗癌効果およびNK細胞活性の結果を示す。エフェクター/標的データは被験体のNKアッセイ標的細胞に対するPBMC細胞の比を示している。投与前および後のカラムの値はパクリタキセルおよび化合物(1)投与前に溶解した腫瘍細胞のパーセントを示している。最良反応は患者の腫瘍の評価を示す:PR=基準時に比べて最長直径の合計の少なくとも30%減少であり、SDは基準時に比べて最長直径の合計の20%未満の増加および30%未満の減少を示す。標的病巣は被験体の標的黒色腫病巣の変化パーセントを示している。NK活性は投与前後のNK活性の変化を示している。
【0146】
表2は、試験を完了した患者(#1〜#8)について、各患者の標的病巣サイズに実質的減少が見られたことを示す。また、試験を完了した8名のうち5名は最良反応評価の範疇、すなわち基準時に比べて最長直径の合計の少なくとも30%減少を示した。NK細胞活性については、元の11名の患者のうち8名が投与治療の前後で上昇を示したが、この実施例において差は対応のあるt検定により有意ではなかった(p=0.06)。
【0147】
【表2】

【0148】
コホート2の安全性プロファイルを考慮して、この用量レベル(カルボプラチンAUC6、パクリタキセル200mg/m2および化合物(1)266mg/m2)を第2相で用いた。
【0149】
実施例5:二段階第2相試験は開示した組み合わせ療法が進行転移黒色腫の治療において有効であることを示している
進行転移黒色腫を有する患者における化合物(1)およびパクリタキセルの以下の試験を、化合物(1)とパクリタキセルとの組み合わせ投与が用量関連のHsp70誘導を引き起こした、前述の第I相試験の結果により示される生物活性に基づいて開始した。
【0150】
試験は、第1段階の週一回投与スケジュールの初期安全性評価を含み、ここで化合物(1)106mg/m2(265μmol/m2)およびパクリタキセル80mg/m2(94μmol/m2)を4週間のうちの3週間、週一回投与した。次いで、化合物(1)の用量を213mg/m2(532μmol/m2)に増量して、パクリタキセル80mg/m2(94μmol/m2)と組み合わせた。より高い耐容用量レベルを合計20名の患者に拡大した(第1段階)。
【0151】
合計7名の患者を初期安全性評価において治療し、3名は低用量レベル、4名は高用量を投与した。用量制限毒性がいずれの群にも見られない場合、高用量レベルを対象用量として選択し、第1段階を完了するために追加の患者を登録した。見られた有害事象はパクリタキセル化学療法を投与した際に予想されるとおりであった。評価可能な患者20名のうち11名は3ヶ月の時点でNPR55%で安定であった。
【0152】
試験は、7名以上の患者が安定疾患もしくはそれよりも良い反応を示すか、または少なくとも2名の患者が部分寛解もしくはそれよりも良い反応を示す場合、第2段階へと継続する。週一回投与スケジュールは過去にヒトで試験されていないため、安全性評価を最初に登録された6名の患者で実施した。第1終点は3ヶ月の時点の非進行率(NPR)および反応率である。薬力学パラメーターには投与前後の血中NK細胞活性および可能な場合には腫瘍生検が含まれる。
【0153】
表3は、異なる被験体について二回目の投与の7日後に試験した際の、抗癌効果およびNK細胞活性結果の有意な予備的結果を示す。エフェクター/標的データは被験体のNKアッセイ標的細胞に対するPBMC細胞の比を示している。投与前および後のカラムの値はパクリタキセルおよび化合物(1)投与前に溶解した腫瘍細胞のパーセントを示している。最良反応は患者の腫瘍の評価を示す:SDは基準時に比べて最長直径の合計の20%未満の増加および30%未満の減少を示し;ならびにPD=基準時に比べて最長直径の合計の少なくとも20%の増加である。NK活性は投与前後のNK活性の変化を示している。
【0154】
表3は、試験を完了した患者(#12〜#20、#22)について、3名は基準時に比べて最長直径の合計の20%未満の増加および30%未満の減少を有していたが、7名は基準時に比べて最長直径の合計の少なくとも20%の増加を有していたことを示す。NK細胞活性については、元の患者のうち4名が投与治療の前後で統計学的有意な上昇を示した。
【0155】
【表3】

【0156】
組み合わせ療法は週一回スケジュールでよく耐容された。無作為化部分における登録は、化合物(1)とパクリタキセルとの組み合わせ対パクリタキセル単独の活性を評価することになる。
【0157】
第2段階は、薬物組み合わせをパクリタキセル単独に対して比較する無作為化2群試験として計画する。第2段階への継続の基準は2ヶ月の時点で非進行率(NPR)>=50%である。合計78名の患者を2:1(組み合わせ:対照)に無作為化する。第1終点は進行までの時間であり;第2終点は反応率、生存率、および生活の質である。薬力学パラメーターには投与前後の血中NK細胞活性の測定および、可能な場合には、腫瘍生検が含まれる。
【0158】
実施例6:第2相試験は開示した組み合わせ療法が軟部組織肉腫の治療において有効であることを示している
軟部組織肉腫を有する患者における化合物(1)およびパクリタキセルの以下の試験を、化合物(1)とパクリタキセルとの組み合わせ投与が用量関連のHsp70誘導を引き起こした、前述の第I相試験の結果により示される生物活性に基づいて開始した。
【0159】
試験は、第1段階に30名の患者を登録し、特定の継続基準が満たされれば50名追加して合計80名の、2段階デザインである。主な登録基準は、消化管間質腫瘍(GIST)以外の抗療性または再発軟部組織肉腫で、最近の進行の証拠を有するものである。患者を、化合物(1)213mg/m2およびパクリタキセル80mg/m2で、4週間周期毎に3週間、週一回治療する。例えば、4週間のうちの3週間、28日周期の第1、8、および15日に、1時間のIV注入で化合物を一緒に投与した。30名の患者を第1段階の自然増加を完了するよう登録した。
【0160】
本明細書において用いられる「軟部組織肉腫」(STS)は、体の様々な部分を支持する、連結する、および取り巻く軟部組織、例えば、筋肉、脂肪、腱、神経、および血管などの軟部組織、リンパ節などにおいて始まる癌である。そのようなSTSは体のどのような場所にも出現しうるが、典型的には半数は四肢に生じる。様々な態様において、STSには脂肪肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫 平滑筋肉腫、神経線維肉腫、横紋筋肉腫、滑膜肉腫などから選択される一つまたは複数の眼が含まれうる。
【0161】
表4は、異なる被験体について二回目の投与の7日後に試験した際の、抗癌効果およびNK細胞活性結果の有意な予備的結果を示す。エフェクター/標的データは被験体のNKアッセイ標的細胞に対するPBMC細胞の比を示している。投与前および後のカラムの値はパクリタキセルおよび化合物(1)投与前に溶解した腫瘍細胞のパーセントを示している。最良反応は患者の腫瘍の評価を示す:PR=基準時に比べて最長直径の合計の少なくとも30%減少であり;SDは基準時に比べて最長直径の合計の20%未満の増加および30%未満の減少を示し;ならびにPD=基準時に比べて最長直径の合計の少なくとも20%の増加である。NK活性は投与前後のNK活性の変化を示している。
【0162】
表4は、試験を完了した患者(#23〜#29、#31〜33)について、5名は基準時に比べて最長直径の合計の20%未満の増加および30%未満の減少を有していたが、5名は基準時に比べて最長直径の合計の少なくとも20%の増加を有していたことを示す。NK細胞活性については、元の患者のうち7名が投与治療の前後で統計学的有意な上昇を示したか、または無変化であったが、元の患者の4名だけが投与治療の前後で低下を示した。
【0163】
【表4】

【0164】
患者は現在、3ヶ月を通して評価中である。認められた有害事象は同様のスケジュールでのパクリタキセル投与に典型的なものであった。NK活性の評価は現在進行中である。週に一回のパクリタキセルスケジュールに化合物(1)を追加した場合にもよく耐容された。第1段階自然増加は完了し、患者は現在試験継続決定について評価中である。
【0165】
本発明をその好ましい態様に関して特に示し、記載してきたが、当業者であれば添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形状および詳細における様々な変更を行いうることを理解すると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】図1A、1B、および1Cは、化合物(1)/パクリタキセル組み合わせ療法の投与に関連してのHsp70血漿レベルの、投与後1時間(図1A)、5時間(図1B)、および8時間(図1C)における上昇率(パーセント)を示す棒グラフである。
【図2】白金抗癌剤およびタキサンの様々な組み合わせの試験における進行までの時間(癌増殖の回復)のカプラン-マイヤーグラフである。ビスチオヒドラジド(化合物(1))、タキサン(パクリタキセル)および白金抗癌剤、カルボプラチンの開示した組み合わせも示している。予備的データは、開示した方法が以前のプラチン/タキサンの組み合わせだけよりも優れていることを示している。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害が癌、増殖性細胞障害、非感染性熱ショックタンパク質70(Hsp70)反応性障害、またはプロテアソーム阻害剤反応性障害ではないとの条件で、免疫系強化を必要としている被験体のナチュラルキラー(NK)細胞活性を増強する方法であって、下記の構造式で表されるビス(チオ-ヒドラジドアミド)またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を投与する段階を含む方法:

式中:
Yは共有結合もしくは置換されていてもよい直鎖ヒドロカルビル基であるか、またはYはそれが結合している両方の>C=Z基と一緒になって置換されていてもよい芳香族基であり;
R1〜R4は独立に-H、置換されていてもよい脂肪族基、置換されていてもよいアリール基であるか、またはR1およびR3はそれらが結合している炭素および窒素原子と一緒になって、かつ/もしくはR2およびR4はそれらが結合している炭素および窒素原子と一緒になって、任意に芳香環と縮合している非芳香族複素環を形成し;
R7〜R8は独立に-H、置換されていてもよい脂肪族基、または置換されていてもよいアリール基であり;かつ
ZはOまたはSである。
【請求項2】
被験体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
被験体が開放創または熱傷を有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
被験体が細菌、ウイルス、真菌、もしくは寄生生物感染、またはその組み合わせを有する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
被験体が菌血症を有する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
被験体が細胞内感染を有する、請求項4記載の方法。
【請求項7】
被験体が白癬菌属、白癬、小胞子菌属、表面菌属、アスペルギルス属、ヒストプラスマ属、クリプトコックス属、小胞子菌属、カンジダ属、マラセジア属、トリコスポロン属、ロドトルラ属、トルロプシス属、ブラストミセス属、パラコクシジオイデス属、およびコクシジオイデス属から選択される真菌が原因の感染を有する、請求項4記載の方法。
【請求項8】
被験体が白癬菌属、白癬、小胞子菌属、表面菌属;クリプトコックス属、カンジダ属、パラコクシジオイデス属、およびコクシジオイデス属から選択される真菌が原因の感染を有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
被験体が紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、クリプトコックス-ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、カンジダ-アルビカンス(Candida albicans)、パラコクシジオイデス-ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、およびコクシジオイデス-イミチス(Coccidioides immitis)から選択される真菌が原因の感染を有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
被験体がアロクロマチウム属、アシネトバクター属、バチルス属、カンピロバクター属、クラミジア属、クラミドフィラ属、クロストリジウム属、シトロバクター属、エシェリキア属、エンテロバクター属、エンテロコッカス属、フランシセラ属、ヘモフィルス属、ヘリコバクター属、クレブシエラ属、リステリア属、モラクセラ属、ミコバクテリウム属、ミクロコッカス属、ナイセリア属、プロテウス属、シュードモナス属、サルモネラ属、セラチア属、シゲラ属、ステノトロフォモナス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、シネココッカス属、ビブリオ属、エルシニア属;ペプトストレプトコッカス属、ポルフィロモナス属、アクチノミセス属、クロストリジウム属、バクテロイデス属、プレボテラ属、アネロビオスピリルム属、フゾバクテリウム属、およびバイロフィラ属から選択される細菌が原因の感染を有する、請求項4記載の方法。
【請求項11】
被験体がアロクロマチウム-ビノスム(Allochromatium vinosum)、アシネトバクター-バウマニイ(Acinetobacter baumanii)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、カンピロバクター-ジェジュニ(Campylobacter jejuni)、クラミジア-トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、クラミジア-ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、クロストリジウム菌種、シトロバクター菌種、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロバクター菌種、エンテロコッカス-フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス-フェシウム(Enterococcus faecium)、フランシセラ-ツラレンシス(Francisella tularensis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクター-ピロリ(Helicobacter pylori)、クレブシエラ菌種、リステリア-モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、モラクセラ-カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、霊菌(Proteus mirabilis)、尋常変形菌(Proteus vulgaris)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、サルモネラ菌種、セラチア菌種、シゲラ菌種、ステノトロフォモナス-マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス-アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、エルシニア-ペスティス(Yersina pestis)、エルシニア-エンテロコリティカ(Yersina enterocolitica)、ペプトストレプトコッカス-アサッカロリチカス(Peptostreptococci asaccharolyticus)、ペプトストレプトコッカス-マグヌス(Peptostreptococci magnus)、ペプトストレプトコッカス-ミクロス(Peptostreptococci micros)、ペプトストレプトコッカス-プレボッチイ(Peptostreptococci prevotii)、ポルフィロモナス-アサッカロリチカ(Porphyromonas asaccharolytica)、ポルフィロモナス-カノリス(Porphyromonas canoris)、ポルフィロモナス-ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)、ポルフィロモナス-マカッケイ(Porphyromonas macaccae)、イスラエル放線菌(Actinomyces israelii)、アクチノミセス-オドントリティクス(Actinomyces odontolyticus)、クロストリジウム-イノクーム(Clostridium innocuum)、クロストリジウム-クロストリジオフォルメ(Clostridium clostridioforme)、クロストリジウム-ディフィシレ(Clostridium difficile)、バクテロイデス-テクタム(Bacteroides tectum)、バクテロイデス-ウレオリチカス(Bacteroides ureolyticus)、バクテロイデス-グラシリス(Bacteroides gracilis)(カンピロバクター-グラシリス(Campylobacter gracilis))、プレボテラ-インターメディア(Prevotella intermedia)、プレボテラ-ヘパリノリチカ(Prevotella heparinolytica)、プレボテラ-オリスブッケイ(Prevotella oris-buccae)、プレボテラ-ビビア(Prevotella bivia)、プレボテラ-メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica)、フゾバクテリウム-ナヴィフォルメ(Fusobacterium naviforme)、壊死杆菌(Fusobacterium necrophorum)、フゾバクテリウム-ヴァリウム(Fusobacterium varium)、フゾバクテリウム-ウルセランス(Fusobacterium ulcerans)、フゾバクテリウム-ルッシー(Fusobacterium russii)、バイロフィラ-ワズワーシア(Bilophila wadsworthia)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi);およびカリマトバクテリウム-グラヌロマティス(Calymmatobacterium granulomatis)から選択される細菌が原因の感染を有する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
被験体がエールリヒア属;リステリア属;レジオネラ属;リケッチア属;クラミジア属;ミコバクテリウム属;ブルセラ属;およびコクシエラ属から選択される細菌が原因の細胞内細菌感染を有する、請求項10記載の方法。
【請求項13】
被験体が上気道細菌感染、慢性気管支炎の急性細菌性増悪;急性市中感染肺炎、上顎洞病原菌;尿路感染;または性行為感染を来す感染を有する、請求項4記載の方法。
【請求項14】
被験体がピコルナウイルス;パルボウイルス;肝炎ウイルス;パポバウイルス;アデノウイルス;ヘルペスウイルス、ポックスウイルス;カリシウイルス;アルボウイルス;コロナウイルス;レトロウイルス;ラブドウイルス;パラミクソウイルス;オルトミクソウイルス;アレナウイルス;ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス;ヒト乳頭腫ウイルス;およびヒト免疫不全ウイルスから選択されるウイルスが原因の感染を有する、請求項4記載の方法。
【請求項15】
被験体がヒト免疫不全ウイルス-1、ヒト免疫不全ウイルス-2、サイトメガロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、小児バラ疹、水痘-帯状疱疹ウイルス、帯状ヘルペス、単純ヘルペスウイルス、および肝炎ウイルスから選択されるウイルスが原因の感染を有する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
被験体がプラスモディウム属;リーシュマニア属;トリパノソーマ属;ネグレリア属;アカントアメーバ属;エントアメーバ属;ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia);クリプトスポリジウム属;イソスポラ属;シクロスポラ属;微胞子虫類;回虫;住血吸虫属;トレポネーマ属;およびトリコモナス属から選択される寄生生物が原因の感染を有する、請求項4記載の方法。
【請求項17】
被験体がトキソプラスマ-ゴンジ(Toxoplasma gondii)、ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)、ローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei rhodesiense)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、小児リーシュマニア(Leishmania infantum)、シャーガスリーシュマニア(Leishmania chagasi)、メキシコリーシュマニア(Leishmania mexicana)、アマゾンリーシュマニア(Leishmania amazonensis)、ベネズエラリーシュマニア(Leishmania venezuelensis)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica);大形リーシュマニア(Leishmania major);エチオピアリーシュマニア(Leishmania aethiopica);ブラジルリーシュマニア(Leishmania Viannia braziliensis)、ギアナリーシュマニア(Leishmania Viannia guyanensis)、パナマリーシュマニア(Leishmania Viannia panamensis)、ペルーリーシュマニア(Leishmania Viannia peruviana)、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodia falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodia vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodia ovale)、および四日熱マラリア原虫(Plasmodia malariae)から選択される原生動物が原因の感染を有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
被験体が抗生物質耐性菌が原因の感染を有する、請求項4記載の方法。
【請求項19】
被験体が多剤耐性肺炎連鎖球菌、バンコマイシン耐性エンテロコッカス、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus)、ペニシリン耐性肺炎球菌、抗生物質耐性サルモネラ、耐性/多耐性淋菌、および耐性/多耐性結核から選択される細菌が原因の感染を有する、請求項4記載の方法。
【請求項20】
被験体がペニシリン、メチシリン、第二世代セファロスポリン、マクロライド、テトラサイクリン、トリメトプリム/メトキサゾール、バンコマイシン、テトラサイクリン、フルオロキノロン、セフトリアキソン、セフィキシム、アジスロマイシン、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、ピラジンアミド、アミノ配糖体、カプレオマイシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ゲミフロキサシン、シクロセリン、エチオナミド、およびパラアミノサリチル酸から選択される少なくとも一つの抗生物質に耐性の細菌感染を有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
被験体が免疫不全障害を有する、請求項2記載の方法。
【請求項22】
被験体が原発性免疫不全障害を有する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
被験体が続発性免疫不全障害を有する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
被験体が尿毒症、糖尿病、栄養不良、ビタミンおよびミネラル欠乏、タンパク喪失性腸症、ネフローゼ症候群、筋緊張性ジストロフィ、子宮機能不全、および鎌状赤血球症から選択される障害を有する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
被験体が放射線、免疫抑制剤、コルチコステロイド、抗リンパ球グロブリン、抗胸腺細胞グロブリン、および抗T細胞モノクローナル抗体から選択される免疫抑制因子による治療の結果、免疫抑制状態である、請求項21記載の方法。
【請求項26】
被験体が脾摘、麻酔、手術、同種移植、移植片対宿主病、または埋込み医学装置の結果、免疫不全障害を有する、請求項21記載の方法。
【請求項27】
被験体が慢性疲労症候群、エプスタイン-バーウイルス感染、ウイルス後疲労症候群、移植後症候群、酸化窒素シンターゼ阻害剤への曝露、加齢、重症複合免疫不全、および分類不能型免疫不全症候群から選択される免疫不全障害を有する、請求項21記載の方法。
【請求項28】
ビス(チオヒドラジドアミド)が下記の構造式で表されるか、またはその2ナトリウムもしくは2カリウム塩である、請求項1記載の方法:

式中:
R1およびR2は両方ともフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともフェニルであり;R3およびR4は両方ともエチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも4-シアノフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5はメチルであり;R6は-Hである;
R1およびR2は両方とも4-メトキシフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5はメチルであり;R6は-Hである;
R1およびR2は両方ともフェニルであり;R3およびR4は両方ともエチルであり;R5はメチルであり;R6は-Hである;
R1およびR2は両方とも4-シアノフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5はメチルであり;R6は-Hである;
R1およびR2は両方とも3-シアノフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも3-フルオロフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも4-クロロフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5はメチルであり;R6は-Hである;
R1およびR2は両方とも2-ジメトキシフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも3-メトキシフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも2,3-ジメトキシフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも2,3-ジメトキシフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5はメチルであり;R6は-Hである;
R1およびR2は両方とも2,5-ジフルオロフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも2,5-ジフルオロフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5はメチルであり;R6は-Hである;
R1およびR2は両方とも2,5-ジクロロフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも2,5-ジメチルフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも2,5-ジメトキシフェニルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5はメチルであり;R6は-Hである;
R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともエチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5はメチルであり;R6は-Hである;
R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5はメチルでありかつR6は-Hである;
R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5はエチルでありかつR6は-Hである;
R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5はn-プロピルでありかつR6は-Hである;
R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方ともメチルである;
R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともエチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも1-メチルシクロプロピルであり;R3はメチルであり、かつR4はエチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも2-メチルシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも2-フェニルシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方とも1-フェニルシクロプロピルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともシクロブチルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともシクロペンチルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともシクロヘキシルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともシクロヘキシルであり;R3およびR4は両方ともフェニルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともメチルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともメチルであり;R3およびR4は両方ともt-ブチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともメチルであり;R3およびR4は両方ともフェニルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2は両方ともt-ブチルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;
R1およびR2はエチルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである;または
R1およびR2は両方ともn-プロピルであり;R3およびR4は両方ともメチルであり;R5およびR6は両方とも-Hである。
【請求項29】
ビス(チオヒドラジドアミド)が下記またはその2ナトリウムもしくは2カリウム塩である、請求項1記載の方法:

【請求項30】
ビス(チオヒドラジドアミド)が下記またはその2ナトリウムもしくは2カリウム塩である、請求項1記載の方法:


【図2】
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【公表番号】特表2008−536870(P2008−536870A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506798(P2008−506798)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/014320
【国際公開番号】WO2006/113572
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(504151848)シンタ ファーマシューティカルズ コーポレーション (72)
【Fターム(参考)】