説明

治療薬としてのN−アセチルマンノサミン

本発明は、治療量のN-アセチルマンノサミンの使用を含む、腎機能障害および筋機能障害を治療するための組成物および方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は2007年3月31日に出願された米国特許出願第60/932,451号の出願日の恩典を主張し、その内容は全体が参照により本明細書に特定的に組み入れられる。
【0002】
政府の資金提供
本明細書において記載されている本発明は、国立衛生研究所(NIH)の一部である米国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)からの支援を受けて開発されたものである。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、ヒトにおける、治療目的での中性糖N-アセチルマンノサミン(ManNAc)の使用を含む方法および組成物に関する。そのような治療用途は、ミオパチー(例えば、遺伝性封入体ミオパチー(HIBM))およびある腎臓疾患(例えば、尿タンパクおよび血尿を伴うもの)の治療を含む。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
遺伝性封入体ミオパチー(HIBM;OMIM 600737)は、稀な常染色体劣性遺伝神経筋疾患である。Argov, et al., Neurology 60, 1519-1523 (2003)(非特許文献1);Eisenberg, et al., (2001) Nat Genet 29, 83-87(2001)(非特許文献2);Griggs, et al.(1995) Ann Neurol 38, 705-713(1995)(非特許文献3)。疾患は通常、約20歳の年齢で顕在化し、下垂足ならびに緩徐進行性の筋力低下および萎縮を伴う。組織学的には、これはβ-アミロイド、ユビキチン、プリオンタンパク質および他のアミロイド関連タンパク質のように免疫反応する15〜18nm管状線維を含む、筋線維変性および空胞の形成と関連する。Askanas et al., Curr Opin Rheumatol 10, 530-542(1998)(非特許文献4);Nishino, et al.(2005) Acta Myol 24, 80-83(2005)(非特許文献5);Askanas, et al. Ann Neurol 34, 551-560(1993)(非特許文献6);Argov, et al. Curr Opin Rheumatol 10, 543-547(1998)(非特許文献7)。脱力および組織変化はどちらも最初は、四頭筋を残す。しかしながら、疾患は容赦なく進行し、2〜30年以内に患者は普通に生活できなくなり、車椅子生活を余儀なくされる。有効な治療はない。
【0005】
したがって、遺伝性封入体ミオパチーおよび関連疾患を治療するための新規組成物および方法が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Argov, et al., Neurology 60, 1519-1523 (2003)
【非特許文献2】Eisenberg, et al., (2001) Nat Genet 29, 83-87(2001)
【非特許文献3】Griggs, et al.(1995) Ann Neurol 38, 705-713(1995)
【非特許文献4】Askanas et al., Curr Opin Rheumatol 10, 530-542(1998)
【非特許文献5】Nishino, et al.(2005) Acta Myol 24, 80-83(2005)
【非特許文献6】Askanas, et al. Ann Neurol 34, 551-560(1993)
【非特許文献7】Argov, et al. Curr Opin Rheumatol 10, 543-547(1998)
【発明の概要】
【0007】
本発明の1つの局面は、哺乳類に有効量のN-アセチルマンノサミンまたはその誘導体を投与し、これにより哺乳類体内のシアル酸を増加させる段階を含む、シアル酸増加を必要とする哺乳類においてシアル酸を増加させるための治療法である。
【0008】
いくつかの態様では、そのような方法は、疾患または状態を治療するために実施される。例えば、そのような疾患は、筋萎縮または腎臓疾患である可能性がある。一般に、本発明の方法および組成物により治療することができる筋萎縮の型は、シアル酸欠乏により引き起こされるものである。そのような筋萎縮疾患および状態の例としては、縁取り空胞型遠位型ミオパチー(Nonakaミオパチー)および遺伝性封入体ミオパチーが挙げられる。
【0009】
驚いたことに、本発明の組成物および方法は、ある腎臓状態および疾患、例えば、低シアリル化(シアル酸欠如)から一次的にまたは二次的に生じるタンパク尿、血尿を伴う疾患を治療するのに有用である。このように、本発明の方法は腎臓膜形成および/または機能の不良による腎障害の治療に有効である。例えば、シアル酸の不足により影響される腎臓膜としては、糸球体基底膜および/または有足細胞膜が挙げられる。このように、本発明は、奇形のまたは機能が低下している、糸球体基底膜および/または有足細胞膜を治療するのに有用である。一般に、本発明の方法は、腎臓ポドカリキシンのシアル化を増加させ、有足細胞足突起形態を改善し、および/または糸球体基底膜の完全性を改善することができる。
【0010】
本発明の別の局面は、哺乳類に治療量のN-アセチルマンノサミンまたはその誘導体を投与する段階を含む、哺乳類において腎障害を治療する方法であり、ここで、腎障害はタンパク尿および血尿を伴う。例えば、N-アセチルマンノサミンまたはその誘導体のそのような治療量は、1日あたり約1g〜約20gである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】シアル酸の細胞内代謝の概略図である。この図は細胞の一部を示しており、図では核が底部に(図示した核膜の下方)に描かれてあり、細胞質が図の上部に存在する。細胞質グルコースがいくつかの段階でUDP-GlcNAcに変換され、これがシアル酸生合成のための二機能性の律速関連酵素:UDP-GlcNAc2-エピメラーゼ/ManNAcキナーゼ(GNE/MNK)に対する基質として機能する。GNE触媒活性(EC 5.1.3.14)は、UDP-GlcNAcをManNAcにエピマー化し、続いて、MNKキナーゼ触媒ドメイン(EC 2.7.1.60)によりManNAcがManNAc-6-リン酸に(ManNAc-6-P)にリン酸化される。ManNAc-6-リン酸はその後、Neu5Ac-9-Pシンターゼによりホスホエノールピルビン酸と縮合されNeu5Ac-9-リン酸になる。リン酸はその後放出され、核内で、Neu5AcがCMP-Neu5Acシンターゼにより活性化され、CMP-Neu5Acとなる。その後、CMP-Neu5Acはトランスゴルジに入り、シアリル化複合糖質の産生に関与する異なるシアリルトランスフェラーゼのための基質として機能する。これらはその後リソソーム内で切断され、遊離シアル酸が得られるが、これは、細胞質に排出され、再利用され、またはManNAcおよびピルビン酸に分解される。CMP-シアル酸はGNEエピメラーゼをそのアロステリック部位で強力にフィードバック阻害する。
【図2】A〜Eは、GneM712T/M712Tノックインマウスの作製および識別を示す。図2Aは、配列が検証された標的ベクターを用いた相同組み換え後の、マウスGne(Ueal)ゲノム遺伝子座、エクソン11および12を示す概略図である。M712T変異がエクソン12で作製され、プリッパーゼリコンビナーゼ標的(FRT)部位が隣接するneoカセット(PGKプロモータ下)が挿入された。LoxP部位がエクソン12の前およびPGK-neo遺伝子の後に挿入された。図2Bは変異マウスの遺伝子型決定を示す。M712T(ATG〜ACG)変異全体にわたるゲノムDNAのPCRにより増幅された387-bp断片をNlaIII制限エンドヌクレアーゼにより消化させ、野生型アレル(+)では265-bp、89-bpおよび33-bpに、変異M712Tアレル(-)では354-bpおよび33-bp断片とした。MWは分子量である。図2Cは腎臓および骨格筋のRNAのRT-PCRの結果を示す。RNAを逆転写して、エクソン11および12をカバーするプライマーを使用し(355bp)PCRにより増幅した。NlaIIIによる消化により、野生型アレル(+)は、225-bp、89-bpおよび41-bp断片に切断され、変異M712Tアレル(-)は、314-bpおよび41-bp断片に切断された。消化により、GneM712T/M712T(-/-)組織中に変異M712Tアレルが排他的に存在することが確認された。図2Dは、E17〜E19およびP21でのマウスの数および遺伝子型を示す。P21では、13の同腹仔(9 GneM712T/+交配)由来の76匹のマウスの遺伝子型決定により、1つのGneM712T/M712T子孫のみが識別された。4 GneM712T/+マウス由来の35E17〜E19胚のその後の遺伝子型決定により、メンデルの遺伝子型分布が得られた。図2Eは、P2では、GneM712T/M712T仔がそれらのヘテロ接合(GneM712T/+)および野生型(Gne+/+)同腹仔よりも小さく、顕著に乳白色斑点が欠如していることを示す。
【図3】図3A〜Eは、腎臓の組織学的分析の結果を提供する。図3Aは肉眼的な腎臓の病態を示す。GneM712T/M712Tマウスの腎臓は、出血を示したが、野生型(Gne+/+)およびヘテロ接合(GneM712T/+)同腹仔の腎臓に比べ、サイズおよび形状は正常であった。図2Bは、GneM712T/M712Tマウスにおける尿細管拡張を示す(矢印)、腎皮質(c)および髄質(m)の代表的なH&E-染色切片を示す。スケールバー:1,000μm。図3CはGneM712T/M712Tマウスにおける赤血球で満たされた、集合管、尿細管、および尿腔の高倍率像を提供する。スケールバー:100μm。図3DはGneM712T/M712Tマウスにおける、赤血球がボウマン腔中に浸潤した糸球体(g)の高倍率像を提供する。スケールバー:100μm。図3Eは、Gne/Mnk抗体で免疫標識した時の糸球体間隙の内側のGne/Mnkタンパク質の存在量を証明する(FITCフィルタ、右パネル)、正常糸球体(DICII、左パネル)の代表的な切片を示す。スケールバー:50μm。
【図4】マウス腎臓切片の透過型電子顕微鏡像を示す。図4Aは、野生型マウス(P2齢)の傍髄質ゾーンにおける糸球体毛細血管の代表的な断面図である。拡大挿入図(右パネル)は詳細な内皮細胞(ec)、糸球体基底膜(GBM);(矢印)、ならびに十分に形成されている、開いた濾過スリット(星印)を備えた糸球体内皮細胞(有足細胞)の足突起(fp)を示す。図4Bは、GneM712T/M712Tマウスの代表的な傍髄質糸球体毛細血管を図示し(P2齢、図4Aで示した野生型マウスの同腹仔)、GBMの緻密層の分節性分裂(segmental splitting)(矢印)ならびにGBMの内側を覆う著しく平板化され、融合された有足細胞足突起が示される。濾過スリットはわずかで、形状および位置が不規則である。挿入図(右パネル)は、濾過スリットでの融合した足突起膜および異常密着結合様構造の形成を示す(ダイアモンド)。図4Cおよび4Dは、ManNAc処置後のGneM712T/M712Tマウスの代表的な糸球体毛細血管を示す(P19齢)。GBMの完全性ならびにポドサイド足突起の形成および濾過スリットの数は、図4Bの未処置GneM712T/M712Tマウスと比べた場合、すべて改善された。いくつかの濾過スリットは開いたが、残りは依然として密着結合を形成した。GMBは分裂が明らかな領域の偶発的な小さな拡張を示した(矢印)。L、毛細管腔;N、核;us、尿腔。スケールバー:1μm。
【図5】図5A〜5Fは、ManNAc処置後のノックインマウスの生物化学および腎臓組織学を示す。図5AはGneM712T/+マウスの飲み水においてManNAc投与した後の、P3齢を過ぎた生存マウスの数を示す。6匹のGneM712T/+マウスが1mg/ml(〜0.2g/kg/d)ManNAcの投与を受け;7匹の総同腹仔がスコア化され;13匹の仔がP1〜P3齢で死亡した。7匹のGneM712T/+マウスが5mg/ml(〜1g/kg/d)ManNAcの投与を受け;13匹の総同腹仔がスコア化され;14匹のホモ接合変異の仔がP1〜P3齢で死亡した。各遺伝子型の生存体の割合を示す。図5B〜5Dは、代表的なH&E染色した腎臓切片を示し、P6齢でのManNAc摂食後の、腎皮質および髄質(図5B);集合管、細尿管、および尿腔(図5C);および糸球体(図5D)が示されている。野生型(Gne+/+)腎臓は、正常な組織構造を示した。GneM712T/M712T腎臓は、非常に軽度(中央パネル)〜中程度に重篤な(右パネル)赤血球浸潤の範囲を示したが、すべての場合において、P2齢の未処置GneM712T/M712Tマウス(図3E〜G)よりも重篤度が低かった。スケールバー:500μm(図5B)、100mm(図5Cおよび5D)。図5Eは、2匹のManNAc処置(〜1g/kg/d)の6週齢雄同腹仔を示す。生存するホモ接合変異マウス(GneM712T/M712T)は、野生型同腹仔より小さかった。図5Fは、骨格筋におけるGne/Mnkエピメラーゼ酵素活性を示す。ManNAcの投与により(網掛け棒)、野生型筋肉における活性が100%から114%(±19.7)まで増加し(n=3;P=0.2)、ホモ接合変異(GneM712T/M712T)筋肉における活性が19.4%(±7.5)から31%(±8.4)まで増加した(n=7;P=0.05)。
【図6】図6Aは、ノックインマウスの筋肉、腎臓、および脳抽出物の免疫ブロットを示す。筋肉(図6A)および腎臓(図6B)抽出物の免疫ブロットは、ヘテロ接合(+/-)および野生型(+/+)同腹仔と比較して(β-アクチンに基準化)、ホモ接合変異GneM712T/M712T(-/-)マウスにおいてGne/Mnkタンパク質発現の減少を示した(上方バンド、矢印、79kDa)。Gne/Mnkタンパク質発現は、未処置組織に比べて、GneM712T/M712T(-/-)組織ではManNAc摂食すると増加した。図6Cはラミニン-1抗体で標識した腎臓抽出物の免疫ブロットを示す。Gne+/+(+/+)およびGneM712T/M712T(-/-)同腹仔間では、ManNAc処置有り無しに関係なくラミニン-1強度の差は検出されなかった(n=6;P=0.65)。図6Dは、PSA-NCAM抗体で標識した脳抽出物の代表的な免疫ブロットを示す。ManNAc処置すると、シアリル化状態を反映するPSA-NCAM信号の強度は、未処置脳(n=10)と比べた場合、処置GneM712T/M712T(-/-)脳(n=14)では2%〜28%だけ増加した。図6Eは、ポドカリキシンに対する抗体で標識した腎臓抽出物(P2齢)の免疫ブロットを示す(〜140-150kDa)。上部:ノイラミニダーゼによるGne+/+(+/+)、GneM712T/+(+/-)、またはGneM712T/M712T(-/-)腎臓抽出物の脱シアリル化後(レーン2および4)、ポドカリキシンは未処置試料(レーン1および3)よりもゆっくりと移動した(〜160-180kDa)。GneM712T/M712T(-/-)腎臓抽出物(レーン5および6)は脱シアリル化ポドカリキシンを含んだ。底部:GneM712T/M712T(-/-)マウスにおけるP6でのポドカリキシンのシアリル化は、ManNAc処置後著しく変化した(レーン3および4)。
【図7】ヒト患者における臨床試験中のN-アセチルマンノサミンの投与に対するスケジュールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明によれば、N-アセチル-マンノサミンおよびその誘導体は、様々な疾患および状態を治療するのに有用である。N-アセチル-D-マンノサミンは、シアル酸生合成経路において重要な化合物である(図1を参照されたい)。特に、シアル酸形成に至る経路には、調節を受ける律速酵素段階が存在し、この律速段階によりN-アセチル-D-マンノサミンが生じる。このように、一旦N-アセチル-D-マンノサミンが形成または投与されると、シアル酸形成に至る酵素段階のうちフィードバック阻害に供されるものはない。このように、N-アセチル-D-マンノサミンが投与されると、シアル酸量が増加する。N-アセチル-マンノサミンの構造を下記に示す。

【0013】
そのため、本発明によれば、N-アセチルマンノサミン(ManNAc)および/またはその誘導体を投与すると、シアル酸(N-アセチルノイラミン酸)の形成が促進される。シアル酸は、多くの細胞および組織構成要素上で見られる糖類である。例えば、シアル酸はほとんどの細胞表面上、ならびにタンパク質および脂質上に存在し、細胞間相互作用に関与する。表面膜上で見られる複合糖質上のシアル酸に富んだオリゴ糖は、細胞表面で水を維持するのを助ける。シアル酸に富んだ領域はまた、細胞表面上の負電荷生成に寄与する。水は極性分子であるので、細胞表面および膜に引きつけられる。このように、シアル酸は細胞水和および流体取り込みに寄与する。シアル酸はまた、血清、脳脊髄液、唾液、羊水、および母乳を含む多くの体液の重要な成分である。
【0014】
N-アセチルマンノサミン誘導体
本発明によれば、N-アセチルマンノサミンおよびその誘導体はまた、本発明の治療法および組成物において使用することができる。本発明において有用な、そのようなN-アセチルマンノサミン誘導体の構造は式Iにより規定される。

式中、
R1、R3、R4またはR5は、水素、低級アルカノイル、カルボキシレート、または低級アルキルであり;
R2は、低級アルキル、低級アルカノイルアルキル、低級アルキルアルカノイルオキシである。
【0015】
特に記載がなければ、下記規定を使用する:アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニルなどは、直鎖および分枝鎖基の両方を示す;しかし「プロピル」などの個々のラジカルへの言及は、直鎖ラジカルのみを含み、「イソプロピル」などの分枝鎖異性体は特定的に言及される。
【0016】
低級アルキルは(C1〜C6)アルキルを示す。そのような低級アルキルまたは(C1〜C6)アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、ペンチル、3-ペンチル、またはヘキシルとすることができ;(C3〜C6)シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルとすることができ;(C3〜C6)シクロアルキル(C1〜C6)アルキルは、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2-シクロプロピルエチル、2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチル、または2-シクロヘキシルエチルとすることができ;(C1〜C6)アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、ペントキシ、3-ペントキシ、またはヘキシルオキシとすることができ;(C2〜C6)アルケニルは、ビニル、アリル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルとすることができ;(C2〜C6)アルキニルは、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、または5-ヘキシニルとすることができ;(C1〜C6)アルカノイルは、アセチル、プロパノイル、またはブタノイルとすることができ;ハロ(C1〜C6)アルキルは、ヨードメチル、ブロモメチル、クロロメチル、フルオロメチル、トリフルオロメチル、2-クロロエチル、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、またはペンタフルオロエチルとすることができ;ヒドロキシ(C1〜C6)アルキルは、ヒドロキシメチル、1-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、1-ヒドロキシブチル、4-ヒドロキシブチル、1-ヒドロキシペンチル、5-ヒドロキシペンチル、1-ヒドロキシヘキシル、または6-ヒドロキシヘキシルとすることができ;(C1〜C6)アルコキシカルボニルは、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、またはヘキシルオキシカルボニルとすることができ;(C1〜C6)アルキルチオは、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、ペンチルチオ、またはヘキシルチオとすることができ;(C2〜C6)アルカノイルオキシは、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、イソブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、またはヘキサノイルオキシとすることができる。
【0017】
治療法
本発明によれば、N-アセチル-D-マンノサミン(ManNAc)およびその誘導体は、哺乳類においてシアル酸の産生を増加させるための有用な治療薬であり、そのように増加したシアル酸の産生は強い治療効果を有する。シアル酸は多くの器官および組織の適切な発達および機能にとって重要であり、シアル酸の欠乏は、多くの異なる型の疾患および状態を生じさせる可能性がある。例えば、シアル酸代謝の異常により、出生時に現れしばしば生後1年以内に死に至る、成長障害、肝脾腫、粗い顔面特徴、重篤な精神および運動発達遅滞により特徴づけられる重篤な乳児疾患(乳児シアル酸蓄積症、ISSD)、または後に発症する疾患(Salla疾患、シアル酸尿症)が引き起こされる。
【0018】
本明細書で示されるように、ManNAc(およびその誘導体)の投与は、ミオパチー、筋萎縮および/または筋ジストロフィー(例えば、遺伝性封入体ミオパチー(HIBM))、ならびに腎臓状態および疾患(例えば、タンパク尿および血尿を伴うもの)を治療するのに有用である。
【0019】
本発明の組成物および方法を用いて治療することができるミオパチーはまた、縁取り空胞を有する遠位型ミオパチー(Nonakaミオパチー)および筋ジストロフィー遺伝性封入体ミオパチー(HIBM)を含む。
【0020】
タンパク尿には血液から尿中へのタンパク質の漏出が関与する。尿中のタンパク質量が非常に高い場合、この状態はしばしばネフローゼ症候群と呼ばれる。腎炎症候群に対しては多くの原因が存在する可能性があるが、本発明によれば、少なくとも1つの原因はシアル酸欠乏であり、これは腎臓糸球体およびそれに関連する膜の形成、構造および機能に直接影響を有する。いくつかの型の疾患は、タンパク尿の症状、例えば高血圧、感染、逆流性腎症、糖尿病、様々な型の糸球体腎炎、例えば、ミネラル変化ネフローゼを示す。しかしながら、シアル酸を必要とするネフロン構成要素の構造および機能を改善することによって、本発明の組成物および方法がこれらの疾患のいずれかを治療することができる。このように、例えば、本発明の方法および組成物は、腎臓の構造および濾過特性を改善し、これにより尿中のタンパク質量および/またはタンパク尿の重篤度または進行を減少させることにより、腎臓機能を劇的に改善する。
【0021】
血尿は、単に尿中の血液を意味する。血液は視認可能である場合があり、そのため、尿が通常よりも赤みを帯び、または暗く見える(肉眼的血尿と呼ばれる)。血液が視認可能でなく、尿試料を研究室尿試験において検査した場合にのみ発見される場合、その状態は顕微鏡的血尿と呼ばれる。一般に、血尿は状態よりも徴候である。というのも、多くの可能な原因を有するからである。尿路感染、腎臓もしくは膀胱結石、男性における前立腺肥大、膀胱炎(膀胱感染、通常女性)、または膀胱、腎臓もしくは前立腺癌はすべて、血尿を引き起こす可能性がある。他の原因としては、腎臓挫傷に至る損傷;鎌状赤血球貧血および他の異常な赤血球疾患;ならびに、抗凝血剤(例えば、アスピリンおよびいくつかの別の疼痛緩和薬)などのある薬物療法が挙げられる。糸球体基底膜機能障害のより特定的な原因、例えば、アルポート疾患、菲薄膜病、およびIgA腎症は、本明細書で記載される治療法を使用した場合、特に改善される可能性がある。
【0022】
一般に、本発明の治療法は、哺乳類(例えば、患者)に治療的有効量のN-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体を投与する段階を含む。そのような治療的有効量は一般に、毎日、適当な期間の間投与される。ヒト患者に対する有効量は、例えば、約0.1g/日〜約50g/日、約0.2g/日〜約25g/日、約0.3g/日〜約12g/日、約0.4g/日〜約10g/日、約0.5g/日〜約8g/日、および約0.7g/日〜約6g/日である。一般に、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体は、哺乳類体内のシアル酸の量を増加させ、これにより治療効果を達成するのに十分な期間投与される。N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体の投与により達成することができる治療効果としては、腎機能の改善、尿中へのタンパク質排出の減少、尿中の血液濃度の減少、ポドカリキシンのシアリル化の増加、PSA-NCAM(および/または他の組織特異的標的糖タンパク質)のシアリル化の増加、腎臓皮質および腎臓髄質における嚢胞性細尿管拡張の減少、有足細胞足突起の融合および平板化の減少、腎臓におけるより開いたスリット横隔膜数の増加、腎臓足突起の「フィンガー形状」の改善、GBMの全体の完全性の改善、Gne/Mnkタンパク質発現、およびGne-エピメラーゼ活性の増加が挙げられる。
【0023】
ManNAcは遍在しているが、ある範囲の代謝過程に関与する稀な単糖である。荷電されず、容易に膜を通過する。ManNAcは多くの糖脂質および糖タンパク質の成分であり、N-アセチルノイラミン(Neu5Ac、またはシアル酸)の生合成に対し最初に明言された前駆体であり、これはD-ピルビン酸とエーテル結合されたN-アセチル-D-マンノサミンから構成される。ManNAcはUDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)から、UDP-GlcNAc 2-エピメラーゼの作用により形成される。ManNAcはその後、特異キナーゼによりリン酸化され、ManNAc-6-Pとなる(図1)。ManNAcは調節を受ける律速GNE段階後、シアル酸生合成経路中に存在し(図1)、そのため、その代謝はフィードバック阻害を受けない。HIBM患者における残留MNK活性、またはGlcNAcキナーゼなどの補助的なキナーゼ(Hinderlich et al. Eur. J. Biochem. 252:133-139(1998))は、シアル酸のその後の合成のために、ManNAcをManNAc-6-リン酸に変換する。実際、低シアリル化されたGne-欠損マウス胚性幹細胞は、その成長培地にManNAcが補充された後、再シアリル化された(Schwarzkopf et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99:5267-70(2002))。さらに、培養細胞を「非天然」ManNAc誘導体、すなわち、N-レブリノイルマンノサミン(ManLev)またはN-アジドアセチル-マンノサミン(ManNAz)とインキュベートすると、下流シアル酸類似体(SiaLevまたはSiaNAz)が細胞表面複合糖質に組み入れられた(Charter et al., Glycobiology 10:1049-56(2000))。
【0024】
遺伝性封入体ミオパチー(HIBM)
イラン系ユダヤ人遺伝子分離株の研究(Argov, et al., Neurology 60, 1519-1523(2003))から、HIBMは染色体9p12-13に位置することが示される。HIBMの原因遺伝子は、二機能性酵素UDP-N-アセチルグルコサミン-2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼをコードするGNEである。Eisenberg, et al. (2001) Nat Genet 29, 83-87(2001);Tanner, M.E., Bioorg Chem 33, 216-228(2005);Stasche, et al. J Biol Chem 272, 24319-24324(1997);Hinderlich, et al. J Biol Chem 272, 24313-24318(1997);Jacobs, et al. Biochemistry 40, 12864-12874(2001)。GNE/MNKの機能およびフィードバック調節を図1に示す。縁取り空胞型遠位型ミオパチー(DMRV)は、HIBMに対する日本人の対立遺伝子変異である。Nishino et al. Neurology 59, 1689-1693(2002);Kayashima et al. J Hum Genet 47, 77-79(2002);Hinderlich, et al. Neurology 61, 145(2003)。約20のGNE変異が、異なる民族背景由来のHIBM患者において報告されており、創始者効果がイラン系ユダヤ人と日本人の間に存在する。Broccolini, et al. Hum Mutat 23, 632(2004);Eisenberg, et al. Hum Mutat 21, 99(2003);Tomimitsu, et al. Neurology 59, 451-454(2002);Darvish, et al. Mol Genet Metab 77, 252-256(2002)。HIBMを引き起こす変異は、エピメラーゼドメインまたはキナーゼドメインのいずれかをコードする領域において起こる。ほとんどがミスセンス変異であり、酵素GNE活性が減少し、シアル酸の産生不足が生じる。Sparks, et al. Glycobiology 15, 1102-1110(2005);Penner, et al. Biochemistry 45, 2968-2977(2006)。
【0025】
シアル酸は、糖タンパク質および糖脂質を生成するために、タンパク質および脂質のオリゴ糖鎖上で翻訳後修飾中に添加された負の電荷を有する末端糖部分である。Varki, Faseb J11, 248-255(1997);Varki et al. Anal Biochem 137, 236-247(1984)。これらは細胞接着、細胞間相互作用、およびシグナル伝達などの特定の生物学的過程の分子決定因子として機能する。Schauer, Glycoconj J 17, 485-499(2000);Kelm et al. Int Rev Cytol 175, 137-240(1997)。
【0026】
HIBMの病態生理は大部分が未知のままであるが、GNEにおける機能障害は、糖タンパク質のシアリル化障害が関与することを示唆している。そのような欠陥は、細胞間相互作用、細胞内輸送、オルガネラ構築、アポトーシス、および分泌に影響する可能性がある。実際、UDP-GlcNAc 2-エピメラーゼは、細胞表面分子のシアリル化を調節し(Keppler et al. Science 284:1372-76(1999))、シアリル化はマウスの発達にとって重要であると思われる(Schwarzkopf et al. Proc Natl Acad Sci USA 99, 5267-5270(2002))。
【0027】
HIBMの病態生理に対する1つの仮定は、ジストロフィン-糖タンパク質複合体の本質的な構成要素であるα-DGのシアリル化不足を含む。Michele et al. Nature 418, 417-422(2002);Michele et al. J Biol Chem 278, 15457-15460(2003)。α-DGは、セリンまたはスレオニンに結合したO-マンノシルグリカン(マンノース-N-アセチルグルコサミン-ガラクトース-シアル酸)により高度にグリコシル化され;これらのグリカンは、α-DGのラミニンおよび他の細胞外リガンドとの相互作用にとって重要である。α-DGの異常なグリコシル化は、一般に「ジストログリカノパチー」と呼ばれる、福山型先天性筋ジストロフィー、筋・眼・脳病、ウォーカー・ワールブルグ症候群、ならびに先天性筋ジストロフィーC1CおよびC1D型を含むいくつかの先天性筋ジストロフィーにおける、根本的な生物化学的欠陥である。Martin et al. Glycobiology 13, 67R-75R (2003);Martin-Rendon, et al. Trends Pharmacol Sci 24, 178-183(2003)。本発明者らおよび他の者は、HIBMにおける、α-DGおよび別の糖タンパク質、例えば神経堤接着分子(NCAM)の可変性の低シアリル化を示している。Huizing et al. Mol Genet Metab 81, 196-202(2004);Savelkoul et al. Mol Genet Metab 88, 389-390(2006);Sparks et al. BMC Neurol 7, 3(2007);Broccolini et al. Neuromuscul Disord 15, 177-184(2005);Ricci et al. Neurology 66, 755-758(2006);Salama et al. Biochem Biophys Res Commun 328, 221-226(2005);Tajima et al. Am J Pathol 166, 1121-1130(2005)。
【0028】
しかしながら、本発明前では、HIBMの基本的な発症機序、HIBM動物モデル、およびHIBMに対する有効な治療が欠如していた。本発明はこれらの問題に、イラン系ユダヤ人HIBM患者のM712T変異を模倣するGne遺伝子ターゲティングされたノックインマウスの作製を通して、および有効な治療法を規定するこのノックインマウスモデルを用いた研究を通して、対処する。
【0029】
マウスGneタンパク質配列を下記に示す(SEQ ID NO:1)。

【0030】
このGneタンパク質がM712T変異を有する場合、GneM712T変異から生じるGne変異タンパク質に対する配列は下記の通りであり(SEQ ID NO:2)、この場合、位置712のメチオニンはスレオニンに変更されている(下記ではボールド体で下線を引いたアミノ酸)。

【0031】
このM712T変異は劣性表現型を生じさせるが、これは哺乳類の生存および生理に劇的な影響を有する。例えば、HIBMは、ヒトにおいて、成人期に現れ、緩徐進行性の筋力低下に至る、命に関わらない症状を示す。ほとんどの患者は20歳代前半に症状を発現し、腕、手、足、およびコア筋肉の低下が進行するので、40歳に到達するまでに車椅子生活を強いられる。マウスにおける症状はさらにいっそう劇的である。例えば、9対のGneM712T/+マウスを交配すると、101匹の子孫が得られた。101匹の子孫うち26匹のホモ接合変異(GneM712T/M712T)マウスが作製された。しかしながら、GneM712T/M712T遺伝子型を有する1匹の雄のみがP3齢を超えて生存した(図2D)。残りの25匹のGneM712T/M712Tホモ接合変異子孫はP1〜P3齢で死亡した。この唯一の生存マウスはP2齢で筋肉病態を示さなかった。初期ミオパチー特徴の欠如はヒトHIBM表現型を反復する。マウスおよびヒトの両方において、筋肉病態は遅れて起こり、または、残留Gne/Mnk酵素活性の作用により提供される少量のシアル酸により同様に減衰される(Sparks et al. Glycobiology 15:1102-10(2005);Noguchi et al. J. Biol. Chem. 279:11402-407(2004))(図5Fならびに図6AおよびB)。
【0032】
腎臓状態
早期発症の筋肉問題の代わりに、ホモ接合GneM712T/M712Tマウスは、おそらく、特定の膜糖タンパク質の低シアリル化による、有足細胞足突起の消失および糸球体基底膜(GBM)の分節性分裂を含む、重篤な糸球体血尿およびポドサイトパチー(podocytopathy)の初期徴候を示す。予想外なことに、GneM712T/M712Tノックインマウスは、ポドサイトパチーおよび/またはGBMの分節性分裂の新規動物モデルを提供し、これは腎臓発生および機能におけるシアル酸合成の重要性を実証する。廃棄物を血液から濾過するのに重要な腎臓内の構造要素は、シアル酸欠乏によりひどく損なわれる。この結果から、腎臓発生および機能に対するシアル酸を合成する身体能力の重要性が証明される。
【0033】
本出願の実施例および図面に示されるように、妊娠したマウスにManNAcを投与すると、ホモ接合子孫の生存および腎臓発生に対し著しく有益な効果が得られた。特に、ManNAc投与はGneの酵素活性の増加、腎臓ポドカリキシンのシアリル化の増加、ならびに有足細胞足突起の形態およびGBM完全性の改善と関連した。
【0034】
そのため、本発明によれば、ManNAcは、HIBMのための治療としてだけでなく、腎障害の治療のためとしても有効である。このように、ManNAcを使用してポドサイトパチー、微小変化型ネフローゼ、巣状分節性糸球体硬化症、膜性腎症および他の型の未解明の特発性ネフローゼ症候群、ならびにアルポート疾患および菲薄膜病などの糸球体基底膜病を治療してもよい。そのような腎障害および状態は、時として、有足細胞膜上のポリアニオンの阻害または糸球体基底膜構成要素の量もしくは電荷(シアリル化)の変化に起因する、糸球体基底膜の分節性分裂および/またはポドサイトパチーにより特徴づけられる。
【0035】
製剤および投与
徴候または疾患に関連する少なくとも1つの症状の軽減を達成するために、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体を投与する。例えば、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体の投与により、タンパク尿の減少(例えば、尿中のタンパク質量の低下)、血尿の減少(例えば、尿中の赤血球量の低下)、および筋肉機能の改善(例えば、筋萎縮患者において)に至る可能性がある。
【0036】
所望の効果を達成するために、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体は、単回投与または分割投与で、例えば、体重当たり少なくとも約0.01mg/kg〜約500〜750mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg〜約300〜500mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg〜約200〜400mg/kg、または少なくとも約1mg/kg〜約25〜200mg/kgを投与してもよいが、別の用量が有益な結果を提供する場合もある。投与量は、哺乳類の体重、身体状態、健康、年齢、達成されるべきは予防かまたは治療かを含むが、それらに限定されない様々な因子によって変動する。そのような因子は、動物モデルまたは当技術分野で使用できる別の試験システムを採用する臨床医により容易に決定することができる。
【0037】
本発明による治療薬の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与目的が治療かまたは予防か、および当業者にとって公知の別の因子によって、単回投与、複数回投与、連続もしくは断続様式としてもよい。N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体の投与は、予め選択された期間にわたり本質的に連続であってもよく、または一連の間隔を空けた投与としてもよい。局所および全身投与の両方が企図される。
【0038】
組成物を調製するために、N-アセチルマンノサミンおよび/または1つもしくは複数のその誘導体を合成し、またはそうでなければ入手し、必要であればまたは所望であれば精製する。N-アセチルマンノサミン(および/またはその誘導体)をその後、組成物(または食品)に添加し、適当な濃度に調節し、任意で、他の薬剤と組み合わせることができる。単位用量中に含まれるN-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体の絶対重量は広範囲に変動する可能性がある。例えば、約0.01〜約2gまたは約0.1〜約1gのN-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体が、しばしば組成物中で使用される。また単位用量は、約0.01gから約50gまで、約0.01gから約35gまで、約0.1gから約25gまで、約0.5gから約12gまで、約0.5gから約8gまで、約0.5gから約4gまで、または約0.5gから約2gまで変動する可能性がある。
【0039】
N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体の1日用量は同様に変動する可能性がある。そのような1日用量は、例えば、約0.1g/日〜約50g/日、約0.2g/日〜約25g/日、約0.3g/日〜約12g/日、約0.4g/日〜約10g/日、約0.5g/日〜約8g/日、および約0.7g/日〜約6g/日の範囲とすることができる。
【0040】
このように、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体を含む1つまたは複数の適した単位用量は、経口、非経口(皮下、静脈内、筋内および腹腔内を含む)、直腸、皮膚、経皮、胸腔内、肺内、および鼻内(呼吸器)経路を含む様々な経路により投与することができる。治療薬はまた、持続放出のために製剤化されてもよい(例えば、マイクロカプセル化を使用する、WO 94/07529および米国特許第4,962,091号を参照されたい)。製剤は、適切な場合、都合よく、別々の単位用量形態で提供されてもよく、薬学技術分野で周知の方法のいずれかにより調製されてもよい。そのような方法は、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体を液体担体、固体担体、半固体担体、微粉化固体担体、またはそれらの組み合わせと混合し、その後、必要であれば、生成物を所望の送達システムに導入または成形する段階を含んでもよい。
【0041】
N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体を経口投与のために調製する場合、一般に薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と合わせ、製剤または単位剤形を形成させる。経口投与のためには、N-アセチルマンノサミン(および/またはその誘導体)は、散剤、顆粒製剤、溶液、懸濁液、乳剤として、またはチューインガムからN-アセチルマンノサミン(および/または一つもしくは複数のその誘導体)を摂取するための天然もしくは合成ポリマーもしくは樹脂中に存在してもよい。活性成分はまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして提供してもよい。経口投与されるN-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体また、持続放出のために製剤化することができる。例えば、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体をコーティングし、マイクロカプセル化し、またはそうでなければ、持続送達装置中に配置し、たとえば、唾液細菌分解を回避してもよい。そのような製剤中のN-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体の総量は、製剤の0.1〜99.9重量%を占める。
【0042】
「薬学的に許容される」という用語により、製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントにとって有害でない担体、希釈剤、賦形剤、および/または塩が意味される。
【0043】
N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体を含む薬学的組成物は、周知の、容易に入手可能な成分を用いて、当技術分野で公知の手順により調製することができる。例えば、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体は、一般的な賦形剤、希釈剤、または担体と製剤化して、錠剤、カプセル、液剤、懸濁液、散剤、エアロゾルなどに成形することができる。そのような製剤に適した賦形剤、希釈剤、および担体の例としては、緩衝剤、ならびにフィラーおよび増量剤、例えば、デンプン、セルロース、糖、マンニトール、およびケイ酸誘導体が挙げられる。カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および他のセルロース誘導体、アルギナート、ゼラチン、およびポリビニル-ピロリドンなどの結合剤もまた、含有させることができる。グリセロールなどの保湿剤、炭酸カルシウムおよび重炭酸ナトリウムなどの崩壊剤を含有させることができる。パラフィンなどの溶解を遅延させるための薬剤もまた含有させることができる。第4級アンモニウム化合物などの再吸収促進剤もまた含有させることができる。セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの表面活性剤を含有させることができる。カオリンおよびベントナイトなどの吸着性担体を添加することができる。タルク、ステアリン酸カルシウムおよびマグネシウム、ならびに固体ポリエチルグリコールなどの潤滑剤もまた含有させることができる。保存剤もまた添加してもよい。本発明の組成物はまた、セルロースおよび/またはセルロース誘導体などの増粘剤も含むことができる。本発明の組成物はまた、キサンタン、グアーもしくはカルボガムまたはアラビアゴムなどのガム、またはポリエチレングリコール、ベントン、およびモンモリロナイトなどを含んでもよい。
【0044】
例えば、N-アセチルマンノサミン(および/またはその誘導体)を含む錠剤またはカプレットは、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、および炭酸マグネシウムなどの緩衝剤を含むことができる。カプレットおよび錠剤はまた、セルロース、アルファ化デンプン、二酸化ケイ素、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、微結晶セルロース、デンプン、タルク、二酸化チタン、安息香酸、クエン酸、トウモロコシデンプン、鉱物油、ポリプロピレングリコール、リン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛などの不活性成分を含むことができる。N-アセチルマンノサミン(および/またはその誘導体)を含むハードまたはソフトゼラチンカプセルは、ゼラチン、微結晶セルロール、ラウリル硫酸ナトリウム、デンプン、タルク、二酸化チタンなどの不活性成分、ならびにポリエチレングリコール(PEG)および植物油などの液体ビヒクルを含むことができる。さらに、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体を含む腸溶カプレットまたは錠剤は、胃での崩壊には耐性があり、十二指腸のより中性〜アルカリ性の環境で溶解するように設計される。
【0045】
N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体はまた、好都合な経口投与のためのエリキシルもしくは液剤として、または、例えば、筋内、皮下、腹腔内、もしくは静脈内経路による非経口投与に適した液剤として、製剤化することができる。N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体の製剤はまた、水性もしくは無水溶液もしくは分散物の形態、または乳剤もしくは懸濁液もしくは軟膏の形態をとることができる。
【0046】
このように、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体は、非経口投与(例えば、注入、例えばボーラス注入または連続流入による)のために製剤化してもよく、単位用量形態で、アンプル、予め充填されたシリンジ、小量注入容器または複数回投与容器中で提供してもよい。上記のように、保存剤を添加して、剤形の有効期間を維持するのを助けることができる。N-アセチルマンノサミン、その誘導体および他の成分は、油性または水性ビヒクル中に溶解させた懸濁液、溶液、または乳剤を形成してもよく、懸濁化、安定化、および/または分散剤などの製剤化(formulatory)剤を含んでもよい。また、N-アセチルマンノサミン、その誘導体および他の成分は、使用前に、適したビヒクル、例えば、発熱物質を含まない滅菌水と共に構成するために、滅菌固体の無菌分離によりまたは溶液からの凍結乾燥により得られる粉末形態であってもよい。
【0047】
これらの製剤は、当技術分野において周知の、薬学的に許容される担体、ビヒクル、およびアジュバントを含むことができる。例えば、水の他に、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコール、「ドワノール(Dowanol)」の名で販売されている製品などグリコールエーテル、ポリグリコール、およびポリエチレングリコール、短鎖酸のC1〜C4アルキルエステル、乳酸エチルまたはイソプロピル、「ミグリオール(Miglyol)」の名で市販されている製品など脂肪酸トリグリセリド、ミリスチン酸イソプロピル、動物、鉱物および植物油、ならびにポリシロキサンなどの溶媒から選択される、生理学的観点から許容される1つまたは複数の有機溶媒を用いて液剤を調製することが可能性である。
【0048】
抗酸化剤、界面活性剤、他の保存剤、膜形成、角質溶解または面皰溶解剤、芳香剤、香料および着色剤などの他の成分を添加することが可能である。t-ブチルヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、およびα-トコフェロール、ならびにその誘導体などの抗酸化剤を添加することができる。
【0049】
さらに、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体は、持続放出剤形の製剤によく適している。このように、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体が、例えば、腸管、尿生殖路、または気道の特別な部分に、ある期間にわたって放出されるように、そのような製剤を構成することができる。例えば、ポリマー物質、例えば、ポリラクチド-グリコラート、リポソーム、マイクロエマルジョン、微粒子、ナノ粒子、またはワックスからコーティング、エンベロープ、および保護マトリクスを製造してもよい。これらのコーティング、エンベロープ、および保護マトリクスは、留置装置、例えば、ステント、カテーテル、腹膜透析チューブ、排出装置などをコーティングするのに有用である。
【0050】
局所投与では、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体は、標的領域に直接適用するために当技術分野で公知であるように製剤化されてもよい。局所適用のために主に調整される形態は、例えば、クリーム、乳液、ゲル、分散物、またはマイクロエマルジョン、より大きなまたはより小さな程度まで濃縮されたローション、含浸パッド、軟膏またはスティック、エアロゾル製剤(例えば、噴霧剤またはフォーム)、石鹸、洗浄剤、石鹸のローションまたはケーキの形態をとる。この目的のための別の従来の形態としては、創傷包帯、コーティングされた絆創膏または他のポリマーカバー、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゼリー、噴霧、およびエアロゾルが挙げられる。このように、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体は、経皮投与のためにパッチまたは絆創膏を介して送達することができる。また、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体は、接着ポリマー、例えば、ポリアクリレートまたはアクリレート/ビニルアセテートコポリマーの一部となるように製剤化することができる。長期適用では、微多孔性および/または通気性裏当て積層物を使用することが望ましく、そのため、皮膚の水和または浸軟を最小に抑えることができる。裏当て層は、所望の保護および支持機能を提供する任意の適当な厚さとすることができる。適した厚さは一般に、約10〜約200μmである。
【0051】
軟膏およびクリームは例えば、水性または油性基剤と共に、適した増粘剤および/またはゲル化剤を添加して製剤化してもよい。ローションは、水性または油性基剤と共に製剤化してもよく、一般に、1つまたは複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤を含む。治療薬はまた、例えば、米国特許第4,140,122号;同第4,383,529号;または同第4,051,842号において開示されているように、イオン導入により送達することができる。局所製剤中に存在する本発明の治療薬の重量%は、様々な因子に依存するが、一般に、製剤の総重量の0.01重量%〜95重量%、典型的には0.1〜85重量%である。
【0052】
滴剤、例えば点眼薬または点鼻薬は、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体を用いて、1つまたは複数の分散剤、可溶化剤、または懸濁化剤を含む水性または非水性基剤中で製剤化してもよい。液体噴霧剤は、都合よく加圧パックから送達される。滴剤は、単純なキャップ付き点眼瓶を介して、または液体内容物を滴状で送達させるように適合されたプラスチック瓶を介して、特別形状のクロージャーを介して、送達することができる。
【0053】
N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体はさらに、口または喉内での局所投与用に製剤化してもよい。例えば、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体は、さらに、香味付けた基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントゴムをさらに含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアゴムなどの不活性基剤中に組成物を含むトローチ;および適した液体担体中に本発明の組成物を含む口腔洗浄液として製剤化してもよい。
【0054】
本発明の製剤は、任意の成分として、薬学的に許容される担体、希釈剤、可溶化または乳化剤、および当技術分野で入手可能な型の塩を含んでもよい。
【0055】
さらに、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体はまた、記載した状態のためか、いくつかの他の状態のためかに関係なく、他の治療薬、例えば、鎮痛剤、抗炎症薬などと混み合わせて使用してもよい。
【0056】
本発明はさらに、パッケージ薬学的組成物、例えば、哺乳類におけるシアル酸の産生を増加させるためのキットまたは他の容器に関する。キットまたは容器は、シアル酸の細胞内産生を増加させるための治療的有効量の薬学的組成物と、哺乳類においてシアル酸の産生を増加させるために薬学的組成物を使用するための説明書とを保持する。薬学的組成物は、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体を、シアル酸産生が増加するような治療的有効量で含む。
【0057】
栄養補助食品
本発明によれば、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体は、栄養補助食品として投与することができ、または栄養バー、スナックバー、クッキー、キャンディ、シリアル、プディング、アイスクリーム、冷凍菓子、チューイングガム、飲料混合物、ソーダ水、液体補助食品、ソース、サラダドレッシング、グレービー、ゼリー、ジャム、スプレッド、マーガリン、ピーナツバター、ナッツスプレッド、フロスティングなどの食品または飲料アイテムに組み入れることができる。本質的に、糖が使用されている任意の食品、組成物、または補助食品において使用することができる。このように、N-アセチルマンノサミンおよび/またはその誘導体は、糖と部分的にまたは完全にとって代わるものとして使用することができる。
【0058】
そのような栄養補助食品、飲料、および食品アイテムは、例えば、小麦粉、油、クリーム、バター、糖、塩、スパイスなどを含む任意の他の食品成分を含むことができる。さらに、栄養補助食品、飲料、および食品アイテムは、他の栄養補助食品において一般に見られるビタミンおよび栄養素を含むことができる。
【0059】
ここまで一般的に本発明を記載してきたが、説明目的で提供し、本発明を制限するものではない下記実施例を参照することにより、本発明はより容易に理解されるであろう。
【0060】
実施例1:ManNAc投与はHIBMおよび腎障害を治療するのに有用である
本実施例は、ManNAcが、HIBMだけでなく、ポドサイトパチーおよび/または糸球体基底膜の分節性分裂によるタンパク尿および血尿を伴う腎障害に対しても有用な治療である可能性あることを示す。
【0061】
方法
GneM712T/M712Tマウス
マウスGne遺伝子(Gne, Uael, GenBank NM?015828)のエクソン12のM712T(ATGからACGへ)変異を標的とすることにより、GneM712T/M712Tノックインマウスを作製した (図2A)。変異のないこのGne, Uael対立遺伝子(GenBank NM?015828)に対するヌクレオチド配列を、容易に参照できるように下記に示す(SEQ ID NO:3)。



変異マウスをC57BL/6J基礎環境で維持した。動物は認められたガイドラインにしたがい、公認の特定病原体のいない施設に収容した。ケージは温度および光が制御された環境内で換気された(22℃、湿度30%〜70%、12時間明/12時間暗サイクル)。マウスには照射した固形飼料(Prolab 5P75 Isopro 3000;PMI Nutrition International)および滅菌水を随意に与えた。安楽死はすべてCO2吸入後、頸椎脱臼させることにより実施した。
【0062】
メンデル分布研究では、E17〜E19の4匹の妊娠マウスを安楽死させ、帝王切開術により胚を取り出し、断頭により安楽死させた。マウス手順はすべて、プロトコルG04-3にしたがって実施し、米国立ヒトゲノム研究所の動物の飼育と使用に関する委員会により承認された。
【0063】
分子解析
マウス遺伝子型決定を、尾ゲノムDNA、または標準プロトコルを用いて腎臓または骨格筋から単離したcDNAに対して実施した。TRIzol試薬(Invitrogen)を使用して総RNAをマウス組織から単離し、cDNAをSuperScript IIIシステム(Invitrogen)を使用して調製した。テンプレートとしてゲノムDNAを用い、プライマーセット

を使用し(図2B)、またはテンプレートとしてcDNAを用い(図2C)、プライマーセット

およびPuReTaq Ready-To-Go PCRビーズ(GE Healthcare)を使用し、標準PCR条件を使用して、M712T変異全域でPCR増幅を実施した。PCR断片を、Nla IIIを用いて37℃で消化させ、変異状態を確認した(図2Bおよび2C)。腎臓および骨格筋から単離したRNAに関して、ABI PRISM 7900 HT配列検出システム(Applied Biosystems)上でGne(mm00607939)、Pecam-1(mm00476702)、Col4A3(mm01269206)、およびβ-アクチン(mm00450174)に対するAssays-On-Demand(Applied Biosystems)を用いて、定量的リアルタイムPCRを実施した。
【0064】
臨床化学スクリーン
性別(雄)および年齢に合った、離乳させたマウス(少なくとも15g)由来の後眼窩血液試料(100〜150ml)を2ヶ月に1度、局所麻酔薬(0.5%塩酸テトラカイン;Bausch&Lomb Pharmaceuticals)で前処置した後採取した。試料をMicroPrep遠心管(IRIS International Inc.)内で凝固させ(室温で30分)、その後、血清を1500g、10分の遠心分離により分離し、-80℃で分析まで保存した。臨床化学スクリーンをNIHの医学的検査部で実施し、これは、クレアチニン、血中尿素窒素、アルブミン、総タンパク質、尿酸、アルカリホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アミラーゼ、クレアチニンキナーゼ、および乳酸デヒドロゲナーゼのモニタリングを含んだ。さらに、タンパク質尿検査のための試験紙を使用して、タンパク尿を評価した(Chemstrip 2GP;Roche Diagnostics)。
【0065】
抗体
ウサギポリクローナル抗体を、アミノ酸588-607

を含むGne/Mnkペプチドに対して特別に調製し、キーホールリンペットヘモシアニンに結合させ、対応する抗原ペプチドに対しアフィニティ精製した(Covance)。下記追加の一次抗体は市販されていた:ジストロフィン(カタログ番号ab15277;Abcam);α-ジストログリカン(クローンIIH6C4;Upstate Biotechnology);ラミニン-1(カタログ番号L9393;Sigma-Aldrich);ポドカリキシン(カタログ番号PODX11-A;Alpha Diagnostic International);ポドシン(カタログ番号P0372;Sigma-Aldrich);ラミニンβ1(カタログ番号MAB1928;Millipore);デスミン(カタログ番号1466-1;Epitomics);a-SMA(SPM332;GeneTex Inc.);PSA-NCAM(カタログ番号MAB5324;Millipore);およびβ-アクチン(カタログ番号AAN01;Cytoskeleton)。
【0066】
マウス組織学
マウス組織を収集し、ホルマリン固定し(10%)、パラフィン包埋した。組織切片(5mm)を標準手順に従い(American Histolabs)H&Eで染色するか、または様々な一次抗体を用いた免疫組織化学的検査に供した。ホルマリン固定組織をHistoClear II(National Diagnostics)中で脱パラフィンし、一連のエタノール溶液中で脱水させた。Gne/Mnkに対する抗体(クエン酸系溶液中で5分間煮沸することにより;Vector Laboratories)、およびジストロフィンに対する抗体(製造者のプロトコルにしたがい、1mM EDTA中で煮沸することにより;AbCam)を用いて染色した切片に対して抗原回復を実施した。切片をブロックし(2% BSA、10%ロバ血清、および0.1% トリトンX-100を含むPBS)、一次抗体(Gne/Mnk 1:50;ラミニン 1:25;ジストロフィン 1:50)と共に、一晩中4℃でインキュベートし、その後、二次抗体、Alexa Fluor 488-結合ロバ抗ウサギ(1:500を含むブロッキング溶液)(Invitrogen)を用いてインキュベートした。切片をVECTASHIELD封入剤(Vector Laboratories)中にマウントし、Zeiss Axiovert 200M顕微鏡(Zeiss)を用いて観察し、デジタル画像化した。
【0067】
ウエスタンブロッティング
マウス組織(P2齢)を、プロテアーゼ阻害剤(Complete Mini;Roche Applied Science)が補充された、穏やかな洗浄剤、ビシン緩衝液、および150mM NaCl(Sigma-Aldrich)からなるCelLytic緩衝液中で抽出し、ホモジナイズした。ライセートを音波処理し、遠心分離(1000gで10分)により浄化し、得られた上清をタンパク質に対しアッセイした(BCAタンパク質アッセイ;Pierce Biotechnology)。ノイラミニダーゼ酵素処理では(図6E)、タンパク質ホモジネート(25mg)を、30分間37℃で1mU/mgのノイラミニダーゼ(カタログ番号N6514;Sigma-Aldrich)と共にインキュベートした。等量のタンパク質(25〜50mg)を、4%〜12%トリス-グリシンゲル(Novex;Invitrogen)上で電気泳動させ、0.45mm Hybond ECLニトロセルロース膜(GE Healthcare)上にエレクトロブロットさせた。膜をブロックし(10%無脂肪乳)、一次抗体、続いてHRP-結合二次抗体(GE Healthcare)と共にインキュベートした。ECL(ECLウエスタンブロッティング検出試薬;GE Healthcare)およびCL-XPosureフィルム(Pierce Biotechnology)への曝露により、結果を可視化した。濃度測定を、Kodakイメージステーションおよびソフトウエア(PerkinElmer)を用いて獲得したデジタル画像に対し実施した。タンパク質レベルを、β-アクチンのタンパク質レベルに対し正規化し、タンパク質負荷および/または移動の差を較正した。
【0068】
電子顕微鏡観察
腎臓試料を一晩中4℃で、2%グルタルアルデヒドを含む0.1Mカコジレート緩衝液(pH7.4)中で固定し、カコジレート緩衝液で洗浄した。1% OsO4で2時間後固定し、0.1Mカコジレート緩衝液でもう1度洗浄した後、組織をエタノール中で連続的に脱水させ、Eponate12樹脂(Ted Pella)中に包埋した。ライカウルトラカットUCT超ミクロトーム(Leica Microsystems)を用いて薄片(〜80nm)を獲得し、400メッシュ銅グリッド上に置き、飽和酢酸ウラシルを含む50%メタノール、続いてクエン酸鉛で染色した。グリッドをフィリップ410電子顕微鏡(FEI Company)を用いて80kVで観察し、画像をコダックSO-163フィルム(Kodak)に記録した。
【0069】
ManNAc投与
つがいの6週齢GneM712T/+マウスを3つの群に分けた。群Iは、9のGneM712T/+つがいからなり、未処理の滅菌水道水を与えた。群IIは、1のつがいのGne+/+マウス(野生型対照)および6つのGneM712T/+つがいからなり、1mg/ml(〜0.2g/kg/日)ManNAc(Sigma-Aldrich)を含む水を投与した。用量はヒトで実施した研究(21)におけるManNAc(0.142g/kg/日の単回投与で投与)の安全性に関する以前の証拠に基づき選択した。群IIIは、1のGne+/+つがいおよび7のGneM712T/+つがいからなり、5mg/ml(〜1.0g/kg/日)ManNAcが補充された水を投与した。水は週に2度変えた。授乳中の雌にはManNAcを供給し続けた。マウスはすべて21日でManNAcをやめさせた。選択した同腹仔はすべて、P2、P6、およびP19齢で、組織学、遺伝、生化学、または超微細構造分析のために安楽死させた。
【0070】
Gne酵素アッセイ
マウス腎臓および骨格筋(四頭筋)組織をホモジナイズし、以前に記載された(11、58)Gne-エピメラーゼアッセイに供した。このアッセイは、放射標識基質(ウリジンジホスフェートN-アセチルグルコサミン[1-3H];American Radiolabeled Chemicals Inc.)とのインキュベーションおよびパルス電流測定検出を備えた高-pHアニオン交換クロマトグラフィー(Dionex)によるオリゴ糖の分離時の放射標識生成物([3H]ManNAc)の検出に基づくものであった。
【0071】
統計
データ群間の差を、対応のないデータの両側スチューデントt検定を用いて有意性に対し評価した。メンデル分布分析では、適合度(χ2)検定を実施し、一方、すべての遺伝子型(Gne+/+、GneM712T/+、およびGneM712T/M712T)の処置および未処置マウス間の生存比較では、2×3の分割表を使用する両側フィッシャーの正確確率検定を採用した。すべてのデータを平均±SDとして示す。0.05未満のP値は統計学的に有意であると考えた。
【0072】
結果
GneM712T/M712Tノックインマウスの作製
C57BL/6J胚性幹細胞における相同組み換えのためのマウス標的ベクターを、M712TGne変異を含むように作製した(図2A)。ネオマイシンホスホトランスフェラーゼおよびチミジンキナーゼ遺伝子を、それぞれポジティブおよびネガティブ選択マーカーとして、ベクターに導入した(図2A)。追加のLoxP(隣接エクソン12およびneo)およびフリッパーゼリコンビナーゼ標的部位(隣接neo)を、この条件のためのトランスジェニックモデルに対して挿入した(Nagy, A. 2000. Cre recombinase:the universal reagent for genome tailoring. Genesis. 26:99-109)。ベクター全体の配列を確認した。マウスの遺伝子型決定を、PCR増幅および制限エンドヌクレアーゼNlaIIIを用いた消化により実施した(図2B)。ホモ接合変異体GneM712T/M712Tおよび野生型Gne+/+マウスの組織は、リアルタイム定量PCRにより同等のGneRNA転写レベルを示した。さらに、増幅させたcDNAのNlaIII消化により、GneM712T/M712TマウスのRNAにおいてM712T変異のホモ接合挿入が証明された(図2C)。
【0073】
出生後早期死亡率
ヘテロ接合マウス(GneM712T/+)の最初の交配で、101匹の子孫が得られ、そのうちの1匹のGneM712T/M712T動物のみがP21を超えて生存した。残りのGneM712T/M712T子孫はP1〜P3で死亡した(図2D)。しかしながら、E17〜E19日の35の胚のその後の遺伝子型決定では、26% Gne+/+、43% GneM712T/+、および31% GneM712T/M712Tが示され、メンデル分布を反映し、統計学的に適合度検定により確認された(|2=0.94、P=0.62)(図2D)。E17〜E19では、胚は正常な外面、正常な頭部および身体サイズ、ならびに桃色の肌を表し、これは、良好な循環および呼吸機能を示した。しかしながら、P2では、GneM712T/M712Tマウスは対照同腹仔よりも小さく(図2E)、対照同腹仔の70〜100%の体重であった。GneM712T/M712Tマウスの胃は乳を含んだが、顕著な乳白色斑点は必ずしも見られなかった。1匹を除きGneM712T/M712TマウスはすべてP3までに死亡し、尿タンパク質が増加した。対照的に、GneM712T/+マウスは影響を受けないように見えた。
【0074】
組織学的分析
GneM712T/M712Tマウスおよびその同腹仔の組織をP2とP3齢の間で調べた。骨格筋、心臓、または肝臓において異常は識別されなかった(データ示さず)。さらに、ラミニンおよびジストロフィンに対する抗体を用いた免疫組織化学染色は、GneM712T/M712Tマウスとその野生型同腹仔の筋肉切片間の差を示すことができなかった。
【0075】
P2齢では、GneM712T/M712Tマウスの腎臓は肉眼的検査により点状出血を示したが、Gne+/+およびGneM712T/+同腹仔の腎臓と比較してサイズおよび形状は正常であった(図3A)。組織学的分析により、?胞性尿細管拡張が明らかになった(図3B)。GneM712T/M712T腎臓の高倍率像は、近位および遠位曲尿細管ならびに集合管において赤血球浸潤を示した(図3C)。GneM712T/M712Tマウスの糸球体は、ボウマン腔内に赤血球浸潤を含んだ(図3D)。各群内でスコア化した100の糸球体のうち、GneM712T/+マウス(n=3)では2%±1%およびGne+/+マウス(n=4)では4%±4.5%に比べ、GneM712T/M712Tマウスでは64%±6%(n=4)が影響を受けた。免疫組織化学的分析では、Gne/Mnk抗体の腎臓糸球体への局在が証明された(図3E)。E18でのGneM712T/M712T腎臓の検査では、野生型またはヘテロ接合同腹仔に比べて組織学的差異は示されなかった(データ示さず)。
【0076】
P2齢での糸球体の超微細構造分析により、野生型マウスの細長く、形のよい糸球体足突起に比べ(図4A)、GneM712T/M712Tマウスの有足細胞足突起膜は平板化し、大部分が融合し、わずかな幅の広い足突起のみが残っている(図4B)ことが明らかになった。濾過スリットの数が減少し、密着結合様構造の形成が示された(図4B)。さらに、GBMは緻密層の分節性分裂を示した(図4B)。基底膜の内側の内皮細胞、ならびに糸球体メサンギウム細胞のサイズおよび形状は、超微細構造的には無傷に見えた。
【0077】
これらの超微細構造的所見を支持するために、特定の糸球体コンパートメントに対するマーカーを使用して、追加の分析を実施した。有足細胞特異的マーカー、ポドシンおよびポドカリキシン(Pavestadt et al., Physiol. Rev. 83:253-307(2003);Dekan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:5398-5402(1991))について、すべての遺伝子型の腎臓抽出物を免疫ブロットすることにより試験した。ポドシンはすべての遺伝子型にわたって発現の違いを示さなかった(P1齢)(データ示さず)が、有足細胞頂端膜の主シアロ糖タンパク質である(Pavestadt et al.;Dekan et al.)ポドカリキシンは、劇的なシアリル化の減少を実証した(図6E、上方ゲル)。GBMマーカーラミニン-1(図6C)およびラミニンβ1(データ示さず)の発現レベルは、コラーゲンIV型α3(Col4A3)、不可欠なGBM成分のRNAレベルと同様に、GneM712T/M712T腎臓において変化しなかった。デスミンおよび血管SMA、メサンギウム細胞マーカーに対する抗体(Ichimura et al. J. Histochem. Cytochem. 54:1291-1301(2006))を用いて免疫ブロットすると、すべての遺伝子型にわたり同様の発現レベルを示した。さらに、内皮細胞マーカーCD31/Pecam-1のリアルタイム定量的PCR分析は、P1での遺伝子型にわたってRNA発現レベルの差異を示さなかった。離乳後生き残ったGneM712T/M712Tマウスのみに関する血清代謝産物研究により、血中尿素窒素レベルの上昇(GneM712T/M712Tマウスでは39±10mg/dlに対し、Gne+/+マウスでは21±2mg/dl)および尿タンパクの増加(>500mg/dlタンパク質)が証明され、これは腎臓疾患を示した。クレアチニンおよびクレアチンキナーゼを含む試験した他の血清代謝産物は、すべて正常範囲内にあった。この雄GneM712T/M712Tの生存体は、8.5月齢で安楽死させた。組織学的分析により、前肢または後肢では構造的な異常は明らかにならなかった。しかしながら、重篤な両側水腎症および糸球体症に一致する変化が腎臓で見られた。
【0078】
ManNAc摂食によるレスキュー
GneM712T/+マウスの交配中に1mg/ml(〜0.2g/kg/日)の濃度で飲料水に添加したManNAcでは、51匹の子孫のうち、P3齢を超えて生存するホモ接合GneM712T/M712Tマウスは得られなかった(図5A)。しかしながら、5mgのManNAc/ml(〜1.0g/kg/日)では、102匹の総新生児のうち、12匹のGneM712T/M712Tの仔がP3を越えて生存し、これは、未処置群の1匹の生存体に比べ、有意に大きな数であった(両側フィッシャーの正確確率検定、P=0.01)(図5A)。投与した用量(〜1.0g/kg/日)のManNAcは、マウスに十分許容され、研究中、処置に起因する副作用はなかった。生存GneM712T/M712Tマウスはその野生型同腹仔に比べ小さいままであり、体重が70〜100%であった。P6齢では、ManNAc処置GneM712T/M712Tマウスは、肝臓、心臓、または骨格筋組織で異常を示さなかった(データ示さず)。これらの腎臓から、P2齢で検査したGneM712T/M712Tマウス(図3B〜D)に比べ、有意な組織学的改善が証明された(図5B〜D)。ManNAc処置されると、皮質および髄質において?胞性尿細管拡張がより少なくなり(図5B)、細尿管およびボウマン腔における赤血球浸潤が減少した(図5CおよびD)。P19齢での超微細構造分析は、より多くの数の開いたスリット横隔膜および足突起の「フィンガー形状」の改善を含む有足細胞足突起のより少ない融合および平板化を示した(図4CおよびD)。GBMの全体の完全性もまた著しく改善されたが、緻密層の偶然の分節性分裂は依然として明らかであった(図4CおよびD)。
【0079】
授乳中の雌は、仔が離乳するまで(P21)ManNAc処置を受け続けた。P3を越えて生存した12匹のGneM712T/M712Tマウスのうち、9匹がP6とP12との間で死亡した。1匹のGneM712T/M712Tマウスは、超微細構造分析のためにP19で屠殺した。2匹のGneM712T/M712TマウスはP21を越えて生存し、その時に、ManNAc補給を中止した。これらの2匹のマウスは追加のManNAcを受けずに成長し続けたが、同腹仔よりも小さいままであった(図5E)。3.5月齢で、水頭症および不正咬合のために、1匹のGneM712T/M712T生存体を屠殺した。同様の事象が、何匹かの未処置マウスにおいて異なる年齢で起きたが、処置または疾患との関連は見られなかった。このマウスの骨格筋組織学から、構造または炎症異常は明らかにならなかったが、腎臓は尿腔および尿細管で軽度の赤血球浸潤を示した。1匹の生存GneM712T/M712Tマウスは現在6月齢であり、明らかなミオパチー特徴は有さない。
【0080】
ManNAc摂食後の生物化学分析
Gne酵素活性を、筋肉および腎臓でP2齢時に測定した。GneM712T/M712Tマウスの骨格筋は、Gne+/+マウスのGne活性の19.4%±7.5を示した(n=4、P=0.02)(図5F)。Gne活性の同様の減少が、GneM712T/M712T腎臓抽出物で測定された(平均Gne+/+腎臓エピメラーゼ活性の10%)。ManNAc処置により、Gne+/+筋肉のGne活性(n=3)は114%(±19.7)(P=0.2)まで増加し、一方、GneM712T/M712T筋肉活性(n=7)は、筋肉Gne活性の未処置Gne+/+平均値の19.4%(±7.5)から31%(±8.4)まで増加した(P=0.05)(図5F)。抗Gne/Mnk抗体を用いて標識した筋肉および腎臓抽出物の免疫ブロットから、Gne+/+同腹仔と比べた場合、GneM712T/M712T筋肉中38.5%(±27、n=4)Gne/Mnkタンパク質およびGneM712T/M712T腎臓組織中32.1%(±7、n=3)が証明された。これは、GneM712T/M712TマウスのManNAc処置により、筋肉中68.8%(±20、n=4)および腎臓組織中62.2%(±9.7、n=4)に改善された(β-アクチンに関し、それぞれ、筋肉および腎臓値ではP=0.12およびP=0.006)(図6AおよびB)。GBMの不可欠成分(25〜27)であるラミニン-1に対する抗体で染色した免疫ブロットでは、処置前後の遺伝子型全体で同様のパターンが示された(図6C)。
【0081】
2つの高度にシアリル化されたマーカータンパク質、PSA-NCAMおよびポドカリキシンのシアリル化の程度を評価した。PSA-NCAMは、新生児脳において発現される主要なシアロタンパク質であり(Galuska et al., J. Biol. Chem. 281:31605-15(2006))、ここで、その発現はシアル酸の細胞内濃度により調節される(Bork et al., FEBS letters 579:5079-83(2005))。
【0082】
図6は、PSA-NCAMの発現が遺伝子型内および遺伝子型間で変動したことを示すが、P2のGneM712T/M712T脳は、Gne+/+マウスに比べ、最大80%までのPSA-NCAM発現の減少を示した(図6D、上方ゲル)。ManNAc処置後、GneM712T/M712T未処置マウスに比べ2%〜28%の増加が観察された(処置前n=14および処置後n=10、P=0.08)(図6D、下方ゲル)。P2の正常筋肉および腎臓でのPSA-NCAMの発現は低く、これらの組織での処置による変化は確認できなかった(データ示さず)。さらに、未処置GneM712T/M712T腎臓におけるポドカリキシンの著しく減少したシアリル化状態(図6E、下方ゲル)はManNAc処置により著しく改善した(6E、上方ゲル)。
【0083】
このため、本実施例は、本発明者らが作製したM712TGne/Mnk変異を有するノックインマウスについて説明する。ホモ接合変異(GneM712T/M712T)マウスは、ManNAc処置されない場合、P3を越えて生存しなかった。P2では、著しく減少したGne-エピメラーゼ活性が、GneM712T/M712T筋肉で観察されたが、ミオパチー特徴は明らかではなかった。むしろ、ホモ接合変異マウスは、糸球体血尿、タンパク尿、およびポドサイトパチーを有した。腎臓所見は、糸球体基底膜の分節性分裂、有足細胞足突起の消失、および主な有足細胞シアロタンパク質、ポドカリキシンのシアリル化の減少を含んだ。ManNAc投与により、GneM712T/M712T仔の43%において、P3を越える生存が得られた。生存体は、改善された腎臓組織学、ポドカリキシンのシアリル化の増加、ならびにGne/Mnkタンパク質発現およびGneエピメラーゼ活性の増加を示した。これらの所見は、ManNAcがHIBMに対してだけでなく、ポドサイトパチーおよび/または糸球体基底膜の分節性分裂によるタンパク尿および血尿を伴う腎障害に対しても有用な治療である可能性があることを示す。
【0084】
実施例2:ヒトへの投与−臨床研究
イラン系ユダヤ人共同体から、HIBMを有することが分かっている患者の群から、およびプロトコル76-HG-0238「先天性代謝異常を有する患者の診断および治療(Diagnosis and Treatment of Patients with Inborn Errors of Metabolism)」、プロトコル01-N-0149「神経筋疾患を有する患者の診断的評価(Diagnostic Evaluation of Patients with Neuromuscular Diseases)」、またはプロトコル05-HG-0236「遺伝性封入体ミオパチーにおける免疫グロブリン静注の使用のパイロット研究(Pilot Study of the Use of Intravenous Immune Globulin in Hereditary Inclusion Body Myopathy)」に前に登録された個人から、患者を募集した。患者はまた、患者団体ARMS(ミオパチーに対する研究の進歩)から募集されるであろう。
【0085】
材料
ヒト用途のためのManNAcは、Meropharm AG(Eugensbergstrasse 14, 8268 Salenstein, Switzerland)から購入される。500mgの腸溶性カプセルとしてClinical Center Pharmaceutical Development Service(PDS)により調製され、マンノースを含むプラセボもまた調製される。ManNAcまたはプラセボは、食前30分に、4回に分けた用量で経口摂取される。ManNAcおよびプラセボカプセルは、各研究患者に対し毎月配達され、冷蔵庫に保存される。瓶すべてに、同じようにラベルが付され、ManNAcとプラセボカプセルとの間には、コーティングの色、形状または味覚に明らかな差異はない。
【0086】
手順
ベースライン評価は、治療前の神経筋疾患の程度の詳細な決定を含む。病歴および身体検査は、家系図、神経学的状態、および筋力の解明を含む。ベースライン臨床試験はまたルーチン検尿を含む。女性は妊娠検査を受ける。CBCおよび分画、血小板、赤血球沈降速度、電解質、カルシウム、リン、肝臓酵素、脂質パネル、アルカリホスファターゼ、プロトロンビン時間、部分トロンボプラスチン時間、クレアチンホスホキナーゼ、HbAlC、空腹時血糖およびインスリン、遊離T4およびTSH、FSH、LH、テストステロンおよびエストラジオールに対し、採血する。紫色のトップチューブをDNA/RNA抽出のために入手し、黄色のトップをリンパ芽球変換のために入手し、別の黄色および茶色トップを血小板および白血球ペレットのために入手する。DNA/RNAを使用してGNE遺伝子の突然変異解析を実施または確認する。細胞を、糖タンパク質のシアリル化状態の評価を含む基本調査研究に対し使用する。血清および尿のManNAcおよび遊離シアル酸レベルを決定するためにも、血液および尿を入手する。スポット尿試験に加えて、24時間蓄尿をクレアチニンクリアランス、タンパク質、アルブミン、タンパク質電気泳動、β2-ミクログロブリン、およびアミノ酸分析のために分析した。ベースライン血液検査およびその体積は下記の通りである:

さらに、30mlまでの血液を調査目的で取り出してもよい。しかしながら、いかなる条件下でも、6週間中に450mlを超える血液は採血しない。患者の唾液もまた収集する。さらに、胸のX線写真、心エコー図、および心電図ならびに24時間携帯型心電図(ECG)を獲得する。
【0087】
一次転帰パラメータは、二次転帰パラメータ同様、四頭筋力の変化である。最大の自発的等尺性収縮(MVIC)評価を使用して、四頭筋および10の別の筋肉群の強度の変化を測定する。MVIC評価は信頼でき、ミオパチー症候群およびその治療に対する応答の評価における小さな変化に対し感応性であることが証明されている。MVICでは、定量筋肉評価(QMA)およびシステムバージョン42+XLを使用する。このシステムは、四肢をインタフェースSM250力変換器に取り付ける調節可能なストラップから構成される。患者は、変換器を固定する安定アルミニウムフレーム中に封入された調整可能な検査台(Neurological Plinth Model)上で試験される。発生した力は電子歪みゲージ張力計に伝送され、その後、コンピュータ支援アナログ/デジタルデータ収集システム(S/N A98C36)により記録され増幅される。測定された力は、患者が歪みゲージに対し働かせたキログラム(kg)量として表される。
【0088】
測定は、Andresらのプロトコル(Neurology 36, 937-941(1986))から変更した標準検査により実施する。下記筋肉群を固定した順で試験する:右肩外転筋、右肘屈筋、右肘伸筋、左肩外転筋、左肘屈筋、左肘伸筋、右足首背屈筋、左足首背屈筋、右膝屈筋および左膝屈筋、左膝伸筋、右膝伸筋。すべての筋肉群を2度、試験間に最低30秒休息させて試験する。測定が15%を超えて異なる場合、3度めの試験を実施する。2つのより類似した測定値の平均を、その特別な試験のためのスコアとして使用する。患者は、研究の開始前に試験目的および手順について知らされ、試験中に言葉による励ましを受ける。
【0089】
患者はまた6分の歩行試験、タイムアップゴー試験、ピンチ力および握力の測定、ならび前方/機能到達試験を実施する。
【0090】
骨格筋強度はまた、身体検査により測定する。応答の類別には、10点徒手筋試験(MMT-28)スケール(Jain et al. Phys Occup Ther Pediatr 26, 5-17(2006))を使用するが、この場合0が最も低いスコアであり、10が最も高いスコアである。MMTは盲検的である理学療法士により実施され、それぞれの側の下記13の筋肉群の身体検査を含む:三角筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、腕橈骨筋、手首伸筋、手首屈筋、腸腰筋、大殿筋、大腿四頭筋、大腿屈筋、ならびに足の伸筋および屈筋。
【0091】
肺機能試験を、胸郭の筋肉強度の測定として実施する。気管支拡張剤有りまたは無しでの肺活量測定を使用し、努力肺活量(FVC)および1秒での強制呼気量(FEV1)を評価する。さらに、最大吸気圧および呼気圧(MIPおよびMEP)ならびに最大換気量(MVV)を、標準技術を使用して記録する。3つの試験の最もよい結果を記録する。排気量および拡散容量をベースラインで評価し、臨床的に必要であれば繰り返す。
【0092】
全体的な臨床的改善を獲得する自己報告評価は、各クロスオーバー期間の始まりと終わりに患者が記入するヒト活動プロファイル(Fix, A.J., and Daughton, D.M.(1998) Human Activity Profile Professional Manual. Psychological Assessment Resources Inc.)およびSF-36v2生活の質の質問票(Ware et al. Med Care 30, 473-483(1992))を含む。
【0093】
ベースライン試験後、患者を無作為に選び、ManNAc/プラセボ処置を開始する。用量は下記のように、2日毎に徐々に増加させる:1日に4回(q.i.d.)2日間、1カプセル(500mg)のManNAc/プラセボ、続いて、1カプセルq.i.d.を、総量が〜10g、または5カプセルq.i.d.に到達するまで、2日毎に徐々に増加させる(図7)。グルコース同様、ManNAcの血清トラフ値およびピークレベル(投与後30分、1、2および4時間)は、ManNAcを初めて投与した後、用量を増加させる週中のある用量の第2日目に得られる。各処置期間の終わりに、トラフ値およびピーク(1時間)レベルが、24時間にわたり各投与後に得られる。
【0094】
10g/日の総量に到達した時点で、繰り返しECGまたは24時間携帯型ECGモニタリング(Holter)、スポット検尿および下記血液検査を、安全性の理由で実施する。

【0095】
患者は、10g/日投与されると自宅に退院し、1ヶ月目および3ヶ月目に追跡調査入院のためにもどってくる。このスケジュールを6週の休薬期間後、第2のクロスオーバー期間に対し繰り返す。
【0096】
追跡調査研究
追跡調査のための評価は、各クロスオーバー期間に対し1ヶ月の時点および各クロスオーバー期間の終了時に実施される。その評価は、繰り返し24時間尿検査および下記血液検査を含む1週間入院から構成される:

【0097】
追跡調査手順および診察は、繰り返しECGまたは24時間携帯型ECGモニタリング(Holter)ならびに心エコー図、定量的筋力評価、機能筋研究、PFT、ならびに機能および生活の質の質問票を含む。
【0098】
家庭での治療をモニタリングするために、患者は、飲み忘れた薬、胃腸障害または他の副作用、および観察された改善を記録するために、週に一度の日誌(電子メールおよびハードコピーの両方で入手可能)を仕上げるように依頼される。
【0099】
統計的考察
患者は順序を変えたブロックサイズを使用して、二重盲検様式で、ManNAcまたはプラセボ(1:1)のいずれかに対し、無作為に選択され(国立健康臨床センター薬学研究所(National Institutes of Health Clinical Pharmacy)によるブロック無作為化)、確実に、疾患の期間および重篤度に関し、2つの患者群に均衡をとって割り当てられる。少なくとも6週の休薬期間により分離された2回の3ヶ月クロスオーバー期間がある。患者はそれぞれ、自分自身の対照として機能する。結果の研究および分析が完了するまで、無作為化コードは破られない。
【0100】
一次臨床転帰パラメータは、ベースライン、治療開始後1ヶ月および各処置期間の終了時に実施される最大の自発的等尺性収縮(MVIC)試験により評価される四頭筋力の変化である。強度変化(kg)はベースラインの%として表す。対応t-試験およびウィルコクソンの対応のある対の符号順位検定を分析に使用する。
【0101】
二次転帰パラメータは6分の歩行試験、機能到達、タイムアップゴー試験、握力および肺機能試験を使用する機能性筋肉試験を含む。最後に、各患者の全体的な改善評価は、ヒト活動プロファイル(ALSFRS)およびSF-36生活の質の質問票に基づき、特定の自己評価スコアが抑制、疲労、および機能に対し獲得される。
【0102】
推定される試料サイズは、シアル酸源としての免疫グロブリン静注処置の1ヶ月前および後に筋力が定量化された4人のHIBM患者に関する発明者らの経験を含む、異なるデータに基づく(Sparks, S., et al. BMC Neurol 7, 3(2007))。左四頭筋力の変化と右四頭筋力の変化の間には非常に重要な相関が存在した。そのため、一次転帰パラメータとして2つの側の平均をより大きな臨床研究で使用する。次に、筋力低下の著しい進行が起こるには何年もかかるという事実に基づき、3ヶ月プラセボ処置前後の患者の0%変化が推定される。推定10%標準偏差がベースラインおよび処置後測定で予測され、平均差に対しては10%標準偏差であり、これはプラセボ処置では0である。文献における定量的筋力試験のMIVC法に対する変動係数は6〜15%である。Andres, P.L., et al. Neurology 36, 937-941(1986);Colombo, R., et al. Med Eng Phys 22, 167-174(2000);A comparison of muscle strength testing techniques in amyotrophic lateral sclerosis. Neurology 61, 1503-1507(2003);Mayhew, J.E. et al. Muscle Nerve 35, 36-42(2007);Symons, T.B., et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 60, 114-11(2005)。
【0103】
いくつかの考慮事項に基づき、四頭筋力では20%の改善が予測される。第1に、これは臨床的に重要な改善であり、比較的小さな利点は検出できず、または重要ではない。第2に、本発明者らが実施した免疫グロブリン静注(IVIG)研究では、4人の処置患者の8四頭筋に対する筋力の平均(SD)改善は39±50%であり、そのため、控えめにみても20%の改善が得られる。第3に、ManNAcのシアル酸への完全な吸収および変換を仮定すると、前の研究で送達されたIVIGの量に比べ、1000倍のシアル酸が送達される。26/20のSD/平均比はIVIG研究において観察される50/39のSD/平均比と同じであるので、ManNAc処置下での筋力変化の標準偏差は26%であると推定される。
【0104】
これらの条件下では、18人の患者を使用すると、0.90の検出力およびp=0.05では、20%の差が検出される。二人が脱落すると予測して、20人の患者を処置する。30人までの患者が登録され、適格要求を満たす20人が得ることが望ましい。
【0105】
この検出力分析は控えめであり、1ヶ月データは効果を強化するので、20%の改善は過小評価の可能性があり、18人の患者の改善の割合(%)に対する相対SDは、本発明者らが推定するのに基本とした4患者のものに比べ低い可能性がある。二次転帰パラメータの変化は片側t-検定およびp=0.025を用いて分析する。
【0106】
経口ManNAc補給は、HIBM患者に筋力および健康の感覚における一時的な改善を提供することができる。臨床経過の低下を阻止することもでき、HIBMの筋力低下の治療に有用である。臨床試験により、ManNAcをヒトに使用する安全性および許容性も確立される。これはManNAcの可能性のある別の治療用途、例えば、本発明者らの動物実験から示唆されるポドサイトパチーおよび糸球体基底膜疾患に対する潜在的利益に対する基礎ともなりえる。
【0107】
参考文献




【0108】
本明細書で参照し、または言及した全ての特許および出版物は、本発明が関連する技術分野における当業者のレベルの指標となり、そのような参照特許または出版物の各々は、その全体が個々に参照により組み入れられ、または本明細書でその全体が説明されているのと同じ程度まで、参照により本明細書に組み入れられる。出願人は、任意のそのような引用特許または出版物からの任意のおよび全ての材料および情報を本明細書に物理的に組み入れる権利を有する。
【0109】
本明細書で記載した特定の方法および組成物は、好ましい態様を代表するものであり、例示的なものであり、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書を考慮すれば、当業者には別の目的、局面および態様を考えつくことができ、それらは特許請求の範囲により規定される本発明の精神内に含まれる。本発明の範囲および精神から逸脱せずに、本明細書で開示された本発明に対し様々な置換および改変が可能であることは当業者には容易に明らかであろう。本明細書で適切に例示的に記載された本発明は、本明細書で本質的なものとして特定的に開示されていない任意の1つもしくは複数の要素または1つもしくは複数の制限無しで、実施される可能性がある。適切に本明細書で例示的に記載された方法および過程は、異なる工程順で実施してもよく、本明細書または特許請求の範囲において示した工程順に必ずしも制限される必要はない。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「1つの(「a」、「an」)」および「その(the)」は、文脈上明確にそうでないことが示されている場合を除き、複数の言及物を含む。このように、例えば、「1つの抗体」と言及した場合、複数のそのような抗体(例えば、抗体溶液または一連の抗体調製物)などを含む。いかなる状況でも、本特許は、本明細書で具体的に開示した特定の実施例もしくは態様または方法に限定されると解釈されることはない。特許商標局の任意の審査官または任意の他の職員もしくは従業員によりなされた任意の声明が、特定的および無制限または無条件に明確に出願人により書面での応答で採用される場合を除き、いかなる状況でも、本特許は、そのような声明により制限されると解釈される可能性はない。
【0110】
使用されている用語および表現は、説明用語として使用され、限定するものではなく、そのような用語および表現を使用する場合、図示し、記載した特徴またはその一部の任意の等価物を排除する意図はなく、特許請求した本発明の範囲内で様々な改変が可能であることが認識される。このように、本発明は好ましい態様および任意の特徴により特定的に開示されているが、当業者であれば本明細書で開示した概念の改変および変更をとることができ、そのような改変および変更は添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲内に含まれると考えられることは理解されるであろう。
【0111】
本発明について、本明細書では広く、一般的に記載してきた。一般的な開示に含まれるより狭い種および亜属群もまた本発明の一部を形成する。これは、削除された材料が本明細書で特定的に引用されたかどうかに関係なく、条件付きで、または種数からいずれかの対象を除く負の制限つきで、本発明の一般的な説明を含む。
【0112】
別の態様が以下の特許請求の範囲内に含まれる。さらに、本発明の特徴または局面が、マーカッシュ群の観点から記載されている場合、当業者であれば、本発明がまた、マーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点で記載されていることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアル酸前駆体であるN-アセチルマンノサミンまたはその誘導体の有効量を哺乳類に投与し、それによって哺乳類におけるシアル酸を増加させる段階を含む、必要とする哺乳類においてシアル酸を増加させる方法であって、該誘導体が下記式Iからなる、方法:

式中、
R1、R3、R4、またはR5は、水素、低級アルカノイル、カルボキシレート、または低級アルキルであり;かつ
R2は、低級アルキル、低級アルカノイルアルキル、低級アルキルアルカノイルオキシである。
【請求項2】
哺乳類の疾患または状態を治療するために実施される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
疾患または状態がミオパチーまたは腎臓疾患もしくは腎臓状態である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
疾患または状態がシアル酸の欠如を含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
ミオパチーが縁取り空胞型遠位型ミオパチー(DMRV、Nonakaミオパチー)を含む、請求項3記載の方法。
【請求項6】
ミオパチーが筋ジストロフィー遺伝性封入体ミオパチー(HIBM)を含む、請求項3記載の方法。
【請求項7】
疾患がタンパク尿および/または血尿を伴う腎臓疾患である、請求項2記載の方法。
【請求項8】
腎臓疾患が腎臓膜構造の異常を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
腎臓膜構造の異常が奇形糸球体基底膜および/または融合有足細胞もしくは機能障害性有足細胞である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
UDP-GlcNAc2-エピメラーゼ/N-アセチルマンノサミンキナーゼ(GNE)の酵素活性を増加させ、腎臓ポドカリキシンのシアリル化を増加させ、有足細胞足突起形態を改善し、かつ/または糸球体基底膜完全性を改善する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
シアル酸前駆体であるN-アセチルマンノサミンまたはその誘導体の有効量が約0.1g/日〜約50g/日である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
治療量のN-アセチルマンノサミンを哺乳類に投与する段階を含む、哺乳類において腎障害を治療する方法であって、腎障害がタンパク尿および血尿を伴う、方法。
【請求項13】
治療量が、約1g〜約20gのN-アセチルマンノサミン/日である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
腎障害が腎臓膜異常を含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
腎臓膜異常がシアル酸の欠乏を含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
必要とする哺乳類においてシアル酸を増加させるための医薬の調製における、シアル酸前駆体であるN-アセチルマンノサミンまたはその誘導体の使用であって、誘導体が式Iからなる、使用:

式中、
R1、R3、R4、またはR5は、水素、低級アルカノイル、カルボキシレート、または低級アルキルであり;および
R2は、低級アルキル、低級アルカノイルアルキル、低級アルキルアルカノイルオキシである。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項記載の方法による、請求項16記載の使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−529021(P2010−529021A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510363(P2010−510363)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/006895
【国際公開番号】WO2008/150477
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(502354111)アメリカ合衆国 (8)
【Fターム(参考)】