説明

法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤及びこの土壌改良剤を利用した吹き付け工法

【課題】本発明は、酸性土壌に散布してpH調整を行う法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤及びこの土壌改良剤を利用した吹き付け工法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤及びこの土壌改良剤を利用した吹き付け工法は、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞と、廃オガ、米糠、コーヒー粕、ビール粕等の副資材と、バチルス・サブチルスに属し、アフラトキシン分解性を有するバチルス属DB9011菌とを重量比100:30:0.5〜0.6で水分率60%前後にして混合撹拌し、発酵温度75〜80℃で、30〜60日間発酵させたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性土壌に散布してpH調整を行う法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤及びこの土壌改良剤を利用した吹き付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日本海側の秋田県沿岸部の土壌は、酸性が強く、pH的には、3.0以下の所もあり、通常の植生方法では生育が期待できなく、法面植生及び植栽工事に苦慮しているのが現状である。
そこで、強酸性土壌の植生方法として、アルカリ性資材の投入の他、客土をもって緑化を実施したり、また酸性に強い適用植物(例:クリーピングレッドフェスク、チモシー、バミューダグラス、在来草木類ではイタドリ、ススキ、ヨモギ、メドハギ、本木類ではマツ類、リョーブ、ヤシャブシ、コナラ、ヤマハンノキなど)を選定したりしている。
しかし、上記植生方法は、植生工事のコスト及び管理の面から色々な不都合を生じている。
そこで、真菌発育抑制剤、発酵促進剤、家畜肥育剤に利用される微生物(特許文献2を参照)を利用して、強酸性土壌に有効な有機性土壌改良剤を開発した。
なお、バチルス属の微生物を土壌の改良に利用することのそれ自体は、知られている(特許文献1、3を参照)
【特許文献1】特開2002−121553号公報
【特許文献2】特開平5−146289号公報
【特許文献3】再公表特許WO00/42169
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、酸性土壌に散布してpH調整を行う法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤及びこの土壌改良剤を利用した吹き付け工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤は、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞と、廃オガ、米糠、コーヒー粕、ビール粕等の副資材と、バチルス・サブチルスに属し、アフラトキシン分解性を有するバチルス属DB9011菌とを容積比100:30:0.5〜0.6で水分率60%前後にして混合撹拌し、発酵温度75〜80℃で、1日1回の切り返し撹拌を行いつつ、夏期では30〜45日間、冬期では45〜60日間発酵させて形成したものである。
また、本発明の有機性土壌改良剤を利用した吹き付け工法は、バーク堆肥や伐根木チップ等の植生基盤材と上記請求項1記載の有機性土壌改良剤とを容積比100:20〜40とし、さらに菌根菌や枯草菌などの土壌微生物を前記植生基盤材1リットルに対し10gとし、さらに高度化成肥料と、侵食防止剤及び種子とを混練して調整し、この混練物を斜面に吹き付けるものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤は、バチルス属DB9011菌が土壌のpH調整を行うと共に、土壌のコロイド化を促進させ、通気性、保水性を高め活着、植栽の根張りが良くなる。
また、本発明の法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤は、バチルス属DB9011菌が投入されることにより悪臭(アンモニア、アミン)の防止、発酵温度を75〜80℃にすることにより、雑菌類、雑草種子を死滅させることができる。
さらに、本発明の法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤は、バチルス属DB9011菌が病害菌(悪玉微生物)を抑制し、農作物の連作障害の軽減に大きな効果を発揮する。
また、本発明の法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤は、有機物をバチルス属DB9011菌で完全発酵させた肥料となり、弱アルカリ(pH8.0〜8.3)を示すし、又、二次発酵の心配がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤の一実施例を以下に説明する。
本発明の法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤は、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞と、廃オガ、米糠、コーヒー粕、ビール粕等の副資材と、バチルス属DB9011菌(菌数106〜107/g)とを適宜容積比率で混合撹拌し、発酵温度75〜80℃で、30〜60日間発酵させたものである。
【0007】
前記バチルス属DB9011菌は、バチルス・サブチルスに属し、アフラトキシン分解性を有する微生物であって、真菌発育抑制剤、発酵促進剤、家畜肥育剤に利用される微生物である。
【0008】
本発明の法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤を製造するためには、堆積切り返し方法やハーズマン方式等があるが、ここでは、例えば幅3m×高さ2m×長さ80mの発酵設備をもつ連続撹拌発酵方式(スクープ方式)により、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞100tと、廃オガ、米糠、コーヒー粕、ビール粕等の副資材30tと、バチルス属DB9011菌500〜600kgとを水分率60%前後にして混合撹拌する。
1日1回の撹拌(切り返し)を行いつつ、発酵温度75〜80℃で発酵させ、夏期では30〜45日間、冬期では45〜60日間で法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤が生成される。
【0009】
このようにして生成された法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤は、全窒素1.52%、リン酸6.60%、カリ2.42%の肥料成分となり、バチルス属DB9011菌数104/g以上含まれるバチルス属DB9011菌の作用によりpH8.1に維持される。
そして、法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤に含まれているバチルス属DB9011菌が、土壌のpH調整を行うと共に、土壌のコロイド化を促進させ、通気性、保水性を高め、活着、根張りが良くなる。
【0010】
(試験例1)
高速道路秋田道において、pH2.6〜3.99の強酸性土壌の秋田中央I・C、秋田南I・C、太平山PAの植生工事では、図1に示すように現地盤を掘削し、掘削後に埋設した山砂、珪藻土焼成粒、炭酸カルシウム、ゼオライトを混合撹拌した基盤材からなる第1回改良区1に、本発明の法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤を前記第1回改良区1の上層に充填した第2回改良区2とし、そこに高木を植生した。
その結果、土壌のpHが改善され、従来の植生の枯死率10〜20%であったものが、今回の植生の枯死率は、1/800本となった。
【0011】
(試験例2)
明光沢地区において100m当り、植生基盤材1,560リットルに有機性土壌改良剤520リットル、さらに土壌微生物13kgとし、侵食防止材8kg、高度化成肥料12kg、種子(トールフエス0.77kg、クリーピングフエスク0.17kg、オーチャードグラス0.26kg、ヨモギ0.03kg、メドハキ0.12kg)を混練して、この混練物を斜面に厚さt=2cmで吹き付けを行った。
その結果、斜面を緑化させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤の試験例1の説明図である。
【符号の説明】
【0013】
1 第1回改良区
2 第2回改良区

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞と、廃オガ、米糠、コーヒー粕、ビール粕等の副資材と、バチルス・サブチルスに属し、アフラトキシン分解性を有するバチルス属DB9011菌とを容積比100:30:0.5〜0.6で水分率60%前後にして混合撹拌し、発酵温度75〜80℃で、1日1回の切り返し撹拌を行いつつ、夏期では30〜45日間、冬期では45〜60日間発酵させて形成したことを特徴とする法面工事、植栽工事における有機性土壌改良剤。
【請求項2】
バーク堆肥や伐根木チップ等の植生基盤材と上記請求項1記載の有機性土壌改良剤とを容積比100:20〜40とし、さらに菌根菌や枯草菌などの土壌微生物を前記植生基盤材1リットルに対し10gとし、高度化成肥料と、侵食防止剤及び種子とを混練して調整し、この混練物を斜面に吹き付けることを特徴とした有機性土壌改良剤を利用した吹き付け工法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−144022(P2009−144022A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321439(P2007−321439)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(500478846)有限会社バクトマテリアル (1)
【出願人】(500478857)株式会社コンノ土木 (1)
【出願人】(594095383)株式会社エー・エイチ・シー (4)
【Fターム(参考)】