説明

波形表示装置

【課題】波形の形状や座標点の経時変化を容易に把握し得る波形表示装置を提供する。
【解決手段】複数種類の物理量の経時変化を示すデータを記録する記録部と、各物理量の1つをx座標軸とし他の1つをy座標軸とする平面内における各物理量によって特定される座標点Pをデータの記録時間の経過に対応させて複数プロットして得られる波形Wを表示する表示部14と、波形Wの表示に関する制御を行う制御部と、波形Wの表示に関する指示操作を行うための操作部15とを備え、表示部14は、座標点Pを指し示すマーカーMを表示可能に構成され、制御部は、指示操作としてのアイコンI2が操作されたときに、表示されている波形Wを消去させると共に、記録時間の経過に伴う座標点Pの移動に追従させてマーカーMを所定の速度で移動表示させかつマーカーMの移動軌跡に沿って波形Wを描画させる波形描画処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの物理量をx座標軸とし他の1つの物理量をy座標軸とする平面内または空間内におけるその少なくとも2つの物理量によって特定される座標点を両物理量の記録時間の経過に対応させて複数プロットして得られる波形を表示可能な波形表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の波形表示装置として、特開平1−287420号公報において出願人が開示したx−yレコーダが知られている。このx−yレコーダは、2つのA/D変換器、タイマ、CPU、メモリおよびディスプレイを備えて構成されている。このx−yレコーダでは、各A/D変換器が2つのチャンネルの入力信号をそれぞれデジタル信号に変換し、CPUがそのデジタル信号をタイマに設定されているサンプリング間隔毎に取り込んで、メモリに記録(格納)させる。この場合、一方のチャンネルの入力信号のデジタル信号をx軸方向(x座標)の位置データとしてメモリに記録させ、他方のチャンネルの入力信号のデジタル信号をy軸方向(y座標)の位置データとしてメモリに記録させる。次いで、メモリに記録されている位置データが読み出されて、位置データに基づく波形(x方向の位置データおよびy方向の位置データによって特定される座標点をプロットした波形:以下「x−y合成波形」ともいう)がディスプレイに表示される。
【特許文献1】特開平1−287420号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記のx−yレコーダには、解決すべき以下の課題がある。すなわち、上記のx−yレコーダを含むこの種の波形表示装置を用いて長時間に亘って入力した入力信号に基づくx−y合成波形を表示させたときには、図10に示すように、x−y合成波形が輻輳してその形状を細部に亘って把握するのが困難となることがある。また、この種のx−y合成波形には時間軸が存在しないため、座標点の経時変化(座標点と時間との関係)を把握するのも困難である。このような課題を解消すべく、出願人は、データ記録時の時間経過に沿ってx−y合成波形の上を移動するカーソル(標識)102(同図参照)をx−y合成波形と共に表示させる波形表示装置を既に開発している。しかしながら、この波形表示装置においても、x−y合成波形が輻輳しているときには、その形状を細部に亘って把握したり座標点の経時変化を把握したりするのが依然としてやや困難であり、この点の改善が望まれている。
【0004】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、波形の形状や座標点の経時変化を容易に把握し得る波形表示装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載の波形表示装置は、複数種類の物理量の経時変化を示すデータを記録する記録部と、少なくとも前記各物理量の1つをx座標軸とし当該各物理量の他の1つをy座標軸とする平面内または空間内における当該少なくも2つの物理量によって特定される座標点を前記データの記録時間の経過に対応させて複数プロットして得られる波形を表示する表示部と、前記波形の表示に関する制御を行う制御部と、前記波形の表示に関する指示操作を行うための操作部とを備えた波形表示装置であって、前記表示部は、前記座標点を指し示す標識を表示可能に構成され、前記制御部は、前記指示操作としての波形描画指示操作がされたときに、その時点において前記表示部に表示されている前記波形を消去させると共に、前記記録時間の経過に伴う前記座標点の移動に追従させて前記標識を所定の速度で移動表示させかつ当該標識の移動軌跡に沿って前記波形を描画させる波形描画処理を実行する。
【0006】
また、請求項2記載の波形表示装置は、請求項1記載の波形表示装置において、前記制御部は、前記波形描画処理の実行時において前記指示操作としての速度変更指示操作がされたときに、前記所定の速度を変更させる。
【0007】
また、請求項3記載の波形表示装置は、請求項1または2記載の波形表示装置において、前記制御部は、前記波形描画処理の実行時において前記指示操作としての描画停止指示操作がされたときに、前記標識の移動表示を継続させた状態で当該描画停止指示操作がされた時点以降の前記波形の描画を停止させ、その状態において前記指示操作としての描画再開指示操作がされたときに、前記波形の描画を再開させる。
【0008】
また、請求項4記載の波形表示装置は、請求項1から3のいずれかに記載の波形表示装置において、前記制御部は、前記波形描画処理の実行時において前記指示操作としての標識停止指示操作がされたときに、停止状態の前記標識を表示させ、前記停止状態の標識を表示させている状態において前記指示操作としての前進指示操作がされたときに、その操作量に対応する長さの前記記録時間が経過する分だけ前記標識を移動表示させ、前記停止状態の標識を表示させている状態において前記指示操作としての後退指示操作がされたときに、その操作量に対応する長さの前記記録時間が遡る分だけ前記標識を移動表示させる。
【0009】
また、請求項5記載の波形表示装置は、請求項4記載の波形表示装置において、前記制御部は、前記指示操作としての描画状態保留指示操作がされた状態において前記前進指示操作または前記後退指示操作がされたときには、前記標識の移動軌跡に対応する前記波形の描画状態または非描画状態を変更することなく前記標識を移動表示させ、前記指示操作としての描画状態変更指示操作がされた状態において前記前進指示操作または前記後退指示操作がされかつ当該操作に伴う前記標識の移動軌跡に対応する前記波形が描画されていないときには、当該移動軌跡分だけ前記波形を描画させ、前記標識の移動軌跡に対応する前記波形が描画されているときには、当該移動軌跡分だけ前記波形を消去させる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の波形表示装置によれば、波形描画指示操作がされたときに、制御部が波形描画処理を実行することにより、例えば、長時間に亘って記録した入力信号に基づく波形が輻輳した状態で表示されたときにこの波形描画処理を実行させることで、その波形が消去されたクリアな画面上に、座標点を指し示す標識が記録時間の時間経過に伴って移動表示されると共に、その移動軌跡に沿って波形が描画されるため、波形の形状を細部に亘って容易に把握することができる。また、この波形表示装置によれば、標識が記録時間の時間経過に伴って移動表示されるため、時間軸が存在しない例えばx−y平面における座標点の経時変化を容易に把握することができる。
【0011】
また、請求項2記載の波形表示装置によれば、制御部が、波形描画処理の実行時において速度変更指示操作がされたときに、標識の移動速度を変更させることにより、波形の輻輳状態や座標点の変化の激しさなどに応じて標識の移動速度を変更することで、波形の細部に亘っての形状や座標点の経時変化を一層容易に把握することができる。
【0012】
また、請求項3記載の波形表示装置によれば、制御部が、波形描画処理の実行時において描画停止指示操作がされたときに、標識の移動表示を継続させた状態でその操作時点以降の波形の描画を停止させ、その状態において描画再開指示操作がされたときに、波形の描画を再開させることにより、例えば、既に描画されている波形と新たに描画される波形とが重なり合うことに起因して既に描画されている波形の形状の把握が困難となる事態を回避しつつ、座標点の経時変化を容易に把握することができる。
【0013】
また、請求項4記載の波形表示装置によれば、制御部が、波形描画処理の実行時において標識停止指示操作がされたときに、停止状態の標識を表示させ、停止状態の標識を表示させている状態において前進指示操作がされたときに、その操作量に対応する長さの記録時間が経過する分だけ標識を移動表示させ、停止状態の標識を表示させている状態において後退指示操作がされたときに、その操作量に対応する長さの記録時間が遡る分だけ標識を移動表示させることにより、標識を繰り返して前進および後退させることで、波形の所望の部位における座標点の経時変化をさらに容易に把握することができる。
【0014】
また、請求項5記載の波形表示装置によれば、制御部が、描画状態保留指示操作がされた状態において前進指示操作または後退指示操作がされたときには標識の移動軌跡に対応する波形の描画状態または非描画状態を変更することなく標識を移動表示させ、描画状態変更指示操作がされた状態において前進指示操作または後退指示操作がされたときには移動軌跡分だけ波形を描画または消去させることにより、前進指示操作および後退指示操作に伴う標識の前進および後退に合わせて波形における所望の部位の描画および消去を繰り返して行うことができるため、その部位の波形の形状をさらに容易に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る波形表示装置の最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
最初に、波形表示装置1の構成について、図面を参照して説明する。図1に示す波形表示装置1は、本発明に係る波形表示装置の一例であって、同図および図2に示すように、信号処理部11、記録部12、VRAM13、表示部14、操作部15および制御部16を備えて構成されている。
【0017】
信号処理部11は、例えば2種類の入力信号Si1(一例として電圧信号)および入力信号Si2(一例として電流信号。以下:両入力信号Si1,Si2を区別しないときには「入力信号Si」ともいう)を入力可能に構成され、制御部16の制御に従い、各入力信号Si1,Si2を信号処理(サンプリング処理)して波形データDw1,Dw2(本発明における「物理量の経時変化を示すデータ」であって、以下、区別しないときには「波形データDw」ともいう)を出力する。記録部12は、制御部16の制御に従い、信号処理部11から出力された波形データDwを記録する。VRAM13は、制御部16によって生成される表示データDdを一時的に記憶する。表示部14は、一例として、LCDで構成されて、制御部16の制御に従い、例えば、図1に示す波形Wや、図3に示すマーカーMを表示する。
【0018】
ここで、波形Wは、2つの波形データDw1,Dw2の値(本発明における物理量であって、この例では電圧値Vmおよび電流値Im)に基づく波形(例えば、リサージュ波形等)であって、図1に示すように、電圧値Vmをx座標軸とし電流値Imをy座標軸とするx−y平面内において、電圧値Vmおよび電流値Imによって特定される座標点Pを波形データDw1,Dw2の記録時間の経過に対応させて複数プロットして得られる。また、マーカーMは、図3に示すように、上記した座標点Pを指し示すための標識として機能し、後述する波形描画(制御部16によって実行される波形描画処理)の際に表示される。また、表示部14は、制御部16の制御に従い、図1に示す操作画像Gを表示する。
【0019】
操作部15は、図1に示すように、電源スイッチ21、モード切替えキー22、記録開始キー23および記録終了キー24等の波形の表示などに関する指示操作を行うための各種のスイッチやキー、並びにジョグダイヤル25などを備えて構成され、これらが操作されたときに操作信号Soを出力する。また、この波形表示装置1では、同図に示すように、表示部14における操作画像Gの表示部位の表面にタッチセンサ26が配設されており、このタッチセンサ26にタッチペン等が接触したときにも操作部15が操作信号Soを出力する。
【0020】
制御部16は、操作部15から出力される操作信号Soに従って波形表示装置1を構成する各部を制御する。具体的には、制御部16は、信号処理部11による信号処理を制御すると共に、記録部12による波形データDwの記録や読み出し制御する。また、制御部16は、各種の表示データDd(後述する操作画像用表示データDd1,全波形用表示データDd2、マーカ用表示データDd3および描画用表示データDd4)をVRAM13内に生成する(記憶させる)と共に、その表示データDdを転送することにより、表示部14による波形W、マーカーMおよび操作画像Gなどの表示および表示停止(本発明における表示に関する制御)を制御する。
【0021】
次に、波形表示装置1を用いて波形Wを表示させる方法、およびその際の波形表示装置1の動作について、図面を参照して説明する。この場合、信号処理部11が、入力信号Si1としての電圧信号、および入力信号Si2としての電流信号を入力するものとする。
【0022】
まず、操作部15のモード切替えキー22を操作して、波形表示装置1を記録モードに切り替えた後に、操作部15の記録開始キー23を操作する。この際に、制御部16が、操作部15から出力された操作信号Soに従って信号処理部11を制御し、信号処理部11が、制御部16の制御に従い、入力信号Si1を信号処理して生成した波形データDw1、および入力信号Si2を信号処理して生成した波形データDw2を出力する。次いで、制御部16は、信号処理部11から出力された波形データDw1,Dw2を記録部12に記録させる。続いて、入力信号Si1,Si2の記録を終了する際には、操作部15の記録終了キー24を操作する。これに応じて、制御部16は、信号処理部11を制御して信号処理を停止させると共に、記録部12を制御して波形データDw1,Dw2の記録を終了させる。
【0023】
次に、記録部12に記録した波形データDw1,Dw2に基づく波形Wを表示させる。具体的には、操作部15のモード切替えキー22を操作して、波形表示装置1を波形表示モードに切り替える。この際に、制御部16が、操作画像Gを表示させるための表示データDd(以下、「操作画像用表示データDd1」ともいう)をVRAM13内に生成する(記憶させる)と共に、その操作画像用表示データDd1を表示部14に転送する。これにより、図1に示すように、表示部14に操作画像Gが表示される。次いで、例えば、記録開始時点から記録終了時点までに亘る波形データDw1,Dw2の値(電圧値Vmおよび電流値Im)に基づく波形Wの全てを表示部14に一度に表示させるときには、同図に示す操作画像G内の「全波形表示」のアイコンI1(実際には、そのアイコンI1に対向するタッチセンサ26の所定部位)を操作(タッチペンで接触)する。この際に、制御部16が、操作部15から出力された操作信号Soに従って全波形表示処理を実行する。
【0024】
この全波形表示処理では、制御部16は、記録部12から波形データDw1,Dw2を読み出す。続いて、制御部16は、読み出した波形データDw1,Dw2に基づいて波形W全体を表示させるための表示データDd(以下、「全波形用表示データDd2」ともいう)をVRAM13内に生成する。この場合、制御部16は、一例として、次のようにして全波形用表示データDd2を生成する。まず、制御部16は、波形データDw1,Dw2の記録開始時点(記録時間の先頭)における電圧値Vmおよび電流値Imを波形データDw1,Dw2に基づいて算出する。次いで、制御部16は、電圧値Vmをx座標軸とし電流値Imをy座標軸とするx−y平面内における記録開始時点の座標点P(図1参照)を、算出した電圧値Vmおよび電流値Imによって特定する。続いて、制御部16は、特定した座標点Pに対応するVRAM13内のメモリアドレスに、所定の大きさのドットD(同図参照)を示すデータを書き込む(プロットする)。次いで、制御部16は、このデータの書き込み処理(プロット処理)を波形データDw1,Dw2の記録開始時点から記録終了時点までに亘って所定時間間隔(例えば、信号処理部11による信号処理の際のサンプリング周期、またはそのサンプリング周期の数倍の周期)で行う。これにより、複数の座標点P(ドットD)をプロットすることによって得られる波形Wを表示可能な全波形用表示データDd2がVRAM13内に生成される。
【0025】
続いて、制御部16は、全波形用表示データDd2を表示部14に転送する。これにより、図1に示すように、波形Wの全て(以下、「全波形Wa」ともいう)が表示部14に表示される。ここで、同図に示すように、表示された全波形Waが輻輳しているときには、その形状を細部に亘って把握するのが困難である。また、波形Wが表示されているx−y平面には、時間軸が存在しないため、座標点Pの経時変化を把握するのも困難である。このようなときには、波形Wの形状や座標点Pの経時変化を把握し易くするために、波形描画処理を波形表示装置1に行わせる。具体的には、図3に示す操作画像G内の「再生」のアイコンI2を操作する(本発明における波形描画指示操作)。この際に、制御部16が、操作部15から出力された操作信号Soに従って波形描画処理を実行する。
【0026】
この波形描画処理では、制御部16は、上記した全波形表示処理と同様にして記録部12から読み出した波形データDw1,Dw2に基づき、記録開始時点の座標点P(図3参照)を特定する。次いで、制御部16は、VRAM13内に生成した上記の全波形用表示データDd2を消去した後に、マーカーM(同図参照)を表示させるための表示データDd(以下、「マーカ用表示データDd3」ともいう)を、マーカーMの先端部が座標点Pに位置するようにVRAM13内に生成する。続いて、制御部16は、マーカ用表示データDd3を表示部14に転送する。これにより、同図に示すように、全波形Waが消去されると共に座標点Pを指し示すマーカーMが表示部14に表示される。
【0027】
次いで、制御部16は、座標点Pを特定する処理を波形データDw1,Dw2の記録開始時点から所定時間間隔で行う。この場合、制御部16は、座標点Pが移動する度に、その移動に追従してマーカーMが所定の速度で移動するようにマーカ用表示データDd3を更新してVRAM13に記憶させると共に、移動した座標点Pに対応するメモリアドレスにドットDを示すデータを書き込むことによって波形描画用の表示データDd(以下、「描画用表示データDd4」ともいう)を更新してVRAM13に記憶させる。また、制御部16は、更新したマーカ用表示データDd3および描画用表示データDd4を更新の度に表示部14に転送する。これにより、図4に示すように、波形データDw1,Dw2の記録開始時点からの時間経過に伴ってマーカーMが所定の速度で移動表示されると共に、マーカーMの移動軌跡に沿って波形Wが描画される。この場合、マーカーMの移動表示、および波形Wの描画が行われることで、波形Wの形状を細部に亘って容易に把握することが可能となり、また、座標点Pの経時変化を容易に把握することも可能となる。
【0028】
一方、この波形表示装置1では、上記した波形描画処理の実行時において、マーカーMの移動表示の速度を変更することが可能となっている。この場合、例えば、マーカーMの移動表示の速度を上昇させるときには、図4に示す操作画像G内の「高速」のアイコンI3を操作する(本発明における速度変更指示操作の一例)。この場合、制御部16は、例えば、マーカ用表示データDd3および描画用表示データDd4を更新する時間間隔を短く設定する。これにより、マーカーMの移動表示の速度が上昇し、それに伴って波形Wが描画される速度も上昇する。一方、マーカーMの移動表示の速度を低下させるときには、同図に示す操作画像G内の「低速」のアイコンI4を操作する(本発明における速度変更指示操作の他の一例)。この場合、制御部16は、例えば、マーカ用表示データDd3および描画用表示データDd4を更新する時間間隔を長く設定する。これにより、マーカーMの移動表示の速度が低下し、それに伴って波形Wが描画される速度も低下する。
【0029】
また、この波形表示装置1では、上記した波形描画処理の実行時において、表示部14の画面に対してマーカーMを上げ下げする感覚で、波形Wの描画を停止させたり再開させたりすることが可能となっている。具体的には、図5に示すように、波形描画処理の実行時における任意のタイミングで操作画像G内の「マーカーアップ」のアイコンI5を操作したときには(本発明における描画停止指示操作)、制御部16が、マーカ用表示データDd3の更新を継続した状態で描画用表示データDd4の更新を停止する。これにより、図6に示すように、マーカーMの移動表示が継続した状態で、アイコンI5の操作時点以降の波形Wの描画が停止される。また、波形Wの描画が停止した状態における任意のタイミングで、操作画像G内の「マーカーダウン」のアイコンI6を操作したときには(本発明における描画再開指示操作)、制御部16が、描画用表示データDd4の更新を再開する。これにより、図7に示すように、アイコンI6の操作時点以降の波形Wの描画が再開される。
【0030】
また、この波形表示装置1では、上記した波形描画処理の実行時において、マーカーMの移動を停止させて、その状態でジョグダイヤル25を手動操作することによってマーカーMを任意に前進または後退させることが可能となっている。具体的には、図7に示すように、波形描画処理の実行時における任意のタイミングで操作画像G内の「停止」のアイコンI7を操作したときには(本発明における標識停止指示操作)、制御部16が、座標点Pを特定する処理、並びにマーカ用表示データDd3および描画用表示データDd4を更新する処理を停止する。これにより、同図に示すように、マーカーMの移動が停止する(停止状態のマーカーMが表示される)と共に、アイコンI7の操作時点以降の波形Wの描画が停止する。
【0031】
続いて、マーカーMの移動および波形Wの描画が停止されている状態において、図8に示すように、例えば、ジョグダイヤル25を右回りに回転操作したときには(本発明における前進指示操作)、制御部16がその操作量(回転量)に対応する長さの記録時間が経過する分だけ、座標点Pを特定する処理、並びにマーカ用表示データDd3および描画用表示データDd4を更新する処理を実行する。これにより、同図に示すように、ジョグダイヤル25の操作量に対応する記録時間が経過する分だけマーカーMが移動表示される。
【0032】
この場合、制御部16は、「マーカーダウン」のアイコンI6が操作(本発明における描画状態変更指示操作)された状態においてジョグダイヤル25が右回りに回転操作され、その際に回転操作に伴うマーカーMの移動軌跡に対応する波形Wが描画されていないときには、操作量に対応する長さの記録時間が経過する分だけ描画用表示データDd4を更新する処理を実行することにより、同図に示すように、マーカーMの移動軌跡に沿って(移動軌跡分だけ)波形Wを描画させ、マーカーMの移動軌跡に対応する波形Wが描画されているときには、移動した座標点Pに対応するメモリアドレスのデータを消去して描画用表示データDd4を更新することにより、マーカーMの移動軌跡に沿って(移動軌跡分だけ)波形Wを消去させる。また、制御部16は、「マーカーアップ」のアイコンI5が操作(本発明における描画状態保留指示操作)された状態においてジョグダイヤル25が右回りに回転操作されたときには、マーカーMの移動軌跡に対応する波形Wの描画状態または非描画状態を変更することなく(つまり、マーカーMの移動軌跡に沿った波形Wの描画や消去を行うことなく)マーカーMを移動表示させる。
【0033】
一方、図9に示すように、ジョグダイヤル25を左回りに回転操作したときには(本発明における後退指示操作)、制御部16がその操作量(回転量)に対応する長さの記録時間が遡る分だけ座標点Pを遡って特定し、その座標点Pの移動(記録時間が遡る向きの移動)に追従してマーカーMが移動するようにマーカ用表示データDd3を更新する。これにより、同図に示すように、ジョグダイヤル25の操作量に対応する長さの記録時間が遡る分だけマーカーMが移動表示される。
【0034】
この場合、制御部16は、「マーカーダウン」のアイコンI6が操作(本発明における描画状態変更指示操作)された状態においてジョグダイヤル25が左回りに回転操作され、その際に回転操作に伴うマーカーMの移動軌跡に対応する波形Wが描画されているときには、移動した座標点Pに対応するメモリアドレスのデータを消去して描画用表示データDd4を更新することにより、同図に示すように、マーカーMの移動軌跡に沿って(移動軌跡分だけ)波形Wを消去させ、マーカーMの移動軌跡に対応する波形Wが描画されていないときには、操作量に対応する長さの記録時間が遡る分だけ描画用表示データDd4を更新する処理を実行することにより、マーカーMの移動軌跡に沿って(移動軌跡分だけ)波形Wを描画させる。また、制御部16は、「マーカーアップ」のアイコンI5が操作(本発明における描画状態保留指示操作)された状態においてジョグダイヤル25が左回りに回転操作されたときには、マーカーMの移動軌跡に対応する波形Wの描画状態または非描画状態を変更することなく(つまり、マーカーMの移動軌跡に沿った波形Wの描画や消去を行うことなく)マーカーMを移動表示させる。
【0035】
この場合、この波形表示装置1では、ジョグダイヤル25を手動操作することでマーカーMの任意の移動(前進および後退)が可能となっている。このため、マーカーMを繰り返して前進および後退させることで、波形Wにおける所望の部位における座標点Pの経時変化をさらに容易に把握することが可能となっている。また、アイコンI5,I6の操作とジョグダイヤル25の操作とを組み合わせることで、ジョグダイヤル25の操作に伴うマーカーMの前進および後退に合わせて波形Wにおける所望の部位の描画および消去を繰り返して行うことができるため、その部位の波形Wの形状をさらに容易に把握することが可能となっている。
【0036】
また、この波形表示装置1では、上記した波形描画処理の実行時において、図9に示す操作画像G内の「波形クリア」のアイコンI8を操作することで、マーカーMの表示を継続した状態で、操作時点において表示部14に描画されている波形Wを消去することが可能となっている。さらに、この波形表示装置1では、上記した波形描画処理の実行時において、同図に示す操作画像G内の「先頭へ」のアイコンI9を操作することで、記録開始時点における座標点Pを指し示す位置にマーカーMを移動させ、同図に示す操作画像G内の「最後へ」のアイコンI10を操作することで、記録終了時点における座標点Pを指し示す位置にマーカーMを移動させることが可能となっている。
【0037】
このように、この波形表示装置1によれば、アイコンI2が操作されたときに、波形描画処理を実行することにより、例えば、長時間に亘って記録した入力信号に基づく波形Wが輻輳した状態で表示されたときにこの波形描画処理を実行させることで、その波形Wが消去されたクリアな画面上に、座標点Pを指し示すマーカーMが記録時間の時間経過に伴って移動表示されると共に、その移動軌跡に沿って波形Wが描画されるため、波形Wの形状を細部に亘って容易に把握することができる。また、この波形表示装置1によれば、マーカーMが記録時間の時間経過に伴って移動表示されるため、時間軸が存在しないx−y平面における座標点Pの経時変化を容易に把握することができる。
【0038】
また、この波形表示装置1によれば、波形描画処理の実行時においてアイコンI3,I4が操作がされたときに、マーカーMの移動速度を変更させることにより、波形Wの輻輳状態や座標点Pの変化の激しさなど応じてマーカーMの移動速度を変更することで、波形Wの細部に亘っての形状や座標点Pの経時変化を一層容易に把握することができる。
【0039】
また、この波形表示装置1によれば、波形描画処理の実行時においてアイコンI5が操作がされたときにマーカーMの移動表示を継続した状態でその操作時点以降の波形Wの描画を停止させると共に、その状態においてアイコンI6が操作されたときに波形Wの描画を再開させることにより、例えば、既に描画されている波形Wと新たに描画される波形Wとが重なり合うことに起因して既に描画されている波形Wの形状の把握が困難となる事態を回避しつつ、座標点Pの経時変化を容易に把握することができる。
【0040】
また、この波形表示装置1によれば、波形描画処理の実行時においてアイコンI7が操作されたときにマーカーMを停止させ、マーカーMの停止状態においてジョグダイヤル25が右回りに回転操作されたときにその操作量に対応する記録時間が経過する分だけマーカーMを移動表示させ、マーカーMの停止状態においてジョグダイヤル25が左回りに回転操作されたときにその操作量に対応する記録時間が遡る分だけマーカーMを移動表示させることにより、マーカーMを繰り返して前進および後退させることで、波形Wの所望の部位における座標点Pの経時変化をさらに容易に把握することができる。
【0041】
また、この波形表示装置1によれば、アイコンI5が操作された状態においてジョグダイヤル25が左回りまたは右回りに回転操作されたときにはマーカーMの移動軌跡に対応する波形Wの描画状態または非描画状態を変更することなく(つまり、マーカーMの移動軌跡に沿った波形Wの描画や消去を行うことなく)マーカーMを移動表示させ、アイコンI6が操作された状態においてジョグダイヤル25が左回りまたは右回りに回転操作されたときにはマーカーMの移動軌跡分だけ波形Wを描画または消去させることにより、ジョグダイヤル25の操作に伴うマーカーMの前進および後退に合わせて波形Wにおける所望の部位の描画および消去を繰り返して行うことができるため、その部位の波形Wの形状をさらに容易に把握することができる。
【0042】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、電圧信号および電流信号に基づく波形Wについての描画処理を実行する例について上記したが、描画処理の対象の波形Wはこれに限定されない。例えば、温度(本発明における物理量)の経時変化を示す入力信号と電圧信号とに基づく波形Wや、磁界(本発明における物理量)の経時変化を示す入力信号と電流信号とに基づく波形Wなどの各種の波形Wについての描画処理を実行することができる。また、1つ(1種類)の波形Wだけを表示部14に描画する例について上記したが、2つ(2種類)以上の波形Wを表示部14に同時に描画する構成を採用することもできる。
【0043】
さらに、1つの物理量をx座標軸とし他の1つの物理量をy座標軸とするx−y平面内にその2つの物理量よって特定される座標点Pをデータの記録時間の経過に対応させて複数プロットして得られる波形データDwを描画(表示)させる波形表示装置1に適用した例について上記したが、上記の2つの物理量とは異なる3つ目の物理量をz座標軸として、このz座標軸と上記のx座標軸およびy座標軸とからなる空間内(3次元空間内)におけるこれらの3つの物理量によって特定される座標点を記録時間の経過に対応させて複数プロットして得られる波形を表示する波形表示装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】波形表示装置1の正面図である。
【図2】波形表示装置1の構成を示すブロック図である。
【図3】波形描画処理の方法を説明するための第1の説明図である。
【図4】波形描画処理の方法を説明するための第2の説明図である。
【図5】波形描画処理の方法を説明するための第3の説明図である。
【図6】波形描画処理の方法を説明するための第4の説明図である。
【図7】波形描画処理の方法を説明するための第5の説明図である。
【図8】波形描画処理の方法を説明するための第6の説明図である。
【図9】波形描画処理の方法を説明するための第7の説明図である。
【図10】従来の波形表示方法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 波形表示装置
12 記録部
14 表示部
15 操作部
16 制御部
25 ジョグダイヤル
26 タッチセンサ
G 操作画像
I1〜I10 アイコン
Im 電流値
M マーカー
P 座標点
Vm 電圧値
W 波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の物理量の経時変化を示すデータを記録する記録部と、少なくとも前記各物理量の1つをx座標軸とし当該各物理量の他の1つをy座標軸とする平面内または空間内における当該少なくも2つの物理量によって特定される座標点を前記データの記録時間の経過に対応させて複数プロットして得られる波形を表示する表示部と、前記波形の表示に関する制御を行う制御部と、前記波形の表示に関する指示操作を行うための操作部とを備えた波形表示装置であって、
前記表示部は、前記座標点を指し示す標識を表示可能に構成され、
前記制御部は、前記指示操作としての波形描画指示操作がされたときに、その時点において前記表示部に表示されている前記波形を消去させると共に、前記記録時間の経過に伴う前記座標点の移動に追従させて前記標識を所定の速度で移動表示させかつ当該標識の移動軌跡に沿って前記波形を描画させる波形描画処理を実行する波形表示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記波形描画処理の実行時において前記指示操作としての速度変更指示操作がされたときに、前記所定の速度を変更させる請求項1記載の波形表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記波形描画処理の実行時において前記指示操作としての描画停止指示操作がされたときに、前記標識の移動表示を継続させた状態で当該描画停止指示操作がされた時点以降の前記波形の描画を停止させ、その状態において前記指示操作としての描画再開指示操作がされたときに、前記波形の描画を再開させる請求項1または2記載の波形表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記波形描画処理の実行時において前記指示操作としての標識停止指示操作がされたときに、停止状態の前記標識を表示させ、前記停止状態の標識を表示させている状態において前記指示操作としての前進指示操作がされたときに、その操作量に対応する長さの前記記録時間が経過する分だけ前記標識を移動表示させ、前記停止状態の標識を表示させている状態において前記指示操作としての後退指示操作がされたときに、その操作量に対応する長さの前記記録時間が遡る分だけ前記標識を移動表示させる請求項1から3のいずれかに記載の波形表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記指示操作としての描画状態保留指示操作がされた状態において前記前進指示操作または前記後退指示操作がされたときには、前記標識の移動軌跡に対応する前記波形の描画状態または非描画状態を変更することなく前記標識を移動表示させ、
前記指示操作としての描画状態変更指示操作がされた状態において前記前進指示操作または前記後退指示操作がされかつ当該操作に伴う前記標識の移動軌跡に対応する前記波形が描画されていないときには、当該移動軌跡分だけ前記波形を描画させ、前記標識の移動軌跡に対応する前記波形が描画されているときには、当該移動軌跡分だけ前記波形を消去させる請求項4記載の波形表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−250950(P2009−250950A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103159(P2008−103159)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)