波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法
【課題】本発明は、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができ、かつ小型で安価な波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本願発明の波長分散ストレス発生装置は、平行光L1を回折する回折格子20と、回折光L2を回折格子20に反射する平行光反射器40と、反射光L3が回折格子20で回折された二重回折光L4を多重反射する多重反射器10−1と、多重反射器10−1の出射窓14から出射される多重反射光L5を平行光L1と平行にして回折格子20の格子面に入射させる多重反射光反射器30と、を備える。
【解決手段】本願発明の波長分散ストレス発生装置は、平行光L1を回折する回折格子20と、回折光L2を回折格子20に反射する平行光反射器40と、反射光L3が回折格子20で回折された二重回折光L4を多重反射する多重反射器10−1と、多重反射器10−1の出射窓14から出射される多重反射光L5を平行光L1と平行にして回折格子20の格子面に入射させる多重反射光反射器30と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高速光通信システムや光部品の波長分散(CD:Chromatic Dispersion)トレランスを評価するための波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の大容量化に伴い、伝送速度は高速化し、現在実用化されている強度変調方式に代わり、位相変調方式やコヒーレント変調方式の研究も進められている。これらの超高速光通信システムにおいては、波長分散やPMD(Polarization Mode Dispersion)などの分散性ストレスを加えてジッタやBER(Bit Error Rate)を測定する分散トレランスの試験が重要となる。ここで、波長分散とは波長によって光ファイバを伝搬する伝送時間差を生じ、波形劣化を引き起こす現象をいう。
【0003】
従来、光通信システムのトレランス試験としては、伝送信号のアイ波形を評価するジッタトレランス、OSNR(Optical Signal to Noise Ratio)を変化させBERを評価するOSNRトレランス、CDを加えたCDトレランスの評価が行われている(例えば、特許文献1参照)。波長分散の発生は、波長分散補償器として用いられているVIPA(Virtually Imaged Phased Array)や分散補償ファイバグレーティングを用いて行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−86955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、波長分散補償器の可変できる波長分散値は−200〜+2000ps/nm程度と波長分散値が小さい。デジタルコヒーレント技術においては、波長分散や偏波モード分散等の線形歪みに対して極めて強く、従来のOn/Off Keyingに比べ10倍以上の分散値(10000ps/nm以上)の波長分散ストレスを与えて試験することが必要となってきた。
【0006】
そこで、本発明は、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができ、かつ小型で安価な波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明の波長分散ストレス発生装置は、平行光を波長ごとに異なる回折角で回折する回折格子(20)と、前記回折格子からの回折光のうちの任意の波長の光が前記回折格子で前記平行光と平行な方向に回折されるように、前記回折格子からの回折光を反射する前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能な平行光反射器(40)と、前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能であり、前記平行光反射器で反射された反射光が前記回折格子で回折された二重回折光が入射窓から入射され、前記二重回折光を互いに平行に配置された第1反射面(11)及び第2反射面(12)で多重反射し、多重反射後の多重反射光を前記入射窓とは異なる出射窓から出射する多重反射器(10−1)と、前記多重反射器の前記出射窓から出射される多重反射光を、前記平行光と平行にして前記回折格子の格子面に入射させる多重反射光反射器(30)と、を備える。
【0008】
回折格子で回折された二重回折光を波長によって異なる位置から多重反射器に入射させるため、多重反射器で多重反射された光には波長によって異なる遅延が与えられる。これにより、多重反射器から出射される多重反射光に波長分散ストレスを発生させることができる。ここで、多重反射器は回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能であるため、多重反射器における多重反射回数を可変することができる。このように、多重反射を用いて波長分散ストレスを発生させるため、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができるとともに、装置構成を小型で安価にすることができる。また、平行光反射器を回転させることによって、任意の波長における波長分散ストレスを発生させることができる。したがって、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができ、かつ小型で安価な波長分散ストレス発生装置を提供することができる。
【0009】
本願発明の波長分散ストレス発生装置では、前記多重反射器及び前記多重反射光反射器は、前記二重回折光と平行な直線上で移動可能であってもよい。
多重反射器と回折格子との距離を可変することで、多重反射器に入射させる二重回折光の位置を可変することができる。これにより、本願発明の波長分散ストレス発生装置は、さらに広い範囲で波長分散値を可変することができる。
【0010】
本願発明の波長分散ストレス発生装置では、前記多重反射器は、前記入射窓の一部を通る直線を中心に回転可能であってもよい。
入射窓を中心に回転するため、多重反射器の回転に拠らず二重回折光の入射位置を一定にすることができる。これにより、装置構成を簡単にすることができる。
【0011】
本願発明の波長分散ストレス発生装置では、前記多重反射器は、前記任意の波長の長波長側及び短波長側の両方に前記出射窓を備え、前記多重反射光反射器を前記出射窓ごとに備えてもよい。
長波長側及び短波長側の両方に出射窓を備えるため、多重反射器は、短波長側の遅延を大きくして長波長側の遅延を小さくすることも、長波長側の遅延を大きくして短波長側の遅延を小さくすることもできる。
【0012】
上記目的を達成するために、本願発明の波長分散ストレス発生方法は、平行光を波長ごとに異なる回折角で回折する回折格子(20)に入射する平行光入射手順(S101)と、前記回折格子からの回折光のうちの任意の波長の光が前記回折格子で前記平行光と平行な方向に回折されるように、前記回折格子からの回折光を反射する回折光反射手順(S102)と、前記回折光反射手順で反射した回折光が前記回折格子の格子面で回折された二重回折光を前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能な多重反射器(10−1)の入射窓に入射し、前記二重回折光を互いに平行に配置された第1反射面(11)及び第2反射面(12)で多重反射し、多重反射後の多重反射光を前記入射窓とは異なる出射窓から出射する多重反射手順(S103)と、前記多重反射器の前記出射窓から出射される多重反射光を、前記平行光と平行にして前記回折格子の格子面に入射する多重反射光反射手順(S104)と、前記多重反射光反射手順において前記回折格子で回折後の平行光を取り出す平行光出射手順(S105)と、を順に有する。
【0013】
回折格子で回折された二重回折光を波長によって異なる位置から多重反射器に入射させるため、多重反射器で多重反射された光には波長によって異なる遅延が与えられる。これにより、多重反射器から出射される多重反射光に波長分散ストレスを発生させることができる。ここで、多重反射器は回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能であるため、多重反射器における多重反射回数を可変することができる。このように、多重反射を用いて波長分散ストレスを発生させるため、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができるとともに、装置構成を小型で安価にすることができる。したがって、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができ、かつ小型で安価な波長分散ストレス発生方法を提供することができる。
【0014】
本願発明の波長分散ストレス発生方法では、前記多重反射器と前記回折格子との距離を、前記平行光と平行な直線上で可変する波長分散調整手順(S106)を、前記平行光入射手順の前にさらに有してもよい。
さらに、前記多重反射手順においては、前記多重反射器を、前記入射窓の一部を通る直線を中心に回転させることにより多重反射回数を可変してもよい。
多重反射器と回折格子との距離を可変することで、多重反射器に入射させる二重回折光の位置を可変することができる。これにより、本願発明の波長分散ストレス発生装置は、さらに広い範囲で波長分散値を可変することができる。
さらに、入射窓を中心に回転することで、多重反射器の回転に拠らず二重回折光の入射位置を一定にすることができる。これにより、装置構成を簡単にすることができる。
【0015】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができ、かつ小型で安価な波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。
【図2】実施形態1に係る多重反射器の光路の第1例を示す。
【図3】実施形態1に係る波長分散ストレス発生方法の一例を示す。
【図4】実施形態1に係る多重反射器の光路の第2例を示す。
【図5】実施形態2に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。
【図6】実施形態2に係る多重反射器の光路の一例を示す。
【図7】実施形態3に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。
【図8】実施形態3に係る多重反射器の光路の一例を示す。
【図9】実施形態3に係る波長分散ストレス発生方法の一例を示す。
【図10】実施形態4に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。
【図11】実施形態4に係る多重反射器の光路の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。実施形態1に係る波長分散ストレス発生装置は、光入力部51と、コリメータレンズ54と、回折格子20と、平行光反射器40と、多重反射器10−1と、多重反射光反射器30と、コリメータレンズ55と、光出力部52と、を備える。
【0020】
図2に、実施形態1に係る多重反射器の光路の第1例を示す。回折格子20は、平行光L1を波長ごとに異なる回折角で回折する。平行光反射器40は、回折格子20からの回折光L2のうちの任意の波長の光が回折格子20で平行光L1と平行な方向に回折されるように、回折格子20の刻線方向と平行な直線を中心に回転して回折格子20からの回折光L2を反射する。多重反射器10−1は、回折格子20の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能であり、平行光反射器40で反射された反射光L3が回折格子20で回折された二重回折光L4が入射窓13から入射され、二重回折光L4を互いに平行に配置された第1反射面11及び第2反射面12で多重反射し、多重反射後の多重反射光L5を入射窓13とは異なる出射窓14から出射する。多重反射器10−1の入射窓13及び出射窓14は、二重回折光L4及び多重反射光L5の損失を小さくするために、低反射率であることが好ましい。
【0021】
多重反射光反射器30は、多重反射器10−1の出射窓14から出射される多重反射光L5を二重回折光L4と平行にして、多重反射光L6を回折格子20の格子面に入射させる。多重反射光反射器30は、多重反射光反射器30の表面で多重反射光L5を反射するコーナーミラーであってもよいし、多重反射光反射器30の媒質中で多重反射光L5を反射するコーナーキューブであってもよい。
【0022】
図3に、実施形態1に係る波長分散ストレス発生方法の一例を示す。実施形態1に係る波長分散ストレス発生方法は、平行光入射手順S101と、回折光反射手順S102と、多重反射手順S103と、多重反射光反射手順S104と、平行光出射手順S105と、を順に有する。
【0023】
平行光入射手順S101では、回折格子20に平行光L1を入射する。そして、回折格子20は、平行光L1を波長ごとに異なる回折角で回折する。例えば、光入力部51に、入力光L0が入力される。入力光L0はコリメータレンズ54に入射され、コリメータレンズ54から平行光L1が出射される。平行光L1は、回折格子20に入射される。これにより、回折格子20からの回折光L3が、波長ごとに異なる回折角で出射する。
【0024】
回折光反射手順S102では、回折格子20からの回折光L2を平行光反射器40で反射して、回折格子20からの回折光L2のうちの任意の波長の回折光L3を回折格子20の格子面に向けて反射する。ここで、平行光反射器40は回折格子20の刻線方向と平行な回転軸で回転が可能である。このため、平行光反射器40を回転させることで、波長分散を発生させる波長λを選択することができる。
【0025】
多重反射手順S103では、回折光反射手順S102で反射した回折光L3が回折格子20の格子面で回折された二重回折光L4を多重反射器10−1の入射窓13に入射し、二重回折光L4を第1反射面11及び第2反射面12で多重反射し、多重反射後の多重反射光L5を入射窓13とは異なる出射窓14から出射する。
【0026】
ここで、多重反射器10−1に入力する二重回折光L4は、波長によって入射位置が異なるため、入射位置の距離差分で発生する多重反射回数の差異は波長差間の遅延を与えることになる。例えば、図2の例では、出射窓14が短波長側に設けられており、入射位置の距離差分で発生する多重反射回数は短波長側が少なくなる。このため、短波長側の遅延を小さくすることができる。
【0027】
図4に、実施形態1に係る多重反射器の光路の第2例を示す。出射窓14が長波長側に設けられており、入射位置の距離差分で発生する多重反射回数は短波長側が多くなる。このため、短波長側の遅延を大きくすることができる。
【0028】
また、図1及び図2に示す多重反射器10−1は、回転軸15を中心に回転可能である。回転軸15は、入射窓13の一部を通りかつ回折格子20の刻線方向と平行な直線である。多重反射器10−1を回転すると、入射位置の距離差分で発生する多重反射の回数を変化させることができ、遅延量を可変することができる。これにより、波長分散値を可変することができる。
【0029】
多重反射光反射手順S104では、多重反射光反射器30が、多重反射器10−1の出射窓14から出射される多重反射光L5を平行光L1と平行にする。これにより、多重反射光反射器30は平行光L1と平行な多重反射光L6を回折格子20の格子面に入射する。多重反射光L6は回折格子20で回折される。多重反射光L6が回折格子20で回折された回折光L7は、平行光反射器40に入射される。
【0030】
平行光出射手順S105では、多重反射光反射手順S104において回折格子20で回折後の回折光L7を取り出す。例えば、平行光反射器40は、回折光L7を回折格子20の格子面に向けて反射する。これにより、反射光L8が回折格子20の格子面に入射される。回折格子20の格子面に入射された反射光L8は回折される。このとき、平行光L1から回折光L2に回折されたときと同じ角度で反射光L8を回折格子20に入射する。これにより、反射光L8が回折格子20の格子面で回折された後の平行光L9は、平行光L1と平行な平行光となる。平行光L9は、コリメータレンズ55に入射されて光出力部52に集光される。そして光出力部52から光L10が出力される。
【0031】
各波長において、二重回折光L4と多重反射光L6は平行で逆方向の光であり、すなわち回折光L3から二重回折光L4への回折角と多重反射光L6から回折光L7への回折角は等しいため、波長によって分散した光は光出力部52では1点に集光される。
【0032】
本願の波長分散ストレス発生装置の原理は、多重反射器10−1に入力される二重回折光L4が波長によって入射位置が異なるため、その空間的な入射位置の距離差分で発生する多重反射による遅延差から、波長により異なる遅延を発生する。したがって、波長によって異なる空間的な入射位置の差を変化させるか、波長によって異なる空間的な入射位置の差で発生する多重反射の回数を変化させることによって、波長間の遅延量を変化させることができる。実際には、空間的な入射位置の差以外の波長による多重反射器内での光線角度の差分も遅延量に加味される。
【0033】
回折光L2は式(1)で表され、二重回折光L4は式(2)で表される。
【数1】
ただし、mは回折格子の回折次数、λは波長、dは格子定数、α1は平行光L1の入射角、β1は回折光L2の回折角、α2は反射光L8の入射角、β2は二重回折光L4の回折角である。
【0034】
λを(λ+Δλ)とした場合の回折角の変化量を求める。
式(1)をλで微分すると、
【数3】
式(2)をλで微分すると、
【数4】
【0035】
したがって、1回目の回折光L2の角分散は、式(3)より式(5)で表される。
【数5】
【0036】
ここで、本光学系では加分散配列となり、Δα2/Δλ=−Δβ/Δλである。このため、式(4)は以下のように表される。
【数6】
【0037】
(6)式に(5)式のΔβ1/Δλを代入することにより、2回目の二重回折光L4の角分散は、式(7)で表される。
【数7】
【0038】
例えば、波長λを1550nm、回折格子20の刻線数を1250groves/mm、1回目の回折格子20への平行光L1の入射角α1を85degとすると、1回目の回折光L2の回折角β1は70.27deg、2回目の回折格子20への回折光L3の入射角α2は70.27deg、2回目の二重回折光L4の回折角β2は85degとなる。この場合、波長1nm当たりの角分散は、式(7)より、1.034deg/nmとなり、波長差1nmの2つの光は、回折格子20から500nm離れた位置では9mm程度分離される。
【0039】
この9mmの多重反射器10−1への入射位置において、第1反射面11と第2反射面12の間隔が50mm(屈折率は1.5とする)の多重反射器10−1で6往復の多重反射をさせると、光路長900mm(50mm×1.5×2×6=900mm)相当の遅延が発生する。すなわち、上記の条件では波長差1nm離れた2つの光は3nsec/nmの遅延時間が発生し、波長分散3nsec/nmが得られる。
【0040】
波長分散値(波長あたりの遅延時間)は、多重反射器10−1の第1反射面11と第2反射面12の間隔を大きくすれば大きくなり、多重反射器10−1への入射角を小さくして多重反射回数を多くすれば大きくなり、多重反射器10−1と回折格子20間の距離を大きくすれば大きくすることができる。
【0041】
多重反射器10−1を回転して多重反射器10−1への入射角を変化させることにより、波長分散値を変化させることができる。多重反射を用いて波長分散を生じさせるため、装置構成を小型で安価にすることができる。したがって、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができ、かつ小型で安価な波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法を提供することができる。
【0042】
なお、ビームの広がりがあるため光学配置によってビーム内にビーム内遅延差が発生するが、全体の遅延量に対してこのビーム内遅延差が小さければ問題ない。
【0043】
(実施形態2)
図5に、実施形態2に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。図6に、実施形態2に係る多重反射器の光路の一例を示す。実施形態2に係る波長分散ストレス発生装置は、実施形態1に係る多重反射器10−1に代えて多重反射器10−2を備え、実施形態1に係る多重反射光反射器30に代えて多重反射光反射器30L及び多重反射光反射器30Hを備える。これらの構成によって、実施形態2に係る波長分散ストレス発生装置は、短波長側の遅延を小さくも大きくもできる。
【0044】
具体的には、多重反射器10−2は、2つの出射窓14H及び出射窓14Lを備える。出射窓14H及び出射窓14Lは、第2反射面12の両端に配置される。出射窓14Hは任意の波長λの長波長側に設けられる。出射窓14Lは任意の波長λの短波長側に設けられる。
【0045】
例えば、図6に示すように、多重反射器10−2が回転されることによって、多重反射器10−2に入射された二重回折光L4が出射窓14Hから出射される場合を考える。この場合、図3に示す多重反射光反射手順S104において、多重反射光反射器30Hは、出射窓14Hから出射される多重反射光L5を平行光L1と平行にして回折格子20の格子面に入射させる。そして、平行光出射手順S105では、平行光L9は、コリメータレンズ55Hに入射されて光出力部52Hに集光される。そして光出力部52Hから光L10が出力される。
【0046】
一方、多重反射器10−2が回転されることによって、多重反射器10−2に入射された二重回折光L4が出射窓14Lから出射される場合を考える。この場合、図3に示す多重反射光反射手順S104において、多重反射光反射器30Lは、出射窓14Lから出射される多重反射光L5を、平行光L1と平行にして回折格子20の格子面に入射させる。そして、平行光出射手順S105では、平行光L9は、コリメータレンズ55Lに入射されて光出力部52Lに集光される。そして光出力部52Lから光L10が出力される。
【0047】
実施形態2に係る波長分散ストレス発生装置は、長波長側及び短波長側の両方に出射窓を備えるため、多重反射器10−2は、短波長側の遅延を大きくして長波長側の遅延を小さくすることも、長波長側の遅延を大きくして短波長側の遅延を小さくすることもできる。したがって、任意の特性の波長分散ストレスを発生させることができる。
【0048】
(実施形態3)
図7に、実施形態3に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。図8に、実施形態3に係る多重反射器の光路の一例を示す。実施形態3に係る波長分散ストレス発生装置では、実施形態1に係る多重反射器10−1及び多重反射光反射器30が、二重回折光L4と平行な直線上で移動可能である。
【0049】
図9に、実施形態3に係る波長分散ストレス発生方法の一例を示す。実施形態3に係る波長分散ストレス発生方法では、波長分散調整手順S106を、平行光入射手順S101の前にさらに有する。波長分散調整手順S106では、多重反射器10−1と回折格子20との距離を可変する。例えば、多重反射器10−1及び多重反射光反射器30を搭載し、二重回折光L4の光軸と平行な直線上で移動可能な移動台35を備える。そして、平行光入射手順S101の実行前に移動台35を二重回折光L4の光軸と平行な直線上で移動させて、多重反射器10−1と回折格子20との距離を可変する。これにより、波長分散値を可変することができる。
【0050】
実施形態3に係る波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法は、多重反射器10−1の回転に加えてさらに多重反射器10−1と回折格子20との距離を可変することができるため、より広い範囲で波長分散ストレスを発生させることができる。
【0051】
(実施形態4)
図10に、実施形態4に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。図11に、実施形態4に係る多重反射器の光路の一例を示す。実施形態4に係る波長分散ストレス発生装置は、実施形態2に係る多重反射器10−2及び多重反射光反射器30L及び多重反射光反射器30Hが、二重回折光L4の光軸と平行な直線上で移動可能である。
【0052】
実施形態4に係る波長分散ストレス発生方法では、図9に示すように、波長分散調整手順S106を、平行光入射手順S101の前にさらに有する。波長分散調整手順S106では、多重反射器10−2と回折格子20との距離を、二重回折光L4と平行な直線上で可変する。例えば、多重反射器10−2及び多重反射光反射器30L及び多重反射光反射器30Hを搭載し、二重回折光L4の光軸と平行な直線上で移動可能な移動台36を備える。そして、平行光入射手順S101の実行前に移動台36を二重回折光L4の光軸と平行な直線上で移動させて、多重反射器10−2と回折格子20との距離を可変する。これにより、波長分散値を可変することができる。
【0053】
実施形態4に係る波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法は、多重反射器10−2の回転に加えてさらに多重反射器10−2と回折格子20との距離を可変することができるため、より広い範囲で波長分散ストレスを発生させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10−1、10−2:多重反射器
11:第1反射面
12:第2反射面
13:入射窓
14、14H、14L:出射窓
15:回転軸
20:回折格子
30、30H、30L:多重反射光反射器
35、36:移動台
40:平行光反射器
51:光入力部
52、52L、52H:光出力部
54、55、55L、55H:コリメータレンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高速光通信システムや光部品の波長分散(CD:Chromatic Dispersion)トレランスを評価するための波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信の大容量化に伴い、伝送速度は高速化し、現在実用化されている強度変調方式に代わり、位相変調方式やコヒーレント変調方式の研究も進められている。これらの超高速光通信システムにおいては、波長分散やPMD(Polarization Mode Dispersion)などの分散性ストレスを加えてジッタやBER(Bit Error Rate)を測定する分散トレランスの試験が重要となる。ここで、波長分散とは波長によって光ファイバを伝搬する伝送時間差を生じ、波形劣化を引き起こす現象をいう。
【0003】
従来、光通信システムのトレランス試験としては、伝送信号のアイ波形を評価するジッタトレランス、OSNR(Optical Signal to Noise Ratio)を変化させBERを評価するOSNRトレランス、CDを加えたCDトレランスの評価が行われている(例えば、特許文献1参照)。波長分散の発生は、波長分散補償器として用いられているVIPA(Virtually Imaged Phased Array)や分散補償ファイバグレーティングを用いて行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−86955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、波長分散補償器の可変できる波長分散値は−200〜+2000ps/nm程度と波長分散値が小さい。デジタルコヒーレント技術においては、波長分散や偏波モード分散等の線形歪みに対して極めて強く、従来のOn/Off Keyingに比べ10倍以上の分散値(10000ps/nm以上)の波長分散ストレスを与えて試験することが必要となってきた。
【0006】
そこで、本発明は、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができ、かつ小型で安価な波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明の波長分散ストレス発生装置は、平行光を波長ごとに異なる回折角で回折する回折格子(20)と、前記回折格子からの回折光のうちの任意の波長の光が前記回折格子で前記平行光と平行な方向に回折されるように、前記回折格子からの回折光を反射する前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能な平行光反射器(40)と、前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能であり、前記平行光反射器で反射された反射光が前記回折格子で回折された二重回折光が入射窓から入射され、前記二重回折光を互いに平行に配置された第1反射面(11)及び第2反射面(12)で多重反射し、多重反射後の多重反射光を前記入射窓とは異なる出射窓から出射する多重反射器(10−1)と、前記多重反射器の前記出射窓から出射される多重反射光を、前記平行光と平行にして前記回折格子の格子面に入射させる多重反射光反射器(30)と、を備える。
【0008】
回折格子で回折された二重回折光を波長によって異なる位置から多重反射器に入射させるため、多重反射器で多重反射された光には波長によって異なる遅延が与えられる。これにより、多重反射器から出射される多重反射光に波長分散ストレスを発生させることができる。ここで、多重反射器は回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能であるため、多重反射器における多重反射回数を可変することができる。このように、多重反射を用いて波長分散ストレスを発生させるため、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができるとともに、装置構成を小型で安価にすることができる。また、平行光反射器を回転させることによって、任意の波長における波長分散ストレスを発生させることができる。したがって、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができ、かつ小型で安価な波長分散ストレス発生装置を提供することができる。
【0009】
本願発明の波長分散ストレス発生装置では、前記多重反射器及び前記多重反射光反射器は、前記二重回折光と平行な直線上で移動可能であってもよい。
多重反射器と回折格子との距離を可変することで、多重反射器に入射させる二重回折光の位置を可変することができる。これにより、本願発明の波長分散ストレス発生装置は、さらに広い範囲で波長分散値を可変することができる。
【0010】
本願発明の波長分散ストレス発生装置では、前記多重反射器は、前記入射窓の一部を通る直線を中心に回転可能であってもよい。
入射窓を中心に回転するため、多重反射器の回転に拠らず二重回折光の入射位置を一定にすることができる。これにより、装置構成を簡単にすることができる。
【0011】
本願発明の波長分散ストレス発生装置では、前記多重反射器は、前記任意の波長の長波長側及び短波長側の両方に前記出射窓を備え、前記多重反射光反射器を前記出射窓ごとに備えてもよい。
長波長側及び短波長側の両方に出射窓を備えるため、多重反射器は、短波長側の遅延を大きくして長波長側の遅延を小さくすることも、長波長側の遅延を大きくして短波長側の遅延を小さくすることもできる。
【0012】
上記目的を達成するために、本願発明の波長分散ストレス発生方法は、平行光を波長ごとに異なる回折角で回折する回折格子(20)に入射する平行光入射手順(S101)と、前記回折格子からの回折光のうちの任意の波長の光が前記回折格子で前記平行光と平行な方向に回折されるように、前記回折格子からの回折光を反射する回折光反射手順(S102)と、前記回折光反射手順で反射した回折光が前記回折格子の格子面で回折された二重回折光を前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能な多重反射器(10−1)の入射窓に入射し、前記二重回折光を互いに平行に配置された第1反射面(11)及び第2反射面(12)で多重反射し、多重反射後の多重反射光を前記入射窓とは異なる出射窓から出射する多重反射手順(S103)と、前記多重反射器の前記出射窓から出射される多重反射光を、前記平行光と平行にして前記回折格子の格子面に入射する多重反射光反射手順(S104)と、前記多重反射光反射手順において前記回折格子で回折後の平行光を取り出す平行光出射手順(S105)と、を順に有する。
【0013】
回折格子で回折された二重回折光を波長によって異なる位置から多重反射器に入射させるため、多重反射器で多重反射された光には波長によって異なる遅延が与えられる。これにより、多重反射器から出射される多重反射光に波長分散ストレスを発生させることができる。ここで、多重反射器は回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能であるため、多重反射器における多重反射回数を可変することができる。このように、多重反射を用いて波長分散ストレスを発生させるため、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができるとともに、装置構成を小型で安価にすることができる。したがって、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができ、かつ小型で安価な波長分散ストレス発生方法を提供することができる。
【0014】
本願発明の波長分散ストレス発生方法では、前記多重反射器と前記回折格子との距離を、前記平行光と平行な直線上で可変する波長分散調整手順(S106)を、前記平行光入射手順の前にさらに有してもよい。
さらに、前記多重反射手順においては、前記多重反射器を、前記入射窓の一部を通る直線を中心に回転させることにより多重反射回数を可変してもよい。
多重反射器と回折格子との距離を可変することで、多重反射器に入射させる二重回折光の位置を可変することができる。これにより、本願発明の波長分散ストレス発生装置は、さらに広い範囲で波長分散値を可変することができる。
さらに、入射窓を中心に回転することで、多重反射器の回転に拠らず二重回折光の入射位置を一定にすることができる。これにより、装置構成を簡単にすることができる。
【0015】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができ、かつ小型で安価な波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。
【図2】実施形態1に係る多重反射器の光路の第1例を示す。
【図3】実施形態1に係る波長分散ストレス発生方法の一例を示す。
【図4】実施形態1に係る多重反射器の光路の第2例を示す。
【図5】実施形態2に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。
【図6】実施形態2に係る多重反射器の光路の一例を示す。
【図7】実施形態3に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。
【図8】実施形態3に係る多重反射器の光路の一例を示す。
【図9】実施形態3に係る波長分散ストレス発生方法の一例を示す。
【図10】実施形態4に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。
【図11】実施形態4に係る多重反射器の光路の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
(実施形態1)
図1に、実施形態1に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。実施形態1に係る波長分散ストレス発生装置は、光入力部51と、コリメータレンズ54と、回折格子20と、平行光反射器40と、多重反射器10−1と、多重反射光反射器30と、コリメータレンズ55と、光出力部52と、を備える。
【0020】
図2に、実施形態1に係る多重反射器の光路の第1例を示す。回折格子20は、平行光L1を波長ごとに異なる回折角で回折する。平行光反射器40は、回折格子20からの回折光L2のうちの任意の波長の光が回折格子20で平行光L1と平行な方向に回折されるように、回折格子20の刻線方向と平行な直線を中心に回転して回折格子20からの回折光L2を反射する。多重反射器10−1は、回折格子20の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能であり、平行光反射器40で反射された反射光L3が回折格子20で回折された二重回折光L4が入射窓13から入射され、二重回折光L4を互いに平行に配置された第1反射面11及び第2反射面12で多重反射し、多重反射後の多重反射光L5を入射窓13とは異なる出射窓14から出射する。多重反射器10−1の入射窓13及び出射窓14は、二重回折光L4及び多重反射光L5の損失を小さくするために、低反射率であることが好ましい。
【0021】
多重反射光反射器30は、多重反射器10−1の出射窓14から出射される多重反射光L5を二重回折光L4と平行にして、多重反射光L6を回折格子20の格子面に入射させる。多重反射光反射器30は、多重反射光反射器30の表面で多重反射光L5を反射するコーナーミラーであってもよいし、多重反射光反射器30の媒質中で多重反射光L5を反射するコーナーキューブであってもよい。
【0022】
図3に、実施形態1に係る波長分散ストレス発生方法の一例を示す。実施形態1に係る波長分散ストレス発生方法は、平行光入射手順S101と、回折光反射手順S102と、多重反射手順S103と、多重反射光反射手順S104と、平行光出射手順S105と、を順に有する。
【0023】
平行光入射手順S101では、回折格子20に平行光L1を入射する。そして、回折格子20は、平行光L1を波長ごとに異なる回折角で回折する。例えば、光入力部51に、入力光L0が入力される。入力光L0はコリメータレンズ54に入射され、コリメータレンズ54から平行光L1が出射される。平行光L1は、回折格子20に入射される。これにより、回折格子20からの回折光L3が、波長ごとに異なる回折角で出射する。
【0024】
回折光反射手順S102では、回折格子20からの回折光L2を平行光反射器40で反射して、回折格子20からの回折光L2のうちの任意の波長の回折光L3を回折格子20の格子面に向けて反射する。ここで、平行光反射器40は回折格子20の刻線方向と平行な回転軸で回転が可能である。このため、平行光反射器40を回転させることで、波長分散を発生させる波長λを選択することができる。
【0025】
多重反射手順S103では、回折光反射手順S102で反射した回折光L3が回折格子20の格子面で回折された二重回折光L4を多重反射器10−1の入射窓13に入射し、二重回折光L4を第1反射面11及び第2反射面12で多重反射し、多重反射後の多重反射光L5を入射窓13とは異なる出射窓14から出射する。
【0026】
ここで、多重反射器10−1に入力する二重回折光L4は、波長によって入射位置が異なるため、入射位置の距離差分で発生する多重反射回数の差異は波長差間の遅延を与えることになる。例えば、図2の例では、出射窓14が短波長側に設けられており、入射位置の距離差分で発生する多重反射回数は短波長側が少なくなる。このため、短波長側の遅延を小さくすることができる。
【0027】
図4に、実施形態1に係る多重反射器の光路の第2例を示す。出射窓14が長波長側に設けられており、入射位置の距離差分で発生する多重反射回数は短波長側が多くなる。このため、短波長側の遅延を大きくすることができる。
【0028】
また、図1及び図2に示す多重反射器10−1は、回転軸15を中心に回転可能である。回転軸15は、入射窓13の一部を通りかつ回折格子20の刻線方向と平行な直線である。多重反射器10−1を回転すると、入射位置の距離差分で発生する多重反射の回数を変化させることができ、遅延量を可変することができる。これにより、波長分散値を可変することができる。
【0029】
多重反射光反射手順S104では、多重反射光反射器30が、多重反射器10−1の出射窓14から出射される多重反射光L5を平行光L1と平行にする。これにより、多重反射光反射器30は平行光L1と平行な多重反射光L6を回折格子20の格子面に入射する。多重反射光L6は回折格子20で回折される。多重反射光L6が回折格子20で回折された回折光L7は、平行光反射器40に入射される。
【0030】
平行光出射手順S105では、多重反射光反射手順S104において回折格子20で回折後の回折光L7を取り出す。例えば、平行光反射器40は、回折光L7を回折格子20の格子面に向けて反射する。これにより、反射光L8が回折格子20の格子面に入射される。回折格子20の格子面に入射された反射光L8は回折される。このとき、平行光L1から回折光L2に回折されたときと同じ角度で反射光L8を回折格子20に入射する。これにより、反射光L8が回折格子20の格子面で回折された後の平行光L9は、平行光L1と平行な平行光となる。平行光L9は、コリメータレンズ55に入射されて光出力部52に集光される。そして光出力部52から光L10が出力される。
【0031】
各波長において、二重回折光L4と多重反射光L6は平行で逆方向の光であり、すなわち回折光L3から二重回折光L4への回折角と多重反射光L6から回折光L7への回折角は等しいため、波長によって分散した光は光出力部52では1点に集光される。
【0032】
本願の波長分散ストレス発生装置の原理は、多重反射器10−1に入力される二重回折光L4が波長によって入射位置が異なるため、その空間的な入射位置の距離差分で発生する多重反射による遅延差から、波長により異なる遅延を発生する。したがって、波長によって異なる空間的な入射位置の差を変化させるか、波長によって異なる空間的な入射位置の差で発生する多重反射の回数を変化させることによって、波長間の遅延量を変化させることができる。実際には、空間的な入射位置の差以外の波長による多重反射器内での光線角度の差分も遅延量に加味される。
【0033】
回折光L2は式(1)で表され、二重回折光L4は式(2)で表される。
【数1】
ただし、mは回折格子の回折次数、λは波長、dは格子定数、α1は平行光L1の入射角、β1は回折光L2の回折角、α2は反射光L8の入射角、β2は二重回折光L4の回折角である。
【0034】
λを(λ+Δλ)とした場合の回折角の変化量を求める。
式(1)をλで微分すると、
【数3】
式(2)をλで微分すると、
【数4】
【0035】
したがって、1回目の回折光L2の角分散は、式(3)より式(5)で表される。
【数5】
【0036】
ここで、本光学系では加分散配列となり、Δα2/Δλ=−Δβ/Δλである。このため、式(4)は以下のように表される。
【数6】
【0037】
(6)式に(5)式のΔβ1/Δλを代入することにより、2回目の二重回折光L4の角分散は、式(7)で表される。
【数7】
【0038】
例えば、波長λを1550nm、回折格子20の刻線数を1250groves/mm、1回目の回折格子20への平行光L1の入射角α1を85degとすると、1回目の回折光L2の回折角β1は70.27deg、2回目の回折格子20への回折光L3の入射角α2は70.27deg、2回目の二重回折光L4の回折角β2は85degとなる。この場合、波長1nm当たりの角分散は、式(7)より、1.034deg/nmとなり、波長差1nmの2つの光は、回折格子20から500nm離れた位置では9mm程度分離される。
【0039】
この9mmの多重反射器10−1への入射位置において、第1反射面11と第2反射面12の間隔が50mm(屈折率は1.5とする)の多重反射器10−1で6往復の多重反射をさせると、光路長900mm(50mm×1.5×2×6=900mm)相当の遅延が発生する。すなわち、上記の条件では波長差1nm離れた2つの光は3nsec/nmの遅延時間が発生し、波長分散3nsec/nmが得られる。
【0040】
波長分散値(波長あたりの遅延時間)は、多重反射器10−1の第1反射面11と第2反射面12の間隔を大きくすれば大きくなり、多重反射器10−1への入射角を小さくして多重反射回数を多くすれば大きくなり、多重反射器10−1と回折格子20間の距離を大きくすれば大きくすることができる。
【0041】
多重反射器10−1を回転して多重反射器10−1への入射角を変化させることにより、波長分散値を変化させることができる。多重反射を用いて波長分散を生じさせるため、装置構成を小型で安価にすることができる。したがって、極めて大きな波長分散ストレスを発生させることができ、かつ小型で安価な波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法を提供することができる。
【0042】
なお、ビームの広がりがあるため光学配置によってビーム内にビーム内遅延差が発生するが、全体の遅延量に対してこのビーム内遅延差が小さければ問題ない。
【0043】
(実施形態2)
図5に、実施形態2に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。図6に、実施形態2に係る多重反射器の光路の一例を示す。実施形態2に係る波長分散ストレス発生装置は、実施形態1に係る多重反射器10−1に代えて多重反射器10−2を備え、実施形態1に係る多重反射光反射器30に代えて多重反射光反射器30L及び多重反射光反射器30Hを備える。これらの構成によって、実施形態2に係る波長分散ストレス発生装置は、短波長側の遅延を小さくも大きくもできる。
【0044】
具体的には、多重反射器10−2は、2つの出射窓14H及び出射窓14Lを備える。出射窓14H及び出射窓14Lは、第2反射面12の両端に配置される。出射窓14Hは任意の波長λの長波長側に設けられる。出射窓14Lは任意の波長λの短波長側に設けられる。
【0045】
例えば、図6に示すように、多重反射器10−2が回転されることによって、多重反射器10−2に入射された二重回折光L4が出射窓14Hから出射される場合を考える。この場合、図3に示す多重反射光反射手順S104において、多重反射光反射器30Hは、出射窓14Hから出射される多重反射光L5を平行光L1と平行にして回折格子20の格子面に入射させる。そして、平行光出射手順S105では、平行光L9は、コリメータレンズ55Hに入射されて光出力部52Hに集光される。そして光出力部52Hから光L10が出力される。
【0046】
一方、多重反射器10−2が回転されることによって、多重反射器10−2に入射された二重回折光L4が出射窓14Lから出射される場合を考える。この場合、図3に示す多重反射光反射手順S104において、多重反射光反射器30Lは、出射窓14Lから出射される多重反射光L5を、平行光L1と平行にして回折格子20の格子面に入射させる。そして、平行光出射手順S105では、平行光L9は、コリメータレンズ55Lに入射されて光出力部52Lに集光される。そして光出力部52Lから光L10が出力される。
【0047】
実施形態2に係る波長分散ストレス発生装置は、長波長側及び短波長側の両方に出射窓を備えるため、多重反射器10−2は、短波長側の遅延を大きくして長波長側の遅延を小さくすることも、長波長側の遅延を大きくして短波長側の遅延を小さくすることもできる。したがって、任意の特性の波長分散ストレスを発生させることができる。
【0048】
(実施形態3)
図7に、実施形態3に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。図8に、実施形態3に係る多重反射器の光路の一例を示す。実施形態3に係る波長分散ストレス発生装置では、実施形態1に係る多重反射器10−1及び多重反射光反射器30が、二重回折光L4と平行な直線上で移動可能である。
【0049】
図9に、実施形態3に係る波長分散ストレス発生方法の一例を示す。実施形態3に係る波長分散ストレス発生方法では、波長分散調整手順S106を、平行光入射手順S101の前にさらに有する。波長分散調整手順S106では、多重反射器10−1と回折格子20との距離を可変する。例えば、多重反射器10−1及び多重反射光反射器30を搭載し、二重回折光L4の光軸と平行な直線上で移動可能な移動台35を備える。そして、平行光入射手順S101の実行前に移動台35を二重回折光L4の光軸と平行な直線上で移動させて、多重反射器10−1と回折格子20との距離を可変する。これにより、波長分散値を可変することができる。
【0050】
実施形態3に係る波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法は、多重反射器10−1の回転に加えてさらに多重反射器10−1と回折格子20との距離を可変することができるため、より広い範囲で波長分散ストレスを発生させることができる。
【0051】
(実施形態4)
図10に、実施形態4に係る波長分散ストレス発生装置の一例を示す。図11に、実施形態4に係る多重反射器の光路の一例を示す。実施形態4に係る波長分散ストレス発生装置は、実施形態2に係る多重反射器10−2及び多重反射光反射器30L及び多重反射光反射器30Hが、二重回折光L4の光軸と平行な直線上で移動可能である。
【0052】
実施形態4に係る波長分散ストレス発生方法では、図9に示すように、波長分散調整手順S106を、平行光入射手順S101の前にさらに有する。波長分散調整手順S106では、多重反射器10−2と回折格子20との距離を、二重回折光L4と平行な直線上で可変する。例えば、多重反射器10−2及び多重反射光反射器30L及び多重反射光反射器30Hを搭載し、二重回折光L4の光軸と平行な直線上で移動可能な移動台36を備える。そして、平行光入射手順S101の実行前に移動台36を二重回折光L4の光軸と平行な直線上で移動させて、多重反射器10−2と回折格子20との距離を可変する。これにより、波長分散値を可変することができる。
【0053】
実施形態4に係る波長分散ストレス発生装置及び波長分散ストレス発生方法は、多重反射器10−2の回転に加えてさらに多重反射器10−2と回折格子20との距離を可変することができるため、より広い範囲で波長分散ストレスを発生させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10−1、10−2:多重反射器
11:第1反射面
12:第2反射面
13:入射窓
14、14H、14L:出射窓
15:回転軸
20:回折格子
30、30H、30L:多重反射光反射器
35、36:移動台
40:平行光反射器
51:光入力部
52、52L、52H:光出力部
54、55、55L、55H:コリメータレンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行光を波長ごとに異なる回折角で回折する回折格子(20)と、
前記回折格子からの回折光のうちの任意の波長の光が前記回折格子で前記平行光と平行な方向に回折されるように、前記回折格子からの回折光を反射する前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能な平行光反射器(40)と、
前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能であり、前記平行光反射器で反射された反射光が前記回折格子で回折された二重回折光が入射窓から入射され、前記二重回折光を互いに平行に配置された第1反射面(11)及び第2反射面(12)で多重反射し、多重反射後の多重反射光を前記入射窓とは異なる出射窓から出射する多重反射器(10−1)と、
前記多重反射器の前記出射窓から出射される多重反射光を、前記平行光と平行にして前記回折格子の格子面に入射させる多重反射光反射器(30)と、
を備える波長分散ストレス発生装置。
【請求項2】
前記多重反射器及び前記多重反射光反射器は、前記二重回折光と平行な直線上で移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の波長分散ストレス発生装置。
【請求項3】
前記多重反射器は、前記入射窓の一部を通る直線を中心に回転可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の波長分散ストレス発生装置。
【請求項4】
前記多重反射器は、前記任意の波長の長波長側及び短波長側の両方に前記出射窓を備え、
前記多重反射光反射器を前記出射窓ごとに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の波長分散ストレス発生装置。
【請求項5】
平行光を波長ごとに異なる回折角で回折する回折格子(20)に入射する平行光入射手順(S101)と、
前記回折格子からの回折光のうちの任意の波長の光が前記回折格子で前記平行光と平行な方向に回折されるように、前記回折格子からの回折光を反射する回折光反射手順(S102)と、
前記回折光反射手順で反射した回折光が前記回折格子の格子面で回折された二重回折光を前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能な多重反射器(10−1)の入射窓に入射し、前記二重回折光を互いに平行に配置された第1反射面(11)及び第2反射面(12)で多重反射し、多重反射後の多重反射光を前記入射窓とは異なる出射窓から出射する多重反射手順(S103)と、
前記多重反射器の前記出射窓から出射される多重反射光を、前記平行光と平行にして前記回折格子の格子面に入射する多重反射光反射手順(S104)と、
前記多重反射光反射手順において前記回折格子で回折後の平行光を取り出す平行光出射手順(S105)と、
を順に有する波長分散ストレス発生方法。
【請求項6】
前記多重反射器と前記回折格子との距離を、前記平行光と平行な直線上で可変する波長分散調整手順(S106)を、前記平行光入射手順の前にさらに有することを特徴とする請求項5に記載の波長分散ストレス発生方法。
【請求項7】
前記多重反射手順において、前記多重反射器を、前記入射窓の一部を通る直線を中心に回転させることを特徴とする請求項5又は6に記載の波長分散ストレス発生方法。
【請求項1】
平行光を波長ごとに異なる回折角で回折する回折格子(20)と、
前記回折格子からの回折光のうちの任意の波長の光が前記回折格子で前記平行光と平行な方向に回折されるように、前記回折格子からの回折光を反射する前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能な平行光反射器(40)と、
前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能であり、前記平行光反射器で反射された反射光が前記回折格子で回折された二重回折光が入射窓から入射され、前記二重回折光を互いに平行に配置された第1反射面(11)及び第2反射面(12)で多重反射し、多重反射後の多重反射光を前記入射窓とは異なる出射窓から出射する多重反射器(10−1)と、
前記多重反射器の前記出射窓から出射される多重反射光を、前記平行光と平行にして前記回折格子の格子面に入射させる多重反射光反射器(30)と、
を備える波長分散ストレス発生装置。
【請求項2】
前記多重反射器及び前記多重反射光反射器は、前記二重回折光と平行な直線上で移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の波長分散ストレス発生装置。
【請求項3】
前記多重反射器は、前記入射窓の一部を通る直線を中心に回転可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の波長分散ストレス発生装置。
【請求項4】
前記多重反射器は、前記任意の波長の長波長側及び短波長側の両方に前記出射窓を備え、
前記多重反射光反射器を前記出射窓ごとに備える
ことを特徴とする請求項3に記載の波長分散ストレス発生装置。
【請求項5】
平行光を波長ごとに異なる回折角で回折する回折格子(20)に入射する平行光入射手順(S101)と、
前記回折格子からの回折光のうちの任意の波長の光が前記回折格子で前記平行光と平行な方向に回折されるように、前記回折格子からの回折光を反射する回折光反射手順(S102)と、
前記回折光反射手順で反射した回折光が前記回折格子の格子面で回折された二重回折光を前記回折格子の刻線方向と平行な直線を中心に回転可能な多重反射器(10−1)の入射窓に入射し、前記二重回折光を互いに平行に配置された第1反射面(11)及び第2反射面(12)で多重反射し、多重反射後の多重反射光を前記入射窓とは異なる出射窓から出射する多重反射手順(S103)と、
前記多重反射器の前記出射窓から出射される多重反射光を、前記平行光と平行にして前記回折格子の格子面に入射する多重反射光反射手順(S104)と、
前記多重反射光反射手順において前記回折格子で回折後の平行光を取り出す平行光出射手順(S105)と、
を順に有する波長分散ストレス発生方法。
【請求項6】
前記多重反射器と前記回折格子との距離を、前記平行光と平行な直線上で可変する波長分散調整手順(S106)を、前記平行光入射手順の前にさらに有することを特徴とする請求項5に記載の波長分散ストレス発生方法。
【請求項7】
前記多重反射手順において、前記多重反射器を、前記入射窓の一部を通る直線を中心に回転させることを特徴とする請求項5又は6に記載の波長分散ストレス発生方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−58474(P2012−58474A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201247(P2010−201247)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
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