説明

波長可変フィルタ

【課題】 低電圧駆動の高速波長当可変フィルタを提供する。
【解決手段】 本発明に係る波長可変フィルタは、KTa1-xNbx3(0<x<1)およびK1-yLiyTa1-xNbx3(0<x<1、0<y<1)の少なくとも一方からなる組成の結晶材料である、複数の三次元光導波路と、三次元光導波路上に設けられた電極とからなるアレイ光導波路を有するアレイ光導波路格子波長可変フィルタである。アレイ光導波路格子波長可変フィルタは、チャネル光導波路の1本に対して、三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極が配置されている導波路電気光学位相シフタを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信用部品に使用する光スイッチ、光変調器および波長可変フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光通信システムの大容量、高速化ならびに高機能化に対する要求は、急激に高まっている。このような、光通信システムに用いられる光信号処理デバイスとして期待されているのが、光スイッチや光変調器である。特に、近年のネットワークの高機能化に向けた光クロスコネクト用スイッチの重要性は急速に高まっている。このような光スイッチとして、MEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれるマイクロマシーン技術を用いた光スイッチと、石英系光導波路の熱光学効果を用いた光スイッチとが開発されている。また、導波路交差部分に導波路と等しい屈折率を有するオイルを充填しておき、過熱により気泡を発生させ、交差部分での光の反射を発生させることにより光路を切り替える光スイッチ等も開発されている。
【0003】
しかし、これらの光スイッチの動作速度はmsecの領域である。次世代光ネットワークに求められる光パケットのルーティングに必要な動作速度は1〜10nsecである。
1〜10nsecの動作速度が実現可能な光スイッチとしては、LiNbO3(LNとも呼ぶ)の電気光学効果を用いたスイッチがある。この光スイッチはLNの有する1次の電気光学効果により導波路屈折率を変化させることにより実現されている。
【0004】
LNを用いた電気光学効果の光スイッチを作製する方法としては、LN基板上に、Ti熱拡散法により、Y分岐の形態をもつ導波路パタンを形成する。その上にバッファ層を形成し、さらにその上に導波路パタンに対応する電極を配設するという方法が知られている(西原、春名、栖原共著「光集積回路」、オーム社、PP.310−326(1985)参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、LNは三方晶の結晶であり、もっとも大きい電気光学定数であるr33を用いるためには、複屈折性のある方位に光を導波させる必要がある。このため、光スイッチは光の偏光に対し動作が異なる偏波依存性を有することになる。偏波依存性は光の伝送においてエラーを起こす原因となるため、光スイッチには偏波無依存であることが重要である。そこで、LNにおいても偏波無依存動作する光スイッチの作製が検討されている。しかしながら、複屈折性のない結晶方位を持った場合、電気光学定数の小さいr13を利用することとなり、駆動電圧が40V以上になるという問題があった。
【0006】
高速で動作する光スイッチとしては、半導体材料で構成された対称マッハツェンダ干渉計を用いるものが提案されている。しかしながら、マッハツェンダ干渉計は、スイッチングにコントロール光を用い、同期を取るなどの複雑な構成が必要であり、実用性に乏しい。
【0007】
また、モード分布を制御するデジタル型光スイッチも提案されている。しかしながら、他の種類の光スイッチと比較して駆動電圧が高くなる問題がある。
【0008】
ところで、電気光学効果は、結晶を構成する原子の電子状態が電界によって変化する現象であるから、電界の変化に対する応答速度は極めて速い。よって、フェムト秒レベルの電界変化に瞬時に応答するため超高速用光変調器として利用するのに最も適した物理現象といえる。特に、LNは、Tiなどの不純物の拡散やイオン交換などの方法により光導波路を比較的容易に作製できる。従って、一次の電気光学効果を利用した光変調器としても最も広く用いられている材料である(西原、春名、栖原共著「光集積回路」、オーム社、PP.310−326(1985)、特開昭53−6054号公報、特開昭53−54040号公報参照)。
【0009】
一般に、電気光学効果は、結晶の方位に応じた依存性があり、最も大きい電気光学定数を有する結晶軸に電界を印加して屈折率を変調する。LNの場合は、上述のr33(30pm/V)を利用する。また、光変調器を実現する場合、重要な性能パラメータは、動作速度および変調電圧である。位相変調量は、電極長に比例するため、電極長が長いほど変調電圧は低くてすむ。しかしながら、電極長が1cm以上であると、集中定数型電極を用いて、GHz程度の高周波を一様にかけることは、変調信号の周期と電界が電極内で端から端まで到達する時間と同程度になるため難しくなる。逆に、応答速度を向上させようとして電極長を短くした場合、高電圧電源が必要となる。よって、この場合、現実に利用できる電源は非常に高価なものになってしまう。
【0010】
本発明は、単純な構成で、低駆動電圧、偏波無依存かつ高速の光スイッチ、光変調器および波長可変フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、立方晶かつ2次の電気光学効果を有する誘電体結晶からなり、光を伝播する三次元光導波路と、三次元光導波路に電界を印加する電極とを備え、光導波路デバイスを動作させる温度は、上記誘電体結晶の、立方晶から正方晶への相転移温度近傍である光導波路デバイスである。三次元光導波路は、基板表面に対して垂直な方向のみならず、平行な方向に光を閉じ込めることができるものであれば良い。例えば、埋め込み型光導波路やリッジ状光導波路であっても良い。
【0012】
他の実施形態は、KTa1-xNbx3(0<x<1)(KTNとも呼ぶ)及びK1-yLiyTa1-xNbx3(0<x<1、0<y<1)(KLTNとも呼ぶ)、又はKTN若しくはKLTNからなる組成の結晶材料であり、光を伝播する三次元光導波路と、三次元光導波路に電界を印加する電極とを備え、導波路電気光学位相シフタを動作させる温度は、上記結晶材料の、立方晶から正方晶への相転移温度近傍である導波路電気光学位相シフタである。
【0013】
他の実施形態は、入力側に設けられた3dBカップラと出力側に設けられた3dBカップラと入力側3dBカップラ及び出力側3dBカップラを接続する2本の光導波路とにより構成されたマッハツェンダ干渉計と、2本の三次元光導波路の一方又は両方に電界を印加する電極とを備える光スイッチである。この光スイッチにおいて、少なくとも2本の三次元光導波路は、KTN及びKLTN、又はKTN若しくはKLTNからなる組成の結晶材料であり、上記光スイッチを動作させる温度は、上記結晶材料の、立方晶から正方晶への相転移温度近傍である。
【0014】
他の実施形態は、KTaO3、KNbO3またはKTNのいずれかの材料からなる基板上にKLTNまたはKTNのいずれかの材料からなるコア導波路を配置する。コア導波路と比較して僅かに屈折率が低いKLTNをクラッド層とした三次元光導波路の下部クラッド層の下方若しくは上部クラッド層上方の少なくとも一方に形成されたコア導波路に電界を与えるための電極を備える。三次元光導波路により構成され、送られてきた光信号を受け取るための入力端を有する第1の入力光導波路と、第1の入力導波路から分岐する第2の出力光導波路と第3の出力光導波路とを含み、第2の出力光導波路および第3の出力光導波路に電極を備えたY分岐型導波路とを備える。上記光スイッチを動作させる温度は、上記コア導波路に含まれる材料の、立方晶から正方晶への相転移温度近傍である。
【0015】
他の実施形態は、KTNおよびKLTNの少なくとも一方からなる組成の結晶材料を導波路材料に用いて、少なくとも1つの入力導波路と、1つの出力導波路と、入力導波路に接続された3dBカップラと、出力導波路に接続された3dBカップラと、2つの3dBカップラを接続する2つの三次元光導波路とを有するマッハ・ツェンダ型の光変調器である。この三次元光導波路の少なくとも一方に、電極が配置されている電気光学位相シフタを有する。上記光変調器を動作させる温度は、上記結晶材料の、立方晶から正方晶への相転移温度近傍である。
【0016】
他の実施形態は、KTNまたはKLTNのいずれかの材料からなる基板と、KTNまたはKLTNのいずれかの材料からなる三次元光導波路とを備える広帯域光変調器である。
また、三次元光導波路に沿って形成され、マイクロ波と光波との速度整合をとる進行波電極からなる複数の電極を備える。上記広帯域光変調器を動作させる温度は、上記三次元光導波路に含まれる材料の、立方晶から正方晶への相転移温度近傍である。
他の実施形態は、KTNおよびKLTNの少なくとも一方からなる組成の第1の結晶材料であり、コア厚を有するコアと、第1の結晶材料とは異なる屈折率を有するKTNおよびKLTNの少なくとも一方からなる組成の第2の結晶材料であるクラッドとを備えた三次元光導波路とを備える導波路電気光学位相シフタである。また、三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極を備える。このコアは、コアの下面がクラッドの下面に対して第1の距離であり、コアの上面がクラッドの上面に対して第2の距離になるように、クラッドに埋め込まれる。クラッドは、0≦第1の距離,第2の距離≦3×コア厚の範囲のクラッド厚を有する。上記導波路電気光学位相シフタを動作させる温度は、上記第1の結晶材料の、立方晶から正方晶への相転移温度近傍である。
【0017】
他の実施形態は、KTNおよびKLTNの少なくとも一方からなる組成の第1の結晶材料であり、コア幅を有するコアと、第1の結晶材料とは異なる屈折率を有するKTNおよびKLTNの少なくとも一方からなる組成の第2の結晶材料であるクラッドとを備えた三次元光導波路を備える導波路電気光学位相シフタである。また、三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極を備える。このコアは、コアの上面がクラッドの上面に対して第1の距離になるように、クラッドに埋め込まれる。クラッドは、0≦第1の距離≦3×コア幅の範囲のクラッド厚を有する。上記導波路電気光学位相シフタを動作させる温度は、上記第1の結晶材料の、立方晶から正方晶への相転移温度近傍である。
【0018】
他の実施形態は、KTNおよびKLTNの少なくとも一方からなる組成の結晶材料である、複数の三次元光導波路と、三次元光導波路上に設けられた電極とからなるアレイ光導波路を有するアレイ光導波路格子波長可変フィルタである。アレイ光導波路格子波長可変フィルタは、チャネル光導波路の1本に対して、三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極が配置されている導波路電気光学位相シフタを有する。上記アレイ光導波路格子波長可変フィルタを動作させる温度は、上記結晶材料の、立方晶から正方晶への相転移温度近傍である。
【0019】
他の実施形態は、少なくとも1本の入力ポートチャネル光導波路と、光路長が互いに異なるチャネル光導波路からなるチャネル光導波路アレイと、少なくとも1本の出力ポートチャネル光導波路と、入力ポートチャネル光導波路及びチャネル光導波路アレイを結ぶ第1のスラブ光導波路と、出力ポートチャネル光導波路及びチャネル光導波路アレイを結ぶ第2のスラブ光導波路とを備えるアレイ光導波路格子波長可変フィルタである。また、チャネル光導波路アレイの一部からなり、KTNおよびKLTNの少なくとも一方からなる組成の第1の結晶材料であり、コア厚を有するコアと、第1の結晶材料とは異なる屈折率を有するKTNおよびKLTNの少なくとも一方からなる組成の第2の結晶材料であるクラッドとを備えた三次元光導波路と、三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極とを備える。また、コアは、コアの下面がクラッドの下面に対して第1の距離であり、コアの上面がクラッドの上面に対して第2の距離になるように、クラッドに埋め込まれ、クラッドは、0≦第1の距離,第2の距離≦3×コア厚の範囲のクラッド厚を有する導波路電気光学位相シフタを備える。上記アレイ光導波路格子波長可変フィルタを動作させる温度は、前記第1の結晶材料の、立方晶から正方晶への相転移温度近傍である。
【0020】
他の実施形態は、少なくとも1本の入力ポートチャネル光導波路と、光路長が互いに異なるチャネル光導波路からなるチャネル光導波路アレイと、少なくとも1本の出力ポートチャネル光導波路と、入力ポートチャネル光導波路及びチャネル光導波路アレイを結ぶ第1のスラブ光導波路と、出力ポートチャネル光導波路及びチャネル光導波路アレイを結ぶ第2のスラブ光導波路とを備えるアレイ光導波路格子波長可変フィルタである。また、KTNおよびKLTNの少なくとも一方からなる組成の第1の結晶材料であり、コア幅を有するコアと、第1の結晶材料とは異なる屈折率を有するKTNおよびKLTNの少なくとも一方からなる組成の第2の結晶材料であるクラッドとを備えた三次元光導波路と、三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極とを備える。また、コアは、コアの上面がクラッドの上面に対して第1の距離になるように、クラッドに埋め込まれ、クラッドは、0≦第1の距離≦3×コア幅の範囲のクラッド厚を有する導波路電気光学位相シフタを備える。上記アレイ光導波路格子波長可変フィルタを動作させる温度は、前記第1の結晶材料の、立方晶から正方晶への相転移温度近傍である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明をより詳細に説述するために、添付の図面に従ってこれを説明する。
【0022】
本実施形態に係る光スイッチおよび光変調器では、立方晶かつ大きい2次の電気光学効果を有する誘電体結晶を用いる。具体的には、KTN(KTa1-xNbx3(0<x<1))及びKLTN(K1-yLiyTa1-xNbx3(0<x<1、0<y<1))、又はKTN若しくはKLTNからなる組成の結晶材料を用いる。本発明の一実施形態は、これらの結晶材料で構成された光導波路デバイスを用いることを特徴としている。ここで、XはTa及びNbに対するNbの組成比であり、YはK及びLiに対するLiの組成比である。
【0023】
KTNに対して、外部電極を結晶軸方向に印加すると、KTNは二次の電気光学効果を示す。その値は(1200〜8000pm/V)であり、LNの有する非線形定数30pm/Vに比べて著しく大きい。
【0024】
また、KTNは、組成に依存し、−273℃〜400℃のキュリー転移温度で強誘電転移を生じる。このキュリー温度を境に、比誘電率が約3000〜約20000に大きく変化する。非線形効果に基づく屈折率変化は、比誘電率の2乗に比例する。このため、転移温度近傍では、より低電圧で屈折率を制御することが可能となる。さらに、キュリー温度は、KTa1-xNbx3の組成xの値に応じて変化するが、LiをKTNに添加するこ
とによっても、その温度範囲を調整することができる。
【0025】
なお、KTN、KLTN結晶の他に、KTN、KLTN結晶と同様に立方晶かつ大きい2次の電気光学効果を有する誘電体結晶を用いてもよい。例えば、KTN結晶のKをBaで、Ta及びNbを両方ともTiで置き換えた結晶材料であるBaTiO3(BTO)は、室温では正方晶の構造をとる。しかしながら、BTOは、約100℃以上において構造相転移して立方晶となる。したがって、この状態でならば、本発明のKTN、KLTN結晶を用いた方法により、本発明の光スイッチおよび光変調器を構成することができる。また、動作温度などで使い勝手に差はあるものの、KTN結晶のKをSrで置き換えたSTOや、Caで置き換えたCTOも同様の性質を有する。さらに、BTOとSTOとCTOとの3つの材料のうち、2つ以上の材料を混合して得られる材料も同様である。さらなる変形として、BTOのBaをPbとLaとで置換し、Tiの一部をZrで置換した材料であっても良い。換言すれば、KTN結晶のKをPbとLaとで置換し、Ta及びNbをTiとZrとで置換した材料(一般にPLZTと称する結晶材料)も、全く同様に用いることができる。なお、上記変形は、KTN結晶と同様に、KLTN結晶へも適用可能であり、その場合、Liを、Ba、Sr、CaやPb、Laへ置き換える。
【0026】
KTN、KLTN結晶は、立方晶から正方晶さらに菱面体晶へと温度により結晶系を変える性質を有している。これらの結晶は、立方晶においては、大きい2次の電気光学効果を有することが知られている。特に、立方晶から正方晶への相転移温度に近い領域では、比誘電率が発散する現象が起こり、比誘電率の自乗に比例する2次の電気光学効果はきわめて大きい値となる。したがって、光スイッチを駆動する電圧も1V以下とすることが可能となり、電源への負荷が小さく、ICでの駆動が可能となる。
【0027】
又、2次の電気光学効果を利用する光スイッチおよび光変調器の動作温度は、KTN、KLTN結晶の立方晶から正方晶への相転移近傍が望ましい。KTN、KLTN結晶は、TaとNbの組成比を変化させることにより、常誘電性から強誘電性(結晶系は立方晶から正方晶)への相転移温度を、ほぼ絶対零度から400℃まで変化させることが可能である。そのため、KTN、KLTN結晶を用いて作製した光スイッチおよび光変調器は、その動作温度を室温付近に容易に設定できるという利点もある。加えて、本発明に係る光スイッチおよび光変調器は、立方晶の領域の結晶を光導波路に使用するため、光導波路としては複屈折性がなく、光スイッチとしても偏波無依存動作が可能となる。
【0028】
上記特徴を最も発揮するKTN、KLTN結晶材料の組成比としては、KTNについては、0<x<1であればよく、また、KLTNについては、0<x<1、0<y<1であればよい。ただし、組成比X(TaおよびNbに対するNbの比)は0.55以上かつ0.90以下の範囲が好ましく、組成比Y(KおよびLiに対するLiの比)は0より大きくかつ0.1未満の範囲が好ましい。組成比Xが0.55〜0.90の範囲以外である場合は、結晶の相転移温度が高すぎたり低すぎたりするため適切でなく、組成比Yが0.1以上の場合は、結晶構造が変わるため適切でない。
【0029】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る光スイッチは、光を伝搬する光導波路と、光導波路に電界を印加する電極とを有する。その光導波路として、KTN、KLTN結晶等の立方晶かつ大きい2次の電気光学効果を有する誘電体結晶を用いる。
【0030】
具体的な構成としては、より小さい屈折率変化でスイッチングが可能な、すなわち低駆動電圧でスイッチングが可能なマッハツェンダ干渉計型の光スイッチがある。この光スイッチでは、偏波無依存動作にするため、2次の電気光学効果による屈折率変化がTE方向、TM方向で正確に等しくなる必要がある。本実施形態で用いるKTN、KLTN結晶は、TE方向及びTM方向における屈折率変化が原理的に等しい電界方位が存在する。すなわち、光の伝搬方向に平行になるような電界を印加する電極を構成することで、偏波無依存動作可能な光スイッチを実現できる(後述の実施例3参照)。また、本実施形態では、同一の光導波路において、光の伝搬方向に直交するような電界を印加する電極を複数組み合わせて構成する。この構成によれば、仮に電界に対する屈折率変化がTE方向とTM方向とに対して異方性を持つ方位に電界を印加したとしても、偏波無依存動作可能な光スイッチを実現できる(後述の実施例1参照)。
【0031】
本実施形態に係る光スイッチは、その動作として2次の電気光学効果を用いており、高い比誘電率を有する材料を用いている。このため、CR時定数による速度制限があることを考慮しなければならない。しかしながら、本発明に係る光スイッチでは、その2次の電気光学効果が高いことにより、素子のサイズを極めて小さくすることが可能となる。また、その素子部分の静電容量を小さく設計することができる。その結果、上記偏波無依存動作に加えて、さらに、1〜10nsecの高速動作を実現することが可能となる。
【0032】
以上のことから、本実施形態に係る光スイッチは、単純な構成で、1〜10nsecの高速動作、1V以下の低駆動電圧、偏波無依存動作という、従来の光スイッチでは実現できなかった高機能性を実現することできる。よって、このような光スイッチは、光パケットルーティングに利用することが可能となる。そこで、上記特徴を有する本発明に係る光スイッチの実施形態を、いくつかの実施例を用いて説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
図1は、本発明に係る実施形態の一例を示す光スイッチの構成図である。光スイッチは、マッハツェンダ干渉計を有する。この光スイッチの光導波路は誘電体結晶で作製されている。なお、本実施形態の他の実施例においても、図1に示したマッハツェンダ干渉計を有する光スイッチをベースに説明する。
【0034】
図1に示すように、本発明に係る光スイッチは、入力側に設けられた3dBカップラ16と、出力側に設けられた3dBカップラ17と、入力側3dBカップラ16及び出力側3dBカップラ17とを接続する2本の光導波路(アーム導波路)とを含んで構成されたマッハツェンダ干渉計である。また、位相調整部分18として、2本の光導波路の一方に電界を印加する電極を備えている。なお、入力側3dBカップラ16及び出力側3dBカップラ17の結合定数は、精密に3dBになるよう設計されている。
【0035】
本実施例の光スイッチでは、コア14、クラッド15に用いた誘電体結晶材料は、ともにKLTN結晶であり、Liの濃度とNbの濃度を調整することにより、比屈折率差0.75%の光導波路を実現している。なお、光導波路の断面は、後述の図2に示すように、コア14がクラッド15に囲まれた埋め込み導波路となっている。コア14、クラッド15の誘電体結晶の相転移温度は、それぞれ10℃、7℃であり、本実施例に係る光スイッチの動作温度は12℃である。12℃におけるコア14、クラッド15の誘電体結晶の比誘電率は、それぞれ18000と15000であった。
【0036】
本実施例の光スイッチでは、図1に示すように、入力ポート11から光を入力する。位相変調部分18において光導波路に電界を印加しない場合(OFFの場合)は、出力ポート12へすべての光が出力される。位相変調部分18において光導波路に電界を印加する場合(ONの場合)は、位相変調部分18よって位相をπ変化させることで、光の出力が出力ポート13へ切り替わる。
【0037】
図2は、図1の光スイッチのマッハツェンダ干渉計の一方の光導波路に形成した位相変調部分18を示す構成図である。又、図3Aは図2のIIIA−IIIA線矢視断面図であり、図3Bは図2のIIIB−IIIB線矢視断面図である。
【0038】
図2、図3AおよびBに示すように、位相変調部分18は、位相変調部24、位相変調部25の2つの位相変調部から構成される。これら2種類の位相変調部は、各々異なる電極構造を有する。具体的には、位相変調部24では、コア14直上に透明電極22が設けられ、その両側にグランド電極23が配置されている。この電極構造では、図3Aに示すように、コア14から基板に向かう方向(伝搬する光のTM方向に平行な方向)に電界が印加される。一方、位相変調部25では、コア14を挟むように透明電極22、グランド電極23が配置されている。よって、図3Bに示すように、基板に平行な方向(伝搬する光のTE方向に平行な方向)に電界が印加される。このような電極構造により、光の伝搬方向に対して直交し、かつ、互いに直交する2方向に電界を印加することができる。
【0039】
ここで、KTN、KLTN結晶の2次の電気光学効果は、その対称性から下記のように表すことができる。
【0040】
【数1】

【0041】
【数2】

【0042】
上式において、Δn//は印加電界に平行な方向の屈折率変化であり、Δnは印加電界に垂直な方向の屈折率変化であり、n0はKTN、KLTNの電場印加前の屈折率であり、g11およびg12はKTN、KLTNの非線形定数であり、ε0は真空の誘電率であり、εaは結晶の比誘電率であり、Eは印加電界である。
【0043】
KTN、KLTN結晶の電気光学定数は、それぞれg11=0.136m4/C2、g12=−0.038m4/C2である。このため、電界に平行な屈折率は、電界の印加により小さくなり、電界に垂直な方向の屈折率は電界の印加により大きくなる。さらに、電界に平行な屈折率の変化量が、電界に垂直な方向の屈折率の変化量の3〜4倍程度大きいことがわかる。このような電界の印加前、印加後の光の伝搬方向に直交する屈折率を図示すると、図4のように変化することがわかる。したがって、図2に示した位相変調部分18では、式(1)、(2)より、互いに直交する2つの電界が等しい場合には、式(1)と(2)との加算分の屈折率変化が、TE方向、TM方向の両偏光に等しく生じる。そのため、位相変調部分18では位相変調量は偏光に依存しないことになり、本発明の光スイッチが偏光無依存で動作することがわかる。
【0044】
本実施形態に係る光スイッチでは、電極から印加される電界を光が導波するコアに有効に作用させるため、電極直下のクラッド厚を極めて薄くした。さらに、光電界の閉じ込めを考慮して、電極の一部又は全部、特にコア直上の電極を、1.55μmの波長の光に対して透明となる材料(例えば、ITO:Indium Tin Oxide)で構成する。これにより、印加電界をほぼドロップさせることなくコアに印加することが可能となる。
【0045】
又、図2に示した2種類の電極の長さはそれぞれ4mmであり、両電極で約8mmとする。この光スイッチの挿入損は約3dBであり、KLTN結晶を用いて作製されたマッハツェンダ干渉計を含む光導波路は、極めて低損失となる。
【0046】
図5は、本発明に係る光スイッチの動作特性を示すグラフである。
【0047】
位相変調部24、25に等しくバイアス電界(電圧)1Vを印加し、スイッチングに必要な電界を印加したときに、出力ポート12、13に出力される光パワーを測定した結果である。図5に示すように、光出力が電界(電圧)の印加により切り替わることがわかる。本実施例の光スイッチの場合、2次の電気光学効果を用いているため、印加電界(電圧)が大きくなるに従い屈折率変化が大きくなる。そのため、位相がπ変化するために必要な電界(電圧)が次第に小さくなっていく様子がわかる。本実施例の光スイッチの構成並びに駆動条件では、動作に必要な電圧(Vπ)は0.85Vであり、スイッチの消光比は32dBと良好な値を示した。さらに、矩形波の電界をスイッチに印加して測定したスイッチング速度は約1.5nsecであり、パケットスイッチに必要となる高速動作も可能である。
【0048】
なお、本実施例では、屈折率制御を容易にするためにKLTN結晶を用いた。しかしながら、KTN結晶を用いても同様の光スイッチを作製でき、0.87Vの駆動電圧、1.2nsecのスイッチング速度、さらに、偏波無依存動作を確認した。
【0049】
(実施例2)
本実施例の光スイッチは、マッハツェンダ干渉計の光導波路(アーム導波路)の一方側に図2に示した位相変調部分18の位相変調部24を設け、他方側に位相変調部分8の位相変調部25を設けた構成である。それ以外の構成は、実施例1の光スイッチとほぼ同様の構成である。本実施例は、このような構成の光スイッチを作製して、その動作を確認した。
【0050】
実施例1の光スイッチの構成では、マッハツェンダ干渉計の一方のアーム導波路のみに電界をかけるため、屈折率変化が式(1)、(2)の加算になる。実施例1において説明したように、KTN、KLTN結晶の2次の電気光学定数は直交する方向で符号が反対である。従って、式(1)、(2)の加算により、偏光に対する屈折率依存性はなくなるが、屈折率変化量は小さくなる方向に働く。
【0051】
そこで、実施例2の光スイッチでは、印加電界に対してさらに有効的にスイッチング動作を行うため、両方のアーム導波路にそれぞれ位相変調部分18(図2参照)を作製した。そして、一方のアーム導波路の位相変調部24と他方のアーム導波路の位相変調部25とに同じ電界を印加する。光出力をスイッチングする場合には、逆に、一方のアーム導波路の位相変調部25と他方のアーム導波路の位相変調部24へ同じ電界を印加することとした。これにより、プッシュプル動作が可能になり、屈折率変化は式(1)と(2)の差分となり、さらに低電圧でのスイッチングを実現することができた。この場合の駆動電圧Vπは0.53Vであり、その他のスイッチング特性は実施例1の光スイッチと同様であった。つまり、本実施例の構成により、光スイッチの高速、偏波無依存の特性を保ちつつ、さらに低電圧で駆動できることが明らかになった。
【0052】
(実施例3)
図6は、本実施形態に係る光スイッチの実施形態の他の一例であり、その位相変調部分の構成を示す図である。又、図7は、図6のVII−VII線矢視断面に該当し、櫛型電極を用いた位相変調部分の電界方向を示す図である。
【0053】
実施例3の光スイッチの構成は、実施例1の光スイッチと同様にマッハツェンダ干渉計を用いたものであるが、マッハツェンダ干渉計の光導波路(アーム導波路)の位相変調部分に、図6に示す櫛型の電極構造を用いたことが、大きく異なる点である。
【0054】
図6、図7に示すように、本実施例の位相変調部分は、基板61上に形成したクラッド63に、コア62が囲まれるように形成された埋め込み導波路となっている。コア62の上部には、その長さ方向に櫛型状の櫛型電極64とグランド電極65が、互いの電極が交互の配置になるように形成されている。又、図7に示すように(図6では図示せず)、上部側の櫛型電極64及びグランド電極65にそれぞれ対向するように、基板61とクラッド17の界面に、下部側の櫛型電極64及びグランド電極65がそれぞれ形成されている。
【0055】
櫛型電極64及びグランド電極65によって印加される電界は、図7に示す電界E1、E2のように、光の伝搬方向に平行な方向に複数形成される。そして、隣り合う電界E1、E2の方向が、交互に逆転する向きを持つ。対向する櫛型電極64、グランド電極65の極性が同相となるように電極が作製されている。従って、コア62に直交する方向の電界が打ち消され、コア62に平行する電界のみが残る。
【0056】
このような電界の印加前、印加後の光の伝搬方向に直交する屈折率を図示すると、図8のように変化することがわかる。実施例3の場合、光の伝搬方向に直交する方向の屈折率変化は、式(2)の屈折率変化に対応している。つまり、図8から明らかなように、この屈折率変化の方向は等方的であり、偏光に対して等方的に屈折率変化が生じる。よって、偏波無依存となることがわかる。
【0057】
実施例3の櫛型状の電極構造では、図7に示すように電界E1、E2の方向が交互に逆転しているにもかかわらず、電界の方向に依らず一定方向の屈折率変化が得られる特徴がある。これは、2次の電気光学効果を用いているため、電界の符号(電界の方向)に関係なく、その絶対値の2乗に比例する屈折率変化を得ることができるからである。これが、2次の電気光学効果を利用している大きな利点であり、櫛型電極を用いることを可能としている。
【0058】
更に、櫛型電極を用いる場合、櫛型電極のピッチを変えることで、電界の大きさを変えることができるという利点がある。サンドイッチ型の電極構造の場合、光導波路の厚み以下には電極間隔を小さくすることができず、電界を大きくするには大きい電圧を印加するしかない。しかしながら、櫛型電極の場合は正負の電極が同じ平面上にあり、その間隔を任意に変えることができる。よって、その間隔を小さくすることで、同じ印加電圧でありながら大きい電界を得ることができる。つまり、2次の電気光学効果を有する誘電体結晶に、櫛型電極を用いることで、小さい印加電圧でありながら大きい電界が印加できる。さらに、交互に電界の方向が変化しても一定方向に屈折率を変化させることができるため、屈折率が光の伝搬方向に一様に大きく変化した光導波路を得ることができる。したがって、実施例3の櫛型状の電極構造を用いた位相変調部分を、マッハツェンダ干渉計の一方(又は両方)のアーム導波路に用いることにより、偏波無依存かつ低駆動電圧の光スイッチを容易に実現することができる。
【0059】
なお、実施例3のような櫛型状の電極構造に限らず、光の伝搬方向に平行な方向であり、かつ、光の伝搬方向に順方向のみ又は逆方向のみの電界を形成するような電極構造の場合でも、偏波無依存の光スイッチを実現することができる。
【0060】
実施例3では、実施例1とほぼ等しい相転移温度を有するKTN結晶でマッハツェンダ干渉計を含む光導波路を作製した。また、下部電極に白金、上部電極にITOを用いて、光スイッチを作製した。電極は導電性のあるものであればスイッチング動作が可能である。上部及び下部のクラッド厚を薄くし、電界印加効率を上げた場合、透明電極を使用したほうが、電極材料による光吸収の影響を抑制することができる。その結果として挿入損失を低下させることができる。又、位相変調部分の長さを1cm、バイアス電圧を1Vとした場合、本実施例の光スイッチの駆動電圧Vπは0.98Vであり、消光比は35aBと良好な特性を示し、偏波無依存で動作する。
【0061】
なお、実施例1乃至実施例3の光スイッチにおいて、バイアス電圧を印加して動作させている。このバイアス電圧にスイッチングに必要な変調電圧を重畳することは、回路構成として容易である。又、2次の電気光学効果を用いているため、バイアス電圧を印加することで、電界変化に対する屈折率変化量を大きくすることが可能である。よって、電源回路に負荷をかけない程度のバイアス電圧を印加することで、さらに効率よいスイッチングが可能であることが明らかになった。
【0062】
(実施例4)
実施例4の光スイッチの構成は、実施例1の光スイッチと同様にマッハツェンダ干渉計を用いたものである。2本のアーム導波路をKLTN結晶により形成して、実施例1と同様の位相変調部分を両方のアーム導波路に作製した。但し、入力側3dBカップラ及び出力側3dBカップラは石英系導波路で作製されている。これらの材料を用いて、位相変調部分側のKLTN結晶の端面を研磨してARコートを施した上で、その端面を入力側3dBカップラ及び出力側3dBカップラと光学接着剤で接合して光スイッチを構成した。
【0063】
実施例4の光スイッチは、その駆動電圧やスイッチング速度は、実施例1とほぼ同様である。しかしながら、挿入損失ならびに消光比が改善され、それぞれ2.4dB、42dBとなる。これは、石英系導波路で作製された3dBカップラが、KLTN結晶で作製された3dBカップラより低損失で高精度であることを示している。このように、位相変調部分のみにKTN、KLTN結晶の光導波路を用い、その他の部分を石英系等の他の光導波路で構成しても、同様の光スイッチが作製できることが明らかになった。
【0064】
(実施例5)
実施例5の光スイッチは、実施例1の光スイッチと同等の構成であるが、光導波路がBTO結晶等で作製されている点が異なる。このような構成の光スイッチを作製し、その動作を確認した。
【0065】
実施例5の光スイッチにおいて、BTO導波路部分を110℃に制御して動作させると、駆動電圧Vπ、は1.5V必要である。しかしながら、実施例1の光スイッチと同様の性能が得られ、さらに、スイッチング速度は1ns以下である。また、BTOとSTOを0.73:0.27の割合で混合した、Ba0.73Sr0.27TiO3の単結晶からなる導波路を作製し、これを用いて同様な光スイッチを作製する。この場合、導波路温度10℃にて、BTOの導波路を用いた場合と同様な特性が得られる。その他、PLZTを導波路材料とした光スイッチでも同様な動作が可能であった。
【0066】
(実施例6)
実施例6では、実施例2の光スイッチを4インチの基板上に高密度に集積することで、16×16のマトリクススイッチを作製する。作製した光スイッチはノンブロッキング構成であり、その数は256個である。光スイッチは偏波無依存で動作し、挿入損は8.5dB、消光比は43dB、駆動電圧0.9V、スイッチングに使用した消費電力は0.8Wである。実施例6の光スイッチの場合、スイッチ部分の電気容量に対応する充放電をスイッチング時に繰り返すため、スイッチング速度に対応する電力消費が生じる。具体的には、1GHzで連続的にスイッチング動作が起きる場合、その最大の消費電力は0.8Wである。これにより、従来の光スイッチに比べ、極めて小さい電力消費であることが明らかになった。
【0067】
(実施例7)
本実施形態では、マッハツェンダ干渉型の光スイッチについて説明してきた。実施例7では、方向性結合器について説明する。
【0068】
図9に示すように、実施例7の導波路型デバイスではコア91、クラッド92に用いた導波路材料は共にKLTN結晶である。これら材料に対してLiの濃度とNbの濃度を調整することにより比屈折率差0.5%の光導波路を実現した。コアリッジはリソグラフィーとドライエッチングによりほぼ6μm×6μmのサイズに加工されている。
【0069】
実施例7は方向性結合型光分岐素子96を備えており、入力ポート93から光を入力すると相互作用領域において2つの導波路間にモード結合が生じ、エネルギーが移行する。
コア間のギャップG及び相互作用領域Lを調節することにより1:1の分岐比を有する素子、すなわち3dBカップラを実現することができる。
【0070】
コアギャップG及び相互作用長Lを変化させた方向性結合型光分岐素子を複数作製した。入力ポート93から波長1.55μmの光を入力し出力ポート94,95からの出力光の強度を測定し、分岐比が1:1となる典型的な条件を示したグラフが図10である。図10より、作製した方向性結合型光分岐素子の過剰損失は概ね0.ldB以下と優れた光学特性を示した。
【0071】
(実施例8)
実施例7における方向性結合器において、一方の光導波路の直上に電極(図示せず)を形成し、分岐比可変導波路型分岐素子を作製した。その構造を図11に示す。
【0072】
実施例8の導波路型分岐素子では、図11に示すように入力ポート111から光を入力すると、位相変調部分112において、入力された光が一度もう一方の光導波路に移行した後、再び元の光導波路へ移行する。このとき、出力ポート114へすべての光が出力されるようバイアス電圧が印加されている。位相変調部分112において光導波路に分岐比制御用電界を印加する場合(ONの場合)は、位相変調部分112の電界の印加により片側導波路の実効屈折率が変化する。その結果、2つの導波路間の伝搬定数に差が生じ位相不整合が生じる。この位相不整合量を分岐比制御用電界で変化させることで、光の出力が出力ポート113へ移行し分岐比が変化することになる。
【0073】
図12は、図11における方向性結合器の一方の光導波路に形成した位相変調部分112を示す構成図である。また、図13Aは図12のXIIA−XIIA断面図であり、図13Bは図12のXIIB−XIIB断面図である。
【0074】
図12、図13AおよびBに示すように、位相変調部分112は、位相変調部121、位相変調部122の2つの位相変調部から構成されている。それぞれの位相変調部は、2種類の、各々異なる電極構造を有する。具体的には、位相変調部121ではコア91直上に電極123が配置されており、その両側にグランド電極124が配置されている。この電極構造では、図13Aに示すように、コア91から基板に向かう方向(伝搬する光のTM方向に平行な方向)に電界が印加される。一方、位相変調部122では、コア91をはさむように電極123、グランド電極124が配置されている。よって、図13Bに示すように、基板に平行な方向(伝搬する光のTE方向に平行な方向)に電界が印加される。
このような電極構造により、光の伝搬方向に対して直交し、かつ、互いに直交する2方向に電界を印加することが可能である。
【0075】
すなわち、式(1)−(2)より、図11に示した位相変調部分112では、互いに直行する2つの電界が等しい場合には式(1)と(2)の加算分の屈折率変化がTE方向、TM方向の両変更に等しく生じる。そのため、位相変調部分112では、位相変調量は偏光に依存しないことになり本実施形態の光スイッチが偏光無依存で分岐比可変動作することがわかる。
【0076】
図12に示した2種類の電極の長さはそれぞれ4mmであり、両電極で約8mmとした。この光スイッチの挿入損失は約2.5dBであり、KLTN結晶を用いた方向性結合器を含む導波路デバイスが極めて低損失である。
【0077】
図14は、本実施形態に係る光スイッチの分岐特性を示すグラフである。上述のように位相変調部121,122に等しくバイアス電界(電圧)3Vを印加し、分岐比を変化させるために必要な電界を印加したときに、出力ポート113,114に出力される光パワーを測定した結果である。図14に示すように、光出力が電界の印加により切り替わることがわかる。実施例8の導波路型デバイスが分岐比可変であり、さらにスイッチング機能を有することがわかる。実施例8では、2次の電気光学効果を用いているため、印加電界が大きくなるに従い屈折率変化が大きくなる。このため、スイッチング動作に必要な電界が次第に小さくなっていく様子がわかる。本実施例の光スイッチの構成並びに駆動条件ではスイッチング動作に必要な電圧は0.95Vであり、スイッチの消光比は30dBと良好な値を示した。さらに、矩形波の電界をスイッチに印加して測定したスイッチング速度は約2nsecである。よって、本実施例の光スイッチにより、パケットスイッチングに必要となる高速動作も可能である。
【0078】
なお、実施例8では、KLTN結晶を用いたが、KTN結晶を用いても同様の光スイッチが作製でき、0.97Vの駆動電圧、1.7nsecのスイッチング速度、さらに、偏波無依存動作を確認した。また、位相変調を与えるための電極構成は図13AおよびBに示した2つの位相変調部からなる構成を用いたが櫛型電極等の構成を用いても偏波無依存操作を確認した。
【0079】
(実施例9)
実施例9では、実施例8の光スイッチを4インチの基板上に高密度に集積することで、16×16のマトリックススイッチを作製した。作製した光スイッチはノンプロッキング構造であり、その数は256個である。図15はその中で16個の要素151を示している。各要素151は図11に示した方向性結合器を用いた光スイッチである。この光スイッチは偏波無依存で動作し、挿入損失は8.0dB、消光比は45dB、駆動電圧0.90V、スイッチングに使用した消費電力は0.83Wであった。
【0080】
本スイッチの場合、スイッチ部分の電気容量に対応する充放電をスイッチング時に繰り返すため、スイッチング速度に対応する電力消費が生じる。具体的にはlGHzで連続的にスイッチング動作が起きる場合、その最大消費電力は0.8Wであり従来の光スイッチに比べ、きわめて小さい消費電力であった。
【0081】
第1の実施形態に係る光スイッチでは、KTNやKLTN等に対してキュリー転移温度近傍で動作させるために、温度コントローラを備えることができる。温度コントローラは、ペルチェ素子であっても良い。
【0082】
以上説明してきたように、第1の実施形態によれば、KTN、KLTN結晶等を光導波路として用いることにより、従来では実現できなかった高速、低電圧駆動、偏波無依存の光スイッチを実現することができる。低電圧で駆動できるため、高価な高速動作の電源を使用する必要がなく、替わりにIC等で直接駆動することができる。また、第1の実施形態に係る光スイッチは、集積回路やボード実装等を用いて、高密度のスイッチボードとして安価に作製することができる。更に、マトリクス構成することが容易であり、大規模なマトリクススイッチを構成することができる。よって、第1の実施形態に係る光スイッチは、光パケットルーターのコアスイッチとして有用である。
【0083】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、KTN結晶を基本とした光導波路を用いてデジタル光スイッチを構成する。例えば、図16に示すように、KTN若しくはKLTNをコア161とし、これより僅かに屈折率が低いKTN若しくはKLTNをクラッド層162とした埋め込み型三次元光導波路を用いる。図16中では、省略されているが、この埋め込み型三次導波路は、KTaO3(KT)、KNbO3(KN)若しくはKTN基板上に設けられている。
【0084】
このような埋め込み型三次元光導波路を利用した1×2デジタル光スイッチを図17に示す。この光スイッチは、光の導波路方向にのみ電界E1を印加するため、下層クラッドの下方かつ上層クラッドの上方に櫛形電極を具備する。
【0085】
即ち、基板173上には、コア178とクラッド層174とよりなる埋め込み型三次元光導波路として、一つの入力光導波路(入力ポート)175から二つの出力導波路(出力ポート)176,177へ分岐するY分岐型導波路を構成する。下側のクラッド層174の下方及び上側のクラッド層174の上方であって、Y分岐の近傍における出力導波路176,177には、コア178に電界を与えるために櫛形電極171,172を配置する。
【0086】
このようなデジタル光スイッチは、後述するように、TE,TM両方の屈折率変化が等しい屈折率変化を受けることが可能となり、偏光依存性が除去できる。本実施形態で用いるKTNは誘電体結晶材料であり、キュリー温度以上で立方晶構造を有する。これに対して、図16に示すように、外部電場E1,E2,E3を結晶軸方向a1,a2,a3に印加すると、二次の電気光学効果を示す。
【0087】
立方晶でのTE,TM各モードの屈折率の電場依存性は、E2若しくはE3が0の時には、以下のように記述できる。
【0088】
【数3】

【0089】
上式において、n0はKTNまたはKLTNの電場印加前の屈折率であり、g11およびg12はKTN、KLTNの非線形定数であり、εaはKTN、KLTNの比誘電率である。ここで、E1,E2,E3の電界方向は、図16に示したコア108の主軸方向の電場に各々対応する。E2若しくはE3が0の時には、屈折率楕円体の主軸は変化せず、モード変換は起こらない。また、E3が0でない時には、g11とg12との符号が異なるため、屈折率変化の方向が異なる。
【0090】
そして、nTEはE3の増加に伴い減少する。一方、nTMはE3の増加に伴い増加するためスイッチ動作の偏波依存性を生じてしまう。そこで、光の導波方向の電界E1のみを印加すると、屈折率変化は両モードとも下式のように同一の式で与えられ、偏波依存性を除去できる。
【0091】
【数4】

【0092】
そこで、図17のように、光の導波方向の電界E1のみを印加するために、コア178である出力ポート176、177の上下に櫛形電極171,172を配置した。
【0093】
櫛形電極171,172が配置されたY分岐導波路の断面図を図18Aに、櫛形電極の平面図を図18Bに示す。
【0094】
図18Aに示すように、基板183上にはクラッド層184とコア182とからなる埋め込み型三次元光導波路が設けられている。また、上側のクラッド層184の上方及び下側のクラッド層184の下側にはそれぞれ櫛型電極181が配置されている。図18Bに示すように、櫛型電極181は、+極181aと、−極181bとを一定間隔で交互に配置している。そして、上下の櫛型電極181の同極が向き合ように配置されている。
【0095】
そのため、コア182を上下に貫く電界E3は、上下の櫛型電極181からの電界成分の打ち消し合いにより理想的には0となる。よって、本実施例の櫛形電極181により、光の導波方向にのみ電界E1を効果的に印加することができる。更に、本発明の電界効果は、2次の電気光学効果を利用しているため電場の二乗に比例する。従って、二つの出力ポート176,177に予めDCバイアス電圧を印加しておいて、スイッチ動作により光路を切り替えたい二つの出力ポート176又は出力ポート177のみに電圧を印加することにより、より低消費電力でスイッチ動作できる。
【0096】
一方、図19に示すように、上側のクラッド層193の表面において、コア192の左右に+極、−極の電極191を配置し、光導波方向に対して垂直方向に電圧を印加した場合、基板に平行であってコア192を横切る方向の電界E2が主に発生する。その場合、屈折率変化は、以下の式で表せて、nTEは減少して、nTMは増加する。
【0097】
【数5】

【0098】
このような原理を利用した1×2偏波スプリッタを図20に示す。即ち、図20に示すように、基板203上には、コア208とクラッド層204とよりなる埋め込み型三次元光導波路として、一つの入力ポート205から二つの出力ポート206,207へ分岐するY分岐型導波路を設けた。クラッド層204の表面には、Y分岐の近傍における出力ポート206,207のそれぞれ左右両側にスイッチング用電極201,202を配置した。
【0099】
従って、入力ポート205にTM光、TE光を入射させて、一方のスイッチング用電極201に電圧を印加すると、基板に平行であってコア208を横切る方向の電界E2が発生する。このため、TM光は出力ポート206へ、TE光は出力ポート207へ出力される。従って、TEモードとTMモードとを分離可能な偏波スプリッタが実現できる。
【0100】
また、図21AおよびBにこのY分岐型導波路を5個ツリー状に組み合わせた1×2偏波無依存光スイッチの模式図を示す。即ち、第一のY分岐型導波路211で一つの導波路を二つの導波路に分岐する。第二、第三のY分岐型導波路212,213で二つの導波路を四つに分岐する。第四、第五のY分岐型導波路214,215で交差した導波路と直線的な導波路をそれぞれ二つの導波路に結合させている。また、各Y分岐型導波路211〜215の出力導波路にはそれぞれスイッチング用電極が配置されている。図21AおよびB中に黒色で示す電極に実際に電圧が印加される。
【0101】
図21Aの場合、TM光、TE光は矢印で示した光路をそれぞれ伝播して、最終的には共に図中上側の出力ポートに出力される。一方、図21Bの場合、TM光、TE光は矢印で示した光路をそれぞれ伝播して、最終的には共に図中下側の出力ポートに出力される。
【0102】
また、図22AおよびBにこのY分岐型導波路を7個ツリー状に組み合わせた1×2偏波無依存光スイッチの模式図を示す。即ち、第一のY分岐型導波路221で一つの導波路を二つの導波路に分岐する。第二、第三のY分岐型導波路222,223で二つの導波路を更に四つの導波路に分岐する。第四のY分岐型導波路224で二つの導波路を一つの導波路に結合して第五のY分岐型導波路225で一つの導波路を二つの導波路に分岐する。
更に、第六、第七のY分岐型導波路226,227で四つの導波路を二つの導波路に結合させている。これら各Y分岐型導波路221〜227の出力導波路にはそれぞれスイッチング用電極が配置されている。図22AおよびB中に黒色で示す電極に実際に電圧が印加される。
【0103】
図22Aの場合、TM光、TE光はそれぞれ矢印で示した光路を伝播して、最終的には共に図中上側の出力ポートに出力される。一方、図22Bの場合、TM光、TE光は矢印で示した光路を伝播して、最終的には共に下側の出力ポートに出力される。
【0104】
以上のように、多段にY分岐型導波路を連結することにより偏波無依存型の光スイッチが実現できる。図21AおよびB、ならびに図22AおよびBのように、Y分岐型導波路を5〜7個のツリー状に連結することで最小の小型の偏波無依存型のスイッチを実現できる。
【0105】
一方、図23のように下側のクラッド層233の下方かつ上側のクラッド層233の上方の両方に+電極231及び−電極231を配置する。光導波方向に対して垂直方向に電圧を印加した場合、基板に垂直であってコア導波路232を横切る方向の電界E3が主に発生する。
【0106】
【数6】

【0107】
この場合、電圧印加時には、nTEは増加して、nTMは減少する。
【0108】
このような原理を利用した1×2偏波スプリッタを図24に示す。図24に示すように、基板248上には、コア241とクラッド層244とよりなる埋め込み型三次元光導波路として、一つの入力ポート245から二つの出力ポート246,247へ分岐するY分岐型導波路を設けた。クラッド層244の上面及びその下面には、Y分岐の近傍における出力ポート246,247のそれぞれに沿ってスイッチング用電極242,243を配置した。
【0109】
このような構成で、入力ポート245にTM光、TE光を入射させて、一方のスイッチング用電極242に電圧を印加すると、基板に垂直であってコア246を横切る方向の電界E3を発生させる。よって、TE光は出力ポート246へ、TM光は出力ポート247へ出力される。従って、同様にTEモードとTMモードとを分離可能な偏波スプリッタが実現できる。
【0110】
また、図25AおよびBにこのY分岐型導波路を5個ツリー状に組み合わせた1×2偏波無依存光スイッチの模式図を示す。即ち、第一のY分岐型導波路251で一つの導波路を二つの導波路に分岐する。第二、第三のY分岐型導波路252,253で二つの導波路を四つに分岐する。第四、第五のY分岐型導波路254,255で交差した導波路と直線的な導波路をそれぞれ二つの導波路に結合させている。これら各Y分岐型導波路251〜255の出力ポートにはそれぞれスイッチング用電極が配置されている。図25A、B中に黒色で示す電極に実際に電圧が印加される。
【0111】
図25Aの場合、TM光、TE光は矢印で示した光路をそれぞれ伝播して、最終的には共に図中上側の出力ポートに出力される。一方、図25Bの場合、TM光、TE光は矢印で示した光路をそれぞれ伝播して、最終的には共に図中下側の出力ポートに出力される。
【0112】
また、図26AおよびBにこのY分岐型導波路を7つ組み合わせた1×2偏波無依存光スイッチの模式図を示す。即ち、第一のY分岐型導波路261で一つの導波路を二つの導波路に分岐する。第二、第三のY分岐型導波路262,263で二つの導波路を更に四つの導波路に分岐する。第四のY分岐型導波路264で二つの導波路を一つの導波路に結合して第五のY分岐型導波路265で一つの導波路を二つの導波路に分岐する。更に第六、第七のY分岐型導波路266,267で四つの導波路を二つの導波路に結合させている。
【0113】
各Y分岐型導波路261〜267の出力ポートにはそれぞれスイッチング用電極が配置されている。図26AおよびB中に黒色で示す電極に実際に電圧が印加される。
【0114】
図26Aの場合、TM光、TE光は矢印で示した光路をそれぞれ伝播して、最終的には共に図中上側の出力ポートに出力される。一方、図26Bの場合、TM光、TE光は矢印で示した光路をそれぞれ伝播して、最終的には共に図中下側の出力ポートに出力される。
以上のように、多段にY分岐型導波路を連結することにより偏波無依存型の光スイッチが実現できる。
【0115】
以下に、上記の手法により作製した光スイッチの実施例を示すが、スイッチ作製手法は記述の内容に限定されるものではない。
【0116】
(実施例1)
フォトリソグラフィーなどの手法により、KTN結晶の表面に白金櫛形電極を作製した。そしてその上に、Li濃度を調整して屈折率の高いKLTNをY分岐型のコアとし屈折率の低いKLTNをクラッド層としたY分岐埋め込み導波路を作製する。そこで、コアとクラッドとの比屈折率差はΔn=0.3%とした。コアサイズは、8×8μm2とする。
更に、フォトリソグラフィーなどの手法により、上層クラッド結晶の表面に白金櫛形電極を作製して駆動用電極とする。
【0117】
電極長は、短いほどCR定数で決定される応答速度に有利である。しかしながら、クロストークは電極長が長いほど有利である。よって、電極長を変えたパタンを有する複数の光スイッチでその光学特性を評価し、最適値を得た。キュリー転移温度近傍で動作させるため、この光スイッチをペルチェ素子で温度調整する。DCバイアス3Vを双方のスイッチング用電極に印加し、ONポート側のスイッチング用電極に変調電圧を印加し、スイッチ動作させる。この1×2デジタル型EOスイッチは、動作電圧<1V(DCバイアス3V)、クロストーク<−30dB、応答速度<1nsの光学特性を示した。
【0118】
(実施例2)
フォトリソグラフィーなどの手法により、KTN結晶の表面に白金の櫛形電極を作製する。そしてその上に、Ta/Nb濃度比を調整して屈折率の高いKTNをコアとし屈折率の低いKTNをクラッド層としたY分岐埋め込み導波路を作製する。コアとクラッドとの比屈折率差はΔn=0.3%とした。コアサイズは、8×8μm2とする。更に、フォトリソグラフィーなどの手法により、上層クラッド結晶の表面に白金櫛形電極を作製して駆動用電極とする。
【0119】
電極長は、短いほどCR定数で法定される応答速度に有利である。しかしながら、クロストークは電極長が長いほど有利である。よって、クロストークは電極長が長いほど有利であるため、電極長を変えたパタンを有する複数の光スイッチでその光学特性を評価し、最適値を得た。キュリー転移温度近傍で動作させるために、この光スイッチをペルチェ素子で温度調整する。DCバイアス3Vを双方のスイッチング用電極に印加し、一方のスイッチング用電極に変調電圧を印加し、スイッチ動作させる。この1×2デジタル型EOスイッチは、動作電圧<1V(DCバイアス3V)、ク回ストーク<−30dB、応答速度<1nsの光学特性を示した。
【0120】
(実施例3)
Ta/Nb濃度比を調整して屈折率の高いKTNをコアとし屈折率の低いKTNをクラッド層とした導波路を作製する。この導波路を用いて、図22AおよびBに示したようにY分岐型導波路221〜227を7段に連結した構造の埋め込み導波路を作製する。コアとクラッドとの比屈折率差はΔ=0.3%とした。コアサイズは、8×8μm2とする。更に、フォトリソグラフィーなどの手法により、上層クラッド結晶の表面に白金表面電極を作製してスイッチング用電極とする。キュリー転移温度近傍で動作させるために、この光スイッチをペルチェ素子で温度調整する。
【0121】
図22AおよびBの黒色で示す電極に変調電圧を印加し、スイッチ動作させる。この1×2デジタル型EOスイッチは、動作電圧<1V(DCバイアス3V)、クロストーク<−30dB、応答速度<1nsの光学特性を示した。
【0122】
(実施例4)
Ta/Nb濃度比を調整して屈折率の高いKTNをコアとし屈折率の低いKTNをクラッド層とした導波路を作製する。この導波路を用いて、図21AおよびBに示したようにY分岐型導波路211〜215を5段に連結した構造の埋め込み導波路を作製する。コアとクラッドとの比屈折率蓬はΔn=0.3%とした。コアサイズは、8×8μm2とする。
更に、フォトリソグラフィーなどの手法により、上層クラッド結晶の表面に白金表面電極を作製して駆動用電極とする。キュリー転移温度近傍で動作させるために、この光スイッチをペルチェ素子で温度調整する。
【0123】
図21AおよびBの黒色で示す電極に変調電圧を印加しスイッチ動作させる。この1×2デジタル型EOスイッチは、動作電圧<1V(DCバイアス3V)、クロストーク<−30dB、応答速度<1nsの光学特性を示した。
【0124】
(実施例5)
フォトリソグラフィーなどの手法により、KTN結晶の表面に白金のスイッチ用電極を作製する。そしてその上に、Ta/Nb濃度比を調整して屈折率の高いKTNをコアとし屈折率の低いKTNをクラッド層とした導波路を作製する。その導波路を用いて、図25AおよびBに示したようにY分岐型導波路251〜255を5段に連結した構造の埋め込み導波路を作製する。そこで、コアとクラッドとの比屈折率差はΔn=0.3%とした。コアサイズは、8×8μm2とする。更に、フォトリソグラフィーなどの手法により、上層クラッド結晶の表面及び下層クラッド結晶下部に白金電極を作製してスイッチング用電極とする。キュリー転移温度近傍で動作させるために、この光スイッチをペルチェ素子で温度調整する。
【0125】
図25AおよびBの黒色で示す電極に変調電圧を印加し、スイッチ動作させる。この1×2デジタル型EOスイッチは、動作電圧<1V(DCバイアス3V)、クロストーク<−30dB、応答速度<1nsの光学特性を示した。
【0126】
(実施例6)
フォトリソグラフィーなどの手法により、KTN結晶の表面に白金のスイッチ用電極を作製する。そしてその上に、Ta/Nb濃度比を調整して屈折率の高いKTNをコアとし屈折率の低いKTNをクラッド層とした導波路を作製する。この導波路を用いて、図26AおよびBに示したようなY分岐型導波路261〜267が7段に連結した構造の埋め込み導波路を作製する。そこで、コアとクラッドとの比屈折率差はΔn=0.3%とした。コアサイズは、8×8μm2とする。更に、フォトリソグラフィーなどの手法により、上層クラッド結晶の表面及び下層クラッド結晶下部に白金電極を作製して駆動用電極とする。
キュリー転移温度近傍で動作させるために、この光スイッチをペルチェ素子で温度調整する。
【0127】
図26AおよびBの黒色で示す電極に変調電圧を印加し、スイッチ動作させる。この1×2デジタル型EOスイッチは、動作電圧<1V(DCバイアス3V)、クロストーク<−30dB、応答速度<1nsの光学粋性を示した。
【0128】
(実施例7)
実施例7の光スイッチは、実施例1の光スイッチと同等の構成であるが、光導波路がBTO結晶等で作製されている点が異なる。このような構成の光スイッチを作製し、その動作を確認した。
【0129】
実施例7の光スイッチにおいて、BTO導波路部分を110℃に制御して動作させると、動作電圧は1.5V必要である。しかしながら、実施例1の光スイッチと同様の性能が得られ、さらに、スイッチング速度は1ns以下である。また、BTOとSTOを0.73:0.27の割合で混合した、Ba0.73Sr0.27TiO3の単結晶からなる導波路を作製し、これを用いて同様な光スイッチを作製する。この場合、導波路温度10℃にて、BTOの導波路を用いた場合と同様な特性が得られる。その他、PLZTを導波路材料とした光スイッチでも同様な動作が可能であった。
【0130】
第2の実施形態に係る光スイッチでは、KTNやKLTN等に対してキュリー転移温度近傍で動作させるために、温度コントローラを備えることができる。温度コントローラは、ペルチェ素子であっても良い。
【0131】
以上説明したように、本実施形態は、誘電体結晶基板と誘電体結晶導波路とを用いた光デバイスに関し、具体的には、KTaO3若しくはKNbO3若しくはKTN基板と、この基板上にKLTNをコアとし、コアより僅かに屈折率が低いKLTN導波路をクラッド層とした埋め込み型光導波路と、電界を与える電極とを具備した光デバイスである。
【0132】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、偏波無依存動作可能な光スイッチなどの導波路型デバイスを実現できる。つまり、第の実施形態では、KTN/KLTN結晶材料を用いた埋め込み型導波路にスイッチング用電極を具備するので、小型で安価な高速電源を用いてスイッチ動作が可能という効果がある。
【0133】
更に、偏波無依存、集積化できるためネットワークシステム用の高速スイッチ、例えば、光パケットスイッチとして用いることができ、新規なネットワークシステムを提供できるという効果がある。
【0134】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、電気光学定数が極めて大きい立方晶かつ2次の電気光学定数を有する誘電体結晶を基本とした位相シフタを用いて構成した光変調器を特徴とするものである。本実施形態では、上述の誘電体結晶として、KTN、KLTNを用いている。
【0135】
立方晶でのTE,TM各モードの屈折率の電場依存性は、E2もしくはE3が0の時に
は、以下のように記述できる。つまり、TE,TM各モードの屈折率の電場依存性は、E2もしくはE3が0の時には、以下のように記述できる。
【0136】
【数7】

【0137】
【数8】

【0138】
上式において、n0はKTNまたはKLTNの電場印加前の屈折率であり、g11およびg12はKTN、KLTNの非線形定数であり、εaはKTN、KLTNの比誘電率である。また、g11=0.136であり、g12=−0.038である。
【0139】
図27は、誘電体結晶材料の導波路の結晶方位と電界方向を示す立体図で、図中符号271はコア、符号272はクラッドを示している。ここで、E1,E2,E3の電界方向
は、KTN導波路の主軸方向の電場に各々対応する。E2もしくはE3が0の時には、屈
折率楕円形の主軸は変化せず、モード変換はおこらない。
【0140】
図28A,Bは、櫛形電極付光導波路の構成図である。図28Aは、櫛形電極付光導波路の斜視図であり、図28Bは図28AのXXVIIIB−XXVIIIB線切断断面図である。図中符号281はコア、符号282はクラッド、符号283は基板、符号284は櫛型電極を示している。コア281の上下を挟むようにして櫛型電極284が配置される。この櫛型電極284は、長手方向に正極及び負極が交互に配置されている。つまり、基板283上には、クラッド282が形成され、このクラッド282中にはコア281が埋め込まれている。クラッド282の上下には櫛形状電極284が配設されている。
【0141】
図28AおよびBに示すように、電極284によりE1のみに電界をかけると、屈折率変化は両モードとも下記の式のように同一の式で与えられる。よって、偏波依存性を除去できる。
【0142】
【数9】

【0143】
【数10】

【0144】
図29AおよびBは、電極付光導波路の構成図である。図29Aは電極付導波路の斜視図であり、図29Bは図29AのXXIXB−XXIXB線切断断面図である。図中符号291はコア、292はクラッド、293は基板、294は電極を示している。この電極294は、コア291の上方でクラッド292面上にその直上及びその両側に3つ配置されている。
【0145】
図29AおよびBに示すように、電極294によりE2のみに電界をかけると、屈折率変化は下式のように与えられる。
【0146】
【数11】

【0147】
【数12】

【0148】
図30AおよびBは、電極付光導波路の構成図である。図30Aは電極付導波路の斜視図であり、図30Bは図30AのXXXB−XXXB線切断断面図である。図中符号301はコア、302はクラッド、303は基板、304は電極を示している。この電極304は、コア301の上方でクラッド302面上にその直上の両側に2つ配置されている。
【0149】
図30AおよびBに示すように、電極304によりE3のみに電界をかけると、屈折率変化は下式のように与えられる。
【0150】
【数13】

【0151】
【数14】

【0152】
後者の2つの電界印加配置では、屈折率の変化が両モードにおいて逆符号となる。図31(実施例15で詳説する)には、マッハ・ツェンダ型の光変調器の基本構造が示されている。入力光は3dBカップラ312によって2分され、Y分岐光導波路314に導かれる。このY分岐光導波路314の一方は光位相変調器として動作し、そこを通過する光の位相を変調する。
【0153】
Y分岐光導波路314からの光波が同位相で入射した場合は、2つの光波はそのまま足しあわされて出力ポートに導かれる。しかしながら、両者の位相が180度ずれている場合には、光は放射モードとしてY分岐光導波路314から外へ放射されるために出力ポート316へは導かれない。KTNは大きな2次の電気光学効果を有するために、電流長を短くしても式(7)または(8)、あるいは(11)乃至式(14)から導かれる屈折率変化に応じた位相の変化により効率よく光強度変調を実現できる。
【0154】
図31に示した電極構造を用いると偏波無依存動作を実現できるが、図32(実施例16で詳説する)及び図33(実施例17で詳説する)に応じた電極を用いると偏波依存動作になる。しかしながら、図32および図33に応じた電極を用いると、より大きな非線形定数(g11)を用いることが可能で、より低電圧での強度変調が可能になる。通常、
強度変調する光源としては、偏光したレーザ光を変調する場合が多い。よって、偏光依存動作でもレーザ偏光に応じた光を変調することが可能であれば実用上は問題にならないと考えられる。
【0155】
さらに、図34(実施例18で詳説する)に示すように、一方のY分岐光導波路344に図29AおよびBの電極を、他方のY分岐光導波路344に図30AおよびBの電極を用いた場合、非線形定数が逆符号のため位相変調の方向を互いに逆相にしたプッシュープル動作によって変調能率を増加することも可能である。
【0156】
ところで、相転移近傍のKTNの誘電率は、他材料に比べて非常に大きい。このため、電気容量を小さくするための工夫が必要である。表面電極を用いる場合、デバイスの電気容量は、電極間ギャップが小さく、かつ光導波路層の厚みが大きいほど大きくなると考えられる。電極間ギャップは狭いほど、強電界をコアに印加することが可能である。よって、電極間ギャップは、可能な限り狭いほうが望ましい。そこで、コア厚をhcとしたとき、下層クラッド厚hu及び上層クラッド厚hoが、0≦hu,ho≦3hcの範囲にある埋め込み導波路は、1GHz以上の高速動作のため十分低い電気容量であることが確かめられた。
【0157】
しかしながら、クラッド層が1μm以下の薄層になると、単純な金属電極を用いた場合、TMモードの導波路光は、メタルクラディングの影響により、100dB/cm以上におよぶ大きな損失を生じる。そこで、通信波長帯で高い透明性を有するITO及びZnOを電極材料に用いて、低損失な位相シフタを実現する。また、1μmを超えるクラッド厚の場合、単純な金属、例えば、Pt,Au,Pd,Ti,Cuに代表される金属やこれらの合金を電極材料として用いることも可能である。
【0158】
また、コアとクラッドの比屈折率差を大きくすることによって、コア層の厚さを薄層化することにより、電気容量を小さくすることも可能である。例えば、屈折率差を1.5%にすれば、シングルモード導波のためのコア厚は、4μmまで小さくすることができる。
屈折率差の大きいコア及びクラッドを用いることにより、低い電気容量を有するデバイスを実現することが可能となった。基板に用いられる結晶材料として、導波路を構成する結晶材料の比誘電率よりも一桁以上低い比誘電率をもつものとすると、なお一層電気容量の低下に対して効果がある。以上に示した、低電圧駆動位相シフタを用いると、高い変調指数を有する光強度変調器を広帯域で実現することが可能となる。
【0159】
さらに、より効果的な駆動電圧の低減法として、コア上のクラッド厚が重要なパラメータであることを確かめた。クラッド厚が小さいほど、駆動電圧を低減できる。そこで、コア幅をWとしたとき、コア上のクラッドの厚さh及び電極のギャップgが、0≦h≦3W、0≦g≦3Wの範囲にあれば、1GHz以上の高速動作のため十分低い駆動電圧であることを確認している。しかし、クラッド厚が1μm以下の薄層になると、単純な金属電極を用いた場合、TMモードの導波路光はメタルクラディングの影響により100dB/cm以上におよぶ大きな損失を生じる。そこで、通信波長帯で高い透明性を有するITOおよびZnOを電極材料に用いて、低損失な位相シフタを実現する。
【0160】
さらに、KTN材料は2次の電気光学効果を示すため、バイアス電圧を印加すれば駆動電圧を低減できる。一般に、駆動電圧は位相シフタ中の導波路の位相がπ変化するVπで定義される。Vπとバイアス電圧Vb印加時の駆動電圧Vmは以下の関係がある。
【0161】
【数15】

【0162】
上式に従って、駆動電圧を低減することが可能である。例えば、無バイアス時のVπが2.5Vの位相シフタにおいて、6Vのバイアスを印加すると駆動電圧は0.5Vにまで低減する。
【0163】
また、1μmを超えるクラッド厚の場合は、単純な金属例えば、Pt,Au,Pd,Ti,Cuに代表される金属やこれらの合金を電極用材料として用いることも可能である。
以上に示した低電圧駆動位相シフタを用いると、高い変調指数を有する光強度変調器を実現することが可能となる。
【0164】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1は、図30AおよびBの電極を用いた場合の導波路電気光学位相シフタの実施例である。
【0165】
本実施形態の導波路電気光学位相シフタは、立方晶で2次の電気光学効果を有する結晶を用いている。コア幅wを有するコア301上のオーバー(上層)クラッド厚hが、0≦h≦3wの範囲の厚みを有する埋め込み型のチャネル光導波路を備えた導波路電気光学位相シフタである。チャネル光導波路を挟んで平行に対向する2つの電界印加用薄膜電極(単に電極とも呼ぶ)304が配置されている。
【0166】
また、電極間のギャップgは、0≦g≦3wの範囲の長さを有している。また、結晶として、KTN及びKLTNからなる組成の結晶材料を用いている。さらに、電極として、Al,Ga,InおよびBの中の少なくとも1つがドーピングされたZnOもしくはSn,Ti,Zr,Hf,Nb,Ra,W,Ge,Mo,Sb,Te,Au,PtおよびPgの中の少なくとも1つがドーピングされたITOを電極材料として用いている。
【0167】
以下、実施例1の導波路電気光学位相シフタの作製方法について説明する。
【0168】
まず、Ta/Nb濃度比を調整して、屈折率2.184を有するKTNをコアとし、屈折率の低いKTNをクラッドとした埋め込み型光導波路を作製する。また、さらに精密な屈折率の調整法としては、Liをクラッド、コア各層にドープして制御する。光導波路のコア断面サイズは6μm×6μmとする。コア上のクラッド厚を0μmに設定する。
【0169】
さらに、光導波路上にITO膜をスパッター法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いてギャップ幅6μm、電極幅100μm、厚さ1μm、ギャップ幅6μmのSnドープされたITOからなる電界印加用電極を作製する。電極長は1mmとする。印加電圧の反射を抑えるために、電極を50オームに終端した。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。
駆動時には、デバイス温度を相転移近傍にコントロールした。変調動作電圧は、無バイアス時、2.5V以下であった。また、6Vのバイアス電圧印加時には、変調動作電圧は0.5V以下であった。
【0170】
(実施例2)
本実施例2は、図29AおよびBの電極を用いた場合の導波路電気光学位相シフタの実施例である。以下、実施例2の導波路電気光学位相シフタの作製方法について説明する。
【0171】
まず、Ta/Nb濃度比を調整して、屈折率2.184を有するKTNをコアとし、屈折率の低いKTNをクラッドとした埋め込み型光導波路を作製する。また、さらに精密な屈折率の調整法としては、Liをクラッド、コア各層にドープして制御する。光導波路のコア断面サイズは6μm×6μmとする。コア上のクラッド厚を0μmに設定する。
【0172】
さらに、光導波路上にITO膜をスパッター法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いてギャップ幅6μm、電極幅100μm、厚さ1μm、ギャップ幅6μmのAlドープされたITOからなる電界印加用電極を作製する。電極長は1mmとする。印加電圧の反射を抑えるために、電極を50オームに終端した。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。
駆動時には、デバイス温度を相転移近傍にコントロールした。変調動作電圧は、無バイアス時、2.5V以下であった。また、6Vのバイアス電圧印加時には、変調動作電圧は0.5V以下であった。
【0173】
(実施例3)
本実施例3は、単純な金属を電極材料に用いて、図30AおよびBの電極を用いた場合の導波路電気光学位相シフタの実施例である。Ta/Nb濃度比を調整して、屈折率2.184を有するKTNをコアとし、屈折率の低いKTNをクラッドとした埋め込み型光導波路を作製する。また、さらに精密な屈折率の調整法としては、Liをクラッド、コア各層にドープして制御する。光導波路のコア断面サイズは6μm×6μmとする。コア上のクラッド厚を6μmに設定する。
【0174】
さらに、光導波路上に金薄膜をスパッター法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いてギャップ幅6μm、電極幅100μm、厚さ1μm、ギャップ幅6μmのAuからなる電界印加用電極を作製する。電極長は3mmとする。印加電圧の反射を抑えるために、電極を50オームに終端した。駆動時には、デバイス温度を相転移近傍にコントロールした。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。変調動作電圧は、無バイアス時、6V以下であった。
【0175】
(実施例4)
本実施例4は、単純な金属を電極材料に用いて、図29AおよびBの電極を用いた場合の導波路電気光学位相シフタの実施例である。Ta/Nb濃度比を調整して、屈折率2.184を有するKTNをコア部とし、屈折率の低いKTNをクラッド部とした埋め込み型光導波路を作製する。また、さらに精密な屈折率の調整法としては、Liをクラッド、コア各層にドープして制御する。光導波路のコア断面サイズは6μm×6μmとする。コア上のクラッド厚を6μmに設定する。
【0176】
さらに、光導波路上に金薄膜をスパッター法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いてギャップ幅6μm、電極幅100μm、厚さ1μm、ギャップ幅6μmのPtからなる電界印加用電極を作製する。電極長は3mmとする。印加電圧の反射を抑えるために、電極を50オームに終端した。駆動時には、デバイス温度を相転移近傍にコントロールした。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。TE,TM両モードとも、変調指数が直流値の1/2に低下する帯域幅は5GHzで、変調動作電圧は、無バイアス時、6V以下であった。抵抗に終端抵抗を用いて50オームに調整した。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。変調動作電圧は6V以下であった。
【0177】
(実施例5)
図34は、図29AおよびB並びに図30AおよびBに示した電極を導波路電気光学位相シフタとして用いた場合の本実施形態に係るマッハ・ツェンダ光強度変調器の実施例を示す構成図である。図中符号340はクラッド、符号341は入力ポート、符号342は3dBカップラ、符号343a、bおよびcは電極(電界印加部)、符号344はY分岐光導波路(三次元光導波路)、符号345は3dBカップラ、符号346は出力ポート、符号347は印加用電源を示している。このマッハ・ツェンダ光強度変調器は、1個の入力ポート341と、この入力ポート341に連結された3dBカップラ342と、この3dBカップラ342に連結された三次元光導波路344と、この三次元光導波路344に連結された3dBカップラ345と、この3dBカップラ345に連結された出力導波路346とを供えている。また、手前のチャネル導波路には図30AおよびBに示す電極を配置し、奥のチャネル導波路には図29AおよびBに示す電極を配置した構成である。
【0178】
このような構成にすれば、図29AおよびBと図30AおよびBとに示した電極を有する位相シフタのTEモードとTMモードとに対する位相シフタが相補的になる。よって、この構成の光強度変調器は、偏波無依存動作が可能になる。実際、TE、TM両モードとも、変調指数が直流値の1/2に低下する帯域幅は5GHzであり、無バイアス時の変調動作電圧は2.5V以下であった。
【0179】
しかしながら、偏波が固定されているのであれば、入射光がTEモードであるかTMモードであるかに応じて、2つのチャネル導波路の何れか一方に図29AおよびBあるいは図30AおよびBに示した電極を配置すれば、同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0180】
(実施例6)
図35AおよびBは、本発明に係る電極を用いた場合の導波路電気光学位相シフタの実施例6を説明するための構成図である。図35Aは導波路電気光学位相シフタを説明するための斜視図であり、図35Bは図39AのXXXVB−XXXVB線断面図である。図中符号350はコア、符号351はクラッド、符号352は基板、符号353は電極を示している。
【0181】
本実施形態の導波路電気光学位相シフタは、立方晶で2次の電気光学効果を有する結晶を用いている。その結晶のコア厚をhcとしたとき、下層クラッド厚hu及び上層クラッド厚hoが、0≦hu,ho≦3hcの範囲の厚みを有する埋め込み型の三次元光導波路を備えた導波路電気光学位相シフタである。その位相シフタには、三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極353が配置されている。
【0182】
また、結晶として、KTNおよびKLTNからなる組成の結晶材料を用いた基板上に、KTNおよびKLTNからなる組成の結晶材料を導波路として用いている。
【0183】
また、結晶材料の組成比として、組成比Xを0以上かつ1以下とし、組成比Yを0より大きく0.1未満としている。また、導波路の材料としてKTNおよびKLTNの比誘電率が、基板に用いられている結晶材料の比誘電率よりも一桁以上大きいようになっている。
【0184】
さらに、コアとクラッドの比屈折率差が、0%より大きく1.5%以下である。また、電極として、Al,Ga,InおよびBの中の少なくとも1つがドーピングされたZnOもしくはSn,Ti,Zr,Hf,Nb,Ra,W,Ge,Mo,Sb,Te,Au,PtおよびPgの中の少なくとも1つがドーピングされたITOを用いている。
【0185】
以下、実施例6の導波路電気光学位相シフタの作製方法について説明する。
まず、Ta/Nb濃度比を調整して、屈折率2.184を有するKTNをコア部とし、屈折率の低いKTNをクラッド部とした埋め込み型光導波路を作製する。導波層の比誘電率は、基板352のそれよりも一桁以上大きいことが確かめられる。さらに精密な屈折率の調整法としては、Liをクラッド、コア各層にドープして制御する。コア350とクラッド351との屈折率差は0.5%として、光導波路のコア断面サイズは6μm×6μmとする。コア350下の下層クラッド厚huを6μm、コア350上の上層クラッド厚hoを1μmに設定する。
【0186】
さらに、光導波路上に金薄膜をスパッター法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いてギャップ幅6μm、電極幅100μm、厚さ1μm、ギャップ幅6μmのSnドープされたITOからなる電界印加用電極を作製する。電極長は1mmとする。印加電圧の反射を抑えるために、電極を50オームに終端した。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。駆動時には、デバイス温度を相転移近傍にコントロールした。変調動作電圧は、無バイアス時、2.5V以下であった。また、6Vのバイアス電圧印加時には、変調動作電圧は0.5V以下であった。また、10GHz程度まで応答特性は劣化しないことを確かめた。
【0187】
(実施例7)
図36AおよびBは、本実施形態に係る電極を用いた場合の導波路電気光学位相シフタの実施例7を説明するための構成図である。図36Aは導波路電気光学シフタを説明するための斜視図であり、図36Bは図36AのXXXVIB−XXXVIB線断面図である。図中符号360はコア、符号361はクラッド、符号362は基板、符号363は電極を示している。この実施例7の位相シフタは、三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極363が配置されているとともに、チャネル導波路上に1つの電極363が配置されている。
【0188】
以下、実施例7の導波路電気光学位相シフタの作製方法について説明する。
まず、Ta/Nb濃度比を調整して、屈折率2.184を有するKTNをコアとし、屈折率の低いKTNをクラッドとした埋め込み型光導波路を作製する。導波層の比誘電率は、基板362のそれよりも一桁以上大きいことが確かめられる。また、さらに精密な屈折率の調整法としては、Liをクラッド、コア各層にドープして制御する。コア360とクラッド361の屈折率差は0.5%として、光導波路のコア断面サイズは6μm×6μmとする。コア360下の下層クラッド厚huを6μm、コア360上の上層クラッド厚hoを1μmに設定する。
【0189】
さらに、光導波路上にITO膜をスパッター法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いてギャップ幅6μm、電極幅100μm、厚さ1μm、ギャップ幅6μmのSnドープされたITOからなる電界印加用電極を作製する。電極長は1mmとする。印加電圧の反射を抑えるために、電極を50オームに終端した。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。
駆動時には、デバイス温度を相転移近傍にコントロールした。変調動作電圧は、無バイアス時、2.5V以下であった。また、6Vのバイアス電圧印加時には、変調動作電圧は0.5V以下であった。また、10GHz程度まで応答特性は劣化しないことを確かめた。
【0190】
(実施例8)
本実施例8は、単純な金属を電極材料に用いて、図35AおよびBの電極を用いた場合の導波路電気光学位相シフタの実施例である。
【0191】
以下、実施例8の導波路電気光学位相シフタの作製方法について説明する。
まず、Ta/Nb濃度比を調整して、屈折率2.184を有するKTNをコアとし、屈折率の低いKTNをクラッドとした埋め込み型光導波路を作製する。さらに精密な屈折率の調整法としては、Liをクラッド、コア各層にドープして制御する。コア350とクラッド351の屈折率差は0.5%として、光導波路のコア断面サイズは6μm×6μmとする。コア350下の下層クラッド厚huを1μm、コア350上の上層クラッド厚hoを6μmに設定する。
【0192】
さらに、光導波路上に金薄膜をスパッター法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いてギャップ幅6μm、電極幅100μm、厚さ1μm、ギャップ幅6μmのAuからなる電界印加用電極を作製する。電極長は3mmとした。印加電圧の反射を抑えるために、電極を50オームに終端した。駆動時には、デバイス温度を相転移近傍にコントロールした。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。変調動作電圧は、無バイアス時、6V以下であった。また、10GHz程度まで応答特性は劣化しないことを確かめた。
【0193】
(実施例9)
本実施例9は、単純な金属を電極材料に用いて、図36AおよびBの電極を用いた場合の導波路電気光学位相シフタの実施例である。
【0194】
以下、実施例9の導波路電気光学位相シフタの作製方法について説明する。
まず、Ta/Nb濃度比を調整して、屈折率2.184を有するKTNをコアとし、屈折率の低いKTNをクラッドとした埋め込み型光導波路を作製する。さらに精密な屈折率の調整法としては、Liをクラッド、コア各層にドープして制御する。コア360とクラッド361の屈折率差は0.5%として、光導波路のコア断面サイズは6μm×6μmとする。コア360下の下層クラッド厚huを1μm、コア360上の上層クラッド厚hoを6μmに設定する。
【0195】
さらに、光導波路上に金薄膜をスパッター法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いてギャップ幅6μm、電極幅100μm、厚さ1μm、ギャップ幅6μmのPtからなる電界印加用電極を作製する。電極長は3mmとする。印加電圧の反射を抑えるために、電極を50オームに終端した。駆動時には、デバイス温度を相転移近傍にコントロールした。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。変調動作電圧は、無バイアス時、6V以下であった。また、10GHz程度まで応答特性は劣化しないことを確かめた。
【0196】
(実施例10)
図37AおよびBは、本実施形態に係る電極を用いた場合の導波路電気光学位相シフタの実施例10を説明するための構成図である。図37Aは導波路電気光学位相シフタを説明するための斜視図であり、図37Bは図37AのXXXVIIB−XXXVIIB線断面図である。図中符号370はコア、符号371はクラッド、符号372は基板、符号373は電極を示している。この実施例10の位相シフタは、三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極373が配置されている。図35AおよびBにおける下層クラッドを用いずに、基板372上に直接コア370を形成し、電極373を用いた場合を示している。
【0197】
以下、実施例10の導波路電気光学位相シフタの作製方法について説明する。
まず、Ta/Nb濃度比を調整して、屈折率2.184を有するKTNをコアとし、屈折率の低いKTNをクラッドとした埋め込み型光導波路を作製する。導波層の比誘電率は、基板372のそれよりも一桁以上大きいことが確かめられる。さらに精密な屈折率の調整法としては、Liをクラッド、コア各層にドープして制御する。コア370とクラッド371との屈折率差は1.5%として、光導波路のコア断面サイズは6μm×6μmとした。コア370上のクラッド厚hoを1μmに設定する。
【0198】
さらに、光導波路上に金薄膜をスパッター法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いてギャップ幅6μm、電極幅100μm、厚さ1μm、ギャップ幅6μmのSnドープされたITOからなる電極を作製する。電極長は1mmとする。印加電圧の反射を抑えるために、電極を50オームに終端した。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。駆動時には、デバイス温度を相転移近傍にコントロールした。変調動作電圧は、無バイアス時、2.5V以下であった。また、6Vのバイアス電圧印加時には、変調動作電圧は0.5V以下であった。また、10GHz程度まで応答特性は劣化しないことを確かめた。
【0199】
(実施例11)
図38AおよびBは、本実施形態に係る電極を用いた場合の導波路電気光学位相シフタの実施例11を説明するための構成図である。図38Aは導波路電気光学位相シフタを説明するための斜視図であり、図38Bは図38AのXXXVIIIB−XXXVIIIB線断面図である。図中符号380はコア、符号381はクラッド、符号382は基板、符号383は電極を示している。この実施例11の位相シフタは、三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極383が配置されているとともに、チャネル導波路上に1つの電界印加用薄膜電極423が配置されている。そして、下層クラッドを用いずに、基板382上に直接コア380を形成し、電極383を用いた場合を示している。
【0200】
以下、実施例11の導波路電気光学位相シフタの作製方法について説明する。
まず、Ta/Nb濃度比を調整して、屈折率2.184を有するKTNをコアとし、屈折率の低いKTNをクラッドとした埋め込み型光導波路を作製する。導波層の比誘電率は、基板382のそれよりも一桁以上大きいことが確かめられる。さらに精密な屈折率の調整法としては、Liをクラッド、コア各層にドープして制御する。コア380とクラッド381との屈折率差は1.5%として、光導波路のコア断面サイズは4μm×4μmとする。コア420上のクラッド厚hoを0μmに設定する。
【0201】
さらに、光導波路上にITO膜をスパッター法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いてギャップ幅6μm、電極幅100μm、厚さ1μm、ギャップ幅6μmのSnドープされたITOからなる電界印加用電極を作製する。電極長は1mmとする。印加電圧の反射を抑えるために、電極を50オームに終端した。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。
駆動時には、デバイス温度を相転移近傍にコントロールした。変調動作電圧は、無バイアス時、2.5V以下であった。6Vのバイアス電圧印加時には、変調動作電圧は0.5V以下であった。また、10GHz程度まで応答特性は劣化しないことを確かめた。
【0202】
(実施例12)
図31は、本実施形態の光変調器の実施例12を説明するための構成図である。図28AおよびBに示した電極付光導波路の電極を電気光学位相シフタとして用いた場合の光変調器の実施例を示す図である。
【0203】
図中符号310はクラッド、符号311は入力ポート、符号312は3dBカップラ、符号313は電極(電界印加部)、符号314はY分岐光導波路(三次元光導波路)、符号315は3dBカップラ、符号316は出力ポート、符号317は印加用電源を示している。なお、電極313の長手方向の断面は図28Bに対応している。
【0204】
図31に示すように、本実施形態の光変調器は、1個の入力ポート311と、この入力ポート311に連結された3dBカップラ312と、この3dBカップラ312に連結されたY分岐光導波路314と、このY分岐光導波路314に連結された3dBカップラ315と、この3dBカップラ315に連結された出力ポート316と、Y分岐光導波路314の少なくとも一方に配置された1個の電界印加部313とから構成されている。
【0205】
つまり、本実施形態の光変調器は、立方晶で2次の電気光学効果を有する結晶を導波路材料に用いて、少なくとも1つの入力ポート311と、2つの3dBカップラ312,315と、2つの三次元光導波路(Y分岐光導波路)314と、1つの出力ポート316とを有するマッハ・ツェンダ型の光変調器である。そして、三次元光導波路314の少なくいとも一方に、電極313が配置されている電気光学位相シフタを有している。この電極313が、チャネル導波路314上に1つ配置されている。また、電極313は、三次元光導波路314に対して垂直方向にそれぞれ正極及び負極が交互に配置されている。
【0206】
3dBカップラ312,315は、その形状が所定の曲率半径を持った扇形となっている。Ta/Nb濃度比を調整して、屈折率2.184を有するKTNをコアとし、屈折率の低いKTNをクラッドとした埋め込み導波路を作製する。また、さらに精密な屈折率の調整法としては、Liをクラッド、コア各層にドープして制御する。
【0207】
誘電体結晶として、KTNおよびKLTNからなる組成の結晶材料を用いる。また、結晶材料の組成比として、組成比Xを0以上、1以下とし、組成比Yを0より大きく0.1未満とする。
【0208】
Y分岐光導波路314のコア断面サイズは6μm×6μmとする。Y分岐光導波路314上に金属膜をスパッタ法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いて、設計の幅10μm、厚さ1μmの電界印加用電極313を作製する。電極長は1mmとする。反射を抑えるために、電極の抵抗に終端抵抗を用いて50オームに調整した。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。TE,TM両モードとも、変調指数が直流値の1/2に低下する帯域幅は5GHzで、変調動作電圧は5V以下であった。
【0209】
(実施例13)
図32は、本発明の誘電体結晶を用いた光変調器の実施例13を説明するための構成図である。図30AおよびBに示した電極付光導波路の電極を電気光学位相シフタとして用いた場合の光変調器の実施例を示す図である。
【0210】
図中符号320はクラッド、符号321は入力ポート、符号322は3dBカップラ、符号323は電極(電界印加部)、符号324はY分岐光導波路(三次元光導波路)、符号325は3dBカップラ、符号326は出力ポート、符号327は印加用電源を示している。なお、電極323の断面は図30Bに対応している。
【0211】
この実施例13においては、電極323が、一方の三次元光導波路324を挟んで平行に対向して2つ配置されている。また、電極323は、三次元光導波路324に対して垂直方向にそれぞれ正極及び負極が交互に配置されている。
【0212】
本実施例13による光変調器の作製方法は、上述した実施例12にならい、電極長は1mmとする。反射を抑えるために、電極の抵抗に終端抵抗を用いて50オームに調整した。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。TMモードに関して、変調指数が直流値の1/2に低下する帯域幅は5GHzで、変調動作電圧は3V以下であった。
【0213】
(実施例14)
図33は、本実施形態の光変調器の実施例14を説明するための構成図である。図29AおよびBに示した電極付光導波路の電極を電気光学位相シフタとして用いた場合の光変調器の実施例を示す図である。
【0214】
図中符号330はクラッド、符号33は入力ポート、符号332は3dBカップラ、符号333aおよび73bは電極(電界印加部)、符号334はY分岐光導波路(三次元光導波路)、符号335は3dBカップラ、符号336は出力ポート、符号337は印加用電源を示している。なお、電極333aおよび333bの断面は図29Bに対応している。
【0215】
この実施例14においては、電極333bが、一方の三次元光導波路334を挟んで平行に対向して2つ配置されているとともに、電極333aが、チャネル導波路334上に1つ配置されている。また、電極333aおよび333bは、三次元光導波路334に対して垂直方向にそれぞれ正極及び負極が交互に配置されている。
【0216】
本実施例14による光変調器の作製方法は、上述した実施例12にならい、電極長は1mmとする。反射を抑えるために、電極の抵抗を終端抵抗に用いて50オームに調整する。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。TMモードに関して、変調指数が直流値の1/2に低下する帯域幅は5GHzで、変調動作電圧は3V以下であった。
【0217】
(実施例15)
本実施例15は、図29AおよびBならびに図30AおよびBに示した電極付光導波路の電極を電気光学位相シフタとして用いた場合の光変調器の実施例を示す図である。
【0218】
本実施例15による光変調器の作製方法は、上述した実施例12にならい、電極長は1mmとする。反射を抑えるために、電極の抵抗に終端抵抗を用いて50オームに調整する。波長1.55μmのレーザ光源を入力ポートに接続してオシロスコープを用いて変調特性を測定した。TM,TE両モードに関して、変調指数が直流値の1/2に低下する帯域幅は5GHzで、変調動作電圧は2.5V以下であった。
【0219】
図34では、手前のチャネル導波路には図30AおよびBに示す電極を配置し、奥のチャネル導波路には図29AおよびBに示す電極を配置した場合を示している。しかしながら、これに限定されることなく、図30AおよびBに示した電極の代わりに図37AおよびBに示した電極を配置し、または図29AおよびBに示した電極の代わりに図38AおよびBに示した電極を配置しても同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0220】
このような構成にすれば、図30AおよびB(または図37AおよびB)と図29AおよびB(または図38AおよびB)に示した電極を有する位相シフタのTEモードとTMモードに対する位相シフタが相補的になるため、偏波無依存動作が可能になる。しかしながら、偏波が固定されているのであれば、入射光がTEモードであるかTMモードであるかに応じて、2つのチャネル導波路の何れか一方に図30AおよびB(または図37AおよびB)あるいは図29AおよびB(または図38AおよびB)に示した電極を配置すれば、同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0221】
(実施例16)
実施例16の光変調器は、実施例12の光変調器と同等の構成であるが、光導波路がBTO結晶等で作製されている点が異なる。このような構成の光変調器を作製し、その動作を確認した。
【0222】
実施例16の光スイッチにおいて、BTO導波路部分を110℃に制御して動作させると、実施例12の光変調器と同様の変調特性が得られた。また、BTOとSTOを0.73:0.27の割合で混合した、Ba0.73Sr0.27TiO3の単結晶からなる導波路を作製し、これを用いて同様な光変調器を作製する。この場合、導波路温度10℃にて、BTOの導波路を用いた場合と同様な特性が得られる。その他、PLZTを導波路材料とした光変調器でも同様な動作が可能であった。
【0223】
以下で、第3の実施形態に係る光変調器において、進行波電極を用いた光変調器について説明する。
【0224】
上述のKTNおよびKLTNを用い、進行波電極を用いて光変調器を実現しようとした場合、光導波路中を進行する光と、電極中を伝播するマイクロ波との速度は大きく異なっている。立方晶であるKTNにける光の屈折率は約2.14であるが、誘電率は上述するように20000に達する。従って、マイクロ波の実効屈折率は約141となり、光の屈折率の約70倍に達する。このように、マイクロ波と光波とがKTNを通過する際に、速度不整合が生じ、光変調器の動作速度に限界が生じてしまう。よって、進行波電極ならびにKTNおよびKLTNを用いた光デバイスは、高い電気光学定数を有するが、誘電率も高いためGHz以上の高速変調器を実現するのは困難であった。
【0225】
第3の実施形態に係る進行波電極を用いた光変調器(広帯域光変調器)は、光を伝搬する光導波路と、光導波路に電界を印加する電極とを有する。その光導波路として、KTN、KLTN結晶等の立方晶かつ大きい2次の電気光学効果を有する誘電体結晶を用いる。
また、その電極として、進行波電極を用いる。第3の実施形態の広帯域光変調器では、変調用の電極を進行波電極とし、マイクロ波と光波との速度整合をとることを特徴としている。より具体的には、電極を厚膜化することによってマイクロ波のKTNおよびKLTNに対する実効屈折率を小さくし、マイクロ波と光波との速度整合を図っている。
【0226】
(実施例17)
図39は、第3の実施形態の実施例17についての光変調器の断面図である。図39において、KTN基板390にはKTNからなる埋め込み光導波路391が形成されている。さらに、厚さ約20μmのAu電極392を基板390上に形成されている。その作製法としては、厚さ25μm程度のフォトレジストを埋め込み導波路上に形成する。続いて、このパタンをガイドとして電界メッキ法により厚さ約25μmのAu電極パタンを形成する。電極間の凹内には、誘電率10以下の構造保持用誘電体393を配置している。この光変調器の3dB帯域を測定したところ約10GHzであることを確認した。
【0227】
(実施例18)
図40は、第3の実施形態の実施例18についての光変調器の断面図である。実施例18では、光導波路をリッジ化し電極を備えることによって、マイクロ波の実効屈折率を光の実効屈折率に近づけるようにしている。KTN基板400上にはKTNからなるリッジ状光導波路401が形成されている。さらに、このリッジ状光導波路401を挟み込むように変調用のAu電極403を作製する。この構成により、リッジ状光導波路401に対して基板400と平行な方向に電圧を印加することができる。その作製法は、実施例17の通りである。図40の符号402に示した領域には誘電率10以下の低誘電体材料を埋め込む。この光変調器の3dB帯域を測定したところ約10GHzであることを確認した。
【0228】
(実施例19)
図41は、第3の実施形態の実施例19についての光変調器の断面図である。KTN基板410にはKTNからなるリッジ状光導波路411が形成されている。さらに、電界を基板410に対して垂直に印加するために、このリッジ状光導波路の上面および410基板の直上に変調用のAu電極412および413を作製する。この構成により、リッジ状光導波路411に対して基板410と垂直な方向に電圧を印加することができる。この光変調器の3dB帯域を測定したところ約10GHzであることを確認した。
【0229】
(実施例20)
図42は、第3の実施形態の実施例20についての光変調器の断面図である。KTN基板420にはKTNからなる埋め込み光導波路421、および変調用のAu電極422が形成されている。さらに、Au電極422上に、Au電極を伝播するマイクロ波の実効屈折率が光導波路421を伝播する光の実効屈折率に近くなる条件の厚さを有する空気を介して、アース電極423が固定されている。アース電極424の作製にあたっては、電界メッキ法により電極を作製した後に、フォトレジストによりアース電極のパタンを形成し、ドライエッチング法により空気層の厚さが所望の厚さになるように電極層を加工する。
この光変調器の3dB帯域を測定したところ約10GHzであることを確認した。
【0230】
(実施例21)
実施例21の光変調器は、実施例17の光変調器と同等の構成であるが、光導波路がBTO結晶等で作製されている点が異なる。このような構成の光変調器を作製し、その動作を確認した。
【0231】
実施例21の光スイッチにおいて、BTO導波路部分を110℃に制御して動作させると、実施例17の光変調器と同様の変調特性が得られた。また、BTOとSTOを0.73:0.27の割合で混合した、Ba0.73Sr0.27TiO3の単結晶からなる導波路を作製し、これを用いて同様な光変調器を作製する。この場合、導波路温度10℃にて、BTOの導波路を用いた場合と同様な特性が得られる。その他、PLZTを導波路材料とした光変調器でも同様な動作が可能であった。
【0232】
上述の実施例17〜20では、基板および光導波路の材料としてKTNについて説明したが、これに限定されず、基板としてKLTNを用いても良い。
【0233】
第3の実施形態に係る位相シフタおよび光変調器では、KTNやKLTN等に対してキュリー転移温度近傍で動作させるために、温度コントローラを備えることができる。温度コントローラは、ペルチェ素子であっても良い。
【0234】
以上説明したように、第3の実施形態によれば、立法晶で2次の電気光学効果を有する誘電体結晶であるKTNおよびKLTNからなる組成の結晶材料を基本とした光導波路を用いて、高速低電圧駆動の位相シフタ、それを用いた光変調器を実現することができる。
それにより、短い電極でかつ低電圧で変調可能な光変調器が実現できるという効果を奏する。
【0235】
また、光変調器の電極として進行波電極を用いる場合でも、マイクロ波と光波との速度整合をとることができる。
【0236】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第3の実施形態で詳細に説明した位相シフタを用いて構成したアレイ光導波路格子波長可変フィルタ(単に、波長可変フィルタとも呼ぶ)を特徴とするものである。
【0237】
図43に示すアレイ光導波路格子波長可変フィルタにおいて(具体的には後述する)、入力された信号光は、第1のスラブ光導波路430をへて各アレイ光導波路に分配される。導波光は、等差数列的な光路長差(ΔL)をつけた位相シフタ437を通過し、第2のスラブ光導波路432をへて分岐ポート光導波路434へ集光する。その透過中心波長λcenは以下で与えられる。
【0238】
【数16】

【0239】
ここで、nはアレイ導波路の透過屈折率、mは回折次数を表す。このアレイ導波路上の各導波路に対して電界印加用電極を配置する。2次の電気光学効果を用いて、等差数列的な光路長差(ΔLh)をつけたアレイ導波路上の各導波路の屈折率をΔn変化させた場合、上述した中心透過波長から波長フィルタは以下に示すΔλだけ透過中心波長がシフトする。
【0240】
【数17】

【0241】
図44から図46に示すように(具体的には後述する)、電界印加用電極をアレイ導波路上に対向するように配置した場合、第1及び第2電極では、式(17)に示したΔLhが逆符号のため、透過波長が逆方向にシフトする。よって、両電極を切り替えて使用した場合、2倍の波長可変帯域を実現できる。図44に示した電極構成では、E1のみに電界をかけることが可能である。従って、波長可変フィルタは偏波無依存動作を実現できる。
一方、図45及び図46に示した電極構成の場合、両モード間で透過波長が異なる。
【0242】
上記特徴を有する第4の実施形態に係る波長可変フィルタの実施形態を、いくつかの実施例を用いて説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0243】
(実施例1)
図43は、第3の実施形態にて説明した導波路電気光学位相シフタを具備した波長可変フィルタの構成図である。図中符号430は第1のスラブ光導波路、符号431はチャネル光導波路アレイ、符号432は第2のスラブ光導波路、符号433は入力ポートチャネル光導波路、符号434は出力ポートチャネル光導波路、符号435は第1の電界印加部、符号436は第2の電界印加部、符号437は導波路電気光学位相シフタを示している。
【0244】
第4の実施形態に係るアレイ光導波路格子波長可変フィルタは、少なくとも1本の入力ポートチャネル光導波路433と、光路長が互いに異なるチャネル光導波路からなるチャネル光導波路アレイ431と、少なくとも1本の出力ポートチャネル光導波路434と、入力ポートチャネル光導波路433及びチャネル光導波路アレイ431を結ぶ第1のスラブ光導波路430と、出力ポートチャネル光導波路434及びチャネル光導波路アレイ431を結ぶ第2のスラブ光導波路432と、チャネル光導波路アレイ431の一部からなる電気光学位相シフタ437とを備える。この電気光学位相シフタ437は、第1の電界印加部435と第2の電界印加部436とを備えている。光導波路は、上述した特性を示すKTN、KLTN結晶を用いて作製されている。
【0245】
図44は、本実施形態に係る波長可変フィルタ用の電気光学位相シフタの電極構造を示す構成図である。図44では、アレイ導波路上の各導波路に対して等差数列的な長さを有した電界印加用電極構成を示している。図中符号440および441は電極、符号442は共通のアース、符号443は導波路を示している。
【0246】
導波路443及び電極440,441は、電極位相シフタ用チャネル光導波路アレイを構成している。中央を境にして上下対称に設けられている。また、電極440,441は、光導波路毎にΔLhずつ長さが変えられて、電極440とアース442との組み合わせで第1の電極を構成し、電極441とアース442とにより第2の電極を構成している。
【0247】
なお、図28AおよびBに示す櫛形電極付光導波路によって上述の可変フィルタを達成する場合、クラッド282中にアレイ光導波路のコアが埋め込まれる。
【0248】
図43に示すように、2個の入出力導波路433と434、2個のスラブ光導波路430と432と、位相シフタ用チャネル光導波路アレイ431と、1個の第1の電界印加部435と、1個の第2の電界印加部436とを備えている。スラブ光導波路430と432とは、その形状が所定の曲率半径を持った扇形となっている。第1の電界印加部435と、第2の電界印加部436とについては、図44に示されている。電極442が共通のアースになっており、電極440及び441が電界印加用電極となっている。
【0249】
アレイ光導波路の本数は120本、アレイ光導波路の間隔は25μm、隣接したアレイ光導波路長差は35.5μm、回折次数は50、隣接アレイ光導波路ヒータ長差はΔLh=300μmとした。屈折率2.184のKTN結晶をコアに、上述した設計の光導波路を作製した。KTN光導波路の作製方法は、「強誘電体膜の加工方法」(特願2002−215779号)に準じる。コア断面サイズは6μm×6μmとする。光導波路上に金薄膜をスパッター法で形成し、フォトリソグラフィーおよびドライエッチング法を用いて上述した設計の幅10μm、厚さ1μmの電界印加用電極を作製する。
【0250】
波長1.55μm帯のASE広帯域光源および光スペクトルアナライザをそれぞれ入出力ポートに接続してフィルタ特性を測定した。電極に電界を与えない場合の波長フィルタ特性は、透過中心波長1,550nm、挿入損失5.5dB、クロストーク−30dB(1,550±0.8nm)であった。第1の電極440に電圧を与えたとき、透過中心波長は与えた電圧の2乗に比例して長波長シフトした。一方、第2の電極441に電圧を与えたときは、短波長シフトした。コアに電界を0〜0.5V/μmを与えることで、透過中心波長はTEモード、TEモード両方とも、1.545〜1.565nmの範囲で可変した。また、透過中心波長変化に伴う挿入損失およびクロストークの顕著な増加は認められなかった。
【0251】
(実施例2)
上述した実施例1と同様に、図43の波長可変フィルタを作製した。位相シフタ用電極として、図45に示す構成の電極を用いる。この図45は、本発明に係る波長可変フィルタ用の電気光学位相シフタの電極構造の他の実施例を示す構成図である。図中符号450および451は電極、符号452は共通のアース、符号453は導波路を示している。
【0252】
TEモードに関しては、第1の電極450に電圧を与えたとき、透過中心波長は与えた電圧の2乗に比例して短波長シフトした。一方、第2の電極451に電圧を与えたときは、長波長シフトした。TMモードに関しては、透過中心波長は逆方向にシフトした。TMモードは、コアに電界を0〜0.17V/μmを与えることで、透過中心波長は1,545〜1,565nmの範囲で可変した。また、透過中心波長変化に伴う挿入損失およびクロストークの顕著な増加は認められなかった。
【0253】
(実施例3)
上述した実施例2と同様に、図43の波長可変フィルタを作製する。位相シフタ用電極として、図46に示す構成の電極を用いる。図46は、本発明に係る波長可変フィルタ用の電気光学位相シフタの電極構造の他の実施例を示す平面図である。図中符号460および461は電極、符号462は共通のアース、符号463は導波路を示している。
【0254】
TEモードに関しては、第1の電極460に電圧を与えたとき、透過中心波長は与えた電圧の2乗に比例して短波長シフトした。一方、第2の電極461に電圧を与えたときは、長波長シフトした。TMモードに関しては、逆方向にシフトした。TMモードは、コアに加電界を0〜0.17V/μmを与えることで、透過中心波長は1,545〜1,565nmの範囲で可変した。また、透過中心波長変化に伴う挿入損失およびクロストークの顕著な増加は認められなかった。
【0255】
(実施例4)
実施例4の波長可変フィルタは、実施例1の波長可変フィルタと同等の構成であるが、光導波路がBTO結晶等で作製されている点が異なる。このような構成の波長可変フィルタを作製し、その動作を確認した。
【0256】
実施例4の波長可変フィルタにおいて、BTO導波路部分を110℃に制御して動作させると、実施例1の波長可変フィルタと同様のフィルタ特性が得られた。また、BTOとSTOを0.73:0.27の割合で混合した、Ba0.73Sr0.27TiO3の単結晶からなる導波路を作製し、これを用いて同様な波長可変フィルタを作製する。この場合、導波路温度10℃にて、BTOの導波路を用いた場合と同様なフィルタ特性が得られる。その他、PLZTを導波路材料とした波長可変フィルタでも同様な動作が可能であった。
【0257】
第4の実施形態に係る波長可変フィルタでは、KTNやKLTN等に対してキュリー転移温度近傍で動作させるために、温度コントローラを備えることができる。温度コントローラは、ペルチェ素子であっても良い。
【0258】
以上説明したように、第4の実施形態によれば、立法晶で2次の電気光学効果を有する誘電体結晶であるKTNおよびKLTNからなる組成の結晶材料を基本とした光導波路を用いて、高速低電圧駆動のアレイ光導波路格子波長可変フィルタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】本発明の一実施形態に係る光スイッチの構成図である。
【図2】第1図の光スイッチのマッハツェンダ干渉計の一方の光導波路に形成した位相変調部分を示す構成図である。
【図3】図3A:第2図のIIIA−IIIA線矢視断面図である。 図3B:第2図のIIIB−IIIB線矢視断面図である。
【図4】第3図AおよびBの位相変調部における電界の印加による屈折率変化を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る光スイッチの動作特性を示すグラフである。
【図6】本発明の本実施形態に係る光スイッチの位相変調部分の構成を示す図である。
【図7】第6図のVII−VII線矢視断面に該当し、櫛型電極を用いた位相変調部分の電界方向を示す図である。
【図8】第7図の位相変調部分における電界の印加による屈折率変化を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る光スイッチの構成図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る方向性結合型光分岐素子の分岐比が1:1となる典型的な条件を示したグラフである。
【図11】本発明の一実施形態に係る分岐比可変導波路型分岐素子の構成図である。
【図12】第11図における方向性結合器の一方の光導波路に形成した位相変調部分を示す構成図である。
【図13】図13A:第12図のXIIIA−XIIIA断面図である。 図13B:第12図のXIIIB−XIIIB断面図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る光スイッチの動作特性を示すグラフである。
【図15】本発明の一実施形態に係る16×16のマトリックススイッチの概略図である。
【図16】本発明の一実施形態に係る導波路を示す構成図である。
【図17】本発明の一実施形態に係る1×2デジタル光スイッチの構成図である。
【図18】図18A:第17図のXVIIIA−XVIIIAA線断面図であり、 図18B:第17図中の櫛形電極の平面図である。
【図19】本発明の一実施形態に係る電界印加法(基板平行)を示す説明図である。
【図20】本発明の一実施形態に係る1×2偏波スプリッタ(電界基板平行印加)の構成図である。
【図21】図21A:本発明の一実施形態に係る1×2偏波無依存光スイッチ(3段接続、電界基板平行印加)の説明図である。 図21B:本発明の一実施形態に係る1×2偏波無依存光スイッチ(3段接続、電界基板平行印加)の説明図である。
【図22】図22A:本発明の一実施形態に係る1×2偏波無依存光スイッチ(5段接続、電界基板平行印加)の説明図である。 図22B:本発明の一実施形態に係る1×2偏波無依存光スイッチ(5段接続、電界基板平行印加)の説明図である。
【図23】本発明の一実施形態に係る電界印加法(基板垂直)を示す説明図である。
【図24】本発明の一実施形態に係る1×2偏波スプリッタ(電界基板垂直印加)の構成図である。
【図25】図25A:本発明の一実施形態に係る1×2偏波無依存光スイッチ(3段接続、電界基板垂直印加)の説明図である。 図25B:本発明の一実施形態に係る1×2偏波無依存光スイッチ(3段接続、電界基板垂直印加)の説明図である。
【図26】図26A:本発明の一実施形態に係る1×2偏波無依存光スイッチ(5段接続、電界基板垂直印加)の説明図である。 図26B:本発明の一実施形態に係る1×2偏波無依存光スイッチ(5段接続、電界基板垂直印加)の説明図である。
【図27】本発明の一実施形態に係る導波路を示す構成図である。
【図28】図28A:本実施形態に係る導波路の斜視図である。 図28B:第28A図のXXVIIIB−XXVIIIB線切断断面図である。
【図29】図29A:本発明の一実施形態に係る導波路の斜視図である。 図29B:第29A図のXXIXB−XXIXB線切断断面図である。
【図30】図30A:本発明の一実施形態に係る導波路の斜視図である。 図30B:第29A図のXXXB−XXXB線切断断面図である。
【図31】本発明の一実施形態に係る光変調器の構成図である。
【図32】本発明の一実施形態に係る光変調器の構成図である。
【図33】本発明の一実施形態に係る光変調器の構成図である。
【図34】本発明の一実施形態に係る光変調器の構成図である。
【図35】図35A本発明の一実施形態に係る導波路電気光学位相シフタを説明するための斜視図である。 図35B:第35A図のXXXVB−XXXVB線断面図である。
【図36】図36A:本発明の一実施形態に係る導波路電気光学位相シフタを説明するための斜視図である。 図36B:第36A図のXXXVIB−XXXVIB線断面図である。
【図37】図37A:本発明の一実施形態に係る導波路電気光学位相シフタを説明するための斜視図である。 図37B:第37A図のXXXVIIB−XXXVIIB線断面図である。
【図38】図38A:本発明の一実施形態に係る導波路電気光学位相シフタを説明するための斜視図である。 図38B:第38A図のXXXVIIIB−XXXVIIIB線断面図である。
【図39】本発明の一実施形態に係る光変調器の断面図である。
【図40】本発明の一実施形態に係る光変調器の断面図である。
【図41】本発明の一実施形態に係る光変調器の断面図である。
【図42】本発明の一実施形態に係る光変調器の断面図である。
【図43】本発明の一実施形態に係る導波路電気光学位相シフタを具備した波長可変フィルタの構成図である。
【図44】本発明の一実施形態に係る波長可変フィルタ用の電気光学位相シフタの電極構造を示す構成図である。
【図45】本発明の一実施形態に係る波長可変フィルタ用の電気光学位相シフタの電極構造を示す構成図である。
【図46】本発明の一実施形態に係る波長可変フィルタ用の電気光学位相シフタの電極構造を示す構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
KTaxNb1-x3(0<x<1)およびKxLi1-xTayNb1-y3(0<x<1,0<y<1)の少なくとも一方からなる組成の結晶材料である、複数の三次元光導波路と、該三次元光導波路上に設けられた電極とからなるアレイ光導波路を有するアレイ光導波路格子波長可変フィルタであって、
前記三次元光導波路の1本に対して、該三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極が配置されている導波路電気光学位相シフタを有することを特徴とするアレイ光導波路格子波長可変フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のアレイ光導波路格子波長可変フィルタにおいて、
前記三次元光導波路上に1つの電極が配置されている導波路電気光学位相シフタを有することを特徴とするアレイ光導波路格子波長可変フィルタ。
【請求項3】
請求項1に記載のアレイ光導波路格子波長可変フィルタにおいて、
前記三次元光導波路に沿って電極の正極及び負極が交互に配置されている導波路電気光学位相シフタを有することを特徴とするアレイ光導波路格子波長可変フィルタ。
【請求項4】
少なくとも1本の入力ポートチャネル光導波路と、
光路長が互いに異なるチャネル光導波路からなるチャネル光導波路アレイと、
少なくとも1本の出力ポートチャネル光導波路と、
前記入力ポートチャネル光導波路及び前記チャネル光導波路アレイを結ぶ第1のスラブ光導波路と、
前記出力ポートチャネル光導波路及び前記チャネル光導波路アレイを結ぶ第2のスラブ光導波路と、
前記チャネル光導波路アレイの一部からなり、KTaxNb1-x3(0<x<1)
およびKxLi1-xTayNb1-y3(0<x<1,0<y<1)の少なくとも一方からなる組成の第1の結晶材料であり、コア厚を有するコアと、前記第1の結晶材料とは異なる屈折率を有するKTaxNb1-x3(0<x<1)およびKxLi1-xTayNb1-y3(0<x<1,0<y<1)の少なくとも一方からなる組成の第2の結晶材料であるクラッドとを備えた三次元光導波路と、前記三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極とを備え、前記コアは、前記コアの下面が前記クラッドの下面に対して第1の距離であり、前記コアの上面が前記クラッドの上面に対して第2の距離になるように、前記クラッドに埋め込まれ、前記クラッドは、0≦第1の距離,第2の距離≦3×コア厚の範囲のクラッド厚を有する導波路電気光学位相シフタとを備えることを特徴とするアレイ光導波路格子波長可変フィルタ。
【請求項5】
少なくとも1本の入力ポートチャネル光導波路と、
光路長が互いに異なるチャネル光導波路からなるチャネル光導波路アレイと、
少なくとも1本の出力ポートチャネル光導波路と、
前記入力ポートチャネル光導波路及び前記チャネル光導波路アレイを結ぶ第1のスラブ光導波路と、
前記出力ポートチャネル光導波路及び前記チャネル光導波路アレイを結ぶ第2のスラブ光導波路と、
KTaxNb1-x3(0<x<1)およびKxLi1-xTayNb1-y3(0<x<1,0<y<1)の少なくとも一方からなる組成の第1の結晶材料であり、コア幅を有するコアと、前記第1の結晶材料とは異なる屈折率を有するKTaxNb1-x3(0<x<1)およびKxLi1-xTayNb1-y3(0<x<1,0<y<1)の少なくとも一方からなる組成の第2の結晶材料であるクラッドとを備えた三次元光導波路と、前記三次元光導波路を挟んで平行に対向する2つの電極とを備え、前記コアは、前記コアの上面が前記クラッドの上面に対して第1の距離になるように、前記クラッドに埋め込まれ、前記クラッドは、0≦第1の距離≦3×コア幅の範囲のクラッド厚を有する導波路電気光学位相シフタと備えることを特徴とするアレイ光導波路格子波長可変フィルタ。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載のアレイ光導波路格子波長可変フィルタにおいて、
前記KTaxNb1-x3またはKxLi1-xTayNb1-y3の温度を、該KTaxNb1-x3またはKxLi1-xTayNb1-y3に対する正方晶から立方晶への相転移温度近傍に制御する温度コントローラをさらに備えることを特徴とするアレイ光導波路格子波長可変フィルタ。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載のアレイ光導波路格子可変フィルタにおいて、
前記電極による電界印加方向は、前記三次元光導波路に対して所定の結晶軸方向であることを特徴とするアレイ光導波路格子可変フィルタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2008−65354(P2008−65354A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297839(P2007−297839)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【分割の表示】特願2005−504298(P2005−504298)の分割
【原出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】