説明

注入器用補助具及び注入器

【課題】注入器を握った指を固定できる、注入器用補助具並びに注入器を提供する。
【解決手段】注入器用補助具1は、両端に開口部3が形成された円筒形状の本体2と、本体2の外側表面に突出形成されると共に、互いに本体2の長手方向において対向する一対の突出部4を備える。本体2は、一端に第1の突出部4Aが突出形成されていると共に、他端の内側表面に突起部5が形成された第1の本体2Aと、第1の本体2Aの外側表面に同軸状にかつスライド可能に取付けられると共に、第1の本体2A側とは反対側の端部の外側表面に第2の突出部4Bが突出形成された第2の本体2Bとを有する。所定の力即ち摩擦力より大きい力を加えることで両者はスライドし、本体2を伸縮させることができる。本体2は、両端に突出部4が突出形成されていると共に、突出部4の対向方向に伸縮可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注入器用補助具及び注入器に関する。詳しくは、インスリンなどの薬剤を自己注入するための注入器用補助具及び注入器に係るものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者は、体内のインスリン作用の不足を補うために、インスリンを毎日決められた時間に皮下注入する療法であるインスリン療法を実施している。
【0003】
また、インスリン療法は、患者自身が注入器を操作して行なうことが多く、患者自身によるインスリン注入を補助するための器具が幾つか提案されている。例えば特許文献1には、図5に示すような注入用補助具が記載されている。即ち、特許文献1に記載の注入用補助具101は、注入器を所定の角度に載置させる台座102と、台座102に設けた固定用バンド103とを備える。
【0004】
ここで、台座102の上面は、所定の角度に傾斜した傾斜面111になっており、傾斜面111には、傾斜方向に沿って全長にわたり2本の突条112が設けられ、突条112の間には溝部113が形成されている。
そして、固定用バンド103を患者の大腿部に巻き付けて固定し、溝部113に注入器を載置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−22745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の注入用補助具は、台座と、台座に設けた固定用バンドを備えているので、持ち運ぶときに嵩張ってしまい、また、インスリンを注入する際には、固定用バンドを大腿部に固定する必要があった。
【0007】
また、仮に補助具を用いずに患者自身がインスリン注入を行なう場合でも、患者は、注入器をしっかりと掴むために、注入器を、第二指(示指)と、第三指(中指)と、第四指(薬指)と、第五指(小指)と、手のひらとで握り、第一指(拇指)で押部材を押すが、患者に著しい握力低下が起こると、第二指〜第五指と手のひらで注入器を握る力が不足してしまうから、押部材を押した方向に注入器が滑ってしまい、押部材を充分に押せないことがあった。
【0008】
また、押部材を押す前も、第二指〜第五指と手のひらで注入器を握る力が不足してしまうから、患者の手が注入器に沿って滑り落ちてしまう場合もあった。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、注入器を握った指を固定できる、注入器用補助具並びに注入器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の注入器用補助具は、両端に開口部が形成された筒形状の本体と、該本体の外側表面に突出形成されると共に、互いに前記本体の長手方向において対向する一対の突出部とを備える。
【0011】
ここで、本体の外側表面に突出形成されると共に、互いに本体の長手方向において対向する一対の突出部によって、本体を、第二指〜第五指と手のひらで握ったときに、指を挟むことができる。
【0012】
また、本発明の注入器用補助具において、本体は、両端に突出部が突出形成されていると共に、突出部の対向方向に伸縮可能に構成された場合、伸縮させることで手の大きさに合わせて突出部の間の距離を調節することができる。
【0013】
また、本発明の注入器用補助具において、本体が、一端に第1の突出部が突出形成されていると共に、他端の内側表面に突起部が形成された第1の本体と、第1の本体の外側表面に同軸状にかつスライド可能に取付けられると共に、外側表面に第2の突出部が突出形成された第2の本体とを有するものとすることができる。
【0014】
また、上記の目的を達成するために、本発明の注入器は、注入器本体と、両端に開口部が形成されると共に、前記注入器本体を挿入可能に構成された筒形状の補助具と、該補助具の外側表面に突出形成されると共に、互いに前記補助具の長手方向において対向する一対の突出部とを備える。
【0015】
ここで、補助具の外側表面に突出形成されると共に、互いに補助具の長手方向において対向する一対の突出部によって、注入器本体を挿入した補助具を、第二指〜第五指と手のひらで握ったときに、指を挟むことができる。
【0016】
また、本発明の注入器において、注入器本体の一端に注入ボタンが設けられ、突出部の一つが、注入ボタンから2cm以内の距離に位置する場合、注入器本体を挿入した補助具を、第二指〜第五指と手のひらで握った状態で、注入ボタンを押す拇指に力が入りやすい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る注入器用補助具は、注入器本体に取付けられて、注入器を握った指を固定できる。
本発明に係る注入器は、注入器を握った指を固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の注入器用補助具の一例を示す概略図である。
【図2】図1に示した本発明の注入器用補助具の概略分解図である。
【図3】注入器本体を本発明の注入器用補助具に挿入する様子を示す概略図である。
【図4】本発明の注入器を使用する様子を説明する概略図である。
【図5】従来の注入用補助具を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明の注入器用補助具の一例を示す概略図である。また、図2は、図1に示した本発明の注入器用補助具の概略分解図である。
【0020】
本発明の注入器用補助具1は、両端に開口部3が形成された円筒形状の本体2を備える。また、本発明の注入器用補助具1は、本体2の外側表面に突出形成されると共に、互いに本体2の長手方向において対向する一対の突出部4を備える。
【0021】
また、本体2は、一端に第1の突出部4Aが突出形成されていると共に、他端の内側表面に突起部5が形成された第1の本体2Aと、第1の本体2Aの外側表面に同軸状にかつスライド可能に取付けられると共に、第1の本体2A側とは反対側の端部の外側表面に第2の突出部4Bが突出形成された第2の本体2Bとを有する。
【0022】
ここで、第2の本体2Bの内径は、第1の本体2Aの外径と略同じであり、両者の接触面(第1の本体2Aの外側表面と第2の本体2Bの内側表面)における摩擦によって、第1の本体2Aと第2の本体2Bは通常、一定の位置に留まっている。
そして、所定の力即ち摩擦力より大きい力を加えることで両者はスライドし、本体2を伸縮させることができる。
【0023】
即ち、本体2は、両端に突出部4が突出形成されていると共に、突出部4の対向方向に伸縮可能に構成されている。
【0024】
また、図に示すように、第1の突出部4Aは、第1の本体2Aに対して略垂直に突出形成された領域と、この領域から連続して第2の突出部4Bへ向けて湾曲した領域とを有しており、第2の突出部4Bは、第2の本体2Bに対して略垂直に突出形成された領域と、この領域から連続して第1の突出部4Aへ向けて湾曲した領域とを有する。
【0025】
即ち、第1の突出部4Aと第2の突出部4Bは、第1の本体2Aと第2の本体2Bを握った指の形に合うように形成されている。
【0026】
また、第1の本体2Aの他端の内側表面に形成された突起部5は、図2に示すように、第1の本体2Aの内側表面に沿って円弧状に形成されていると共に、突起部5には、直径方向に対向する位置に2つの切り欠き部5Aが形成されている。
【0027】
また、第1の本体2Aは、第2の本体2Bに嵌め合わせているだけなので、図2に示すように、第1の本体2Aと第2の本体2Bは、分離することができる。
【0028】
ここで、本発明の注入器用補助具は、両端に開口部が形成された筒形状の本体と、本体の外側表面に突出形成されると共に、互いに本体の長手方向において対向する一対の突出部とを備えるのであれば、必ずしも本体の両端に突出部が形成されていなくてもよい。
【0029】
しかし、両端に突出部があれば、突出部も本体を支えることができるので、一端を下にして本発明の注入器用補助具を安定して立たせやすいので好ましい。
【0030】
また、本発明の注入器用補助具は、両端に開口部が形成された筒形状の本体と、本体の外側表面に突出形成されると共に、互いに本体の長手方向において対向する一対の突出部とを備えるのであれば、必ずしも本体が突出部の対向方向に伸縮しなくてもよい。
【0031】
しかし、本体が突出部の対向方向に伸縮すれば、手の大きさに合わせて突出部の間の距離を調節することができるので好ましい。
【0032】
図3は、注入器本体を本発明の注入器用補助具に挿入する様子を示す概略図である。
ここで、注入器本体7は、ダイアル表示用開口部8と、注入器本体7の一端から注入器本体7内に挿入されると共にダイアル10が表示されて回転により前後方向に移動可能な軸部材9を有する。
【0033】
また、注入器本体7は、軸部材9の一端に取付けられていると共に長手方向に対して垂直方向の長さが軸部材9の外径よりも長いつまみ部材11と、つまみ部材11に取付けられていると共にインスリンを注入するための注入ボタン12を有する。
【0034】
さらに、注入器本体7は、注入器本体7の他端に取付けられていると共にインスリンが充填されたインスリンカートリッジ13Aが納められた収納体13と、収納体13の端部に取付けられた、注射針が取付けられる注射針取付部14と、収納体13の外側表面に注入器本体7の他端から離れて突出形成された凸部16とを有する。
【0035】
ここで、収納体13の外径は、注入器本体7の外径よりも小さいので、注入器本体7と収納体13との間で段差が形成される。
また、凸部16の突出高さは、段差高さと略同じか、段差高さよりも低い。
【0036】
そして、注射針取付部14を第1の本体2Aの一端の開口部へ向けて、注入器本体7を本発明の注入器用補助具1の本体2に挿入する。
【0037】
第1の本体2Aの内径は、注入器本体7の外径よりも少し大きいので、収納体13や、凸部16や、注入器本体7は、第1の本体2A内を通過するが、第1の本体2Aの他端の内側表面には突起部5が形成されており、しかも第1の本体2Aの直径方向における突起部5間の距離は、収納体13の外径と略同じである。
【0038】
従って、凸部16は、突起部5に当たる位置にあるが、注入器本体7を回転させて、切り欠き部5Aに通して第1の本体2Aの外側へ出ることができ、また、収納体13は突起部5に当たることなく第1の本体2Aの外側へ出ることができる。
一方、注入器本体7の外径は、収納体13の外径より大きく、また、第1の本体2Aの直径方向における突起部5間の距離は、収納体13の外径と略同じなので、注入器本体7の端部が突起部5に当たり、注入器本体7は第1の本体2Aの外側へ出ることができない。
【0039】
また、注入器本体7を回転させて、第1の本体2Aの外側へ出た凸部16を突起部5に当たる位置に移動させることで、凸部16や収納体13が再び第1の本体2A内に戻ることを防止できる。
従って、注入器本体7は、第1の本体2Aの長手方向においてロックされた(移動しない)状態となる。
【0040】
なお、収納体13の一部や凸部16は、第2の本体2B内に位置している。
【0041】
このように、本発明の注入器用補助具に注入器本体が挿入された状態の、本発明の注入器が得られる。なお、本発明の注入器において、必ずしも、注入器本体は注入器用補助具に挿入された状態でなくてもよい。
また、図4は、本発明の注入器を使用する様子を説明する概略図である。
【0042】
図4に示すように、本発明の注入器6は、注入器本体が挿入された注入器用補助具1と、注入器用補助具1の外側表面に突出形成されると共に、互いに注入器用補助具1の長手方向において対向する一対の突出部(第1の突出部4Aと第2の突出部4B)4を備えており、注入器6の先端には注射針15が取付けられている。
【0043】
そして、第1の突出部4Aと第2の突出部4Bの間に第二指〜第五指が入るように、注入器用補助具1を第二指〜第五指と手のひらで握り、第一指で、注入ボタン12を押す。
【0044】
このとき、第1の突出部4Aと、注入器本体の一端に設けられた注入ボタン12との間の距離Aは、2cm以内である。
【0045】
ここで、本発明の注入器が、注入器本体と、両端に開口部が形成されると共に、注入器本体を挿入可能に構成された筒形状の補助具と、補助具の外側表面に突出形成されると共に、互いに補助具の長手方向において対向する一対の突出部とを備えるのであれば、必ずしも突出部の一つ(第1の突出部)は、注入ボタンから2cm以内の距離に位置していなくてもよい。
【0046】
しかし、突出部の一つが、注入ボタンから2cm以内の距離に位置するのであれば、注入器本体を挿入した補助具を、第二指〜第五指と手のひらで握った状態で、注入ボタンを押す拇指(第一指)に力が入りやすいので好ましい。
【0047】
また、本発明の注入器を用いてインスリンを注入する例を説明したが、その他の薬剤、例えば成長ホルモン剤や、骨粗しょう症治療薬も注入できることは勿論である。
【0048】
以上のように、本発明の注入器用補助具は、本体の外側表面に突出形成されると共に、互いに本体の長手方向において対向する一対の突出部を備えているので、本体を、第二指〜第五指と手のひらで握ったときに、指を挟むことができる。
【0049】
従って、本発明の注入器用補助具は、注入器本体に取付けられて、注入器を握った指を固定できる。
【0050】
また、本発明の注入器も、補助具の外側表面に突出形成されると共に、互いに補助具の長手方向において対向する一対の突出部を備えているので、注入器本体を挿入した補助具を、第二指〜第五指と手のひらで握ったときに、指を挟むことができる。
【0051】
従って、本発明に係る注入器は、注入器を握った指を固定できる。
【0052】
また、本発明の注入器用補助具は、本体が、突出部の対向方向に伸縮可能に構成されているので、手の大きさに合わせて突出部の間の距離を調節することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 注入器用補助具
2 本体
2A 第1の本体
2B 第2の本体
3 開口部
4 突出部
4A 第1の突出部
4B 第2の突出部
5 突起部
5A 切り欠き部
6 注入器
7 注入器本体
8 ダイアル表示用開口部
9 軸部材
10 ダイアル
11 つまみ部材
12 注入ボタン
13 収納体
13A インスリンカートリッジ
14 注射針取付部
15 注射針
16 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に開口部が形成された筒形状の本体と、
該本体の外側表面に突出形成されると共に、互いに前記本体の長手方向において対向する一対の突出部とを備える
注入器用補助具。
【請求項2】
前記本体は、両端に前記突出部が突出形成されていると共に、前記突出部の対向方向に伸縮可能に構成された
請求項1に記載の注入器用補助具。
【請求項3】
前記本体が、一端に第1の突出部が突出形成されていると共に、他端の内側表面に突起部が形成された第1の本体と、
前記第1の本体の外側表面に同軸状にかつスライド可能に取付けられると共に、外側表面に第2の突出部が突出形成された第2の本体とを有する
請求項1または請求項2に記載の注入器用補助具。
【請求項4】
注入器本体と、
両端に開口部が形成されると共に、前記注入器本体を挿入可能に構成された筒形状の補助具と、
該補助具の外側表面に突出形成されると共に、互いに前記補助具の長手方向において対向する一対の突出部とを備える
注入器。
【請求項5】
前記注入器本体の一端に注入ボタンが設けられ、
前記突出部の一つが、該注入ボタンから2cm以内の距離に位置する
請求項4に記載の注入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−63152(P2013−63152A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203152(P2011−203152)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【特許番号】特許第4910075号(P4910075)
【特許公報発行日】平成24年4月4日(2012.4.4)
【出願人】(501064147)
【出願人】(501064158)
【Fターム(参考)】