説明

注出キャップ

【課題】開封した状態で逆さまにしても内容物がこぼれることなく、内容物を取り出すことができる新規の注出キャップを提供する。
【解決手段】本発明の注出キャップ1は、容器20の口部21に固定される固定筒2と、口部21上端に配置されるとともに固定筒2に一体に設けられた天壁部3と、天壁部3から一体に起立してその内側に容器に通じる通路Rを形成する筒体部4と、筒体部4に形成された開口部Aを取り外し可能に密閉する封止栓8とを備える。筒体部4は、軸線Oを挟んで対向する位置に薄肉部4aを備え、当該薄肉部4aにそれぞれ、本体容器30の口部31に挿入したとき、当該口部31の上端に接触したのち、口部31の内周面31fに沿って折れ曲がるレバー部5を有するとともに、当該レバー部5の折れ曲がりに追従して通路Rを開口する障壁6を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、一方の容器に充填された内容物を他方の容器に詰め替える際に用いられる注出キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
詰め替えを行う手段としては、例えば、内容物の充填が行われる本体容器の口部に挿入される挿入口部を有し、この挿入口部の上部に切断可能な薄肉部を介してもぎり栓を設けるとともに、当該挿入口部を倒立させて他の容器口部に挿入したとき、当該倒立状態が維持されるように、口部内周面に弾性圧接する羽根部を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010−126220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように詰め替え容器を倒立させて本体容器の口部に挿し込むことにより、内容物を詰め替える方法は、ポンプ付き容器に代表される据え置きタイプに有効である。
【0005】
しかしながら、上述した従来のものは、もぎり栓を取った詰め替え容器を倒立させて、本体容器に挿し込むまでの間に、内容物がこぼれてしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的とするところは、筒体部を開封状態で逆さまにしても内容物がこぼれることなく、当該筒体部を通して内容物を取り出すことができる新規の注出キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、容器の口部に固定される固定筒と、容器の口部上端に配置されるとともに固定筒に一体に設けられた天壁部と、当該天壁部から一体に起立してその内側に容器に通じる通路を形成する筒体部と、当該筒体部に形成された開口部を取り外し可能に密閉する封止栓とを備える注出キャップであって、
筒体部は、軸線を挟んで対向する位置に薄肉部を備え、
当該薄肉部にそれぞれ、他の容器の口部に挿入したとき、当該口部の上端に接触したのち、口部の内周面に沿って折れ曲がるレバー部を有するとともに、
当該レバー部の折れ曲がりに追従して、前記通路を開口する障壁を有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、前記レバー部は、前記障壁よりも厚みを有するものであることが好ましい。また、同レバー部は、その外縁部に傾斜面を備えることが好ましい。
【0009】
また、前記封止栓は、切断可能な連結部を介して繋がるものは勿論、筒体部に対して開閉可能に繋がる蓋体と、この蓋体の閉じ状態を固定する固定カバーとを有し、当該固定カバー及び蓋体を切断可能な連結部を介して筒体部に連結したものとすることができる。
【0010】
天壁部には、筒体部から放射状に伸びる凸部又は凹部を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る、筒体部には、軸線を挟んで対向する位置に薄肉部が設けられており、この薄肉部にはそれぞれ、筒体部の内側に形成された通路内での障害物となる障壁が存在する。このため、封止栓を取り外したのち、容器ごと逆さまにしても、当該通路を通しての、内容物の漏れを阻止する。
【0012】
その一方で、上記障壁は、他の容器の口部に挿入したとき、当該口部の上端に接触したのち、口部の内周面に沿って折れ曲がるレバー部に追従して前記通路を開口する。このため、筒体部を他の容器の口部に挿入すれば、筒体部の内側に形成された通路を通して内容物を取り出すことができる。
【0013】
従って、本発明によれば、筒体部を開封した状態で逆さまにしても内容物がこぼれることなく、当該筒体部を通して内容物を取り出すことができる新規の注出キャップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明である注出キャップの一形態であって、当該キャップを詰め替え容器に採用した状態を一部断面で示す図である。
【図2】(a)は、図1のX矢視図であり、(b)は、(a)のY−Y断面図である。
【図3】同形態に係る詰め替え容器の未開封状態を示す平面図である。
【図4】同形態に係る詰め替え容器の開封後状態を示す平面図である。
【図5】同形態に係る詰め替え容器を用いて本体容器に内容物を詰め替える直前状態を示す縦断面図である。
【図6】同形態に係る詰め替え容器を用いて本体容器に内容物を詰め替えるときの状態を示す縦断面図である。
【図7】本体容器の一例である、ポンプ容器を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明である、注出キャップの一形態を詳細に説明する。
【0016】
図中、符号1は、本発明の一形態であって、内容液Cが充填された詰め替え容器20に適用される合成樹脂製の注出キャップである。注出キャップ1は、詰め替え容器20の口部21に固定される固定筒2と、口部21上端に配置されるとともに固定筒2に一体に設けられた天壁部3と、この天壁部3から一体に起立する筒体部4とを備える。
【0017】
筒体部4の内側には通路Rが形成されている。また、天壁部3の裏面には、口部21の内周面21fを密封保持する筒状のシール部3aが一体に垂下し、容器20の充填空間S20を通路Rに通じさせる。更に、天壁部3には、4つの凸部3bが設けられている。凸部3bはそれぞれ、筒体部4から放射状に伸びる。
【0018】
筒体部4は、図1に示すように、軸線Oを挟んで対向する位置に2つの薄肉部4aを備える。薄肉部4aにはそれぞれ、レバー部5が一体に設けられている。レバー部5は、図1等に示すように、外向きに突出する板状の部材であって、その外縁部5aは傾斜面で構成されている。傾斜面は、筒体部4の先端に向かって先細りになるように傾斜する。
【0019】
レバー部5には、薄肉部4aを介して、通路R内での障害物となる障壁6が一体に設けられている。障壁6は、図2(b)等に示すように、軸線Oに向かって内向きに突出する板状の部材である。障壁6はそれぞれ、その内縁部6aの相互間に微小隙間を形成する。加えて、筒体部4の内周面4fには、障壁6の側縁部6bとの間に微小隙間を形成する突出部7が一体に設けられている。これにより、通路R内には、H字形状の開口部S が形成される。開口部Sは、H字形状に形作られた薄い隙間で構成されたスリットであることで、詰め替え容器20ごと注出キャップ1を逆さまにしても、内容液Cの表面張力によって、開口部Sを通しての漏れを阻止する。
【0020】
また、障壁6は、レバー部5に対して薄肉部4aを介して一体に設けられていることから、レバー部5が薄肉部4aを基点に折れ曲がると、その折れ曲がりに追従して薄肉部4aを基点に一体に揺動する。即ち、レバー部5が薄肉部4aを基点に折れ曲がると、障壁6は、それに追従して薄肉部4aを基点に開口部Sを大きく開く。このため、レバー部5が薄肉部4aを基点に折れ曲がると、開口部Sを大きく開くことで、内容液Cの取り出しが可能となる。
【0021】
本形態では、図5及び図6に示すように、レバー部5は、薄肉部4aから、本体容器30の口部31に挿入したとき、当該口部31の上端に接触したのち、口部31の内周面31fに沿って折れ曲がるように延在させている。これにより、筒体部4を口部31に挿入すれば、当該口部31内にレバー部5ごと押し込んで、開口部Sを大きく開くことができる。
【0022】
符号8は、筒体部4の先端4eに形成された開口部Aを取り外し可能に密閉する封止栓である。封止栓8は、筒体部4に対して開閉可能に繋がる蓋体8aと、この蓋体8aの閉じ状態を固定する固定カバー8bとを有し、当該固定カバー8b及び蓋体8aを切断可能な連結部8c,8dを介して筒体部4に連結したものである。
【0023】
詳細には、固定カバー8bは、図2(a)に示すように、蓋体8aに設けられた突起部8a1を係止する爪部8b1を有し、蓋体8aを筒体部4に対して開放不能に固定する。連結部8cは、固定カバー8bを筒体部4に対して一体に連結する。連結部8cは、薄肉に形成されていることから、この連結部8cを切断することで、固定カバー8bを筒体部4から取り外すことができる。
【0024】
また、連結部8dは、薄肉のヒンジ部であって、蓋体8aを筒体部4に対して開閉可能に連結する。連結部8dは、薄肉に形成されていることから、この連結部8cを切断することで、蓋体8aを筒体部4から取り外すことができる。
【0025】
ここで、本形態に係る注出キャップ1付き詰め替え容器20を用いて、本体容器30に内容液Cを詰め替える作業工程を説明する。
【0026】
本形態では、使用者は先ず、図3に示す固定カバー8bを筒体部4から取り除くことで、図4に示すように、蓋体8aを開くとともに、この蓋体8aをヒンジ部となる連結部8dの切断により筒体部4から分離する。このとき、内容液Cは、開口部SがH字形状に形作られた薄い隙間で構成されていることで、詰め替え容器20ごと注出キャップ1を逆さまにしても、内容液Cの表面張力によって、開口部Sを通して漏れ難い。
【0027】
このため、図5に示すように、筒体部4を開封したのち、詰め替え容器20とともに逆さにしても、内容液Cが漏れることなく、筒体部4を本体容器30の口部31に挿入できる。
【0028】
このとき、レバー部5は、同図に示すように、口部31の上端に接触するが、筒体部4を更に押し込むと、図6に示すように、薄肉部4aが変形することから、口部31の内周面31fに沿って折れ曲がることで、障壁6も一体的に筒体部4の先端4e側に押し開かれる。これにより、開口部Sを大きく開くことで、内容液Cの取り出しが可能となる。従って、筒体部4を口部31に挿し込むだけの簡単な操作で、充填空間S20の内容液Cを、本体容器30の充填空間S30に詰め替えることができる。
【0029】
また、本形態では、天壁部3に、筒体部4から放射状に伸びる凸部3bを設けられているため、当該凸部3bは、口部31の上端と接したとき、その周方向の相互間が充填空間S30を外界に通じさせる空気置換路として機能する。このため、天壁部3に凸部3bを設ければ、筒体部4を倒立させた状態で挿し込んで、内容液Cを詰め替える場合に有効である。なお、凸部3bは、少なくとも1箇所設ければよく、また、凸部3bは凹部に置き換えても同様の作用効果を奏する。
【0030】
なお、図7は、本体容器30の適用例であり、本体容器30には、液体噴出器40が取り付けられている。液体噴出器40は、口部31に固定されるベース41を有し、ステム42を介してヘッド43が設けられた既存のポンプであり、ヘッド43に設けられたノズル44を通して詰め替えられた内容液Cを取り出すことができる。なお、符号50は、ステム42に対して着脱可能に取り付けられたストッパであり、ステム42に対して着脱可能に嵌合保持される本体51と本体51を着脱させるための把持部52を一体に備える。
【0031】
上述のように、本形態に係る、筒体部4には、軸線Oを挟んで対向する位置に薄肉部4aが設けられており、この薄肉部4aにはそれぞれ、筒体部4の内側に形成された通路R内での障害物となる障壁6が存在する。このため、封止栓8を取り外したのち、詰め替え容器20ごと逆さまにしても、当該通路Rを通しての、内容液Cの漏れを阻止する。
【0032】
その一方で、上記障壁6は、本体容器30の口部31に挿入したとき、当該口部31の上端に接触したのち、口部31の内周面31fに沿って折れ曲がるレバー部5に追従して通路R(開口部S)を開口する。このため、図6に示すように、筒体部4を口部31に挿入すれば、筒体部4の内側に形成された通路Rを通して内容液Cを取り出すことができる。
【0033】
従って、本発明によれば、筒体部4を開封した状態で逆さまにしても内容液Cがこぼれることなく、筒体部4を通して内容液Cを取り出すことができる。
【0034】
ところで、本発明に従えば、レバー部5は、障壁6と同一の厚みとすることも可能であるが、本形態では、レバー部5は、図6等からも明らかなように、障壁6よりも厚みを有する。この場合、レバー部5の強度(剛性)が高まることで、口部31を基点にした隔壁6の確実な押し開きを実現できるとともに、隔壁6の押し開きをスムースに行うことができる。
【0035】
また、本形態では、レバー部5の外縁部5aを傾斜面で構成したことで、当該外縁部5aは、口部31の内周面31fに沿った折れ曲がりを案内する。かかる構成によっても、隔壁6の押し開きをスムースに行うことができる。
【0036】
更に、封止栓8は、切断可能な連結部を介して筒体部4に繋がるもぎり栓で構成することも可能であるが、本形態では、上述のとおり、筒体部4に対して開閉可能に繋がる蓋体8aと、この蓋体8aの閉じ状態を固定する固定カバー8bとを有し、当該固定カバー8b及び蓋体8aを切断可能な連結部8c,8dを介して筒体部4に連結したから、大きな力を要することなく、比較的小さな力で楽に開封することができる。
【0037】
上述したところは、本発明の一形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、固定部2は、その内側に係合リブ2aを有し、この係合リブ2aが口部21に設けられた係合リブ21aと嵌合することで、固定保持されるものであるが、容器口部21に螺着させることもできる。但し、この場合には、容器口部21に螺着させたのち、軸線O周りの回転を阻止する回り止め手段を設けることが好ましい。回り止め手段としては、例えば、口部21に突起を設けるとともに、この突起を乗り越えて互いの相互間で挟持する2つの突起を固定部2の内側に設ける。これにより、口部21に螺着させたのち、注出キャップ1が軸線O周りに回転することを阻止できる。
【0038】
また、詰め替え容器20は、保形性を有して変形し難いハードタイプの容器は勿論、変形及び復元の可能な可撓性を有するソフトタイプの容器、或いは、内層と外層の二層を有し内層が外層に対して剥離可能な剥離容器など、様々な容器に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、容器の口部に固定される固定筒と、容器の口部上端に配置されるとともに固定筒に一体に設けられた天壁部と、当該天壁部から一体に起立してその内側に容器に通じる通路を形成する筒体部と、当該筒体部に形成された開口部を取り外し可能に密閉する封止栓とを備える注出キャップであれば、様々なものに適用することができる。また、内容物も液体に限定されることなく、粉体等の流動体に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 注出キャップ
2 固定部
3 天壁部
3b 凸部
4 筒体部
4a 薄肉部
5 レバー部
5a レバー部外縁部
6 障壁
6a 障壁内縁部
8 封止栓
8a 蓋体
8b 固定カバー部
8c 連結部
8d 連結部(ヒンジ)
20 詰め替え容器
21 容器口部
30 本体容器
31 容器口部
R 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に固定される固定筒と、容器の口部上端に配置されるとともに固定筒に一体に設けられた天壁部と、当該天壁部から一体に起立してその内側に容器に通じる通路を形成する筒体部と、当該筒体部に形成された開口部を取り外し可能に密閉する封止栓とを備える注出キャップであって、
筒体部は、軸線を挟んで対向する位置に薄肉部を備え、
当該薄肉部にそれぞれ、他の容器の口部に挿入したとき、当該口部の上端に接触したのち、口部の内周面に沿って折れ曲がるレバー部を有するとともに、
当該レバー部の折れ曲がりに追従して、前記通路を開口する障壁を有することを特徴とする注出キャップ。
【請求項2】
請求項1において、前記レバー部は、前記障壁よりも厚みを有するものであることを特徴とする注出キャップ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記レバー部は、その外縁部に傾斜面を備えることを特徴とする注出キャップ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、前記封止栓は、筒体部に対して開閉可能に繋がる蓋体と、この蓋体の閉じ状態を固定する固定カバーとを有し、
当該固定カバー及び蓋体を切断可能な連結部を介して筒体部に連結したことを特徴とする注出キャップ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、天壁部は、筒体部から放射状に伸びる凸部又は凹部を備えることを特徴とする注出キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−49450(P2013−49450A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187981(P2011−187981)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】