説明

注型絶縁物および製造方法

【課題】絶縁層の外周面に設けられる型抜き勾配の傾斜を取り除いた注型絶縁物を提供する。
【解決手段】真空バルブ12、15、26の可動側を筒状の絶縁体となる可動側絶縁部5、20で支持固定する注型絶縁物であって、可動側絶縁部5、20の外周面に、少なくとも真空バルブ12、15、26の軸方向と平行する平坦部30、32を設けたことを特徴とする。真空バルブ12、15、26は、絶縁材料で注型され、軸方向が可動側絶縁部5、20に界面接続部9、10、24で接続固定されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電源系統を構成する電気部材をエポキシ樹脂で注型した注型絶縁物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空バルブ、主回路導体のような電気部材をエポキシ樹脂で注型し、これらの注型絶縁物を組合せ、電源系統を構成した固体絶縁スイッチギヤが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種の固体絶縁スイッチギヤを図5に示すが、縦配置された側板1には、第1の電気部材2と第2の電気部材3が横配置で高さ方向に取付け固定されている。側板1は、床板4に垂直に固定されている。
【0004】
第1の電気部材2には、第1の可動側絶縁部5が設けられ、側板1に固定されている。第1の可動側絶縁部5は、第1の連結導体6の一側面を第1の絶縁層7に埋め込んだ構成であり、第1の連結導体6を境とし、側板1側にレーストラック状の第1の開口部8、反側板1側に二つのテーパ状の第1、第2の界面接続部9、10が設けられている。第1の絶縁層7の外周には、図示左右方向の中間部を頂点とし、勾配が数度の第1のテーパ部11が設けられている。第1のテーパ部11の頂点は樹脂注型金型の合わせ部となり、離型を容易にさせるための型抜き勾配である。
【0005】
第1の界面接続部9には、第1の遮断用真空バルブ12を注型した第1の遮断部13が接続されている。第1の遮断部13には、ケーブルヘッドなどの第1の電気機器14が接続されている。第2の界面接続部10には、第1の断路用真空バルブ15を注型した第1の断路部16が接続されている。第1の断路部16には、母線などの第2の電気機器17が接続されている。真空バルブ12、15の可動側には、第1の開口部8内にそれぞれ配置された第1、第2の絶縁操作ロッド18、19が連結されており、開閉操作が行われる。
【0006】
第2の電気部材3も第1の電気部材2と同様の構成であり、下方向のみを図示しているが、第2の可動側絶縁部20が設けられ、側板1に固定されている。第2の可動側絶縁部20は、第2の連結導体21の一側面を第2の絶縁層22に埋め込んだ構成であり、第2の連結導体21を境とし、側板1側に第2の開口部23、反側板1側に第3の界面接続部24が設けられている。
【0007】
第2の絶縁層22の外周には、中間部を頂点とし、数度の型抜き勾配の第2のテーパ部25が設けられている。第3の界面接続部24には、第2の遮断用真空バルブ26を注型した第2の遮断部27と、第3の電気機器28が接続されている。真空バルブ26の可動側には、第2の開口部23内に配置された第3の絶縁操作ロッド29が連結されており、開閉操作が行われる。
【0008】
このような構成において、高さ方向の寸法は、第1の可動側絶縁部5と第2の可動側絶縁部20で決定される。即ち、第1の絶縁層7の第1のテーパ部11の頂点と床板4間、および反対側の第1のテーパ部11と第2の絶縁層22の第2のテーパ部25の頂点間が最も狭い部分となり、上下方向に配置する第1の電気部材2と第2の電気部材3の高さ方向の寸法を決定するものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−41859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、型抜き勾配として設けられているテーパ部11、25を最小限の範囲とし、離型時の作業性を損なうことなく、第1の可動側絶縁部5と第2の可動側絶縁部20の高さ方向の寸法を小さくすることにある。即ち、第1、第2の絶縁層7、22の外周面に設けられる型抜き勾配の傾斜を取り除くことの可能な注型絶縁物および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、実施形態の注型絶縁物は、真空バルブの可動側を筒状の絶縁体で支持固定する注型絶縁物であって、前記絶縁体の外周面に、少なくとも前記真空バルブの軸方向と平行する平坦部を設けたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1に係る固体絶縁スイッチギヤの構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る注型絶縁物を注型する樹脂注型金型の断面図。
【図3】本発明の実施例1に係る注型絶縁物の注型手順を説明する断面図。
【図4】本発明の実施例2に係る固体絶縁スイッチギヤの構成を示す断面図。
【図5】従来の固体絶縁スイッチギヤの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
先ず、本発明の実施例1に係る注型絶縁物を図1〜図3を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る固体絶縁スイッチギヤの構成を示す断面図、図2は、本発明の実施例1に係る注型絶縁物を注型する樹脂注型金型の断面図、図3は、本発明の実施例1に係る注型絶縁物の注型手順を説明する断面図である。なお、従来と同様の構成部分は、同一符号を付した。
【0015】
図1に示すように、固体絶縁スイッチギヤは、縦配置された側板1に、第1の電気部材2と第2の電気部材3が横配置で高さ方向に取付け固定されている。側板1は、床板4に垂直に固定されている。
【0016】
第1の電気部材2には、第1の可動側絶縁部5が設けられ、側板1に固定されている。第1の可動側絶縁部5は、第1の連結導体6の一側面を第1の絶縁層7に埋め込んだ構成であり、第1の連結導体6を境とし、側板1側にレーストラック状の第1の開口部8、反側板1側に二つのテーパ状の第1、第2の界面接続部9、10が設けられており、従来方法と同様の構成である。そして、第1の絶縁層7の外周には、図示中間部に床板4と平行の第1の平坦部30が設けられ、その両側に数度の勾配を持つ第1のテーパ部31が設けられている。
【0017】
第1、第2の界面接続部9、10にも、従来と同様に、第1の遮断用真空バルブ12を注型した第1の遮断部13を介し、第1の電気機器14が接続されている。また、第2の断路用真空バルブ15を注型した第1の断路部16を介し、第1の電気機器17が接続されている。真空バルブ12、15の可動側には、それぞれ第1の開口部8内に配置された第1、第2の絶縁操作ロッド18、19が連結されており、図示しない操作機構で開閉操作が行われる。
【0018】
第2の電気部材3も従来と同様に、下方向のみを図示しているが、第2の可動側絶縁部20が設けられ、側板1に固定されている。第2の可動側絶縁部20は、第2の連結導体21の一側面を第2の絶縁層22に埋め込んだ構成であり、第2の連結導体21を境とし、側板1側に第2の開口部23、反側板1側に第3の界面接続部24が設けられている。そして、第2の絶縁層22の外周には、図示中間部に床板4と並行の第2の平坦部32が設けられ、その両側に数度の勾配を持つ第2のテーパ部33が設けられている。
【0019】
第3の界面接続部24には、第2の遮断用真空バルブ26を注型した第2の遮断部27を介し、第3の電気機器28が接続されている。真空バルブ26の可動側には、第2の開口部23内に配置された第3の絶縁操作ロッド29が連結されており、開閉操作が行われる。
【0020】
次に、第1の電気部材2を例にとり、第1の可動側絶縁部5を注型する樹脂注型金型を図2を参照して説明する。
【0021】
図2に示すように、樹脂注型金型は、図示左右に第1の金型34と第2の金型35に二分割されている。第1の金型34には、第1のキャビティー36の図示上下に第1の入れ子37が設けられている。第1の入れ子37は、第1のキャビティー36側に第1の平坦部30を形成する第1の直線部38と第1のテーパ部31を形成する第1の傾斜部39を持っており、第1の金型34側に第1のテーパ部11と同様の傾斜を持つ第2の傾斜部40を持っている。
【0022】
第2の金型35には、第2のキャビティー41の図示上下に第2の入れ子42が設けられている。第2の入れ子42にも、第1の入れ子37と同様に、第2のキャビティー41側に第1の平坦部30を形成する第2の直線部43と第1のテーパ部31を形成する第3の傾斜部44を持っており、第2の金型35側に第1のテーパ部11と同様の傾斜を持つ第4の傾斜部45を持っている。傾斜部40、45は、金型34、35を離型するときの型抜き勾配となり、また、直線部38、43は、離型方向と平行するものとなる。
【0023】
また、第1の開口部8を形成する三分割された第3の入れ子46が設けられている。第3の入れ子46は、型ばらしのための勾配が設けられている。中央部の第3の入れ子46には、第1の連結導体6を固定するボルト47が貫通している。
【0024】
次に、注型方法を図3を参照して説明する。
【0025】
注型が完了し、第1の絶縁層7となる硬化物が形成されると、図3(a)に示すように、第1の金型34と第2の金型35を離型する。そして、第1の入れ子37、第2の入れ子42、第3の入れ子46と硬化物を一体で取出す。第1の入れ子37、第2の入れ子42は、傾斜部40、45によって金型34、35から容易に離れる。
【0026】
次に、図3(b)に示すように、第3の入れ子46を取外す。第3の入れ子46は、第1の開口部8の内面を平行にするために、三分割したもので、先ず中央部を引き抜き、次に両側を内側に移動させながら引き抜く。
【0027】
次に、図3(c)に示すように、第1の入れ子37と第2の入れ子42を図示左右方向に移動させながら内側に移動させ硬化物から取外す。これにより、外周面に軸方向と平行の第1の平坦部30と第1のテーパ部31を持った第1の絶縁層7を製造することができる。
【0028】
ここで、軸方向と平行(側板1と垂直)の第1の平坦部30を持つとは、製作誤差や組立誤差などを含み、意図的に傾斜を付けないものを指す。
【0029】
なお、可動側絶縁部5、20は、開口部8、23に絶縁操作ロッド18、19、29を収納する筒状の絶縁体と言うことができる。そして、その外周面に少なくとも軸方向と平行する平坦部30、32を設けることにより、互いの絶縁体の間隔を狭くすることができる。絶縁体には、界面接続部9、10、24を介し、軸方向に遮断部13、27、断路部16を支持固定するので、これらの遮断部13、27、断路部16の間隔を狭くすることができる。遮断部13、27、断路部16の外周には、接地層が設けられているので、近接させても絶縁的には問題はない。このため、可動側絶縁部5、20を積重ねる方向に一列配置し、電源系統を構成する固体絶縁スイッチギヤでは、高さ方向の寸法を低減させることができる。
【0030】
上記実施例1の注型絶縁物によれば、絶縁層7、22の外周面に、軸方向と平行な平坦部30、32を設けているので、床板4や隣接する可動側絶縁部5、21間を近接させて取付けることができる。このため、固体絶縁スイッチギヤの高さ方向の縮小化を図ることができる。
【実施例2】
【0031】
次に、本発明の実施例2に係る注型絶縁物図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施例2に係る固体絶縁スイッチギヤの構成を示す断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、平坦部の構成である。図4において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0032】
図4に示すように、第1の絶縁層7の外周面は、全てを軸方向と平行な第3の平坦部48としている。また、第2の絶縁層22の外周面も、全てを軸方向と平行な第4の平坦部49としている。
【0033】
上記実施例2の注型絶縁物によれば、実施例1による効果のほかに、第1、第2の絶縁層7、22の外周面を最小とすることができ、より一層の高さ方向の寸法の縮小化を図ることができる。
【0034】
以上述べたような実施形態によれば、固体絶縁スイッチギヤの高さ方向の寸法の縮小化を図ることができる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1 側板
2 第1の電気部材
3 第2の電気部材
4 床板
5、20 可動側絶縁部
6、21 連結導体
7、22 絶縁層
8、23 開口部
9、10、24 界面接続部
11、25、31、33 テーパ部
12、15、26 真空バルブ
13、27 遮断部
14、17、28 電気機器
16 断路部
18、19、29 絶縁操作ロッド
30、32、48、49 平坦部
34、35 金型
36、41 キャビティー
37、42、46 入れ子
38、43 直線部
39、40、44、45 傾斜部
47 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空バルブの可動側を筒状の絶縁体で支持固定する注型絶縁物であって、
前記絶縁体の外周面に、少なくとも前記真空バルブの軸方向と平行する平坦部を設けたことを特徴とする注型絶縁物。
【請求項2】
前記絶縁体の外周面に、型抜き勾配のテーパ部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の注型絶縁物。
【請求項3】
前記絶縁体に界面接続部を設け、前記真空バルブの可動側を接続固定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の注型絶縁物。
【請求項4】
前記絶縁体の軸方向を横配置し、これを高さ方向に積重ねることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の注型絶縁物。
【請求項5】
二分割した金型と、
前記金型に設けられたキャビティーと、
前記キャビティー内に設けられた入れ子とを有する樹脂注型金型で注型される注型絶縁物の製造方法であって、
注型完了後、先ず、前記金型を離型して硬化物と前記入れ子を一体で取出し、
次に、前記入れ子を前記硬化物から取外すことを特徴とする注型絶縁物の製造方法。
【請求項6】
前記入れ子には、前記金型側に型抜き勾配の傾斜部を設け、
前記キャビティー側に離型方向と平行な直線部を設けたことを特徴とする請求項5に記載の注型絶縁物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62956(P2013−62956A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200032(P2011−200032)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】