説明

注射痛緩和装置

【課題】簡単な構成で注射針を刺すときと抜くときの痛みを緩和させる。
【解決手段】注射器1を収容して外周に係合部6eを有して一端に注射針1dを通す第一孔6aを有するホルダ6と、ホルダの一端側に軸方向に移動自在に装着され、係合部6eに係合する被係合部10dを有して中央に注射針1dを通す第二孔10cを有する案内部材10と、この案内部材10とホルダ2の一端との間に介在して第二孔を第一孔から離脱する方向に付勢する弾性部材3とを有し、係合部6eと被係合部10dとの係合で案内部材10の移動を案内した。また、ホルダ6に、ホルダ6を回転自在に支持する把持部材8を取り付け、案内部材10をホルダの外周に嵌合する筒体10とし、係合部6eによる被係合部10dの移動軌跡Bをホルダの軸方向の中心線Aに対して傾斜させ、且つシリンダ1aをホルダ6に弾性支持するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針を刺すときと、抜くときの痛みを緩和させる注射痛緩和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ピストン、シリンダ、注射針からなる注射器で注射をするときは、注射針が刺さるときと抜くときに痛みを感じる。特に患者が自身でインスリンを注射するときは注射針の動きが分かるので痛みを強く感じてしまう。このようなこの痛みを緩和するため、注射時に注射針を振動させる技術が提案されていた。特許文献1では注射針に超音波振動を軸方向に加えて注射時の痛みを緩和するようにしている。特許文献2では注射針の軸方向と直行する方向に振動を加えて注射時の痛みを緩和するようにしている。また、特許文献3では注射針を覆って注射時に見えないようにすることで注射時の痛みを緩和するようにしている。さらに、これらとは別に、インスリン注射においては注射針の径を0.2〜0.3ミリ程度に細くしたペン型注射器が使用される。このペン型注射器では、注射針の径を細くすることで注射時の痛みを緩和している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−20843号公報
【特許文献2】特開2001−346874号公報
【特許文献3】WO2004/004809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に示された技術は、注射針に振動を与える装置が必要となり高価で構成が複雑なものとなる。また、特許文献3も、注射針の移動をモータの動力で行うため高価で構成が複雑になっている。さらに、注射器自体になんらかの改良を加えた場合、注射器の汎用性が無くなる。一方、ペン型注射器では注射針を体内から抜き出すとき、血液がシリンダ内に逆流することを防ぐため、ピストンを押しながら注射針を体内から抜き出す操作を行う。この操作は、指がピストンを押し、手先がシリンダを注射部位から引き離すという逆方向の力の操作を行うようにしている。しかもこの操作は片手で行われるため、注射針の先端がブレ易く、注射針を抜き出すときに注射針を曲げると、撓んだ注射針の先が皮膚を弾くように抜け出るので、相当の痛みを伴ってしまう。さらに、図9に示すように注射針1dを矢印方向に引き抜く際に、注射針1dは摩擦で皮膚5を富士山の形に引き上げるので、これとは別の痛みを感じさせてしまう。
また、注射針は細く形成されていても皮膚に刺し込む際に、痛点を刺激することでチクリとした鋭い痛みを感じさせる。しかもペン型注射器では注射針がむき出しとなっており、この注射針を注視しながらその根元まで皮膚に差し込むという操作が行われる。このため注射針の差し込む速さが遅くなり、このチクリの痛みを感じる時間が長くなってしまう。
本発明は、簡単な構成で注射針が刺すときと抜くときの痛みを緩和させる注射痛緩和装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の発明の注射痛緩和装置は、注射器を着脱自在に収容して外周に係合部を有して一端に注射針を通す第一孔を有するホルダ、ホルダの一端側に軸方向に移動自在に装着され前記係合部に係合する被係合部を有して中央に注射針を通す第二孔を有する案内部材、この案内部材とホルダの一端との間に介在して第二孔と第一孔とが離れる方向に付勢する弾性部材を有し、弾性部材の弾力で係合部と被係合部とが係合したとき、注射針を第一孔と第二孔との間に収容した。
【0006】
第二の発明の注射痛緩和装置は、第一の発明の注射痛緩和装置のホルダに、シリンダに弾性嵌合する嵌合部と該ホルダを回転自在に支持する把持部材とを設け、案内部材をホルダの外周に嵌合する筒体とし、係合部による被係合部の移動軌跡をホルダの軸方向の中心線に対して傾斜させた。
【0007】
第三の発明の注射痛緩和装置は、第二の発明の注射痛緩和装置の筒体の第二孔に、注射針の外径より僅かに大きい小径部と第一孔に対向する側に大径を有するテーパ面とを設けた。
【発明の効果】
【0008】
第一の発明の注射痛緩和装置では、注射器を着脱自在に収容するホルダを設けている。これにより汎用の注射器であっても、注射針はホルダと案内部材とに案内されて皮膚からの差し込みと引き出しが行える。この結果、注射針は先端がブレないので注射針を引き抜く際に、注射針の先が皮膚を弾くことがない。しかも注射針を早く差し込むことができるので、チクリとする痛みの感じる時間を短くできる。また、係合部と被係合部とが係合したとき、注射針を第一孔と第二孔との間に収容したことにより、注射針を視界から閉ざすことができる。さらに、皮膚に接する面に第一孔を当てると、第一孔の縁が注射針を引き抜く際に皮膚の引き上げることを阻止するので痛みを感じさせない。
【0009】
第二の発明の注射痛緩和装置では、ホルダを回転自在に支持する把持部材を一方の手で支持し、ホルダの外周に嵌合する筒体を他方の手で支持できる。この結果、注射を二本の手で操作でき、ピストンを押しながら注射針を抜き取る操作を安心して行える。さらに係合部による被係合部の移動軌跡をホルダの軸方向の中心線に対して傾斜させたので、注射針を皮膚に差し込むときと引き抜くとき、注射針に回転運動が与えられ、注射針の突き刺すときの鋭い痛みが緩和される。
【0010】
第三の発明の注射痛緩和装置では、第二の発明の注射痛緩和装置の第二孔に、注射針の外径より僅かに大きい小径部と第一孔に対向する側に大径を有するテーパ面とを設けた。この結果、注射針が曲がっていてもテーパ面と小径部とで矯正されるので注射針を皮膚に真っ直ぐ突き刺すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ペン型注射器1を示す側面図。
【図2】第一実施例の分解斜視図。
【図3】第一実施例の使用状態を示す断面図。
【図4】第一実施例の使用状態を示す断面図。
【図5】第二実施例の分解斜視図。
【図6】第二実施例の使用状態を示す側面図。
【図7】第二実施例の使用状態を示す側面図。
【図8】第二ホルダ2の断面図。
【図9】従来例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
注射器を着脱自在に収容して外周に係合部を有して一端に注射針を通す第一孔を有するホルダと、ホルダの一端側に軸方向に移動自在に装着され係合部に係合する被係合部を有して中央に注射針を通す第二孔を有する案内部材と、この案内部材とホルダの一端との間に介在して第二孔と第一孔とが離れる方向に付勢する弾性部材とを有し、係合部と被係合部とが係合したとき、注射針を第一孔と第二孔との間に収容した。
また、ホルダに、ホルダを回転自在に支持する把持部材を取り付け、案内部材をホルダの外周に嵌合する筒体とし、係合部による被係合部の移動軌跡をホルダの軸方向の中心線に対して傾斜させ、且つシリンダとホルダとを弾性的に支持した。
【実施例1】
【0013】
図1は本実施例で説明するペン型注射器を示す。この注射器1は円筒形のシリンダ1a内に薬液が収められており、右端のピストン1bを左方に押すとシリンダ1aの左端から薬液が押し出される構造になっている。シリンダ1aの左端には雄ネジ1cが設けられており、この雄ネジ1cに、中心に注射針1dを取り付けた合成樹脂製のナット1eがねじ込まれる。そしてナット1eは左端面に小円柱1fを突出形成しており、この小円柱1fで注射針1dを支えている。ナット1eに注射針1dを取り付けることで注射針1dの交換を容易にしている。この注射針1dは太さが0.3ミリで、小円柱1fの左端より8ミリ程度突出しており、先端は斜めにカットされている。本発明ではこのナット1eもシリンダ1aの一部として定義する。なお、ピストン1bの右端にはピストン1bに回転自在なノブ1gが取り付けられている。ペン型注射器のピストン1bは、シリンダ1aに対して所定量を回転すると、薬液を押し出す量を設定できるようにしてあり、ノブ1gを設けることでピストン1bの回転復帰を妨げないようにしている。
【0014】
図2は注射痛緩和装置の第一実施例を分解図で示す。注射器1のシリンダ1aを着脱自在に収容するホルダ2は中空の円筒体で一端は開口し、他端は円盤で塞がれている。円盤の中心には注射針1dとともに小円柱1fを通すことができる第一孔2aが開けられている。この第一孔2aの直径は、小円柱1fの直径が3ミリとすると、3.3〜3.4ミリ程度に設定される。さらにホルダ2の他端側には、ホルダ2の軸心線方向と平行の細長い角溝2b(係合部)が、ホルダ2の外周に180度の間隔で開けられている。そしてホルダ2の開口側に描いているテーパバネ3(弾性部材)は、ホルダ2の内部に収容される。テーパバネ3の隣に描いた円盤状の案内板4(案内部材)には、中央に注射針1dとともに小円柱1fを通すことができる第二孔4aが開けられ、テーパバネ3に対峙する面にテーパバネ3の小円に嵌合するボス4bが形成され、角溝2bに嵌合する凸片4c(被係合部)が外周に180度の間隔で形成されている。この第二孔4aの直径は、小円柱1fの直径が3ミリとすると、3.1〜3.3ミリ程度に設定される。そして案内板4の外径は、ホルダ2の内径より若干小さく設定されている。そして、ホルダ2の内部に収容されたテーパバネ3は、円盤と案内板4との間に挟まれて第二孔4aを第一孔2aから離れる方向に付勢する。その付勢力は、注射器1に案内板4の重力を加えた値の2倍程度に設定される。
【0015】
第一実施例の注射痛緩和装置は、ホルダ2内にテーパバネ3を収容した後、案内板4をホルダ2内に収容して凸片4cを角溝2bに嵌合させた簡単なものとなっている。そして、案内板4はテーパバネ3の弾力で開口側に押し戻され、凸片4cが角溝2bの終端に当接することで抜け止めされている。また、凸片4cは、角溝2bの全長の範囲に亘って案内板4の移動を案内する。この角溝2bの長さは、ホルダ2内に注射器1を入れてナット1eの先端がテーパバネ3の弾力で押し戻されている案内板4に当たったとき、注射針1dを第一孔2aと第二孔4aとの間に収容し、注射針1dが第一孔2aから突出しない長さに設定されている。
【0016】
図3、図4は第一実施例の注射痛緩和装置を使用する状態を示し、ホルダ2と案内板4とを断面、注射器1を仮想線で示す。図3はシリンダ1aをホルダ2に収めた状態で、ホルダ2の内周にシリンダ1aの外周が支えられ、ナット1eの小円柱1fが第二孔4aに嵌合している。このとき案内板4はテーパバネ3の弾力で開口側に押し戻され、凸片4cが角溝2bの終端に当接している。このため注射針1dは、第一孔2aよりホルダ2の内部に収まっており視界から遮られ、ホルダ2の左端に接する皮膚5には接していない。また、注射針1dがホルダ2の内部に収まることで、一方の手で第一孔2aを皮膚5に押し当てるようにホルダ2を保持できる。
【0017】
図3の状態より、他方の手で注射器1を左方に移動させると、案内板4はシリンダ1aに押されてテーパバネ3を押し縮めながら左方に移動する。そしてボス4bの先端が第一孔2aの縁に当接するとシリンダ1aの移動は阻止される。このとき注射針1dは図4に示すように第一孔2aから突出して体内に侵入している。さらにこのときシリンダ1aはホルダ2に案内され、ナット1eは案内板4に案内されて移動するので、注射針1dは体内に真っ直ぐに侵入されている。この後、ノブ1gを押してピストン1bを左方に移動させると、薬液が体内に注入される。そして、第一孔2aを皮膚5に押し当てた状態でノブ1gを左方に押した状態のままシリンダ1aを右方に移動する。このとき注射針1dはシリンダ1aがホルダ2に案内され、ナット1eが案内板に案内されて移動し、注射針1dは体内から真っ直ぐに引き出される。
【0018】
第一実施例では、ホルダ2とテーパバネ3と案内板4とで極めて簡単に注射痛緩和装置を構成することができる。そして、注射針1dはシリンダ1aがホルダ2に、ナット1eが案内板4に案内されるので注射針1dの先端がブレることがない。また、注射針1dを引き抜く際、体内から真っ直ぐに引き出されるので注射針1dの先が皮膚5を弾くことがない。そして注射針1dの移動は、注射針1dは視界から遮られ、且つ案内板4のボス4bの先端が第一孔2aの縁に当接する移動範囲に設定されているので安心して注射針1dを早く差し込むことができる。この結果、チクリとする痛みの感じる時間は短くなる。そして、第一孔2aを皮膚5に押し当てているので、注射針1dを引き抜く際に、直径が3.4ミリ以下の第一孔2aの縁は、注射針1dが皮膚5を引き上げることを阻止し、痛みを感じさない。しかも注射の操作は二本の手を使って行われるので操作の安心感が増す。しかも一般に流通しているペン型注射器をそのまま使用することができる。
【実施例2】
【0019】
図5に注射痛緩和装置の第二実施例を分解図で示す。注射器1のシリンダ1aを着脱自在に収容するホルダ6は、中空の円筒体で一端は開口し、他端は円盤で塞がれている。円盤の中心には、注射針1dとともに小円柱1fを通す第一孔6aが開けられている。このホルダ6は開口側に第一小径円筒部6b、他端側に第二小径円筒部6cが形成され両小径円筒部の間に大径円筒部6dを形成している。また、第二小径円筒部6cの他端側には、ホルダ6の軸心線Aに対して30度ほど傾斜する中心線B(図6参照)を有する細長い角溝6e(係合部)が外周に180度の間隔で開けられている。ホルダ6の内部には中空孔7aを持つゴムリング7(嵌合部)が嵌め込まれている。この中空孔7aは、ナット1eの外周に弾性嵌合してホルダ6が回転すると注射器1も回転するようにしている。ホルダ6の開口側に、大径円筒部6dを収容する長さの第一角柱8(把持部材)が描かれている。この第一角柱8の一端には、第一小径円筒部6bに嵌合する第一軸孔8aを形成し、他端には角穴8bを形成している。この角穴8bには第二小径円筒部6cに嵌合する第二軸孔9aを有する支板9が嵌合する。
【0020】
さらに第二小径円筒部6cの他端側には、第二小径円筒部6cに嵌合する第二角柱10(筒体)が配置される。この第二角柱10は、一端側に第二小径円筒部6cを収容する開口部10aが形成され、他端側は薄い四角板10bで塞がれている。この四角板10bの中心には注射針1dを通す第二孔10cが設けられている。この第二孔10cの直径は注射針1dの外径より大きく小円柱1fの外径より小さく設定されている。第二角柱10の側面には角溝6eに嵌合する突起10d(被係合部)が第二角柱10の内部に向けて突設されている。そして第二孔10cと第一孔6aとの間に、第二孔10cと第一孔6aとが離れる方向に付勢するテーパバネ3(弾性部材)が描かれている。このテーパバネ3の付勢力は、注射器1にホルダ6と第一角柱8の重力を加えた値の2倍程度に設定される。
【0021】
第二実施例の注射痛緩和装置のホルダ6は、第一角柱8の角穴8bを第一小径円筒部6b側からホルダ6に差し込み、角穴8bを支板9で塞ぐことで第一角柱8に回転自在に軸支される。そして本実施例では第一角柱8の長さを手の握り幅としている。そして、テーパバネ3を第二角柱10と第二小径円筒部6cの端面に位置させて、第二角柱10を第二小径円筒部6cに嵌め込んで行き、突起10dを角溝6eに嵌合させる。突起10dは角溝6eに嵌合することでテーパバネ3の弾力に抗して第二角柱10を第二小径円筒部6cから抜け止め支持する。そして、第二角柱10に対してホルダ6を軸心線方向に移動させると、軸心線に対して30度ほど傾斜する角溝6eと突起10dとの嵌合により、突起10dは、ホルダ6を回転させる移動軌跡を描く。このホルダ6の回転に伴いホルダ6に収容される注射器1も回転する。さらにこの角溝6eの長さは、ホルダ6内に注射器1を入れてナット1eの先端が円盤に当接したとき、テーパバネ3の弾力でホルダ6より押し出された第二角柱10が、注射針1dを第一孔6aと第二孔10cとの間に収容し、注射針1dが注射針1dを第二孔10cから突出させない長さに設定されている。
【0022】
図6、図7は第二実施例の注射痛緩和装置を使用する状態を示す。図6は注射器1のシリンダ1aをホルダ6に収めた状態を示す。シリンダ1aは、ナット1eがゴムリング7の中空孔7aに弾性的に嵌合してホルダ6と一体化している。そして、ナット1eの小円柱1fが第一孔6aに嵌合している。このとき第二角柱10は、テーパバネ3の弾力で第二孔10cを第一孔6aから離脱する方向に押し戻され、突起10dが角溝6eの一端に当接している。このため注射針1dは、第二角柱10の内部に収まっている。そして注射を行うとき、一方の手で第一角柱8を保持し、他方の手で第二角柱10の第二孔10cを皮膚5に押し当てるように保持する。
【0023】
図6の状態より一方の手で第一角柱8を左方に移動させると、ホルダ6はテーパバネ3を押し縮めながら第二小径円筒部6cが第二角柱10の内壁に案内されて左方に移動する。この移動時に第二角柱10の突起10dは、ホルダ6の軸心線Aに対して30度ほど傾斜する中心線Bを持つ角溝6eに係合して、傾斜角に沿ってホルダ6を回転させる。そして、ホルダ6に一体化しているシリンダ1aも共に回転するので、注射針1dも回転しながら体内に侵入するする。そして小円柱1fの先端が第二孔10cの縁に当接すると、図7に示すように注射針1dは第二孔10cから突出して体内に侵入する。この後、ノブ1gを介してピストン1bを左方に移動させると、薬液が体内に注入される。そして、ノブ1gを左方に押した状態で第一角柱8だけを右方に移動すると、ホルダ6は第二角柱10に案内されて右方に移動し、注射針1dは体内から真っ直ぐに引き出される。
【0024】
第二実施例では、注射針1dは回転しながら体内に侵入するので、注射針1dが皮膚に突き刺ささる鋭い痛みが緩和される。また、ホルダ6は第二角柱10に案内されて移動するので注射針1dの先端がブレることがない。そして注射針1dを引き抜く際も、体内から真っ直ぐに引き出されるので注射針1dの先が皮膚5を弾くことがない。さらに、注射針1dの移動は、小円柱1fの先端が第二孔10cの縁に当接する移動範囲に設定されているので安心して注射針1dを早く差し込むことができる。この結果、皮膚5がチクリとする痛みを感じる時間は短くなる。そして、第二孔10cを皮膚5に押し当てているので、第二孔10cの縁は注射針1dを引き抜く際に注射針1dが皮膚5を引き上げることを阻止し、痛みを感じさない。しかも注射の操作は二本の手を使って行われるので操作の安心感が増す。さらに、一般に流通しているペン型注射器をそのまま使用することができる。
【0025】
図8は第二実施例の第二孔10cの詳細を説明する。第二孔10cは、注射針1dの直径より0.1ミリ程度大径の小孔11(小径部)と第一孔6aに対面する側が大径となる約45度のテーパ孔12(テーパ面)とで構成されている。仮に四角板10bの厚みを1ミリとし、小孔11を径0.4ミリ、長さ0.3ミリとすると、テーパ孔12の大径は1.8ミリ程度となる。第二孔10cをこのように構成すると注射針1dが僅かに曲がっていた場合、その曲がりはテーパ孔12の面で矯正され、先端は小孔11に案内される。そして、注射針1dは小孔11に案内されて真っ直ぐ体内に侵入する。一方、注射針1dが何らかのトラブルで大きく曲がっていた場合は、注射針1dは四角板10bに遮られて体内への侵入が阻止される。
【0026】
第二実施例ではホルダ6に第一および第二角柱8・10を嵌合させたが、角柱形状を円筒形状としても差し支えない。また、ホルダ6に角溝6e、第二角柱10に突起10dを設けたが逆にホルダ6に突起10d、第二角柱10に角溝6eを設けてもよい。さらに角溝6eの傾斜角を30度としたが45度程度に大きくしてホルダ6の回転量を大きくしてもよい。そして注射針1dを回転させることで差し込みの抵抗が減ることから注射針1dの直径を0.3ミリよりさらに細くすることができる。また、注射針1dは体内から抜け出るときも回転するので、皮膚5を引き上げる高さを低くすることができる。
さらにホルダ6と注射器1とを一体化するため、嵌合部としてゴムリング7をホルダ6に取り付けたが、ナット1eの小円柱1fが、ホルダ6より軟質の合成樹脂で断面が多角形に形成されている場合、第一孔6aの直径をこの小円柱断面の最大寸法に対し、0.05〜0.1ミリ程度小さい孔としてもよい。この場合、第一孔6a自体が嵌合部となる。また、弾性部材をテーパバネ3として説明したが、線径の細い円筒コイルバネであってもよい。
上記二つの実施例において、注射針は皮膚に対して直角に差し込まれるので、本注射痛緩和装置は、筋肉注射に適したものとなる。また上記実施例では、注射器1をペン型注射器で説明したが一般的に用いられている注射器であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 注射器 1a シリンダ 1b ピストン 1d 注射針
2 ホルダ 2a 第一孔 2b 係合部
3 弾性部材
4 案内部材 4a 第二孔 4c 被係合部
6 ホルダ 6a 第一孔 6e 係合部
7 嵌合部材
8 把持部材
10 筒体 10c 第二孔 10d 被係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン(1b)シリンダ(1a)注射針(1d)からなる注射器(1)を着脱自在に収容し、外周に係合部(2b)(6e)を有して一端に前記注射針(1d)を通す第一孔(2a)(6a)を有するホルダ(2)(6)と、前記ホルダの一端側にホルダの軸方向に移動自在に装着され前記係合部に係合する被係合部(4c)(10d)を有して中央に前記注射針を通す第二孔(4a)(10c)を有する案内部材(4)(10)と、
前記案内部材と前記ホルダの一端との間に介在して前記第二孔と前記第一孔とが離れる方向に付勢する弾性部材(3)とを有し、
前記弾性部材の弾力で前記係合部と前記被係合部とが係合したとき、前記注射針を前記第一孔と前記第二孔との間に収容したことを特徴とする注射痛緩和装置。
【請求項2】
前記ホルダ(6)に、前記シリンダに弾性嵌合する嵌合部(7)と該ホルダを回転自在に支持する把持部材(8)とを設け、前記案内部材を前記ホルダの外周に嵌合する筒体(10)とし、前記係合部による前記被係合部の移動軌跡を前記ホルダの軸方向の中心線に対して傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載の注射痛緩和装置。
【請求項3】
前記筒体の第二孔(10c)に、前記注射針の外径より僅かに大きい小径部(11)と前記第一孔(6a)に対向する側に大径を有するテーパ面(12)とを設けたことを特徴とする請求項2に記載の注射痛緩和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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