説明

注射部位における製品の自動注射のための器具

本発明によれば、第一および第二錠止手段(16、12)が、作動手段(4)の第一および第二位置の間の少なくとも一つの中間位置において、互いに係合し、作動手段(4)を錠止できるよう適合させられる。第一および第二錠止手段(16、12)は、保護部材(3)が、器具(1)に包含される容器の移動が、当初位置から、容器に包含される針を挿入する位置まで可能である、第一位置にあるとき、互いに非係合となり、保護部材(3)が上記第一位置を離れるとき互いに係合されるように適合させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射部位における製品の自動注射のための器具に関する。
【0002】
以後の説明において、「近位」および「遠位」という用語は、器具を掴んだ使用者の手に関して考慮されるべきであって、「近位」は、上述の手に近い領域に関連し、「遠位」は、手から離れた領域に関連する。同様に、「遠位方向」という用語は、注射の方向を言い、「近位方向」という用語は、注射の方向とは反対の方向を指定する。
【背景技術】
【0003】
自動注射器具は、使用者が製品を彼自身に注射することを可能にする器具である。すでに知られた態様において、この種の器具は、
−製品を含み、針を有する容器を受容できるハウジングであって、上記容器が上記ハウジングに対して当初位置と、当初位置に対して遠位に離れている挿入位置との間で可動であるハウジング、
−ハウジングに接続され、その当初位置からその挿入位置までの容器の移動が可能である第一位置、および、上記第一位置に関して離れている第二位置へ、上記ハウジングに対して移動可能である安全シールドであって、安全シールドが上記第二位置にあるとき針の遠位端を越えて遠位に離れた自由端を有する安全シールド、
−第一位置から、容器がその当初位置から挿入位置へ移動可能である第二位置へ選択的に可動である作動手段、
−上記作動手段を錠止するための第一および第二錠止手段、を含む。
【0004】
アセンブリは、上記安全シールドの上記第二の位置(第二位置)で、上記第一および第二の錠止手段が作動手段を不動にし、それにより、製品の損失につながる不適切な取り扱いの危険性を避ける。作動手段は、安全シールドが、上記第一の位置(第一位置)にもたらされるように、皮膚に対して十分に当てられたときに解放される。
【0005】
実際には、使用者は、ハウジングによって器具を掴み、安全シールドを皮膚に当て、その結果、安全シールドは、第二位置から第一位置へ向う。この移行は、容器の移行、それゆえに、針の当初位置から挿入位置への移行を可能にし、作動手段の移動を自由にすることができる。使用者は、その後、注射を実施するためにこれら作動手段を移動させる。
【0006】
本出願人による、仏国特許出願第06 07806号および第06 03200号は、公知の自動注射器具を示す。
【0007】
公知の器具は、ある程度は自動注射を保証することができるが、不適切な扱いの全ての危険性を排除できない。実際に、使用者は、注射によって引き起こされる不安および彼らが心配する痛み、ならびに、作動手段の押圧を開始した後に器具を多かれ少なかれ引き抜き、その結果、針が皮膚中で十分に深くないか、または、瀬戸際になって、注射の場所を変更することを決定するかの危険によって、多かれ少なかれストレスを受け得る。このことは、器具の不完全な作動、注射針からの傷、および/または、多かれ少なかれ、製品の有意の損失を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる目的は、増大した安全性を有し、注射中の不適切な扱いの危険を強力に減少した注射器具を提供することによってこの欠点を解決することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、かなり単純な構造および受容できる製造コストを維持する器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
関係している自動注射器具は、公知の態様において、
−製品を含み、針を有する容器を受容できるハウジングであって、上記容器が上記ハウジングに対して当初位置と、当初位置に対して遠位に離れている挿入位置との間で可動であるハウジング、
−ハウジングに連結され、容器の当初位置から容器の挿入位置までの容器の移動が可能である第一位置、および、上記第一位置に関して離れている第二位置に、上記ハウジングに関して移動可能である安全シールドであって、安全シールドが上記第二位置にあるとき針の遠位端を越えて離れた自由端を有する安全シールド、
−第一位置から、容器がその当初位置から挿入位置へ移動可能である第二位置へと選択的に可動である作動手段、
−上記作動手段を錠止するための第一および第二錠止手段、を含む。
【0011】
本発明によれば、
−上記第一および第二錠止手段は、互いに係合するように形成され、上記作動手段の上記第一及び第二位置の間の少なくとも一つの中間位置に上記作動手段を錠止することが可能であり、
−上記第一および第二錠止手段は、上記安全シールドが、上記第一位置にあるとき、互いに離反するように形成され、上記安全シールドが、上記第一位置から離れているとき互いに係合するように形成される。
【0012】
したがって、本発明によれば、器具は、少なくとも一つの中間位置で作動手段の錠止を可能にする錠止手段を含み、錠止手段は、安全シールドが上記第一位置にあるときにのみ、非錠止位置にもたらされる。その結果として、作動手段が上述の少なくとも一つの中間位置にあっても、上記第一位置の喪失は、錠止手段が相互協力に戻ることの結果となり、この戻りは、作動手段の再錠止を招く。
【0013】
この再錠止は、作動手段が、すでに部分的に移動し、上記少なくとも一つの中間位置にあるとき、第一位置を喪失することに関連して不適切な取り扱いの危険性を回避する。
【0014】
それゆえ、本発明による器具は、不完全な取り扱いに関して、大きな安全性を有する。
【0015】
作動手段は、注射をコントロールするだけであり、この場合において、患者の皮膚への針の挿入は、安全シールドの上記第二位置から上記第一位置への移動中になされ、この移動は、上記安全シールドの遠位端が、上記移動中に、上記針の上記自由端の側方に至るというものであり、その結果、患者の皮膚への上記針の貫通を可能にする。
【0016】
作動手段は、また、患者の皮膚への針の挿入と注射の双方をコントロールし、この場合、上記第一位置において、上記安全部材の上記遠位端は、常に、針の自由端を越えて位置しており、針の貫通をコントロールするのは、作動手段の作動である。
【0017】
有利には、上記第一および第二錠止手段は、作動手段の錠止が、作動手段の第一位置と第二位置との間の複数の連続する中間位置の一つで可能となるように形成される。
【0018】
作動手段の再錠止は、その結果、中間位置の一つにより可能である。
【0019】
上記第一および第二錠止手段は、特に、上記作動手段と中間作動部材に配置された相補的な鍵を含み、相補的な鍵は、互いに係合できる。
【0020】
本発明の好ましい一具体例によれば、上記中間作動部材は、安全シールドがその第一位置にあるとき、安全シールドと偏向して係合するように意図された基部を含む。
【0021】
有利には、安全シールドは、上記第二位置に錠止される。
【0022】
好ましくは、上記第一および第二錠止手段は互いに係合し、もし、安全シールドが、作動手段の予め定められた移動に先立って、その第一位置から移動すると、上記第一位置と第二位置との間の中間位置に上記作動手段を錠止する。
【0023】
この予め定められた移動は、容器をその挿入位置に移動させることを可能にするために、好ましくは、十分なものである。
【0024】
本発明は、よく理解され、本発明の他の特徴および利点は、非限定的な実施例として、発明が関与する、一つの好ましい自動注射器具の具体例を示す、添付した線図を参照して明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】長手方向軸に沿った断面における、自動注射器具の休止位置での非常に単純化された線図である
【図2】長手方向軸に沿った断面における、自動注射器具の針の挿入と注射が可能な中間位置での非常に単純化された線図である。
【図3】長手方向軸に沿った断面における、自動注射器具の上記中間位置における近位の作動ボタンの再錠止位置での非常に単純化された線図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1から図3は、長手方向軸に沿った断面における、三つの使用位置、すなわち、それぞれ、休止位置、針の挿入と注射が可能な中間位置およびこの中間位置における近位の作動ボタンの再錠止位置での、上述の器具の非常に単純化された線図である。
【0027】
図は、
−注射器本体、中空の注射針および注射器本体に係合されるピストン(不図示)、
−ハウジング2、
−保護チューブ3、通常は、図1に示された(第二位置と称される)休止位置に保護チューブ3を維持するスプリング(不図示)、
−針の当初位置から挿入位置までの注射器本体の動きおよび/または注射をコントロールすることを可能にする近位の作動ボタン4、および、
−中間の作動部材5を含む、自動注射器具1を示す。
【0028】
ハウジング2は、注射時に、使用者によって掴まれるようにされている。
【0029】
保護チューブ3は、注射器本体および注射針の周囲に係合され、ハウジング2に対して滑動できるようハウジング2に係合される。この動きは、保護チューブ3の遠位端が、注射針の遠位端を越えて、遠位に位置され、上述の針により引き起こされる負傷の危険から使用者を保護する、上述の第二位置(図1参照)と、チューブ3の遠位端が、注射針の遠位端の側部で、遠位に位置される、第一位置(図2参照)と称される使用位置との間で生じる。器具1は、本体2に対するチューブ3の滑動を制限する手段を含み、針の遠位端に対するチューブの除去は、この除去が、患者の皮膚への針の理想の侵入深さに相当するようなものであるように作用する。
【0030】
図は、保護チューブ3が、その近位端に、少し、口の広がった形と丸められた内方近位端を有することを示す。
【0031】
作動ボタン4は、その当初位置から挿入位置までの注射器本体の動きのコントロールを可能にする部分(不図示)を含む。遠位側から、二つの直径方向に対向した部分10に分けられ、その対向表面は、器具1の長手方向軸に対して傾斜し、それらの間に空間を画定する。これらの傾斜表面は、各々、一連の錠12を有する。さらに、各々の部分10は、ボタン4の長手方向軸に垂直に配向された平坦面13で終結する。
【0032】
中間作動部材5は、一般的には、VまたはY形とされ、すなわち、二つの直径方向に対向した側枝15および保護チューブ3に係合されるようにされた基部16を含む。
【0033】
各々の側枝15は、ボタン4の側に、半径方向外面に鍵16を備える直線部分15aと、チューブ3の側部に、近位方向に少し口の広がった、丸くされた基部分15bを含む。
【0034】
二つの基部分15bは、図1に示されるように、第二位置において、保護チューブ3の近位端に係合される基部16に連続的に接続される。
【0035】
この部材5は、一定の弾性変形を有する合成樹脂の成形によって作られる。図1に示されるように、通常の、変形されない位置においては、部分5は、互いに分離された側枝15を有し、側枝15の近位端は、ボタン4の遠位の平坦面13の真向かいに達し、それによって、ボタン4の軸方向の動きをロックする。部材5は、側枝15が、遠位の平坦面13を越えるまで引き合わされる、図2に示された位置まで弾性変形される。ボタン4は、その後、二つの部分10によって画定された空間11により、これらの側枝15の近位端15aに係合され、その結果、このボタン4の動きは解放され、このボタンの近位表面の押圧によって、針の挿入および/または注射を可能にする。
【0036】
図2に、部分5の変形が、上記第一位置への保護チューブ3の到達に由来し、このチューブ3は、それにより端部15aを互いに接近して引き合わせる動きをコントロールするための傾斜路を形成している、側枝15の丸められた遠位部15aへと向かうことが示される。
【0037】
器具1の通常の使用との関連で、ボタン4は、その近位表面がハウジング2の近位端と一緒の表面を示すまで、遠位方向に押圧される。
【0038】
しかしながら、もし、保護チューブ3が、図2に示された上記第一位置からまさに動き、それゆえ、上述のスプリングによって、図1に示された上記第二位置にもたらされると、二つの側枝15が、即座に、部分5を形成する材料の弾性的戻り作用で互いに離れる位置にもたらされることが、図3に示される。この分離は、ボタン4の軸方向位置により、少なくとも二つの鍵16、または、二つより多い鍵16が、ボタン4の二つの鍵12、または、二つより多い鍵12と係合することをもたらす。これらの鍵16、12の係合は、再び、ボタン4を軸方向に動かせないこと、それゆえ、保護チューブ3が上述の第一位置に戻っていないとき注射の継続を妨げることを可能にする。
【0039】
複数の鍵が、複数の連続する中間位置で、作動ボタン4の錠止を可能にすることが留意されるべきである。
【0040】
上述したところから理解できるように、本発明は、従来技術の類似の器具に対して、増加された安全性、注射中の不適切な取り扱いの危険性の大きな減少、および、かなり簡単な構造と受容できる製造コストの維持を有することの利点を決定することを有する、自動注射器具を提供する。本発明は、純粋に実施例として提供された、一つの具体例を参照して上述された。この具体例に限定されないこと、しかしながら、添付の特許請求の範囲によりカバーされる全ての具体例に及ぶことは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射部位に製品を自動注射するための器具(1)であって、器具(1)は、
当初位置と上記当初位置に対して遠位に離れた挿入位置との間で、ハウジング(2)に対して可動である容器を受容できる上記ハウジング(2)、
上記ハウジング(2)に接続され、容器の当初位置から挿入位置までの容器の移動が可能である第一位置、および、安全シールド(3)が錠止される第二位置へ、上記ハウジング(2)に対して移動可能である上記安全シールド(3)であって、上記安全シールド(3)が上記第二位置にあるとき、針の遠位端を越えて遠位に離れる自由端を有している上記安全シールド(3)、
第一位置から、容器がその当初位置から挿入位置へ移動可能である第二位置へ、選択的に可動である作動手段(4)、
上記作動手段(4)を、少なくとも一つの位置に錠止するための第一および第二錠止手段(16、12)を含み、
上記第一および第二錠止手段(16,12)は、互いに係合するように、および、上記作動手段(4)の上記第一および第二位置の中間の少なくとも一つの位置で上記作動手段(4)の錠止を可能とするように形成されており、
上記第一および第二錠止手段(16,12)は、上記安全シールド(3)が上記第一位置にあるとき互いに非係合とされ、上記安全シールド(3)が上記第一位置から離れたとき係合するように形成されていることを特徴とする器具(1)。
【請求項2】
請求項1の器具(1)であって、上記第一および第二錠止手段(16、12)は、上記作動手段(4)の上記第一位置および第二位置の中間の複数の連続する位置の一つで作動手段(4)の錠止を可能とするように形成されていることを特徴とする器具(1)。
【請求項3】
請求項1または2の器具(1)であって、上記第一および第二錠止手段(16、12)は、上記作動手段(4)および中間作動部材(5)上に相補的な鍵を含み、上記相補的な鍵は互いに係合することを特徴とする器具(1)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つの器具(1)であって、上記中間作動部材(5)は、上記安全シールド(3)が、その第一位置にあるとき、上記安全シールド(3)と、撓んで係合されるように意図された基部(16)を含むことを特徴とする器具(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つの器具(1)であって、上記第一および第二錠止手段(16、12)は、上記安全シールド(3)が上記作動手段(4)の所定の移動に先立ってその第一位置から移動させられると、互いに係合して、使用者が作動可能な手段の上記第一および第二位置の中間の位置に上記作動手段(4)を錠止することを特徴とする器具(1)。
【請求項6】
請求項5の器具(1)であって、上記作動手段(4)の上記所定の移動は、上記容器をその挿入位置に移動させるのに十分であることを特徴とする器具(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−540140(P2010−540140A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527484(P2010−527484)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001634
【国際公開番号】WO2009/043979
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(597136216)ベクトン・ディキンソン・フランス・エス.エー.エス. (34)
【Fターム(参考)】