注射針保護具、注射針ユニットおよびこれを装着した注射器
【課題】薬剤混合装置に複雑な構成を施すことなく、注射器の針先を薬剤容器に正確に挿入させるための注射針保護具、注射針ユニットおよびこれを装着した注射器を提供することを目的とする。
【解決手段】針基13に接続された針管9に被せられて前記針管9を保護する注射針保護具1であって、針基13側の針管9を保護するとともに、注射器保持機によって保持される第一キャップ5と、第一キャップ5によって保護されない残りの針管9を保護する第二キャップ7と、を備え、第一キャップ5には、針管9を外周から支持する支持部11が備えられている。
【解決手段】針基13に接続された針管9に被せられて前記針管9を保護する注射針保護具1であって、針基13側の針管9を保護するとともに、注射器保持機によって保持される第一キャップ5と、第一キャップ5によって保護されない残りの針管9を保護する第二キャップ7と、を備え、第一キャップ5には、針管9を外周から支持する支持部11が備えられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針を保護する注射針保護具、注射針ユニットおよびこれを装着した注射器に関するものである。より詳細には、注射器保持機に保持されるための注射針保護具、注射針ユニットおよびこれを装着した注射器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
看護婦や薬剤師が薬剤の入ったバイアルなどの薬剤容器に注射器の針管を穿刺させる作業は、負担が大きく正確性が求められる。特に、異なる薬剤を混合調製する作業は穿刺の回数が多いのでより負担の低減と正確性が求められる。また、放射性医薬品や抗がん剤などの危険医薬品を扱う場合は無菌的に行う必要がある。そのため、装置による穿刺作業の自動化が求められている。
【0003】
例えば薬剤混合装置のように穿刺作業を行う装置に用いられる注射器は、針管とこの一端と接続する針基を備える注射針ユニット、針基と接続される注射筒(シリンジ)および押子を有している。そして、誤った穿刺を防ぐために、略円筒形状の注射針保護具が針基に嵌め込まれている。このような注射器は、針保護具を装着したまま薬剤混合装置に導入され、薬剤混合装置などの装置の一部を構成する注射器保持機に注射器の注射筒が保持されることで注射器保持機に固定される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−510513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来技術では、薬剤が入った容器の口に注射器の針先を正確に穿刺させるための新たな構成が必要となり装置が複雑となってしまう。
【0006】
すなわち、正確な穿刺を行うには注射器保持機に注射器を固定させる必要があるが、注射器保持機は、衛生上の観点から針管を直接保持することができない。そのため、注射器の注射筒を保持することで注射器を注射器保持機に固定させている。
【0007】
しかし、注射筒を固定しても注射筒の筒先と針基、および針基と針管との接合の度合い、注射筒、針基および針管などの製造誤差によって針先の位置には針管の径方向にバラツキが生じる。
【0008】
その結果、薬剤が入った容器の口に注射器の針先を正確に穿刺させるには、針先の位置や針管の傾きを把握するためのカメラや制御などが必要となり、注射器保持機やこれを含む装置の構成が複雑となってしまうのである。
【0009】
そこで本発明は、注射器保持機やこれを含む装置に複雑な構成を施すことなく、注射器の針先を薬剤容器に正確に挿入させるための注射針保護具、注射針ユニットおよびこれを装着した注射器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、その目的を達成するために本発明は、針基に接続された針管に被せられて前記針管を保護する注射針保護具であって、前記針基側の前記針管を保護するとともに、注射器保持機によって保持される第一キャップと、前記第一キャップによって保護されない残りの前記針管を保護する第二キャップと、を備え、前記第一キャップには、前記針管を外周から支持する支持部が備えられていることを特徴としている。
【0011】
これによれば、注射器保持機やこれを含む装置に複雑な構成を施すことなく、注射器の針先を薬剤容器に正確に穿刺させることができる。すなわち、注射針保護具を適用した注射器は、第二キャップを外しても第一キャップが保持されることによって注射器保持機に固定させられるので、注射器保持機やこれを含む装置に複雑な構成を施すことなく、注射器の針先を薬剤容器に正確に穿刺させることができる。
【0012】
また、前記の注射針保護具の第一キャップの支持部は、前記第一キャップの先端に備えられていることが好ましい。
【0013】
これによって、第一キャップの支持部が針先側の針管を支持できるため、注射針保護具を装着した注射器の針先の位置には針管の径方向のバラツキが少なくなり、より正確に薬剤容器に穿刺させることができる。
【0014】
また、前記第一キャップに鍔部が備えられていることが好ましい。
【0015】
これによれば、注射針保護具を適用した注射器の針管に薬剤が付着しても、鍔部によって薬剤が第一キャップの側面に付着するのを防止することができ、衛生的となる。その結果、第一キャップを保持する注射器保持機に薬剤が付着しにくくなり、付着した薬剤を洗い流す手段が必要とならない。
【0016】
また、前記鍔部は、前記支持部よりも前記針管の針先側に設けられていることが好ましい。
【0017】
これによって、注射針保護具を適用した注射器の針管に付着する薬剤の広がりを効果的に抑えることができる。また、第一キャップが注射器保持機によって保持される領域を多く確保することができる。
【0018】
また、前記注射器保持機によって保持される前記第一キャップの部位は、前記支持部であることが好ましい。
【0019】
第一キャップのうち、注射器保持機に保持される部分が針管と接して支持する支持部であることで、注射器保持機よる保持力が支持部を通してより針管に伝わりやすくなる。
【0020】
さらに、前記支持部の内壁は、前記針管の外周と密着していることが好ましい。
【0021】
これによって、注射器保持機による保持力が支持部を通してさらに針管に伝わりやすくなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、注射器保持機やこれを含む装置に複雑な構成を施すことなく、注射器の針先を薬剤容器に正確に穿刺させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器の斜視図
【図2】(A)本発明の実施の形態1の注射針保護具を構成する第一キャップと第二キャップの正面図(B)これらのキャップを互いに接続した正面図(C)(A)のII(C)-II(C)断面図(D)(B)のII(D)-II(D)断面図
【図3】(A)本発明の実施の形態1の注射針ユニットにおいて第二キャップを第一キャップから外した様子を示す正面図(B)そのIII(B)-III(B)の一部断面図
【図4】本発明の実施の形態1の注射針ユニットを適用した注射器の正面要部の一部断面図
【図5】本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器を固定する注射器保持機の正面図
【図6】本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器を固定する注射器保持機の一部を構成するキャップ固定部の斜視図
【図7】(A)本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器が注射器保持機に搭載された様子を示す正面の一部断面図(B)本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器が注射器保持機に搭載され第二キャップが外された様子を示す正面の一部断面図(C)本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器が注射器保持機に固定された様子を示す正面の一部断面図
【図8】第二キャップが外された注射器が注射器保持機によって保持されている様子を針先側から見た参考図
【図9】(A)本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器が注射器保持機に固定されバイアルと対向している様子を示す正面図(B)本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器が注射器保持機に固定され針管がバイアルに穿刺している様子を示す正面図
【図10】(A)本発明の実施の形態2の注射針ユニットにおいて第二キャップを第一キャップから外した様子を示す正面図(B)第一キャップと第二キャップとが互いに接続している本発明の実施の形態2の注射針ユニットの正面図
【図11】(A)図10(A)のX(A)-X(A)の一部断面図(B)図10(B)のX(B)-X(B)の一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下に、本発明の注射針保護具1を図面とともに詳細に説明する。図1は、本発明の注射保護具1を装着した注射器3の斜視図である。注射器3は、注射器保持機21用のもので、注射器保持機21に固定されることで穿刺を自動的に行う。
【0025】
注射保護具1は、第一キャップ5と第二キャップ7から構成されており、第二キャップ7を外しても注射器保持機21が第一キャップ5を保持し、針管9を注射器保持機21に対して正確な位置に固定することができる。その結果、注射器保持機21やこれを含む図示しない薬剤混合装置に複雑な構成を施す必要がなくなる点が本発明の要点である。
【0026】
図2は、本発明の注射針保護具1の正面図である。第一キャップ5は、円筒部59と、円筒部59より狭径の円筒の外形を有する支持部11から構成され、円筒部59と支持部11が同軸上に配置されている。
【0027】
第一キャップ5の内部には、円筒形状の空間と、針管9の外周とほぼ同じ径であって、針管9を受け入れて外周からこれを支持する狭径の円筒形状をした空間と、これらの空間を接続する先細りテーパー形状の空間が形成されている。また、これらの空間の長手方向の中心軸は互いに一致している。
【0028】
有底円筒形状の第二キャップ7は、この開口端が第一キャップ5の支持部11の全体に被さるように第一キャップ5と着脱可能に嵌め込まれ、円筒部59の支持部11側の縁部によって位置決めされる。
【0029】
図3は、このような注射針保護具1を針管9および針基13に適用した注射針ユニット15を示している。ここで、注射針ユニット15は、針管9と、針管9と接続される針基13と、第一キャップ5と、第二キャップ7とを含んでいる。なお、図3(B)は、図3(A)のIII(B)−III(B)断面を示すが、針管9および針基13は断面ではなく正面を示している。
【0030】
図3に示されるように、針管9の一端部と接続された針基13は、第一キャップ5の支持部11とは反対側の開口端に締め付けられて固定される。この状態で、針基13の先端から針先までの針管9のうち、長手方向に対しほぼ中央部分は、支持部11によって外周が支持される構成となっている。そして、支持部11と針管9とは、密着する構成となっている。すなわち、支持部11の内壁55は、針管9の外周と密着している。
【0031】
したがって、第一キャップ5は、針基13から延出する針管9から、支持部11によって直接支持された針管9までの針基13側の一部を外部から保護する機能を有するとともに、第一キャップ5を固定すればこれと同時に針管9も固定する機能を有している。ここで、針管9および針基13は、金型で成型された第一キャップ5の開口する底面側から挿入されて固定第一キャップ5に固定されてもよいが、針管9および針基13を、長手方向に2つ(またはそれ以上)に分割された第一キャップ5の断片によって挟み、断片を圧着することで第一キャップ5の円筒形状を構成しながら固定されてもよい。
【0032】
第二キャップ7は、第一キャップ5によって保護されない残りの針管9の部分、すなわち、支持部11から針先までの針管9を保護する構成となっている。ここで、第二キャップ7によって覆われる針管9の長さは、バイアルなどの薬剤容器17を用いて混合調製を行える長さに調整されている。
【0033】
図4は、以上のような注射針ユニット15を注射器3の注射筒19の先端部に接続した様子を示している。この接続は、針基13の第一キャップ5によって覆われていない部分を注射筒19の先端の開口に挿入することでなされている。この固定はネジ構造などの周知の方法によって可能である。
【0034】
次に、注射針保護具1を装着した注射器3を固定するための注射器保持機21について説明を行う。注射器保持機21は、何らかの動作を注射器3にさせるために注射器3を保持するものであり、注射器3を保持するマニピュレータの一部構成であってもよい。図5に示されるように、注射器保持機21は、注射針保護具1の第一キャップ5を固定するキャップ固定部23と、注射筒19の端部に設けられたフランジ25を保持するためのフランジ保持部27と、注射器3の押子29を保持する押子保持部31とを主な構成としており、これらはベース33上に配置されている。また、注射器保持機21は、キャップ固定部23、押子保持部31およびベース33をそれぞれ可動させるモータ35、37、39、41を備えている。
【0035】
キャップ固定部23は、モータ35、37によって駆動され、第一キャップ5を両側から挟むようにして固定する構成となっている。キャップ固定部23の斜視図を図6に示す。この図に示されるように、別々のモータ35、37によって駆動される水平板43、45上に、第一キャップ5の先端を固定するための2枚のキャップ先端固定板47、49が鉛直にそれぞれ対向するように設けられている。これらのキャップ先端固定板47、49の対向面は、第一キャップ5を固定するための略台形形状の切り欠きが形成されている。
【0036】
また、水平板43、45上には、キャップ先端固定板47、49と平行に、キャップ根元固定板51、53がそれぞれ対向配置されている。これらのキャップ根元固定板51、53にも略台形形状の切り欠きがそれぞれ形成されており、第一キャップ5の根元がこれらの切り欠きに受け入れられ、両側から挟むように固定される。
【0037】
フランジ保持部27は、図5に示されるように、水平断面が略コ字形状である2枚の同一形状の板がそれぞれ溝を対向するようにしてベース33に対して垂直に設けられている。フランジ保持部27は、この溝に注射器3の注射筒19に設けられたフランジ25の両縁部を格納して注射筒19を保持する機能を有しているが、注射器3の長手方向の移動を規制すれば十分であり、この長手方向に対して垂直な方向を規制する必要はない。したがって、この実施例のフランジ保持部27は、モータなどによって可動しない構成となっている。
【0038】
押子保持部31は、フランジ保持部27の後段側のベース33に垂直に配置されている。ここで、本明細書において後段とは、より押子29のフランジ57側という意味を含む。押子保持部31には、注射器3の押子29の端部に設けられたフランジ57を受け入れる溝が形成されており、この溝に押子29のフランジ57を嵌め込ませ、モータ39を制御して注射筒19内で押子29を往復動作させる。これによって注射筒19内部の薬剤(図示せず)を出し入れさせる。
【0039】
以上のような注射器保持機21の動作を、注射針保護具1を装着した注射器3を用いて説明する。まず、注射器3が注射器保持機21に固定されるまでの動作を説明する。
【0040】
図7(A)、(B)、(C)は、注射器3が注射器保持機21に固定される動作を時系列で示しており、第一キャップ5、第二キャップ7およびキャップ固定部23は水平断面を示している。
【0041】
図7(A)は、注射器3が薬剤混合装置の注射器搭載機構によって注射器保持機21に搭載された後の様子を示すものである。注射筒19のフランジ25と押子29のフランジ57が、それぞれ押子保持部31およびフランジ保持部27の溝に嵌め込まれ、注射器3の長軸方向の動きが規制されるように保持されていている。この段階では、キャップ固定部23は開いた状態なので針管9は正確な位置に固定されていない。また、押子29は注射筒19に最も深く挿入された状態となっている。
【0042】
その後、図7(B)に示されるように、図示しない薬剤混合装置の機構によって第二キャップ7が第一キャップ5から取り外される。
【0043】
そして、図7(C)に示されるように、キャップ固定部23が動作して針管9を固定する。キャップ固定部23は、2つのモータ35、37によって注射針ユニット15の第一キャップ5の先端および根元を両側から挟みこむようにして第一キャップ5を固定している。
【0044】
より詳細には、支持部11との接続部分に近い円筒部59の前段部分を2枚のキャップ先端固定板47、49によって挟まれるように固定されている。このため、第一キャップ5の支持部11を介して針管9が注射器保持機21に対して固定される。
【0045】
また、第一キャップ5の拡径の円筒部59の後段部分は、2枚のキャップ根元固定板51、53によって両側から挟まれるように固定される。これにより、さらに確実に針管9が注射器保持機21に対して固定される。
【0046】
図8は、キャップ先端固定板47、49により第一キャップ5の円筒部59が固定された様子を示したものである。図に示されるように、円筒部59がキャップ先端固定板47、49の向かい合った略台形形状の切り欠きに挟まれることで、キャップ先端固定板47、49が円筒部59の外周の4点に作用し固定されている。
【0047】
ここで、注射器保持機21による保持力をより針管9に伝達させる観点から、キャップ先端固定板47、49によって保持される第一キャップ5の部位を支持部11とし、狭径の支持部11の外周を挟むように直接固定してもよい。
【0048】
注射器3が搭載され、針管9が固定された注射器保持機21は、薬剤混合装置によって混合調製に用いられる。図9(A)は、混合調製の一部の例を示すもので、図示しないゴム栓が詰められたバイアル17の開口に対して針管9が垂直となるように、バイアル17が格納された容器保持機63と注射器保持機21とが対向するように配置された様子を示している。
【0049】
この状態から、図9(B)に示されるように、注射器保持機21のベース33がモータ41によってバイアル17に近接し、針管9がゴム栓を穿刺する。その後、モータ41によって押子保持部31が注射器3の押子29を注射筒19から後退させ、バイアル17内の薬剤を注射筒19へ移動させる。この後は、モータ41によりベース33が図9(A)の位置に戻り、他のバイアル18内へ薬剤を注入させるなどの混合調製が行われる。
【0050】
以上のように、この実施例の注射器3は、針基13側の針管9を保護し、注射器保持機21によって保持される第一キャップ5と、第一キャップ5によって保護されない残りの針管9を保護する第二キャップ7とを備え、第一キャップ5には針管9を外周から支持する支持部11を備えているので、注射筒19の筒先と針基13との接続および針基13と針管9の接続や、注射筒19、針基13などの製造に起因する誤差が生じていても、注射器保持機21やこれを含む薬剤混合装置に複雑な構成を施すことなく、注射器3の針先を薬剤容器17に正確に穿刺させることができる。
【0051】
より具体的には、注射器保持機21のキャップ固定部23は、第一キャップ5を直接固定し、これによる保持力が支持部11の内壁55と密着している針管9に伝達するので、針管9を注射器保持機21に正確に固定することができる。これによって針先をバイアルなどの薬剤容器17の口に正確に挿入させることができる。
【0052】
また、第二キャップ7は第一キャップ5に着脱可能に接続されているので、作業の終了後、注射器3を薬剤混合装置から取り出す際に再び第二キャップ7を第一キャップ5に接続して保護することができる。これは、薬剤容器17から薬剤を注射筒19内に吸引し、これを患者に投与する場合に有益である。
【0053】
(実施の形態2)
図10および図11は、第二の実施例の注射針保護具65を針管9および針基13を嵌め込んだ、注射針ユニット75として示している。図10は、針管9と針基13に装着した第一キャップ67と第二キャップ7を示し、図11は、図10の断面図を示している。ただし、針管9および針基13は断面ではなく正面を示している。ここで第一の実施例と同一の部材、構成には同一の符号を附し、その説明を省略する。
【0054】
第一実施例の注射針ユニット15と第二実施例の注射針ユニット75との違いは、第一キャップ67の構成である。すなわち、図10および図11に示されるように、この実施例の第一キャップ67の支持部11の先端には鍔部69が備えられている。また、支持部11より後段の第一キャップ67の円筒の外周には、第二キャップ7を第一キャップ67に嵌め込む際に、第二キャップ7の開口端を位置決めするためのリング部71が形成されている。
【0055】
円筒形状の支持部11は、拡径の第一キャップ67よりも狭径であり、リング形状の鍔部69の外径は、第一キャップ67の拡径と同じになるように構成されている。したがって、第一キャップ67は支持部11においてリング状の溝73が形成されたような構成となっている。
【0056】
ここで、注射器保持機21による第一キャップ67の支持は、キャップ固定部23のキャップ先端板47、49をこの溝73に嵌め込むことで行ってもよいし、第一実施例と同様に、第二キャップ7の開口端の位置決め用のリング部71と支持部11との間の拡径となっている箇所にキャップ先端板47、49を両側から挟んで針管9を固定してもよい。
【0057】
この実施例では、第一実施例の作用効果に加え、次のような作用効果を奏する。すなわち、薬剤容器17に穿刺し、針管9に薬剤が付着する場合があっても、鍔部69が第一キャップ67の側面にさらに広がるのを防止する。このため、注射器保持機21のキャップ固定部23に薬剤が付着することがなく、衛生を保つことができる。また、リング部71は、第一キャップ67に第二キャップ7を接続する際、第二キャップ7の開口端がリング部71によって位置決めさせるだけでなく、鍔部69のバックアップの役割を担う。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、正確に穿刺する必要のある注射器に適用することができる。特に、自動で対象物に穿刺させる薬剤混合装置等の機器に用いられる注射器に適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 注射針保護具
5 第一キャップ
7 第二キャップ
9 針管
11 支持部
13 針基
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針を保護する注射針保護具、注射針ユニットおよびこれを装着した注射器に関するものである。より詳細には、注射器保持機に保持されるための注射針保護具、注射針ユニットおよびこれを装着した注射器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
看護婦や薬剤師が薬剤の入ったバイアルなどの薬剤容器に注射器の針管を穿刺させる作業は、負担が大きく正確性が求められる。特に、異なる薬剤を混合調製する作業は穿刺の回数が多いのでより負担の低減と正確性が求められる。また、放射性医薬品や抗がん剤などの危険医薬品を扱う場合は無菌的に行う必要がある。そのため、装置による穿刺作業の自動化が求められている。
【0003】
例えば薬剤混合装置のように穿刺作業を行う装置に用いられる注射器は、針管とこの一端と接続する針基を備える注射針ユニット、針基と接続される注射筒(シリンジ)および押子を有している。そして、誤った穿刺を防ぐために、略円筒形状の注射針保護具が針基に嵌め込まれている。このような注射器は、針保護具を装着したまま薬剤混合装置に導入され、薬剤混合装置などの装置の一部を構成する注射器保持機に注射器の注射筒が保持されることで注射器保持機に固定される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−510513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来技術では、薬剤が入った容器の口に注射器の針先を正確に穿刺させるための新たな構成が必要となり装置が複雑となってしまう。
【0006】
すなわち、正確な穿刺を行うには注射器保持機に注射器を固定させる必要があるが、注射器保持機は、衛生上の観点から針管を直接保持することができない。そのため、注射器の注射筒を保持することで注射器を注射器保持機に固定させている。
【0007】
しかし、注射筒を固定しても注射筒の筒先と針基、および針基と針管との接合の度合い、注射筒、針基および針管などの製造誤差によって針先の位置には針管の径方向にバラツキが生じる。
【0008】
その結果、薬剤が入った容器の口に注射器の針先を正確に穿刺させるには、針先の位置や針管の傾きを把握するためのカメラや制御などが必要となり、注射器保持機やこれを含む装置の構成が複雑となってしまうのである。
【0009】
そこで本発明は、注射器保持機やこれを含む装置に複雑な構成を施すことなく、注射器の針先を薬剤容器に正確に挿入させるための注射針保護具、注射針ユニットおよびこれを装着した注射器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、その目的を達成するために本発明は、針基に接続された針管に被せられて前記針管を保護する注射針保護具であって、前記針基側の前記針管を保護するとともに、注射器保持機によって保持される第一キャップと、前記第一キャップによって保護されない残りの前記針管を保護する第二キャップと、を備え、前記第一キャップには、前記針管を外周から支持する支持部が備えられていることを特徴としている。
【0011】
これによれば、注射器保持機やこれを含む装置に複雑な構成を施すことなく、注射器の針先を薬剤容器に正確に穿刺させることができる。すなわち、注射針保護具を適用した注射器は、第二キャップを外しても第一キャップが保持されることによって注射器保持機に固定させられるので、注射器保持機やこれを含む装置に複雑な構成を施すことなく、注射器の針先を薬剤容器に正確に穿刺させることができる。
【0012】
また、前記の注射針保護具の第一キャップの支持部は、前記第一キャップの先端に備えられていることが好ましい。
【0013】
これによって、第一キャップの支持部が針先側の針管を支持できるため、注射針保護具を装着した注射器の針先の位置には針管の径方向のバラツキが少なくなり、より正確に薬剤容器に穿刺させることができる。
【0014】
また、前記第一キャップに鍔部が備えられていることが好ましい。
【0015】
これによれば、注射針保護具を適用した注射器の針管に薬剤が付着しても、鍔部によって薬剤が第一キャップの側面に付着するのを防止することができ、衛生的となる。その結果、第一キャップを保持する注射器保持機に薬剤が付着しにくくなり、付着した薬剤を洗い流す手段が必要とならない。
【0016】
また、前記鍔部は、前記支持部よりも前記針管の針先側に設けられていることが好ましい。
【0017】
これによって、注射針保護具を適用した注射器の針管に付着する薬剤の広がりを効果的に抑えることができる。また、第一キャップが注射器保持機によって保持される領域を多く確保することができる。
【0018】
また、前記注射器保持機によって保持される前記第一キャップの部位は、前記支持部であることが好ましい。
【0019】
第一キャップのうち、注射器保持機に保持される部分が針管と接して支持する支持部であることで、注射器保持機よる保持力が支持部を通してより針管に伝わりやすくなる。
【0020】
さらに、前記支持部の内壁は、前記針管の外周と密着していることが好ましい。
【0021】
これによって、注射器保持機による保持力が支持部を通してさらに針管に伝わりやすくなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、注射器保持機やこれを含む装置に複雑な構成を施すことなく、注射器の針先を薬剤容器に正確に穿刺させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器の斜視図
【図2】(A)本発明の実施の形態1の注射針保護具を構成する第一キャップと第二キャップの正面図(B)これらのキャップを互いに接続した正面図(C)(A)のII(C)-II(C)断面図(D)(B)のII(D)-II(D)断面図
【図3】(A)本発明の実施の形態1の注射針ユニットにおいて第二キャップを第一キャップから外した様子を示す正面図(B)そのIII(B)-III(B)の一部断面図
【図4】本発明の実施の形態1の注射針ユニットを適用した注射器の正面要部の一部断面図
【図5】本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器を固定する注射器保持機の正面図
【図6】本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器を固定する注射器保持機の一部を構成するキャップ固定部の斜視図
【図7】(A)本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器が注射器保持機に搭載された様子を示す正面の一部断面図(B)本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器が注射器保持機に搭載され第二キャップが外された様子を示す正面の一部断面図(C)本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器が注射器保持機に固定された様子を示す正面の一部断面図
【図8】第二キャップが外された注射器が注射器保持機によって保持されている様子を針先側から見た参考図
【図9】(A)本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器が注射器保持機に固定されバイアルと対向している様子を示す正面図(B)本発明の実施の形態1の注射針保護具を適用した注射器が注射器保持機に固定され針管がバイアルに穿刺している様子を示す正面図
【図10】(A)本発明の実施の形態2の注射針ユニットにおいて第二キャップを第一キャップから外した様子を示す正面図(B)第一キャップと第二キャップとが互いに接続している本発明の実施の形態2の注射針ユニットの正面図
【図11】(A)図10(A)のX(A)-X(A)の一部断面図(B)図10(B)のX(B)-X(B)の一部断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下に、本発明の注射針保護具1を図面とともに詳細に説明する。図1は、本発明の注射保護具1を装着した注射器3の斜視図である。注射器3は、注射器保持機21用のもので、注射器保持機21に固定されることで穿刺を自動的に行う。
【0025】
注射保護具1は、第一キャップ5と第二キャップ7から構成されており、第二キャップ7を外しても注射器保持機21が第一キャップ5を保持し、針管9を注射器保持機21に対して正確な位置に固定することができる。その結果、注射器保持機21やこれを含む図示しない薬剤混合装置に複雑な構成を施す必要がなくなる点が本発明の要点である。
【0026】
図2は、本発明の注射針保護具1の正面図である。第一キャップ5は、円筒部59と、円筒部59より狭径の円筒の外形を有する支持部11から構成され、円筒部59と支持部11が同軸上に配置されている。
【0027】
第一キャップ5の内部には、円筒形状の空間と、針管9の外周とほぼ同じ径であって、針管9を受け入れて外周からこれを支持する狭径の円筒形状をした空間と、これらの空間を接続する先細りテーパー形状の空間が形成されている。また、これらの空間の長手方向の中心軸は互いに一致している。
【0028】
有底円筒形状の第二キャップ7は、この開口端が第一キャップ5の支持部11の全体に被さるように第一キャップ5と着脱可能に嵌め込まれ、円筒部59の支持部11側の縁部によって位置決めされる。
【0029】
図3は、このような注射針保護具1を針管9および針基13に適用した注射針ユニット15を示している。ここで、注射針ユニット15は、針管9と、針管9と接続される針基13と、第一キャップ5と、第二キャップ7とを含んでいる。なお、図3(B)は、図3(A)のIII(B)−III(B)断面を示すが、針管9および針基13は断面ではなく正面を示している。
【0030】
図3に示されるように、針管9の一端部と接続された針基13は、第一キャップ5の支持部11とは反対側の開口端に締め付けられて固定される。この状態で、針基13の先端から針先までの針管9のうち、長手方向に対しほぼ中央部分は、支持部11によって外周が支持される構成となっている。そして、支持部11と針管9とは、密着する構成となっている。すなわち、支持部11の内壁55は、針管9の外周と密着している。
【0031】
したがって、第一キャップ5は、針基13から延出する針管9から、支持部11によって直接支持された針管9までの針基13側の一部を外部から保護する機能を有するとともに、第一キャップ5を固定すればこれと同時に針管9も固定する機能を有している。ここで、針管9および針基13は、金型で成型された第一キャップ5の開口する底面側から挿入されて固定第一キャップ5に固定されてもよいが、針管9および針基13を、長手方向に2つ(またはそれ以上)に分割された第一キャップ5の断片によって挟み、断片を圧着することで第一キャップ5の円筒形状を構成しながら固定されてもよい。
【0032】
第二キャップ7は、第一キャップ5によって保護されない残りの針管9の部分、すなわち、支持部11から針先までの針管9を保護する構成となっている。ここで、第二キャップ7によって覆われる針管9の長さは、バイアルなどの薬剤容器17を用いて混合調製を行える長さに調整されている。
【0033】
図4は、以上のような注射針ユニット15を注射器3の注射筒19の先端部に接続した様子を示している。この接続は、針基13の第一キャップ5によって覆われていない部分を注射筒19の先端の開口に挿入することでなされている。この固定はネジ構造などの周知の方法によって可能である。
【0034】
次に、注射針保護具1を装着した注射器3を固定するための注射器保持機21について説明を行う。注射器保持機21は、何らかの動作を注射器3にさせるために注射器3を保持するものであり、注射器3を保持するマニピュレータの一部構成であってもよい。図5に示されるように、注射器保持機21は、注射針保護具1の第一キャップ5を固定するキャップ固定部23と、注射筒19の端部に設けられたフランジ25を保持するためのフランジ保持部27と、注射器3の押子29を保持する押子保持部31とを主な構成としており、これらはベース33上に配置されている。また、注射器保持機21は、キャップ固定部23、押子保持部31およびベース33をそれぞれ可動させるモータ35、37、39、41を備えている。
【0035】
キャップ固定部23は、モータ35、37によって駆動され、第一キャップ5を両側から挟むようにして固定する構成となっている。キャップ固定部23の斜視図を図6に示す。この図に示されるように、別々のモータ35、37によって駆動される水平板43、45上に、第一キャップ5の先端を固定するための2枚のキャップ先端固定板47、49が鉛直にそれぞれ対向するように設けられている。これらのキャップ先端固定板47、49の対向面は、第一キャップ5を固定するための略台形形状の切り欠きが形成されている。
【0036】
また、水平板43、45上には、キャップ先端固定板47、49と平行に、キャップ根元固定板51、53がそれぞれ対向配置されている。これらのキャップ根元固定板51、53にも略台形形状の切り欠きがそれぞれ形成されており、第一キャップ5の根元がこれらの切り欠きに受け入れられ、両側から挟むように固定される。
【0037】
フランジ保持部27は、図5に示されるように、水平断面が略コ字形状である2枚の同一形状の板がそれぞれ溝を対向するようにしてベース33に対して垂直に設けられている。フランジ保持部27は、この溝に注射器3の注射筒19に設けられたフランジ25の両縁部を格納して注射筒19を保持する機能を有しているが、注射器3の長手方向の移動を規制すれば十分であり、この長手方向に対して垂直な方向を規制する必要はない。したがって、この実施例のフランジ保持部27は、モータなどによって可動しない構成となっている。
【0038】
押子保持部31は、フランジ保持部27の後段側のベース33に垂直に配置されている。ここで、本明細書において後段とは、より押子29のフランジ57側という意味を含む。押子保持部31には、注射器3の押子29の端部に設けられたフランジ57を受け入れる溝が形成されており、この溝に押子29のフランジ57を嵌め込ませ、モータ39を制御して注射筒19内で押子29を往復動作させる。これによって注射筒19内部の薬剤(図示せず)を出し入れさせる。
【0039】
以上のような注射器保持機21の動作を、注射針保護具1を装着した注射器3を用いて説明する。まず、注射器3が注射器保持機21に固定されるまでの動作を説明する。
【0040】
図7(A)、(B)、(C)は、注射器3が注射器保持機21に固定される動作を時系列で示しており、第一キャップ5、第二キャップ7およびキャップ固定部23は水平断面を示している。
【0041】
図7(A)は、注射器3が薬剤混合装置の注射器搭載機構によって注射器保持機21に搭載された後の様子を示すものである。注射筒19のフランジ25と押子29のフランジ57が、それぞれ押子保持部31およびフランジ保持部27の溝に嵌め込まれ、注射器3の長軸方向の動きが規制されるように保持されていている。この段階では、キャップ固定部23は開いた状態なので針管9は正確な位置に固定されていない。また、押子29は注射筒19に最も深く挿入された状態となっている。
【0042】
その後、図7(B)に示されるように、図示しない薬剤混合装置の機構によって第二キャップ7が第一キャップ5から取り外される。
【0043】
そして、図7(C)に示されるように、キャップ固定部23が動作して針管9を固定する。キャップ固定部23は、2つのモータ35、37によって注射針ユニット15の第一キャップ5の先端および根元を両側から挟みこむようにして第一キャップ5を固定している。
【0044】
より詳細には、支持部11との接続部分に近い円筒部59の前段部分を2枚のキャップ先端固定板47、49によって挟まれるように固定されている。このため、第一キャップ5の支持部11を介して針管9が注射器保持機21に対して固定される。
【0045】
また、第一キャップ5の拡径の円筒部59の後段部分は、2枚のキャップ根元固定板51、53によって両側から挟まれるように固定される。これにより、さらに確実に針管9が注射器保持機21に対して固定される。
【0046】
図8は、キャップ先端固定板47、49により第一キャップ5の円筒部59が固定された様子を示したものである。図に示されるように、円筒部59がキャップ先端固定板47、49の向かい合った略台形形状の切り欠きに挟まれることで、キャップ先端固定板47、49が円筒部59の外周の4点に作用し固定されている。
【0047】
ここで、注射器保持機21による保持力をより針管9に伝達させる観点から、キャップ先端固定板47、49によって保持される第一キャップ5の部位を支持部11とし、狭径の支持部11の外周を挟むように直接固定してもよい。
【0048】
注射器3が搭載され、針管9が固定された注射器保持機21は、薬剤混合装置によって混合調製に用いられる。図9(A)は、混合調製の一部の例を示すもので、図示しないゴム栓が詰められたバイアル17の開口に対して針管9が垂直となるように、バイアル17が格納された容器保持機63と注射器保持機21とが対向するように配置された様子を示している。
【0049】
この状態から、図9(B)に示されるように、注射器保持機21のベース33がモータ41によってバイアル17に近接し、針管9がゴム栓を穿刺する。その後、モータ41によって押子保持部31が注射器3の押子29を注射筒19から後退させ、バイアル17内の薬剤を注射筒19へ移動させる。この後は、モータ41によりベース33が図9(A)の位置に戻り、他のバイアル18内へ薬剤を注入させるなどの混合調製が行われる。
【0050】
以上のように、この実施例の注射器3は、針基13側の針管9を保護し、注射器保持機21によって保持される第一キャップ5と、第一キャップ5によって保護されない残りの針管9を保護する第二キャップ7とを備え、第一キャップ5には針管9を外周から支持する支持部11を備えているので、注射筒19の筒先と針基13との接続および針基13と針管9の接続や、注射筒19、針基13などの製造に起因する誤差が生じていても、注射器保持機21やこれを含む薬剤混合装置に複雑な構成を施すことなく、注射器3の針先を薬剤容器17に正確に穿刺させることができる。
【0051】
より具体的には、注射器保持機21のキャップ固定部23は、第一キャップ5を直接固定し、これによる保持力が支持部11の内壁55と密着している針管9に伝達するので、針管9を注射器保持機21に正確に固定することができる。これによって針先をバイアルなどの薬剤容器17の口に正確に挿入させることができる。
【0052】
また、第二キャップ7は第一キャップ5に着脱可能に接続されているので、作業の終了後、注射器3を薬剤混合装置から取り出す際に再び第二キャップ7を第一キャップ5に接続して保護することができる。これは、薬剤容器17から薬剤を注射筒19内に吸引し、これを患者に投与する場合に有益である。
【0053】
(実施の形態2)
図10および図11は、第二の実施例の注射針保護具65を針管9および針基13を嵌め込んだ、注射針ユニット75として示している。図10は、針管9と針基13に装着した第一キャップ67と第二キャップ7を示し、図11は、図10の断面図を示している。ただし、針管9および針基13は断面ではなく正面を示している。ここで第一の実施例と同一の部材、構成には同一の符号を附し、その説明を省略する。
【0054】
第一実施例の注射針ユニット15と第二実施例の注射針ユニット75との違いは、第一キャップ67の構成である。すなわち、図10および図11に示されるように、この実施例の第一キャップ67の支持部11の先端には鍔部69が備えられている。また、支持部11より後段の第一キャップ67の円筒の外周には、第二キャップ7を第一キャップ67に嵌め込む際に、第二キャップ7の開口端を位置決めするためのリング部71が形成されている。
【0055】
円筒形状の支持部11は、拡径の第一キャップ67よりも狭径であり、リング形状の鍔部69の外径は、第一キャップ67の拡径と同じになるように構成されている。したがって、第一キャップ67は支持部11においてリング状の溝73が形成されたような構成となっている。
【0056】
ここで、注射器保持機21による第一キャップ67の支持は、キャップ固定部23のキャップ先端板47、49をこの溝73に嵌め込むことで行ってもよいし、第一実施例と同様に、第二キャップ7の開口端の位置決め用のリング部71と支持部11との間の拡径となっている箇所にキャップ先端板47、49を両側から挟んで針管9を固定してもよい。
【0057】
この実施例では、第一実施例の作用効果に加え、次のような作用効果を奏する。すなわち、薬剤容器17に穿刺し、針管9に薬剤が付着する場合があっても、鍔部69が第一キャップ67の側面にさらに広がるのを防止する。このため、注射器保持機21のキャップ固定部23に薬剤が付着することがなく、衛生を保つことができる。また、リング部71は、第一キャップ67に第二キャップ7を接続する際、第二キャップ7の開口端がリング部71によって位置決めさせるだけでなく、鍔部69のバックアップの役割を担う。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、正確に穿刺する必要のある注射器に適用することができる。特に、自動で対象物に穿刺させる薬剤混合装置等の機器に用いられる注射器に適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 注射針保護具
5 第一キャップ
7 第二キャップ
9 針管
11 支持部
13 針基
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針基に接続された針管に被せられて前記針管を保護する注射針保護具であって、
前記針基側の前記針管を保護するとともに、注射器保持機によって保持される第一キャップと、
前記第一キャップによって保護されない残りの前記針管を保護する第二キャップと、を備え、
前記第一キャップには、前記針管を外周から支持する支持部が備えられていることを特徴とする注射針保護具。
【請求項2】
前記第一キャップの支持部は、前記第一キャップの先端に備えられていることを特徴とする請求項1の注射針保護具。
【請求項3】
前記第一キャップに鍔部が備えられていることを特徴とする請求項1の注射器の注射針保護具。
【請求項4】
前記鍔部は、前記支持部よりも前記針管の針先側に設けられていることを特徴とする請求項3の注射器の注射針保護具。
【請求項5】
前記注射器保持機によって保持される前記第一キャップの部位は、前記支持部であることを特徴とする請求項1の注射針保護具。
【請求項6】
前記支持部の内壁は、前記針管の外周と密着していることを特徴とする請求項1の注射針保護具。
【請求項7】
請求項1−6のいずれか1項に記載の注射針保護具を備えることを特徴とする注射針ユニット。
【請求項8】
請求項7の注射針ユニットを備えることを特徴とする注射器。
【請求項1】
針基に接続された針管に被せられて前記針管を保護する注射針保護具であって、
前記針基側の前記針管を保護するとともに、注射器保持機によって保持される第一キャップと、
前記第一キャップによって保護されない残りの前記針管を保護する第二キャップと、を備え、
前記第一キャップには、前記針管を外周から支持する支持部が備えられていることを特徴とする注射針保護具。
【請求項2】
前記第一キャップの支持部は、前記第一キャップの先端に備えられていることを特徴とする請求項1の注射針保護具。
【請求項3】
前記第一キャップに鍔部が備えられていることを特徴とする請求項1の注射器の注射針保護具。
【請求項4】
前記鍔部は、前記支持部よりも前記針管の針先側に設けられていることを特徴とする請求項3の注射器の注射針保護具。
【請求項5】
前記注射器保持機によって保持される前記第一キャップの部位は、前記支持部であることを特徴とする請求項1の注射針保護具。
【請求項6】
前記支持部の内壁は、前記針管の外周と密着していることを特徴とする請求項1の注射針保護具。
【請求項7】
請求項1−6のいずれか1項に記載の注射針保護具を備えることを特徴とする注射針ユニット。
【請求項8】
請求項7の注射針ユニットを備えることを特徴とする注射器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−120761(P2012−120761A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275332(P2010−275332)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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