説明

注射針用廃棄容器

【課題】 容器本体を移動しないように支えることなく差込方式の注射針を注射器本体から抜取る操作簡単な注射針用廃棄容器を提供する。
【解決手段】 容器本体1の蓋2に、注射器本体A1を残して容器本体1内に挿し入れる針外し孔7を開孔し、該針外し孔7から容器本体1内に挿入される注射器本体Aの下端縁が蓋2表面に係合するように同注射器本体Aを下向きに回動させた際、前記係合部を支点B、蓋2裏面に係合するハブ鍔部a3’を作用点Cに作用するモーメントのベクトルでハブa3を注射器本体A1下端のハブ差込筒a2から抜取るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用済の注射器本体に対して差込式に設けられている注射針を抜取る注射針用廃棄容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院等では、感染症防止のために使用済の注射器は注射器本体と注射針とを再利用できないように分別して廃棄するのが望ましいとされており、その際、注射針は注射器本体から抜き取って容器に収容するようにしてある。
この種の注射針用廃棄容器には、様々な構成のものが知られている。
その例としては、容器本体の蓋に開孔した円筒状穴に連通してコ字形状孔、U字形状孔を開孔し、そのU字形状孔の孔下縁にその孔先端方向に向かって漸増する傾斜面を形成し、円筒状孔にいったん差し込まれる注射器基端のハブと注射器本体との間で露呈するハブ差込筒部分をU字形状孔にスライドさせて、漸増する傾斜面でハブを強制的に押下げて注射針をハブ差込筒から抜取り、容器本体内に落下させる構造(例えば特許文献1参照)や、容器本体の蓋に形成した切欠部に、注射器基端のハブと注射器本体下端との間で露呈するハブ差込筒部分を差し込んで、注射器本体を上方に引っ張ることでその切欠部縁を固定壁にして注射針を抜取り、容器本体内に落下させる構造(例えば特許文献2)に構成して、注射器のスライド力を蓋の肉厚の漸増で下向きな力に変換して注射針を注射器本体から抜取ったり、蓋に注射器引き抜き時の固定壁を設けて、その固定壁で注射針を抜取るようになっているのが主流になっている。
【0003】
しかしながら、前記スライド方式は、注射器をスライドさせて、その注射器本体と注射針との間の隙間を漸増する傾斜面に楔状に喰込ませて、その喰込み力を利用して注射針を押下げるものであるから、喰込み力が生じるように容器本体を手で支えて移動しないようにする必要がある。
また、引き抜き方式においても、容器本体を手で押さえて、引き抜き力で容器本体が浮き上がらないようにしなければならない。
そのため、片手で容器本体を固定しての注射器操作になり、注射針の抜取る作業が面倒なものであった。
【特許文献1】実開平7−9335号公報
【特許文献2】特開2003−285856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、容器本体を移動しないように支えることなく差込方式の注射針を注射器本体から抜取る操作簡単な注射針用廃棄容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために講じた技術的手段は、容器本体の蓋に、注射器本体を残して容器本体内に挿し入れる針外し孔を開孔し、該針外し孔から容器本体内に注射針を挿し入れる注射器本体の下端縁が蓋表面に係合するように同注射器本体を下向きに回動させた際、前記係合部を支点、蓋裏面に係合するハブ鍔部を作用点とするモーメントのベクトルで注射針を注射器本体下端のハブ差込筒から抜取るように構成していることを特徴とする注射針用廃棄容器(請求項1)。
前記針外し孔は、前記ハブ鍔部よりも大形とするが、若干大形に開孔するのが好適なものである。
また、容器本体の蓋に、少なくとも注射針基端のハブを容器本体内に挿し入れ可能とする大きさを有する注射器挿入孔と、その注射器挿入孔に連通して開孔された針外し横孔とを備え、前記針外し横孔は、注射器本体下端とハブとの間で露呈するハブ差込筒部分をスライドガイド可能とする程度の小幅に形成し、前記針外し横孔から前記ハブ差込筒部分がスライド挿入される注射器本体の下端縁を蓋表面に係合するように同注射器本体を前記針外し横孔上方で交差する方向に下向きに回動した際、前記係合部を支点、蓋裏面に係合するハブ鍔部を作用点とするモーメントのベクトルで注射針を前記ハブ差込筒から抜取るように構成している場合も有効なものである(請求項2)。
前記注射器挿入孔は、注射針のハブ鍔部を挿入できる径を最低限とする任意な大きさに形成する。
【0006】
以上の手段よれば、請求項1にあっては、注射器本体を残して注射針基端のハブを針外し孔から挿し入れた状態で注射器本体を下向きに回動させるだけで、作用点に生じるモーメントのベクトル(下向きベクトル)で注射針をハブ差込筒から抜取る。
また、請求項2にあっては、注射器挿入孔に注射器基端のハブを挿し入れ、注射器本体下端とハブ鍔部との間のハブ差込筒部分を小幅な針外し横孔にスライドさせ、注射器本体を針外し横孔上方を交差する方向に下向きに回動させることで、その作用点に生じるモーメントのベクトル(下向きベクトル)で注射針をハブ差込筒から抜取る。
【0007】
しかも、前記注射器挿入孔に代えて、注射器本体を残して容器本体内に挿し入れる針外し孔を容器本体の蓋に開孔し、該針外し孔から注射器を容器本体内に挿し入れる注射器本体の下端縁が蓋表面に係合するように同注射器本体を下向きに回動させた際、前記係合部を支点、蓋裏面に係合するハブ鍔部を作用点とするモーメントのベクトルで注射針を注射器本体下端のハブ差込筒から抜取るように構成していると、より有効なものである(請求項3)。
【0008】
以上の手段によれば、請求項1、請求項2双方の手法を使用して注射器本体下端のハブ差込筒から注射針を抜取る。
【0009】
そして、針外し孔が真円からなる孔であると、360度任意な方向からの注射器本体の下向き回動で注射針を抜取れるし(請求項4)、また容器本体の蓋が斜面で構成されていると、自然な作業姿勢で注射器をその針外し孔や注射器挿入孔に挿し入れる上で好適なものである(請求項5)。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のように構成したから下記の利点がある。
(請求項1)針外し孔に注射器本体を残して容器本体内に挿し入れた状態で、注射針本体を下向きに回動させる手法で、作用点に生じるモーメントのベクトル(下向きベクトル)で注射器本体のハブ差込筒から注射針の抜取りを行なうものであり、梃子の原理を利用するものであるから、その力は軽いもので良く、容器本体を片手で支えずに注射針の抜取り作業が行なえ、注射針の抜取りが非常に簡単で、特に注射器本体がハブ鍔部よりも大径な注射器からの注射針の抜取りに対して有効である。
【0011】
(請求項2)いったん注射器挿入孔に挿し入れた状態でそれに連通する針外し横孔に注射器下端とハブの間で露呈するハブ差込筒部分をスライドさせて、注射針本体をその針外し横孔上方で交差するように下向きに回動させる手法で、容器本体を支えることなく注射針の抜取りが軽い力で簡単に行なえ、特にハブ鍔部と注射器本体とが同等の大きさまたは若干小形な注射器から注射針を抜取ることができる。
【0012】
(請求項3)そして、請求項1の針外し孔と、請求項2記載の針外し横孔とを連通して形成していると、ハブ鍔部に対して注射器本体が大径の注射器は、針外し孔を、またハブ鍔部と注射器本体が同等の大きさまたは若干小形な注射器の場合には、針外し横孔を使用して、注射針の抜取りが行なえ、非常に便利である。
【0013】
(請求項4)また、前記針外し孔が真円であるので、360度、どの方向から下向きに回動しても、注射針を抜取り落下させる利便性を達成できる。
【0014】
(請求項5)しかも、容器本体の蓋が斜面であると、例えば椅子に座る自然な作業姿勢のまま注射器を掴む手を伸ばすことによって針外し孔や注射器挿入孔にその注射針を挿入できるから、注射針の抜取り作業を一層簡単なものにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明注射針用廃棄容器の実施の数例を図面に基づいて説明すると、図1〜図4は、その第1の実施の形態を、図5は第2の実施の形態を、図6は第3の実施の形態を、図7は第4の実施の形態を、図8は第5の実施の形態を各々示している。
【実施例1】
【0016】
容器本体1は、図2に示すように開放部若干下位の外面にアンダーカット11を設け、該アンダーカット11に内蓋2の側壁部12下端から内向きに突設した掛止突段部22を掛止して抜取り不能とし、該内蓋2に対して外蓋3を回転可能に設けた二重蓋構造になっている。
また、前記外蓋3は、図2に示すように内蓋2の中央部に抜取り不能に掛止した掛止部4を中心に回転可能に組み付けられており、内蓋2の略一半部に対応して窓部5を開孔し、その側壁部13と、前記内蓋2の側壁部12との間に螺合部6を形成すると共に、側壁部13下端内面に、その螺合による緊締時に内蓋2側壁部12外面に突設した掛合突起32を乗り越えて解除不能(逆回転不能)に掛止する掛止爪23を形成した構成になっている。
【0017】
前記内蓋2には、外蓋3の窓部5に臨んで注射器Aの注射針a1を外す針外し孔7と、針外し横孔8とが連通して開孔されている。
【0018】
注射器Aは、図1、図2等に示すように注射器本体A1下端から先細りテーパー状をもって突設するハブ差込筒a2を、注射針a1基端のハブa3に形成している差込孔a2”に差込んで嵌合することによって注射器本体A1に注射針a1を組み付け、ハブa3の注射器本体A1側の端部にハブ鍔部a3’を周設する今日周知の差込式のものである。
【0019】
前記針外し孔7は、注射器本体A1がハブ鍔部a3’よりも大径な注射器Aからの注射針a1の抜取り用として、針外し横孔8は、注射器本体A1がハブ鍔部a3’と同等の大きさまたは若干小形な注射器Aからの注射針a1の抜取り用として使用可能になっている。
【0020】
前記針外し孔7は、前記ハブ鍔部a3’よりも若干大形な真円をもって開孔して、注射針a1を挿し入れると、注射器本体A1を残して注射針a1と共にその注射針a1基端に一体的に設けられているハブa3が容器本体1内に挿入されるようになっている。
【0021】
容器本体1の蓋、即ち前記内蓋2には、前記針外し孔7の孔下縁から所要高さのリブ17が下方に起設されている。
前記針外し孔7のリブ17は、図2等に示すように注射器本体A1を残して注射針a1をハブa3と共に容器本体1内に挿入した後、注射器本体A1の下端縁が内蓋2の表面に係合するように回動させた際、その係合部を支点B、リブ17端に係合するハブ鍔部a3’を作用点Cとするモーメントによって作用点Cに生じるベクトル(下向きベクトル)がハブa3を、注射器A下端のハブ差込筒a2から抜取る所要の力をもって作用するように所要の高さをもって周設されている。
【0022】
また、前記針外し横孔8は、注射器本体A1下端とハブ鍔部a3’との間で露呈するハブ差込筒部分a2’をスライドガイド可能とする程度の小幅をもって針外し孔7に連通して長孔状に開孔されている。
【0023】
前記針外し横孔8には、図3に示すように前記する針外し孔7と同様に前記リブ17に連続して下縁から所要高さのリブ18を下方に起設して、そのリブ18端と内蓋2表面との間隔を、注射器本体A1の下端と、ハブ鍔部a3’上面との間隔よりも若干小さくなるように設定して、注射器本体A1下端とハブ鍔部a3’との間で露呈するハブ差込筒a2’部分をスライドさせた後、注射器本体A1の下端縁を内蓋2表面に係合するように同注射器本体A1を前記針外し横孔8上方で交差する方向に下向きに回動した際、前記係合部を支点B、リブ18端に係合するハブ鍔部a3’を作用点Cにしたモーメントのベクトル(下向きベクトル)が注射針a1を前記ハブ差込筒a2から抜取る所要の力をもって作用するように構成されている。
【0024】
前記するリブ17、18は、内蓋2の肉厚が薄肉の場合、注射器本体A1を下向きに回動すると、大きく回動して、モーメントのベクトル(下向きベクトル)が、ハブa3を注射器本体A1下端のハブ差込筒a2から押下げる方向に所要の力をもって作用しなくなる。それを修正するために設けられている。
そのため、前記作用点Cに作用するモーメントのベクトル(下向きベクトル)が、ハブa3をハブ差込筒a2から抜取る方向に所要の抜取り力をもって作用させる必要肉厚をもって前記内蓋2厚が形成されている場合には、前記リブ17、18は必要としない。
【0025】
前記内蓋2と外蓋3とは図4に示す概略図で示すように、外蓋3を時計回り方向に回転させて緊締する構造になっており、内蓋2の側壁部12外面に、中心を挟んで対称状の位置に掛合突起(後述では図4において左側の掛合突起を第1掛合突起、右側の掛合突起を第2掛合突起と称する)32、32を外向き突設する一方、外蓋3の側壁部13内面に、中心を挟んで180度よりも若干狭角をもって一方に前記第2掛合突起32を乗り越える三角形状の前記掛止爪23を、他方に回転防止用の突起33を各々突設している。
【0026】
前記掛止爪23は、同図4に示すように内蓋2の曲面に直交するように設けた直立面23aと、その直立面23a突端から外蓋3における時計回り方向の側壁部13部分内面に亘って連設する傾斜面23bとからなる横断面三角形状を呈している。
【0027】
その図4(a)は、外蓋3を内蓋2に緊締していない状態を示し、外蓋3の窓部5に臨む内蓋2部分に前記針外し孔7、針外し横孔8を連通して開孔し、掛止爪23の直立面23aが内蓋2の第1掛合突起32の時計回り方向側の側面32aから若干離間し、回転防止用の突起33が第2掛合突起32の時計回り方向側の側面32aに当接して、外蓋3の時計回り方向への回転を容認するようになっている。
この状態から時計回り方向に外蓋3を回転すると、図4(b)を経て図4(c)の緊締状態に変化する。この図4(c)は、外蓋3を時計回り方向に180度程度に回転させており、三角形状の掛止爪23が第2掛合突起32を乗り越えてその直立面23aが、その時計回り方向側の側面32aに接近または当接すると共に、回転防止用の突起33が第1掛合突起32の反時計回り方向側の側面32bに接近または当接して、三角形状の掛止爪23と、回転防止用の突起33とが両掛合突起32、32間で身動きできずに、外蓋3を内蓋2に対して弛緩不能、即ち逆回転不能にしている。
【0028】
以上のように構成されているこの実施の形態の注射針用廃棄容器で注射針a1を注射器本体A1から抜き取る時には、注射器本体A1がハブ鍔部a3’よりも大径な注射器Aにあっては、注射器本体A1下端が内蓋2表面に突き当るように注射針a1を挿し入れ、図2(a)(b)(c)に示すよう注射器本体A1を下向きに回動操作によって作用点Cに生じるモーメントのベクトル(下向きベクトル)によって注射器本体A1のハブ差込筒a2から注射針a1を抜き取って落下させる。
そして、注射器本体A1がハブ鍔部a3’と同等の大きさや若干小形な注射器Aにあっては、前記針外し孔7を利用してそのモーメントのベクトル(下向きベクトル)で注射針a1を抜取ろうとすると、注射器本体A1が大きく回動して、そのモーメントのベクトル(下向きベクトル)が作用点Cに対して注射針a1の抜取り方向に所要の抜取り力をもって作用しない虞れがある。
そのため、斯様な注射器Aにあっては、針外し孔7に同様にハブa3まで挿し入れた後、図3(b)に示すように注射器本体A1下端とハブa3との間のハブ差込筒部分a2’を針外し横孔8にスライドさせてから、前記針外し横孔8上方で交差するように注射器本体Aを下向きに回動することによって、同じくモーメントのベクトル(下向きベクトル)を作用点Cに所要の抜取り力をもって作用させて、注射器本体A1のハブ差込筒a2から注射針a1を抜き取り落下させることができる。
そして、容器本体1内が注射針a1で充満すると、前記する針外し孔7及び針外し横孔8を外蓋3で被蓋するように外蓋3を内蓋2に対して緊締して、開蓋不能にする。
【実施例2】
【0029】
次に、図5に示す第2の実施の形態を説明すると、この実施の形態は、前記針外し孔7の孔上縁にテーパー部27を形成して、そのテーパー部27の下り勾配による案内作用で針外し孔7への注射針a1の挿し入れが楽になるように配慮したものである。
【実施例3】
【0030】
更に、図6に示す第3の実施の形態を説明すると、この実施の形態は、前記針外し孔7と、針外し横孔8とを別々に形成したものである。
その針外し横孔8にはハブa3を容器本体1内に挿し入れる任意大きさの注射器挿入孔28を針外し横孔8に連通して開孔し、その注射器挿入孔28に注射器Aをハブa3まで挿し入れた後、針外し横孔8に注射器Aをスライド可能に構成している。
【実施例4】
【0031】
また、図7に示す第4の実施の形態は、容器本体1の変形例を示し、螺嵌式の蓋21にヒンジ部10を介して前記針外し孔7を被蓋するフラップ9を上下回動可能に設け、該フラップ9先端のタブ19を蓋21に開孔した掛止孔21aに掛止可能とする構成にして、容器本体1内が注射針a1で充満した時に、そのフラップ9で針外し孔7を被蓋する構成になっている。
無論、針外し横孔8を針外し孔7に連通または別個に有する蓋21にあっても、前記フラップ9でその針外し横孔8を被蓋できるようにすること言うまでもないものである。
【実施例5】
【0032】
更に、図8に示す第5の実施の形態は、容器本体1の変形例であり、針外し孔7や針外し横孔8を開孔している蓋を傾斜状にして、椅子に座る自然な作業姿勢のまま注射器Aを掴む手を伸ばすことによって針外し孔7や注射器挿入孔28にその注射針a1を挿し入れることができるようにしている。
【実施例6】
【0033】
注射針基端のハブa3は、注射器メーカーに関わらずそのハブ鍔部a3’を円形、略楕円形、横長矩形等に形成している。そして、そのハブ鍔部a3’が円形状のものにあっては、概ね直径を6mm〜8mm、それ以外のものにあっては短手寸法6mm以内、長手寸法を8mm以内にされている。
そして、注射器本体A1下端とハブa3との間で露呈するハブ差込筒部分a2’の筒径最大径は、注射器に関係なく4.4mm程度。
注射器本体A1下端とハブa3との間で露呈するハブ差込筒部分a2’の長さは、注射器本体A1がハブ鍔部a3’よりも大径な注射器にあっては、1.9mm〜2.1mm程度、ハブ鍔部a3’と注射器本体A1とが同等の大きさまたは若干小形な注射器にあっては、1.1mm程度であった。
そのため、前記針外し孔7は、その最大寸法8mmよりも0.1〜0.2mm程度大径をもって開孔し、注射器本体A1を下向きに回動させた同注射器本体A1の下端縁が係合する内蓋2表面部分と、ハブ鍔部a3’が係合する内蓋2裏面部分の間隔、即ち支点作用点間高低差を1.8mmに設定した。
また、前記針外し横孔8においては、4.5mm程度の幅寸法をもって開孔し、その支点作用点高低差を1mmに各々設定し、注射針の抜取り効果について実験を行った。
尚、前記のように支点作用点間高低差が1.8mm、1mmと相違しているため、針外し横孔8部分については、針外し孔7部分に対して段差を設けて支点作用点高低差を前記1mmに小さく設定した。
それによると、針外し孔7、針外し横孔8どちらとも注射器本体A1を下向きに回動させた結果、容器本体1を片手で支えずとも簡単にハブ差込筒a2’から注射針a1を抜取ることができるものであった。これは、回動角度45度以内で、注射器本体A1の下端が内蓋2表面に係合すると共に、ハブ鍔部a3’が内蓋2裏面に係合し作用点になって、モーメントの大きな下向きベクトルがその作用点に集中するためと推測される。
この実験例は、あくまで一例であり、前記回動角度は小さな角度の方が、モーメントの、より大きな下向きベクトルが作用点であるハブ鍔部に作用するため好ましいこと言うまでもないものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施の形態の注射針用廃棄容器の斜視図で、注射器本体がハブ鍔部よりも大径な注射器のその注射針を針外し孔に挿し入れる状態を示す。
【図2】図1の(2)−(2)線拡大断面図で蓋部分を示し、(a)は、針外し孔に注射針を挿し込み、注射器本体を下向きに回動させた状態を示す、(b)は、作用点Cに作用するモーメントのベクトルで注射針を注射器本体から抜取る状態を示す、(c)は、完全に抜取られた状態を示す。
【図3】ハブ鍔部に対して注射器本体が同等径または若干小径な注射器のその注射針と針外し横孔との関係図であり、(a)は、その注射針を針外し横孔に挿し入れる状態を示す、(b)は作用点に作用するモーメントのベクトルで注射針を注射器本体から抜取る状態を示す。
【図4】外蓋と内蓋との関係を概略的に示す平面図で、(a)は、弛緩時の外蓋の内蓋との関係を示す、(b)は、外蓋を時計回り方向に回転している状態を示す、(c)は、緊締時の外蓋と内蓋との関係を示す。
【図5】第2の実施の形態の注射針用廃棄容器の要部の断面図。
【図6】第3の実施の形態の注射針用廃棄容器の平面図。
【図7】第4の実施の形態の注射針用廃棄容器の縦断面図。
【図8】第5の実施の形態の注射針用廃棄容器の正面図で一部切欠して示す。
【符号の説明】
【0035】
1:容器本体 2:蓋(内蓋)
7:針外し孔 8:針外し横孔
A:注射器 A1:注射器本体
a2:ハブ差込筒 a3:ハブ
a3’:ハブ鍔部 B:支点
a1:注射針 a2”:差込孔
C:作用点 28:注射器挿入孔
a2’:注射器本体下端とハブとの間で露呈するハブ差込筒部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の蓋に、注射器本体を残して容器本体内に挿し入れる針外し孔を開孔し、該針外し孔から容器本体内に注射針を挿し入れる注射器本体の下端縁が蓋表面に係合するように同注射器本体を下向きに回動させた際、前記係合部を支点、蓋裏面に係合するハブ鍔部を作用点とするモーメントのベクトルで注射針を注射器本体下端のハブ差込筒から抜取るように構成していることを特徴とする注射針用廃棄容器。
【請求項2】
容器本体の蓋に、少なくとも注射針基端のハブを容器本体内に挿し入れ可能とする大きさを有する注射器挿入孔と、その注射器挿入孔に連通して開孔された針外し横孔とを備え、前記針外し横孔は、注射器本体下端とハブとの間で露呈するハブ差込筒部分をスライドガイド可能とする程度の小幅に形成し、前記針外し横孔から前記ハブ差込筒部分がスライド挿入される注射器本体の下端縁を蓋表面に係合するように同注射器本体を前記針外し横孔上方で交差する方向に下向きに回動した際、前記係合部を支点、蓋裏面に係合するハブ鍔部を作用点とするモーメントのベクトルで注射針を前記ハブ差込筒から抜取るように構成していることを特徴とする注射針用廃棄容器。
【請求項3】
前記注射器挿入孔に代えて、注射器本体を残して容器本体内に挿し入れる針外し孔を容器本体の蓋に開孔し、該針外し孔から容器本体内に注射針を挿し入れる注射器本体の下端縁が蓋表面に係合するように同注射器本体を下向きに回動させた際、前記係合部を支点、蓋裏面に係合するハブ鍔部を作用点とするモーメントのベクトルで注射針を注射器本体下端のハブ差込筒から抜取るように構成していることを特徴とする請求項2記載の注射針用廃棄容器。
【請求項4】
前記針外し孔が真円からなる孔であることを特徴とする請求項1または3記載の注射針用廃棄容器。
【請求項5】
前記容器本体の蓋が斜面で構成されていることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の注射針用廃棄容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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