説明

洋上オフローディング装置

【課題】天然ガスハイドレートペレット等の固体物を、洋上生産設備や輸送船等の複数の洋上浮体間で、海象によって生じる洋上浮体間における相対変位を吸収しながら、移送できる洋上オフローディング装置において、旋回部分を比較的小さくして、洋上浮体間の旋回方向の変位に対応可能で、且つ、旋回機構の小型化、駆動力の省力化、オフローディング装置全体の軽量化を図ることができる洋上オフローディング装置を提供する。
【解決手段】第1洋上浮体側20から、垂直方向搬送手段11と水平方向搬送手段12A,12Bを経由して搬送された固形物を伸縮性のシューター13で落下させながら導いて、第2洋上浮体30に移送するオフローディング装置1において、水平方向搬送手段12Aを配置した固定水平張出部15bの先端側に設けた旋回水平張出部15cを水平搬送手段の一部12Bと共に、第1洋上浮体20のヨウ方向に旋回可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガスハイドレート洋上生産設備で生産した天然ガスハイドレートのペレット状固形物等の固体貨物を、洋上で輸送船に移送するための洋上オフローディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス資源として、最近、東南アジアやオセアニアに、小規模のガス田が集中的にあることが知られるようになったが、これらのガス田の殆どが海洋ガス田である。
【0003】
この天然ガスの輸送に関しては、従来技術では、天然ガスを液状化した状態で、洋上生産設備(FSPO:Floating Production Storage Offloading system )からシャトルと呼ばれる輸送船に移送し、この輸送船を港湾に移動して陸揚げする方式が考えられている。
【0004】
これらのLNG等の液体貨物を移送する場合には、輸送船を洋上生産設備に係船し、貨物をオフローディングするが、移送対象が流体貨物であるため、パンタグラフ機構等を採用して移送と動揺吸収機構を兼用する配管やフレキシブルホースを採用したりしている。このパンタグラフ式の場合は、リンクの結合点にスイベルを採用することにより、パンタグラフ機構の簡略化を図っている。
【0005】
これらの装置の一つに、洋上生産設備と輸送船との間にパイプラインを形成させるためのオフローディング接続装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、この比較的小規模の海洋ガス田においては、ガス田の直上の海面に洋上生産設備を配置して、採掘した天然ガスを洋上で直接、天然ガスと水とが所定の圧力及び温度条件下で固体として安定したシャーベット状の水和物であるハイドレート(NGH:Natural Gas Hydrate )にして、ペレット状固形物として取り扱うことにより、安全性、安定性及び輸送効率を高めることができる。
【0007】
天然ガスを洋上で直接ハイドレート化し、積み出すことにより、洋上で天然ガスハイドレートを生成して輸送する方式は、陸上まで天然ガスを移送し、陸上で天然ガスハイドレートを生成する方式に比べて、輸送コストを20%程度削減できると見込まれている。
【0008】
この天然ガスハイドレートの海上輸送においては、洋上生産設備で製造した天然ガスハイドレート貨物を、予定の運用条件下において安全かつ確実に効率良く輸送船に移送することが重要となる。この天然ガスハイドレートペレットのオフローディングにおいては、搬送物が固体貨物であるため、液体貨物搬送用のスイベル等を利用した管路やホース等を使用することができないので、固体搬送用の装置が必要となる。
【0009】
この天然ガスハイドレートの搬送用装置として、スラリー化して輸送する荷揚げ装置や荷役方法が提案されている(例えば、特許文献2,特許文献3参照。)。また、スラリー化せずにペレット状で移送する荷役並びに輸送方法も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。また、一方で、石炭等のばら荷を輸送船から陸揚げするための荷役装置として多くのアンローダー装置が提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0010】
しかしながら、これらの輸送方法においては、港湾内の岸壁や桟橋で荷役することを想定しており、波浪や風や潮流等の海象条件により、動揺する洋上生産設備から、この洋上生産設備と同様に動揺している輸送船に移送するという、洋上における移送を想定していない。そのため、これらの装置は、洋上オフローディングでは、移送元となる洋上生産設備と、移送先となる輸送船の相対運動や相対変位が、陸揚げの場合に比較して著しく大きくなり使用できないという問題がある。
【0011】
例えば、全長300mの洋上生産設備(FPSO)に、全長300mの輸送船を係船し、有義波高4m,周期8sの波、風速10m/s,風向30degの風、流速1ktの潮流を想定した場合に、計算で、洋上生産設備の船尾と輸送船との相対変位は最大で、X方向0.96m,Y方向2.84m,Z方向14.34mとなっている。
【0012】
これだけ、大きな相対変位を吸収できる装置は、従来技術の装置ではないため、新たに開発する必要があり、洋上生産設備(FPSO)と輸送船の間を、洋上生産設備側からNGHペレットを受ける垂直コンベアと、この垂直コンベアで上昇されたNGHペレットを受け入れ部で受けて先端部に搬送する水平コンベアと、この水平コンベアの先端部近傍に配置され、この水平コンベアで搬送されたNGHペレットを落下させながら、輸送船側に導くシューターとを有した荷役装置で構成すると共に、このシューターを洋上生産設備と輸送船の間の相対変位を吸収する伸縮性を備えた蛇腹構造で形成して構成した洋上オフローディング装置が考えられ、既に、特願2004−196775号にて提案されている。
【0013】
しかしながら、洋上生産設備に係船された輸送船の振れ回りによる、洋上生産設備と輸送船との間の旋回方向の変位が生じるので、これに対応する必要がある。そのため、オフローディング装置全体を旋回可能に構成することも考えられるが、オフローディング装置全体の旋回では、旋回角が少なくて済むが、一方で、旋回可能な部分及びその重量が大きくなるため、旋回機構や旋回用の駆動装置が大きくなり、旋回用の駆動力も大きくなるという問題がある。
【0014】
【特許文献1】特開2003−146400号公報
【特許文献2】特開2003−285792号公報
【特許文献3】特開2003−171678号公報
【特許文献4】特開2002−220353号公報
【特許文献5】特開平11−49374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、天然ガスハイドレートペレット等の固体物を、洋上生産設備や輸送船等の複数の洋上浮体間で、海象によって生じる洋上浮体間における相対変位を吸収しながら移送できる洋上オフローディング装置において、ヨウ方向の旋回部分を比較的小さくして、洋上浮体間のヨウ方向の変位に対応可能で、且つ、旋回機構の小型化、旋回用駆動力の省力化、オフローディング装置全体の軽量化を図ることができる洋上オフローディング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するための本発明の洋上オフローディング装置は、第1洋上浮体の甲板上に設けられた支柱部と、該支柱部の上部で洋上側に張り出した水平張出部とからなる支持部を備えると共に、前記支柱部に配置された垂直方向搬送手段と、前記水平張出部に配置された水平方向搬送手段と、前記第1洋上浮体と第2洋上浮体の間の相対変位を吸収する伸縮性を備えた蛇腹構造で形成したシューターとを有し、第1洋上浮体からの固形物を、前記垂直方向搬送手段と前記水平方向搬送手段により、前記シューターの上部に搬送し、該搬送した固形物を落下させながら前記シューターで前記第2洋上浮体側に導いて、前記第1洋上浮体から前記第2洋上浮体へ固形物を移送する洋上オフローディング装置であって、前記水平張出部において固定水平張出部の先端側に設けた旋回水平張出部を前記水平搬送手段の一部と共に、前記第1洋上浮体のヨウ方向に旋回可能に設けて構成する。
【0017】
この構成によれば、洋上オフローディング装置の水平方向搬送手段を配置する水平張出部において固定水平張出部の先端側に設けた旋回水平張出部を水平方向搬送手段の一部と共に、第1洋上浮体のヨウ方向に旋回可能に設けているので、第1洋上浮体のヨウ方向に、水平方向搬送手段の先端を手動、好ましくは自動で旋回させて、水平方向搬送手段の先端を第2洋上浮体に略正対させることができる。
【0018】
従って、両洋上浮体間の水平回転方向(ヨウ)の相対変位の内の長周期部分をこの旋回により吸収することができ、シューターによる吸収量を波の周期に対応する相対変位部分に対処できる量に減少することができる。その結果、水平回転方向の相対変位に対するシューターによる吸収量を大幅に軽減することができる。
【0019】
しかも、この構成によれば、洋上オフローディング装置のオフローディング装置全体を旋回させる場合に比べて、可動部分が著しく小さくなるので、旋回機構が小さくなり、旋回用の駆動装置も小さくなる。従って、旋回用駆動力の省力化とオフローディング装置全体の軽量化及び小型化を図ることができる。
【0020】
そして、この洋上オフローディング装置は、前記固形物が天然ガスハイドレ−トのペレット状固形物であり、前記第1洋上浮体が洋上生産設備であり、前記第2洋上浮体が輸送船である場合に、特に、大きな効果を奏することができる。
【0021】
また、上記の洋上オフローディング装置において、前記垂直方向搬送手段を垂直コンベアで構成すると共に、前記水平方向搬送手段を第1水平コンベアと第2水平コンベアとで構成し、前記第1水平コンベアを前記固定水平張出部に配置し、前記第2水平コンベアを、前記旋回水平張出部に配置すると共に、前記第1水平コンベアで搬送される前記固形物を前記第2水平コンベア上に落下させて、前記固形物を第1水平コンベアと第2水平コンベア経由で前記シューターに導いて、前記第1洋上浮体から前記第2洋上浮体へ前記固形物を移送するように構成すると、この構成により、水平方向搬送手段の先端側の一部を比較的単純な構成で旋回可能に構成することができる。
【0022】
更に、上記の洋上オフローディング装置において、前記旋回水平張出部を、シリンダ装置により能動的に旋回可能に形成すると共に、前記第1洋上浮体と前記第2洋上浮体との相対運動のデータを基に、前記旋回水平張出部から見た前記第2洋上浮体の長周期成分におけるヨウ方向変位角が小さくなるように前記旋回水平張出部の旋回を制御するように構成すると、この構成により、第1洋上浮体のヨウ方向に、旋回水平張出部及び水平方向搬送手段の先端を自動で旋回させて、水平方向搬送手段の先端を第2洋上浮体に略正対させることができる。特に、両洋上浮体間の水平回転方向(ヨウ)の相対変位の内の長周期部分は予測し易いので、この自動旋回により吸収することができる。その結果、水平回転方向の相対変位に対するシューターによる吸収量を大幅に軽減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の洋上オフローディング装置によれば、洋上オフローディング装置のオフローディング装置全体を旋回させる場合に比べて、旋回部分を比較的小さくして、洋上浮体間の旋回方向の変位に対応可能で、且つ、旋回機構の小型化、駆動力の省力化、オフローディング装置全体の軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係る洋上オフローディング装置の実施の形態について説明する。図1〜図4に示すように、この洋上オフローディング装置1は、第1洋上浮体である洋上生産設備20から、第2洋上浮体である輸送船30へ、固形物である天然ガスハイドレートペレット(以下、NGHペレットと称する。)を移送する装置である。
【0025】
そして、第1洋上浮体である洋上生産設備20は、図1及び図2に示すように、NGH貨物倉21の容積を大きくとるために、例えば、船首尾をカットアップした箱型バージ船型で形成され、損傷時の残存能力を踏まえて二重底、二重船側構造が採用される。なお、この二重構造部に生成水を受け入れるためのバラスト兼用のタンクが配置される。
【0026】
この洋上生産設備20の上甲板の下には船首機械室23、貨物倉21、船尾機械室24が設けられ、また、上甲板上には居住設備25、NGH生成プラント26、搬送装置である搬出側水平コンベア22が、貯蔵設備である貨物倉21から船尾部に向かって船長方向に延びるように設けられる。
【0027】
また、この洋上生産設備20の係留方式は海象条件及び貨物倉の容積効率を考慮して、図1及び図2に示すように、船首に外装式でターレットにヨーク係留されるので、安全を考慮し、居住設備25が風上となる船首部に配置され、オフローディング装置1が船尾部に配置される。
【0028】
また、輸送船30は、NGHペレット輸送用として建造され、図1及び図2に示すように、NGHペレット用に船倉33が船長方向に配置されると共に、船首部に受け入れ用垂直コンベア31が配置され、更に、上甲板上に受け入れ用水平コンベア32が配置される。この受け入れ用水平コンベア32は、受け入れ用垂直コンベア31の排出口31bから船長方向に延びて、各船倉33に届くように配置される。
【0029】
そして、この洋上生産設備20と輸送船30の間の移送を行うための洋上オフローディング装置1は、NGHペレットを搬送する搬送装置からなる搬送部とこれらの搬送装置を支持する構造部とからなる。
【0030】
図1〜図4に示すように、この洋上オフローディング装置1の構造部は、洋上生産設備20の船尾の甲板上に設けられた支柱部15aと、この支柱部15aの上部において、船尾から後方に大きく張り出した固定水平張出部15bとその先端側の旋回張出部15cとからなるトラス構造の支持部15で形成される。
【0031】
そして、本発明においては、図3〜図7に示すように、この支持部15の固定水平張出部15bの先端側に設けた旋回水平張出部15cを、洋上生産設備20のヨウ方向(Yaw方向:静止時の水平回転方向)即ち、回転軸C周りに、所定の範囲内(例えば、後方から左右に±45deg)で揺動即ち旋回できる構成にする。
【0032】
この旋回水平張出部15cは、図8及び図9に示すような上部旋回支持部14aと図10及び図11に示すような下部旋回支持部14bとで、固定水平張出部15bの先端側に支持される。この実施の形態の構造では、上部旋回支持部14aで上下方向の荷重を支持し、下部旋回支持部14bで洋上生産設備20の前後方向の荷重を支持し、これらの支持点が旋回中心Cとなる。
【0033】
それと共に、図6に示すように、旋回水平張出部15cの両脇部を油圧シリンダ16で固定水平張出部15bに支持し、この油圧シリンダ16のロッドの伸縮により、旋回水平張出部15cを能動的に旋回可能に構成する。この油圧シリンダ16の制御装置は、洋上生産設備20と輸送船30の間の相対変位の計測値から、旋回水平張出部15cと輸送船30の間の旋回方向の相対変位を推定して、この相対変位が少なくなるように、油圧シリンダ16のロッドの伸縮を制御する。
【0034】
また、図3及び図4に示すように、搬送装置は、垂直方向搬送手段を垂直コンベア11、11(この実施の形態では一対)で構成し、水平方向搬送手段を第1水平コンベア(払い出しコンベア)12Aと第2水平コンベア12Bとで構成する。また、洋上生産設備20と輸送船30の間の相対変位を吸収するために、十分な伸縮性を備えた蛇腹構造で形成されるシューター13を設けて構成する。
【0035】
この垂直コンベア11は支持部15の支柱部15aの内部に配置される。この垂直コンベア11は、石炭搬送、木材チップ搬送、廃プラスチック搬送等に使用されるフランジ及びクリート(桟)付きのコンベア等の周知のコンベアで形成される。このコンベアは、主搬送ベルトの幅方向両側における表面に全長にわたって波形フランジを備えるともに、波形フランジ間の空間部を搬送方向に等間隔に仕切るクリートをベルト表面に備えて形成される。また、更に、垂直部でフランジ付きベルトからNGHペレットがこぼれ出ないようにするため、くの字型のクリート(桟)を用いるか、あるいは、フランジ付きベルトは平ベルト(カバーベルト)でカバーされる。この平ベルトはフランジ付きベルトに同期させて動かされる。そして、この垂直コンベア11は、洋上生産設備20のコンベア22側からNGHペレットを受け渡され、垂直に揚げて、第1水平コンベア12Aに引き渡す。
【0036】
そして、第1水平コンベア12Aは、固定水平張出部15bに略水平に配置され、第2水平コンベア12Bは第1水平コンベア12Aよりも一段低くなるように旋回水平張出部15cに略水平に配置される。これらの第1及び第2水平コンベア12A,12Bはトラフ型ベルトコンベアで形成される。また、これらの周囲は、天然ガスの漏出を防止するために、気密構造に構成され、また、温度保持のための保温対策や放熱防止対策が施される。
【0037】
この第1水平コンベア12Aは、その受け入れ部12Aaが、垂直コンベア11の排出口11bの下側に、また、その先端部12Abが固定水平張出部15bの先端部近傍となり、かつ、第2水平コンベア12Bの受け入れ部12Baの上側になるように固定水平張出部15bに略水平に配置される。
【0038】
一方、第2水平コンベア12Bは、その受け入れ部12Baが、第1水平コンベア12Aの排出部12Abの下部に配置され、また、その先端部12Bbは旋回水平張出部15cの先端近傍でシューター13の取付部13aに接続される。
【0039】
この第1コンベア12Aは、垂直コンベア11,11で搬送されたNGHペレットを、受け継いで、固定水平張出部15bの先端側に搬送し、第2水平コンベア12Bに受け渡す。第2水平コンベア12Bは、受け取ったNGHペレットを旋回水平張出部15cの先端側のシューター13の上部入口に搬送する。
【0040】
そして、この旋回水平張出部15cの先端部近傍、即ち、第2水平コンベア12Bの先端部12Bbの下側に、シューター13が吊り下げて設けられる。このシューター13は、第2水平コンベア12Bで搬送されたNGHペレットを上部で受け入れて、落下させながら輸送船30側の搬送装置である受け入れ側垂直コンベア31に導く装置であり、その搬送路に蛇腹13cを採用することにより、その上端と下端との間で、上下方向、左右方向、前後方向の3自由度を主に吸収し、更に4自由度目の軸方向の回転変位である捩じれも吸収する。この変位吸収機能により、両洋上浮体20,30の動揺による相対変位、特に大きな垂直方向の変位を吸収できる。また、蛇腹13cで形成することにより、容易に気密性を保持できる。そして、図3のAの部分で、輸送船30側と接続する。
【0041】
このシューター13においては、捩じれを吸収し易くするため、図12〜図15に示すように、上端の旋回水平張出部15cの先端に取り付けられる部分であるシューター13の取付部13aと、下端の輸送船30側に接続する部分である第1接続部13bのそれぞれに、2組の自在継手からなるような回転継手、例えば、2軸ユニバーサルジョイント41,42,43,44が設けられる。これにより、シューター13の軸方向に垂直な方向を回転軸とする回転を吸収する。また、シューター13の軸方向を回転軸とする回転を許容する旋回継手45,46も設けられる。これにより、シューター13の捩じれを吸収する。
【0042】
また、両洋上浮体20,30の動揺による大きな相対変位に対して、シューター13において局部的に大きな蛇腹13cの変形が生じないように、蛇腹13c部分を複数個(図12及び図13では6個、図14及び図15では7個)のブロックに分割し、各ブロックの蛇腹13cを中間継手13eで接続する。この蛇腹13cは通常は断面円形に形成されるが、他の断面形状であってもよい。また、この蛇腹13cに関しても、必要に応じて2重構造等の放熱防止対策、静電気防止対策が取られる。
【0043】
更に、シューター13の自重により、上部と下部のブロックで、蛇腹13cに作用する力特に垂直荷重が大きく異なるため、図12及び図13に示すようなパンタグラフ機構を用いたパンタグラフ式シューター13Aや、図14及び図15に示すようなワイヤー吊り機構を用いたワイヤー式シューター13Bを採用する。
【0044】
そして、パンタグラフ式シューター13Aの場合には、図12及び図13に示すように、パンタグラフ13dを、蛇腹13cを挟むように蛇腹13cの外周部に2組取り付けて、各ブロック間の中間継手13eの取付ピン部13fにその交差部分を取り付ける。この上下方向の変位を吸収するパンタグラフ機構により、シューター13Aの伸縮にかかわらず、各蛇腹部13cの変形量が同じになる。なお、シューター13Aを格納するために吊り上げワイヤー13iが設けられている。
【0045】
また、ワイヤー式シューター13Bの場合には、図14及び図15に示すように、極端に上側の蛇腹13cだけが伸びきらないようにするため、それぞれのブロックの蛇腹13cに伸び止めワイヤー13gを設ける。更に、シューター13の使用中における相対変位に追従する効果を増すために、蛇腹13cの最下端の周囲4カ所に緊張ワイヤー13hを設け、テンションコンペンセーター、オートテンションウインチ等と同等の機構(図示しない)を用いて、この緊張ワイヤー13hに一定のテンションを常時加える。
【0046】
このワイヤー式では、パンタグラフ13dを組み付けるための取付ピン部13fが中間継手13eに不要なため中間継手13eの厚みを薄くできるため、重量を軽減でき、その分蛇腹13c部分を長くできるので、伸縮量を増加させることができる。
【0047】
このワイヤー式シューター13Bにおいては、図14に示すように、シューター13Bが縮んだ状態では、各ブロックの蛇腹13cが収縮し、伸び止めワイヤー13gは緩んだ状態であるが、図15に示すように、シューター13Bが伸びきった状態では、伸び止めワイヤー13gが伸びきった状態で、各ブロックの蛇腹13cの伸び量を制限する。そして、シューター13Bが完全に伸びきらない状態、即ち、図14と図15の間の状態では、上部のブロックの蛇腹13cは伸び止めワイヤー13gで伸び量が制限された状態となるが、下部のブロックの蛇腹13cは、伸びていない状態となる。
【0048】
次に、この洋上オフローディング装置1によるNGHペレットの移送について説明する。輸送船30が洋上生産設備20に、係留索により係船されると、洋上オフローディング装置1のシューター13が格納位置から輸送船30に降ろされ、シューター13の下端の第1接続部13bが、下端に設けたクランプ機構により、輸送船30側の受け入れ側垂直コンベア31の第2接続部31aに接続される。
【0049】
この接続が完了すると、冷却天然ガスをこの洋上オフローディング装置1のNGHペレットの搬送路内に送り、NGHペレットが通過する部分を予冷する。この予冷が終了した後、NGHペレットの搬送を開始する。
【0050】
この洋上生産設備20のNGH生成プラント26で生成され、貯蔵設備である貨物倉21に蓄えられたNGHペレットが搬出用水平コンベア22に載せられ、搬出用水平コンベア22によって、NGHペレットが貨物倉21から洋上オフローディング装置1の垂直コンベア11、11の下側に設けられた受け入れ部11aに搬送される。
【0051】
垂直コンベア11,11の受け入れ部11aに搬送されたNGHペレットは、垂直コンベア11によって、支柱部15の内部を上昇し、垂直コンベア11,11の上側に設けられた排出部11bから、第1水平コンベア12Aの受け入れ部12Aaに受け渡される。固定水平張出部15bに設けられた第1水平コンベア12Aでは、NGHペレットを受け入れ部12Aaから先端部12Abに搬送し、先端部12Abで第2水平コンベア12Bの受け入れ部12Baに受け渡す。旋回水平張出部15cに設けられた第2水平コンベア12Aでは、NGHペレットを受け入れ部12Baから先端部12Bbに搬送し、シューター13に落とす。つまり、洋上生産設備20側のオフローディング装置1の上部からシューター13内を通して輸送船30側の搬送装置31へNGHペレットを落下させる。
【0052】
この第2接続部31aに導かれたNGHペレットは、輸送船30側の受け入れ側垂直コンベア31により受け入れ側水平コンベア32に移され、各船倉33に搬送される。これにより、NGHペレットが、洋上生産設備20の貨物倉21から輸送船30の船倉33に移送される。
【0053】
そして、このオフローディング時においては、洋上生産設備20から見た輸送船30の方位変化に従って、オフローディング装置1の支持部15の固定水平張出部15bの先端側の旋回水平張出部15cをヨウ方向に手動又は自動により旋回させて、長周期漂流力に基づく長周期運動に起因する平均的な水平方位の変動を吸収する。
【0054】
また、波周期に対応する洋上生産設備20と輸送船30の間のX方向、Y方向、Z方向の相対運動及び相対変位を、シューター13の伸縮性により吸収する。また、水平回転変位は、シューター13の伸縮性及びシューター13の第1接続部13b等の回転継手により、シューター13の下側の第1接続部13bの運動変位や捩じれ等を吸収する。
【0055】
そして、各船倉33が一杯になって荷役が終了すると、シューター13の下端の第1接続部13bにおいて、クランプ機構を解除して、第2接続部31aと切り離す。このシューター13の下端は蓋をし、輸送船30から切り離した後は、ウインチ等により吊り上げワイヤーを巻き上げて、シューター13を収縮させながら、格納位置まで引き上げて上昇させて、シューター13を格納し、次の輸送船30が来るまでの間、待機する。
【0056】
一方、輸送船30側では、シューター13の第1接続部13bを外した後は、受け入れ側垂直コンベア31の第2接続部31aに蓋をし、更に、輸送船30の洋上生産設備20に対する係留を解いて、洋上生産設備20から離れる。そして、この洋上生産設備20における荷役を終了し、目指す港に向かって航行する。
【0057】
そして、このオフローディング装置1では、洋上生産設備20と輸送船30の間の水平変位及び水平回転変位は、シューター13の伸縮性及びシューター13の第1接続部13b等の回転継手により吸収するが、水平回転変位の内の、長周期漂流力に基づく長周期運動に起因する、両浮体間の運動の過渡的な変位である相対的回転変位である、洋上生産設備20から見た輸送船30の方位変化は、オフローディング装置1の支持部15の固定水平張出部15bの先端の旋回水平張出部15cのヨウ方向の揺動即ち旋回により吸収する。
【0058】
また、輸送船30側に取付けられたシューター13の第1接続部13bと旋回水平張出部15cとの間の、X方向(洋上生産設備の静止時の船首方向)、Y方向(洋上生産設備の静止時の左右方向)、Z方向(静止時の上下方向、即ち、垂直方向)の各運動及び変位は、シューター13の伸縮性により吸収する。
【0059】
この構成によれば、洋上オフローディング装置1の水平方向搬送手段である第1水平コンベア12Aを配置する固定水平張出部15bの先端側に設けた旋回水平張出部15cを水平方向搬送手段の一部である第2水平コンベア12Bと共に、洋上生産設備20のヨウ方向に旋回可能に設けているので、洋上生産設備20のヨウ方向に、第2水平コンベア12Bの先端を自動で旋回させて、輸送船30に略正対させることができる。即ち、旋回水平張出部15cから見た輸送船30の相対方位を略一定にすることができる。
【0060】
従って、両洋上浮体20,30間の水平回転方向(ヨウ)の相対変位の内の長周期部分をこの旋回により吸収することができ、シューター13による吸収量を波の周期に対応する相対変位部分に対処できる量に減少することができる。その結果、水平回転方向の相対変位に対するシューター13による吸収量を大幅に軽減することができる。
【0061】
しかも、この構成によれば、洋上オフローディング装置1のオフローディング装置全体を旋回させる場合に比べて、可動部分15cが著しく小さくなるので、旋回機構14a,14bが小さくなり、旋回用の駆動装置16も小さくなる。従って、旋回用駆動力の省力化とオフローディング装置1全体の軽量化及び小型化を図ることができる。
【0062】
次に、オフローディング装置1における変位の大きさやそれに対応したオフローディング装置1の主要寸法の計算例を示す。なお、この変位の大きさや主要寸法等は、洋上生産設備20と輸送船30や洋上オフローディング時の想定海象条件等によって変化するので、次に示す計算例は一例に過ぎない。
【0063】
この計算において、洋上生産設備20と輸送船30の波浪中応答解析に、高次元境界要素法に基づく解析プログラム(著作権登録番号P第7704号−1)を使用し、横揺れ動揺に対する粘性減衰力を考慮するため、10%の線形減衰係数を洋上生産設備20と輸送船30の両方にそれぞれ用いて、動揺応答解析を行った。
【0064】
この動揺応答解析結果から、シューター13の長さを固定した状態における、洋上生産設備20側のシューター13の下端の第1接続部13bと、輸送船30側の第2接続部31aとの動揺応答を求め、入射波の位相差を考慮して、両者の相対動揺解析を行った。なお、洋上生産設備20と輸送船30の間における流体力学的な相互干渉の影響は考慮していない。
【0065】
洋上生産設備(FPSO)20の大きさを、全長300m,幅60m,深さ33m、喫水16m、貨物容積218,000m3 とし、輸送船(シャトル)30の大きさを全長300m,幅46m,深さ24.5m、喫水14.5m、貨物容積174,000m3 とした。
【0066】
また、海象条件としては、有義波高4m,周期8sの波、風速10m/s,風向30degの風、流速1ktで方向90degの定常流れの潮流で、水深500mを想定し、洋上生産設備20と輸送船30を係留索による係船をした場合に、以下のような計算値が得られた。
【0067】
緩係船された洋上生産設備20と輸送船30は、波周期での運動の他に長周期漂流力に基づく長周期運動が発生し、この長周期運動を含む運動の最大値はサージ(Surge)で15.8m,スエー(Sway)で2m,ヨー(Yaw)で7.8degであった。また、両洋上浮体20,30間の相対変位は、最大で、X方向0.96m,Y方向2.84m,Z方向14.34m、満載時と軽荷時の喫水の差3.5mを考慮した場合には17.84mとなった。
【0068】
そのため、洋上生産設備20と輸送船30の間は、接触を避けるためには水平方向に最小限16mの間隔が必要となり、安全性を考慮すると、係留索は、最大変位の2倍〜3倍、即ち、32〜48m程度が必要となった。また、洋上生産設備20との接触を防ぐために、輸送船30は常に微速後進状態を保つことが必要になった。そして、オフローディング装置1と輸送船30との相対水平変位量は3mとなった。
【0069】
また、洋上生産設備20の波との出会角αを0deg,30deg、輸送船30の波との出会角βを0deg,±30deg,±60degと変化させた時のシューター13の最大伸縮量は、α=30deg、β=30degの時に、波振幅2mに対して14.5mとなった。
【0070】
これらの解析結果を踏まえて、試設計すると、オフローディング装置1は、洋上生産設備20と輸送船30の接触を防ぐため、垂直コンベア11の高さが約50m、第1水平コンベア12Aと第2水平コンベア12Bの水平搬送距離が約65m、シューター13の高さが、最短約18m,最長約37mで、ストローク約19m程度となった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態の天然ガスハイドレートの洋上オフローディング装置と、洋上生産設備、輸送船の関係を示す側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態の天然ガスハイドレートの洋上オフローディング装置の構成を示す側面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】支持部の水平張出部の先端側部分と旋回部の部分を示す側面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】図5の底面図である。
【図8】上部旋回支持部を示す側面図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】下部旋回支持部を示す側面図である。
【図11】図10の平面図である。
【図12】パンタグラフ式シューターの短縮時の状態を示す側面図である。
【図13】パンタグラフ式シューターの伸長時の状態を示す側面図である。
【図14】ワイヤー式シューターの短縮時の状態を示す側面図である。
【図15】ワイヤー式シューターの伸長時の状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0072】
1 オフローディング装置
11 垂直コンベア
11a 受け入れ部
12A 第1水平コンベア
12Aa 受け入れ部
12Ab 先端部
12B 第2水平コンベア
12Ba 受け入れ部
12Bb 先端部
13 シューター
13A パンタグラフ式シューター
13B ワイヤー式シューター
14a 上部旋回支持部
14b 下部旋回支持部
15 支持部
15a 支柱部
15b 固定水平張出部
15c 旋回水平張出部
16 シリンダ装置
20 洋上生産設備
21 NGH貨物倉
22 搬出側水平コンベア
30 輸送船
31 受け入れ側垂直コンベア
32 受け入れ側水平コンベア
33 船倉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1洋上浮体の甲板上に設けられた支柱部と、該支柱部の上部で洋上側に張り出した水平張出部とからなる支持部を備えると共に、前記支柱部に配置された垂直方向搬送手段と、前記水平張出部に配置された水平方向搬送手段と、前記第1洋上浮体と第2洋上浮体の間の相対変位を吸収する伸縮性を備えた蛇腹構造で形成したシューターとを有し、第1洋上浮体からの固形物を、前記垂直方向搬送手段と前記水平方向搬送手段により、前記シューターの上部に搬送し、該搬送した固形物を落下させながら前記シューターで前記第2洋上浮体側に導いて、前記第1洋上浮体から前記第2洋上浮体へ固形物を移送する洋上オフローディング装置であって、
前記水平張出部において固定水平張出部の先端側に設けた旋回水平張出部を前記水平搬送手段の一部と共に、前記第1洋上浮体のヨウ方向に旋回可能に設けたことを特徴とする洋上オフローディング装置。
【請求項2】
前記固形物が天然ガスハイドレ−トのペレット状固形物であり、前記第1洋上浮体が洋上生産設備であり、前記第2洋上浮体が輸送船であることを特徴とする請求項1記載の洋上オフローディング装置。
【請求項3】
前記垂直方向搬送手段を垂直コンベアで構成すると共に、前記水平方向搬送手段を第1水平コンベアと第2水平コンベアとで構成し、前記第1水平コンベアを前記固定水平張出部に配置し、前記第2水平コンベアを、前記旋回水平張出部に配置すると共に、前記第1水平コンベアで搬送される前記固形物を前記第2水平コンベア上に落下させて、前記固形物を第1水平コンベアと第2水平コンベア経由で前記シューターに導いて、前記第1洋上浮体から前記第2洋上浮体へ前記固形物を移送することを特徴とする請求項1又は2に記載の洋上オフローディング装置。
【請求項4】
前記旋回水平張出部を、シリンダ装置により能動的に旋回可能に形成すると共に、前記第1洋上浮体と前記第2洋上浮体との相対運動のデータを基に、前記旋回水平張出部から見た前記第2洋上浮体の長周期成分におけるヨウ方向変位角が小さくなるように前記旋回水平張出部の旋回を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の洋上オフローディング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−7071(P2008−7071A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−182330(P2006−182330)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(591118041)財団法人シップ・アンド・オーシャン財団 (21)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】