説明

洋風便器

【課題】適切な位置に容易に便器本体を配置することができる洋風便器を提供する。
【解決手段】洋風便器は、便鉢2と、便鉢2の後方で上壁1U及び周壁1Wに囲まれて下方が開口し、周壁1Wの内部に被案内面3m、3nが形成された空洞部3を有する便器本体1を備えている。また、洋風便器は、空洞部3内に収納され、便器本体1を据え付ける床面Fに固定される便器固定部材10を備えている。便器固定部材10は、床面Fに固定される固定片11と、固定片11から設置時に上方に延びる脚部12と、脚部12と一体に設けられ、固定ビス20により便器本体1と固定される固定部13とを有している。脚部12には、被案内面3m、3nと当接して便器本体1を下方に案内する案内面12m、12nが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洋風便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図3に従来の洋風便器が開示されている。この洋風便器は、便鉢と、便鉢の後方で上壁及び周壁に囲まれて下方が開口した空洞部とを有する便器本体を備えている。この空洞部内には便器固定部材が収納されており、便器固定部材は便器本体を据え付ける床面に固定されている。この便器固定部材は、床面に固定される固定片と、固定片から設置時に上方に延びる脚部と、脚部と一体に設けられ、便器固定具により便器本体と固定される固定部とを有している。便器本体の上壁には貫通孔が設けられている。便器固定具がこの貫通孔に上方から挿通されている。そして、便器固定具の先端が便器固定部材の固定部にねじ込まれ、便器固定具の上端部が貫通孔の周縁部に係止することにより、便器本体が床面に据え付けられている。
【0003】
このような構成である従来の洋風便器では、便器本体の上方から便器固定具を便器固定部材にねじ込むことにより便器本体を床面へ据え付けることができるため、便器本体の据え付け作業を容易に行なうことができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−155569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の洋風便器は、便器本体の空洞部が上壁及び周壁に囲まれているため、便器固定部材の上方から便器本体を下降させて床面に配置する際、便器固定部材の位置を目視して確認することが困難である。このため、便器固定部材に対して適切な位置に便器本体を配置することが困難である。適切な位置に便器本体を配置することができない場合には、便器固定具に便器固定部材をねじ込むことができないため、適切な位置になるように再度、便器本体を配置し直さなければならないという手間を生じてしまう。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、適切な位置に容易に便器本体を配置することができる洋風便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の洋風便器は、便鉢と、該便鉢の後方で上壁及び周壁に囲まれて下方が開口し、該周壁の内部に被案内面が形成された空洞部とを有する便器本体と、
該空洞部内に収納され、該便器本体を据え付ける床面に固定される便器固定部材とを備え、
該便器固定部材は、該床面に固定される固定片と、該固定片から設置時に上方に延びる脚部と、該脚部と一体に設けられ、便器固定具により該便器本体と固定される固定部とを有し、
該脚部には、該被案内面と当接して該便器本体を下方に案内する案内面が形成されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成である本発明の洋風便器では、便器本体の据え付け作業において、便器固定部材の脚部に形成された案内面に便器本体の空洞部に形成された被案内面を当接して、便器本体を下方に案内することができる。なお、便器本体を床面に配置した際には、案内面に被案内面が当接せずに若干の隙間を生じ得る。
【0009】
したがって、本発明の洋風便器は、適切な位置に容易に便器本体を配置することができる。
【0010】
本発明の洋風便器において、被案内面は左右被案内面を有し、案内面は、左右被案内面を案内し、便器固定部材に対する便器本体の幅方向の位置決めを行う左右案内面を有することが好ましい。この場合、便器本体の幅方向の適切な位置に容易に便器本体を配置することができる。
【0011】
本発明の洋風便器において、左右被案内面は互いに対面する一対のものであり、左右案内面は互いに背面する一対のものであり、各左右被案内面は設置時に下方に向かうに従って互いに離れる方向に広がっていることが好ましい。この場合、便器固定部材の上方から便器本体を下降させる際に、空洞部内の所定の位置に便器固定部材を収納し易くなるため、便器本体の幅方向の適切な位置により容易に便器本体を配置することができる。
【0012】
また、各左右案内面も設置時に下方に向かうに従って互いに離れる方向に広がっていても良い。この場合、左右案内面に左右被案内面が沿う状態で便器本体の空洞部内に便器固定部材が収納される。このため、便器本体の左右方向が傾いた状態で便器本体が床面に据え付けられることを防止することができる。
【0013】
被案内面は前後被案内面を有し、案内面は、前後被案内面を案内し、便器固定部材に対する便器本体の前後方向の位置決めを行う前後案内面を有することが好ましい。この場合、便器本体の前後方向の適切な位置に容易に便器本体を配置することができる。
【0014】
本発明の洋風便器において、前後被案内面は互いに対面する一対のものであり、前後案内面は互いに背面する一対のものであり、各前後被案内面は設置時に下方に向かうに従って互いに離れる方向に広がっていることが好ましい。この場合、便器固定部材の上方から便器本体を下降させる際に、空洞部内の所定の位置に便器固定部材を収納し易くなるため、便器本体の前後方向の適切な位置により容易に便器本体を配置することができる。
【0015】
また、各前後案内面も設置時に下方に向かうに従って互いに離れる方向に広がっていても良い。この場合、前後案内面に前後被案内面が沿う状態で便器本体の空洞部内に便器固定部材が収納される。このため、便器本体の前後方向が傾いた状態で便器本体が床面に据え付けられることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1に示すように、洋風便器は、便器本体1と、便器固定部材10と、便器固定具である先端が尖った固定ビス20とを備えている。なお、便座及び便蓋の図示は省略する。
【0018】
図1〜図3に示すように、便器本体1は、便鉢2と、便鉢2の後方で上壁1U及び周壁1Wに囲まれて下方が開口する空洞部3とを有している。図2及び図3に示すように、空洞部3は、左右の周壁1Wの下端から各々の内側に立ち上がる内壁3aと、左右の各内壁3aの上端を連結する上内壁3bとにより形成されている。左右の各内壁3aの内面の上部には、互いに対面する一対の左右被案内面3mが形成されている。この一対の左右被案内面3mは、下方に向かうに従って互いに離れる方向に広がっている。上内壁3bは、左右方向の中心に便鉢2の下端から延びる便器排水路2aを形成し、その左右に固定ビス20を挿通する挿通孔3hが設けられている。
【0019】
また、図1に示すように、便器本体1は、挿通孔3より前側の上内壁3bから垂下する垂下壁3cと、挿通孔3より後側の上内壁3bから垂下する垂下壁3dを有している。各垂下壁3c、3dの下部には、対面する一対の前後被案内面3nが形成されている。この一対の前後被案内面3nは、下方に向かうに従って互いに離れる方向に広がっている。
【0020】
また、便器本体1は、便器本体1の周壁1W内で便鉢2より後方に上下が開放した収納空間1Sを有している。収納空間1S内には、便器洗浄装置100が収納されている。便器洗浄装置100は、詳細を図示しないが、便器本体1の外部で水道管に接続された給水管に給水口が接続され、リム1rに吐水口が接続されている。
【0021】
便器本体1の上壁1Uには、上壁1Uから空洞部3に向かって凹設され、底部に貫通孔4hを有する一対の凹部4が左右方向に離れて設けられている。
【0022】
図2に示すように、空洞部3内には、便器固定部材10が収納されている。便器固定部材10は、一対の脚部12を有している。各脚部12は、先端が尖ったビス10bにより床面Fに固定される各々の固定片11から上方に延びている。各脚部12は、左右被案内面3m側に左右案内板12aを有し、この左右案内板12aの外面が互いに背面する一対の左右案内面12mとされている。この一対の左右案内面12mは下方に向かうに従って互いに離れる方向に広がっている。
【0023】
また、図1に示すように、各脚部12は、左右案内板12aの内側に前後案内板12tを有している。各前後案内板12tの前後端面は互いに背面する一対の前後案内面12nとされている。この一対の前後案内面12nは下方に向かうに従って互いに離れる方向に広がっている。
【0024】
図2及び図3に示すように、便器固定部材10は、各脚部12の上端を連結する連結部14を有している。固定片11、脚部12及び連結部14は金属製であり、溶接されている。連結部14の左右の上方には、固定部13が設けられている。固定部13は、固定ビス20をねじ込み可能な樹脂製のブロックにより形成されている。
【0025】
固定ビス20は、凹部4の底部に設けられた貫通孔4h及び上内壁3bに設けられた挿通孔3hに上方から挿通され、固定部13にねじ込まれている。また、固定ビス20の上端部21は、ワッシャー20wを介して凹部4の底面4t(図3参照)に係止されている。
【0026】
なお、この凹部4は、図示しないが、一般的な局部洗浄装置等の便器上面部材を便器本体1の上面に取付けるために利用される。一般的な便器上面部材は、所定の間隔を有して下方に突出する一対の締結部材を有している。このため、一対の凹部4は、一般的な便器上面部材に備えられている一対の各締結部材を挿入させるため、一対の各締結部材と同じ間隔を有している。つまり、便器本体1の床面Fへの据え付けと、局部洗浄装置の便器本体1の上面への取付けとを凹部4を利用して行うことができる。また、凹部4は、局部洗浄装置を便器本体1に取り付けるために、便器本体1の後部に備えられた便器洗浄装置100より前方かつ便鉢2より後方に設けられている。
【0027】
便器本体1の床面Fへの据え付け手順は以下のとおりである。先ず、図3に示すように、便器固定部材10を床面Fの所定の位置にビス10bにより固定する。次に、便器固定部材10の上方から便器本体1を下降させ、便器固定部材10を空洞部3内に収納しながら、便器本体1を床面Fに配置する。この際、左右被案内面3m及び前後被案内面3n(図1参照)は下方向に向かうに従って互いに離れる方向に広がっているため、空洞部3内の所定の位置に便器固定部材10を収納し易く、便器固定部材10に対する便器本体1の幅方向及び前後方向の位置決めを容易に行なうことができる。すなわち、便器本体1を下降させる際に、位置がずれていたとしても、便器固定部材10の左右案内面12m及び前後案内面12nが空洞部に形成された左右被案内面3m及び前後被案内面3nに当接して、適正な位置に便器本体1を案内することができる。
【0028】
また、図1又は図2に示すように、左右案内面12mに左右被案内面3mが若干の隙間を開けながら沿う状態で、かつ前後案内面12nに前後被案内面3nが若干の隙間を開けながら沿う状態で便器本体1が床面Fに配置されるため、便器本体1が左右方向に傾いたり、前後方向に傾いたりして床面Fに据え付けられることを防止することができる。その後、凹部4の上方から固定ビス20を挿入し、固定ビス20の上端部21がワッシャー20wを介して凹部4の底面4tに係止するまで、固定ビス20を固定部13にねじ込む。これにより、便器本体1は床面Fに据え付けられる。
【0029】
したがって、実施例の洋風便器は、適切な位置に容易に便器本体1を配置することができる。
【0030】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0031】
例えば、便器洗浄装置100に関しては、便器本体1の後部上方に載置され、洗浄水を貯留するタンクを有するものに変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は洋風水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例の洋風便器の横断面図である。
【図2】実施例の洋風便器に係り、図1のA−A矢視断面図である。
【図3】実施例の洋風便器に係り、図1のA−A矢視断面の分解図である。
【符号の説明】
【0034】
1…便器本体
1U…上壁
1W…周壁
2…便鉢
3…空洞部
3m、3n…被案内面(3m…左右被案内面、3n…前後被案内面)
10…便器固定部材
11…固定片
12…脚部
12m、12n…案内面(12m…左右案内面、12n…前後案内面)
13…固定部
20…固定ビス(便器固定具)
F…床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢と、該便鉢の後方で上壁及び周壁に囲まれて下方が開口し、該周壁の内部に被案内面が形成された空洞部とを有する便器本体と、
該空洞部内に収納され、該便器本体を据え付ける床面に固定される便器固定部材とを備え、
該便器固定部材は、該床面に固定される固定片と、該固定片から設置時に上方に延びる脚部と、該脚部と一体に設けられ、便器固定具により該便器本体と固定される固定部とを有し、
該脚部には、該被案内面と当接して該便器本体を下方に案内する案内面が形成されていることを特徴とする洋風便器。
【請求項2】
前記被案内面は左右被案内面を有し、
前記案内面は、該左右被案内面を案内し、前記便器固定部材に対する前記便器本体の幅方向の位置決めを行う左右案内面を有する請求項1記載の洋風便器。
【請求項3】
前記左右被案内面は互いに対面する一対のものであり、前記左右案内面は互いに背面する一対のものであり、
各該左右被案内面は設置時に下方に向かうに従って互いに離れる方向に広がっている請求項2記載の洋風便器。
【請求項4】
前記被案内面は前後被案内面を有し、
前記案内面は、該前後被案内面を案内し、前記便器固定部材に対する前記便器本体の前後方向の位置決めを行う前後案内面を有する請求項1又は2記載の洋風便器。
【請求項5】
前記前後被案内面は互いに対面する一対のものであり、前記前後案内面は互いに背面する一対のものであり、
各該前後被案内面は設置時に下方に向かうに従って互いに離れる方向に広がっている請求項4記載の洋風便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−261117(P2008−261117A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103528(P2007−103528)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】