説明

洋風水洗式便器

【課題】外周壁の内部における結露の発生を確実に防止することができる洋風水洗式便器を提供する。
【解決手段】洋風水洗式便器は、床面に載置される外周壁11を備えている。外周壁11内には、便鉢12と、便鉢12の下端の流入口13と連通して上昇する上昇流路14と、上昇流路14の下流側に連通し、便器洗浄水が滞留する滞留部22を有する便器排水路21とが形成されている。また、滞留部22はその周囲が断熱材30によって覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洋風水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1に従来の洋風水洗式便器が開示されている。この洋風水洗式便器は、床面に載置される外周壁を備えている。また、この外周壁内には、便鉢と、便鉢の下端の流入口と連通して上昇する上昇流路と、上昇流路の下流側に連通し、便器洗浄水が滞留する滞留部を有する便器排水路とが形成されている。外周壁、便鉢及び上昇流路は洋風便器本体に形成されている。便器排水路は洋風便器本体の便器排出口と接続された排水接続管に形成されている。
【0003】
このような構成である従来の洋風水洗式便器では、滞留部より上流側の便器排水路と、滞留部より下流側の便器排水路との間を滞留部に滞留する便器洗浄水により封鎖しているため、便器洗浄水が便器排水路に供給されると、滞留部より上流側の便器排水路が早期に便器洗浄水で満水になり、サイホン作用が発生する。このため、少ない便器洗浄水で便鉢の洗浄を行なうことができる。
【0004】
また、特許文献2の図1に従来の別の洋風水洗式便器が開示されている。この洋風水洗式便器も、床面に載置される外周壁を備えている。この外周壁内には、便鉢と、便鉢の下端の流入口と連通して上昇する上昇流路と、上昇流路の下流側に連通する便器排水路とが形成されている。外周壁、便鉢、上昇流路及び便器排水路は洋風便器本体に形成されている。また、この洋風水洗式便器は、下方から外周壁内に挿入され、外周壁の内側面及び便器排水路の外郭の外側面に接着される断熱材を備えている。断熱材の上面は、便鉢と上昇流路の外郭とからなって外周壁の内部に露出する露出面に沿う形状に形成されている。断熱材が外周壁内に取付けられた状態において、断熱材の上面と露出面との間には隙間が設けられている。この隙間は外部に対して閉じた空気の断熱層とされている。
【0005】
このような構成である従来の洋風水洗式便器では、断熱材及び断熱層により、便鉢と上昇流路の外郭とからなる露出面における結露の発生を防止している。
【0006】
【特許文献1】特開平10−219798号公報
【特許文献2】実開平7−4578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示されている従来の洋風水洗式便器では、便鉢及び上昇流路により形成される水封部と、便器排水路の滞留部とにおいて、便器洗浄水が滞留する。このため、便鉢と上昇流路の外郭とからなる露出面と、滞留部の外殻の外側面とにおいて、結露が生じ易い。結露が洋風水洗式便器が設置されている床面に流下すると、床面の濡れや汚れ等の原因となる。また、洋風水洗式便器が床面に設置されれば、外周壁の内部の下方は目視不能となってしまうため、洋風水洗式便器の使用者等が知らないうちに結露により床面が濡れること等が繰り返されてしまう。
【0008】
この点、特許文献2に開示されている従来の洋風水洗式便器に備えられた断熱材を特許文献1の洋風水洗式便器に採用することも考えられる。この場合、便鉢と上昇流路の外郭とからなる露出面については、下向きとなっているため、下方から外周壁内に挿入される断熱材により覆われることとなる。このため、その露出面においては、結露の発生を防止することができる。
【0009】
しかしながら、滞留部の外郭は、下向きの露出面ばかりでなく、周囲に剥き出しとなっている場合がある。この外郭の外側面は、上向きの部分も存在するため、下方から外周壁内に挿入される断熱材ではその周囲を覆うことが困難である。このため、滞留部の外郭の外側面においては依然として結露が生じてしまう。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、外周壁の内部における結露の発生をより確実に防止することができる洋風水洗式便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の洋風水洗式便器は、床面に載置される外周壁と、該外周壁内に形成された便鉢と、該外周壁内に形成され、該便鉢の下端の流入口と連通して上昇する上昇流路と、該外周壁内に形成され、該上昇流路の下流側に連通し、便器洗浄水が滞留する滞留部を有する便器排水路とを備えた洋風水洗式便器であって、
前記滞留部はその周囲が断熱材によって覆われていることを特徴とする。
【0012】
このような構成である本発明の洋風水洗式便器では、便器排水路の滞留部が下向きの露出面ばかりでなく、その周囲が断熱材で覆われているため、滞留部の外郭の外側面における結露の発生を防止することができる。
【0013】
したがって、本発明の洋風水洗式便器は、外周壁の内部における結露の発生をより確実に防止することができる。
【0014】
断熱材は滞留部のみならず便器排水路全体の周囲を覆うものであっても良い。この場合、便器排水路の外郭の全外側面において確実に結露が生じないようにすることができる。
【0015】
本発明の洋風水洗式便器において、外周壁、便鉢及び上昇流路は洋風便器本体に形成され、
便器排水路は洋風便器本体の便器排出口と接続された排水接続管に形成され、
断熱材は、排水接続管を覆うように組み付けられる左右に分割された分割材からなることが好ましい。
【0016】
この場合、洋風便器本体とは別体の排水接続管に対して左右に分割された分割材を取付けることとなるため、断熱材により排水接続管を容易に覆うことができる。また、断熱材を上下に分割された分割材により形成すると、下側の分割材が上側の分割材から外れて落下してしまうおそれがある。下側の分割材が落下してしまうと露出した排水接続管の外側面に結露が生じてしまう。これに対し、左右に分割された分割材は排水接続管の上部に引っかかることにより落下し難く、分割材が落下しなければ排水接続管が露出せず、排水接続管の外側面に結露が生じることを防止することができる。
【0017】
左右に分割された分割材の分割面には嵌合部が形成され、各分割材は各分割面を嵌合させて排水接続管を覆うように組み付けられるようにしても良い。このようにすれば、排水接続管に断熱材を容易に、かつ確実に取付けることができる。
【0018】
分割材の内面と排水接続管の外側面との間にはヒータが配置されており、ヒータに電力を供給する電気コードは分割材の分割面に形成された切欠きに挿通されていることが好ましい。
【0019】
この場合、ヒータを備えることにより、排水接続管の外側面における結露の発生をより確実に防止することができる。また、滞留部に滞留する便器洗浄水の凍結を防止することができる。さらに、電気コードの取出しを容易に行うことができる。
【0020】
ヒータは分割材の少なくとも一つの内面に貼付されていても良い。この場合、断熱材を排水接続管に組み付ければ、ヒータは分割材の内面と排水接続管の外側面との間に配置されるため、ヒータの組み付け作業を容易に行なうことができる。また、ヒータは排水接続管の外側面に貼付されても良い。この場合、排水接続管に密着したヒータにより排水接続管を加熱することができるため、滞留部に滞留する便器洗浄水の凍結をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0022】
図1に示すように、実施例の洋風水洗式便器は、洋風便器本体10を備えている。洋風便器本体10には、床面に載置される外周壁11が形成されている。また、この洋風便器本体10には、外周壁11内に、便鉢12と、便鉢12の下端の流入口13と連通して上昇する上昇流路14と、上昇流路14と連通して下向きに屈曲し、下流端に便器排出口16を有する下降流路15とが形成されている。
【0023】
便鉢12の上部内周にはリム17が形成されている。便鉢12の下部及び上昇流路14により水封部18が形成されている。便鉢12と上昇流路14の外郭とからなって外周壁11内に露出する露出面19を覆うように、断熱材50が露出面19に取付けられている。断熱材50の外縁部が露出面19に接着され、断熱材50の上面と露出面19との間には隙間50sが設けられている。この隙間50sは外部に対して閉じた空気の断熱層とされている。断熱材50及び隙間51により形成された断熱層により、露出面19における結露の発生を防止することができる。
【0024】
また、洋風水洗式便器は外周壁内に排水接続管20を備えている。排水接続管20は、横S字状に形成されている。この排水接続管20は、上流端に形成され、上向きに開口する第1開口23と、下流端に形成され、下向きに開口する第2開口24とを有している。第1開口23にはパッキン25が嵌合され、パッキン25を介して水密状に便器排出口16が挿入されている。また、第2開口24は、この洋風水洗式便器が設置される床面から立ち上げられた排水管(図示しない)に接続される。この排水接続管20の内部には、便器洗浄水が滞留する滞留部22を有する便器排水路21が形成されている。
【0025】
図2に示すように、左右に分割された分割材30a、30bは、排水接続管20の左右方向から挟み込むようにして排水接続管20に組み付けられている。これにより、排水接続管20はその周囲が断熱材30によって覆われている。図3及び図4に示すように、断熱材30は、一方の分割材30aと他方の分割材30bとの分割面31に相じゃくり状の嵌合部30kが形成されている。すなわち、分割材30a、30bの嵌合部30kは、相互に重ね合うように厚さの半分ずつが欠き取られた形状とされている。また、一方の分割材30aの内面にはヒータ40が貼付されている(図2では省略)。図1に示すように、断熱材30の内面と排水接続管20の外側面との間には隙間30sが設けられている。この隙間30sは外部に対して閉じた空気の断熱層とされている。
【0026】
断熱材30は、各分割材30a、30bの分割面31に形成された嵌合部30kを嵌合させて排水接続管20に組み付けられている。排水接続管20を覆いながら組み付けられた各分割材30a、30bは、図4(a)〜(c)に示すように、止め金具34や接着剤35や面ファスナー36a、36bにより、結合される。このため、断熱材30を排水接続管20に容易にかつ確実に取付けることができる。また、断熱材30を上下に分割された分割材により形成すると、下側の分割材が上側の分割材から外れて落下してしまうおそれがあるが、左右に分割された分割材30a、30bは排水接続管20の上部に引っかかることにより落下し難い。
【0027】
また、図3(b)に示すように、分割材30aの内面にはヒータ40が貼付されており、ヒータ40に電力を供給する電気コード41は、分割材30a、30bの上側の分割面31に形成された切欠き31aに挿通されている。排水接続管20は断熱材30に覆われ、さらにヒータ40によって加熱可能な隙間30sにより形成された断熱層にも覆われているため、排水接続管20の外側面における結露の発生をより確実に防止することができ、さらに滞留部22に滞留する便器洗浄水の凍結を防止することができる。
【0028】
したがって、実施例の洋風水洗式便器は、外周壁11の内部における結露の発生をより確実に防止することができる。
【0029】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうもでもない。
【0030】
例えば、断熱材30に関しては、種々の構造を有するものを採用することが可能である。例えば、図5に示すように、断熱材30は、一方の分割材30cと他方の分割材30dとの分割面31に相じゃくり状の嵌合部30kが形成され、各分割材30c、30dの外周面は、組み付けられた際に、凹凸の無い形状に形成されている。この断熱材30は、図5(a)及び(b)に示すように、バンド37や円弧状の弾性バネ38により、各分割材30c、30dを結合することができる。
【0031】
また、図6(a)に示すように、断熱材30の一方の分割材30eの各分割面31には、断面形状が略半円形状の凹溝300aが形成され、他方の分割材30fの各分割面31には、断面形状が略半円形状の凸条300bが形成されている。このため、各凹溝300aと各凸条300bとが係合するように各分割材30e、30fを組み合わせることにより、各分割材30e、30fを結合することができる。また、図6(b)に示すように、断熱材30の各分割材30g、30hの各分割面31の先端部には、断面形状が鉤状の係合部301a、301bが形成されている。このため、各係合部301a、301bを係合するように各分割材30g、30hを組み合わせることにより、各分割材30g、30hを結合することができる。また、図6(c)に示すように、断熱材30の一方の分割材30iの上側の分割面31には、断面形状が略半円形状の凸条302aが形成され、下側の分割面31には、断面形状が略半円形状の凹溝302bが形成されている。これに対して、他方の分割材30jの上側の分割面31には、断面形状が略半円形状の凹溝302bが形成され、下側の分割面31には、断面形状が略半円形状の凸条302aが形成されている。このため、各凸条302aと各凹溝302bとが係合するように各分割材30i、30jを組み合わせることにより、各分割材30i、30jを結合することができる。
【0032】
また、図1に示す下降流路15を洋風便器本体10とは別体の接続管により形成し、上昇流路14の最上位部又はそれより下流側の位置で、この接続管を上昇流路14に接続することが可能である。
【0033】
また、ヒータ40を排水接続管20の外側面に貼付し、分割材30a、30bの上側の分割面31に形成された切欠き31aにヒータ40に電力を供給する電気コード41を挿通することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は洋風水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例の洋風水洗式便器の断面図である。
【図2】実施例の排水接続管と断熱材とを分解して示す概略斜視図である。
【図3】実施例の断熱材に係り、図(a)は組み付け状態の立面図、図(b)は一方の分割材の平面図である。
【図4】実施例の断熱材及び排水接続管の切断部端面図であり、図(a)〜(c)は夫々相違する結合手段を示している。
【図5】他の形態を有する断熱材及び排水接続管の切断部端面図であり、図(a)及び(b)は夫々相違する結合手段を示している。
【図6】他の形態を有する断熱材及び排水接続管の切断部端面図であり、図(a)〜(c)は夫々相違する係合部を示している。
【符号の説明】
【0036】
11…外周壁
12…便鉢
13…流入口
14…上昇流路
21…便器排水路
22…滞留部
30…断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に載置される外周壁と、該外周壁内に形成された便鉢と、該外周壁内に形成され、該便鉢の下端の流入口と連通して上昇する上昇流路と、該外周壁内に形成され、該上昇流路の下流側に連通し、便器洗浄水が滞留する滞留部を有する便器排水路とを備えた洋風水洗式便器であって、
前記滞留部はその周囲が断熱材によって覆われていることを特徴とする洋風水洗式便器。
【請求項2】
前記外周壁、前記便鉢及び前記上昇流路は洋風便器本体に形成され、
前記便器排水路は該洋風便器本体の便器排出口と接続された排水接続管に形成され、
前記断熱材は、該排水接続管を覆うように組み付けられる左右に分割された分割材からなる請求項1記載の洋風水洗式便器。
【請求項3】
前記分割材の内面と前記排水接続管の外側面との間にはヒータが配置されており、該ヒータに電力を供給する電気コードは該分割材の分割面に形成された切欠きに挿通されている請求項2記載の洋風水洗式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−2004(P2009−2004A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162512(P2007−162512)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】