説明

洗浄動作確認プログラム、及びその洗浄動作確認プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに洗浄システム

【課題】 洗浄条件の設定に使用される洗浄条件設定装置(或いは洗浄装置自体)における面倒な設定作業を除くことで、設定作業の簡便性及び効率性を向上させるとともに、事前に洗浄装置の動作確認を行うことで、洗浄動作の確実性を向上させることが可能な洗浄動作確認プログラム、及びその洗浄動作確認プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに洗浄システムを提供することにある。
【解決手段】 被洗浄物を洗浄する洗浄装置(洗浄装置1)と電気的に接続される情報処理端末(PC2)に、洗浄条件を入力せしめる工程,洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する工程,その実行状態を出力する工程の各種工程を実行させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品,金属部品などの被洗浄物(ワーク)を洗浄する洗浄装置の洗浄動作を確認する洗浄動作確認プログラム、及びその洗浄動作確認プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、機械部品,金属部品などの被洗浄物を洗浄するための洗浄装置がある。大型のものでは、例えば特許文献1に開示されているように、多品種少量生産される機械部品をワークとする、バッチ式洗浄槽を用いたロータリ式洗浄装置がある。一般的に、ロータリ式洗浄装置のコントロールボックスには、操作パネルやペンダント等の洗浄条件設定装置(又はティーチング装置)が配設される。そして、このコントロールボックスにおいて、ワークの種類や洗浄時間など、所定の洗浄条件がオペレータによって入力される。
【0003】
また、中型,小型のものでは、例えば特許文献2又は特許文献3に開示されているように、ベアリングやナットなどの金属部品をワークとする、複数の液槽を用いた洗浄装置がある。一般的に、複数の液槽を用いた洗浄装置では、ワークに付着している油や汚れを除去する脱脂、洗浄液を除去する水洗、ワーク表面の水をアルコールなどの溶媒と置換する水置換、溶媒を蒸発させる乾燥などの各種プロセスを経て、洗浄が行われる。そして、これらの各プロセスがスムーズかつ的確に進行するように、操作版や操作ボタン等の洗浄条件設定装置において、各プロセスにおける作業時間や管理温度など、所定の洗浄条件がオペレータによって入力される。
【0004】
このように、従来の洗浄装置では、大型,中型,又は小型を問わず、洗浄条件の設定に使用される洗浄条件設定装置(或いは洗浄装置自体)において、オペレータが様々な洗浄条件(パラメータ)を入力することによって、洗浄動作が実現していた。
【0005】
【特許文献1】特公平7−106345号公報(図1)
【特許文献2】特開平10−202209号公報(図1)
【特許文献3】特開昭60−78679号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来の洗浄装置では、オペレータは、洗浄条件設定装置を用いて洗浄条件を入力し、洗浄装置を実際に1度動作させ、所望の洗浄動作が得られなかった場合には、再度洗浄条件を入力し直す、といったように、適切な洗浄条件を設定するために、洗浄装置の実際の洗浄動作を確認しながら試行錯誤を繰り返すことを強いられていた。そのため、洗浄条件の設定が複雑な洗浄装置にあっては、面倒な設定作業が必要となり、熟練作業者の技能が必要となることから、設定作業の簡便性に乏しいといった問題がある。
【0007】
また、オペレータは、適切な洗浄条件を設定するために、洗浄装置の実際の洗浄動作を確認する必要があることから、洗浄条件設定装置の設置場所(或いは洗浄装置の設置場所)まで足を運ばなければならず、設定作業の効率性に乏しいといった問題もある。
【0008】
さらに、洗浄条件の設定が複雑であることに起因して、実際に洗浄装置を動作させなければ適切な洗浄条件が設定されているのか否か判断できない場合があり、洗浄動作の確実性に乏しいといった問題もある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗浄条件の設定に使用される洗浄条件設定装置(或いは洗浄装置自体)における面倒な設定作業を除くことで、設定作業の簡便性及び効率性を向上させるとともに、事前に洗浄装置の動作確認を行うことで、洗浄動作の確実性を向上させることが可能な洗浄動作確認プログラム、及びその洗浄動作確認プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに洗浄システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上のような課題を解決するために、本発明は、被洗浄物を洗浄する洗浄装置と電気的に接続される情報処理端末に、洗浄条件を入力する工程,洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する工程,その実行状態を出力する工程の各種工程を実行させることを特徴とする。
【0011】
より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1) ワークを洗浄する洗浄装置と電気的に接続される情報処理端末で用いられる洗浄動作確認プログラムであって、前記情報処理端末に、前記洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件を入力する洗浄条件入力工程と、前記洗浄条件入力工程によって入力された洗浄条件に基づいて、前記洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する仮実行工程と、前記仮実行工程による実行状態を認識可能に出力する出力工程と、を実行させることを特徴とする洗浄動作確認プログラム。
【0013】
本発明によれば、ワークを洗浄する洗浄装置と電気的に接続される情報処理端末で用いられる洗浄動作確認プログラムによって、その情報処理端末において、例えばワークを浸す洗浄槽や必要な洗浄時間など、洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件を、マウスやキーボード等の入力手段を用いてオペレータが入力する洗浄条件入力工程と、その洗浄条件入力工程によって入力された洗浄条件に基づいて、洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する仮実行工程と、その仮実行工程による実行状態を出力する出力工程と、が実行されることとしたので、オペレータは、洗浄条件の設定に使用される洗浄条件設定装置において洗浄条件を入力し、洗浄装置の洗浄動作を確認し、適切な洗浄条件を設定する、といった面倒な設定作業を行う必要がない。
【0014】
すなわち、従来は、洗浄条件の設定が複雑な洗浄装置にあっては、適切な洗浄条件を設定するために、洗浄条件設定装置において何度も洗浄条件を入力する、といったような面倒な設定作業が必要であったが、本発明によれば、例えば汎用PCなどの情報処理端末において、マウスやキーボード等を介して洗浄条件を入力し、モニタ等を介して洗浄装置の洗浄動作を確認しながら適切な洗浄条件を設定することができるので、熟練作業者の技能も必要なく、設定作業の簡便性の向上に資することができる。
【0015】
また、従来は、オペレータは、洗浄条件設定装置に洗浄条件を入力するために、その洗浄条件設定装置が設置された場所(或いは洗浄装置の設置場所)まで足を運ぶ必要があったが、本発明によれば、例えば汎用PCなどの情報処理端末において洗浄条件の入力作業をすることができるので、洗浄条件を入力する段階でわざわざ洗浄条件設定装置が設置された場所まで足を運ぶ必要がなくなり、ひいては設定作業の効率性の向上に資することができる。
【0016】
さらに、従来は、洗浄条件の設定が複雑であることに起因して、実際に洗浄装置を動作させなければ適切な洗浄条件が設定されているのか否か判断できなかったが、本発明によれば、洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムが情報処理端末上で実行され、その実行状態が出力されるので、事前に洗浄装置の動作確認を行うことができ、ひいては洗浄動作の確実性の向上に資することができる。
【0017】
ここで、「仮想洗浄プログラム」とは、洗浄装置の洗浄動作を仮想的に確認するために、洗浄装置ではなく情報処理端末で実行されるプログラムをいう。
【0018】
また、仮実行工程による実行状態を「出力する」とは、オペレータが洗浄装置の洗浄動作を仮想的に確認できるように仮実行工程による実行状態をオペレータによる認識が可能な状態に出力することを意味し、例えば、汎用PCのモニタに、洗浄動作を仮想的に確認するための動画(アニメーション)、静止画等の画像や作動状況を示す文字情報などが表示され視覚的に認識できるように、そのモニタに対して所定の制御信号を送信することであってもよいし、また、汎用PCのスピーカから洗浄動作を仮想的に確認するための音声による案内が発せられるように、そのスピーカに対して所定の制御信号を送信することであってもよい。更には、汎用PCの発光器(例えばLEDからなるランプ群)から洗浄動作を仮想的に視覚的に確認するための光が発せられるように、その発光器に対して所定の制御信号を送信することであってもよい。
【0019】
なお、本発明に係る洗浄動作確認プログラムは、被洗浄物を洗浄する洗浄装置と電気的に接続される情報処理端末で用いられるものであるが、上述した洗浄条件入力工程,仮実行工程,出力工程が実行される際に、特に洗浄装置と電気的に接続されていなくてもよい。
【0020】
(2) 前記洗浄条件入力工程は、前記情報処理端末に接続されたディスプレー上に入力案内メニューを表示するとともに、オペレータに項目選択させる工程であることを特徴とする(1)記載の洗浄動作確認プログラム。
【0021】
本発明によれば、上述した洗浄条件入力工程において、上述した情報処理端末のディスプレーに入力案内メニュー(例えばプルダウン方式とすることも可能である)を表示するとともに、オペレータに項目選択させることとしたので、マウス操作のみで洗浄条件の入力が可能になり、ひいては熟練作業者の技能を必要とすることなく設定作業の簡便性を向上させることができる。
【0022】
(3) 前記出力工程は、前記仮実行工程による実行状態を、前記情報処理端末に接続されたディスプレー上に画像として表示する工程を含むことを特徴とする(1)又は(2)記載の洗浄動作確認プログラム。
【0023】
本発明によれば、上述した出力工程において、上述した仮実行工程による実行状態を情報処理端末のディスプレー上に画像として表示することとしたので、オペレータは、仮実行工程による実行状態を視覚的に確認することができ、ひいては洗浄動作の確実性の向上に資することができる。
【0024】
(4) 前記画像として表示する工程は、動画として表示する工程を含むことを特徴とする(3)記載の洗浄動作確認プログラム。
【0025】
本発明によれば、上述した画像として表示する工程は、動画として表示する工程を含むこととしたので、オペレータは、仮実行工程による実行状態を動画アニメーションで視覚的に確認することができ、ひいては洗浄動作の確実性の向上に資することができる。
【0026】
(5) 前記洗浄条件入力工程は、洗浄条件の入力についての途中状況を、前記情報処理端末に接続されたディスプレー上に表示する工程を含むとともに、前記出力工程は、前記仮実行工程による実行状態を、前記情報処理端末に接続されたディスプレー上に表示する工程を含むことを特徴とする(1)から(4)のいずれか記載の洗浄動作確認プログラム。
【0027】
本発明によれば、上述した洗浄条件入力工程において、洗浄条件の入力についての途中状況を、情報処理端末のディスプレー上に表示するとともに、上述した出力工程において、仮実行工程による実行状態も、情報処理端末のディスプレー上に表示することとしたので、オペレータは、仮実行工程による実行状態を視認しつつ、様々な洗浄条件を入力して試行錯誤を繰り返すことで、洗浄動作の確実性をより高めることができる。
【0028】
(6) 前記洗浄装置は、洗浄剤を用いてワークを洗浄するものであって、前記情報処理端末に、洗浄剤及び/又はワークごとに予め設定されたパラメータを記憶蓄積して、前記入力案内メニューの準備をするパラメータ設定値記憶工程を実行させることを特徴とする(2)から(5)のいずれか記載の洗浄動作確認プログラム。
【0029】
本発明によれば、上述した洗浄装置は、洗浄剤を用いてワークを洗浄する洗浄装置であって、上述した情報処理端末において、洗浄剤及び/又はワークごとに予め設定されたパラメータを記憶蓄積して、上述の入力案内メニューの準備をするパラメータ設定値記憶工程を実行させることとしたから、ワークに応じた洗浄手順や方法などの熟練作業者のノウハウをパラメータのレシピとして記憶しておくことができ、ひいては設定作業の簡便性を向上させることができる
【0030】
(7) 前記洗浄装置の禁止動作対象となる洗浄条件がオペレータによって入力されたときは、前記情報処理端末における前記仮実行工程を実行させ、前記出力工程においてその旨を出力させることを特徴とする(1)から(6)のいずれか記載の洗浄動作確認プログラム。
【0031】
本発明によれば、上述した洗浄動作確認プログラムによって、上述した洗浄装置の禁止動作対象となる洗浄条件(例えば、深さXの洗浄槽Aと、その洗浄槽Aにおいてワークを上下させるアームが深さY(>X)の位置まで下降するような位置パラメータ)がオペレータによって入力されたときは、情報処理端末における上述した仮実行工程が実行され、上述した出力工程においてその旨が出力されることとしたから、オペレータは、例えばモニタに表示されるアニメーションを視認することによって、洗浄装置の禁止動作対象となる洗浄条件はどのような洗浄条件であるのかを視覚的に確認することができる。
【0032】
すなわち、従来の禁止動作回避機能は、洗浄条件設定装置に洗浄装置の禁止動作対象となる洗浄条件が入力されると、その時点で、オペレータにその旨を報知するものであるため、例えば、洗浄条件1と洗浄条件2と洗浄条件3とが同時に入力されると洗浄装置が故障する(洗浄条件1〜3のそれぞれはいずれも適切な洗浄条件であるが、これらが同時に入力されると洗浄装置が故障する)、といったような、複数の洗浄条件が相俟って生じる問題を回避するのは困難であったが、本発明によれば、例えば上述した洗浄条件1〜3がオペレータによって入力されたときには、それらの洗浄条件に基づき、洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムが実行され、例えばモニタ等で洗浄装置の洗浄動作を視覚的に確認することができるので、複数の洗浄条件が相俟って生じる問題(洗浄装置が故障すること)を事前に知ることができる。
【0033】
このように、汎用PCなどの情報処理端末上で、洗浄装置の禁止動作対象となる洗浄条件を事前に発見し、また、適切な洗浄条件を設定することができるので、洗浄条件を設定する作業の簡便性及び効率性、並びに洗浄装置の洗浄動作に係る確実性をより向上させることができる。
【0034】
(8) 前記洗浄装置は、洗浄剤を用いてワークを洗浄するものであって、前記情報処理端末に、前記洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータと、前記洗浄条件入力工程によって入力された洗浄条件と、を前記洗浄装置に対して送信する送信工程を実行させることを特徴とする(1)から(7)のいずれか記載の洗浄動作確認プログラム。
【0035】
本発明によれば、上述した洗浄装置は、フッ素系洗浄剤などの洗浄剤を用いてワークを洗浄するものであって、上述した洗浄動作確認プログラムによって、上述した情報処理端末において、その洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータと、上述した洗浄条件入力工程によって入力された洗浄条件と、を洗浄装置に対して送信する送信工程が実行されることとしたから、オペレータは、洗浄条件の設定が複雑な洗浄装置を使用する場合であっても、まず、マウスやキーボードを用いて洗浄条件を入力し、モニタを見て洗浄装置の洗浄動作を確認しながら適切な洗浄条件を設定した後、その洗浄条件と洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータを洗浄装置に対して送信する送信ボタンをクリックすることによって、洗浄装置の適切な洗浄動作を実現することができる。
【0036】
このように、本発明は、洗浄条件の設定が複雑な洗浄装置を使用するにあたって、洗浄条件を設定する作業の簡便性及び効率性、並びに洗浄動作の確実性をより向上させることができるものである。
【0037】
(9) ワークを洗浄する洗浄装置と電気的に接続される情報処理端末で用いられる洗浄動作確認プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記情報処理端末に、前記洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件をオペレータに入力させる洗浄条件入力工程と、前記洗浄条件入力工程によって入力された洗浄条件に基づいて、前記洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する仮実行工程と、前記仮実行工程による実行状態を出力する出力工程と、を実行させる洗浄動作確認プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0038】
本発明によれば、ワークを洗浄する洗浄装置と電気的に接続される情報処理端末に、洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件を入力する洗浄条件入力工程と、その洗浄条件入力工程によって入力された洗浄条件に基づいて、洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する仮実行工程と、その仮実行工程による実行状態を出力する出力工程と、を実行させる洗浄動作確認プログラムが、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されることとしたので、この記録媒体を情報処理端末に読み取らせることによって、洗浄条件を設定する作業の簡便性及び効率性、並びに洗浄装置の洗浄動作に係る確実性の向上に資することができる。
【0039】
なお、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」としては、FD,CD,MD,又はDVDなど、電子情報を記録可能な媒体であれば如何なるものであっても構わない。
【0040】
(10) 洗浄剤を用いてワークを洗浄する洗浄装置と、当該洗浄装置と電気的に接続される情報処理端末と、を有する洗浄システムであって、前記情報処理端末は、前記洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータを記憶するパラメータ設定値記憶手段と、オペレータによって入力された、前記洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件を記憶する洗浄条件記憶手段と、前記パラメータ設定値記憶手段に記憶されたパラメータ及び前記洗浄条件記憶手段に記憶された洗浄条件を、前記洗浄装置に対して送信する送信手段と、を備えることを特徴とする洗浄システム。
【0041】
本発明によれば、フッ素系洗浄剤などの洗浄剤を用いてワークを洗浄する洗浄装置と、その洗浄装置と電気的に接続される情報処理端末と、を有する洗浄システムであって、情報処理端末に、洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータを記憶するパラメータ設定値記憶手段と、オペレータによって入力された、洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件を記憶する洗浄条件記憶手段と、パラメータ設定値記憶手段に記憶されたパラメータ及び洗浄条件記憶手段に記憶された洗浄条件を、上述の洗浄装置に対して送信する送信手段と、を設けることとしたから、洗浄条件の設定が複雑な洗浄装置を使用する場合において、オペレータがモニタを見ながらマウスやキーボードを用いて洗浄条件を入力し、所定の操作(例えば送信ボタンを押す)を行うことによって、その洗浄条件と洗浄剤ごとに予め定められたパラメータとが洗浄装置に対して送信されるので、洗浄装置の洗浄条件を設定する作業の簡便性及び効率性をより向上させることができる。
【0042】
(11) 前記パラメータ設定値記憶手段は、ワークに応じた洗浄条件を記憶することを特徴とする(10)記載の洗浄システム。
【0043】
本発明によれば、上述したパラメータ設定値記憶手段には、ワークに応じた洗浄条件が記憶されることとしたから、ワークの特性をも考慮した適切なパラメータを洗浄装置に送ることができ、ひいては洗浄動作の確実性をより高めることができる。
【0044】
(12) 前記洗浄装置は、ワークを1個又は小ロット毎に順次洗浄する1個流し洗浄機であることを特徴とする(10)又は(11)記載の洗浄システム。
【0045】
本発明によれば、上述した洗浄装置は、ワークを1又は小ロット毎に順次洗浄し、多品種少量生産に適する1個流し洗浄機であるので、ワークの種類を頻繁に入れ替える必要がある場合であっても、短手番で容易に且つ正確に洗浄条件の変更が可能となり、ひいては洗浄動作の効率性を高めることができる。
【0046】
(13) 前記洗浄装置は、前記送信手段により送られたデータを記憶するデータ記憶手段と、前記データ記憶手段に記憶されたデータに基づき、前記洗浄装置に洗浄を実行させる実行手段と、を備えることを特徴とする(10)から(12)のいずれか記載の洗浄システム。
【0047】
本発明によれば、上述した洗浄装置は、上述の送信手段により送られたデータを記憶するとともに、そのデータに基づいて洗浄動作を行うことができるので、情報処理端末におけるシミュレーションを経て決まった適切な洗浄条件やパラメータに基づき洗浄動作を行うことができ、ひいては洗浄動作の確実性を高めることができる。
【0048】
(14) 前記情報処理端末は、さらに、前記洗浄条件記憶手段に記憶された洗浄条件に基づいて、前記洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する仮実行手段と、前記仮実行手段による実行状態を表示部に出力する出力手段と、を備え、前記出力手段による実行状態の出力の後に、前記送信手段による送信が有効化されることを特徴とする(10)から(13)のいずれか記載の洗浄システム。
【0049】
本発明によれば、上述した情報処理端末に、上述した洗浄条件記憶手段に記憶された洗浄条件に基づいて、洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する仮実行手段と、その仮実行手段による実行状態を出力する出力手段と、を設け、その出力手段による実行状態の出力の後に、上述した送信手段による送信が有効化されることとしたから、オペレータが、仮想洗浄プログラムの実行状態を確認する前に、洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件及び洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータを洗浄装置に対して送信する送信操作を行った(例えば送信ボタンを誤ってクリックした)としても、これらの情報は洗浄装置に対して送信されないので、洗浄装置の誤動作を未然に防ぐことができ、ひいては洗浄装置の洗浄動作に係る確実性の向上に資することができる。
【0050】
(15) 前記情報処理端末は、さらに、前記洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件を入力する入力手段と、前記仮実行手段による実行状態を表示する表示部と、を備えることを特徴とする(14)記載の洗浄システム。
【0051】
本発明によれば、上述した情報処理端末は、例えばマウスやキーボードなど、上述の洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件を入力する入力手段と、例えばディスプレーなど、上述の仮実行手段による実行状態を表示する表示表示部と、を備えることとしたので、ディスプレーを視認しつつマウス操作で洗浄条件を入力することができ、ひいては洗浄動作の効率性を高めることができる。
【発明の効果】
【0052】
以上説明したように、本発明に係る洗浄動作確認プログラム、及びその洗浄動作確認プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに洗浄システムは、汎用PCなどの情報処理端末において洗浄装置の洗浄条件が入力されることで、その設定作業の簡便性及び効率性の向上を図ることができる。
【0053】
また、その情報処理端末において洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムが実行され、その実行状態が表示部に出力されることで、上記洗浄動作を視覚的に画像で確認することができ、洗浄装置の洗浄動作に係る確実性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0055】
[洗浄システムの概要]
図1は、本発明の実施の形態に係る洗浄システムの概要を説明するための外観構成図である。
【0056】
図1において、本発明の実施の形態に係る洗浄システムは、洗浄剤を用いて被洗浄物(ワーク)を洗浄する洗浄装置1と、洗浄装置1とシリアルインターフェースを介して電気的に接続されたPC2と、から構成される。なお、図1では、情報処理端末の一例としてPC2を採用しているが、その他、サーバ,PDA,携帯電話機など、洗浄装置1と有線又は無線によって電気的に接続し得るものであれば如何なるものを採用してもよい。
【0057】
また、図1では、洗浄装置1と情報処理端末2とは、シリアルケーブルを用いて電気的に接続されているが、その他、LAN,インターネット,無線LAN,赤外線通信,近距離ワイヤレス通信(ブルートゥース)などによって電気的に接続されていてもよい。
【0058】
図1において、PC2には、洗浄動作確認プログラムを主要素とするソフトウェアがインストールされており、このソフトウェアの機能に基づき、オペレータによる洗浄条件の入力工程(例えばプルダウン選択式の入力工程)と、入力された洗浄条件に基づいて、洗浄装置1の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する仮実行工程と、その仮実行工程による実行状態を出力する出力工程と、入力された洗浄条件と洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータとを洗浄装置1に対して送信する送信工程と、が実行される。
【0059】
このように、本発明の実施の形態に係る洗浄システムによれば、オペレータは、洗浄装置1ではなく使い慣れたPC2において、マウスやキーボード等の入力手段を用いて洗浄条件の入力を行い、その洗浄条件と、洗浄剤ごとに予め定められたパラメータとを所定の操作(例えば送信ボタンのクリックする等)によって洗浄装置1に送信することで、洗浄装置1の洗浄動作を実現することができるので、熟練作業者の技能が必要になることもなく、洗浄装置1の洗浄条件を設定する作業の簡便性を向上させることができる。
【0060】
加えて、本発明の実施の形態に係る洗浄システムは、使い慣れたPC2を用いることによって、作業の簡便性を向上させるものに止まらない。すなわち、PC2に、各洗浄剤の最適洗浄条件、洗浄剤の最適組合せ及びその逆の禁止組合せ、並びにワークに応じた洗浄手順や方法といった熟練作業者のノウハウをパラメータのレシピとして設定・記憶することによって、熟練作業者の技能を必要とせず、作業の簡便性を向上させることができる。なお、ここでいうパラメータのレシピは、必要に応じて容易に追加設定することができるので、この追加設定によって新たなノウハウの蓄積も可能となる。
【0061】
また、オペレータは、わざわざ洗浄装置1の設置場所まで足を運ぶ必要がないことから、洗浄装置1の洗浄条件を設定する作業の効率性を向上させることもできる。さらに、オペレータは、洗浄装置1の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムが実行され、その実行状態をPC2のモニタに表示されるアニメーションによって視認することができるので、洗浄装置1の洗浄動作を事前に確認することができ、ひいては洗浄装置1の洗浄動作に係る確実性を向上させることができる。
【0062】
ここで、例えば、オペレータが、仮想洗浄プログラムの実行状態をPC2のモニタで視認する前に、誤って送信ボタンをクリックしてしまったとしても、上述した送信工程による洗浄条件とパラメータの送信は有効化されていないので、洗浄装置1の誤動作を未然に防ぐことができる。すなわち、上述した送信工程による洗浄条件とパラメータの送信は、仮想洗浄プログラムの実行状態の出力があった後に有効化されることとなる。
【0063】
また、例えば、オペレータが、洗浄装置1の禁止動作対象となる洗浄条件を入力したときには、その洗浄条件に基づいて、洗浄装置1の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムが実行され、PC2のモニタに、洗浄装置1の禁止動作対象となる洗浄条件が入力された旨の表示がなされる。従って、このような洗浄動作確認プログラムの禁止動作回避機能によれば、複数の洗浄条件が相俟って生じる問題を事前に発見することができ、ひいては洗浄装置1の洗浄動作に係る確実性をより向上させることができる。
【0064】
なお、上述した洗浄動作確認プログラム(又はこれを主要素とするソフトウェア)は、インターネット等の電気通信回線を通じてPC2にインストールすることもできるし、CDやDVDといった記録媒体を介してPC2にインストールすることもできる。
【0065】
また、本発明の実施の形態に係る洗浄システムでは、洗浄装置1として比較的小型のワークを1個づつ(又は小ロット等)順次に精密洗浄する所謂「1個流し小型洗浄機」を採用している。この「1個流し小型洗浄機」は、多品種少量生産に適する洗浄装置である。多品種少量生産ではワークの種類を頻繁に入れ替えるので、その度に洗浄条件の設定変更の段取りが必要になるが、本発明に係る洗浄動作確認プログラムを用いた洗浄確認シミュレーションによれば、短手番で容易に且つ正確に洗浄条件の変更が可能になる。なお、「1個流し小型洗浄機」は、比較的小型のワークの1個流しであれば如何なる形態であってもよく、回転式やライン式など、種々変更が可能である。そして、「1個流し小型洗浄機」の洗浄対象物としては、例えばガラスやプラスチックレンズなど、小金属部品や精密部品が挙げられる。また、1個に限定するものではなく、大きさや形状によって複数のワークを一度に洗浄するようにしてもよい。
【0066】
[洗浄システムの電気的構成]
図2は、本発明の実施の形態に係る洗浄システムにおける洗浄装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【0067】
図2において、洗浄装置1の電気的構成は、CPU10と、ROM11と、RAM12と、EEPROM13と、洗浄槽回転モータ駆動回路14と、洗浄槽回転モータ15と、回転位置検出回路16と、ワーク上下モータ駆動回路17と、ワーク上下モータ18と、回転位置検出回路19と、ファンモータ駆動回路20と、ファンモータ21と、冷却器駆動回路22と、冷却器23と、温度センサ24と、ヒータ温度調節回路25と、ヒータ26と、超音波発振回路27と、超音波振動子28と、表示器29と、PC通信回路30と、装置間通信回路31と、電源回路32と、からなる。
【0068】
CPU10は、洗浄装置1の制御中枢を司るものであって、ROM11に記憶されているプログラムに従って種々の制御を行う。このCPU10の制御対象は、洗浄槽を回転させるための洗浄槽回転モータ15,被洗浄物たるワークを上下させるためのワーク上下モータ18,ペルチェ素子やシンク等から構成される冷却器23,その冷却器23(特に、ペルチェ素子の発熱部)を冷却するファンモータ21,洗浄剤を蒸発させるためのヒータ26,超音波洗浄に用いられる超音波振動子28である。これら各制御対象に対する制御信号は、それぞれ洗浄槽回転モータ駆動回路14,ワーク上下モータ駆動回路17,ファンモータ駆動回路20,冷却器駆動回路22,ヒータ温度調節回路25,超音波発振回路27を介してCPU10から与えられる。
【0069】
CPU10には、洗浄槽回転モータ15の回転位置を検出する回転位置検出回路16の回転位置検出信号,ワーク上下モータ18の回転位置を検出する回転位置検出回路19の回転位置検出信号,冷却器23の放熱部若しくは冷却管の表面付近又はドレンタンク内の温度(液温)を検出する温度センサ24のセンサ出力と、が与えられる。
【0070】
なお、回転位置検出回路16は、洗浄槽回転モータ15の回転位置を検出するものであって、原点センサやインデックスセンサなどを含んでいる。回転位置検出回路19は、ワーク上下モータ18の回転位置を検出するものであって、上昇端センサ,中間位置センサ,及び下降端センサなどを含んでいる。
【0071】
また、冷却管の表面付近の温度を検出する温度センサ24によって、冷却器23における洗浄剤の蒸発量を検出することができる。すなわち、洗浄剤の蒸発量が多い場合には、それに伴い熱交換量・液化量が増加して冷却管の表面温度が上昇し、一方で、洗浄剤の蒸発量が少ない場合には、熱交換量・液化量はそれほど増加せず冷却管の表面温度は低い温度のままとなるので、この表面温度の測定値に基づけば、冷却管における洗浄剤の蒸発量を検出することができる。また、ドレンタンク内の温度を検出する温度センサ24によって、ヒータ26の温度を適切に調節することができる。
【0072】
CPU10は、冷却器23の放熱部の温度を検出する温度センサ24のセンサ出力に基づき、冷却器23の不調や故障を検出する。また、冷却管の表面付近又はドレンタンク内の温度を検出する温度センサ24のセンサ出力に基づき、ヒータ温度調節回路25を介してヒータ26の温度制御を行う。すなわち、洗浄剤の蒸発量が多すぎる場合には、ヒータ26の温度を低くして蒸発量を抑える一方で、洗浄剤の蒸発量が少ない場合には必要に応じてヒータ26の温度を高くして蒸発量を増やす。
【0073】
なお、ヒータ温度調節回路25とヒータ26との間には、図示しないSSR(固定リレー)が設けられる。また、ファンモータ駆動回路20及び冷却器駆動回路22は、ファンモータ21及び冷却器23のペルチェ素子に対してパルス幅変調された信号を出力する。
【0074】
ROM11は、洗浄装置1の洗浄動作を実現する洗浄プログラム(メインプログラム)を格納している。より具体的には、各槽における浸漬時間,超音波パワー,着液速度,引き上げ速度といった各要素をパラメータとし、複数のサブルーチンプログラムを適宜呼び出すことによって洗浄装置1の洗浄動作を実現する洗浄プログラムを格納している。また、複数のサブルーチンプログラムもROM11に格納されており、例えば、洗浄槽回転モータ15,ワーク上下モータ18,ファンモータ21,又は冷却器23を駆動するための制御プログラム,ヒータ26又は超音波振動子28を作動させるための制御プログラム等がサブルーチンプログラムに該当する。
【0075】
RAM12は、CPU10と互いにインターフェースをとっており、CPU10のワーキングエリアとして機能する。すなわち、RAM12では、変数値の書き込み及び読み出しがランダムに行われる。
【0076】
EEPROM13は、電気的に何度でも記憶の消去・書き込みが可能であって、外部から電力を供給しなくても記憶を保持することができる。本実施形態においては、PC通信回路30(USBを含む)を介してPC2から送られてきた、洗浄装置1が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件及び洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータなどを蓄積して記憶する。なお、このEEPROM13に記憶された情報の内容は、表示器29において表示させることとしてもよい。
【0077】
その他、洗浄装置1には、他の洗浄装置と通信を行う装置間通信(HMI)回路31や各部に電力を供給する電源回路32が含まれている。
【0078】
図3は、本発明の実施の形態に係る洗浄システムにおけるPC2の電気的構成を示すブロック図である。
【0079】
図3において、PC2の電気的構成は、CPU40と、ROM41と、RAM42と、入力部43と、出力部44と、通信部45と、からなる。CPU40は、PC2の制御中枢を司るものであって、ROM41に記憶されているプログラムに従って種々の制御を行う。ROM41は、PC2に各種処理を実行させるプログラムを格納しており、その中には、後述する洗浄動作確認プログラムが含まれている。詳細については、[洗浄動作確認プログラム]において説明する。
【0080】
RAM42は、CPU40と互いにインターフェースをとっており、CPU40のワーキングエリアとして機能する。そして、オペレータによって入力された、洗浄装置1が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件や、洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータなどを記憶する。なお、洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータはEEPROM(図示せず)など、他のメモリに記憶することとしてもよい。
【0081】
入力部43は、マウスやキーボードなどから構成され、オペレータによって入力された情報(洗浄条件など)をCPU40に対して送信する。出力部44は、モニタやスピーカなどから構成され、CPU40から受信した制御信号に基づき、オペレータに対して各種情報を報知する。通信部45は、洗浄装置1と電気的に接続されており、この洗浄装置1に対して各種情報を送信する。
【0082】
[洗浄動作確認プログラム]
図4は、図3に示すROM41に格納された洗浄動作確認プログラムによって実行される工程を説明するための説明図である。特に、図4(a)は、オペレータに洗浄条件を入力せしめる洗浄条件入力工程が実行される様子を示し、図4(b)は、洗浄装置1の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムが実行された際に、その実行状態を出力する出力工程が実行される様子を示している。
【0083】
図4(a)において、オペレータは、任意の工程名をテキストボックス51に記述した後、洗浄装置1が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件を入力する。より具体的には、テキストボックス51に記述した工程で行う作業内容を、ドロップダウンボックス52,53,54,56,57から選択する。ドロップダウンボックス52では、その工程での上下アーム目標位置(洗浄ワークの位置)を指定する。例えば、洗浄槽の中にワークを浸したければ"Dipping"を選択し、ベーパ洗浄位置にワークを設定したければ"Vapor"を選択する。ドロップダウンボックス53では、その工程で使用する洗浄槽の番号を指定する。ドロップダウンボックス54では、その工程での超音波出力強度を設定する。例えばNo,Soft,Medium,Strongという4段階から選択する。
【0084】
なお、チェックボックス55の指定(洗浄中のみ超音波を出力する指定)により、超音波出力のタイミングを変更することができる。例えば、超音波をかけた状態でワークを槽に入れたければ、チェックボックスをはずす。また、超音波出力強度は、数値を用いて設定してもよい。
【0085】
ドロップダウンボックス56では、洗浄槽中でアームを上下に揺動させる強さ(振幅)を指定する。例えばNo,Soft,Medium,Strongという4段階から選択する。ドロップダウンボックス57では、洗浄アームの上下速度を指定する。例えばSlow,Fastという2段階から選択する。ドロップダウンボックス58では、洗浄動作の実行時間(秒)を設定する。なお、記述がない場合はデフォルト値として30秒が選択される。例えば揺動をOnにして時間を30秒に設定すると、30秒間揺動洗浄が行われ、揺動をOffにして時間を30秒に設定すると、30秒間揺動洗浄が行われる。
【0086】
このように、各ドロップダウンボックス52〜58に表示された作業内容は、モニタ上の表示部60としてのリストボックス60aに順番に表示されていく。
【0087】
このようにして、洗浄条件の入力作業が全て終わると、オペレータは、ファイルの保存を行った後に(この際、入力された洗浄条件は、CPU40によって一旦RAM42に記憶される)、洗浄装置1の洗浄動作確認を行う。より具体的には、CPU40は、オペレータによる動画(アニメーション)ロードボタン59のクリックを契機として、入力部43から動画開始信号を受信すると、ROM41から洗浄装置1の洗浄動作を仮想的に確認する仮想洗浄プログラムを読み出すとともに、RAM42から洗浄条件を読み出し、この洗浄条件をパラメータとして仮想洗浄プログラムを実行する。そして、CPU40は、その実行状態を出力部44(ここではモニタ)に対して出力する。その結果、モニタ上の表示部60としての画像表示部60bにおいて、洗浄装置1の洗浄動作に関する動画が表示される(図4(b)参照)。
【0088】
なお、本実施の形態では、画像表示部60bは、動画で表示している。さらに、動画スピードバー61を左右に操作することによりスピード変更可能であって、リピート生表示も可能である。この動画スピードバー61を左方に操作することで、スローモーション再生を行うことができ、微妙な位置決めや動作の再確認が容易にできる。また、確認の必要のない部分については、動画スピードバー61を右方に操作することで、スピード再生を行うことができ、時間を節約して設定及び設定確認の作業を効率化することができる。この時間は、表示部60としての残り時間表示部60cに表示される。なお、本実施形態では、画像表示部60bは動画で表示しているが、各作業工程を表示する静止画であってもよい。さらに、本実施の形態では、画像表示部60bに動作中の槽番号を表示する槽番号表示部60dが設けられている。また、本実施の形態においては、各作業工程時に、外部との信号の入・出力を表示する、表示部60としての入出力表示部60eがモニタ上に設けられている。
【0089】
また、洗浄装置1の禁止動作対象となる洗浄条件がオペレータによって入力された場合には、モニタ上でその旨が表示される。なお、モニタ上で例えば「洗浄条件として不適切です」といった文字が表示される場合に、仮想洗浄プログラムの実行中に表示されてもよいし、仮想洗浄プログラムの実行終了後に表示されてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、洗浄装置1の禁止動作対象となる洗浄条件が入力されたか否かが主として判断されるが、本発明はこれに限られず、例えば、「この洗浄条件であればこれぐらい綺麗に洗浄できる」といった数多くの実験情報をデータベース化しておいて、CPU40は、このデータベースを適宜参照することによって、どれくらい綺麗に洗浄できるか、といった洗浄度合を判断することもできる。また、ワークの種類、サイズなどを特定入力する構成とすれば、予め記憶設定されたレシピの洗浄条件を参照し、最適洗浄条件を生成して表示することもできる。
【0091】
さらに、本実施形態に係る洗浄動作確認プログラムは、コ・ソルベント洗浄に対応しないものであるが、本発明はこれに限られず、コ・ソルベント洗浄に対応するものを提供することもできる。これにより、コ・ソルベント洗浄は工程数が多く洗浄条件の設定が複雑であることから、洗浄条件を設定する作業の簡便性及び効率性を向上させる本発明の効果がより顕著に表れることになる。
【0092】
このようにして、洗浄装置1の洗浄動作確認が終わると、オペレータは、洗浄動作確認の済んだ洗浄条件を洗浄装置1に読み込ませる。より具体的には、PC2のCPU40は、オペレータによる送信ボタンのクリックを契機として、入力部43から送信許可信号を受信すると、RAM42から洗浄条件を読み出すとともに、ROM41(又はRAM42)から洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータを読み出し、両者を、通信部45を介して洗浄装置1に対して送信(ダウンロード)する。なお、図5は、図3に示すROM41に格納された洗浄動作確認プログラムによって実行される送信工程において、送信対象となるダウンロードデータを示す模式図である。
【0093】
また、洗浄装置1の洗浄動作を確認する前に、オペレータが送信ボタンを誤ってクリックしたとしても、図5に示すダウンロードデータは、洗浄装置1に対して送信されない。より具体的には、CPU40は、仮想洗浄プログラムの実行状態を出力部44に送信するまで、通信部45に対してダウンロード指令を送信しない。その結果、洗浄装置の誤動作を未然に防ぐことができる。
【0094】
なお、一旦、作成され、作動確認された洗浄条件は、EEPROM13などにレシピとして記憶させることができる。後日の工程修正や追加などに対応して新規なレシピを容易に作成することも可能である。
【0095】
[処理動作]
図6は、本発明の実施の形態に係る洗浄システムの処理動作を示すフローチャートである。なお、図6の点線枠内に示す処理動作が、洗浄動作確認プログラムによって実行される工程に相当する処理動作である。
【0096】
図6において、まず、オペレータによって洗浄条件の入力が行われる(ステップS1)。より具体的には、オペレータが、マウスを用いて画面上で所望の洗浄条件を入力(規定の洗浄条件の中から所望の洗浄条件を選択)すると、PC2の入力部43によって、その洗浄条件がCPU40に入力される。なお、CPU40に入力された洗浄条件は、一旦RAM42に記憶される。
【0097】
次いで、オペレータによって動作の確認が行われる(ステップS2)。より具体的には、オペレータが、マウスを用いて画面上で動画開始ボタン59をクリックすると、PC2の入力部43によって、動画開始信号がCPU40に入力される。これを受信したCPU40は、ROM41から仮想洗浄プログラム,RAM42から洗浄条件を読み出し、この洗浄条件をパラメータとして仮想洗浄プログラムを実行する。そして、CPU40は、その実行状態を出力部44に対して出力する。その結果、オペレータは、モニタ上で、洗浄動作の確認を、画像表示部60bに動画として表示されることで視覚的に確認することができる。
【0098】
また、リストボックス60aでは、動作中の作業内容について、点滅または色が変わるようになっており、どの作業であるのか、確認することができる。
【0099】
次いで、洗浄装置1の洗浄動作が適切であるか否かが判断される(ステップS3)。より具体的には、CPU40は、例えば出力部44を介して「ダウンロードOK」「ダウンロードNG」といったボタン(図示せず)をモニタに表示し、オペレータがマウスを用いて「ダウンロードOK」に係る送信ボタンをクリックすることを契機として入力部43から送られてくる送信許可信号を受信したか、或いは、オペレータがマウスを用いて「ダウンロードNG」に係る送信ボタンをクリックすることを契機として入力部43から送られてくる送信不可信号を受信したか、よって判断する。この場合、送信不可信号を受信した場合には、ステップS1の洗浄条件の入力が再び行われる。
【0100】
ステップS3において、CPU40は、送信許可信号を受信した場合には、洗浄条件と洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータを、通信部45を介して洗浄装置1に対して送信(ダウンロード)する(ステップS4)。
【0101】
次いで、実際の洗浄動作が行われる(ステップS5)。より具体的には、洗浄装置1において、CPU10は、ステップ4において送信された洗浄条件と洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータを、PC通信回路30を介して受信すると、これらをEEPROM13に記憶する。なお、上述のとおり、EEPROM13は外部から電力を供給しなくても記憶を保持することができるため、洗浄装置1の電源を一回OFFして再度ONした場合であっても、ステップ4において送信された洗浄条件と洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータは消去されない。
【0102】
そして、CPU10は、ROM11から洗浄装置1の洗浄動作を実現する洗浄プログラム(メインプログラム)を読み出すとともに、EEPROM13から洗浄条件と洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータを読み出し、洗浄条件と洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータを用いて洗浄プログラムを実行する。この際、適宜上述したサブルーチンプログラムが呼び出される。その結果、洗浄装置1の洗浄動作が行われる。最後に、所定時間が経過した後、洗浄が完了する(ステップS6)。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る洗浄動作確認プログラム、及びその洗浄動作確認プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体、並びに洗浄システムは、洗浄条件を設定する作業の簡便性及び効率性、並びに洗浄装置の洗浄動作に係る確実性の向上に資するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施の形態に係る洗浄システムの概要を説明するための外観構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る洗浄システムにおける洗浄装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る洗浄システムにおけるPCの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示すROMに格納された洗浄動作確認プログラムによって実行される工程を説明するための説明図である。
【図5】図3に示すROMに格納された洗浄動作確認プログラムによって実行される送信工程において、送信対象となるダウンロードデータを示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る洗浄システムの処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0105】
1 洗浄装置
2 PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを洗浄する洗浄装置と電気的に接続される情報処理端末で用いられる洗浄動作確認プログラムであって、
前記情報処理端末に、
前記洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件を入力する洗浄条件入力工程と、
前記洗浄条件入力工程によって入力された洗浄条件に基づいて、前記洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する仮実行工程と、
前記仮実行工程による実行状態を認識可能に出力する出力工程と、を実行させることを特徴とする洗浄動作確認プログラム。
【請求項2】
前記洗浄条件入力工程は、前記情報処理端末に接続されたディスプレー上に入力案内メニューを表示するとともに、オペレータに項目選択させる工程であることを特徴とする請求項1記載の洗浄動作確認プログラム。
【請求項3】
前記出力工程は、前記仮実行工程による実行状態を、前記情報処理端末に接続されたディスプレー上に画像として表示する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄動作確認プログラム。
【請求項4】
前記画像として表示する工程は、動画として表示する工程を含むことを特徴とする請求項3記載の洗浄動作確認プログラム。
【請求項5】
前記洗浄条件入力工程は、洗浄条件の入力についての途中状況を、前記情報処理端末に接続されたディスプレー上に表示する工程を含むとともに、
前記出力工程は、前記仮実行工程による実行状態を、前記情報処理端末に接続されたディスプレー上に表示する工程を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の洗浄動作確認プログラム。
【請求項6】
前記洗浄装置は、洗浄剤を用いてワークを洗浄するものであって、
前記情報処理端末に、洗浄剤及び/又はワークごとに予め設定されたパラメータを記憶蓄積して、前記入力案内メニューの準備をするパラメータ設定値記憶工程を実行させることを特徴とする請求項2から5のいずれか記載の洗浄動作確認プログラム。
【請求項7】
前記洗浄装置の禁止動作対象となる洗浄条件がオペレータによって入力されたときは、前記情報処理端末における前記仮実行工程を実行させ、前記出力工程においてその旨を出力させることを特徴とする請求項1から6のいずれか記載の洗浄動作確認プログラム。
【請求項8】
前記洗浄装置は、洗浄剤を用いてワークを洗浄するものであって、
前記情報処理端末に、
前記洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータと、前記洗浄条件入力工程によって入力された洗浄条件と、を前記洗浄装置に対して送信する送信工程を実行させることを特徴とする請求項1から7のいずれか記載の洗浄動作確認プログラム。
【請求項9】
ワークを洗浄する洗浄装置と電気的に接続される情報処理端末で用いられる洗浄動作確認プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記情報処理端末に、
前記洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件をオペレータに入力させる洗浄条件入力工程と、
前記洗浄条件入力工程によって入力された洗浄条件に基づいて、前記洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する仮実行工程と、
前記仮実行工程による実行状態を出力する出力工程と、を実行させる洗浄動作確認プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】
洗浄剤を用いてワークを洗浄する洗浄装置と、当該洗浄装置と電気的に接続される情報処理端末と、を有する洗浄システムであって、
前記情報処理端末は、
前記洗浄剤ごとに予め設定されたパラメータを記憶するパラメータ設定値記憶手段と、
オペレータによって入力された、前記洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件を記憶する洗浄条件記憶手段と、
前記パラメータ設定値記憶手段に記憶されたパラメータ及び前記洗浄条件記憶手段に記憶された洗浄条件を、前記洗浄装置に対して送信する送信手段と、を備えることを特徴とする洗浄システム。
【請求項11】
前記パラメータ設定値記憶手段は、ワークに応じた洗浄条件を記憶することを特徴とする請求項10記載の洗浄システム。
【請求項12】
前記洗浄装置は、ワークを1個又は小ロット毎に順次洗浄する1個流し洗浄機であることを特徴とする請求項10又は11記載の洗浄システム。
【請求項13】
前記洗浄装置は、前記送信手段により送られたデータを記憶するデータ記憶手段と、
前記データ記憶手段に記憶されたデータに基づき、前記洗浄装置に洗浄を実行させる実行手段と、を備えることを特徴とする請求項10から12のいずれか記載の洗浄システム。
【請求項14】
前記情報処理端末は、さらに、前記洗浄条件記憶手段に記憶された洗浄条件に基づいて、前記洗浄装置の洗浄動作に関する仮想洗浄プログラムを実行する仮実行手段と、
前記仮実行手段による実行状態を表示部に出力する出力手段と、を備え、
前記出力手段による実行状態の出力の後に、前記送信手段による送信が有効化されることを特徴とする請求項10から13のいずれか記載の洗浄システム。
【請求項15】
前記情報処理端末は、さらに、前記洗浄装置が所定の動作を行うのに必要な洗浄条件を入力する入力手段と、
前記仮実行手段による実行状態を表示する表示部と、を備えることを特徴とする請求項14記載の洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−75795(P2006−75795A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−265319(P2004−265319)
【出願日】平成16年9月13日(2004.9.13)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】