説明

洗浄機構を備えた水質観測装置

【課題】
プローブの検出面に付着した汚れを洗浄する機構を備えた水質観測装置を提供する。
【解決手段】
水質観測装置は、水中に埋没して設置する水質観測装置において、プローブの検出面10を擦過するブラシ12による洗浄機構を有する。ブラシ12は、擦過毛の先端部がプローブの検出面10に接触する回転体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出測定ユニットを水中に埋没して使用される水質観測装置であって、長期間水中に設置されていても正確な水質観測結果を得られる水質観測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、海や河川において、環境保全や養殖漁場の環境維持、または環境変化に対応する必要性が高まってきている。そのため、水中に水質観測装置を設置して、長期的に水質をモニタリングすることも多い。例えば特許文献1には、水中に浮遊させておく水質改善のための水処理装置が開示されている。この水処理装置は、水質観測装置が併設されている例が示されている。かかる水質観測装置で問題となるのが、プローブの検出面の汚れである。
【0003】
特に夏期は、生物の繁殖が盛んなため、プローブの検出面に生物が付着し、水質観測装置の検出測定値に悪影響を及ぼしてしまう。そのため、プローブの検出面の洗浄等、メンテナンスを頻繁に行わなければならない。しかし設置場所の状況や、天候の影響などにより、思うようにメンテナンスを行えない場合も多い。
【0004】
その問題を解決するために、プローブの検出面のクリーニング機構が開発されている。非特許文献1には、ワイパー方式のクリーニング機構が示されている。この方式は、ワイパー(板状のゴム)をセンサ表面に押し付け、それを揺動運動させて、センサ表面の汚れを取り除いてから計測するので、精度良い値を得られる。しかし、この方式だとセンサ表面の形状は平面あるいは曲面に限定されてしまう上、ワイパーを駆動させるのに大きな力が必要なため消費電力が大きくなり、装置自体も大型になってしまう欠点があった。また、ワイパーとセンサ表面に、硬い異物を挟み込んでしまった場合には、センサ表面を傷つける恐れがあった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−186957号公報
【非特許文献1】漁場環境研究会 「閉鎖性水域における自動観測ブイによる漁場環境の速報と予報」P.10〜11 社団法人日本水産資源保護協会出版 平成16年6月号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水質観測装置では、プローブの検出面が清浄であることが検出測定値の正確性、再現性を高めるために必要である。特に検出測定ユニットを水中に長期間埋没して使用される水質観測装置にあっては、検出面の汚れの付着は著しいものである。そこで、本発明は、これらの問題点を改善するために、プローブの検出面を洗浄する機構を備えた水質観測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された発明に係る水質観測装置は、検出測定ユニットを水中に埋没して設置する水質観測装置において、プローブの検出面を擦過するブラシによる洗浄機構を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載された発明に係る水質観測装置の該ブラシは、擦過毛の先端部がプローブの検出面に接触する回転体ブラシであって、該回転体ブラシの回転軌跡中に、ブラシ毛の欠落部分を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載された発明に係る水質観測装置は、該回転ブラシが駆動制御回路を介して回転駆動源に連結していることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載された発明に係る水質観測装置は、該回転ブラシが、気密ハウジングの回転駆動源のモーターに磁気カップリングで連結されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に載された発明に係る水質観測装置は、該プローブが、光学式センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水質観測装置は、プローブの検出面を洗浄できるから、長期間水中に埋没していてプローブの検出面が汚れても清浄にできるため、検出測定が正確になり、再現性のあるものとなる。プローブ表面にブラシを押し当てて回転させ、擦過し汚れを除去するため、検出面の形状は平面・曲面に限らず、凹凸面にも利用可能である。また異物が挟み込まれて検出面を傷つけたり、絡み込んで回転が停止することもない。
【0013】
さらに回転ブラシと、気密ハウジングのモーターは磁気カップリングで連結しているため、モーターやその配線を完全に水分から遮断でき、錆やショートによる故障を防止できる。また磁気カップリング採用したことで、モーターに一定以上の負荷が掛かることはなく、そのため消費電力を低く抑えることができ、小型化もできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこの実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は本発明を適用する実施形態である水質観測装置を示す斜視図である。この装置は、検出測定ユニット1および洗浄機構ユニット3にケーブル7で連結された制御ユニット5で構成され、制御ユニット5は水上の図示外のブイ等に設置されている。
【0016】
検出測定ユニット1には、プローブの検出面10に光電センサが配置され、その検出測定値の処理回路が組み込まれている。洗浄機構ユニット3の回転ブラシ12は磁気カップリングを介してハウジング15内の駆動モーターに連結している。
【0017】
洗浄機構ユニット3は、図2の断面図に詳細を示すとおり、ハウジング15にハウジングキャップ14がねじ込まれてOリングにより気密が保たれた内部に組み込まれている。駆動モーター13は、磁気カップリング軸16に直結している。ハウジングキャップ14の外側には、円筒状の磁石18が埋め込まれているブラシ台キャップ17が回転自在に被せられている。
【0018】
検出測定ユニット1、および洗浄機構ユニット3のハウジング15は、水中に対して開口しているスリーブ20に挿入されて各々ボルトにより締結されており、スリーブ20に挿入する深さを変えることで、プローブの検出面10と、回転ブラシ12の毛先との接触の距離を微調節できるようになっている。
【0019】
制御ユニット5は、バッテリ電源と、制御回路を含み、検出測定ユニット1に電力供給し、また洗浄機構ユニット3の駆動モーター13にプログラムにしたがって電力を供給する。検出測定値は制御ユニット5に蓄積され、定期的にインターネットのEメールでパソコンや携帯電話に配信する。
【0020】
制御ユニット5の制御回路には、検出測定ユニット1のプローブが検出測定するタイミングのプログラムを備えている。検出測の定時間になると、まず洗浄機構ユニット3を作動させプローブの検出面10をブラシ12で擦過し、検出面10に付着した異物を清浄し、洗浄機構ユニット3の作動を停止させる。そして、プローブが動作して検出測定を行う。このとき検出面10にはブラシ毛12の先端が接しているがブラシ毛が疎な部分は水に面しているので検出の支障にならない。
【0021】
図3の正面図に示すように、ブラシ台キャップ17の正面形状は円形であるが、その半円部分だけにブラシ毛12が植設され、ブラシ毛の欠落部分からプローブの検出面10(鎖線示参照)が水中に面している構成でもよい。この場合、検出面10は、ブラシ12のブラシ毛の欠落部分を通じて検出測定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用する水質観測装置の一実施形態を示す斜視図である。
【0023】
【図2】本発明を適用する水質観測装置に組み込まれる洗浄機構ユニットの一実施形態を示す断面図である。
【0024】
【図3】洗浄機構ユニットのブラシ形状の一実施例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1は検出測定ユニット、3は洗浄機構ユニット、5は制御ユニット、7はケーブル、10はプローブの検出面、12はブラシ、13は駆動モーター、14はハウジングキャップ、15はハウジング、16は磁気カップリング軸、17はブラシ台キャップ、18は磁石、20はスリーブである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出測定ユニットを水中に埋没して設置する水質観測装置において、プローブの検出面を擦過するブラシによる洗浄機構を有することを特徴とする水質観測装置。
【請求項2】
該ブラシは、擦過毛の先端部がプローブの検出面に接触する回転体ブラシであって、該回転体ブラシの回転軌跡中に、擦過毛の欠落部分を有することを特徴とする請求項1に記載の水質観測装置。
【請求項3】
該回転ブラシが駆動制御回路を介して回転駆動源に連結していることを特徴とする請求項2に記載の水質観測装置。
【請求項4】
該回転ブラシが、気密ハウジングの回転駆動源のモーターに磁気カップリングで連結されていることを特徴とする請求項2に記載の水質観測装置。
【請求項5】
該プローブが、光学式センサであることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の水質観測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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