説明

洗浄用溶剤組成物

【課題】硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂が付着した被洗浄物に対して、洗浄効果の優れた溶剤組成物を提供することである。
【解決手段】(a)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン100重量部に対して、(b)N−メチル−2−ピロリドンを40〜450重量部含むことを特徴とする、硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂が付着した被洗浄物を洗浄するための溶剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用溶剤組成物に関し、更に詳しくは、硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂が付着した被洗浄物を洗浄するための溶剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子部品、自動車部品、及び硬化性樹脂の加工物の製造において、各種部品には、硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂が付着するため、これらが付着した各種部品の洗浄工程が必要である。また、硬化性樹脂は、硬化性樹脂及び硬化剤などの添加剤の配合中に又は配合後の硬化性樹脂の貯蔵中に、あるいは硬化性樹脂の硬化後に、硬化性樹脂及びその硬化物が装置類に付着する。特に、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂は、一旦硬化すると非常に硬い皮膜等を形成するため、金属部品や電子部品に一体成型されると、これら金属部品や電子部品からウレタン樹脂やエポキシ樹脂を分離することはきわめて困難であった。
【0003】
特許文献1には、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(365mfc、化学式C)と、プロピレングリコール系溶剤とを含有し、引火性がないことを特徴とする洗浄用溶剤組成物が、洗浄能力、特に脱脂洗浄能力の大幅なアップが図れ、各種洗浄剤としては、十分な性能を発揮させることができることが記載されている。
特許文献2には、炭素数6〜18の芳香族化合物を95〜50重量%と、N−メチル−2−ピロリドンを5〜50重量%含むことを特徴とし、硬化性樹脂又はその原料体の付着した硬質物質を洗浄する洗浄液組成物が記載されている。
しかし、特許文献1及び特許文献2のいずれにも、ペンタフルオロブタン及びN−メチル−2−ピロリドンを含む洗浄用溶剤組成物は記載されていない。また、特許文献2には、油脂に対する洗浄剤は記載されておらず、特許文献2に記載された洗浄液組成物は、芳香族化合物を含むため環境への弊害が懸念されるなど取り扱いが難しいなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−129090号公報
【特許文献2】特開2000−303100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、硬化性樹脂及びその硬化物が付着した被洗浄物、並びに油脂が付着した被洗浄物のいずれにも対して優れた洗浄効果を有する溶剤組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(365mfc)及びN−メチル−2−ピロリドンを主成分とする溶剤組成物が、硬化性樹脂及びその硬化物、並びに油脂が付着した被洗浄物に対して優れた洗浄効果を有することを見出し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(a)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン100重量部に対して、(b)N−メチル−2−ピロリドンを40〜450重量部含むことを特徴とする、硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂が付着した被洗浄物を洗浄するための溶剤組成物に関する。
本発明は、さらに、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して、(c)炭化水素系溶剤を0.1重量部〜50重量部含む、前記に記載の溶剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の溶剤組成物は、硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂が付着した被洗浄物に対して良好な洗浄効果を有し、特にウレタン樹脂、エポキシ樹脂又はウレタン樹脂若しくはエポキシ樹脂の硬化物、及び鉱物油が付着した被洗浄物の洗浄に適している。また、本発明の溶剤組成物は、毒性も少なく、安全性の面、及び更に揮発性が低く、消耗も少ないという経済的な面からも非常に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の溶剤組成物は、(a)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン100重量部に対して、(b)N−メチル−2−ピロリドンを40〜450重量部含む。本発明において、N−メチル−2−ピロリドンの含有量が40重量部未満であると、硬化性樹脂及びその硬化物を被洗浄物から効率よく洗浄除去することが難しく、450重量部を超えると、鉱物油などの油脂に対する洗浄効果が劣るばかりではなく、N−メチル−2−ピロリドンの皮膚刺激性等、人体への有害性が増すので好ましくない。
【0010】
本発明の溶剤組成物は、硬化性樹脂又はその硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するために、(a)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン100重量部に対して、(b)N−メチル−2−ピロリドンを100〜450重量部含むのが好ましく、150〜450重量部含むのがより好ましい。また、本発明の溶剤組成物は、油脂が付着した被洗浄物を洗浄するために、(a)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン100重量部に対して、(b)N−メチル−2−ピロリドンを40〜100重量部含むのが好ましく、40〜70重量部含むのがより好ましい。このような範囲であれば、粘度がN−メチル−2−ピロリドン単体よりも低く、しいては、被洗浄物に対する浸透力が高くなり、洗浄時間が短くなる点で良好である。また、上記したそれぞれの好ましい含有量において、N−メチル−2−ピロリドンの含有量が低い場合は乾燥性が上がるので好ましい。本発明において(a)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン及び(b)N−メチル−2−ピロリドンは、全溶剤組成物に対して10重量%〜100重量%の含有量で含まれる。
【0011】
本発明の溶剤組成物は、更なる洗浄力の向上のために(c)炭化水素系溶剤を添加することができる。炭化水素系溶剤として、パラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素、並びにパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素及び芳香族系炭化水素からなる群より選択される2以上の炭化水素の混合物が挙げられる。
パラフィン系炭化水素は、直鎖状の脂肪族炭化水素であり、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−テトラデカン、n−ヘキサデカン、n−エイコサン、n−テトラコサン、及びn−ヘキサコサン等が挙げられる。
イソパラフィン系炭化水素は、分岐状の脂肪族炭化水素であり、例えば、ヘキサメチルエタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、2,2,4−トリメチルヘプタン、2,3−ジメチルヘプタン、2−メチルノナン、2−メチル−3−エチルヘプタン、2−メチルデカン、2,3,4−トリメチルデカン、2,3−ジメチルウンデカン、2−メチルドデカン、2−メチルプロピル−3−ドデカン、2−エチルウンデカン、及び2−メチルトリデカン等が挙げられる。
ナフテン系炭化水素は、炭化水素基を置換基として有していてもよい環状構造有する脂肪族飽和炭化水素であり、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、2−メチルプロピルシクロヘキサン、2−シクロヘキシルオクタン、9−シクロヘキシルヘプタデカン、1,2−ジシクロヘキシルエタン、及び1,1−ジシクロヘキシルテトラデカン等が挙げられる。
芳香族系炭化水素としては、例えば、1,2−ジフェニルエタン、1,1−ジフェニルテトラデカン、9−n−ドデシルフェナントレン、及び9−n−ドデシルアントラセン等が挙げられる。
【0012】
本発明において、(c)炭化水素系溶剤の含有量は、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜50重量部であり、より好ましくは0.1〜30重量部である。
【0013】
本発明の溶剤組成物は、さらに、安定剤、アルコール、及びグリコールエーテルモノアルキルエーテルから選択される1以上の(d)添加剤を含むことができる。
【0014】
安定剤として、ニトロアルカン系安定剤、エポキシド系安定剤、及びエーテル系安定剤が挙げられる。
ニトロアルカン系安定剤としては、例えばニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン及び2−ニトロプロパンが挙げられ、毒性が少ないことからニトロメタン及びニトロエタンが好ましい。エポキシド系安定剤としては、1,2−ブチレンオキシド、プロピレンオキシド及びグリシドール等が挙げられる。エーテル系安定剤としては、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
【0015】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノール等が挙げられる。
【0016】
グリコールエーテルモノアルキルエーテルとして、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0017】
本発明において、(d)添加剤の含有量の合計量は、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜10重量部であり、より好ましくは1〜5重量部である。
【0018】
本発明の溶剤組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内において、さらに防錆剤、界面活性剤、紫外線吸収剤及び酸化防止剤を含むことができる。これらそれぞれの成分の含有量は、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して、0.1重量部〜5重量部含むことが好ましく、0.1重量部〜3重量部含むことがより好ましい。
【0019】
防錆剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン及びN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミンが挙げられ、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミンが特に好ましい。
【0020】
本発明の溶剤組成物は、硬化性樹脂、特に硬化前の硬化性樹脂の表面に付着した油類、ポリマー及びスケール等への浸透性や溶解速度の向上のために、界面活性剤を含有することができる。
【0021】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、例えば高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0022】
本発明の溶剤組成物は、洗浄液の長期保存等における安定性の向上のために、紫外線吸収剤及び酸化防止剤を含有することができる。
紫外線吸収剤は、本発明の溶剤組成物に溶解するものであればいずれも使用することができ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、及びヒンダードアミン系紫外線吸収剤が挙げられる。
酸化防止剤は、本発明の溶剤組成物に溶解するものであればいずれも使用することができ、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系等酸化防止剤が挙げられる。
【0023】
本発明の溶剤組成物は、原料成分である1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、N−メチル−2−ピロリドン、並びに場合により更に含まれる炭化水素系溶剤及び添加剤等を混合することにより製造することができる。
【0024】
本発明の溶剤組成物は、硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂が付着した被洗浄物を洗浄するための組成物として用いることができる。具体的には、本発明の溶剤組成物の用途として、例えば、硬化性樹脂及びその硬化物用の洗浄剤、例えば硬化性樹脂の溶解剤及び硬化性樹脂の硬化物の剥離剤;油脂用の洗浄剤、例えばレジスト剥離剤、フラックス洗浄剤などの脱脂洗浄剤、及び加工油の洗浄剤が挙げられる。
【0025】
本発明において、硬化性樹脂には、硬化性樹脂のほかに、硬化性樹脂に配合される添加剤を含む硬化性樹脂が含まれる。本発明において、硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチロール樹脂、及びセルロース系樹脂が挙げられ、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂が好ましい。
【0026】
また、硬化性樹脂に配合される添加剤としては、硬化性樹脂に通常用いられている添加剤であれば、特に限定されるものではなく、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、乳化剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤が挙げられる。
【0027】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、多塩基酸のポリグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びヒダントイン環を有するエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、充填剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、着色剤、帯電性付与剤、褶動性改良剤、耐衝撃性改良剤、及び反応希釈剤等の添加剤が挙げられる。
【0028】
エポキシ樹脂硬化剤としては、エポキシ樹脂の硬化剤として通常使用されているものであればいずれであってもよく、例えばフェノールノボラック、ビフェノール型ノボラック、及びビスフェノールA型ノボラック等のノボラック、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、及び無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタフェニレンジアミン、及びヘキサメチレンテトラミン等のアミン類、並びにポリアミドアミン等のアミド樹脂等が挙げられる。硬化促進剤としては、例えば第三級アミン類又は有機リン化合物が挙げられる。
【0029】
ウレタン樹脂としては、トリレンジイソシアナート(TDI)、及びジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)等のジイソシアナート、並びにポリプロピレングリコール等のポリオール類との反応生成物が挙げられる。本発明において、ウレタン樹脂に配合される添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、乳化剤、発泡剤、安定剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、褶動性改良剤、及び耐衝撃性改良剤が挙げられる。
【0030】
本発明において、被洗浄物に付着した硬化性樹脂の硬化物には、硬化性樹脂の硬化反応が促進することにより硬化する硬化物のほかに、反応希釈剤等の硬化性樹脂に配合された添加剤が揮発し、粘度が上昇するによって固化した固化物も含まれる。
【0031】
本発明において、油脂としては、鉱物油、フッ素オイル、シリコーンオイル及びロジンなどが挙げられる。これらは、石油ワックス、ロジン系フラックス、グリース、潤滑油、機械油、切削油、メンテナンスオイルなどとして用いられる。
【0032】
鉱物油とは、天然の石油由来の油分で、精製蒸留されて得られる液状及びグリース状の化学物質である。鉱物油の成分として、例えばパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素、並びにパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素及び芳香族系炭化水素からなる群より選択される2以上の炭化水素の混合物が挙げられる。これらの具体例は、上記の炭化水素成分の具体例として挙げられた炭化水素が挙げられる。このような鉱物油は、市販品として、出光興産株式会社製のアリソールエース、アイソールソフト、及びアイソール;ジャパンエナジー社製のニッコーホワイトN−10;エクソン化学社製エクソンD−40、及びエクソンナフサNo−5等が挙げられる。
本発明において、鉱物油が付着した被洗浄物を洗浄するための溶剤組成物として、(c)成分を含まない溶剤組成物が好ましい。本発明の溶剤組成物は、鉱物油のなかで、パラフィン系炭化水素油及びナフテン系炭化水素系油の混合物に対して特に優れた洗浄効果を有する。
【0033】
本発明において、フッ素オイルとは、ポリアルキルエーテル化合物の水素原子の一部又は全部をフッ素で置換した物質であり、塩素及び臭素等のハロゲン、リン、硫黄、及び窒素などの更なる原子を含んでいてもよい。フッ素オイルは、常温で液状又はグリース状である。本発明において、フッ素オイルは、例えば一般式(1):
CF3CF2CF2O−(CF(CF3)CF2O)−CF2CF3 (1)
(式中、nは、1以上の整数である)、
、一般式(2):
HOCH2CF2O−(CF2CF2O)p−(CF2O)q−CF2CH2OH (2)
(式中、p及びqは、互いに独立して、1以上の整数である)
又は、一般式(3):
F−(CF2CF2CF2O)−CF2CF2O−CH2OH (3)
(式中、mは、1以上の整数である)
で示される構造を有する。
【0034】
上記のフッ素オイルは、市販品として、例えばソルベイソレクシス社製のフォンブリン Y−LVAC、Y−HVAC、Y04、及びYR;NOKクリューバー社製のバリエルタ(BARRIERTA)J100フルード、バリエルタJ25フルード、バリエルタJ400フルード、バリエルタJ25V、バリエルタSJ07、バリエルタSJ15、及びバリエルタSJ30;デュポン株式会社製のクライトックス1506、クライトックス1514、及びクライトックス1525;ダイキン工業株式会社製のデムナムS−20等が挙げられる。
本発明の溶剤組成物は、フッ素オイルのなかで、一般式(1)及び(2)で示されるパーフルオロアルキルエーテルオイルに対して特に優れた洗浄効果を有する。
【0035】
本発明において、シリコーンオイルとは、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマーであるシリコーンオイルであり、カルボキシル基、アミノ基、又はエポキシ基などの他の有機基を側鎖又は末端に導入されていてもよい。このようなシリコーンオイルの具体例としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリオキシエチレン−メチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0036】
本発明の溶剤組成物を用いて洗浄される被洗浄物として、電気・電子部品、自動車部品、硬化性樹脂を取り扱うために用いられる装置、及び硬化性樹脂の加工物が挙げられる。これらの被洗浄物は、日常的なメンテナンス用、1日に1回〜2回洗浄される被洗浄物であるか、オーバーホール用、例えば6か月〜1年に1回洗浄される被洗浄物であってもよい。
【0037】
電気・電子部品としては、プリント配線基板、及びセラミック配線基板などの配線基板、及びガラス基板が挙げられる。自動車部品としては、自動車用のシャフトやフレーム部品、外装部品等に用いられる金属製部品が挙げられる。
【0038】
硬化性樹脂を取り扱うために用いられる装置としては、例えば、容器、混合機、成形機、貯蔵タンク、加工機、混合槽、注型機、注入機、コーティング装置及び封入機が挙げられる。硬化性樹脂を取り扱うために用いられる装置には、樹脂成分の充填及び混合、硬化成型などの樹脂の加工工程、及び装置の洗浄を繰り返して使用されるものが含まれる。また、注型器及び容器等は、一般に、原料成分の注入、硬化成型及び洗浄を繰り返して使用される。
【0039】
硬化性樹脂の加工物としては、例えばウレタン樹脂の加工物(例えば自動車部品及び電子部品など)及びエポキシ樹脂の加工物(例えば電子部品、配管部品及び自動車部品など)が挙げられる。硬化性樹脂の加工物には、加工物の成型の際に用いられた硬化性樹脂以外の素材を、硬化性樹脂の硬化物から分離して再利用する目的で用いられる物が含まれる。
【0040】
このような素材として、例えば、ステンレス等の各種金属部品がある。すなわち、自動車用のシャフトやフレーム部品、外装部品等に用いられる金属製部品をはじめ、プリンタ等の電子機器に用いられるローラーシャフトやフレーム部品、さらにパイプ等の配管部品などがある。これらの金属製部品は、板状部材に限らず、断面円形状や矩形状のパイプ状部材や長尺部材であったり、その他、複雑な形状を有する部材であったりする。
【0041】
本発明において、被洗浄物を洗浄する方法は、本発明の溶剤組成物を、前記被洗浄物と接触させる工程を含む。本発明において、本発明の溶剤組成物を被洗浄物に接触させる工程において、被洗浄物に付着した硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂は、被洗浄物から溶解除去されるか又は剥離除去される。
【0042】
本発明の溶剤組成物と、前記硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂が付着した被洗浄物とを接触させるための方法としては、特に制限はなく、溶剤組成物への前記被洗浄物の浸漬、溶剤組成物を含浸したスポンジによる前記被洗浄物の拭き取り、及び前記被洗浄物に対する溶剤組成物のスプレー等が好ましく、浸漬による方法がより好ましい。
【0043】
浸漬による方法において、洗浄効果を高めるために、浸漬と同時に、攪拌、揺動、超音波振動、又はエアバブリング等による手段を組み合わせることが好ましく、超音波振動による手段を組み合わせることがより好ましい。超音波振動は、発振周波数が20〜100kHzであり、発振出力が10〜500Wであるのが好ましい。エアバブリングでは、微細な気泡を、好ましくは、ガス及び溶剤組成物の体積比が1:1〜5:1となるように通気することで、溶剤組成物に不溶性の汚れを気泡と共に上昇させることができ、これにより被洗浄物に付着した硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂のみならず、不溶性の汚れをも分離することができる。
【0044】
本発明において、溶剤組成物及び被洗浄物の接触時間に相当する洗浄時間は、日常的なメンテナンス又はオーバーホールなどの洗浄の目的に応じて任意に設定することができ、被洗浄物に付着した硬化性樹脂、被洗浄物に付着した硬化性樹脂の硬化物、又は被洗浄物に付着した油脂を洗浄除去できる時間であれば特に制限されない。例えば、超音波振動を組み合わせた浸漬による方法における洗浄時間は、硬化前の硬化性樹脂が付着した被洗浄物を洗浄するために、好ましくは5秒間〜5分間、特に好ましくは10秒間〜1分間であり、硬化性樹脂組成物の硬化物が付着した被洗浄物を洗浄するために、好ましくは10分間〜10時間、特に好ましくは30分間〜2時間である。また、油脂が付着した被洗浄物を洗浄するための洗浄時間は、好ましくは5秒〜5分間、特に好ましくは10秒〜1分である。
【0045】
上記洗浄時間未満である場合は洗浄が不十分で、付着した硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂を被洗浄物から十分に除去できない場合があり、一方、上記洗浄時間を超えた場合は、洗浄効果が格別向上しない。
【0046】
本発明において洗浄温度は、好ましくは20〜120℃である。このような温度において、より高温で処理することにより洗浄効果を上昇させることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0048】
実施例1〜6及び比較例1〜5の溶剤組成物を、表1で示される組成で各成分を混合することにより調製した。
【0049】
【表1】

【0050】
試験例1 硬化後エポキシ樹脂
(1−1)硬化後エポキシ樹脂が付着したステンレス板の作製
エポキシ樹脂として、コニシ社のボンドE250(A剤:エポキシ、B剤:ポリアミドアミン)を用いた。このエポキシ樹脂は、A剤及びB剤を混合後、室温20℃にて24時間後で実用強度に達する。4cm×4cm、厚さ0.4mmのステンレス板に、A剤及びB剤を混合したエポキシ樹脂を、約1mmの厚さで塗布し、24時間放置して完全硬化させて、樹脂が付着したステンレス板を得た。
【0051】
(1−2)被洗浄物の洗浄
被洗浄物の洗浄のため、200mlのビーカーに、実施例1〜6及び比較例1〜5の各溶剤組成物150gを入れた。樹脂が付着したステンレス板を、実施例1〜6及び比較例1〜5の溶剤組成物に浸漬させて、超音波洗浄機(発振周波数38kHz、出力360W)にて1時間洗浄を行った。洗浄後、ステンレス板を取り出してエポキシ樹脂が剥離除去できているかどうかを目視により判定した。
【0052】
試験例2 硬化後ウレタン樹脂
(2−1)硬化後ウレタン樹脂が付着したステンレス板の作製
ウレタン樹脂として三洋化成工業社製のF−3500A(主剤)及びF−3500B(硬化剤)を用いた。このウレタン樹脂は、主剤及び硬化剤を混合後、室温120秒で表面の硬化が始まる。主剤及び硬化剤を混合したウレタン樹脂を、4cm×4cm、厚さ0.4mmのステンレス板に約1mmの厚さで塗布し、24時間放置して完全硬化させて、樹脂が付着したステンレス板を得た。
【0053】
(2−2)被洗浄物の洗浄
被洗浄物の洗浄のため、200ミリリットルのビーカーに、実施例1〜6及び比較例1〜5の各溶剤組成物150gを入れた。樹脂が付着したステンレス板を、実施例1〜6及び比較例1〜5の溶剤組成物に浸漬させて、超音波洗浄機(発振周波数38kHz、出力360W)にて1時間洗浄を行った。洗浄後、ステンレス板を取り出してウレタン樹脂が剥離除去できているかどうかを目視により判定した。
【0054】
試験例1及び2の結果を表2に示す。
【0055】
【表2】

【0056】
試験例3 鉱物油
(3−1)鉱物油の溶解
鉱物油として、出光興産社製アイソールエースを用いた。アイソールエースは、ナフテン及びパラフィンを主成分とするものである。試験管に、実施例1〜6及び比較例1〜5の各溶剤組成物5gを入れた。そこに鉱物油1gを添加し、十分に撹拌して1時間静置した。静置後、混合液の濁り及び液分離の発生の有無を目視により判定した。
試験例3の結果を表3に示す。
【表3】


試験例3において、溶剤組成物及び鉱物油の混合の後で、液の濁り及び液の分離が見られないことは、鉱物油が溶解されたことを意味する。実施例1〜6の溶剤組成物はいずれも、鉱物油に対する溶解洗浄力を示していた。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の溶剤組成物は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン及びN−メチル−2−ピロリドンを主成分として含有するため、塩素系溶剤と比較して毒性が少ない。また、本発明の洗浄用溶剤組成物は、硬化性樹脂、硬化性樹脂の硬化物、及び油脂が付着した被洗浄物に対して良好な洗浄効果を有する。よって、本発明の溶剤組成物は、硬化性樹脂及びその硬化物、並びに油脂が付着した被洗浄物に対する洗浄剤として工業的に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン100重量部に対して、(b)N−メチル−2−ピロリドンを40〜450重量部含むことを特徴とする、硬化性樹脂若しくはその硬化物、又は油脂が付着した被洗浄物を洗浄するための溶剤組成物。
【請求項2】
さらに、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して、(c)炭化水素系溶剤を0.1重量部〜50重量部含む、請求項1記載の溶剤組成物。

【公開番号】特開2012−121947(P2012−121947A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271708(P2010−271708)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(597115750)株式会社カネコ化学 (12)
【Fターム(参考)】