洗浄装置、液体吐出装置及びインクジェットヘッドの洗浄方法
【課題】ヘッドモジュール間の隙間に入り込んだ洗浄液が効率よく除去され、除去された洗浄液の液体吐出面への残留が防止される洗浄装置、液体吐出装置及びインクジェットヘッドの洗浄方法を提供する。
【解決手段】複数のヘッドモジュール(12)を長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッド(14)の液体吐出面(14A)に洗浄液を付与する洗浄液付与部(20)と、隣接するヘッドモジュール間の長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部(26A)を具備し、洗浄液付与部によって液体吐出面に洗浄液が付与された後に、先端部を隙間の中に挿入させて隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、掻取部材によって隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、液体吐出面を払拭する払拭部材と、を備えている。
【解決手段】複数のヘッドモジュール(12)を長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッド(14)の液体吐出面(14A)に洗浄液を付与する洗浄液付与部(20)と、隣接するヘッドモジュール間の長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部(26A)を具備し、洗浄液付与部によって液体吐出面に洗浄液が付与された後に、先端部を隙間の中に挿入させて隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、掻取部材によって隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、液体吐出面を払拭する払拭部材と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄装置、液体吐出装置及びインクジェットヘッドの洗浄方法に係り、特に複数のヘッドユニットをつなぎ合わせて構成されたインクジェットヘッドの洗浄技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体にカラー画像を形成するインクジェット記録装置には、記録媒体の全幅に対応する長さにわたってノズルが設けられるフルライン型のインクジェットヘッドを備える構成がある。フルライン型インクジェットヘッドを備える構成では、記録媒体とインクジェットヘッドとを一回だけ相対的に移動させることで、記録媒体の画像形成領域の全域にわたってカラー画像が形成される、シングルパス方式による高速の画像形成が可能である。
【0003】
フルライン型インクジェットヘッドには、複数のヘッドモジュール(ヘッドユニット)をつなぎ合わせた形態がある。このようなインクジェットヘッドは、製造上の精度の向上や製造歩留まりの向上が見込まれるとともに、製造時の検査において不合格となった場合や、故障の発生や寿命により交換を要する場合には、ヘッドモジュールごとに交換することができるというメリットもある。
【0004】
一方、複数のヘッドヘッドモジュールをつなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドは、ヘッドモジュールをつなぎ合わせるつなぎ部において、ヘッドモジュールごとの製造上の誤差や組み立て時の位置決め誤差に起因する隙間が生じてしまう。
【0005】
インクジェットヘッドのノズルが形成されるノズル面(インク吐出面)は、インクジェットヘッドの稼動によってインク(インクミスト)や紙粉などの汚れが付着してしまう。特に、ノズルの近傍に汚れが付着すると吐出異常の原因となるので、ノズル面の洗浄処理が適宜実行され、ノズル面に付着した汚れが除去される。
【0006】
ノズル面の洗浄処理には、ノズル面に洗浄液を付与し、洗浄液の作用によりノズル面から汚れを除去し、ブレード等の払拭部材によりノズル面に付着している洗浄液を拭き取る形態がある。かかる形態では、毛細管力によりヘッドモジュール間の隙間に洗浄液が入り込んでしまうと、ノズル面を払拭しても隙間内に入り込んだ洗浄液を除去することが困難になる。
【0007】
特許文献1は、複数のヘッドユニットをつなぎ合わせて構成されたラインヘッド液体吐出装置において、ノズル形成面を払拭する払拭部材を備えるとともに、液体を吸収除去する吸収部材(多孔質部材)を備え、払拭部材によりノズル面を払拭した後に吸収部材をヘッドユニット間の隙間に接触させて、該隙間内の洗浄液を吸収除去する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−5857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、払拭部材によりノズル形成面を払拭した後に、吸収部材によってヘッドユニット間の隙間に入り込んだ洗浄液を除去する構成であり、洗浄液の除去の際にノズル形成面に吸収部材を接触させてしまう。そうすると、ヘッドユニット間の隙間に入り込んだ洗浄液は除去されるものの、ノズル形成面に設けられたノズルの開口から液体を引き出してしまう。
【0010】
ノズルから液体が引き出された状態で長時間経過すると、ノズル近傍でノズルから引き出された液体が固化してしまい、吐出異常の発生が懸念される。また、固化した液体をブレードにより払拭除去しようとすると、固化した液体をノズルの内部に押し込んでしまい、ノズル詰まりが懸念される。さらには、固化したインクによりノズル形成面が研磨されてしまい、ノズル形成面の撥液性能が低下し、ヘッドの寿命が短くなることが懸念される。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ヘッドモジュール間の隙間に入り込んだ洗浄液が効率よく除去され、除去された洗浄液の液体吐出面への残留が防止される洗浄装置、液体吐出装置及びインクジェットヘッドの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第1態様に係る洗浄装置は、複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせた構造を有するインクジェットヘッドの液体吐出面を洗浄する際に、隣接するヘッドモジュール間の隙間に掻取部材の先端部を入り込ませて、該隙間に形成された洗浄液のメニスカスを破壊することで、該隙間から洗浄液が掻き出され、さらに、隙間から掻きだされた洗浄液が払拭部材により拭き取られるので、該隙間の中に洗浄液が残留することがなく、該隙間からの洗浄液の液だれの発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置の概略構成を示す全体構成図
【図2】図1に示すインクジェットヘッドをノズル面から見た平面図
【図3】図1に示す洗浄装置によるノズル面の洗浄処理を模式的に図示した説明図
【図4】図1に示すインクジェットヘッドにおけるヘッドモジュール間の隙間から洗浄液を掻き取る掻取処理を模式的に図示した説明図
【図5】図1に示す洗浄装置の払拭部の概略構成を示す斜視図
【図6】インクジェットヘッドの短手方向における、ノズルプレート30の全長と掻取部材の全長と払拭部材の全長との関係を模式的に図示した説明図
【図7】図1に示す洗浄装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図8】図1に示す洗浄装置によるインクジェットヘッドのノズル面の洗浄処理の流れを示すフローチャート
【図9】図5に示す掻取部材の他の態様を示す斜視図
【図10】図5に示す掻取部材のさらに他の態様を示す斜視図
【図11】図5に示す掻取部材のさらに他の態様を示す斜視図
【図12】図1に示す洗浄装置を備えたインクジェット記録装置の全体構成図
【図13】図12に示すインクジェット記録装置における印字部とメンテナンス処理部との配置関係を示す説明図
【図14】図12に示すインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図15】本発明の第2実施形態に係る洗浄装置における払拭部の概略構成を示す説明図
【図16】本発明の第3実施形態に係る洗浄装置における払拭部の概略構成を示す説明図
【図17】図16に示す払拭部の動作を説明する説明図
【図18】図2に示すインクジェットヘッドと異なる構造を有するインクジェットヘッドをノズル面から見た平面図
【図19】図1に示す洗浄装置が適用される他の構成を有するインクジェット記録装置の全体構成図
【図20】図19に示すインクジェット記録装置に具備される洗浄装置における洗浄液付与処理を模式的に図示した説明図
【図21】図19に示すインクジェット記録装置に具備される洗浄装置におけるノズル面の拭取処理(掻取処理)を模式的に図示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための形態について詳説する。
【0016】
〔洗浄装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る洗浄装置10の概略構成を示す全体構成図である。同図に示す洗浄装置10は、複数のヘッドモジュール12が長手方向に沿って一列に並べられた構造を有するインクジェットヘッド14のノズル面14Aに洗浄液を付与する洗浄液付与部20と、ノズル面14Aの洗浄液を拭き取る拭取部22と、洗浄液付与部20及び拭取部22を支持するガイド24と、を備えている。
【0017】
本例に示す洗浄装置10は固定配置されており、インクジェットヘッド14の長手方向についてインクジェットヘッド14を移動させ、インクジェットヘッド14のノズル面14Aが洗浄装置10の処理領域を通過する際に洗浄処理が施される。
【0018】
洗浄液付与部20は、洗浄液の膜(図3に符号34を付して図示)が形成される洗浄液膜保持面21を有し、洗浄液膜保持面21には洗浄液膜となる洗浄液が供給される洗浄液供給口(不図示)が設けられている。
【0019】
例えば、洗浄液供給口から5ミリリットル毎秒で洗浄液を供給し続けると、洗浄液膜保持面21上に2ミリメートルの洗浄液膜が形成される。ノズル面14Aと洗浄液膜保持面21との間のクリアランスが1ミリメートル以下となるように、ノズル面14Aと洗浄液膜保持面21とを近接させると、ノズル面14Aと洗浄液膜保持面21との間に洗浄液を濡れ広がらせつつ、ノズル面14Aに洗浄液を付与することができる。
【0020】
洗浄液付与部20の洗浄液膜保持面21の面積は、1つのヘッドモジュール12のノズル面14Aの面積未満でもよいし、1つのヘッドモジュール12のノズル面14Aの面積に対応していてもよいし、複数のヘッドモジュール12のノズル面14Aの面積に対応していてもよい。
【0021】
洗浄液は、インクに由来する固着物を溶解させる機能を有している。洗浄液の一例として、水、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGmBE)を主成分とする液体が挙げられる。
【0022】
拭取部22は、インクジェットヘッド14のヘッドモジュール12間の隙間16に入り込んだ洗浄液を掻き取る掻取部材26と、ノズル面14Aに接触させてノズル面14Aを払拭する払拭部材(ブレード)28と、を具備している。
【0023】
拭取部22は、払拭部材28よりも先に掻取部材26がノズル面14Aに接触するように、掻取部材26及び払拭部材28が配置されており、掻取部材26により掻き取られた洗浄液は払拭部材28により払拭され、ノズル面14Aに洗浄液が残らないように構成されている。
【0024】
掻取部材26及び払拭部材28は、ノズル面14Aに当接させたときに弾性変形する材料が適用される。掻取部材26及び払拭部材28に適用可能な材料として、シリコン、水素ニトリルゴム(HNBR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンなどが挙げられ、インク及び洗浄液との相性(物性)によって決められる。
【0025】
掻取部材26に適用される材料と払拭部材28に適用される材料を同一の材料とすることで、インクや洗浄液による化学変化の影響を最小限に抑えることができる。また、ノズル面14Aに接触させても、悪影響を及ぼすことがない。
【0026】
図2は、図1に示すインクジェットヘッド14をノズル面14Aから見た平面図である。先に説明したように、インクジェットヘッド14は複数のヘッドモジュール12を長手方向に沿ってつなぎ合わせた構造を有している。各ヘッドモジュール12は、ノズル開口(不図示)が形成されるノズルプレート30を有し、各ヘッドモジュール12のインクジェットヘッド14の短手方向の両側には、カバー32A,32Bが設けられている。
【0027】
なお、図2に示すノズルプレート30に設けられるノズル開口の配置は、インクジェットヘッド14の長手方向に沿って一列に配置される態様、二列の千鳥配置、マトリクス配置が適用可能である。
【0028】
図2に示すように、隣接するヘッドモジュール12の間には、それぞれのノズル開口の位置を調整するための隙間16が設けられている。隙間16のインクジェットヘッド14の長手方向の長さは、300マイクロメートル±25マイクロメール(275マイクロメートルから325マイクロメートルの範囲)に調整される。なお、隙間16の調整範囲(精度)はノズルの配置密度に応じて決められる。
【0029】
〔ノズル面洗浄処理の説明〕
図3(a),(b)は、図1に示す洗浄装置10による、ノズル面14Aの洗浄処理を模式的に図示した説明図である。図3(a),(b)おいて、インクジェットヘッド14の移動方向は矢印線により図示された方向(図中左から右方向)とする。
【0030】
図3(a)は、同図中右から二番目のヘッドモジュール12‐2のノズル面14Aに洗浄液膜34を接触させ、右端のヘッドモジュール12‐1のノズル面14Aに掻取部材26及び払拭部材28を当接させている状態が図示されている。
【0031】
同図に示す状態では、右端のヘッドモジュール12‐1と右から二番目のヘッドモジュール12‐2との間の隙間(右端の隙間)16‐1に、洗浄液付与部20から付与された洗浄液35が入り込んでいる。従来技術の課題において説明したように、ヘッドモジュール12間の隙間16が洗浄液付与部20の処理領域を通過する際に、毛細管力の作用によって洗浄液が隙間16に入り込む。
【0032】
図3(b)は、隙間16‐1の中に掻取部材26の先端部(図3(b)中不図示、図4(a)から(c)に符号26Aを付して図示)を挿入させて、隙間16‐1から洗浄液が除去される状態が図示されている。また、掻取部材26に後続する払拭部材28により、右端のヘッドモジュール12‐1のノズル面14Aが払拭され、右端のヘッドモジュール12‐1のノズル面14Aから洗浄液が除去される。
【0033】
掻取部材26は払拭部材28よりも長くノズル面14Aへの当接量が大きいので、掻取部材26の先端部26Aが隙間16に挿入された状態でも、払拭部材28が弾性変形してノズル面14Aに当接する。すなわち、隙間16からの洗浄液の掻き取りとノズル面14Aの払拭が同時に行われる。
【0034】
右から二番目のヘッドモジュール12‐2と右から三番目のヘッドモジュール12‐3との間の隙間(右から二番目の隙間16‐2)は、洗浄液付与部20の処理領域に位置しており、右から二番目の隙間16‐2には洗浄液35が入り込んでしまう。該隙間16‐2に入り込んだ洗浄液は、該隙間16‐2が掻取部材26の処理位置に移動されると掻取部材26により掻き取られる。
【0035】
図4(a)から(c)は、図1に示すインクジェットヘッドにおける隣接するヘッドモジュール12間の隙間16から洗浄液を掻き取る掻取処理を模式的に図示した説明図である。
【0036】
図4(a)は、掻取部材26及び払拭部材28がインクジェットヘッド14の移動方向(矢印線により図示した左から右への方向)下流側のヘッドモジュール12のノズル面14Aに接触し、摺動(払拭)している状態である。図4(a)に示すように、掻取部材26は先端部26Aが弾性変形してノズル面14Aに対して摺動し、払拭部材28も先端部が弾性変形してノズル面14Aに対して摺動している。
【0037】
図4(a)に示す状態では、ノズル面14Aに対して掻取部材26の先端から約3ミリメートルを当接(接触)させている。また、ノズル面14Aに対して払拭部材28の先端から約1ミリメートルを当接させている。
【0038】
図4(b)に示すように、インクジェットヘッド14がさらに移動すると、移動方向上流側(同図中右側)のヘッドモジュール12のノズル面14Aを摺動していた掻取部材26の先端部26Aは、弾性変形の復元力により隙間16の中に挿入されるとともに、該復元力の作用によって隙間16内の洗浄液35のメニスカスが破壊される。
【0039】
なお、掻取部材26の先端部26Aは、隙間16に挿入された状態で先端が隙間16の最深部に接触しないように、形状(高さ)が決められている。
【0040】
図4(b)に示すように、インクジェットヘッド14の長手方向における掻取部材26の先端部26Aの厚み(厚みの最小値)T1は、同方向における隙間16の幅Dn未満であり、掻取部材26の先端部26Aのうち、ノズル面14Aと当接して撓む部分(ラップ部)27の長さは、隙間16の幅Dn未満であり、掻取部材26の先端部26Aは、隙間16の中に挿入可能な形状を有している。
【0041】
掻取部材26の先端部26Aの厚み(厚みの最小値)T1と、隙間16の幅Dnとの関係を、T1<(Dn/2)とすると、掻取部材26の先端部26Aが隙間16により入り込みやすくなる。
【0042】
掻取部材26の「先端部26A」とは、掻取部材26のうち、インクジェットヘッド14の長手方向における厚みT1が、同方向における隙間16の幅Dn未満となっている部分である。言い換えると、掻取部材26の「先端部26A」は、掻取部材26の全長から、掻取部材26が支持される面とノズル面14Aとのクリアランスに対応する長さを除いた長さを有する先端近傍の部分である。
【0043】
図4(c)に示すように、隙間16内の洗浄液35のメニスカスが破壊されると、隙間16から洗浄液35が排出される。さらに、インクジェットヘッド14が同方向へ移動すると、掻取部材26によって掻き取られて排出され、ノズル面14Aに付着した洗浄液35’は、掻取部材26に後続する払拭部材28によりノズル面14Aから除去される。
【0044】
なお、払拭部材28とノズル面14Aとの間にも洗浄液のメニスカスが形成されるが、洗浄液量がごくわずかであり、再度、隙間16に洗浄液のメニスカスが形成されることはない。
【0045】
〔拭取部の詳細な説明〕
図5は、図1に示す洗浄装置の拭取部22の概略構成を示す斜視図である。同図に示す拭取部22は、掻取部材26及び払拭部材28が支持台29に固定支持されており、支持台29は、不図示のガイド(図1に符号24を付して図示)によって支持されている。
【0046】
掻取部材26の先端部26Aは、掻取部材26の長手方向(すなわち、インクジェットヘッド14の短手方向)について、複数の切欠部26Bが等間隔で形成された櫛歯形状を有している。先に説明したように、掻取部材26はヘッドモジュール12間の隙間16に入り込んだ洗浄液のメニスカスを破壊するとともに、メニスカスが破壊された洗浄液を隙間16から排出させる機能を備える必要がある。
【0047】
すなわち、歯部26Cは洗浄液のメニスカスを破壊する機能を有し、切欠部26Bは洗浄液を排出する機能を有している。洗浄液のメニスカスはヘッドモジュール12の短手方向における隙間16の一部に形成される場合があり、洗浄液のメニスカスが同方向におけるいずれの位置に形成されるか不明である。
【0048】
したがって、掻取部材26の先端部26Aに複数の歯部26Cを形成するとともに、複数の歯部26Cの配置ピッチをより小さくすると、洗浄液のメニスカスが形成される位置によらず、洗浄液のメニスカスに歯部26Cを当てることができる。
【0049】
一方、隙間16から洗浄液35を確実に排出させるという観点から、切欠部26Bの同方向における長さをより長くし、歯部26Cの同方向における長さLCをより短くするとよい。
【0050】
歯部26Cの同方向における長さLCと切欠部26Bの同方向における長さLBとの関係は、LC<LBとすることが好ましい。図5に示す態様では、切欠部26Bの同方向における長さLBは、歯部26Cの同方向における長さLCの約1.5倍となっている。歯部26Cの同方向における長さLCと、切欠部26Bの同方向における長さLBとの比率は、洗浄液の物性、掻取部材26の材料などの条件により適宜決められる。
【0051】
なお、掻取部材26の先端部26Aの幅T1が隙間16の間隔Dnよりも十分に小さく、例えば、掻取部材26の先端部26Aの幅T1が隙間16の間隔Dnの1/2以下であり、掻取部材26の先端部26Aの面に沿って洗浄液を排出させることが可能であれば、掻取部材26の先端部26Aに切欠部26Bを形成せずに、平板形状とすることも可能である。
【0052】
一方、隙間16内のメニスカスを破壊するために必要な剛性を得る観点から、掻取部材26の先端部26Aの幅T1を隙間16の間隔Dnよりも十分に小さくできない場合には、図5に図示した掻取部材26の先端部26Aを櫛歯形状とする態様が好ましい。
【0053】
また、掻取部材26の支持台29の上面(支持面)からの高さ(支持面に対して垂直方向の長さ)はH1と、払拭部材28の支持台29の上面からの高さH2との関係は、H1>H2となっている。
【0054】
図5に示す例では、掻取部材26の先端部26Aの厚みT1が、払拭部材28の厚みT2(払拭部材28の厚みは均一)以下となっている。
【0055】
図5に示す掻取部材26は全体が均一の厚みT1を有する形状であり、この厚みT1が隙間16の幅Dn未満となっている(図4(b)参照)。一方、払拭部材28はノズル面14Aを均一に払拭できる剛性を有していればよく、払拭部材28の厚みT2は掻取部材26の厚みT1以上であってもよい。
【0056】
掻取部材26の長手方向における全長L1は、インクジェットヘッド14の短手方向における隙間16の全長に対応していればよい。また、払拭部材28の長手方向における全長L2は、少なくともインクジェットヘッド14の短手方向におけるノズル面14Aの全長に対応していればよい。
【0057】
図6は、インクジェットヘッド14の短手方向(同図における上下方向)におけるノズルプレート30の全長Lnと、掻取部材26の長手方向における全長L1と、払拭部材28の長手方向における全長L2と、の関係を模式的に図示した説明図であり、図2の一部を拡大した図である。
【0058】
洗浄液がノズルプレート30(ノズル面14A)のみに付着する場合(例えば、カバー32A,32Bとノズル面14Aとの間に段差があり、ノズル面14Aがカバー32A,32Bよりも突出している場合)は、同方向における隙間16の全長はノズルプレート30の全長Lnとなる。
【0059】
そうすると、Ln≦L1となり、Ln≦L2となる。なお、掻取部材26の長手方向における全長L1と、払拭部材28の長手方向における全長L2との関係は、掻取部材26により掻き取られた洗浄液を払拭部材28により確実に除去することを考慮すると、L1<L2とすることが好ましい。なお、L1=L2としてもよい。
【0060】
なお、掻取部材26の撓み量(弾性変形量)を考慮して、掻取部材26が弾性変形したときに掻取部材26の先端部26Aと払拭部材28が接触しないように、掻取部材26と払拭部材28との配置間隔が決められている。
【0061】
以上説明した掻取部材26は、インクジェットヘッド14の短手方向における隙間16の長さに対応する同方向の長さを有しているが、同方向における隙間16の長さに満たない短尺の掻取部材を、同方向における隙間16の長さにわたって複数設ける態様も可能である。
【0062】
例えば、複数の短尺の掻取部材を同方向についてオーバーラップさせながら千鳥状に配置することも可能である。一枚ものの長尺の掻取部材は、厚みを薄くしてしまうと剛性が弱くなるので、同方向について湾曲してしまうことがあり得る。そうすると、掻取部材が隙間16の中に挿入されないことが想定される。
【0063】
したがって、湾曲しにくい短尺の掻取部材を同方向における隙間16の長さにわたって複数配置することで、厚みが薄い掻取部材でも確実に隙間16の中に挿入させることが可能となる。
【0064】
〔制御系の構成〕
図7は、図1に示す洗浄装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、洗浄装置10はシステム制御部50によって全体が統括制御されている。すなわち、システム制御部50は、洗浄液付与制御部52を介して洗浄液を供給するためのポンプ54を制御するとともに、洗浄液の流路に設けられたバルブ56の開閉を制御する。
【0065】
また、システム制御部50は、センサ60から送出される検出信号に基づいて、装置各部に指令信号を送出する。センサ60の例として、洗浄液流路における液量(流速)を検出する液量検出センサや、洗浄液が貯留される洗浄液タンクに設けられる残量センサ、洗浄液の温度を検出する温度センサ、インクジェットヘッド14の位置を検出するセンサなどが挙げられる。
【0066】
例えば、洗浄液の流量(流速)の検出結果に基づいて流速が不足していると判断されると、システム制御部50から洗浄液付与制御部52へポンプ54の回転速度を上げて流量を増やすように指令信号が送出される。
【0067】
また、インクジェットヘッド14の位置情報(どのヘッドモジュール12に対して洗浄処理をしているかを判断する情報)が取得されると、ポンプ54のオンオフやバルブ56のオンオフが適宜切り換えられる。
【0068】
メモリ62は、システムパラメータを格納する手段や、センサ60の検出結果を蓄積する手段、各種処理に用いられるデータの一次記憶領域などに適用される。なお、図7に示す構成は一例であり、構成の変更、追加、削除が適宜可能である。
【0069】
本例では、インクジェットヘッド14の長手方向と平行方向へインクジェットヘッド14を移動させて、ノズル面14Aに対して洗浄処理が施される形態を示したが。固定されたインクジェットヘッド14に対して洗浄装置10を移動させてもよいし、インクジェットヘッド14及び洗浄装置10をともに移動させてもよい。
【0070】
洗浄装置10を移動させる態様では、洗浄装置10を移動させる移動機構を備えるとともに、該移動機構に連結されるモータを備え、かつ、図7に示すシステム制御部50から該モータの動作を制御するモータ制御部に対して指令信号が送出される。
【0071】
〔洗浄処理の制御の説明〕
図8は、洗浄装置10によるインクジェットヘッド14のノズル面14Aの洗浄処理の流れを示すフローチャートである。
【0072】
インクジェットヘッド14のノズル面14Aの洗浄処理が開始されると(ステップS10)、インクジェットヘッド14の長手方向と平行方向へインクジェットヘッド14を一定速度で移動させる(ステップS12)。
【0073】
処理対象のヘッドモジュール12のノズル面14Aが洗浄液付与部20の処理領域に到達すると、図1に示す洗浄液付与部20の洗浄液膜保持面21へ洗浄液の供給が開始される(図8のステップS14)。さらに、インクジェットヘッド14が移動して、洗浄液が付与されたノズル面14Aが拭取部22の処理領域に到達すると、掻取部材26及び払拭部材28がノズル面14Aと当接して弾性変形しながら、当該ノズル面14Aが払拭される(ステップS16)。
【0074】
また、ステップS18において、洗浄液の供給開始からの経過時間が監視される。すなわち、洗浄液の供給開始からの経過時間によって、洗浄液付与部20の洗浄液膜保持面21に洗浄液膜が形成されたか否かが判断される。ステップS18において、洗浄液の供給開始から所定時間が経過していないと判断されると(No判定)、洗浄液の供給が継続される。
【0075】
一方、ステップS18において洗浄液の供給開始から所定時間が経過したと判断されると(Yes判定)、洗浄液の供給が停止される(ステップS20)。ステップS18及びステップS20の実行中もインクジェットヘッド14の移動が継続され、ヘッドモジュール12間の隙間16が掻取部材26の位置に到達すると隙間16から洗浄液が掻き取られ、隙間16から洗浄液が掻き取られた洗浄液及びノズル面14Aに付着している洗浄液が払拭部材28により払拭除去される(ステップS16)。
【0076】
ステップS22において、次の処理対象のヘッドモジュール12が洗浄液付与部20の処理領域に到達したか否かが判断される。次の処理対象のヘッドモジュール12が洗浄液付与部20の処理領域に到達すると(Yes判定)、インクジェットヘッド14の移動を継続させつつ、ステップS14からステップS20の処理が繰り返される。
【0077】
ステップS22において、最後のヘッドモジュール12の洗浄処理が終了したと判断されると(No判定)、インクジェットヘッド14の移動が停止され(ステップS24)、当該洗浄処理が終了される(ステップS26)。
【0078】
〔掻取部材の変形例〕
図9から図11は、図5に示す掻取部材26の他の態様を示す斜視図である。以下の説明では、これまでに説明した部分と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0079】
図9に示す拭取部22’は、ブラシ状の掻取部材70を有している。すなわち、掻取部材70は、インクジェットヘッド14の短手方向における隙間16の全長に対応する長さにわったて、略円柱形状又は略円すい形状を有する複数のピン(柱)72が設けられた構造を有している。ヘッドモジュール12間の隙間16に挿入されるピン72の先端部72Aにおける直径の最大値は、インクジェットヘッド14の長手方向における隙間16の幅Dn未満である。
【0080】
ピン72の本数、配置間隔、配置パターンは、隙間16への挿入のしやすさ、隙間16からの洗浄液の排出のしやすさ、隙間16のどの位置に洗浄液のメニスカスが形成されやすいかといった観点から決められる。
【0081】
図10に示す拭取部22”の掻取部材80は、図5に示す掻取部材26の先端部26Aの平面を鋭角、又は掻取部材26の全体の厚みよりも十分に小さい平面とした態様であり、掻取部材80の先端部80Aの両面にテーパ形状(傾斜面)82A,82Bが形成されている。図11に示す掻取部材80’は、先端部80A’の一方の面(払拭部材28側の面)のみがテーパ形状(傾斜面)82’とされ、掻取部材80’の先端が鋭角にされている。
【0082】
すなわち、図10に示す掻取部材80は厚み方向に沿う断面線による断面形状が三角形形状(二等辺三角形)、又は上底の長さが下底の長さよりも十分に小さい台形形状(等脚台形)である。
【0083】
また、図11に示す掻取部材80’は、厚み方向に沿う断面線による断面形状が直角三角形、又は上底の長さが下底の長さよりも十分に小さく、かつ、上底と下底とを結ぶ辺と下底により構成される角の一方が直角となる台形形状である。
【0084】
このように、掻取部材80(80’)の先端部80A(80A’)に傾斜面を形成することで、掻取部材80(80’)の先端部80A(80A’)が隙間16に入りやすくなるとともに、隙間16から掻き取られた洗浄液を排出しやすくなる。払拭部材28による払拭を考慮すると、少なくとも払拭部材28側の面は傾斜面が形成されるとよい。
【0085】
上記の如く構成された洗浄装置10によれば、ヘッドモジュール12間の隙間16に挿入可能な形状の先端部26Aを有する掻取部材26を具備し、掻取部材26が隙間16に挿入されることで洗浄液のメニスカスが破壊され、隙間16内の洗浄液が掻き取られる。
【0086】
さらに、掻取部材26の後段側に払拭部材28を具備しているので、隙間16から掻き取られた洗浄液は払拭部材28により払拭除去される。
【0087】
掻取部材26の先端部26Aの厚みの最大値T1を隙間16の幅Dn未満とすることで、掻取部材26の先端部26Aが隙間16へ入りやすくなる。さらに、払拭部材28の長さよりも掻取部材26の長さを大きくすることで、払拭部材28をノズル面14Aに当接させた状態でも、掻取部材26の先端部26Aが隙間16へ入りやすくなる。
【0088】
また、掻取部材70をブラシ状とすることで、ブラシを構成するピン72の先端部72Aが隙間16に入りやすくなり、かつ、隙間16から洗浄液を排出しやすくなる。さらに、掻取部材80,80’のように先端部80A,80A’に傾斜面を形成して先端を鋭角とすることで、先端部80A,80A’が隙間16に入りやすくなり、かつ、隙間16から洗浄液を排出しやすくなる。
【0089】
〔インクジェット記録装置への適用例〕
次に、洗浄装置10の適用例について説明する。
【0090】
(全体構成)
図12は、洗浄装置10を具備するインクジェット記録装置100の全体構成図である。同図に示すインクジェット記録装置100は、記録媒体102を保持して搬送する記録媒体搬送部104と、記録媒体搬送部104に保持された記録媒体102に対して、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)に対応するカラーインクを吐出させるインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを含む印字部106と、を含んで構成されている。
【0091】
記録媒体搬送部104は、記録媒体102が保持される記録媒体保持領域に多数の吸着穴(不図示)が設けられた無端状の搬送ベルト108と、搬送ベルト108が巻き掛けられる搬送ローラ(駆動ローラ、従動ローラ)110,112と、記録媒体保持領域の搬送ベルト108の裏側(記録媒体102が保持される記録媒体保持面と反対側の面)に設けられ、記録媒体保持領域に設けられた不図示の吸着穴に負圧を発生させるチャンバー114と、チャンバー114に負圧を発生させる真空ポンプ116と、を含んでいる。
【0092】
記録媒体102が搬入される搬入部118には、記録媒体102の浮きを防止するための押圧ローラ120が設けられるとともに、記録媒体102が排出される排出部122にもまた、押圧ローラ124が設けられている。
【0093】
搬入部118から搬入された記録媒体102は、記録媒体保持領域に設けられた吸着穴から負圧が付与され、搬送ベルト108の記録媒体保持領域に保持される。
【0094】
記録媒体102の搬送路上には、印字部106の前段側(記録媒体搬送方向上流側)に、記録媒体102の表面温度を所定範囲に調整するための温度調節部126が設けられるとともに、印字部106の後段側(記録媒体搬送方向下流側)に、記録媒体102上に記録された画像を読み取る読取装置(読取センサ)128が設けられている。
【0095】
搬入部118から搬入された記録媒体102は、搬送ベルト108の記録媒体保持領域に吸着保持され、温度調節部126による温度調節処理が施された後に、印字部106において画像記録が行われる。
【0096】
画像記録がされた記録媒体102は、読取装置128によって記録画像(テストパターン)が読み取られた後に、排出部122から排出される。
【0097】
(印字部の構成)
印字部106に具備されるインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、記録媒体102の全幅を超える長さにわたって複数のノズルが配置されたフルライン型のインクジェットヘッドである。また、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせた構造を有している(図2参照)。
【0098】
図1に示すインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、記録媒体搬送方向の上流側からこの順番で配置されている。フルライン型のインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yと記録媒体102とを相対的に一回だけ移動させるシングルパス方式により、記録媒体102全域にわたって記録画像を記録することができる。
【0099】
なお、印字部106は上述した形態に限定されない。例えば、LC(ライトシアン)やLM(ライトマゼンタ)に対応するインクジェットヘッド106を具備してもよい。また、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの配置順も適宜変更可能である。
【0100】
図12に示すインクジェット記録装置100は、不図示のインク供給部を具備している。インク供給部は、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yに供給されるインクを貯蔵するインクタンクを色ごと(ヘッドごと)に備えている。色ごとのインクタンクのそれぞれとインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yとは、不図示のインク供給路により連通されている。
【0101】
また、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの吐出方式も限定されない。圧電素子の撓み変形を利用する圧電方式や、インクの膜沸騰現象を利用するサーマル方式などを適用することができる。
【0102】
(メンテナンス処理部の説明)
図13は、図12に示すインクジェット記録装置100における印字部107とメンテナンス処理部130との配置関係を示す説明図である。図13に示すように、メンテナンス処理部130は、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを記録媒体搬送部104上の画像形成位置から、記録媒体102の搬送方向と略直交する方向に水平移動させた位置に配置されている。
【0103】
メンテナンス処理部130は、図1から図11を用いて説明した洗浄装置10と、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yに対して吸引処理及びパージ処理を施すキャップ部132と、を備えて構成されている。図13では、1ヘッド分の洗浄装置10及びキャップ部132が図示されているが、洗浄装置10及びキャップ部132はインクジェットヘッドごとに、インクジェットヘッドの数だけ設けられている。
【0104】
インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを画像形成位置からメンテナンス位置へ移動させるには、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを記録媒体搬送部104上の画像形成位置から一旦上方へ退避させ、さらに、記録媒体102の搬送方向と直交する方向へ水平移動させる。インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yが洗浄装置10の処理領域に到達すると、洗浄装置10を上方へ移動させて(又は、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを下方へ移動させて)、ノズル面14A(図1参照)の洗浄処理が実行される。
【0105】
ノズル面14Aの洗浄処理が終了すると、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yをキャップ部132の処理領域へ移動させ、ノズル面14Aにキャップ部132を密着させて、吸引処理又パージ処理が実行される。
【0106】
キャップ部132は、排出流路134を介して廃インクタンク136と連通され、排出流路134には、ポンプ138が設けられる。ノズル面14Aにキャップ部132を密着させ状態でポンプ138を動作させると、ノズルを介してインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Y内のインクが吸引される。
【0107】
このようにして、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yのメンテナンス処理が終了すると、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは画像形成位置に移動する。
【0108】
インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを上下方向及び水平方向へ移動させる移動機構には、周知技術の水平搬送機構、上下搬送機構を適用することができる。
【0109】
(制御系の構成)
図14は、インクジェット記録装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置100は、通信インターフェース170、システム制御部172、搬送制御部174、画像処理部176、ヘッド駆動部178を備えるとともに、画像メモリ180、ROM182を備えている。
【0110】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ184から送られてくるラスター画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース170は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0111】
システム制御部172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ180及びROM182のメモリコントローラとして機能する。
【0112】
すなわち、システム制御部172は、通信インターフェース170、搬送制御部174等の各部を制御し、ホストコンピュータ184との間の通信制御、画像メモリ180及びROM182の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0113】
ホストコンピュータ184から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、画像処理部176によって所定の画像処理が施される。
【0114】
画像処理部176は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッド駆動部178に供給する制御部である。
【0115】
画像処理部176において所要の信号処理が施されると、該印字データ(ハーフトーン画像データ)に基づいて、ヘッド駆動部178を介してインクジェットヘッド140の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。なお、ヘッド駆動部178は、ヘッドモジュール12ごとに複数のブロックから構成されていてもよい。
【0116】
これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図17に示すヘッド駆動部178には、インクジェットヘッド140の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0117】
搬送制御部174は、画像処理部176により生成された印字データに基づいて記録媒体102(図16参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図14における搬送駆動部186は、記録媒体102を搬送する記録媒体搬送部104の駆動ローラ110(112)を駆動するモータが含まれており、搬送制御部174は該モータのドライバーとして機能している。
【0118】
画像メモリ(一時記憶メモリ)180は、通信インターフェース170を介して入力された画像データを一旦格納する一時記憶手段としての機能や、ROM182に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部176の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ180には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
【0119】
ROM182は、システム制御部172のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部172を通じてデータの読み書きが行われる。ROM182は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
【0120】
メンテナンス制御部188は、図7に示した構成を適用することができる。図7に示した構成に加えて、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの、画像形成位置とメンテナンス位置との間の移動を制御するインクジェットヘッド移動制御部を備えている。
【0121】
さらに、メンテナンス制御部188は、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの位置を検出する検出部(図7のセンサ60)を備え、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの位置に応じてインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの移動速度が調整されるとともに、洗浄液の供給開始タイミング、供給停止タイミングが決められる。
【0122】
パラメータ記憶部190は、インクジェット記録装置100の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部172は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。
【0123】
プログラム格納部192は、インクジェット記録装置100を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。システム制御部172(又は装置各部)は、装置各部の制御を実行する際にプログラム格納部192から必要な制御プログラムが読み出され、該制御プログラムは適宜実行される。
【0124】
なお、図7のシステム制御部50は、図14のシステム制御部172と共通化することができ、図7のメモリ62は、図14のパラメータ記憶部190やプログラム格納部192と共通化することができる。
【0125】
インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yのメンテナンスは、ジョブ間のインターバル中やジョブ開始時などに定期的に実行してもよいし、不図示のユーザインターフェイスを用いてオペレータによる入力を受けて実行してもよい。
【0126】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る洗浄装置について説明する。なお、以下の説明において、先に説明した第1実施形態に係る洗浄装置10と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0127】
図15は、本発明の第2実施形態に係る洗浄装置200における、拭取部222の概略構成を示す説明図である。同図に示す拭取部222は、掻取部材26を支持する支持台229Aに超音波振動子202が設けられている。なお、払拭部材28を支持する支持台229Bは、掻取部材26を支持する支持台229Aと別体となっている。
【0128】
超音波振動子202は、配線204,206を介して不図示の駆動回路から駆動電圧が印加されると、超音波振動子202の振動に同期して、掻取部材26及び支持台229Aを所定の周波数で振動させることができる。
【0129】
ヘッドモジュール12間の隙間16に掻取部材26が挿入されたタイミングで超音波振動子202を動作させると、隙間16内の洗浄液のメニスカスを効率よく破壊することができる。
【0130】
超音波振動子202には、駆動電圧の周波数により振動周波数を自由に可変することができ、駆動電圧の電圧により振動の振幅を自由に可変することができる圧電素子を適用することができる。超音波振動子202の振動周波数や振幅は、洗浄液の物性や隙間16の幅などの条件により適宜決められる。
【0131】
また、超音波振動子202による掻取部材26の振動は、水平面と平行方向でもよいし、水平面と直交する方向(鉛直方向)でもよい。水平面と平行に掻取部材26を振動させる場合には、掻取部材26を長手方向に振動させてもよいし、短手方向に振動させてもよい。
【0132】
さらに、掻取部材26を長手方向について分割し、分割された単位ごとに超音波振動子202を備え、分割単位ごとに振動させてもよい。
【0133】
第2実施形態に係る洗浄装置200によれば、隙間16内の洗浄液に振動を与えることで、隙間16内の洗浄液のメニスカスを効率よく破壊することができ、隙間16からの洗浄液を効率よく排除することができる。
【0134】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る洗浄装置について説明する。図16は、発明の第3実施形態に係る洗浄装置300における、拭取部322の概略構成を示す説明図である。また、図17は、図16に示す払拭部の動作を説明する説明図である。
【0135】
図16に示すように、拭取部322は中空の円筒形状を有する掻取部材326がインクジェットヘッド14(図2参照)の短手方向における隙間16の全長にわたって設けられている。
【0136】
図17に示すように、掻取部材326の先端の直径(外径)T11は、インクジェットヘッド14の長手方向における隙間16の幅Dn未満であり、掻取部材326の先端部(隙間16に挿入される部分)の直径の最大値は、同方向における隙間16の幅Dn未満である。
【0137】
図16に示すように、掻取部材326を支持する支持台329Aは、掻取部材326の中空部327(と連通する吸引流路(不図示)が設けられて、該吸引流路は支持台329Aの掻取部材326と反対側の面に設けられるマニホールド(減圧室)302と連通している。なお、マニホールド302は支持台329Aの内部に設けられていてもよい。
【0138】
マニホールド302は、ジョイント304及びチューブ306を介して吸引ポンプ308と接続されており、吸引ポンプ308を動作させるとマニホールド302の内部が負圧となり、掻取部材326の中空部327に負圧を発生させることができる。
【0139】
ヘッドモジュール12間の隙間16に掻取部材326の先端部326Aが挿入されたタイミングで、図16の吸引ポンプを動作させると、掻取部材326の中空部327を介して、隙間16内の洗浄液を吸引除去することができる。
【0140】
なお、掻取部材326の本数、配置間隔、配置パターンは、隙間16への挿入のしやすさ、隙間16からの洗浄液の排出のしやすさ、隙間16のどの位置に洗浄液のメニスカスが形成されやすいかといった観点から決められる。また、吸引ポンプ308の吸引圧力は、洗浄液の物性や隙間16の幅などの条件により適宜決められる。
【0141】
第3実施形態に係る洗浄装置300によれば、隙間16内の洗浄液を吸引除去することができ、隙間16からの洗浄液を効率よく排除することができる。図17には、掻取部材326の先端部326Aを隙間16の内部に挿入して、隙間16内の洗浄液を吸引除去する態様を例示したが、掻取部材326の先端部326Aを隙間16内に挿入せずに、隙間16内の洗浄液を吸引除去することも可能である。
【0142】
〔応用例〕
図18は、図2に示すインクジェットヘッドと異なる構造を有するインクジェットヘッドのノズル面を示す平面図である。図18に示すインクジェットヘッド14’は、ヘッドモジュール12’(ノズルプレート30’)の平面形状が平行四辺形であり、ヘッドモジュール12’間の隙間16’はインクジェットヘッド14’の短手方向に対して斜め方向となる。
【0143】
かかる構造を有するインクジェットヘッド14’に対して、掻取部材26’はインクジェットヘッド14’の短手方向に対して斜めに傾けられ、隙間16’と略平行になるように配置される。
【0144】
なお、払拭部材28は、インクジェットヘッド14’の短手方向と平行に配置されてもよいし、掻取部材26’と同様にインクジェットヘッド14’の短手方向に対して斜めに傾けられ、隙間16’と略平行になるように配置されてもよい。
【0145】
すなわち、ヘッドモジュール12’間の隙間16’の向きと略平行になるように、掻取部材26’をインクジェットヘッド14’の短手方向に対して傾けて配置することで、掻取部材26’を隙間16’に挿入しやすくなる。
【0146】
なお、掻取部材26’の向きが隙間16’の向きに対してややずれていても、掻取部材26’を隙間16’内に挿入することができればよい。
【0147】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係る洗浄装置について説明する。
【0148】
(インクジェット記録装置の全体構成)
図19は、本発明の第4実施形態に係る洗浄装置が具備されるインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すインクジェット記録装置400は、記録媒体414を圧胴の外周面に保持して搬送する圧胴搬送方式が適用される。
【0149】
また、記録媒体414にインクを吐出させるインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yは、ノズル面が圧胴(描画胴444)の外周面の法線に対して直交するように、水平面に対して斜めに傾けられて配置される。
【0150】
図19に示すインクジェット記録装置400は、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yに対してメンテナンス処理を施すメンテナンス処理部(不図示)を備えている(図13参照)。
【0151】
該メンテナンス処理部は、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yのノズル面に洗浄液を付与して、ノズル面の洗浄を行う洗浄装置(図20に符号412を付して図示)を備えている。
【0152】
図19に示すインクジェット記録装置400は、画像形成前の記録媒体414が収納される記録媒体収納部420と、記録媒体収納部420から送り出された記録媒体414に処理液を塗布する処理液塗布部430と、処理液が塗布された記録媒体414にカラーインクを吐出させて、所望のカラー画像を形成する描画部440と、カラー画像が形成された記録媒体414を乾燥させる乾燥処理部450と、乾燥処理後の記録媒体414に対して定着処理を施す定着処理部460と、定着処理後の記録媒体414を排出させる排出部470と、を備えている。
【0153】
給紙トレイ422を介して渡し胴432に受け渡された記録媒体414は、処理液胴434のグリッパー480A,480Bに先端部を挟持され、処理液胴434に支持されて、処理液胴434の回転に従って処理液胴434の外周面に沿って搬送される。
【0154】
処理液胴434により回転搬送される記録媒体414は、処理液胴434の外周面と対向する位置に配置される処理液塗布装置436の処理領域に達すると、画像が形成される面に処理液を塗布される。処理液塗布装置436により塗布される処理液は、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yから吐出されるカラーインクと反応して、カラーインクに含まれる着色剤を凝集又は不溶化させる機能を有している。
【0155】
処理液が塗布された記録媒体414は、渡し胴442を介して描画胴444へ受け渡され、描画胴444の外周面に保持されて、描画胴444の外周面に沿って回転搬送される。
【0156】
インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの記録媒体搬送方向上流側の直前には用紙押さえローラ446が配置されており、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの直下に進入する直前に用紙押さえローラ446により記録媒体414を描画胴444の外周面へ密着させるように構成される。
【0157】
描画胴444によって回転搬送される記録媒体414は、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yからカラーインクが吐出され、処理液が塗布された画像形成面にカラー画像が形成される。
【0158】
インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yは、図2や図18に図示したように、複数のヘッドモジュール12(12’)がインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの長手方向に沿って一列につなぎ合わせられた構造を有している。
【0159】
カラー画像が形成された記録媒体414は、渡し胴452を介して乾燥胴454へ受け渡され、乾燥胴454の外周面に支持されて、乾燥胴454の回転に従って乾燥胴454の外周面に沿って回転搬送される。
【0160】
乾燥胴454により回転搬送される記録媒体414は、乾燥処理装置456から乾燥処理が施される。乾燥処理には、ヒータによる加熱、ファンによる乾燥風(加熱風)の吹きつけ、又はこれらの組み合わせが適用される。
【0161】
乾燥処理が施された記録媒体414は、渡し胴462を介して定着胴464へ受け渡される。定着胴464に受け渡された記録媒体414は、乾燥胴454の外周面に保持されて、乾燥胴454の回転に従って乾燥胴454の外周面に沿って回転搬送される。
【0162】
乾燥胴454により回転搬送される記録媒体414上に形成された画像は、ヒータ466により加熱処理が施されるとともに、定着ローラ468により加圧処理が施される。定着ローラ468の記録媒体搬送方向下流側に設けられるインラインセンサ482は、加熱及び加圧による定着処理が施された記録媒体414(画像)を撮像する手段であり、インラインセンサ482の撮像結果に基づいて、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの吐出異常が判断される。
【0163】
インラインセンサ482による撮像領域を通過した記録媒体414は、排出部470へ送られる。排出部470は、張架ローラ472A,472Bに巻き掛けられたチェーン474により記録媒体414をストッカー476へ搬送するように構成されている。
【0164】
図19に示すインクジェット記録装置400は、描画部440に対して、記録媒体搬送方向と直交する方向(図19の紙面を貫く方向)の離れた位置に、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yにメンテナンス処理を施すメンテナンス処理部が配置されている(図13参照)。
【0165】
メンテナンス処理部の構成は、図13に示すメンテナンス処理部130と同様の構成を適用することができ、以下に説明する洗浄装置が具備されている。なお、図19に図示した装置構成は、適宜構成の削除、構成の変更、及び他の構成の追加が可能である。
【0166】
(洗浄装置の説明)
図20は、本例に示す洗浄装置における洗浄液付与処理を模式的に図示した説明図である。また、図21は本例に示す洗浄装置におけるノズル面の拭取処理(掻取処理)を模式的に図示した説明図である。
【0167】
以下に説明する洗浄装置410は、インクジェットヘッド448(図19のインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yを一括して図示)のノズル面448Aに洗浄液を付与する洗浄液付与部402(図20に図示)と、ノズル面448Aに付着した洗浄液を拭き取る拭取部404と(図21に図示)、を備える点で、図1から図14を用いて説明した洗浄装置10と共通している。
【0168】
一方、洗浄装置410は、水平面に対して傾斜しているインクジェットヘッド448のノズル面448Aに対応している点で、図1から図14を用いて説明した洗浄装置10と相違している。以下に、主として図1から図14を用いて説明した洗浄装置10との相違点について説明する。
【0169】
図20に示すように、洗浄装置410はインクジェットヘッド448のノズル面448Aが水平面に対して傾斜しているのに対応して、洗浄液付与部402の洗浄液膜保持面412Aがノズル面448Aと平行に対向するように、水平面に対して傾けられている。
【0170】
洗浄液膜保持面412Aへ洗浄液を供給する洗浄液供給口413は、洗浄液膜保持面412Aの傾斜の上部(ノズルプレート448Bの傾斜の最上部に対応する位置、又は該最上部よりもさらに上側の位置)に設けられており、洗浄液供給口413からノズル面448Aと洗浄液膜保持面412Aとの間に供給された洗浄液は、ノズル面448Aと洗浄液膜保持面412Aとの間に濡れ広がりながら洗浄液膜を形成し、洗浄液膜保持面412Aを傾斜の上部から下部へ流下する。
【0171】
図示を省略するが、洗浄液膜保持面412Aの傾斜の最下部には、洗浄液膜保持面412Aを流れ落ちた洗浄液が回収される洗浄液回収部が具備される。洗浄液回収部に回収された洗浄液は、汚れの除去などの再利用処理が施された後に再利用可能である。
【0172】
図21に示すように、拭取部404に具備される掻取部材416及び払拭部材417は、先端部(先端面)がノズル面448Aと略平行になるように、水平面に対して傾けられている。掻取部材416は、インクジェットヘッド448の短手方向におけるヘッドモジュール間の隙間の長さ未満の同方向の長さを有し、かつ、洗浄液供給口413(図20参照)に対応して掻取部材416が支持される支持面の傾斜の上側に配置されている。
【0173】
図21に図示した掻取部材416は、インクジェットヘッド448の短手方向におけるヘッドモジュール間の隙間の長さの1/2の長さを有している。ヘッドモジュール間の隙間における洗浄液供給口413に対応する位置(隙間の傾斜最上部近傍位置)は、洗浄液が入り込みやすいので、ヘッドモジュール間の隙間における洗浄液供給口413に対応する隙間の傾斜最上部近傍位置に合わせて掻取部材416が配置されている。
【0174】
隙間の傾斜最上部近傍位置で洗浄液のメニスカスが破壊されると、隙間の傾斜に沿って洗浄液が流れ落ちるので、効果的に隙間から洗浄液を排出させることができる。なお、図21に図示した掻取部材416に対して、図9から図11に図示した掻取部材70,80,80’の形状を適用可能である。また、図15及び図16に図示した構成を適用することも可能である。
【0175】
第4実施形態に係る洗浄装置410によれば、水平面に対してノズル面448Aが傾斜するように傾けられて配置されたインクジェットヘッド448のノズル面448Aを洗浄する際に、ヘッドモジュール間の隙間から洗浄液を掻き取る掻取部材416が、洗浄液が液入り込みやすい該隙間の傾斜の最上部近傍位置に配置されるので、隙間に入り込んだ洗浄液を効率よく排出させることができる。
【0176】
また、インクジェットヘッドの短手方向における掻取部材416の長さを同方向における隙間の全長よりも短くすることで、掻取部材416がノズル面448Aを摺動する面積をより小さくすることができ、掻取部材416の摺動によるノズル面448Aの損傷をより小さくすることができる。
【0177】
なお、本発明の適用範囲は、記録媒体上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置に限定されない。例えば、樹脂粒子や金属粒子を含有する機能性液体により、所定のパターン(マスクパターン、配線パターン)を形成するパターン形成装置なと、インクジェット方式により媒体上に液体を噴射させる液体吐出装置に広く適用することが可能である。
【0178】
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す態様を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0179】
(第1態様):第1態様に係る洗浄装置は、複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭部材と、を備えている。
【0180】
第1の態様によれば、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせた構造を有するインクジェットヘッドの液体吐出面を洗浄する際に、隣接するヘッドモジュール間の隙間に掻取部材の先端部を入り込ませて、該隙間に形成された洗浄液のメニスカスを破壊することで、該隙間から洗浄液が掻き出され、さらに、隙間から掻きだされた洗浄液が払拭部材により拭き取られるので、該隙間の中に洗浄液が残留することがなく、該隙間からの洗浄液の液だれの発生が防止される。
【0181】
(第2態様):第2態様に係る洗浄装置は、前記掻取部材及び前記払拭部材を前記液体吐出面に当接させたときに、前記掻取部材の前記液体吐出面への当接量は、前記払拭部材の前記液体吐出面への当接量を超えている。
【0182】
かかる態様によれば、払拭部材が液体吐出面に当接していても、掻取部材を隙間の中へ挿入することができる。
【0183】
すなわち、掻取部材及び払拭部材が液体吐出面に当接せず変形してない状態で、掻取部材は払拭部材よりも長くなるように構成される。
【0184】
(第3態様):第3態様に係る洗浄装置は、前記掻取部材の先端部は、前記隙間の前記長手方向における長さの最大値未満の同方向における長さを有している。
【0185】
かかる態様によれば、隙間の前記長手方向の長さ(隙間の幅)よりも掻取部材の先端部の同方向の長さ(掻取部材の厚み)を小さくすることで、掻取部材に先端部を隙間に挿入しやすくなる。
【0186】
(第4態様):第4に係る洗浄装置は、前記掻取部材は、平板状の部材であり、前記先端部は1つ以上の切り欠きが設けられる櫛歯形状を有している。
【0187】
かかる態様によれば、平板状の掻取部材の先端部に切り欠きを設けることで、該切り欠きから洗浄液が排出されやすくなる。
【0188】
(第5態様):第5に係る洗浄装置は、前記掻取部材の先端部は、前記長手方向に沿う断面線による断面形状が略三角形形状又は略台形形状を有している。
【0189】
かかる態様によれば、掻取部材の先端をより細くすることで、掻取部材の先端部が隙間に挿入しやすくなる。
【0190】
(第6態様):第6に係る洗浄装置は、前記掻取部材は、略円柱形状又は略円すい形状のピンが1つ以上設けられる構造を有している。
【0191】
かかる態様において、掻取部材をいわゆるブラシ状にすることで、掻取部材の先端部が隙間に挿入しやすくなるとともに、隙間から洗浄液を排出しやすくなる。
【0192】
(第7態様):第7に係る洗浄装置は、前記掻取部材を振動させる加振手段を備えている。
【0193】
かかる態様によれば、掻取部材の先端部が隙間に挿入された状態で、掻取部材を振動させることで、隙間の中に形成された洗浄液のメニスカスを効率よく破壊することができる。
【0194】
(第8態様):第8に係る洗浄装置は、前記掻取部材は、前記先端部に前記隙間から洗浄液を吸引する吸引口が設けられるとともに、前記吸引口と連通する吸引流路が設けられ、前記吸引流路を介して吸引口に吸引圧力を発生させる吸引手段を備えている。
【0195】
かかる態様によれば、掻取部材の先端部が隙間に挿入された状態で、掻取部材の先端部から洗浄液を吸引することで、隙間の中の洗浄液を効率よく排除することができる。
【0196】
(第9態様):第9態様に係る液体吐出装置は、複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭部材と、を備えている。
【0197】
(第10態様):第10に係る液体吐出装置は、前記インクジェットヘッドの長手方向について、前記インクジェットヘッドと前記洗浄装置、前記掻取部材及び前記払拭部材とを相対的に移動させる移動手段を備えている。
【0198】
かかる態様によれば、インクジェットヘッドと掻取部材及び払拭部材とを相対的に移動させながら、隙間の中の洗浄液を掻き取ることができ、かつ、掻き取られた洗浄液及び液体吐出面に付着した洗浄液を除去することができる。
【0199】
(第11態様):第11に係る液体吐出装置は、前記掻取部材は、前記払拭部材と一体に構成され、前記移動手段は、前記インクジェットヘッドと前記掻取部材及び前記払拭部材とを前記長手方向について相対移動させる。
【0200】
かかる態様において、掻取部材が液体吐出面に当接したときに、掻取部材と払拭部材が接触しないように、掻取部材及び払拭部材の位置が決められている。
【0201】
(第12態様):第12に係る液体吐出装置は、前記インクジェットヘッドは、液体吐出面が水平面に対して傾けられており、前記掻取部材は、前記液体吐出面に対応して水平面に対して傾けられて配置されるとともに、前記隙間の前記長手方向と直交する方向の全長未満の同方向における長さを有し、かつ、前記隙間の傾斜の最上部に挿入される。
【0202】
かかる態様によれば、水平面に対して傾けられた液体吐出面における、ヘッドモジュール間の隙間に対して、隙間の全長よりも短い掻取部材を傾斜の最上部に挿入することで、隙間の中の洗浄液除去の効率を落とすことなく、掻取部材の摺動による液体吐出面へのダメージを低減化することができる。
【0203】
(第13態様):第13に係る液体吐出装置は、前記洗浄液付与手段は、前記液体吐出面の傾斜に対応して水平面に対して傾けられ、洗浄液の膜が形成される洗浄液膜保持面を具備するとともに、前記洗浄液膜保持面の傾斜上部から前記洗浄液膜保持面へ洗浄液を供給する洗浄液供給部を具備し、前記洗浄液膜保持面に形成された洗浄液膜を前記液体吐出面に接触させて、前記液体吐出面に洗浄液を付与し、前記掻取部材は、前記洗浄液保持部により洗浄液が供給される位置に対応する前記隙間の位置に挿入される。
【0204】
かかる態様によれば、洗浄液が入り込みやすい洗浄液供給部に対応する隙間の位置に掻取部材を挿入することで、隙間からの洗浄液の除去が効率よく行われる。
【0205】
(第14態様):第14に係る液体吐出装置は、前記洗浄装置は、第2態様から第8態様のいずれかに記載された洗浄装置を含んでいる。
【0206】
(第15態様):第15態様に係るインクジェットヘッドの洗浄方法は、複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与工程と、隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取工程と、前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭工程と、を含んでいる。
【0207】
(第16態様):第16に係るインクジェットヘッドの洗浄方法は、前記洗浄液付与工程、前記掻取工程及び前記払拭工程は、前記インクジェットヘッドと前記液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段、前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取手段及び前記液体吐出面を払拭する拭取手段とを前記インクジェットヘッドの長手方向について相対的に移動させながら実行される。
【符号の説明】
【0208】
10,200,300,410…洗浄装置、12,12’…ヘッドモジュール、14,14’,106,448…インクジェットヘッド、14A…ノズル面、16…隙間、20…洗浄液付与部、21…洗浄液膜保持面、22…拭取部、26,26’、70,80,80’,326,416…掻取部材、26A,72A,80A,80A’326’…先端部、26B…切欠部、26C…歯部、28…払拭部材、50,172…システム制御部、52…洗浄液付与制御部、188…メンテナンス制御部、202…超音波振動子、302…マニホールド、306…チューブ、308…吸引ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄装置、液体吐出装置及びインクジェットヘッドの洗浄方法に係り、特に複数のヘッドユニットをつなぎ合わせて構成されたインクジェットヘッドの洗浄技術に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体にカラー画像を形成するインクジェット記録装置には、記録媒体の全幅に対応する長さにわたってノズルが設けられるフルライン型のインクジェットヘッドを備える構成がある。フルライン型インクジェットヘッドを備える構成では、記録媒体とインクジェットヘッドとを一回だけ相対的に移動させることで、記録媒体の画像形成領域の全域にわたってカラー画像が形成される、シングルパス方式による高速の画像形成が可能である。
【0003】
フルライン型インクジェットヘッドには、複数のヘッドモジュール(ヘッドユニット)をつなぎ合わせた形態がある。このようなインクジェットヘッドは、製造上の精度の向上や製造歩留まりの向上が見込まれるとともに、製造時の検査において不合格となった場合や、故障の発生や寿命により交換を要する場合には、ヘッドモジュールごとに交換することができるというメリットもある。
【0004】
一方、複数のヘッドヘッドモジュールをつなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドは、ヘッドモジュールをつなぎ合わせるつなぎ部において、ヘッドモジュールごとの製造上の誤差や組み立て時の位置決め誤差に起因する隙間が生じてしまう。
【0005】
インクジェットヘッドのノズルが形成されるノズル面(インク吐出面)は、インクジェットヘッドの稼動によってインク(インクミスト)や紙粉などの汚れが付着してしまう。特に、ノズルの近傍に汚れが付着すると吐出異常の原因となるので、ノズル面の洗浄処理が適宜実行され、ノズル面に付着した汚れが除去される。
【0006】
ノズル面の洗浄処理には、ノズル面に洗浄液を付与し、洗浄液の作用によりノズル面から汚れを除去し、ブレード等の払拭部材によりノズル面に付着している洗浄液を拭き取る形態がある。かかる形態では、毛細管力によりヘッドモジュール間の隙間に洗浄液が入り込んでしまうと、ノズル面を払拭しても隙間内に入り込んだ洗浄液を除去することが困難になる。
【0007】
特許文献1は、複数のヘッドユニットをつなぎ合わせて構成されたラインヘッド液体吐出装置において、ノズル形成面を払拭する払拭部材を備えるとともに、液体を吸収除去する吸収部材(多孔質部材)を備え、払拭部材によりノズル面を払拭した後に吸収部材をヘッドユニット間の隙間に接触させて、該隙間内の洗浄液を吸収除去する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−5857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された構成では、払拭部材によりノズル形成面を払拭した後に、吸収部材によってヘッドユニット間の隙間に入り込んだ洗浄液を除去する構成であり、洗浄液の除去の際にノズル形成面に吸収部材を接触させてしまう。そうすると、ヘッドユニット間の隙間に入り込んだ洗浄液は除去されるものの、ノズル形成面に設けられたノズルの開口から液体を引き出してしまう。
【0010】
ノズルから液体が引き出された状態で長時間経過すると、ノズル近傍でノズルから引き出された液体が固化してしまい、吐出異常の発生が懸念される。また、固化した液体をブレードにより払拭除去しようとすると、固化した液体をノズルの内部に押し込んでしまい、ノズル詰まりが懸念される。さらには、固化したインクによりノズル形成面が研磨されてしまい、ノズル形成面の撥液性能が低下し、ヘッドの寿命が短くなることが懸念される。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ヘッドモジュール間の隙間に入り込んだ洗浄液が効率よく除去され、除去された洗浄液の液体吐出面への残留が防止される洗浄装置、液体吐出装置及びインクジェットヘッドの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第1態様に係る洗浄装置は、複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせた構造を有するインクジェットヘッドの液体吐出面を洗浄する際に、隣接するヘッドモジュール間の隙間に掻取部材の先端部を入り込ませて、該隙間に形成された洗浄液のメニスカスを破壊することで、該隙間から洗浄液が掻き出され、さらに、隙間から掻きだされた洗浄液が払拭部材により拭き取られるので、該隙間の中に洗浄液が残留することがなく、該隙間からの洗浄液の液だれの発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置の概略構成を示す全体構成図
【図2】図1に示すインクジェットヘッドをノズル面から見た平面図
【図3】図1に示す洗浄装置によるノズル面の洗浄処理を模式的に図示した説明図
【図4】図1に示すインクジェットヘッドにおけるヘッドモジュール間の隙間から洗浄液を掻き取る掻取処理を模式的に図示した説明図
【図5】図1に示す洗浄装置の払拭部の概略構成を示す斜視図
【図6】インクジェットヘッドの短手方向における、ノズルプレート30の全長と掻取部材の全長と払拭部材の全長との関係を模式的に図示した説明図
【図7】図1に示す洗浄装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図8】図1に示す洗浄装置によるインクジェットヘッドのノズル面の洗浄処理の流れを示すフローチャート
【図9】図5に示す掻取部材の他の態様を示す斜視図
【図10】図5に示す掻取部材のさらに他の態様を示す斜視図
【図11】図5に示す掻取部材のさらに他の態様を示す斜視図
【図12】図1に示す洗浄装置を備えたインクジェット記録装置の全体構成図
【図13】図12に示すインクジェット記録装置における印字部とメンテナンス処理部との配置関係を示す説明図
【図14】図12に示すインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図
【図15】本発明の第2実施形態に係る洗浄装置における払拭部の概略構成を示す説明図
【図16】本発明の第3実施形態に係る洗浄装置における払拭部の概略構成を示す説明図
【図17】図16に示す払拭部の動作を説明する説明図
【図18】図2に示すインクジェットヘッドと異なる構造を有するインクジェットヘッドをノズル面から見た平面図
【図19】図1に示す洗浄装置が適用される他の構成を有するインクジェット記録装置の全体構成図
【図20】図19に示すインクジェット記録装置に具備される洗浄装置における洗浄液付与処理を模式的に図示した説明図
【図21】図19に示すインクジェット記録装置に具備される洗浄装置におけるノズル面の拭取処理(掻取処理)を模式的に図示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に従って本発明を実施するための形態について詳説する。
【0016】
〔洗浄装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る洗浄装置10の概略構成を示す全体構成図である。同図に示す洗浄装置10は、複数のヘッドモジュール12が長手方向に沿って一列に並べられた構造を有するインクジェットヘッド14のノズル面14Aに洗浄液を付与する洗浄液付与部20と、ノズル面14Aの洗浄液を拭き取る拭取部22と、洗浄液付与部20及び拭取部22を支持するガイド24と、を備えている。
【0017】
本例に示す洗浄装置10は固定配置されており、インクジェットヘッド14の長手方向についてインクジェットヘッド14を移動させ、インクジェットヘッド14のノズル面14Aが洗浄装置10の処理領域を通過する際に洗浄処理が施される。
【0018】
洗浄液付与部20は、洗浄液の膜(図3に符号34を付して図示)が形成される洗浄液膜保持面21を有し、洗浄液膜保持面21には洗浄液膜となる洗浄液が供給される洗浄液供給口(不図示)が設けられている。
【0019】
例えば、洗浄液供給口から5ミリリットル毎秒で洗浄液を供給し続けると、洗浄液膜保持面21上に2ミリメートルの洗浄液膜が形成される。ノズル面14Aと洗浄液膜保持面21との間のクリアランスが1ミリメートル以下となるように、ノズル面14Aと洗浄液膜保持面21とを近接させると、ノズル面14Aと洗浄液膜保持面21との間に洗浄液を濡れ広がらせつつ、ノズル面14Aに洗浄液を付与することができる。
【0020】
洗浄液付与部20の洗浄液膜保持面21の面積は、1つのヘッドモジュール12のノズル面14Aの面積未満でもよいし、1つのヘッドモジュール12のノズル面14Aの面積に対応していてもよいし、複数のヘッドモジュール12のノズル面14Aの面積に対応していてもよい。
【0021】
洗浄液は、インクに由来する固着物を溶解させる機能を有している。洗浄液の一例として、水、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGmBE)を主成分とする液体が挙げられる。
【0022】
拭取部22は、インクジェットヘッド14のヘッドモジュール12間の隙間16に入り込んだ洗浄液を掻き取る掻取部材26と、ノズル面14Aに接触させてノズル面14Aを払拭する払拭部材(ブレード)28と、を具備している。
【0023】
拭取部22は、払拭部材28よりも先に掻取部材26がノズル面14Aに接触するように、掻取部材26及び払拭部材28が配置されており、掻取部材26により掻き取られた洗浄液は払拭部材28により払拭され、ノズル面14Aに洗浄液が残らないように構成されている。
【0024】
掻取部材26及び払拭部材28は、ノズル面14Aに当接させたときに弾性変形する材料が適用される。掻取部材26及び払拭部材28に適用可能な材料として、シリコン、水素ニトリルゴム(HNBR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンなどが挙げられ、インク及び洗浄液との相性(物性)によって決められる。
【0025】
掻取部材26に適用される材料と払拭部材28に適用される材料を同一の材料とすることで、インクや洗浄液による化学変化の影響を最小限に抑えることができる。また、ノズル面14Aに接触させても、悪影響を及ぼすことがない。
【0026】
図2は、図1に示すインクジェットヘッド14をノズル面14Aから見た平面図である。先に説明したように、インクジェットヘッド14は複数のヘッドモジュール12を長手方向に沿ってつなぎ合わせた構造を有している。各ヘッドモジュール12は、ノズル開口(不図示)が形成されるノズルプレート30を有し、各ヘッドモジュール12のインクジェットヘッド14の短手方向の両側には、カバー32A,32Bが設けられている。
【0027】
なお、図2に示すノズルプレート30に設けられるノズル開口の配置は、インクジェットヘッド14の長手方向に沿って一列に配置される態様、二列の千鳥配置、マトリクス配置が適用可能である。
【0028】
図2に示すように、隣接するヘッドモジュール12の間には、それぞれのノズル開口の位置を調整するための隙間16が設けられている。隙間16のインクジェットヘッド14の長手方向の長さは、300マイクロメートル±25マイクロメール(275マイクロメートルから325マイクロメートルの範囲)に調整される。なお、隙間16の調整範囲(精度)はノズルの配置密度に応じて決められる。
【0029】
〔ノズル面洗浄処理の説明〕
図3(a),(b)は、図1に示す洗浄装置10による、ノズル面14Aの洗浄処理を模式的に図示した説明図である。図3(a),(b)おいて、インクジェットヘッド14の移動方向は矢印線により図示された方向(図中左から右方向)とする。
【0030】
図3(a)は、同図中右から二番目のヘッドモジュール12‐2のノズル面14Aに洗浄液膜34を接触させ、右端のヘッドモジュール12‐1のノズル面14Aに掻取部材26及び払拭部材28を当接させている状態が図示されている。
【0031】
同図に示す状態では、右端のヘッドモジュール12‐1と右から二番目のヘッドモジュール12‐2との間の隙間(右端の隙間)16‐1に、洗浄液付与部20から付与された洗浄液35が入り込んでいる。従来技術の課題において説明したように、ヘッドモジュール12間の隙間16が洗浄液付与部20の処理領域を通過する際に、毛細管力の作用によって洗浄液が隙間16に入り込む。
【0032】
図3(b)は、隙間16‐1の中に掻取部材26の先端部(図3(b)中不図示、図4(a)から(c)に符号26Aを付して図示)を挿入させて、隙間16‐1から洗浄液が除去される状態が図示されている。また、掻取部材26に後続する払拭部材28により、右端のヘッドモジュール12‐1のノズル面14Aが払拭され、右端のヘッドモジュール12‐1のノズル面14Aから洗浄液が除去される。
【0033】
掻取部材26は払拭部材28よりも長くノズル面14Aへの当接量が大きいので、掻取部材26の先端部26Aが隙間16に挿入された状態でも、払拭部材28が弾性変形してノズル面14Aに当接する。すなわち、隙間16からの洗浄液の掻き取りとノズル面14Aの払拭が同時に行われる。
【0034】
右から二番目のヘッドモジュール12‐2と右から三番目のヘッドモジュール12‐3との間の隙間(右から二番目の隙間16‐2)は、洗浄液付与部20の処理領域に位置しており、右から二番目の隙間16‐2には洗浄液35が入り込んでしまう。該隙間16‐2に入り込んだ洗浄液は、該隙間16‐2が掻取部材26の処理位置に移動されると掻取部材26により掻き取られる。
【0035】
図4(a)から(c)は、図1に示すインクジェットヘッドにおける隣接するヘッドモジュール12間の隙間16から洗浄液を掻き取る掻取処理を模式的に図示した説明図である。
【0036】
図4(a)は、掻取部材26及び払拭部材28がインクジェットヘッド14の移動方向(矢印線により図示した左から右への方向)下流側のヘッドモジュール12のノズル面14Aに接触し、摺動(払拭)している状態である。図4(a)に示すように、掻取部材26は先端部26Aが弾性変形してノズル面14Aに対して摺動し、払拭部材28も先端部が弾性変形してノズル面14Aに対して摺動している。
【0037】
図4(a)に示す状態では、ノズル面14Aに対して掻取部材26の先端から約3ミリメートルを当接(接触)させている。また、ノズル面14Aに対して払拭部材28の先端から約1ミリメートルを当接させている。
【0038】
図4(b)に示すように、インクジェットヘッド14がさらに移動すると、移動方向上流側(同図中右側)のヘッドモジュール12のノズル面14Aを摺動していた掻取部材26の先端部26Aは、弾性変形の復元力により隙間16の中に挿入されるとともに、該復元力の作用によって隙間16内の洗浄液35のメニスカスが破壊される。
【0039】
なお、掻取部材26の先端部26Aは、隙間16に挿入された状態で先端が隙間16の最深部に接触しないように、形状(高さ)が決められている。
【0040】
図4(b)に示すように、インクジェットヘッド14の長手方向における掻取部材26の先端部26Aの厚み(厚みの最小値)T1は、同方向における隙間16の幅Dn未満であり、掻取部材26の先端部26Aのうち、ノズル面14Aと当接して撓む部分(ラップ部)27の長さは、隙間16の幅Dn未満であり、掻取部材26の先端部26Aは、隙間16の中に挿入可能な形状を有している。
【0041】
掻取部材26の先端部26Aの厚み(厚みの最小値)T1と、隙間16の幅Dnとの関係を、T1<(Dn/2)とすると、掻取部材26の先端部26Aが隙間16により入り込みやすくなる。
【0042】
掻取部材26の「先端部26A」とは、掻取部材26のうち、インクジェットヘッド14の長手方向における厚みT1が、同方向における隙間16の幅Dn未満となっている部分である。言い換えると、掻取部材26の「先端部26A」は、掻取部材26の全長から、掻取部材26が支持される面とノズル面14Aとのクリアランスに対応する長さを除いた長さを有する先端近傍の部分である。
【0043】
図4(c)に示すように、隙間16内の洗浄液35のメニスカスが破壊されると、隙間16から洗浄液35が排出される。さらに、インクジェットヘッド14が同方向へ移動すると、掻取部材26によって掻き取られて排出され、ノズル面14Aに付着した洗浄液35’は、掻取部材26に後続する払拭部材28によりノズル面14Aから除去される。
【0044】
なお、払拭部材28とノズル面14Aとの間にも洗浄液のメニスカスが形成されるが、洗浄液量がごくわずかであり、再度、隙間16に洗浄液のメニスカスが形成されることはない。
【0045】
〔拭取部の詳細な説明〕
図5は、図1に示す洗浄装置の拭取部22の概略構成を示す斜視図である。同図に示す拭取部22は、掻取部材26及び払拭部材28が支持台29に固定支持されており、支持台29は、不図示のガイド(図1に符号24を付して図示)によって支持されている。
【0046】
掻取部材26の先端部26Aは、掻取部材26の長手方向(すなわち、インクジェットヘッド14の短手方向)について、複数の切欠部26Bが等間隔で形成された櫛歯形状を有している。先に説明したように、掻取部材26はヘッドモジュール12間の隙間16に入り込んだ洗浄液のメニスカスを破壊するとともに、メニスカスが破壊された洗浄液を隙間16から排出させる機能を備える必要がある。
【0047】
すなわち、歯部26Cは洗浄液のメニスカスを破壊する機能を有し、切欠部26Bは洗浄液を排出する機能を有している。洗浄液のメニスカスはヘッドモジュール12の短手方向における隙間16の一部に形成される場合があり、洗浄液のメニスカスが同方向におけるいずれの位置に形成されるか不明である。
【0048】
したがって、掻取部材26の先端部26Aに複数の歯部26Cを形成するとともに、複数の歯部26Cの配置ピッチをより小さくすると、洗浄液のメニスカスが形成される位置によらず、洗浄液のメニスカスに歯部26Cを当てることができる。
【0049】
一方、隙間16から洗浄液35を確実に排出させるという観点から、切欠部26Bの同方向における長さをより長くし、歯部26Cの同方向における長さLCをより短くするとよい。
【0050】
歯部26Cの同方向における長さLCと切欠部26Bの同方向における長さLBとの関係は、LC<LBとすることが好ましい。図5に示す態様では、切欠部26Bの同方向における長さLBは、歯部26Cの同方向における長さLCの約1.5倍となっている。歯部26Cの同方向における長さLCと、切欠部26Bの同方向における長さLBとの比率は、洗浄液の物性、掻取部材26の材料などの条件により適宜決められる。
【0051】
なお、掻取部材26の先端部26Aの幅T1が隙間16の間隔Dnよりも十分に小さく、例えば、掻取部材26の先端部26Aの幅T1が隙間16の間隔Dnの1/2以下であり、掻取部材26の先端部26Aの面に沿って洗浄液を排出させることが可能であれば、掻取部材26の先端部26Aに切欠部26Bを形成せずに、平板形状とすることも可能である。
【0052】
一方、隙間16内のメニスカスを破壊するために必要な剛性を得る観点から、掻取部材26の先端部26Aの幅T1を隙間16の間隔Dnよりも十分に小さくできない場合には、図5に図示した掻取部材26の先端部26Aを櫛歯形状とする態様が好ましい。
【0053】
また、掻取部材26の支持台29の上面(支持面)からの高さ(支持面に対して垂直方向の長さ)はH1と、払拭部材28の支持台29の上面からの高さH2との関係は、H1>H2となっている。
【0054】
図5に示す例では、掻取部材26の先端部26Aの厚みT1が、払拭部材28の厚みT2(払拭部材28の厚みは均一)以下となっている。
【0055】
図5に示す掻取部材26は全体が均一の厚みT1を有する形状であり、この厚みT1が隙間16の幅Dn未満となっている(図4(b)参照)。一方、払拭部材28はノズル面14Aを均一に払拭できる剛性を有していればよく、払拭部材28の厚みT2は掻取部材26の厚みT1以上であってもよい。
【0056】
掻取部材26の長手方向における全長L1は、インクジェットヘッド14の短手方向における隙間16の全長に対応していればよい。また、払拭部材28の長手方向における全長L2は、少なくともインクジェットヘッド14の短手方向におけるノズル面14Aの全長に対応していればよい。
【0057】
図6は、インクジェットヘッド14の短手方向(同図における上下方向)におけるノズルプレート30の全長Lnと、掻取部材26の長手方向における全長L1と、払拭部材28の長手方向における全長L2と、の関係を模式的に図示した説明図であり、図2の一部を拡大した図である。
【0058】
洗浄液がノズルプレート30(ノズル面14A)のみに付着する場合(例えば、カバー32A,32Bとノズル面14Aとの間に段差があり、ノズル面14Aがカバー32A,32Bよりも突出している場合)は、同方向における隙間16の全長はノズルプレート30の全長Lnとなる。
【0059】
そうすると、Ln≦L1となり、Ln≦L2となる。なお、掻取部材26の長手方向における全長L1と、払拭部材28の長手方向における全長L2との関係は、掻取部材26により掻き取られた洗浄液を払拭部材28により確実に除去することを考慮すると、L1<L2とすることが好ましい。なお、L1=L2としてもよい。
【0060】
なお、掻取部材26の撓み量(弾性変形量)を考慮して、掻取部材26が弾性変形したときに掻取部材26の先端部26Aと払拭部材28が接触しないように、掻取部材26と払拭部材28との配置間隔が決められている。
【0061】
以上説明した掻取部材26は、インクジェットヘッド14の短手方向における隙間16の長さに対応する同方向の長さを有しているが、同方向における隙間16の長さに満たない短尺の掻取部材を、同方向における隙間16の長さにわたって複数設ける態様も可能である。
【0062】
例えば、複数の短尺の掻取部材を同方向についてオーバーラップさせながら千鳥状に配置することも可能である。一枚ものの長尺の掻取部材は、厚みを薄くしてしまうと剛性が弱くなるので、同方向について湾曲してしまうことがあり得る。そうすると、掻取部材が隙間16の中に挿入されないことが想定される。
【0063】
したがって、湾曲しにくい短尺の掻取部材を同方向における隙間16の長さにわたって複数配置することで、厚みが薄い掻取部材でも確実に隙間16の中に挿入させることが可能となる。
【0064】
〔制御系の構成〕
図7は、図1に示す洗浄装置10の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、洗浄装置10はシステム制御部50によって全体が統括制御されている。すなわち、システム制御部50は、洗浄液付与制御部52を介して洗浄液を供給するためのポンプ54を制御するとともに、洗浄液の流路に設けられたバルブ56の開閉を制御する。
【0065】
また、システム制御部50は、センサ60から送出される検出信号に基づいて、装置各部に指令信号を送出する。センサ60の例として、洗浄液流路における液量(流速)を検出する液量検出センサや、洗浄液が貯留される洗浄液タンクに設けられる残量センサ、洗浄液の温度を検出する温度センサ、インクジェットヘッド14の位置を検出するセンサなどが挙げられる。
【0066】
例えば、洗浄液の流量(流速)の検出結果に基づいて流速が不足していると判断されると、システム制御部50から洗浄液付与制御部52へポンプ54の回転速度を上げて流量を増やすように指令信号が送出される。
【0067】
また、インクジェットヘッド14の位置情報(どのヘッドモジュール12に対して洗浄処理をしているかを判断する情報)が取得されると、ポンプ54のオンオフやバルブ56のオンオフが適宜切り換えられる。
【0068】
メモリ62は、システムパラメータを格納する手段や、センサ60の検出結果を蓄積する手段、各種処理に用いられるデータの一次記憶領域などに適用される。なお、図7に示す構成は一例であり、構成の変更、追加、削除が適宜可能である。
【0069】
本例では、インクジェットヘッド14の長手方向と平行方向へインクジェットヘッド14を移動させて、ノズル面14Aに対して洗浄処理が施される形態を示したが。固定されたインクジェットヘッド14に対して洗浄装置10を移動させてもよいし、インクジェットヘッド14及び洗浄装置10をともに移動させてもよい。
【0070】
洗浄装置10を移動させる態様では、洗浄装置10を移動させる移動機構を備えるとともに、該移動機構に連結されるモータを備え、かつ、図7に示すシステム制御部50から該モータの動作を制御するモータ制御部に対して指令信号が送出される。
【0071】
〔洗浄処理の制御の説明〕
図8は、洗浄装置10によるインクジェットヘッド14のノズル面14Aの洗浄処理の流れを示すフローチャートである。
【0072】
インクジェットヘッド14のノズル面14Aの洗浄処理が開始されると(ステップS10)、インクジェットヘッド14の長手方向と平行方向へインクジェットヘッド14を一定速度で移動させる(ステップS12)。
【0073】
処理対象のヘッドモジュール12のノズル面14Aが洗浄液付与部20の処理領域に到達すると、図1に示す洗浄液付与部20の洗浄液膜保持面21へ洗浄液の供給が開始される(図8のステップS14)。さらに、インクジェットヘッド14が移動して、洗浄液が付与されたノズル面14Aが拭取部22の処理領域に到達すると、掻取部材26及び払拭部材28がノズル面14Aと当接して弾性変形しながら、当該ノズル面14Aが払拭される(ステップS16)。
【0074】
また、ステップS18において、洗浄液の供給開始からの経過時間が監視される。すなわち、洗浄液の供給開始からの経過時間によって、洗浄液付与部20の洗浄液膜保持面21に洗浄液膜が形成されたか否かが判断される。ステップS18において、洗浄液の供給開始から所定時間が経過していないと判断されると(No判定)、洗浄液の供給が継続される。
【0075】
一方、ステップS18において洗浄液の供給開始から所定時間が経過したと判断されると(Yes判定)、洗浄液の供給が停止される(ステップS20)。ステップS18及びステップS20の実行中もインクジェットヘッド14の移動が継続され、ヘッドモジュール12間の隙間16が掻取部材26の位置に到達すると隙間16から洗浄液が掻き取られ、隙間16から洗浄液が掻き取られた洗浄液及びノズル面14Aに付着している洗浄液が払拭部材28により払拭除去される(ステップS16)。
【0076】
ステップS22において、次の処理対象のヘッドモジュール12が洗浄液付与部20の処理領域に到達したか否かが判断される。次の処理対象のヘッドモジュール12が洗浄液付与部20の処理領域に到達すると(Yes判定)、インクジェットヘッド14の移動を継続させつつ、ステップS14からステップS20の処理が繰り返される。
【0077】
ステップS22において、最後のヘッドモジュール12の洗浄処理が終了したと判断されると(No判定)、インクジェットヘッド14の移動が停止され(ステップS24)、当該洗浄処理が終了される(ステップS26)。
【0078】
〔掻取部材の変形例〕
図9から図11は、図5に示す掻取部材26の他の態様を示す斜視図である。以下の説明では、これまでに説明した部分と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0079】
図9に示す拭取部22’は、ブラシ状の掻取部材70を有している。すなわち、掻取部材70は、インクジェットヘッド14の短手方向における隙間16の全長に対応する長さにわったて、略円柱形状又は略円すい形状を有する複数のピン(柱)72が設けられた構造を有している。ヘッドモジュール12間の隙間16に挿入されるピン72の先端部72Aにおける直径の最大値は、インクジェットヘッド14の長手方向における隙間16の幅Dn未満である。
【0080】
ピン72の本数、配置間隔、配置パターンは、隙間16への挿入のしやすさ、隙間16からの洗浄液の排出のしやすさ、隙間16のどの位置に洗浄液のメニスカスが形成されやすいかといった観点から決められる。
【0081】
図10に示す拭取部22”の掻取部材80は、図5に示す掻取部材26の先端部26Aの平面を鋭角、又は掻取部材26の全体の厚みよりも十分に小さい平面とした態様であり、掻取部材80の先端部80Aの両面にテーパ形状(傾斜面)82A,82Bが形成されている。図11に示す掻取部材80’は、先端部80A’の一方の面(払拭部材28側の面)のみがテーパ形状(傾斜面)82’とされ、掻取部材80’の先端が鋭角にされている。
【0082】
すなわち、図10に示す掻取部材80は厚み方向に沿う断面線による断面形状が三角形形状(二等辺三角形)、又は上底の長さが下底の長さよりも十分に小さい台形形状(等脚台形)である。
【0083】
また、図11に示す掻取部材80’は、厚み方向に沿う断面線による断面形状が直角三角形、又は上底の長さが下底の長さよりも十分に小さく、かつ、上底と下底とを結ぶ辺と下底により構成される角の一方が直角となる台形形状である。
【0084】
このように、掻取部材80(80’)の先端部80A(80A’)に傾斜面を形成することで、掻取部材80(80’)の先端部80A(80A’)が隙間16に入りやすくなるとともに、隙間16から掻き取られた洗浄液を排出しやすくなる。払拭部材28による払拭を考慮すると、少なくとも払拭部材28側の面は傾斜面が形成されるとよい。
【0085】
上記の如く構成された洗浄装置10によれば、ヘッドモジュール12間の隙間16に挿入可能な形状の先端部26Aを有する掻取部材26を具備し、掻取部材26が隙間16に挿入されることで洗浄液のメニスカスが破壊され、隙間16内の洗浄液が掻き取られる。
【0086】
さらに、掻取部材26の後段側に払拭部材28を具備しているので、隙間16から掻き取られた洗浄液は払拭部材28により払拭除去される。
【0087】
掻取部材26の先端部26Aの厚みの最大値T1を隙間16の幅Dn未満とすることで、掻取部材26の先端部26Aが隙間16へ入りやすくなる。さらに、払拭部材28の長さよりも掻取部材26の長さを大きくすることで、払拭部材28をノズル面14Aに当接させた状態でも、掻取部材26の先端部26Aが隙間16へ入りやすくなる。
【0088】
また、掻取部材70をブラシ状とすることで、ブラシを構成するピン72の先端部72Aが隙間16に入りやすくなり、かつ、隙間16から洗浄液を排出しやすくなる。さらに、掻取部材80,80’のように先端部80A,80A’に傾斜面を形成して先端を鋭角とすることで、先端部80A,80A’が隙間16に入りやすくなり、かつ、隙間16から洗浄液を排出しやすくなる。
【0089】
〔インクジェット記録装置への適用例〕
次に、洗浄装置10の適用例について説明する。
【0090】
(全体構成)
図12は、洗浄装置10を具備するインクジェット記録装置100の全体構成図である。同図に示すインクジェット記録装置100は、記録媒体102を保持して搬送する記録媒体搬送部104と、記録媒体搬送部104に保持された記録媒体102に対して、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)に対応するカラーインクを吐出させるインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを含む印字部106と、を含んで構成されている。
【0091】
記録媒体搬送部104は、記録媒体102が保持される記録媒体保持領域に多数の吸着穴(不図示)が設けられた無端状の搬送ベルト108と、搬送ベルト108が巻き掛けられる搬送ローラ(駆動ローラ、従動ローラ)110,112と、記録媒体保持領域の搬送ベルト108の裏側(記録媒体102が保持される記録媒体保持面と反対側の面)に設けられ、記録媒体保持領域に設けられた不図示の吸着穴に負圧を発生させるチャンバー114と、チャンバー114に負圧を発生させる真空ポンプ116と、を含んでいる。
【0092】
記録媒体102が搬入される搬入部118には、記録媒体102の浮きを防止するための押圧ローラ120が設けられるとともに、記録媒体102が排出される排出部122にもまた、押圧ローラ124が設けられている。
【0093】
搬入部118から搬入された記録媒体102は、記録媒体保持領域に設けられた吸着穴から負圧が付与され、搬送ベルト108の記録媒体保持領域に保持される。
【0094】
記録媒体102の搬送路上には、印字部106の前段側(記録媒体搬送方向上流側)に、記録媒体102の表面温度を所定範囲に調整するための温度調節部126が設けられるとともに、印字部106の後段側(記録媒体搬送方向下流側)に、記録媒体102上に記録された画像を読み取る読取装置(読取センサ)128が設けられている。
【0095】
搬入部118から搬入された記録媒体102は、搬送ベルト108の記録媒体保持領域に吸着保持され、温度調節部126による温度調節処理が施された後に、印字部106において画像記録が行われる。
【0096】
画像記録がされた記録媒体102は、読取装置128によって記録画像(テストパターン)が読み取られた後に、排出部122から排出される。
【0097】
(印字部の構成)
印字部106に具備されるインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、記録媒体102の全幅を超える長さにわたって複数のノズルが配置されたフルライン型のインクジェットヘッドである。また、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせた構造を有している(図2参照)。
【0098】
図1に示すインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは、記録媒体搬送方向の上流側からこの順番で配置されている。フルライン型のインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yと記録媒体102とを相対的に一回だけ移動させるシングルパス方式により、記録媒体102全域にわたって記録画像を記録することができる。
【0099】
なお、印字部106は上述した形態に限定されない。例えば、LC(ライトシアン)やLM(ライトマゼンタ)に対応するインクジェットヘッド106を具備してもよい。また、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの配置順も適宜変更可能である。
【0100】
図12に示すインクジェット記録装置100は、不図示のインク供給部を具備している。インク供給部は、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yに供給されるインクを貯蔵するインクタンクを色ごと(ヘッドごと)に備えている。色ごとのインクタンクのそれぞれとインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yとは、不図示のインク供給路により連通されている。
【0101】
また、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの吐出方式も限定されない。圧電素子の撓み変形を利用する圧電方式や、インクの膜沸騰現象を利用するサーマル方式などを適用することができる。
【0102】
(メンテナンス処理部の説明)
図13は、図12に示すインクジェット記録装置100における印字部107とメンテナンス処理部130との配置関係を示す説明図である。図13に示すように、メンテナンス処理部130は、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを記録媒体搬送部104上の画像形成位置から、記録媒体102の搬送方向と略直交する方向に水平移動させた位置に配置されている。
【0103】
メンテナンス処理部130は、図1から図11を用いて説明した洗浄装置10と、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yに対して吸引処理及びパージ処理を施すキャップ部132と、を備えて構成されている。図13では、1ヘッド分の洗浄装置10及びキャップ部132が図示されているが、洗浄装置10及びキャップ部132はインクジェットヘッドごとに、インクジェットヘッドの数だけ設けられている。
【0104】
インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを画像形成位置からメンテナンス位置へ移動させるには、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを記録媒体搬送部104上の画像形成位置から一旦上方へ退避させ、さらに、記録媒体102の搬送方向と直交する方向へ水平移動させる。インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yが洗浄装置10の処理領域に到達すると、洗浄装置10を上方へ移動させて(又は、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを下方へ移動させて)、ノズル面14A(図1参照)の洗浄処理が実行される。
【0105】
ノズル面14Aの洗浄処理が終了すると、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yをキャップ部132の処理領域へ移動させ、ノズル面14Aにキャップ部132を密着させて、吸引処理又パージ処理が実行される。
【0106】
キャップ部132は、排出流路134を介して廃インクタンク136と連通され、排出流路134には、ポンプ138が設けられる。ノズル面14Aにキャップ部132を密着させ状態でポンプ138を動作させると、ノズルを介してインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Y内のインクが吸引される。
【0107】
このようにして、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yのメンテナンス処理が終了すると、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yは画像形成位置に移動する。
【0108】
インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yを上下方向及び水平方向へ移動させる移動機構には、周知技術の水平搬送機構、上下搬送機構を適用することができる。
【0109】
(制御系の構成)
図14は、インクジェット記録装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置100は、通信インターフェース170、システム制御部172、搬送制御部174、画像処理部176、ヘッド駆動部178を備えるとともに、画像メモリ180、ROM182を備えている。
【0110】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ184から送られてくるラスター画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース170は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース170は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0111】
システム制御部172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置100の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ180及びROM182のメモリコントローラとして機能する。
【0112】
すなわち、システム制御部172は、通信インターフェース170、搬送制御部174等の各部を制御し、ホストコンピュータ184との間の通信制御、画像メモリ180及びROM182の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
【0113】
ホストコンピュータ184から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、画像処理部176によって所定の画像処理が施される。
【0114】
画像処理部176は、画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッド駆動部178に供給する制御部である。
【0115】
画像処理部176において所要の信号処理が施されると、該印字データ(ハーフトーン画像データ)に基づいて、ヘッド駆動部178を介してインクジェットヘッド140の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。なお、ヘッド駆動部178は、ヘッドモジュール12ごとに複数のブロックから構成されていてもよい。
【0116】
これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図17に示すヘッド駆動部178には、インクジェットヘッド140の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0117】
搬送制御部174は、画像処理部176により生成された印字データに基づいて記録媒体102(図16参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図14における搬送駆動部186は、記録媒体102を搬送する記録媒体搬送部104の駆動ローラ110(112)を駆動するモータが含まれており、搬送制御部174は該モータのドライバーとして機能している。
【0118】
画像メモリ(一時記憶メモリ)180は、通信インターフェース170を介して入力された画像データを一旦格納する一時記憶手段としての機能や、ROM182に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部176の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ180には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
【0119】
ROM182は、システム制御部172のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部172を通じてデータの読み書きが行われる。ROM182は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
【0120】
メンテナンス制御部188は、図7に示した構成を適用することができる。図7に示した構成に加えて、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの、画像形成位置とメンテナンス位置との間の移動を制御するインクジェットヘッド移動制御部を備えている。
【0121】
さらに、メンテナンス制御部188は、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの位置を検出する検出部(図7のセンサ60)を備え、インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの位置に応じてインクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yの移動速度が調整されるとともに、洗浄液の供給開始タイミング、供給停止タイミングが決められる。
【0122】
パラメータ記憶部190は、インクジェット記録装置100の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部172は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。
【0123】
プログラム格納部192は、インクジェット記録装置100を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。システム制御部172(又は装置各部)は、装置各部の制御を実行する際にプログラム格納部192から必要な制御プログラムが読み出され、該制御プログラムは適宜実行される。
【0124】
なお、図7のシステム制御部50は、図14のシステム制御部172と共通化することができ、図7のメモリ62は、図14のパラメータ記憶部190やプログラム格納部192と共通化することができる。
【0125】
インクジェットヘッド106K,106C,106M,106Yのメンテナンスは、ジョブ間のインターバル中やジョブ開始時などに定期的に実行してもよいし、不図示のユーザインターフェイスを用いてオペレータによる入力を受けて実行してもよい。
【0126】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る洗浄装置について説明する。なお、以下の説明において、先に説明した第1実施形態に係る洗浄装置10と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0127】
図15は、本発明の第2実施形態に係る洗浄装置200における、拭取部222の概略構成を示す説明図である。同図に示す拭取部222は、掻取部材26を支持する支持台229Aに超音波振動子202が設けられている。なお、払拭部材28を支持する支持台229Bは、掻取部材26を支持する支持台229Aと別体となっている。
【0128】
超音波振動子202は、配線204,206を介して不図示の駆動回路から駆動電圧が印加されると、超音波振動子202の振動に同期して、掻取部材26及び支持台229Aを所定の周波数で振動させることができる。
【0129】
ヘッドモジュール12間の隙間16に掻取部材26が挿入されたタイミングで超音波振動子202を動作させると、隙間16内の洗浄液のメニスカスを効率よく破壊することができる。
【0130】
超音波振動子202には、駆動電圧の周波数により振動周波数を自由に可変することができ、駆動電圧の電圧により振動の振幅を自由に可変することができる圧電素子を適用することができる。超音波振動子202の振動周波数や振幅は、洗浄液の物性や隙間16の幅などの条件により適宜決められる。
【0131】
また、超音波振動子202による掻取部材26の振動は、水平面と平行方向でもよいし、水平面と直交する方向(鉛直方向)でもよい。水平面と平行に掻取部材26を振動させる場合には、掻取部材26を長手方向に振動させてもよいし、短手方向に振動させてもよい。
【0132】
さらに、掻取部材26を長手方向について分割し、分割された単位ごとに超音波振動子202を備え、分割単位ごとに振動させてもよい。
【0133】
第2実施形態に係る洗浄装置200によれば、隙間16内の洗浄液に振動を与えることで、隙間16内の洗浄液のメニスカスを効率よく破壊することができ、隙間16からの洗浄液を効率よく排除することができる。
【0134】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る洗浄装置について説明する。図16は、発明の第3実施形態に係る洗浄装置300における、拭取部322の概略構成を示す説明図である。また、図17は、図16に示す払拭部の動作を説明する説明図である。
【0135】
図16に示すように、拭取部322は中空の円筒形状を有する掻取部材326がインクジェットヘッド14(図2参照)の短手方向における隙間16の全長にわたって設けられている。
【0136】
図17に示すように、掻取部材326の先端の直径(外径)T11は、インクジェットヘッド14の長手方向における隙間16の幅Dn未満であり、掻取部材326の先端部(隙間16に挿入される部分)の直径の最大値は、同方向における隙間16の幅Dn未満である。
【0137】
図16に示すように、掻取部材326を支持する支持台329Aは、掻取部材326の中空部327(と連通する吸引流路(不図示)が設けられて、該吸引流路は支持台329Aの掻取部材326と反対側の面に設けられるマニホールド(減圧室)302と連通している。なお、マニホールド302は支持台329Aの内部に設けられていてもよい。
【0138】
マニホールド302は、ジョイント304及びチューブ306を介して吸引ポンプ308と接続されており、吸引ポンプ308を動作させるとマニホールド302の内部が負圧となり、掻取部材326の中空部327に負圧を発生させることができる。
【0139】
ヘッドモジュール12間の隙間16に掻取部材326の先端部326Aが挿入されたタイミングで、図16の吸引ポンプを動作させると、掻取部材326の中空部327を介して、隙間16内の洗浄液を吸引除去することができる。
【0140】
なお、掻取部材326の本数、配置間隔、配置パターンは、隙間16への挿入のしやすさ、隙間16からの洗浄液の排出のしやすさ、隙間16のどの位置に洗浄液のメニスカスが形成されやすいかといった観点から決められる。また、吸引ポンプ308の吸引圧力は、洗浄液の物性や隙間16の幅などの条件により適宜決められる。
【0141】
第3実施形態に係る洗浄装置300によれば、隙間16内の洗浄液を吸引除去することができ、隙間16からの洗浄液を効率よく排除することができる。図17には、掻取部材326の先端部326Aを隙間16の内部に挿入して、隙間16内の洗浄液を吸引除去する態様を例示したが、掻取部材326の先端部326Aを隙間16内に挿入せずに、隙間16内の洗浄液を吸引除去することも可能である。
【0142】
〔応用例〕
図18は、図2に示すインクジェットヘッドと異なる構造を有するインクジェットヘッドのノズル面を示す平面図である。図18に示すインクジェットヘッド14’は、ヘッドモジュール12’(ノズルプレート30’)の平面形状が平行四辺形であり、ヘッドモジュール12’間の隙間16’はインクジェットヘッド14’の短手方向に対して斜め方向となる。
【0143】
かかる構造を有するインクジェットヘッド14’に対して、掻取部材26’はインクジェットヘッド14’の短手方向に対して斜めに傾けられ、隙間16’と略平行になるように配置される。
【0144】
なお、払拭部材28は、インクジェットヘッド14’の短手方向と平行に配置されてもよいし、掻取部材26’と同様にインクジェットヘッド14’の短手方向に対して斜めに傾けられ、隙間16’と略平行になるように配置されてもよい。
【0145】
すなわち、ヘッドモジュール12’間の隙間16’の向きと略平行になるように、掻取部材26’をインクジェットヘッド14’の短手方向に対して傾けて配置することで、掻取部材26’を隙間16’に挿入しやすくなる。
【0146】
なお、掻取部材26’の向きが隙間16’の向きに対してややずれていても、掻取部材26’を隙間16’内に挿入することができればよい。
【0147】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係る洗浄装置について説明する。
【0148】
(インクジェット記録装置の全体構成)
図19は、本発明の第4実施形態に係る洗浄装置が具備されるインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すインクジェット記録装置400は、記録媒体414を圧胴の外周面に保持して搬送する圧胴搬送方式が適用される。
【0149】
また、記録媒体414にインクを吐出させるインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yは、ノズル面が圧胴(描画胴444)の外周面の法線に対して直交するように、水平面に対して斜めに傾けられて配置される。
【0150】
図19に示すインクジェット記録装置400は、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yに対してメンテナンス処理を施すメンテナンス処理部(不図示)を備えている(図13参照)。
【0151】
該メンテナンス処理部は、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yのノズル面に洗浄液を付与して、ノズル面の洗浄を行う洗浄装置(図20に符号412を付して図示)を備えている。
【0152】
図19に示すインクジェット記録装置400は、画像形成前の記録媒体414が収納される記録媒体収納部420と、記録媒体収納部420から送り出された記録媒体414に処理液を塗布する処理液塗布部430と、処理液が塗布された記録媒体414にカラーインクを吐出させて、所望のカラー画像を形成する描画部440と、カラー画像が形成された記録媒体414を乾燥させる乾燥処理部450と、乾燥処理後の記録媒体414に対して定着処理を施す定着処理部460と、定着処理後の記録媒体414を排出させる排出部470と、を備えている。
【0153】
給紙トレイ422を介して渡し胴432に受け渡された記録媒体414は、処理液胴434のグリッパー480A,480Bに先端部を挟持され、処理液胴434に支持されて、処理液胴434の回転に従って処理液胴434の外周面に沿って搬送される。
【0154】
処理液胴434により回転搬送される記録媒体414は、処理液胴434の外周面と対向する位置に配置される処理液塗布装置436の処理領域に達すると、画像が形成される面に処理液を塗布される。処理液塗布装置436により塗布される処理液は、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yから吐出されるカラーインクと反応して、カラーインクに含まれる着色剤を凝集又は不溶化させる機能を有している。
【0155】
処理液が塗布された記録媒体414は、渡し胴442を介して描画胴444へ受け渡され、描画胴444の外周面に保持されて、描画胴444の外周面に沿って回転搬送される。
【0156】
インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの記録媒体搬送方向上流側の直前には用紙押さえローラ446が配置されており、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの直下に進入する直前に用紙押さえローラ446により記録媒体414を描画胴444の外周面へ密着させるように構成される。
【0157】
描画胴444によって回転搬送される記録媒体414は、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yからカラーインクが吐出され、処理液が塗布された画像形成面にカラー画像が形成される。
【0158】
インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yは、図2や図18に図示したように、複数のヘッドモジュール12(12’)がインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの長手方向に沿って一列につなぎ合わせられた構造を有している。
【0159】
カラー画像が形成された記録媒体414は、渡し胴452を介して乾燥胴454へ受け渡され、乾燥胴454の外周面に支持されて、乾燥胴454の回転に従って乾燥胴454の外周面に沿って回転搬送される。
【0160】
乾燥胴454により回転搬送される記録媒体414は、乾燥処理装置456から乾燥処理が施される。乾燥処理には、ヒータによる加熱、ファンによる乾燥風(加熱風)の吹きつけ、又はこれらの組み合わせが適用される。
【0161】
乾燥処理が施された記録媒体414は、渡し胴462を介して定着胴464へ受け渡される。定着胴464に受け渡された記録媒体414は、乾燥胴454の外周面に保持されて、乾燥胴454の回転に従って乾燥胴454の外周面に沿って回転搬送される。
【0162】
乾燥胴454により回転搬送される記録媒体414上に形成された画像は、ヒータ466により加熱処理が施されるとともに、定着ローラ468により加圧処理が施される。定着ローラ468の記録媒体搬送方向下流側に設けられるインラインセンサ482は、加熱及び加圧による定着処理が施された記録媒体414(画像)を撮像する手段であり、インラインセンサ482の撮像結果に基づいて、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yの吐出異常が判断される。
【0163】
インラインセンサ482による撮像領域を通過した記録媒体414は、排出部470へ送られる。排出部470は、張架ローラ472A,472Bに巻き掛けられたチェーン474により記録媒体414をストッカー476へ搬送するように構成されている。
【0164】
図19に示すインクジェット記録装置400は、描画部440に対して、記録媒体搬送方向と直交する方向(図19の紙面を貫く方向)の離れた位置に、インクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yにメンテナンス処理を施すメンテナンス処理部が配置されている(図13参照)。
【0165】
メンテナンス処理部の構成は、図13に示すメンテナンス処理部130と同様の構成を適用することができ、以下に説明する洗浄装置が具備されている。なお、図19に図示した装置構成は、適宜構成の削除、構成の変更、及び他の構成の追加が可能である。
【0166】
(洗浄装置の説明)
図20は、本例に示す洗浄装置における洗浄液付与処理を模式的に図示した説明図である。また、図21は本例に示す洗浄装置におけるノズル面の拭取処理(掻取処理)を模式的に図示した説明図である。
【0167】
以下に説明する洗浄装置410は、インクジェットヘッド448(図19のインクジェットヘッド448M,448K,448C,448Yを一括して図示)のノズル面448Aに洗浄液を付与する洗浄液付与部402(図20に図示)と、ノズル面448Aに付着した洗浄液を拭き取る拭取部404と(図21に図示)、を備える点で、図1から図14を用いて説明した洗浄装置10と共通している。
【0168】
一方、洗浄装置410は、水平面に対して傾斜しているインクジェットヘッド448のノズル面448Aに対応している点で、図1から図14を用いて説明した洗浄装置10と相違している。以下に、主として図1から図14を用いて説明した洗浄装置10との相違点について説明する。
【0169】
図20に示すように、洗浄装置410はインクジェットヘッド448のノズル面448Aが水平面に対して傾斜しているのに対応して、洗浄液付与部402の洗浄液膜保持面412Aがノズル面448Aと平行に対向するように、水平面に対して傾けられている。
【0170】
洗浄液膜保持面412Aへ洗浄液を供給する洗浄液供給口413は、洗浄液膜保持面412Aの傾斜の上部(ノズルプレート448Bの傾斜の最上部に対応する位置、又は該最上部よりもさらに上側の位置)に設けられており、洗浄液供給口413からノズル面448Aと洗浄液膜保持面412Aとの間に供給された洗浄液は、ノズル面448Aと洗浄液膜保持面412Aとの間に濡れ広がりながら洗浄液膜を形成し、洗浄液膜保持面412Aを傾斜の上部から下部へ流下する。
【0171】
図示を省略するが、洗浄液膜保持面412Aの傾斜の最下部には、洗浄液膜保持面412Aを流れ落ちた洗浄液が回収される洗浄液回収部が具備される。洗浄液回収部に回収された洗浄液は、汚れの除去などの再利用処理が施された後に再利用可能である。
【0172】
図21に示すように、拭取部404に具備される掻取部材416及び払拭部材417は、先端部(先端面)がノズル面448Aと略平行になるように、水平面に対して傾けられている。掻取部材416は、インクジェットヘッド448の短手方向におけるヘッドモジュール間の隙間の長さ未満の同方向の長さを有し、かつ、洗浄液供給口413(図20参照)に対応して掻取部材416が支持される支持面の傾斜の上側に配置されている。
【0173】
図21に図示した掻取部材416は、インクジェットヘッド448の短手方向におけるヘッドモジュール間の隙間の長さの1/2の長さを有している。ヘッドモジュール間の隙間における洗浄液供給口413に対応する位置(隙間の傾斜最上部近傍位置)は、洗浄液が入り込みやすいので、ヘッドモジュール間の隙間における洗浄液供給口413に対応する隙間の傾斜最上部近傍位置に合わせて掻取部材416が配置されている。
【0174】
隙間の傾斜最上部近傍位置で洗浄液のメニスカスが破壊されると、隙間の傾斜に沿って洗浄液が流れ落ちるので、効果的に隙間から洗浄液を排出させることができる。なお、図21に図示した掻取部材416に対して、図9から図11に図示した掻取部材70,80,80’の形状を適用可能である。また、図15及び図16に図示した構成を適用することも可能である。
【0175】
第4実施形態に係る洗浄装置410によれば、水平面に対してノズル面448Aが傾斜するように傾けられて配置されたインクジェットヘッド448のノズル面448Aを洗浄する際に、ヘッドモジュール間の隙間から洗浄液を掻き取る掻取部材416が、洗浄液が液入り込みやすい該隙間の傾斜の最上部近傍位置に配置されるので、隙間に入り込んだ洗浄液を効率よく排出させることができる。
【0176】
また、インクジェットヘッドの短手方向における掻取部材416の長さを同方向における隙間の全長よりも短くすることで、掻取部材416がノズル面448Aを摺動する面積をより小さくすることができ、掻取部材416の摺動によるノズル面448Aの損傷をより小さくすることができる。
【0177】
なお、本発明の適用範囲は、記録媒体上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置に限定されない。例えば、樹脂粒子や金属粒子を含有する機能性液体により、所定のパターン(マスクパターン、配線パターン)を形成するパターン形成装置なと、インクジェット方式により媒体上に液体を噴射させる液体吐出装置に広く適用することが可能である。
【0178】
〔付記〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す態様を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0179】
(第1態様):第1態様に係る洗浄装置は、複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭部材と、を備えている。
【0180】
第1の態様によれば、複数のヘッドモジュールをつなぎ合わせた構造を有するインクジェットヘッドの液体吐出面を洗浄する際に、隣接するヘッドモジュール間の隙間に掻取部材の先端部を入り込ませて、該隙間に形成された洗浄液のメニスカスを破壊することで、該隙間から洗浄液が掻き出され、さらに、隙間から掻きだされた洗浄液が払拭部材により拭き取られるので、該隙間の中に洗浄液が残留することがなく、該隙間からの洗浄液の液だれの発生が防止される。
【0181】
(第2態様):第2態様に係る洗浄装置は、前記掻取部材及び前記払拭部材を前記液体吐出面に当接させたときに、前記掻取部材の前記液体吐出面への当接量は、前記払拭部材の前記液体吐出面への当接量を超えている。
【0182】
かかる態様によれば、払拭部材が液体吐出面に当接していても、掻取部材を隙間の中へ挿入することができる。
【0183】
すなわち、掻取部材及び払拭部材が液体吐出面に当接せず変形してない状態で、掻取部材は払拭部材よりも長くなるように構成される。
【0184】
(第3態様):第3態様に係る洗浄装置は、前記掻取部材の先端部は、前記隙間の前記長手方向における長さの最大値未満の同方向における長さを有している。
【0185】
かかる態様によれば、隙間の前記長手方向の長さ(隙間の幅)よりも掻取部材の先端部の同方向の長さ(掻取部材の厚み)を小さくすることで、掻取部材に先端部を隙間に挿入しやすくなる。
【0186】
(第4態様):第4に係る洗浄装置は、前記掻取部材は、平板状の部材であり、前記先端部は1つ以上の切り欠きが設けられる櫛歯形状を有している。
【0187】
かかる態様によれば、平板状の掻取部材の先端部に切り欠きを設けることで、該切り欠きから洗浄液が排出されやすくなる。
【0188】
(第5態様):第5に係る洗浄装置は、前記掻取部材の先端部は、前記長手方向に沿う断面線による断面形状が略三角形形状又は略台形形状を有している。
【0189】
かかる態様によれば、掻取部材の先端をより細くすることで、掻取部材の先端部が隙間に挿入しやすくなる。
【0190】
(第6態様):第6に係る洗浄装置は、前記掻取部材は、略円柱形状又は略円すい形状のピンが1つ以上設けられる構造を有している。
【0191】
かかる態様において、掻取部材をいわゆるブラシ状にすることで、掻取部材の先端部が隙間に挿入しやすくなるとともに、隙間から洗浄液を排出しやすくなる。
【0192】
(第7態様):第7に係る洗浄装置は、前記掻取部材を振動させる加振手段を備えている。
【0193】
かかる態様によれば、掻取部材の先端部が隙間に挿入された状態で、掻取部材を振動させることで、隙間の中に形成された洗浄液のメニスカスを効率よく破壊することができる。
【0194】
(第8態様):第8に係る洗浄装置は、前記掻取部材は、前記先端部に前記隙間から洗浄液を吸引する吸引口が設けられるとともに、前記吸引口と連通する吸引流路が設けられ、前記吸引流路を介して吸引口に吸引圧力を発生させる吸引手段を備えている。
【0195】
かかる態様によれば、掻取部材の先端部が隙間に挿入された状態で、掻取部材の先端部から洗浄液を吸引することで、隙間の中の洗浄液を効率よく排除することができる。
【0196】
(第9態様):第9態様に係る液体吐出装置は、複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭部材と、を備えている。
【0197】
(第10態様):第10に係る液体吐出装置は、前記インクジェットヘッドの長手方向について、前記インクジェットヘッドと前記洗浄装置、前記掻取部材及び前記払拭部材とを相対的に移動させる移動手段を備えている。
【0198】
かかる態様によれば、インクジェットヘッドと掻取部材及び払拭部材とを相対的に移動させながら、隙間の中の洗浄液を掻き取ることができ、かつ、掻き取られた洗浄液及び液体吐出面に付着した洗浄液を除去することができる。
【0199】
(第11態様):第11に係る液体吐出装置は、前記掻取部材は、前記払拭部材と一体に構成され、前記移動手段は、前記インクジェットヘッドと前記掻取部材及び前記払拭部材とを前記長手方向について相対移動させる。
【0200】
かかる態様において、掻取部材が液体吐出面に当接したときに、掻取部材と払拭部材が接触しないように、掻取部材及び払拭部材の位置が決められている。
【0201】
(第12態様):第12に係る液体吐出装置は、前記インクジェットヘッドは、液体吐出面が水平面に対して傾けられており、前記掻取部材は、前記液体吐出面に対応して水平面に対して傾けられて配置されるとともに、前記隙間の前記長手方向と直交する方向の全長未満の同方向における長さを有し、かつ、前記隙間の傾斜の最上部に挿入される。
【0202】
かかる態様によれば、水平面に対して傾けられた液体吐出面における、ヘッドモジュール間の隙間に対して、隙間の全長よりも短い掻取部材を傾斜の最上部に挿入することで、隙間の中の洗浄液除去の効率を落とすことなく、掻取部材の摺動による液体吐出面へのダメージを低減化することができる。
【0203】
(第13態様):第13に係る液体吐出装置は、前記洗浄液付与手段は、前記液体吐出面の傾斜に対応して水平面に対して傾けられ、洗浄液の膜が形成される洗浄液膜保持面を具備するとともに、前記洗浄液膜保持面の傾斜上部から前記洗浄液膜保持面へ洗浄液を供給する洗浄液供給部を具備し、前記洗浄液膜保持面に形成された洗浄液膜を前記液体吐出面に接触させて、前記液体吐出面に洗浄液を付与し、前記掻取部材は、前記洗浄液保持部により洗浄液が供給される位置に対応する前記隙間の位置に挿入される。
【0204】
かかる態様によれば、洗浄液が入り込みやすい洗浄液供給部に対応する隙間の位置に掻取部材を挿入することで、隙間からの洗浄液の除去が効率よく行われる。
【0205】
(第14態様):第14に係る液体吐出装置は、前記洗浄装置は、第2態様から第8態様のいずれかに記載された洗浄装置を含んでいる。
【0206】
(第15態様):第15態様に係るインクジェットヘッドの洗浄方法は、複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与工程と、隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取工程と、前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭工程と、を含んでいる。
【0207】
(第16態様):第16に係るインクジェットヘッドの洗浄方法は、前記洗浄液付与工程、前記掻取工程及び前記払拭工程は、前記インクジェットヘッドと前記液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段、前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取手段及び前記液体吐出面を払拭する拭取手段とを前記インクジェットヘッドの長手方向について相対的に移動させながら実行される。
【符号の説明】
【0208】
10,200,300,410…洗浄装置、12,12’…ヘッドモジュール、14,14’,106,448…インクジェットヘッド、14A…ノズル面、16…隙間、20…洗浄液付与部、21…洗浄液膜保持面、22…拭取部、26,26’、70,80,80’,326,416…掻取部材、26A,72A,80A,80A’326’…先端部、26B…切欠部、26C…歯部、28…払拭部材、50,172…システム制御部、52…洗浄液付与制御部、188…メンテナンス制御部、202…超音波振動子、302…マニホールド、306…チューブ、308…吸引ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、
隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、
前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭部材と、
を備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記掻取部材及び前記払拭部材を前記液体吐出面に当接させたときに、前記掻取部材の前記液体吐出面への当接量は、前記払拭部材の前記液体吐出面への当接量を超えることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記掻取部材の先端部は、前記隙間の前記長手方向における長さの最大値未満の同方向における長さを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記掻取部材は、平板状の部材であり、前記先端部は1つ以上の切り欠きが設けられる櫛歯形状を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記掻取部材の先端部は、前記長手方向に沿う断面線による断面形状が略三角形形状又は略台形形状を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記掻取部材は、略円柱形状又は略円すい形状のピンが1つ以上設けられる構造を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記掻取部材を振動させる加振手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記掻取部材は、前記先端部に前記隙間から洗浄液を吸引する吸引口が設けられるとともに、前記吸引口と連通する吸引流路が設けられ、
前記吸引流路を介して吸引口に吸引圧力を発生させる吸引手段を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項9】
複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、
隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、
前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭部材と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
前記インクジェットヘッドの長手方向について、前記インクジェットヘッドと前記洗浄装置、前記掻取部材及び前記払拭部材とを相対的に移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記掻取部材は、前記払拭部材と一体に構成され、
前記移動手段は、前記インクジェットヘッドと前記掻取部材及び前記払拭部材とを前記長手方向について相対移動させることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記インクジェットヘッドは、液体吐出面が水平面に対して傾けられており、
前記掻取部材は、前記液体吐出面に対応して水平面に対して傾けられて配置されるとともに、前記隙間の前記長手方向と直交する方向の全長未満の同方向における長さを有し、かつ、前記隙間の傾斜の最上部に挿入されることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記洗浄液付与手段は、前記液体吐出面の傾斜に対応して水平面に対して傾けられ、洗浄液の膜が形成される洗浄液膜保持面を具備するとともに、前記洗浄液膜保持面の傾斜上部から前記洗浄液膜保持面へ洗浄液を供給する洗浄液供給部を具備し、前記洗浄液膜保持面に形成された洗浄液膜を前記液体吐出面に接触させて、前記液体吐出面に洗浄液を付与し、
前記掻取部材は、前記洗浄液保持部により洗浄液が供給される位置に対応する前記隙間の位置に挿入されることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記洗浄装置は、請求項2から8のいずれかに記載された洗浄装置を含むことを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与工程と、
隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取工程と、
前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭工程と、
を含むことを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項16】
前記洗浄液付与工程、前記掻取工程及び前記払拭工程は、前記インクジェットヘッドと前記液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段、前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取手段及び前記液体吐出面を払拭する拭取手段とを前記インクジェットヘッドの長手方向について相対的に移動させながら実行されることを特徴とする請求項15に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項1】
複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、
隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、
前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭部材と、
を備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記掻取部材及び前記払拭部材を前記液体吐出面に当接させたときに、前記掻取部材の前記液体吐出面への当接量は、前記払拭部材の前記液体吐出面への当接量を超えることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記掻取部材の先端部は、前記隙間の前記長手方向における長さの最大値未満の同方向における長さを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記掻取部材は、平板状の部材であり、前記先端部は1つ以上の切り欠きが設けられる櫛歯形状を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記掻取部材の先端部は、前記長手方向に沿う断面線による断面形状が略三角形形状又は略台形形状を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記掻取部材は、略円柱形状又は略円すい形状のピンが1つ以上設けられる構造を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記掻取部材を振動させる加振手段を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記掻取部材は、前記先端部に前記隙間から洗浄液を吸引する吸引口が設けられるとともに、前記吸引口と連通する吸引流路が設けられ、
前記吸引流路を介して吸引口に吸引圧力を発生させる吸引手段を備えたことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項9】
複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、
隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取部材と、
前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭部材と、
を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
前記インクジェットヘッドの長手方向について、前記インクジェットヘッドと前記洗浄装置、前記掻取部材及び前記払拭部材とを相対的に移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記掻取部材は、前記払拭部材と一体に構成され、
前記移動手段は、前記インクジェットヘッドと前記掻取部材及び前記払拭部材とを前記長手方向について相対移動させることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記インクジェットヘッドは、液体吐出面が水平面に対して傾けられており、
前記掻取部材は、前記液体吐出面に対応して水平面に対して傾けられて配置されるとともに、前記隙間の前記長手方向と直交する方向の全長未満の同方向における長さを有し、かつ、前記隙間の傾斜の最上部に挿入されることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記洗浄液付与手段は、前記液体吐出面の傾斜に対応して水平面に対して傾けられ、洗浄液の膜が形成される洗浄液膜保持面を具備するとともに、前記洗浄液膜保持面の傾斜上部から前記洗浄液膜保持面へ洗浄液を供給する洗浄液供給部を具備し、前記洗浄液膜保持面に形成された洗浄液膜を前記液体吐出面に接触させて、前記液体吐出面に洗浄液を付与し、
前記掻取部材は、前記洗浄液保持部により洗浄液が供給される位置に対応する前記隙間の位置に挿入されることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記洗浄装置は、請求項2から8のいずれかに記載された洗浄装置を含むことを特徴とする請求項9から13のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
複数のヘッドモジュールを長手方向につなぎ合わせて構成されるインクジェットヘッドの液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与工程と、
隣接するヘッドモジュール間の前記長手方向における隙間に挿入可能な形状を有する先端部を具備し、前記洗浄液付与手段によって前記液体吐出面に洗浄液が付与された後に、前記先端部を前記隙間の中に挿入させて前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取工程と、
前記掻取部材によって前記隙間内の洗浄液が掻き取られた後に、前記液体吐出面を払拭する払拭工程と、
を含むことを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項16】
前記洗浄液付与工程、前記掻取工程及び前記払拭工程は、前記インクジェットヘッドと前記液体吐出面に洗浄液を付与する洗浄液付与手段、前記隙間の中の洗浄液を掻き取る掻取手段及び前記液体吐出面を払拭する拭取手段とを前記インクジェットヘッドの長手方向について相対的に移動させながら実行されることを特徴とする請求項15に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−52507(P2013−52507A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189983(P2011−189983)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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