説明

洗車機用ブラシ

【課題】複雑な加工を行うことなく、洗車時の摩擦による縫い糸のほつれを軽減し得る洗車機用ブラシを提供する。
【解決手段】長方形状で布製のブラシ単体1を使用し、その長さ方向Lの両端部分1Aを重ね合わせた状態で、端縁1aに平行状として幅方向Wに縫製4するとともに、幅方向で先端側1Cとなる部分は、縫製線の部分を起点4aとし、縫製線ならびに端縁に対して次第に離れる方向に傾斜縫製4Aして、両端部分間を一体化した。ブラシ単体の基端側1Bとなる部分は、長さ方向の複数箇所をそれぞれ被嵌合体20に固定し、軸体10の外面で周方向の複数箇所に軸心方向の嵌合部11を形成して、嵌合部に対して被嵌合体を軸心方向に摺動自在に嵌合させることで、軸体に対してブラシ単体を外嵌するとともに、ブラシ単体を軸心方向に積層状として配置した。軸体の軸心方向の少なくとも一端に位置した被嵌合体の外方への移動を阻止する固定装置30を、軸体に着脱自在に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車機に組み込まれ、被洗浄車両の上面や側面などを洗浄するのに使用される洗車機用ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗車機用ブラシとしては、次のような構成が提供されている。すなわち、長方形状に形成された布製のブラシ単体は、その一側部分で長さ方向を等分させる3箇所に、他側部分へ向かう切り込み部が形成されている。そしてブラシ単体は、その長さ方向の両端間の大部分が縫い合わせにより一体化され、その際に縫合わせを行わなかった一部分により4箇所目の切り込み部が形成される。このブラシ単体は、長さ方向の一側部分で複数箇所がそれぞれ被嵌合体に固定される。そして、軸体の外面で周方向の複数箇所に軸心方向の嵌合部を形成して、これら嵌合部に対して前記被嵌合体を軸心方向に摺動自在に嵌合させることで、軸体に対してブラシ単体が外嵌される。そしてブラシ単体は軸心方向に積層して配置され、軸体の軸心方向の少なくとも一端に位置した被嵌合体の外方への移動を阻止する固定装置が、軸体に着脱自在に設けられている(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−175346号公報(第3−4頁、図1−7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記した従来構成によると、洗車の使用経過に伴って幅方向で先端側となる部分は、洗車時の摩擦により縫い糸がほつれて(切れて)開き状となり、以て開き部分がワイパーに絡まるなど、所期の洗車に悪影響を及ぼすことになる。これに対しては、縫い糸がほつれる前にブラシ単体の交換作業を行うことで対処できるが、この場合、ブラシ単体の交換期間(交換時期)が短くなって、作業性や経済性で不利となるなどの問題がある。
【0004】
そこで本発明の請求項1記載の発明は、複雑な加工を行うことなく、洗車時の摩擦による縫い糸のほつれを軽減し得る洗車機用ブラシを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した目的を達成するために、本発明の請求項1記載の洗車機用ブラシは、長方形状に形成した布製のブラシ単体を使用し、このブラシ単体の長さ方向の両端部分を重ね合わせた状態で、端縁に平行状として幅方向に縫製するとともに、幅方向で先端側となる部分は、幅方向の縫製線の部分を起点とし、縫製線ならびに端縁に対して次第に離れる方向に傾斜縫製して、両端部分間を一体化し、このブラシ単体の基端側となる部分は、長さ方向の複数箇所をそれぞれ被嵌合体に固定し、軸体の外面で周方向の複数箇所に軸心方向の嵌合部を形成して、これら嵌合部に対して前記被嵌合体を軸心方向に摺動自在に嵌合させることで、軸体に対してブラシ単体を外嵌するとともに、ブラシ単体を軸心方向に積層状として配置し、軸体の軸心方向の少なくとも一端に位置した被嵌合体の外方への移動を阻止する固定装置を、軸体に着脱自在に設けたことを特徴としたものである。
【0006】
したがって請求項1の発明によると、ブラシ単体は、原反の布を所定寸法で長方形状に裁断し、その長さ方向の両端部分間を縫製により一体化することで形成し得る。その際に縫製作業による一体化は、端縁を隣り合わせて両端部分を重ね合わせた状態で、端縁に平行状として幅方向に縫製し、そして、縫製線ならびに端縁に対して次第に離れる方向に傾斜縫製することで、複雑な加工を必要とすることなく行え、さらに縫製糸および布素材の変更がないため布加工費用のコストアップがない。
【0007】
このブラシ単体は、長さ方向の基端側となる部分で複数箇所の内側に被嵌合体を宛がった状態で、複数個の被嵌合体間に固定し得る。そしてブラシ単体を軸体に組み立てるに、まず一枚のブラシ単体に固定した周方向で複数個の被嵌合体を、軸体の嵌合部に対して端部から嵌合させるとともに、嵌合部の案内により軸心方向に摺動させることで、軸体に対してブラシ単体を外嵌し得る。このような外嵌、摺動の繰り返しにより、被嵌合体を順次当接させながら、ブラシ単体を軸心方向に順次積層状として配置し得る。そして所定数(所定段)の配置を行ったのち軸体の端部に固定装置を固定させることにより、ブラシ単体群を軸体側に固定し得、以て洗車機用ブラシを形成し得る。
【0008】
このような洗車機用ブラシは、洗車機に組み込まれて洗車に使用される。その際に洗車作業時には、回転により拡がったブラシ単体の先端側となる部分を被洗浄車両に接触させるのであるが、このとき、縫製により一体化した両端部分間の縫い合わせ部分でかつ先端側となる部分は、傾斜縫製が存在していることで補強し得、以て洗車時の摩擦による縫い合わせ部分の縫い糸のほつれ(切れ)を軽減し得る。
【0009】
また本発明の請求項2記載の洗車機用ブラシは、上記した請求項1記載の構成において、ブラシ単体の長さ方向の両端部分を重ね合わせた状態で、端縁に平行状として幅方向に縫製するとともに、幅方向で先端側となる部分には複数回の返し縫を行い、最後の返し縫は、幅方向の縫製線の部分を起点とし、縫製線ならびに端縁に対して次第に離れる方向に傾斜縫製することを特徴としたものである。
【0010】
したがって請求項2の発明によると、縫製作業による両端部分間の一体化は、縫製と返し縫と傾斜縫製との連続縫製作業で行える。
そして本発明の請求項3記載の洗車機用ブラシは、上記した請求項1または2記載の構成において、幅方向で先端側となる部分は、幅方向の縫製線の部分を起点とし、縫製線ならびに端縁に対して次第に離れる方向に傾斜縫製した後に、縫製線に向かって長さ方向に沿った合流縫製し、幅方向で先端側となる部分に、縫製と傾斜縫製と合流縫製とにより三角形縫製部を形成したことを特徴としたものである。
【0011】
したがって請求項3の発明によると、縫製作業による両端部分間の一体化は、縫製と返し縫と傾斜縫製と合流縫製との連続縫製作業で行える。そして洗車作業時に、一体化した両端部分間の縫い合わせ部分でかつ先端側となる部分は、三角形縫製部が存在していることで、より強固に補強し得る。
【0012】
さらに本発明の請求項4記載の洗車機用ブラシは、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の構成において、ブラシ単体の幅寸法に対して、傾斜縫製部分の幅寸法が1〜2割であることを特徴としたものである。
【0013】
したがって請求項4の発明によると、保水を損なうことなく補強を行えることになる。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明の請求項1によると、ブラシ単体は、原反の布を所定寸法で長方形状に裁断し、その長さ方向の両端部分間を縫製により一体化することで容易に形成できる。その際に縫製作業による一体化は、端縁を隣り合わせて両端部分を重ね合わせた状態で、端縁に平行状として幅方向に縫製し、そして、縫製線ならびに端縁に対して次第に離れる方向に傾斜縫製することで、複雑な加工を必要とすることなく容易に行うことができ、さらに縫製糸および布素材の変更がないため布加工費用をコストアップすることなく行うことができる。
【0015】
このブラシ単体は、長さ方向の基端側となる部分で複数箇所の内側に被嵌合体を宛がった状態で、複数個の被嵌合体間に固定できる。そして洗車機用ブラシの組み立ては、ブラシ単体の被嵌合体群を軸体の嵌合部に対して端部から嵌合させたのち軸心方向に摺動させることを繰り返して複数積層状としたのち、端部に固定装置を固定することで、簡単にして迅速に行うことができる。また逆操作によってブラシ単体の取り外し除去を行うことができ、以て特定のブラシ単体や全てのブラシ単体の補修、取り換えを迅速に容易に行うことができる。
【0016】
このような洗車機用ブラシは、洗車機に組み込まれて洗車に使用できる。その際に洗車作業時には、回転により拡がったブラシ単体の先端側となる部分を被洗浄車両に接触させるのであるが、このとき、縫製により一体化した両端部分間の縫い合わせ部分でかつ先端側となる部分は、傾斜縫製が存在していることで補強でき、以て洗車時の摩擦による縫い合わせ部分の縫い糸のほつれ(切れ)を軽減できて、先端側となる部分の耐久性を約2倍に向上できるとともに、所期の洗車を常に好適に行うことができる。さらに耐久性の向上により、ブラシ単体の交換期間(交換時期)を長く(延命)できて、作業性や経済性で有利となる。
【0017】
また上記した本発明の請求項2によると、縫製作業による両端部分間の一体化は、縫製と返し縫と傾斜縫製との連続縫製作業で行うことができ、以て一体化は容易に効率よく行うことができる。
【0018】
そして上記した本発明の請求項3によると、縫製作業による両端部分間の一体化は、縫製と返し縫と傾斜縫製と合流縫製との連続縫製作業で行うことができ、以て一体化は容易に効率よく行うことができる。また洗車作業時に、一体化した両端部分間の縫い合わせ部分でかつ先端側となる部分は、三角形縫製部が存在していることで、より強固に補強できる。
【0019】
さらに上記した本発明の請求項4によると、保水を損なうことなく補強を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[実施の形態1]
以下に、本発明の実施の形態1を、図1〜図9に基づいて説明する。
図1、図5〜図8に示すように、アルミニウム(金属の一例)の押し出しにより形成される軸体10はパイプ状であって、その外周で周方向の複数箇所(実施の形態1では4箇所)には軸心方向の嵌合部11が形成されている。これら嵌合部11は、周方向で一対の突条部12と、これら突条部12に対して周方向の外側位置から外方へ突出されたのち相対向側に連出される一対の係止部13により形成される。そして突条部12の外面と軸体10の外面と係止部13の内面とによって嵌合凹部14が形成される。さらに軸体10の両端で両突条部12間の部分には、連結用丸孔15が形成されている。
【0021】
図2に示すように、織布や不織布など布のみからなる一枚もののブラシ単体1は長方形状に形成され、そして基端側(一側部分)1Bで長さ方向Lの多数箇所(実施の形態1では32箇所)には固定用孔2が形成されている。さらにブラシ単体1の基端側1Bで長さ方向Lの複数箇所(実施の形態1では4箇所)には、先端側(他側部分)1Cへ向かう切り込み部3が形成されている。
【0022】
このブラシ単体1は図3、図4に示すように、その端縁1aを隣り合わせて長さ方向Lの両端部分1Aを重ね合わせた状態で、端縁1aに平行状として幅方向Wに縫製4するとともに、幅方向Wで先端側1Cとなる部分には5回(複数回)の返し縫を行っている。そして、最後の返し縫は、幅方向Wの縫製線の部分を起点4aとして、縫製線ならびに端縁1aに対して次第に離れる方向に傾斜縫製4Aし、以て両端部分1A間が一体化されている。その際に、ブラシ単体1の幅寸法1W(30〜40cm)に対して、傾斜縫製部分の幅寸法1sWが1〜2割(約3〜8cm)とされている。
【0023】
図1、図5〜図8に示すように、前記ブラシ単体1は、基端側1Bの部分で長さ方向Lの複数箇所(実施の形態1では4箇所)が、その長さ方向Lで折り畳まれて折畳み部5に形成され、そして折畳み部5のそれぞれが被嵌合体20に固定されている。その際に、長さ方向Lの基端側1Bの部分に形成されている切り込み部3群が、折畳み部5間の無理な引っ張り力を開放させている。前記被嵌合体20は樹脂により正方形の板状に一体形成され、その際に中央で長方形状の本体部分21の両側には、内方へ突出されたのち相反する方向側に連出される一対の被係止部22が形成されている。そして本体部分21には固定用孔23が形成されている。
【0024】
このように形成された被嵌合体20に前記ブラシ単体1が固定されるのであるが、この固定は折畳み部5を介して行われる。すなわち実施の形態1においてブラシ単体1は7回折り畳まれ、8層状の折畳み部5が4箇所に形成される。その際に折畳みは、折畳み部5の周方向の中央部分で、それぞれ8個の固定用孔2が連通される状態で行われる。そして折畳み部5の内側に被嵌合体20における本体部分21の外面が当てがわれ、固定用孔2群に固定用孔23を連通させた状態で、これら固定用孔2,23間に亘ってリベット24を打ち込むことで、被嵌合体20に折畳み部5が固定される。このとき、8層目に連なる布部は、切り込み部3を利用してリベット24の外側で折り返され、このリベット24を覆う状態になる。
【0025】
このようにしてブラシ単体1が固定された被嵌合体20は、前記軸体10の嵌合部11に対して軸心方向に摺動自在に嵌合される。すなわち被嵌合体20は、その両被係止部22を両係止部13に係合させることで、軸体10の端部から嵌合されるとともに、嵌合部11に案内されて軸心方向に摺動自在とされ、以て軸体10に対してブラシ単体1が外嵌されるとともに、軸心方向に積層状として配置される。
【0026】
軸体10の軸心方向の両端に位置した被嵌合体20の両端外方への移動を阻止する固定装置30が、軸体10側に着脱自在に設けられる。すなわち固定装置30の本体は、樹脂により正方形の板状に形成された当て部材31からなり、この当て部材31は、軸体10の嵌合部11における両突状部12間の外面に当接される。さらに当て部材31には、軸心方向に長い連結用長孔32が形成され、この連結用長孔32は前記軸体10の連結用丸孔15に連通自在に形成される。そして、この当て部材31を軸体10に固定させる固定具33が設けられ、この固定具33は、連結用長孔32から連結用丸孔15に通されるボルト34と、軸体10内に位置されかつボルト34が螺合されるナット35などから構成される。
【0027】
以下に、上記した実施の形態1における作用を説明する。
軸体10はアルミニウム(金属の一例)の押し出しにより形成されることから、その外周で周方向の複数箇所の嵌合部11を含めて形成(製作)は容易に精度よく行え、そして金属により十分な強度を確保し得る。また被嵌合体20や当て部材31は、樹脂により容易に精度よく形成し得る。さらにブラシ単体1は、原反の布を所定寸法で長方形状に裁断し、その基端側1Bで長さ方向Lの多数箇所に固定用孔2を形成し、その長さ方向Lの両端部分1A間を縫製4により一体化するとともに、縫製作業の前後において、所定箇所に切り込み部3を形成することで、容易に形成し得る。
【0028】
その際に縫製作業による両端部分1A間の一体化は、端縁1aを隣り合わせて両端部分1Aを重ね合わせた状態で、端縁1aに平行状として幅方向Wに縫製4し、そして、幅方向Wで先端側1Cとなる部分に対して5回(複数回)の返し縫を行ったのち、最後の返し縫を、縫製線の部分を起点4aとして、縫製線ならびに端縁1aに対して次第に離れる方向に傾斜縫製4Aすることで、複雑な加工を必要とすることなく、また縫製4と返し縫と傾斜縫製4Aとの連続縫製作業で行うことができ、以て一体化は容易に効率よく行える。さらに縫製糸および布素材の変更がないため布加工費用のコストアップがない。
【0029】
このように形成されたブラシ単体1は、長さ方向の一側部分で4箇所が、それぞれ7回折り畳まれて8層状の折畳み部5に形成され、そして折畳み部5の内側に被嵌合体20の本体部分21を宛がい、折畳み部5で連通状態にある8個の固定用孔2群に固定用孔23を連通させた状態で、これら固定用孔2,23間に亘ってリベット24を打ち込むことで、4個の被嵌合体20間に整然と精度よく固定される。このとき、折畳み部5間に切り込み部3が位置されて、折畳み部5間の無理な引っ張り力が開放されている。
【0030】
このように構成されたブラシ単体1などを軸体10に組み立てるに、まず軸体10の一端で周方向の四箇所に当て部材31を固定させる。これは、当て部材31を、軸体10の嵌合部11における両突状部12間の外面に当接させて、その連結用長孔32を連結用丸孔15に連通させたのち、孔32,15間に固定具33を作用させることで行える。次いで、一枚のブラシ単体1に固定した周方向で4個の被嵌合体20を、その両被係止部22を両係止部13に係合させることで、軸体10の他端から嵌合させるとともに、嵌合部11の案内により軸心方向に摺動させ、以て軸体10に対してブラシ単体1を外嵌させる。そしてブラシ単体1側を一端側へと摺動させ、前記当て部材31に当接させる。このような外嵌、摺動の繰り返しにより、一端側の被嵌合体20に他端側の被嵌合体20を当接させながら、ブラシ単体1を軸心方向に順次に積層状として配置させる。
【0031】
そして所定数(所定段)の配置を行ったのち軸体10の他端に、前記一端の当て部材31とは逆向きとして、前述と同様の作用により当て部材31を固定させる。これによりブラシ単体1群を、被嵌合体20群を介して、両端の固定装置30により挟持して固定させることになり、以て図5に示すようにトップブラシ(洗車機用ブラシの一例)37を形成し得る。ここで図5はトップブラシ37を示しているが、後述するサイドブラシやロッカーブラシの場合は、ブラシ単体1の幅寸法を変えたり配置数を変えることで、同様にして形成し得る。
【0032】
上述したようにトップブラシ37は、一端に固定装置30を固定させ、そしてブラシ単体1を、その被嵌合体20を嵌合部11に嵌合させながら複数配置させたのち、他端に固定装置30を固定させることで組み立て得、以て全段に亘っての組み立作業は、簡単にして迅速に行える。また逆操作によってブラシ単体1の取り外し除去を行え、以て特定のブラシ単体1や全てのブラシ単体1の補修、取り換えを迅速に容易に行える。
【0033】
さらに固定装置30による固定操作部が少ないことから、軸体10に対するブラシ単体1の取り付けは、軸体10の強度を低下させることなく行える。そして、一枚もののブラシ単体1を積層することから、取り付けは、周方向で整然と揃えて行えるとともに、ブラシ単体1は容易に製作し得る。さらに被嵌合体20によって、ブラシ単体1間に一定のスペースを確保し得、これにより保水率を向上し得る。しかもブラシ単体1は、一側部を折り畳むことで、一側部を除く大部分が上下で隙間のある積層状となり、これにより上下方向のボリュームアップと保水率の向上とを図り得る。
【0034】
図9に示すように、洗車機40における門形の洗車機本体41には、洗浄手段、ブラッシング手段、乾燥手段などが組み込まれている。すなわち洗車機本体41は、複数個の輪体42を介して、床58側の床面58a上に敷設された左右一対(左右複数)の洗車機用レール装置56上に載置されており、走行駆動装置(図示せず。)の作動により前後方向の一定経路上で往復移動(往復走行)するように構成されている。洗車機本体41には、被洗浄車両(普通乗用車など)60の洗浄手段の一例として、第1洗浄水ノズル43と、第1洗剤ノズル44と、第2洗浄水ノズル45と、撥水コート剤ノズル46と、第2洗剤ノズル47と、ワックスノズル48とが、前部から後部に亘って、この順で配設されている。ここで各ノズル43〜48は、たとえばアーチ状に構成されている。
【0035】
そして洗車機本体41には、被洗浄車両60のブラッシング手段の一例として、前記トップブラシ37やサイドブラシ(洗車機用ブラシの一例)38やロッカーブラシ(洗車機用ブラシの一例)39が配設されている。さらに洗車機本体41には、被洗浄車両60の乾燥手段の一例として、昇降自在なトップノズル51、左右一対のサイドノズル52、ならびにトップノズル51にダクトホースを介して接続された左右一対のトップ側ブロワ装置53、サイドノズル52にダクトホースを介して接続された左右一対のサイド側ブロワ装置54が設けられる。
【0036】
次に洗車作業を説明する。すなわち洗車を行うに際して、まず被洗浄車両60を停車させた状態で運転者または作業者が操作パネルを操作し、以て希望する一つの洗車コース(洗浄条件)を設定する。この状態で洗車スタートスイッチをオン操作することで、洗車機本体41を往復走行させながら、回転により拡がった各ブラシ37,38,39の接近離間動、洗浄水ノズル43,45を介しての水(洗浄水)の供給、洗剤ノズル44,47を介しての希釈した洗剤の供給、撥水コート剤ノズル46を介しての希釈した撥水コート剤の供給、ワックスノズル48を介しての希釈したワックスの供給、ならびに各ノズル51,52からの風の噴出(吹き付け)、などを適宜に組合せて作動させ、以て被洗浄車両60に対する所期の洗浄工程と乾燥工程とを行えることになる。
【0037】
このような洗車作業時に、回転により拡がった各ブラシ37,38,39の先端側1Cとなる部分を被洗浄車両60に接触させるのであるが、このとき、縫製4により一体化した両端部分1A間の縫い合わせ部分でかつ先端側1Cとなる部分は、傾斜縫製4Aが存在していることで補強でき、以て洗車時の摩擦による縫い合わせ部分の縫い糸のほつれ(切れ)を軽減できて、先端側1Cとなる部分の耐久性を約2倍に向上できるとともに、所期の洗車を常に好適に行うことができる。さらに耐久性の向上により、ブラシ単体の交換期間(交換時期)を長く(延命)できて、作業性や経済性で有利となる。また、ブラシ単体1の幅寸法1Wに対して、傾斜縫製部分の幅寸法1sWを1〜2割としたことで、保水を損なうことなく補強を行うことができる。
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2を、図10に基づいて説明する。
【0038】
ブラシ単体1は、その端縁1aを隣り合わせて長さ方向Lの両端部分1Aを重ね合わせた状態で、端縁1aに平行状として幅方向Wに縫製4するとともに、幅方向Wで先端側1Cとなる部分には5回(複数回)の返し縫を行っている。そして、最後の返し縫は、幅方向Wの縫製線の部分を起点4aとして、縫製線ならびに端縁1aに対して次第に離れる方向に傾斜縫製4Aした後に、縫製線に向かって長さ方向Lに沿って合流縫製4Bすることで、幅方向Wで先端側1Cとなる部分に、縫製4と傾斜縫製4Aと合流縫製4Bとにより三角形縫製部4Zを形成し、以て両端部分1A間が一体化されている。
【0039】
この実施の形態2によると、縫製作業による両端部分1A間の一体化は、複雑な加工を必要とすることなく、また縫製4と返し縫と傾斜縫製4Aと合流縫製4Bとの連続縫製作業で行うことができ、以て一体化は容易に効率よく行える。そして洗車作業時に、一体化した両端部分1A間の縫い合わせ部分でかつ先端側1Cとなる部分は、縫製4と傾斜縫製4Aと合流縫製4Bとからなる三角形縫製部4Zが存在していることで、より強固に補強でき、以て洗車時の摩擦による縫い合わせ部分の縫い糸のほつれ(切れ)を軽減できて、先端側1Cとなる部分の耐久性をより一層向上できるとともに、所期の洗車を常に好適に行うことができる。さらに耐久性の一層の向上により、ブラシ単体の交換期間(交換時期)をより長く(延命)できて、作業性や経済性で有利となる。
【0040】
上記した実施の形態1、2では、ブラシ単体1の長さ方向Lの両端部分1Aを重ね合わせた状態で、端縁1aに平行状として幅方向Wに縫製4するとともに、幅方向Wで先端側1Cとなる部分には複数回の返し縫を行う形式が示されているが、これは返し縫を行わない形式などであってもよい。
【0041】
上記した実施の形態1、2では、最後の返し縫により、幅方向の縫製線の部分を起点4aとし、縫製線ならびに端縁1aに対して次第に離れる方向に傾斜縫製4Aした形式が示されているが、これは傾斜縫製4Aを、複数回の返し縫により形成した形式などであってもよい。
【0042】
上記した実施の形態1、2では、ブラシ単体1の幅寸法1Wに対して、傾斜縫製部分の幅寸法1sWを1〜2割とした形式が示されているが、これは1割以下とした形式や2割以上とした形式などであってもよい。
【0043】
上記した実施の形態1では、ブラシ単体1の一側部分で複数箇所に整然とした折畳み部5を形成し、これら折畳み部5を介してそれぞれ被嵌合体20に固定されているが、これはブラシ単体1の一側部分を窄めた状態で複数個の被嵌合体20に固定させる形式などであってもよい。
【0044】
上記した実施の形態1、2では、切り込み部3を形成しているが、たとえば折畳み部5の折畳み回数を少なくしたときには、切り込み部3を形成することなく軸体10に取り付けることができる。
【0045】
上記した実施の形態1では、軸体10の両端に対して固定装置30がそれぞれ着脱自在に設けられているが、この固定装置30の着脱は一端のみでもよく、この場合に他端には、外方への移動を阻止する阻止構造が一体的に設けられる。
【0046】
上記した実施の形態1では、軸体10に外嵌された被嵌合体20を固定していないが、これら被嵌合体20の一部または全部を固定具により軸体10に固定してもよい。
上記した実施の形態1では、被嵌合体20を順次積層状としているが、これは被嵌合体20間に、たとえば軸体10に外嵌するスペーサを介在させ、被嵌合体20とスペーサとを交互に積層状としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態1を示し、洗車機用ブラシの端部部分の一部切り欠き斜視図である。
【図2】同洗車機用ブラシに使用するブラシ単体の平面図である。
【図3】同洗車機用ブラシに使用するブラシ単体の縫い合わせ状態での斜視図である。
【図4】同洗車機用ブラシに使用するブラシ単体の縫い合わせ状態での要部拡大図である。
【図5】同洗車機用ブラシの一部切り欠き正面図である。
【図6】同洗車機用ブラシの分解斜視図である。
【図7】同洗車機用ブラシの端部部分の一部切り欠き正面図である。
【図8】同洗車機用ブラシの要部の一部切り欠き側面図である。
【図9】同洗車機用ブラシを組み込んだ洗車機の側面図である。
【図10】本発明の実施の形態2を示し、洗車機用ブラシに使用するブラシ単体の縫い合わせ状態での要部拡大図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ブラシ単体
1A 端部分
1a 端縁
1B 基端側
1C 先端側
1W ブラシ単体1の幅寸法
1sW 傾斜縫製部分の幅寸法
3 切り込み部
4 縫製
4A 傾斜縫製
4a 起点
4B 合流縫製
4Z 三角形縫製部
5 折畳み部
10 軸体
11 嵌合部
14 嵌合凹部
20 被嵌合体
22 被係止部
24 リベット
30 固定装置
31 当て部材
33 固定具
37 トップブラシ(洗車機用ブラシ)
38 サイドブラシ(洗車機用ブラシ)
39 ロッカーブラシ(洗車機用ブラシ)
40 洗車機
41 洗車機本体
42 輪体
56 洗車機用レール装置
60 被洗浄車両
L 長さ方向
W 幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形状に形成した布製のブラシ単体を使用し、このブラシ単体の長さ方向の両端部分を重ね合わせた状態で、端縁に平行状として幅方向に縫製するとともに、幅方向で先端側となる部分は、幅方向の縫製線の部分を起点とし、縫製線ならびに端縁に対して次第に離れる方向に傾斜縫製して、両端部分間を一体化し、このブラシ単体の基端側となる部分は、長さ方向の複数箇所をそれぞれ被嵌合体に固定し、軸体の外面で周方向の複数箇所に軸心方向の嵌合部を形成して、これら嵌合部に対して前記被嵌合体を軸心方向に摺動自在に嵌合させることで、軸体に対してブラシ単体を外嵌するとともに、ブラシ単体を軸心方向に積層状として配置し、軸体の軸心方向の少なくとも一端に位置した被嵌合体の外方への移動を阻止する固定装置を、軸体に着脱自在に設けたことを特徴とする洗車機用ブラシ。
【請求項2】
ブラシ単体の長さ方向の両端部分を重ね合わせた状態で、端縁に平行状として幅方向に縫製するとともに、幅方向で先端側となる部分には複数回の返し縫を行い、最後の返し縫は、幅方向の縫製線の部分を起点とし、縫製線ならびに端縁に対して次第に離れる方向に傾斜縫製することを特徴とする請求項1記載の洗車機用ブラシ。
【請求項3】
幅方向で先端側となる部分は、幅方向の縫製線の部分を起点とし、縫製線ならびに端縁に対して次第に離れる方向に傾斜縫製した後に、縫製線に向かって長さ方向に沿った合流縫製し、幅方向で先端側となる部分に、縫製と傾斜縫製と合流縫製とにより三角形縫製部を形成したことを特徴とする請求項1または2記載の洗車機用ブラシ。
【請求項4】
ブラシ単体の幅寸法に対して、傾斜縫製部分の幅寸法が1〜2割であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗車機用ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−279872(P2008−279872A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−125112(P2007−125112)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】