説明

洗車機用洗浄ブラシのブラシ片及び洗車機用洗浄ブラシ及び洗車機

【課題】スリットにより形成された隣接する分割片が長期間に亘り、洗浄水等により張り付くこと無く、洗い残しの発生が無い高い洗浄性能、及び静音性能を有すると共に、凍結が防止される洗車機用洗浄ブラシのブラシ片、及びそのブラシ片を配した洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供する。
【解決手段】自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片1において、前記ブラシ片1は、スリット2により形成された分割片3、13を有し、前記スリット2の形成領域20内の少なくとも一片の前記分割片13の表面に加圧痕4が形成されてあると共に、前記加圧痕4を有する前記分割片13が立体的に形成されてあるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシのブラシ片、及びそのブラシ片を配した洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗浄ブラシのブラシ片、そのブラシ片を配した洗浄ブラシ、及びその洗浄ブラシを搭載した洗車機に関しては、使用目的に応じて、さまざまな改良がなされ、例えば、一側がフリンジ成形スリットで多数のフリンジ片に細分され、さらにこのフリンジ片の先端部が、先端分割スリットで複数の先端片に分割された合成樹脂発泡体製の自動洗車ブラシ用洗浄シートにおいて、先端分割スリットの内端部に窪み状の押し潰し痕が形成されていることを特徴とする自動洗車ブラシ用洗浄シートが、実用新案登録第3087143号に開示されてある。
【0003】
また、一側がフリンジ成形スリットで多数のフリンジ片に細分され、さらにこのフリンジ片の先端部が、先端分割スリットで複数の先端片に分割された合成樹脂発泡体製の自動洗車ブラシ用洗浄シートにおいて、先端分割スリットの内端部付近に窪み状の押し潰し痕である末端凹部が形成されていると共に、先端片の先端分割スリット側の側縁部に窪み状の押し潰し痕である中間凹部が形成されていることを特徴とする自動洗車ブラシ用洗浄シートが、実用新案登録第3089760号に開示されてある。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3087143号
【特許文献2】実用新案登録第3089760号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片、そのブラシ片を配した洗浄ブラシ、及びその洗浄ブラシを搭載した洗車機は、例えば、上記の如くの特徴を有する技術が開示されてあるが、実用新案登録第3087143号に開示されてある技術においては、窪み状の押し潰し痕の残留歪みにより、一時的に先端片をV字形に開かせ、互いに離れてばらけたものにすることはできる。しかしながら、前記押し潰し痕は、先端分割スリットの内端部に一箇所形成されているだけなので、残留歪みの効果が弱く、洗車を繰り返すうちに、隣接する先端片が洗浄水等により互いに張り付き、長期間に亘って、先端片を互いに離れさすことができなかった。その為、互いに張り付いた先端片が一体化し、先端片は均一に被洗浄面に当接することができないので、洗い残しが発生し、洗浄性能が劣るという課題があった。
【0006】
また、先端片は、概V字状の平板形状に形成された平面にて被洗浄面にたいして当接するので、洗車時にバタツキ音が発生するという課題を有していた。
【0007】
さらに、隣接する先端片が洗車を繰り返すうちに洗浄水等により互いに張り付く為、冬季、特に寒冷地において先端片が凍り付き、凍結した先端片が被洗浄面にたいして洗車傷を付着させるという課題も有していた。
【0008】
また、実用新案登録第3089760号に開示されてある技術においては、複数の窪み状の押し潰し痕が先端分割スリットの内端部近傍、及び側縁部に形成されているので、前記実用新案登録第3087143号に開示されてある技術に比べて、押し潰し痕の残留歪みによる効果が発揮され、長期間に亘り、先端片をV字形に開かせることは可能である。しかしながら、先端片は、概V字状の平板形状に形成されている為、隣接する概V字状の先端片が互いに重なり合った場合、洗浄水等により互いに張り付いてしまい、被洗浄面に付着している汚れの掻き取り性能が劣り、洗浄性能が劣化するという課題を有していた。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、スリットにより形成された隣接する分割片が長期間に亘り、洗浄水等により張り付くこと無く、洗い残しの発生が無い高い洗浄性能、及び静音性能を有すると共に、凍結が防止される洗車機用洗浄ブラシのブラシ片、及びそのブラシ片を配した洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決する為に、本発明の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片は、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記ブラシ片は、スリットにより形成された分割片を有し、前記スリットの形成領域内の少なくとも一片の前記分割片の表面に加圧痕が形成されてあると共に、前記加圧痕を有する前記分割片が立体的に形成されてあるもので、加圧痕が形成された分割片は、加圧痕を境にして所定角度だけ三次元的に屈曲変形されてある為、隣接する分割片が長期間に亘り、洗浄水等により張り付くことが無い。その為、分割片が一体化すること無く、被洗浄面に当接するので、洗い残しの発生が防止されると共に、立体的に形成された分割片が被洗浄面に付着している汚れを掻き取り、ブラシ片は高い洗浄性能を有する。
【0011】
なお、加圧痕による分割片の立体的な形成状態については、屈曲、折れ、捩れ、曲げ等、分割片が加圧痕を有しない分割片にたいして三次元的に形成されてある状態であるならば、いかなる状態も採用できる。
【0012】
また、分割片は加圧痕により立体的に形成されているので、分割片の平面部が同時に被洗浄面に当接することが無い。その為、ブラシ片が被洗浄面に当接する際のバタツキ音が抑制、低減される。
【0013】
さらに、隣接する分割片が洗浄水等により張り付くことが無いので、ブラシ片の凍結が防止される。
【0014】
また、本発明の洗車機用洗浄ブラシは、軸体及び請求項1から4のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片を有し、前記軸体の外周部に前記ブラシ片が形成されてあるもので、ブラシ片に形成された分割片が加圧痕を境にして三次元的に形成されてある為、洗い残しの発生が無い、高い洗浄性能を有する。
【0015】
また、本発明の洗車機は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項5に記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載したもので、洗い残しの無い高い洗浄性能を有する洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある為、洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、優れた洗浄性能が発揮される。また、洗車機用洗浄ブラシが回転して被洗浄面に当接する際、ブラシ片のバタツキ音の発生を抑えることが可能である。さらに、ブラシ片の凍結が防止されるので、被洗浄面にブラシ片による洗車傷を付着させることが無い。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明においては、ブラシ片は高い洗浄性能、及び静音性能を有すると共に、優れた凍結防止性能を発揮することができる。
【0017】
請求項2の発明においては、捩り部により、被洗浄面に強固に付着している汚れを掻き出すことができるので、洗浄性能が向上する。
【0018】
請求項3の発明においては、加圧痕が分割片を横断して形成されてある為、加圧痕による屈曲、折れ等の変形による立体的な形成を確実にすることができる。従って、立体的に確実に形成された複数の分割片が被洗浄面に当接する為、被洗浄面の曲線部分にたいしても容易にブラシ片が当接し、汚れを除去することができるので、洗浄性能が大幅に向上する。
【0019】
請求項4の発明においては、熱加圧された分割片が強固に立体形状を形成する為、ブラシ片の毛腰を強く設定して被洗浄面に当接させることができるので、洗浄性能が飛躍的に向上する。
【0020】
請求項5の発明においては、洗い残しの無い高い洗浄性能を有する洗車機用洗浄ブラシを提供することができる。
【0021】
請求項6の発明においては、被洗浄面にブラシ片による傷を付着させることが無く、優れた洗浄性能と静音性能を有する洗車機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
第1の発明は、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記ブラシ片は、スリットにより形成された分割片を有し、前記スリットの形成領域内の少なくとも一片の前記分割片の表面に加圧痕が形成されてあると共に、前記加圧痕を有する前記分割片が立体的に形成されてあるもので、加圧痕が形成された分割片は、加圧痕を境にして所定角度だけ三次元的に屈曲変形されてある為、隣接する分割片が長期間に亘り、洗浄水等により張り付くことが無い。その為、分割片が一体化すること無く、被洗浄面に当接するので、洗い残しの発生が防止されると共に、立体的に形成された分割片が被洗浄面に付着している汚れを掻き取り、ブラシ片は高い洗浄性能を有する。
【0023】
また、分割片は加圧痕により立体的に形成されているので、分割片の平面部が同時に被洗浄面に当接することが無い。その為、分割片は三次元的に立体的に変形しているので、ブラシ片が被洗浄面に当接する際のバタツキ音を抑制、低減することができる。
【0024】
さらに、隣接する分割片が洗浄水等により張り付くことが無いので、ブラシ片の凍結を防止することができる。
【0025】
第2の発明は、特に、第1の発明の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記分割片は捩じられて形成されてあるもので、分割片に形成された捩り部により、被洗浄面に強固に付着している汚れを、掻き出すことができる為、洗浄性能が向上する。
【0026】
第3の発明は、特に、第1から第2の発明の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記加圧痕は前記分割片を横断して形成されてあるもので、加圧痕による屈曲、折れ等の変形による立体的な形成を確実にすることができる。従って、立体的に確実に形成された複数の分割片が被洗浄面に当接する為、被洗浄面の曲線部分にも容易に分割片が当接することが可能であり、洗浄性能が大幅に向上する。
【0027】
第4の発明は、特に、第1から第3の発明の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記加圧痕は熱加圧にて形成されてあるもので、熱加圧された分割片が強固に立体形状を形成する。その為、ブラシ片の毛腰を強く設定して被洗浄面に当接させることができるので、洗浄性能が飛躍的に向上する。
【0028】
第5の発明は、軸体及び第1から第4の発明のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片を有し、前記軸体の外周部に前記ブラシ片が形成されてある洗車機用洗浄ブラシとしたもので、ブラシ片に形成された分割片が加圧痕を境にして三次元的に形成されてある為、洗車機用洗浄ブラシは、洗い残しの発生が無い、高い洗浄性能を有する。
【0029】
第6の発明は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、第5の発明の洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機としたもので、洗い残しの無い高い洗浄性能を有する洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある為、洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、優れた洗浄性能が発揮される。また、洗車機用洗浄ブラシが回転して被洗浄面に当接する際、ブラシ片のバタツキ音の発生を抑えることが可能である。さらに、ブラシ片の凍結が防止されるので、被洗浄面にブラシ片による洗車傷を付着させることが無い。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
図1(A)は、本発明の洗車機用洗浄ブラシを前面側から見た斜視図、図1(B)は、図1(A)の断面図、図2は、本発明の第1の実施例におけるブラシ片の部分平面図、図3(A)は、ブラシ片の部分拡大斜視図、図3(B)は、図3(A)の正面図である。
【0032】
図1(A)、及び図1(B)において、洗車機用洗浄ブラシ6は、ブラシ片1が、アルミニウム等の金属材料からなる略円筒形状の軸体5の外周等分4箇所に設けられた溝部7に概V字断面を有するように挿入され、リベット9にて固定して形成されてある。ブラシ片1は、洗浄側に段差状に設けられたスリット2により細分割された複数の分割片3、13を有し、分割片13には加圧痕4が形成されている。また、スリット2の軸体5側の端部には円孔10が設けられている。なお、軸体5の外周面に設けられた溝部7は、等分4箇所以外にも、6箇所、8箇所、12箇所等、使用目的に応じて、適時、設定できる。
【0033】
洗車機用洗浄ブラシ6は、次の手順にて製作される。最初に、平板状のブラシ片1を用意する。次いで、ブラシ片1の長手方向の略中央部に、トムソン型等により取付孔(図示せず)を形成する。次に、ブラシ片1の長手方向の略中央部にて二つ折りして、概V字断面を有するよう形成する。概V字断面を有するよう形成されたブラシ片1は、軸体5の溝部7に挿入され、前記取付孔にリベット9が挿入されると共に、リベッター等でリベット9を打ち付け、軸体5にブラシ片1が固定されて洗車機用洗浄ブラシ6が製作される。
【0034】
次に、図2、及び図3を用いて、ブラシ片1について詳述する。
【0035】
図2において、ブラシ片1は、段差状に設けられたスリット2により細分割された分割片3、13が形成されてあると共に、分割片13の表面には加圧痕4が形成されている。加圧痕4は、スリット2のスリット形成領域20の範囲内において形成されている。スリット2の長さは、20〜200mm程度、分割片3、13の幅は1〜10mm程度に設定される。スリットの長さが20mmより小の場合、被洗浄面の細かな凹凸部分に分割片3、13が当接しにくく、洗浄性能が劣ることになり、200mmを超える場合、分割片3、13が車体のアンテナやワイパー等の装備品に絡み付きやすくなり、装備品の破損につながる。また、分割片3、13の幅が1mmより小の場合、分割片3、13が切れやすく、耐久性が劣り、10mmを超える場合、分割片3、13は被洗浄面の細かな凹凸部分に付着している汚れを除去しにくく、洗浄性能が劣ることになる。また、スリット2の端部に形成されている円孔10は、ブラシ片1の裂けを防止する為に設けられているものである。
【0036】
スリット2、及び円孔10は、トムソン型等の切断刃により形成される。加圧痕4は、トムソン型等にスリット形成領域20の間に、前記切断刃の刃先までの高さより僅かに短い高さの突起を設けておくことにより、トムソン型等が上方からブラシ片1に押し付けられ、スリット2、及び円孔10を形成する際に、突起が押し付けられることにより形成される。また、スリット2、及び円孔10を形成した後、スリット形成領域20の間に突起が設けられた型を押し当てて、加圧痕4を形成しても構わない。
【0037】
また、加圧痕4は、鏝等の鉄製の道具や突起を加熱して、熱加圧して形成することもできる。熱加圧する場合には、ブラシ片1に使用される材質の融点よりも低く温度設定される必要がある。ブラシ片1の材質の融点以上で熱加圧されると、ブラシ片1が溶融し、分割片13が切断されることになる。また、超音波、レーザー波等が発生する発熱器具を用いて、熱加圧による加圧痕4を形成することもできる。さらに、超音波溶着、レーザー波溶着、電磁波溶着、高周波溶着等の様々な溶着方法を使用することにより、加圧痕4を形成する形態も採用できる。
【0038】
上記のように加圧痕4が形成された分割片13は、加圧痕4が形成される際に発生する残留歪みにより、図3(B)に示すように、分割片3にたいして傾斜角度θを有し、図3(A)の如く三次元的に立体的に変形して形成される。傾斜角度θは、加圧痕4を形成する際のトムソン型等の押付圧力や押付時間等の条件により、所望の角度に調整できる。傾斜角度θは、隣接する分割片3と分割片13が洗浄水等により張り付くことが無く、洗い残しの発生を防ぐという観点から、1°〜45°程度、さらに好ましくは5°〜30°程度に設定される。
【0039】
ブラシ片1の材質としては、合成樹脂発泡体、織布、不織布、編物等の布帛、人工皮革、合成皮革、人造皮革等の擬革、本革、フィルム状樹脂組成物、熱可塑性エラストマーシート等が採用される。
【0040】
上記のように構成されたブラシ片1、及び洗車機用洗浄ブラシ6の動作、作用は下記の通りである。
【0041】
ブラシ片1は、加圧痕4が形成された分割片13は、加圧痕4を境にして傾斜角度θだけ三次元的に屈曲変形されてある為、隣接する分割片3と分割片13が長期間に亘り、洗浄水等により張り付くことが無い。従って、分割片3と分割片13が一体化することが無く、被洗浄面に当接するので、洗い残しの発生が防止されると共に、分割片3、13が被洗浄面の細かな凹凸部分にも当接し、被洗浄面に付着している汚れを掻き取る。その為、洗車機用洗浄ブラシ6は、高い洗浄性能を発揮することができる。また、分割片3、13は、スリット2が段差状に形成されているので、異なる長さの分割片3、13が順次、被洗浄面に異なる押付力にて当接する為、汚れを一層除去しやすくなる。
【0042】
また、分割片13は加圧痕4により立体的に形成されているので、分割片3、13の平面部が同時に被洗浄面に当接することが無い。その為、ブラシ片1が被洗浄面に当接する際のバタツキ音を抑制、低減することが可能である。
【0043】
さらに、隣接する分割片3と分割片13が洗浄水等により張り付くことが無いので、ブラシ片1の冬季、特に寒冷地における凍結が防止される。
【0044】
また、加圧痕4が熱加圧されている場合においては、分割片13が強固に立体形状を形成する。その為、ブラシ片1の毛腰を強く設定して被洗浄面に当接させることができるので、洗浄性能が飛躍的に向上する。
【0045】
なお、洗車機用洗浄ブラシ1の構造に関しては、特に限定されるものではなく、使用目的に応じて、適時、設定することができる。
【0046】
(実施例2)
図4は、本発明の第2の実施例におけるブラシ片の部分平面図、図5(A)から(D)は、他の実施の形態におけるブラシ片の部分拡大平面図である。
【0047】
図4において、ブラシ片1aは、端部に円孔10aを有するスリット2aにより細分割された複数の分割片3a、13aが形成されてあると共に、複数のスリット2aを横断して加圧痕4aが分割片3a、13aの表面に形成されている。その為、分割片3a、13aは、加圧痕4aが形成される際の残留歪みにより、三次元的に立体的に変形している。
【0048】
スリット2a、及び円孔10aは、トムソン型等の切断刃により形成される。加圧痕4aは、トムソン型等に、前記切断刃の刃先より僅かに短い突起を設けておくことにより、トムソン型等が上方からブラシ片1aに押し付けられ、スリット2a、及び円孔10aを形成する際に、突起が押し付けられることにより形成される。なお、加圧痕4aは、熱加圧にて形成することもできる。
【0049】
ブラシ片1aの動作、作用は下記の通りである。
【0050】
複数の分割片3a、13aは、加圧痕4aによる屈曲、折れ等の変形による立体的な形成を確実にすることができる。従って、立体的に確実に形成された複数の分割片3a、13aが被洗浄面に当接する為、被洗浄面の曲線部分にも容易に分割片3a、13aが当接することが可能であり、洗浄性能が大幅に向上する。
【0051】
次に、図5を用いて、他の実施の形態におけるブラシ片について説明する。
【0052】
図5(A)において、ブラシ片1bは、端部に円孔10bを有するスリット2bにより細分割された分割片3b、13bが形成されてあると共に、スリット2bを横断して加圧痕4bが分割片3b、13bの表面に概V字形状を有するよう形成されている。その為、分割片3b、13bは、加圧痕4bが形成される際の残留歪みにより、立体V字形に変形している。なお、加圧痕4bの形成方法は、前記実施例1と同様、トムソン型等に設けられた突起の押し付け、あるいは熱加圧により形成される。
【0053】
ブラシ片1bは、立体V字形に変形して形成されているので、分割片3b、13bの側縁部により、被洗浄面に付着している汚れを、スコップで土を掘るが如く掻き出すことができる。
【0054】
図5(B)において、ブラシ片1cは、端部に円孔10cを有するスリット2cにより細分割された分割片3c、13cが形成されてある。また、スリット2cを横断して加圧痕4bが分割片3c、13cの表面に概V字形状を有するよう形成されてあると共に、加圧痕4bより洗浄側には、加圧痕4cが形成されている。その為、分割片3c、13cは、加圧痕4bが形成される際の残留歪みにより、立体V字形に変形する共に、加圧痕4cが形成される際の残留歪みにより、先端が傾斜して形成されている。なお、加圧痕4b、4cの形成方法は、前記実施例1と同様、トムソン型等に設けられた突起の押し付け、あるいは熱加圧により形成される。
【0055】
ブラシ片1cは、加圧痕4bにより立体V字形に変形しているので、分割片3c、13cの側縁部により、被洗浄面に付着している汚れを、掻き出すことができると共に、加圧痕4cにより傾斜した分割片3c、13cの先端部が、被洗浄面に付着している汚れを叩き落とす。
【0056】
図5(C)において、ブラシ片1dは、端部に円孔10dを有するスリット2dにより細分割された分割片3d、13dが形成されてある。また、分割片3d、13dの側縁部近傍と、スリット2dの近傍の表面には、加圧痕4dが形成されている。その為、分割片3d、13dは、加圧痕4dが形成される際の残留歪みにより、立体的に屈曲して変形している。なお、加圧痕4dの形成方法は、前記実施例1と同様、トムソン型等に設けられた突起の押し付け、あるいは熱加圧により形成される。
【0057】
ブラシ片1dは、立体的に屈曲して変形しているので、分割片3d、13dは被洗浄面にたいして多角的に当接する為、汚れの掻き取り性能が向上する。
【0058】
また、加圧痕4dは、分割片3d、13dを横断して形成されていない為、被洗浄面に当接した時の分割片3d、13dの強度を向上させることができる。
【0059】
図5(D)において、ブラシ片1eは、端部に円孔10eを有するスリット2eにより細分割された分割片3e、13eが形成されてある。また、スリット2eを横断して加圧痕4bが分割片3e、13eの表面に概V字形状を有するよう形成されてあると共に、分割片3e、13eの裏面にも概V字形状を有するよう加圧痕4eが形成されている。その為、分割片3e、13eは、加圧痕4b、4eが形成される際の残留歪みにより、屈曲しながら立体V字形に変形して形成されている。
【0060】
ブラシ片1eは、最初にトムソン型等の切断刃によりスリット2e、及び円孔10eが形成されと同時に、トムソン型等に設けられた前記切断刃より僅かに短い突起が押し当てられることにより、加圧痕4bが形成される。次に、ブラシ片1eを裏返して、突起が設けられた型を、上方から押し当てて、加圧痕4eを形成する。なお、加圧痕4b、4eは、熱加圧により形成しても何ら支障は無い。また、前記以外にも、トムソン型の上型と下型の両方に突起を形成して、同時に加圧痕4b、4eを形成する形態も採用できる。
【0061】
ブラシ片1eは、立体的に屈曲してV字形状に変形しているので、分割片3e、13eは被洗浄面にたいして多面的に当接する為、容易に汚れを掻き取ることができ、洗浄性能が向上する。
【0062】
(実施例3)
図6は、本発明の第3の実施例におけるブラシ片の部分拡大平面図、図7(A)、及び図7(B)は、図6のブラシ片の形成過程を示す平面図である。
【0063】
図6において、ブラシ片1fは、端部に円孔10fを有するスリット2fにより細分割された分割片3f、13fが形成されてある。また、分割片3f、13fは、捩り部8を有して捩られて形成されてあると共に、捩り部8の近傍には加圧痕4fが形成されている。
【0064】
次に、図7を用いて、ブラシ片1fの形成方法について説明する。
【0065】
最初に、図7(A)の如く、予めトムソン型等により穴スリット12、及び円孔10fが設けられたシート状体21を用意する。次に、シート状体21の両方の側縁部11を、矢印の如く、穴スリット12の中に挿入後、反転させる。次に、図7(B)の如く、スリット形成領域30の範囲内を、上方から型押し、あるいは熱加圧する。最後に、切断面40を、カッター、トムソン型等により切断して、図6の如く、加圧痕4fの残留歪みにより捩り部8を有して捩られたブラシ片1fが製作される。なお、スリット2fは、穴スリット12が切断面40にて切断されることにより、必然的に形成される。
【0066】
ブラシ片1fの動作、作用は下記の通りである。
【0067】
ブラシ片1fは、分割片3f、13fに形成された捩り部8により、被洗浄面に強固に付着している汚れ、特にワックスやシリコーンを主体とする油性の水垢汚れや鉄粉等を、掻き出して、除去することができる為、洗浄性能が向上する。
【0068】
(実施例4)
図8は、本発明の洗車機用洗浄ブラシ6が搭載されてある洗車機の正面図である。
【0069】
図8において、洗車機51は、本発明の洗車機用洗浄ブラシ6が搭載されてあり、洗車機用洗浄ブラシ6は駆動源52により回転駆動される。ノズル53からは、被洗浄面にたいして、洗浄剤、及び洗浄水等が散布され、洗車機用洗浄ブラシ6により、被洗浄面に付着している汚れが除去され、洗浄後は洗車機51の乾燥手段である乾燥機54により被洗浄面が乾燥される。
【0070】
なお、洗車機用洗浄ブラシ6に装着されているブラシ片は、上記実施例におけるブラシ片1、1a、1b、1c、1d、1e、1fのいずれかと同一である。
【0071】
上記のように構成された洗車機51の動作、作用は下記の通りである。
【0072】
洗車機51は、洗い残しの無い高い洗浄性能を有する洗車機用洗浄ブラシ6が搭載されてある為、駆動源52により洗車機用洗浄ブラシ6の回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、優れた洗浄性能が発揮される。また、洗車機用洗浄ブラシ6が回転して被洗浄面に当接する際、ブラシ片のバタツキ音の発生を抑えることが可能である。さらに、ブラシ片の凍結が防止されるので、被洗浄面にブラシ片による洗車傷を付着させることが無い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片は、主に、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に搭載する洗車機用洗浄ブラシのブラシ片として使用する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】(A)本発明の洗車機用洗浄ブラシを前面側から見た斜視図、(B)図1(A)の断面図
【図2】本発明の第1の実施例におけるブラシ片の部分平面図
【図3】(A)ブラシ片の部分拡大斜視図、(B)図3(A)の正面図
【図4】本発明の第2の実施例におけるブラシ片の部分平面図
【図5】(A)他の実施の形態におけるブラシ片の部分拡大平面図、(B)他の実施の形態におけるブラシ片の部分拡大平面図、(C)他の実施の形態におけるブラシ片の部分拡大平面図、(D)他の実施の形態におけるブラシ片の部分拡大平面図
【図6】本発明の第3の実施例におけるブラシ片の部分拡大平面図
【図7】(A)図6のブラシ片の形成過程を示す平面図、(B)図6のブラシ片の形成過程を示す平面図
【図8】本発明の洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある洗車機の正面図
【符号の説明】
【0075】
1、1a、1b、1c、1d、1f ブラシ片
2、2a、2b、2c、2d、2f スリット
3、3a、3b、3c、3d、3f、13、13a、13b、13c、13d、13f 分割片
4、4a、4b、4c、4d、4f 加圧痕
5 軸体
6 洗車機用洗浄ブラシ
7 溝部
8 捩り部
9 リベット
10、10a、10b、10c、10d、10f 円孔
11 側縁部
12 穴スリット
20、30 スリット形成領域
21 シート状体
40 切断面
51 洗車機
52 駆動源
53 ノズル
54 乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記ブラシ片は、スリットにより形成された分割片を有し、前記スリットの形成領域内の少なくとも一片の前記分割片の表面に加圧痕が形成されてあると共に、前記加圧痕を有する前記分割片が立体的に形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシのブラシ片。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記分割片は捩じられて形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシのブラシ片。
【請求項3】
請求項1から2記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記加圧痕は前記分割片を横断して形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシのブラシ片。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシのブラシ片において、前記加圧痕は熱加圧にて形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシのブラシ片。
【請求項5】
軸体及び請求項1から4のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシのブラシ片を有し、前記軸体の外周部に前記ブラシ片が形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項6】
駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項5記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−132824(P2008−132824A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−318844(P2006−318844)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】