説明

洗車機用洗浄ブラシ及び洗車機

【課題】ブラシ体が被洗浄面にたいして順次、異なる傾斜角度にてさまざまな方向から異なる押付力にて面接触すると共に、ブラシ体の毛腰を保持しながら、被洗浄面にブラシ体が均一に密着することにより、効率よく確実に、被洗浄面に付着している汚れを除去し、洗い残しの無い高い洗浄性を有する洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供する。
【解決手段】洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片と取付部を有するブラシ体、及び軸体を有し、前記ブラシ体は前記軸体にたいして貫通されてあると共に、前記軸体の外周部に前記取付部にて装着され、前記取付部は前記軸体の長手方向にたいして位相差を有して複数形成されてあり、前記ブラシ片は複数の異種ブラシ部材が接合されてあると共に、前記ブラシ部材は洗浄側及び前記軸体側に構成されてあるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗浄ブラシ、及びその洗浄ブラシを搭載した洗車機に関しては、使用目的に応じて、さまざまな改良がなされ、例えば、長方形状に形成した布製のブラシ単体を使用し、このブラシ単体の長手方向の両端間を一体化して筒状に形成するとともに、長手方向に対して直交状方向の一側部分でかつ長手方向の複数箇所をそれぞれ被嵌合体に固定し、軸体の円周状外面で周方向の複数箇所に、前記被嵌合体を軸体の軸心方向に摺動自在に嵌合させる嵌合部を軸心方向に形成することで、軸体に対してブラシ単体を外嵌するとともに、ブラシ単体を軸心方向に積層して配置し、軸体の軸心方向の少なくとも一端に位置した被嵌合体の外方への移動を阻止する固定装置を、軸体に着脱自在に設けたことを特徴とする洗車機用ブラシが、特許第3092502号に開示されてある。
【0003】
また、洗車機本体と被洗浄車両とを車長方向に相対的に移動させて、ブラシ郡により被洗浄車両の洗浄を行う洗車機であって、少なくとも一部のブラシは、布製ブラシ単体とスポンジ製ブラシ単体との両方を使用して構成されていることを特徴とする洗車機が、特許第3722026号に開示されてある。
【0004】
【特許文献1】特許第3092502号
【特許文献2】特許第3722026号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗浄ブラシを搭載した洗車機は、例えば、上記の如くの特徴を有する技術が開示されてあるが、特許第3092502号に開示されてある技術においては、洗車機用ブラシの回転軌跡は横同一方向のみであり、ブラシ単体は被洗浄面である車体に線状に当接する為、複数のブラシ単体の間に隙間が生じ、車体に筋状の洗い残しが発生するという課題を有していた。また、ブラシ単体は同一押付力にて車体に当接するので、車体に強固に付着している汚れを除去することが難しいという課題も有していた。さらに、ブラシ単体は、織布や不織布など布のみからなる一枚ものである。その為、ブラシ単体に風合いの柔らかい布を使用した場合、ブラシ単体は吸水により毛腰を失い、ブラシ単体が軸体に巻き付き、作用半径が小さくなり、車体に付着している汚れを確実に除去することができない。また、ブラシ単体に毛腰を保持する為、風合いの硬い布を使用した場合、車体にたいするブラシ単体の密着性が劣り、車体に付着している汚れを効率よく除去することができないという課題も有していた。
【0006】
また、特許第3722026号に開示されてある技術においては、布製ブラシが洗車中に水を含んでも、スポンジ製ブラシは独立気泡を有する合成樹脂発泡体からなり、水を含み難く、ブラシ郡の毛腰は保持できるものの、ブラシ郡の洗浄方向は横同一方向のみであり、ブラシ郡は車体に同一押付力にて線接触する。また、布製ブラシ単体とスポンジ製ブラシ単体とが、ブラシ軸心の方向で交互に配列され、いずれかの作用半径が長く設定されているので、洗車中に車体に当接するブラシ郡の間に隙間ができ、ブラシ郡が車体に当接しない部分が生じる為、洗い残しが発生し、洗浄性が劣るという課題を有していた。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、ブラシ体が被洗浄面にたいして順次、異なる傾斜角度にてさまざまな方向から異なる押付力にて面接触すると共に、ブラシ体の毛腰を保持しながら、被洗浄面にブラシ体が均一に密着することにより、効率よく確実に、被洗浄面に付着している汚れを除去し、洗い残しの無い高い洗浄性を有する洗車機用洗浄ブラシ、及びその洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決する為に、本発明の洗車機用洗浄ブラシは、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片と取付部を有するブラシ体、及び軸体を有し、前記ブラシ体は前記軸体にたいして貫通されてあると共に、前記軸体の外周部に前記取付部にて装着され、前記取付部は前記軸体の長手方向にたいして位相差を有して複数形成されてあり、前記ブラシ片は複数の異種ブラシ部材が接合されてあると共に、前記ブラシ部材は洗浄側及び前記軸体側に構成されてあるもので、ブラシ体は取付部が軸体の長手方向に位相差を有して複数形成されてある為、被洗浄面にたいして同一方向のみならず、異なる方向から異なる押付力にて面接触する。その為、筋状の洗い残しが発生することが無い。
【0009】
また、上記の構成において、洗浄側に構成したブラシ部材に、例えば、不織布及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる二重構造体、不織布等の好適に柔軟性を有するブラシ部材、軸体側に構成したブラシ部材に、例えば、熱圧着された不織布、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を有する布帛等の好適に毛腰が保持されるブラシ部材を採用し、互いのブラシ部材を接合してブラシ片を形成した場合、ブラシ体は強い毛腰を維持しながら、被洗浄面にたいして均一に密着して当接するので、効率よく確実に、被洗浄面に付着している汚れが除去される。
【0010】
また、本発明の洗車機は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項1から5のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載したもので、被洗浄面に均一に密着して当接し、洗い残しの無い高い洗浄性を有する洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある為、洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、洗い残しの無い高い洗浄性を発揮することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ体に装着されている取付部が軸体の長手方向に位相差を有して複数形成されてある為、ブラシ体は被洗浄面にたいして同一方向のみならず、異なる方向から異なる押付力にて面接触するので、筋状の洗い残しが発生することが無く、高い洗浄性を有する非常に優れたものである。
【0012】
また、洗浄側に構成したブラシ部材に柔軟性を有するブラシ部材、軸体側に構成したブラシ部材に毛腰が保持されるブラシ部材を採用し、互いのブラシ部材を接合してブラシ片を形成した場合、ブラシ体は強い毛腰を維持しながら、被洗浄面にたいして均一に密着して当接するので、効率よく確実に、被洗浄面に付着している汚れを除去することができる。
【0013】
また、本発明の洗車機は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項1から5のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載したもので、被洗浄面に均一に密着して当接し、洗い残しの無い高い洗浄性を有する洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある為、洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、洗い残しの無い高い洗浄性を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明は、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片と取付部を有するブラシ体、及び軸体を有し、前記ブラシ体は前記軸体にたいして貫通されてあると共に、前記軸体の外周部に前記取付部にて装着され、前記取付部は前記軸体の長手方向にたいして位相差を有して複数形成されてあり、前記ブラシ片は複数の異種ブラシ部材が接合されてあると共に、前記ブラシ部材は洗浄側及び前記軸体側に構成されてあるもので、ブラシ体は取付部が軸体の長手方向に位相差を有して複数形成されてある為、被洗浄面にたいして同一方向のみならず、異なる方向から異なる押付力にて面接触する。その為、筋状の洗い残しが発生することが無く、高い洗浄性を発揮することができる。
【0015】
また、上記の構成において、洗浄側に構成したブラシ部材に、例えば、不織布及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる二重構造体、不織布等の好適に柔軟性を有するブラシ部材、軸体側に構成したブラシ部材に、例えば、熱圧着された不織布、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を有する布帛等の好適に毛腰が保持されるブラシ部材を採用し、互いのブラシ部材を接合してブラシ片を形成した場合、ブラシ体は強い毛腰を維持しながら、被洗浄面にたいして均一に密着して当接するので、効率よく確実に、被洗浄面に付着している汚れを除去することができる。
【0016】
第2の発明は、特に、第1の発明の洗車機用洗浄ブラシにおいて、洗浄側に構成した前記ブラシ部材は不織布及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる二重構造体にて形成されてあるもので、ブラシ部材は多孔質化されたポリウレタンを有する為、柔軟性に優れ、被洗浄面にたいして均一に密着すると共に、不織布が効率よく確実に汚れを除去する。
【0017】
第3の発明は、特に、第1の発明の洗車機用洗浄ブラシにおいて、洗浄側に構成した前記ブラシ部材は不織布にて形成されてあり、前記不織布を形成する繊維の一部は外周面の長手方向に沿って、スリットにより発生した角部が少なくとも二箇所以上形成されてあるもので、不織布が柔軟に被洗浄面に当接すると共に、繊維の有する角部が汚れを掻き取るように除去する。
【0018】
第4の発明は、特に、第1から第3の発明の洗車機用洗浄ブラシにおいて、洗浄側に構成した前記ブラシ部材と前記軸体側に構成した前記ブラシ部材の接合部は、前記軸体からの距離が異なるように形成されてあるもので、ブラシ体の毛腰に強弱が付与され、ブラシ体は被洗浄面にたいして、一層異なる押付力にて面接触して当接する為、被洗浄面に強固に付着している汚れも掻き落して除去することができる。その為、洗浄性が大幅に向上する。
【0019】
第5の発明は、特に、第1から第4の発明の洗車機用洗浄ブラシにおいて、洗浄側に構成した前記ブラシ部材はスリット又は/及び細分割部を有するもので、スリットにより分割された分割片、細分割部により被洗浄面の細かな凹凸部にも分割片、細分割部が接触して汚れを掻き出す為、洗浄性が飛躍的に向上する。
【0020】
第6の発明は、駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、第1の発明から第5の発明のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機としたもので、被洗浄面に均一に密着して当接し、洗い残しの無い高い洗浄性を有する洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある為、洗車機は、駆動源により洗車機用洗浄ブラシの回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、洗い残しの無い高い洗浄性を発揮することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
図1は、本発明の洗車機用洗浄ブラシを前面側から見た斜視図、図2は、図1の部分拡大正面図、図3は、ブラシ体の取付状態を示す断面図、図4(a)は、ブラシ片の斜視図、図4(b)は他の実施の形態におけるブラシ片の斜視図、図5(a)から図5(c)は、他の実施の形態におけるブラシ片の平面図、図6(a)は、洗浄側ブラシ部材の部分拡大図、図6(b)は、他の実施の形態における洗浄側ブラシ部材を前面側から見た斜視図、図6(c)は、図6(b)の集合体を前面側から見た斜視図、図6(d)は、図6(c)の断面図、図7は、図1の側面図、図8は、図7のA−A、B−B、C−C、D−D断面図である。
【0023】
図1、図2、及び図3において、洗車機用洗浄ブラシ1は、略円盤状の一片のブラシ体2が有する4箇所の取付部4、14、24、34を、アルミニウム等の金属材料からなる略円筒形状の軸体5の外周等分4箇所に設けられた突起状の溝部6に挿入し、順次、同様にして複数のブラシ体12、22、・・・を軸体5に貫通して、それぞれの取付部44、54、・・・を溝部6に挿入することにより、形成されてある。ブラシ体2は、洗浄側ブラシ部材7と軸体側ブラシ部材8が縫製により接合された接合部9を介して略円盤状の一片のブラシ片3が形成されてあると共に、軸体側ブラシ部材8の軸体5側の端部の等分4箇所を折り畳んだ折畳み部15に、リベット11にて止め具13を固定して形成された取付部4、14、24、34が装着されることにより、形成される。他のブラシ体12、22、・・・についても同様である。なお、軸体5の外周面に設けられた溝部6は、等分4箇所以外にも、6箇所、8箇所、12箇所等、使用目的に応じて、適時、設定できる。その場合、一片のブラシ体2に形成されてある4箇所の取付部4、14、24、34も6箇所、8箇所、12箇所等となる。
【0024】
また、軸体5の一方の端部には、溝部6にたいしてボルト18により固定された4個の固定具17が装着され、ブラシ体2、12、22、・・・が回転中に移動して軸体5から脱落することを防止している。なお、軸体5の他方の端部は、図9に示す洗車機51の駆動源52に配設される。そして、固定具17の側面の対角方向2箇所には、スペーサー16が軸体5の溝部6に挿入され、固定具17の一方の側面とスペーサー16の一方の側面が接すると共に、スペーサー16の他方の側面には、ブラシ体2の取付部14、34が溝部6に挿入されて接している。また、スペーサー16が溝部6に挿入されていない2個の固定具17の一方の側面には、ブラシ体2の取付部4、24が溝部6に挿入されて接している。その為、取付部4と取付部14を見た場合、スペーサー16の長さ分だけ位相差50が生じて軸体5の溝部6に挿入されていることになる。同様に、取付部14と取付部24、取付部24と取付部34、取付部34と取付部4の場合も、スペーサー16の長さ分だけ位相差50が生じることになる。また、ブラシ体2の次に、軸体5に貫通して装着されるブラシ体12についても、取付部44と取付部54は位相差50を有して溝部6に挿入されることになり、以下、ブラシ体2の場合と同様である。従って、洗車機用洗浄ブラシ1は、ブラシ体2、12、22、・・・に装着されている取付部4、14、24、34、44、54、・・・が軸体5の長手方向にたいして一つの位相差50を有して複数形成されている。
【0025】
次に、図2、図3、及び図4(a)を用いて、洗車機用洗浄ブラシ1の製造方法について説明する。
【0026】
最初に、図4(a)の如く、長方形状の洗浄側ブラシ部材7と、一方の端部近傍に複数の取付孔20を有する長方形状の軸体側ブラシ部材8を、洗浄側ブラシ部材7の一方の端部と軸体側ブラシ部材8の他方の端部を重ね合わせて、縫製による接合部9を介して一体化する。なお、軸体側ブラシ部材8に形成されている複数の取付孔20は、予めトムソン型等を使用して形成しておく。また、接合部9の形成方法は、前記縫製以外にも、ネジ止め、リベット止め、面ファスナー、編み込み等の物理的接合方法、接着、溶着、融着等の化学的接合方法を用いても構わない。次いで、洗浄側ブラシ部材7と軸体側ブラシ部材8が一体化されたシート状体を、円筒形状を形成するように両端部を重ね合わせた後、縫い合わせることにより、縫製部21を有する一片のブラシ片3を製作する。
【0027】
次に、ブラシ片3が有する隣接する6箇所の取付孔20を重ね合わせて、折畳み部15を形成する。折畳み部15を4箇所形成した後、それぞれの折畳み部15の取付孔20にたいしてリベット11にて止め具13を固定して取付部4、14、24、34を形成して、略円盤状の一片のブラシ体2を製作する。ブラシ体2は、軸体5に貫通されると共に、前記の如く、取付部4、24と取付部14、34の間に位相差50を有するよう、軸体5の溝部6に取付部4、14、24、34を挿入して装着される。以下、同様に複数のブラシ体12、22、・・・が軸体に貫通されると共に、取付部44、54、・・・が位相差50を有するように溝部6に挿入され、洗車機用洗浄ブラシ1が製作される。
【0028】
なお、特に図示しないが、一片のブラシ体2が有する取付部4、14、24、34の軸体5の溝部6にたいする装着状態は、前記の如く、一つの位相差50を有する状態以外にも、例えば、固定具17と取付部34の間にスペーサー16を2個挿入することにより、複数の位相差を有するように形成しても構わない。具体的には、取付部24と取付部34、取付部34と取付部4の間には位相差50の2倍の長さの位相差が生じ、取付部4と取付部14、取付部14と取付部24の間には前記と同様の位相差50が生じ、一片のブラシ体2が有する取付部4、14、24、34により、二つの位相差が発生することになる。他のブラシ体12、22・・・についても同様である。
【0029】
一片のブラシ体2が取付部4、14、24、34により、上記の如く、複数の位相差を有するよう形成されてある場合においては、洗車機用洗浄ブラシ1は、ブラシ体2、12、22、・・・が、一層、広がりながら被洗浄面である車体に面接触すると共に、順次、異なる傾斜角度にてさまざまな方向から車体に当接し、車体に付着している汚れを的確に除去する為、洗浄性が向上する。
【0030】
また、固定具17と取付部14、24の間にスペーサー16を1個挿入し、固定具17の側面と取付部4、34が接するように形成された形態等も採用できる。
【0031】
また、図4(b)の如く、一方の端部に波状の段差を有する洗浄側ブラシ部材27と、一方の端部に複数の取付孔25を有すると共に、他方の端部には波状の段差を有する軸体側ブラシ部材28を、波状の段差を有する方の互いの端部を重ね合わせて、縫製による接合部29を介して一体化し、一体化されたシート状体を、円筒形状を形成するように両端部を重ね合わせた後、縫い合わせることにより、縫製部26を有する一片のブラシ片23を形成してもよい。
【0032】
上記の如く、洗浄側ブラシ部材27と軸体側ブラシ部材28の接合部29が、軸体5からの距離を異なるように形成したブラシ片23が用いられている場合、洗車機用洗浄ブラシ1は、ブラシ片23の毛腰に強弱が付与され、ブラシ片23は被洗浄面である車体にたいして、一層異なる押付力にて面接触して当接する為、車体に強固に付着している汚れも掻き落して除去することができる。その為、洗浄性が大幅に向上する。
【0033】
また、図5(a)の如く、洗浄側端部にスリット10により複数の分割片19が形成された洗浄側ブラシ部材67と、軸体側ブラシ部材68を、縫製による接合部69を介して形成されたブラシ片63を用いることもできる。さらに、図5(b)の如く、洗浄側端部に細分割機等により形成された細分割部56を有する洗浄側ブラシ部材77と、軸体側ブラシ部材78を、縫製による接合部79を介して形成されたブラシ片73を使用してもよい。さらにまた、図5(c)の如く、洗浄側端部に細分割機等により形成された細分割部66、及びスリット60により複数の分割片59が形成された洗浄側ブラシ部材87と、軸体側ブラシ部材88を、縫製による接合部89を介して形成されたブラシ片83を用いることもできる。
【0034】
上記の如くのブラシ片63、73、83が用いられている場合、洗車機用洗浄ブラシ1は、スリット10、60により分割された分割片19、59、細分割部56、66により被洗浄面である車体の細かな凹凸部にも分割片19、59、細分割部56、66が接触して汚れを掻き出す為、洗浄性が飛躍的に向上する。
【0035】
次に、図6を用いて、洗浄側ブラシ部材7、27、67、77、87の材質について説明する。
【0036】
図6(a)において、洗浄側ブラシ部材7、27、67、77、87は、片面に起毛部36が形成された不織布31及び極微細な気泡32を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる二重構造体にて形成されてある。前記の如くの材質は、次の手順にて、製造される。最初に、複数本の繊維35を、平板状に集積させて布状体を形成し、前記布状体を複数枚、重ね合わせた後、特殊な針を突き刺して、3次元に絡合された不織布31を形成する。前記の如くの製造方法は、一般的には、ニードルパンチングと呼ばれている。次いで、不織布31を、ポリウレタン溶液中に含浸させることにより、不織布31に、ポリウレタン溶液を充填させる。次に、ポリウレタン溶液を充填させた不織布31を、水中に浸漬させると共に、二酸化炭素を水中に注入することにより、炭酸発泡させ、不織布31、及び極微細な気泡32を有する多孔質化されたポリウレタンの基部33よりなる二重構造体が得られる。次に、前記二重構造体の片面を、研磨紙等を用いて研磨処理することにより、起毛部36を形成する。繊維35の材質としては、ポリエステルが使用されているが、ナイロン、ポリプロピレン、ウレタン弾性糸とも呼ばれているスパンデックス等を単独、あるいは併用することもできる。なお、繊維35は短繊維、長繊維のいずれでもよい。一般的に、短繊維とは糸長が50mm以下の繊維のことであり、長繊維とは糸長が50mmより大の繊維のことである。また、繊維35は原糸繊維、極細繊維のいずれでもよい。一般的に、原糸繊維とは繊度が1デシテックス(dtex)以上の繊維のことであり、極細繊維とは繊度が1dtex未満の繊維のことであり、1dtexとは糸長10000mで1gとなる繊維のことである。また、前記二重構造体にたいして、フッ素樹脂、ウレタン樹脂等を含浸、浸漬、スプレー等の方法を用いて、撥水加工を施しても構わない。
【0037】
洗浄側ブラシ部材7、27、67、77、87に、前記二重構造体を用いた場合、二重構造体は多孔質化されたポリウレタンを有する為、柔軟性に優れ、被洗浄面である車体にたいして均一に密着すると共に、不織布31が効率よく確実に汚れを除去する。また、起毛部36が車体に当接する場合においては、非起毛面が車体に当接する場合に比べて、摩擦係数が向上し、より均一に車体に密着すると共に、起毛部36が車体の細かな凹凸部に堆積している汚れを掻き出すことができる。
【0038】
また、洗浄側ブラシ部材7、27、67、77、87は、図6(b)の如く、複数の集合体37からなる平板状の不織布41を用いることもできる。集合体37は、図6(c)、及び図6(d)の如く、外周面の長手方向に複数のスリット42が形成されると共に、複数の角部40を有する概楔形状にて形成されてある。不織布41は、次の手順にて、製造される。最初に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂を溶融紡糸して、概丸形断面を有する原糸長繊維を得る。得られた原糸長繊維を、ニードルパンチングにより立体的に絡合して布状体となるウエッブを形成する。次いで、前記ウエッブにたいして、100kg〜150kg程度の高圧水流を当て、原糸長繊維を結合させると共に、前記原糸長繊維は、高圧水流が当たることにより、図6(c)、及び図6(d)の如く、外周面の長手方向に沿って、複数のスリット42が発生して細分割され、角部40を有する細分割された複数の極細の繊維45が形成される。次に、ポリウレタン等の高分子弾性体43をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて繊維45の表面に付着させ、弾性繊維38が集束した集合体37からなる平板形状の不織布41を形成する。前記の如くの製造方法は、一般的に水流絡合法と呼ばれている。また、不織布41にたいして、フッ素樹脂、ウレタン樹脂等を含浸、浸漬、スプレー等の方法を用いて、撥水加工を施してもよい。
【0039】
洗浄側ブラシ部材7、27、67、77、87に、不織布41を用いた場合、不織布41は、高分子弾性体43を有する為、柔軟に被洗浄面である車体に当接すると共に、繊維45の有する角部40が汚れを掻き取るように除去する。
【0040】
なお、洗浄側ブラシ部材7、27、67、77、87に使用される材質については、上記の如くの材質以外にも、車体への密着性に優れ、高い柔軟性を有する織布、編物、フィルム状樹脂組成物等を用いることができる。
【0041】
次に、軸体側ブラシ部材8、28、68、78、88に用いられる材質について説明する。
【0042】
軸体側ブラシ部材8、28、68、78、88は、吸水性が低く、強い毛腰を保持できる材質が好ましい。例えば、熱溶融したポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系の合成樹脂を連続的に紡糸して繊維を形成し、前記繊維を延伸しながら捕集ネット上に集積して熱ロールで加圧することにより繊維を結合した不織布が好適に用いられる。前記の如くの不織布の製造方法は、一般的にスパンボンド法と呼ばれている。ポリオレフィン系の合成繊維は、吸水率が0%であり、繊維が洗車中に吸水することは無く、スパンボンド法により製造された不織布は熱ロールで加圧されているので、不織布が洗車中に吸水する空隙部が熱圧着され、吸水性が低い為、軸体側ブラシ部材8、28、68、78、88に強い毛腰を付与することができる。
【0043】
また、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を有する不織布、織布、編物等の布帛を、軸体側ブラシ部材8、28、68、78、88に用いてもよい。ポリトリメチレンテレフタレート繊維は、吸水率が0.4%と吸水性が低い。また、分子鎖がバネ状に屈曲している為、形状復元力に優れ、高い弾力性を有している。その為、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を有する布帛を、軸体側ブラシ部材8、28、68、78、88に用いた場合、軸体側ブラシ部材8、28、68、78、88は強い毛腰を保持することができる。なお、布帛にフッ素樹脂やシリコーン樹脂等で撥水加工を施すと、吸水性がさらに低下し、毛腰を長期間に亘って維持することが可能である。
【0044】
なお、軸体側ブラシ部材8、28、68、78、88に使用される材質については、上記の如くの材質以外にも、熱可塑性エラストマーシート、合成樹脂板、独立気泡を有する合成樹脂発泡体等を用いることができる。
【0045】
次に、図7、及び図8を用いて、洗車機用洗浄ブラシ1の洗車時における、被洗浄面である車体にたいするブラシ体2の洗浄状態を説明する。
【0046】
ブラシ体2は、図8のA−A断面図の如く、車体にたいして取付部14、取付部24、及び取付部34が形成されてある時には、車体にたいして取付部34からブラシ体2の端部、即ち軸体側ブラシ部材8の軸体5側の基端部から洗浄側ブラシ部材7の洗浄側端部に向かって、左斜め下方に押付力46が発生する。また、B−B断面図の如く、車体にたいして取付部14、及び取付部24が形成されてある時には、車体にたいしてブラシ体2の端部に向かって、軸体5の長手方向にたいして垂直な方向に押付力47が発生する。また、C−C断面図の如く、車体にたいして取付部4、取付部14、及び取付部24が形成されてある時には、車体にたいして取付部24からブラシ体2の端部、即ち軸体側ブラシ部材8の軸体5側の基端部から洗浄側ブラシ部材7の洗浄側端部に向かって、右斜め下方に押付力48が発生する。また、D−D断面図の如く、車体にたいして取付部4、及び取付部14が形成されてある時には、車体にたいしてブラシ体2の端部に向かって、軸体5の長手方向にたいして垂直な方向に押付力49が発生する。
【0047】
従って、洗車機用洗浄ブラシ1は、取付部4、14、24、34が軸体の長手方向にたいして位相差50を有するようにブラシ体2が形成されてある為、ブラシ体2は車体にたいして、ブラシ体2の端部に向かって左斜め下方の押付力46、軸体5の長手方向に垂直な押付力47、ブラシ体2の端部に向かって右斜め下方の押付力48、軸体5の長手方向に垂直な押付力49と、順次、異なる押付力46、47、48、49にて面接触しながら、幅広く、繰り返し洗浄することができる。その為、洗車機用洗浄ブラシ1は、効率よく確実に、車体に付着している汚れを除去し、洗い残しの無い高い洗浄性を発揮することができる。
【0048】
また、洗浄側ブラシ部材7に柔軟性を有する不織布31及び極微細な気泡32を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる二重構造体、あるいは不織布41等を採用し、軸体側ブラシ部材8に毛腰が保持されるスパンボンド法により製造された不織布、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を有する布帛等を採用し、洗浄側ブラシ部材7と軸体側ブラシ部材8を縫製による接合部9を介してブラシ片3を形成しているので、ブラシ体2は、軸体側ブラシ部材8により強い毛腰を保持しながら、洗浄側ブラシ部材7が車体にたいして均一に密着して当接することができる。
【0049】
なお、ブラシ体2、12、22、・・・の軸体5にたいする取り付け方法は、上記記載の方法以外にも、位相差50を有しているならば、リベット等を用いて、ブラシ体2、12、22・・・を軸体5に直接、固定してもよい。また、ブラシ片3の端部をリング状の止め具に縫い合わせた後、軸体5の長手方向にたいして傾斜角度を有するように軸体5に装着する等の方法も採用できる。また、止め具13、スペーサー16、固定具17等の詳細寸法、形状、材質、折畳み部15の形成状態等は、適時、設定することができる。
【0050】
(実施例2)
図9は、本発明の洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある洗車機の正面図である。
【0051】
図9において、洗車機51は、本発明の洗車機用洗浄ブラシ1が搭載されてあり、洗車機用洗浄ブラシ1は駆動源52により回転駆動される。ノズル53からは、被洗浄面である車体にたいして、洗浄剤、及び洗浄水等が散布され、洗車機用洗浄ブラシ1により、車体に付着している汚れが除去され、洗浄後は洗車機51の乾燥手段である乾燥機55により車体が乾燥される。
【0052】
洗車機51は、車体に均一に密着して当接し、洗い残しの無い高い洗浄性を有する洗車機用洗浄ブラシ1が搭載されてある為、駆動源52により洗車機用洗浄ブラシ1の回転を低速に設定すると共に、洗浄時間を短時間に設定した場合においても、洗い残しの無い高い洗浄性を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の洗車機用洗浄ブラシは、主に、自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に搭載する洗車機用洗浄ブラシとして使用する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の洗車機用洗浄ブラシを前面側から見た斜視図
【図2】図1の部分拡大正面図
【図3】ブラシ体の取付状態を示す断面図
【図4】(a)ブラシ片の斜視図、(b)他の実施の形態におけるブラシ片の斜視図
【図5】(a)他の実施の形態におけるブラシ片の平面図、(b)他の実施の形態におけるブラシ片の平面図、(c)他の実施の形態におけるブラシ片の平面図
【図6】(a)洗浄側ブラシ部材の部分拡大図、(b)他の実施の形態における洗浄側ブラシ部材を前面側から見た斜視図、(c)図6(b)の集合体を前面側から見た斜視図、(d)図6(c)の断面図
【図7】図1の側面図
【図8】図7のA−A、B−B、C−C、D−D断面図
【図9】本発明の洗車機用洗浄ブラシが搭載されてある洗車機の正面図
【符号の説明】
【0055】
1 洗車機用洗浄ブラシ
2、12、22 ブラシ体
3、23、63、73、83 ブラシ片
4、14、24、44、54 取付部
5 軸体
6 溝部
7、27、67、77、87 洗浄側ブラシ部材
8、28、68、78、88 軸体側ブラシ部材
9、29、69、79、89 接合部
10、42、60 スリット
11 リベット
13 止め具
15 折畳み部
16 スペーサー
17 固定具
18 ボルト
19、59 分割片
20、25 取付孔
21、26 縫製部
31、41 不織布
32 気泡
33 基部
35、45 繊維
36 起毛部
37 集合体
38 弾性繊維
40 角部
43 高分子弾性体
46、47、48、49 押付力
50 位相差
51 洗車機
52 駆動源
53 ノズル
55 乾燥機
56、66 細分割部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車あるいは車両の外面の被洗浄面に付着した汚れ等を洗浄する為の洗車機に使用する洗車機用洗浄ブラシにおいて、前記洗車機用洗浄ブラシは、ブラシ片と取付部を有するブラシ体、及び軸体を有し、前記ブラシ体は前記軸体にたいして貫通されてあると共に、前記軸体の外周部に前記取付部にて装着され、前記取付部は前記軸体の長手方向にたいして位相差を有して複数形成されてあり、前記ブラシ片は複数の異種ブラシ部材が接合されてあると共に、前記ブラシ部材は洗浄側及び前記軸体側に構成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシにおいて、洗浄側に構成した前記ブラシ部材は不織布及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる二重構造体にて形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項3】
請求項1記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシにおいて、洗浄側に構成した前記ブラシ部材は不織布にて形成されてあり、前記不織布を形成する繊維の一部は外周面の長手方向に沿って、スリットにより発生した角部が少なくとも二箇所以上形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシにおいて、洗浄側に構成した前記ブラシ部材と前記軸体側に構成した前記ブラシ部材の接合部は、前記軸体からの距離が異なるように形成されてあることを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項5】
請求項1から4記載の構成よりなる洗車機用洗浄ブラシにおいて、洗浄側に構成した前記ブラシ部材はスリット又は/及び細分割部を有することを特徴とする洗車機用洗浄ブラシ。
【請求項6】
駆動源と、被洗浄面に散布する洗浄剤及び洗浄水を噴出させるノズルと、洗浄後の被洗浄面を乾燥させる乾燥手段を備えると共に、請求項1から5のいずれか1項に記載の洗車機用洗浄ブラシを搭載した洗車機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−73061(P2008−73061A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251987(P2006−251987)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】