説明

洗車機

【課題】 本発明の課題は、リアミラーとリアタイヤとを両方とも装備した自動車の車形を確実に認識し、リアタイヤを検出できるようにした洗車機を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 車形検出部14で検出される2値データに基づいて自動車の上面輪郭と装備品を検出する画像処理部15を備え、画像処理部15は、車形検出部14で検出される2値データの中から、Y軸上の透光と遮光が切り替わる境界点をX軸方向に繋いで自動車の上面輪郭データを抽出する処理を行い、境界点の中で最も上部にある境界点P1を繋いだ第1の上面輪郭データP1と、最も下部にある境界点P3を繋いだ第2の上面輪郭データを作成するとともに、第1及び第2の上面輪郭データに基づいて自動車の装備品を検出するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の装備品を確実に検出することができるよう洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の洗車機として、特許文献1が知られている。この洗車機では、自動車を挟んで光軸を構成する発光・受光素子を上下方向に複数配列した車形センサと、洗車機の走行位置を検出するエンコーダとを備え、洗車機が所定距離走行する毎に、車形センサでの透光/遮光を検出して2値画像データを検出し、この2値画像データを画像処理して自動車の上面輪郭データを抽出するとともに、その輪郭における突出位置や形状から装備品を認識する構成となっている。2値画像データは、Y軸を車形センサの光軸ピッチ、X軸を洗車機本体の走行距離としたマトリクス上に展開され、光軸の透光を「0」、遮光を「1」で表現した白黒画像であり、この画像から0/1の境界点を追跡していくことで自動車の輪郭データが得られる。このとき、自動車の外郭を検出するため、Y軸上のデータを一番高い境界点に限定して抽出していくので、RV車やワンボックス車のように、リアミラーとリアタイヤが両方とも装備された自動車では、リアミラーの上面輪郭が優先されて抽出されることになり、その下部にあるリアタイヤを検出することができなかった。
【0003】
リアタイヤを正確に検出できないと、各洗車処理装置の動作に影響を及ぼす。例えば、側面ブラシを制御するとき、リアタイヤが検出できていれば、側面ブラシをリアタイヤに弱い力で接触させるようにして、側面ブラシがリアタイヤに引っ掛かるのを防止するように動作するのであるが、リアタイヤが検出できないと、車体後面と判断して側面ブラシがリアタイヤに強い力で作用し、引っ掛かって異常停止する問題があった。
【特許文献1】特開平10−338103号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、リアミラーとリアタイヤとを両方とも装備した自動車の車形を確実に認識し、リアタイヤを検出できるようにした洗車機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明は、洗車処理装置を内蔵した洗車機本体と、洗車機本体と洗浄する自動車の相対移動位置を検出する位置検出手段と、自動車を挟んで洗車機の上下方向に所定間隔毎に光軸を形成しこの光軸の透光/遮光により車体の有無を検出する車体検出手段と、位置検出手段で所定距離移動したことを検出する毎に車体検出手段で車体の有無を検出して2値画像データを作成する車形検出手段と、車形検出手段からの2値画像データに基づいて自動車の上面輪郭と装備品を検出する画像処理部と、画像処理部で検出した自動車の上面輪郭と装備品に基づいて洗車処理装置を制御する洗車制御部とを備え、画像処理部は、車形検出手段で検出される2値画像データの中から、Y軸上の透光と遮光が切り替わる境界点をX軸方向に繋いで自動車の上面輪郭データを抽出する処理を行い、境界点の中で最も上部にある境界点を繋いだ第1の上面輪郭データと、最も下部にある境界点を繋いだ第2の上面輪郭データを作成するとともに、第1及び第2の上面輪郭データに基づいて自動車の装備品を検出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、2値画像データの画像処理により自動車の外郭となる上面輪郭データとは別に、この上面輪郭データよりも下側に形成されるもう1つの上面輪郭データを保存しておくことで、リアミラーとリアタイヤを両方とも装備した自動車のように、自動車の高さ方向に複数の装備品が混在しても、下側に位置するリアタイヤの存在を認識することが可能になる。よって、装備品に適した洗浄形態で車体洗浄を行えるようになり、ブラシや車体の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に示す実施例1の洗車機。
【実施例1】
【0008】
以下、本発明の実施例1について図面を基に説明する。図1は実施例1の構成を示す側面図、図2は同じく平面図で、ここでは自動車を跨ぐように洗車機本体が走行して車体の洗浄・乾燥をはかる門型洗車機に実施した例を示している。
洗車機本体1は、左右一対のレール2,2上を往復走行し、レール2,2間に停車される自動車を跨ぐように移動する。3,4,4は洗車機本体1に設けられる洗車処理装置としての回転ブラシで、3は車体面に沿って昇降動作し主に車体上面を洗浄する上面ブラシ、4,4は車体面に沿って開閉動作し車体の側面および前後面を洗浄する左右一対の側面ブラシである。5,6,6は洗車機本体1に設けられ洗浄後の車体の乾燥をはかる洗車処理装置としてのブロワノズルで、5は車体面に沿って昇降動作する上面ブロワノズル、6,6は車体面に沿って出没動作する左右一対の側面ブロワノズルである。7は本体1の前方に位置して設けられ本体1の走行に伴い自動車の側方からの形状を読み取る車形検出装置、8は洗車機本体1が単位距離走行する毎にパルス出力するエンコーダ、9・9は本体1を走行させるモータである。
【0009】
このうち車形検出装置7は、洗車機1の前方に備えられ自動車を幅方向に挾むようにして、上下に複数の発光素子L1〜Lnを配列した発光部7aと、発光素子と1対1で対応させて複数の受光素子R1〜Rnを配列した受光部7bとを対向して設け、所定のタイミングで発光部7aと受光部7bの間で光信号を授受させ、光軸B1〜Bnが自動車の車体によって遮光するか透光するか検知して車体を検出する。
【0010】
図3は実施例の制御系を説明するブロック図である。
10は洗車制御ボードで、走行位置検出部13、車形検出部14、画像処理部15、データ記憶部16、洗車制御部17を備え、車形検出装置7及び走行エンコーダ8から得た情報に基づき、自動車の位置,形状,装備等の車形データを認識するとともに、この車形データに基づいて洗車駆動ボード11を介してブラシ,ブロワノズル等の洗車処理装置を作動させ、自動車の位置,形状,装備等に合わせて洗車を行うものである。12は操作ボードで、洗車内容の選択や洗車の開始入力を行う他、操作する人に対し表示や音声で注意事項や操作手順等を案内出力するものである。
【0011】
以下、洗車制御ボード10における処理内容について、図4に示す形態の自動車(ジープ車:ルーフキャリア・リアミラー・リアタイヤを装備)を検出する場合を例に説明する。
走行位置検出部13は、走行エンコーダ8から発信されるパルス信号をカウントして洗車機本体1の走行位置を検出する。車形検出部14は、エンコーダ8から所定数のパルス信号が発信される毎に、車形検出装置7を作動して各光軸B1〜Bnの遮光/透光データを取り込み、走行位置検出部13で与える洗車機本体1の走行位置と対応させて車形画像データを作成する。すなわち、図4に示すように、洗車機本体1の走行に伴い、車形検出装置7が検出開始位置Paから検出終了位置Pbまでの範囲をX方向に移動する間、単位距離走行する毎に車形検出装置7からY方向の遮光/透光データを取り込んでいくのである。こうして作成される画像データは、図5(a)に示す、横軸を洗車機本体1の単位走行距離、縦軸を光軸の配列ピッチとしたマトリックス上に展開し、透光を「0」、遮光を「1」とした2値データで表現される。
【0012】
画像処理部15は、車形検出部14で作成した2値データを画像処理し、自動車の輪郭抽出、洗車制御データの作成、車体基準点の検出、装備品の検出を行う。
自動車の輪郭抽出は、図6(a)に示すように、まず黒で表される遮光セルが、周囲に連続して存在している連結成分の中で、最も下でかつ最も左に位置するセルD1を探す。次に、このセルD1を、図6(b)の論理フィルターの中心に合わせ、その周りに隣接する8セルを右まわりに調べていき、透光から遮光に切り替わる最初のセルD2を検出する。次に、フィルター中心をセルD2に移し、このセルD2について上記と同様の処理を行ってセルD3を得る。以後、この処理を繰り返し実行していき、移行するセルがなくなったら処理を終了し、それまでの過程で検出したセルD1〜Dnを輪郭線として図6(c)の輪郭データを得るのである。実際には、洗車機本体1の走行とともに自動車の2値データが順次作成され、マトリクス上に展開されながら輪郭線を追跡していくことになり、自動車全体の2値データが取り込まれることによって、図5(b)に示す自動車の輪郭データが抽出されることになる。
【0013】
洗車制御データの作成は、抽出した輪郭データの中から自動車の高さ方向(Y軸)のデータを1つ選択していくことで実行される。図7(a)は図5(b)のA部を拡大した輪郭データを示しており、この輪郭データの同一Y軸上には複数の輪郭点が存在している。図中、同一Y軸上の最も上位にある点を●点、最も下位にある点を▲点、それ以外の中位点を■点で表しており、例えば、列Y1上にはリアミラー上面点P1・リアミラー下面点P2・リアタイヤ上面点P3の輪郭点が存在している。
【0014】
この輪郭データから、Y軸上の最上点(●点)を取り出し、これらを繋いでいくことで、図7(b)に示すような自動車の第1の上面輪郭データを作成する。このデータは、自動車の外郭となるため、主に上面ブラシ3の制御に使用されることになる。次に、輪郭データから、Y軸上の最下点(▲点)を取り出し、これらを繋いでいくことで、図7(c)に示すような自動車の第2の上面輪郭データを作成する。このデータは、図4に示す自動車のように、リアミラーとリアタイヤが同一Y軸上に存在する場合に、主にリアタイヤの抽出に使用される。こうして、上記輪郭データから図5(c)・(d)に示す2つの上面輪郭データが抽出されることになり、リアミラーとリアタイヤが装備される自動車であってもリアタイヤの検出が可能になる。
【0015】
車体基準点の検出は、抽出した第1及び第2の上面輪郭データから、車体前端a、ボンネットとフロントガラスの境界b、ルーフ前端c、ルーフ後端d、および車体後端eといった自動車の基準点を検出するものである。図8(a)は第1の上面輪郭データから自動車の基準点を検出する例を示している。車体前端aは、上面レベルが予め設定された車体下限高さCLを越えた点を検出して認識される。境界bは、上面レベルが予め設定されたルーフ下限高さRLに達するまでの間で、且つ車体前端aから所定距離L0離れたことを条件に、洗車機本体1が所定距離L1走行する間に上面レベルが所定値H1以上上昇した起点を検出して認識される。尚、ワンボックス車のように、ボンネットのないタイプの車種では、この条件を満たす部位ができないので、上面レベルがルーフ下限高さRLに達した点で境界bの認識を諦めて、次の基準点の認識に移行する。ルーフ前端cは、上面レベルが予め設定されたルーフ下限高さRL以上にあることを条件に、洗車機本体1が所定距離L2走行する間に上面レベルが所定値H2以上上昇しなくなった起点を検出して認識される。ルーフ後端dは、上面レベルがルーフ前端cの高さから所定値H3以上下降した点から所定距離L3前にある点を検出して認識される。車体後端eは、上面レベルが車体下限高さCLを下回った点を検出して認識される。尚、第2の上面輪郭データからも同様な手順で基準点を検出する。
【0016】
装備品の検出は、基準点が検出された第1及び第2の上面輪郭データから、自動車の装備品の有無を検出するとともに、装備品が検出された自動車車体の位置に基づき装備品の種別を検出するものである。すなわち、洗車機本体1が所定距離走行する間に上面レベルが所定値以上の上昇をした場合を突起上昇、所定値以上の下降をした場合を突起下降とそれぞれ規定し、装備品の有無を検出し、装備品を検出した自動車車体の位置から装備品の種別を判定する。図8(b)に示す第2の上面輪郭データには、ルーフ前端cからルーフ後端dまでの範囲に突起上昇と突起下降が検出され、この突起高さΔH1がルーフキャリア用判定値Ha以上であれば、この突起物をルーフキャリアと判断する。また、ルーフ後端dから車体後端eまでの範囲に突起上昇と突起下降が検出され、この突起高さΔH2がリアタイヤ用判定値Hb以上であれば、この突起物をリアタイヤと判断する。尚、認識条件を設定しておけば、その他の突起についても装備品の種別判定を実行することができる。
【0017】
尚、フロントミラーやリアミラー等の装備品は、比較的細いアーム等で車体と接続しているため、検出精度によって接続アームが検出されないと、車体との連結成分が欠如し、輪郭抽出することができない可能性がある。よって、これら装備品の検出を確実に行うため、車体の特定部位に対して所定距離分の2値画像データが取り込まれる毎にラベリング処理を行い、車体とそれ以外の集合体とを分離して認識するようにしている。リアミラーの場合、およそ車体ルーフ後端から車体後端までの範囲に取り付けられるものであるから、車体基準点の範囲内で集中的にラベリング処理を行い認識を図る。ちなみに、ラベリング処理の具体的な手法は、本出願人が提案した特開平10−338103号に開示された内容で実現される。
【0018】
こうして画像処理部15で検出された車形データは、データ記憶部16に記憶され、操作パネル12からの洗車指令に基づいて読み出されて、洗車制御部17の制御に反映される。洗車制御部17では、車形データから得られる自動車の上面輪郭、装備品の種別といった情報に応じた制御を各洗車処理装置に与え、洗車駆動ボード11を介して洗車処理装置を駆動する。
【0019】
続いて、洗車制御部17における洗車処理装置の制御方法について、図9を基に説明する。図9は側面ブラシの動作軌跡を示している。
側面ブラシは、車体と所定距離を保ちながら本体1の走行に伴い、車体側面をブラッシングする。側面ブラシが車体後部に達すると、車体後面に装備品がない場合には、図9(a)に示すように、車体後面に側面ブラシを閉じていき、車体後部のコーナー部と後面をブラッシングする。車体後面にリアミラーRMとリアタイヤRTがある場合には、図9(b)に示すように、リアタイヤRTの位置で側面ブラシを開いて回避し、車体後端に達した時点で本体の走行を停止してブラシを閉じ、リアタイヤRTの後面をブラッシングする。これにより、装備品の破損やブラシの引っ掛かりが防止されるのである。
【0020】
この発明は、以上のように実施できるもので、リアミラーとリアタイヤが混在する自動車であってもリアタイヤの有無を検出できるようにしたため、特にブラシとの干渉によるトラブルを未然に防ぐことが可能になった。尚、この発明の形態は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の実施態様が考えられる。実施例では門型洗車機に実施した例を示したが、据置型の洗車機で自動車をコンベア等で移動させるタイプの連続式洗車機にも採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の洗車機を示す正面図である。
【図2】同洗車機の側面図である。
【図3】実施例1の制御系を示すブロック図である。
【図4】車形検出する自動車及びその検出形態を示す説明図である。
【図5】検出される車形データを示す説明図である。
【図6】2値データから輪郭データを抽出する手順を例示した説明図である。
【図7】輪郭データから第1及び第2の上面輪郭データを抽出する手順を示す説明図である。
【図8】上面輪郭データから車体基準点及び装備品を検出した状態を示す説明図である。
【図9】側面ブラシによる自動車後面の洗浄例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 洗車機本体
7 車形検出装置
8 エンコーダ
10 洗車制御ボード
12 操作ボード
14 車形検出部
15 画像処理部
17 洗車制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗車処理装置を内蔵した洗車機本体と、該洗車機本体と洗浄する自動車の相対移動位置を検出する位置検出手段と、自動車を挟んで洗車機の上下方向に所定間隔毎に光軸を形成しこの光軸の透光/遮光により車体の有無を検出する車体検出手段と、前記位置検出手段で所定距離移動したことを検出する毎に前記車体検出手段で車体の有無を検出し光軸の透光/遮光により2値データを作成する車形検出手段と、該車形検出手段からの2値データに基づいて自動車の上面輪郭と装備品を検出する画像処理部と、該画像処理部で検出した自動車の上面輪郭と装備品に基づいて前記洗車処理装置を制御する洗車制御部とを備え、
前記画像処理部は、前記車形検出手段で検出される2値データの中から、Y軸上の透光と遮光が切り替わる境界点をX軸方向に繋いで自動車の上面輪郭データを抽出する処理を行い、前記境界点の中で最も上部にある境界点を繋いだ第1の上面輪郭データと、最も下部にある境界点を繋いだ第2の上面輪郭データを作成し、該第1及び第2の上面輪郭データに基づいて自動車の装備品を検出することを特徴とする洗車機。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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